JP6000686B2 - 色素、それを用いたマイクロカプセル顔料及び筆記具用インク組成物 - Google Patents
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Description
(1) 下記式(I)で示されるロイコ色素からなる色素。
(2) (1)の色素、顕色剤及び変色温度調整剤を少なくとも含むことを特徴とするマイクロカプセル顔料。
(3) (2)に記載のマイクロカプセル顔料を含有することを特徴とする筆記具用インク組成物。
〔色素〕
本発明の色素は、下記式(I)で示されるロイコ色素からなることを特徴とするものである。
黒色のロイコ色素としては、特許文献1で例示したフルオラン類などが知られているが、本発明では、上記式(I)で示される色素を用いることで、更に、発色濃度及び耐光性に優れ、濃度が高い黒色となるものである。
上記式(I)中において、X、Yはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などからなる炭素数1〜4のアルキル基、または、フッ素原子(−F)、塩素原子(−Cl)、臭素原子(−Br)、ヨウ素原子(−I)などが挙げられる。
上記式(I)中において、X、Yは、水素原子、または、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などからなる炭素数1〜4のアルキル基、若しくは、フッ素原子(−F)、塩素原子(−Cl)、臭素原子(−Br)、ヨウ素原子(−I)などが挙げられ、少なくとも一方がメチル基である。また、Zはエチル基又はnブチル基を表す。
次に、本発明のマイクロカプセル顔料は、上記式(I)で示される色素、顕色剤、変色温度調整剤から少なくとも構成される熱変色性組成物を内包させたものである。
用いる顕色剤は、上記式(I)で示される色素を発色させる能力を有する成分となるものである。用いられる顕色剤は、従来公知のものが使用可能であり、例えば、無機酸、芳香族カルボン酸及びその無水物又は金属塩類、有機スルホン酸、その他の有機酸及びフェノール性化合物等が挙げられる。
好ましくは、ビスフェノール誘導体であり、下記式(II)の化合物で示されるものが挙げられる。
上記以外にも、スルホニルウレア化合物も好ましく用いることができる。
本発明に用いる変色温度調整剤は、前記式(I)で示される色素と顕色剤の呈色において変色温度をコントロールする物質である。
用いることができる変色温度調整剤は、従来公知のものが使用可能である。具体的には、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類、アゾメチン類、脂肪酸類、炭化水素類などが挙げられる。
好ましくは、化学構造中に水酸基を有する化合物と、炭素数8〜22の飽和脂肪酸とから構成されるエステル化合物であり、例えば、ビスフェノール誘導体と、炭素数8〜22の飽和脂肪酸とから構成されるエステル化合物であり、下記式(III)示されるものが挙げられる。
なお、本発明の組成物の諸特性を損なわない範囲内であれば、従来公知の変色温度調整剤を組み合わせて用いることもできる。
本発明に用いるマイクロカプセル顔料は、少なくとも上記式(I)で示される色素、顕色剤、変色温度調整剤からなる熱変色性組成物を、好ましくは、平均粒子径が0.3〜1.0μmとなるように、マイクロカプセル化することにより製造することができる。
マイクロカプセル化法としては、例えば、界面重合法、界面重縮合法、in situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライニング法などを挙げることができ、用途に応じて適宜選択することができる。
本発明のマイクロカプセル顔料では、上記式(I)で示される色素、顕色剤及び変色温度調整剤の種類、量などを好適に組み合わせることにより、黒色の発色温度、消色温度を好適な温度に設定することができる。
マイクロカプセル顔料の壁膜の厚さは、必要とする壁膜の強度や描線濃度に応じて適宜決められる。
なお、壁膜がアミノ樹脂で形成するためには、各マイクロカプセル化法を用いる際に、好適なアミノ樹脂原料(メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等)、並びに、分散剤、保護コロイドなどを選択する。
この平均粒子径が0.3μm未満であると、十分な描線濃度が得られず、一方、1.0μmを越えると、筆記性の劣化やマイクロカプセル顔料の分散安定性の低下が発生し、好ましくない。
なお、上記平均粒子径の範囲(0.3〜1.0μm)となるマイクロカプセル顔料は、マイクロカプセル化法により変動するが、水溶液からの相分離法などでは、マイクロカプセル顔料を製造する際の攪拌条件を好適に組み合わせることにより調製することができる。
本発明の筆記具用インク組成物は、上記構成のマイクロカプセル顔料を含有することを特徴とするものであり、水性、または、油性のボールペン用、マーキングペン用等の筆記具用インク組成物として用いることをできる。
本発明のマイクロカプセル顔料の含有量は、各水性又は油性のインク組成物全量に対して、好ましくは、5〜30質量%(以下、単に「%」という)、更に好ましくは、10〜25%とすることが望ましい。
このマイクロカプセル顔料の含有量が5%未満であると、着色力、発色性が不十分となり、一方、30%を超えると、カスレが生じやすくなり、好ましくない。
本発明の筆記具用インク組成物において、水性では、上記マイクロカプセル顔料の他、残部として溶媒である水(水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等)の他、各筆記具用(ボールペン用、マーキングペン用等)の用途に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、水溶性有機溶剤、増粘剤、潤滑剤、防錆剤、防腐剤もしくは防菌剤などを適宜含有することができる。
