JP5995417B2 - 半導体モジュールおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
オン・オフ動作に伴って、パワー半導体素子から発生される発熱量は大変大きいため、半導体モジュールは、冷却能力の高い構造であることが要求される。
パワー半導体素子に対向する2枚のベース板と、この2枚のベース板に、一方の側縁を除く三方の側縁で連結される湾曲状の連結部とにより、連続して継ぎ目の無いCAN状放熱ベースを構成する。一方の側縁には、パワー半導体素子が挿入される開口部が形成されている。つまり、CAN状放熱ベースは、一側縁に開口部が形成された同一材質で形成された袋状の部材であり、各ベース板の外面側には、放熱用の多数のフィンが形成されている。
しかし、パワー半導体素子からの発熱が大きい半導体モジュールでは、線膨張係数の差に起因して湾曲状の連結部に大きな応力が作用する。このため、連結部の板厚を薄くすると、ベース板と連結部との接合部において金属疲労による破壊が生じ易い。また、連結部の板厚を厚くすると、接着後のスプリングバックにより、電極モジュールとCAN状放熱ベースの接着が剥離する。
また、薄肉の連結部は、半導体ユニットに対面する面側の反対側に形成されている。つまり、放熱部の連結部は、放熱部の外面側に形成されている。このため、半導体素子の発熱により、放熱部は、連結部を含む全体が膨張し、薄肉部である連結部には、膨張力が大きい放熱部における連結部の内周部分により圧縮される圧縮応力が作用することになり、応力発生に伴う破壊の防止にはより効果的となる。
以下、図面を参照して、本発明の半導体モジュールの実施形態を説明する。
図1(a)、(b)は本発明の実施形態1を示し、図1(a)は半導体モジュールの一部を切り欠いた外観斜視図であり、図1(b)は図1(a)の領域Xの拡大図である。また、図2は、図1の縦断断面図である。また、図3は、図1における中継端子ユニットと冷却ユニットを分解した状態の斜視図である。
半導体モジュール1は、中継端子ユニット2と半導体冷却ユニット3とを複数の締結部材91により締結して構成される(図3参照)。
半導体冷却ユニット3は、半導体ユニット30とCAN冷却ユニット20を備えている。
この半導体モジュール1は、図示はしないが、冷却ジャケットに設けられた冷却水流路内に挿入され、冷却水流路内を循環する冷却媒体により冷却されるものである。
フィンプレート22は、例えば、熱伝導性が高く、他の部位の熱変形に対する追随性の良好なA1050等のアルミニウムで形成されており、矩形のほぼ平板状のベース部22aの内面側、すなわち、半導体ユニット30側は平坦面とされている。また、ベース部22aの外面には多数のフィン22bが立設されている。ベース部22aは、熱抵抗、熱の拡散熱、および変形の抑制の面から、例えば、厚さ1.0〜4.0mm程度とするのが好ましく、特に、2.5mm程度とすることがより好ましい。
絶縁性封止剤17は、連結部22cの下面と半導体ユニット30の間にも充填されている。
フィンプレート22は、フレーム21の開口21c内に配置され、連結部22cの先端が、フレーム21のベース部21aの側壁に設けられた開口21cの周縁部に接合されている。
つまり、半導体ユニット30の一面上に高熱伝導性絶縁層16が配置されており、図1(a)および図1(b)に図示されるように、高熱伝導性絶縁層16上に、フレーム21の開口21cに沿って絶縁性封止剤17の一部17aが形成されている。そして、絶縁性封止剤17の一部17a上に、フィンプレート22の連結部22cが配置された状態で、連結部22cの先端がフレーム21の開口21cの周縁部に接合されている。
半導体ユニット30の表面側には、図6に図示されるように、交流出力側の導体板33と直流負極側の導体板34とが同一平面上に配置されている。半導体ユニット30の表面側に形成された封止樹脂6は、図4に図示されるように、導体板33の上面33aと導体板34の上面34aを露出して、導体板33および34の周囲全体を被覆している。封止樹脂6の上面は、導体板33の上面33aおよび導体板34の上面34aと面一となっている。
また、図6に図示されるように、導体板34には引出しリード34bが形成されており、この引出しリード34bの先端が導体板35に接続されている。
なお、導体板33〜36のリード部(図示せず)および信号端子24U、24L、温度信号端子25は、連結フレーム部(図示せず)に連結されて一体に形成されており、各入出力端子およびワイヤ26U、26Lとのボンディングを行い、封止樹脂6により封止された後、連結フレーム部を切断して半導体ユニット30が作製される。
図8に図示された回路は、インバータ回路の1相分の回路構成を示す。
半導体ユニット30の半導体素子31Uおよび31Lとしては、IBGT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)からなるパワートランジスタが用いられる。
導体板35には、上アーム側の半導体素子31Uのコレクタ電極と上アーム側のダイオード32Uのカソード電極が接続される。導体板36には、下アーム側の半導体素子31Lのコレクタ電極と下アーム側のダイオード32Lのカソード電極が接続される。
図9に示すように、電力変換装置100は、バッテリ200とモータジェネレータ300とに接続されて、バッテリ200から供給される直流電流を3相の交流電流に変換して、モータジェネレータ300へ供給する装置である。
このような、電力変換装置100は、電気自動車やハイブリッド自動車に搭載される車載電機システムの車両駆動用電機システムに用いることができる。
上述した如く、フィンプレート22と半導体ユニット30とは高熱伝導性絶縁層16を挟んで配置されている。
フィンプレート22のベース部22aの側縁部は、全周に亘り、半導体ユニット30側が所定の深さに除去され、薄肉の連結部22cとされている。つまり、連結部22cは、ベース部22aの上層部により形成されている。連結部22cの上面側は平坦であり、連結部22cの先端部には、下面側に突き出す接合部22dが形成されている。フィンプレート22はフレーム21の開口21c内に配置され、フィンプレート22の接合部22dの先端側面は、フレーム21の開口21cの縁部に接面している。フィンプレート22の接合部22dは、例えば、摩擦攪拌接合によりフレーム21の開口21cの縁部に接合される。
・ 攪拌ピンおよび攪拌ピンより径大のショルダ部が同軸上に配置された接合用回転ツールを準備する。
・ 接合回転用ツールの攪拌ピンの中心を、フィンプレート22の接合部22dの先端側面がフレーム21の開口21cに接面する位置にほぼ一致させる。
・ 攪拌回転用ツールを回転し、フィンプレート22の接合部22dおよびフレーム21の開口