本発明の筆記具用インク組成物において、油性では、上記構成のマイクロカプセル顔料を含有すると共に、主溶剤として、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルから選ばれる少なくとも一つとを含有することが好ましい。これらの溶剤を主溶剤として選択、使用することで、上記マイクロカプセル顔料の経時的な凝集を発生しないように作用するものである。
また、本発明で用いるポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル〔POP(n)ジグリセリルエーテル〕はジグリセリンの水酸基にポリオキシプロピレンが付加重合したものである。本発明においてポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル〔POP(n)ジグリセリルエーテル〕におけるオキシプロピレンの付加モル数(n)は、本発明の効果を更に発揮せしめる点から、4〜25が好ましく、更に好ましくは4〜14である。
用いることができる樹脂としては、例えば、ケトン樹脂、スチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、フェノール系樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、ロジン系樹脂、アクリル系樹脂、尿素アルデヒド系樹脂、マレイン酸系樹脂、シクロヘキサノン系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン等に代表される樹脂が挙げられる。
具体的な分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリビニルエーテル、スチレン−マレイン酸共重合体、ケトン樹脂、ヒドロキシエチルセルロースやその誘導体、スチレン−アクリル酸共重合体等の合成樹脂やPO・EO付加物やポリエステルのアミン系オリゴマー等が挙げることができる。
また、防錆剤、防腐剤、潤滑剤としては、上述の水性で用いた各種の防錆剤、防腐剤、潤滑剤を用いることができる。
3−ジエチルアミノフェノール45.0g(0.272モル)および4−メチル無水フタル酸46.4g(0.286モル)をトルエンに加え、102〜103℃で5時間過熱攪拌した。得られた反応液の濃縮を行い、4−N,N−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシ−4’−メチル−2’−カルボキシベンゾフェノンおよび4−N,N−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシ−5’−メチル−2’−カルボキシベンゾフェノンの混合物15.4g(0.047モル)を得た。これと3−メチル−4−アニリノフェノール9.8g(0.046モル)、濃硫酸100gの混合物を10℃で12時間攪拌した。その後、過剰の水酸化ナトリウムとトルエンを加えて60℃で加熱した。トルエン層を分離した後、活性炭2.5gを加えて、さらに60℃まで加熱・熱時ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、晶析した結晶をろ過後、乾燥して6−メチル−2’−アニリノ−3’−メチル−6’−N,N−ジエチルアミノフルオランと7−メチル−2’−アニリノ−3’−メチル−6’−N,N−ジエチルアミノフルオランの混合物13.9gを得た。
3−ジエチルアミノフェノール51.2g(0.310モル)および4−クロロ無水フタル酸60g(0.32モル)をトルエンに加え、102〜103℃で2時間過熱攪拌した。得られた反応液の濃縮を行い、4−N,N−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシ−4’−クロロ−2’−カルボキシベンゾフェノンおよび4−N,N−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシ−5’−クロロ−2’−カルボキシベンゾフェノンの混合物16.3g(0.047モル)を得た。これと3−メチル−4−アニリノフェノール10.0g(0.046モル)、濃硫酸100gの混合物を10℃で12時間攪拌した。その後、過剰の水酸化ナトリウムとトルエンを加えて60℃で加熱した。トルエン層を分離した後、活性炭3gを加えて、さらに60℃まで加熱・熱時ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、晶析した結晶をろ過後、乾燥して6−クロロ−2’−アニリノ−3’−メチル−6’−N,N−ジエチルアミノフルオランと7−クロロ−2’−アニリノ−3’−メチル−6’−N,N−ジエチルアミノフルオランの混合物15.8gを得た。
3−ジエチルアミノフェノール51.2g(0.310モル)および3,4−ジクロロ無水フタル酸80g(0.369モル)をトルエンに加え、102〜103℃で2時間過熱攪拌した。得られた反応液の濃縮を行い、4−N,N−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシ−4’5’−ジクロロ−2’−カルボキシベンゾフェノン18g(0.047モル)を得た。これと3−メチル−4−アニリノフェノール10.0g(0.046モル)、濃硫酸100gの混合物を10℃で12時間攪拌した。その後、過剰の水酸化ナトリウムとトルエンを加えて60℃で加熱した。トルエン層を分離した後、活性炭3gを加えて、さらに60℃まで加熱・熱時ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、晶析した結晶をろ過後、乾燥して6,7−ジクロロ−2’−アニリノ−3’−メチル−6’−N,N−ジエチルアミノフルオラン16.6gを得た。
(マイクロカプセル顔料:A−1〜A−3)
ロイコ色素として、製造例1〜3で得た各色素(下記表1)にそれぞれ示される色素1部、顕色剤として、4,4′−(2−エチルヘキシリデン)ビスフェノール2部、及び変色性温度調整剤として、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジミリステート24部を100℃に加熱溶融して、均質な組成物27部を得た。
上記で得た組成物27部の均一な熱溶液を、保護コロイド剤として、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合樹脂〔ガンツレッツAN−179:ISP(株)社製〕40部をNaOHにてpH4に溶解させた90℃の水溶液100部中に徐々に添加しながら、加熱攪拌して直径約0.5〜1.0μmの油滴状に分散させ、次いでカプセル膜剤として、メラミン樹脂(スミテックスレジンM−3、(株)住友化学製)20部を徐々に添加し、90℃で30分間加熱してマイクロカプセル化を行い、膜剤がメラミン樹脂からなる可逆感温変色性組成物のマイクロカプセル分散液を得た。色相は、発色状態においては濃厚な黒色を呈し、消色状態においては残色がなく完全に無色となるものであった。
上記A−1の処方において、顕色剤として、4,4′−(2−エチルヘキシリデン)ビスフェノールに代えて、4,4′−(1,3−ジメチルブチリデン)ビスフェノールを用い、変色温度調整剤として、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジミリステートに代えて、4,4′−エチリデンビスフェノールジラウレートを用いることを除き、他は上記A−1の処方と同様にして、可逆感温変色性組成物のマイクロカプセル分散液を得た。色相は、発色状態においては濃厚な黒色を呈し、消色状態においては残色がなく完全に無色となるものであった。
上記A−2の処方において、ロイコ色素として、上記A−2で用いた変色温度調整剤に代えて、4,4´−イソプロピリデンビスフェノールジミリステートを用いることを除き、他は上記A−2の処方と同様にして、可逆感温変色性組成物のマイクロカプセル分散液を得た。色相は、発色状態においては濃厚な黒色を呈し、消色状態においては無色となるものであった。
上記A−1の処方において、ロイコ色素として、上記A−1で用いた色素に代えて、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオランを用いることを除き、他は上記A−1の処方と同様にして、可逆感温変色性組成物のマイクロカプセル分散液を得た。色相は、発色状態においては黒色を呈し、消色状態においては無色となるものであった。
(インクの処方)
下記表2に示す配合処方(マイクロカプセル顔料:A−1〜A−6、実施例1〜5及び比較例1では水性インクの各成分、実施例6〜10及び比較例2では油性インクの各成分)にしたがって、常法により各水性、各油性のボールペン用水性インク組成物を調製した。なお、各マイクロカプセル顔料A−1〜A−6は、各マイクロカプセル分散液を濾過し、乾燥することによりマイクロカプセル顔料として取り出し使用した。
上記で得られた各インク組成物を用いて水性ボールペン、油性ボールペンを作製した。具体的には、ボールペン〔三菱鉛筆株式会社製、商品名:シグノUM−100〕の軸を使用し、内径3.8mm、長さ113mmポリプロピレン製インク収容管とステンレス製チップ(超硬合金ボール、ボール径0.5mm)及び該収容管と該チップを連結する継手からなるリフィールに上記各水性、油性インクを充填し、インク後端に鉱油を主成分とするインク追従体を装填し、水性ボールペン、油性ボールペンを作製した。
得られた実施例1〜8及び比較例1〜2の各ボールペンを用いて、下記評価方法で耐光性、描線濃度の評価を行った。
これらの結果を下記表2に示す。
上記マイクロカプセル顔料の分散液にメラミン・ホルムアルデヒド縮合物を添加しながら顔料濃度15質量%に調整した。得られた分散液について、偏心アプリケーター(10MIL/UESHIMA SEISAKUSHO社製)を用いてピーチケント紙に展色した。下記の基準で耐光性を評価した。これについて、キセノンフェードメーターX25F(FLR40SW/M/36、スガ試験機株式会社製)にて30および50時間照射し、照射前後のL値(明度)についてカラーコンピューター(スガ試験機株式会社SC-P)にて測定し、照射後のL値/照射前のL値にて評価を行った。なお、測定条件は、正反射光:除く、光源視野:D65/10、にて行った。
評価基準:
○:1.0〜1.1
△:1.1超〜1.2未満
×:1.2超
各ペン体をISO規格に準拠した筆記用紙に、フリーハンドで螺旋筆記後、目視により描線濃度を下記の基準で評価した。
評価基準:
○:発色状態は濃い黒色。
△:発色状態で若干濃度が薄い。
×:発色状態で濃度が薄い。
これに対して、比較例1及び2のロイコ色素として2−(2−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオランを用いたマイクロカプセル顔料を含有する各インク組成物では、満足のいく十分な耐光性、描線濃度が得られないものであった。
Claims (3)
- 下記式(I)で示されるロイコ色素からなる色素。
- 請求項1の色素、顕色剤及び変色温度調整剤を少なくとも含むことを特徴とするマイクロカプセル顔料。
- 請求項2に記載のマイクロカプセル顔料を含有することを特徴とする筆記具用インク組成物
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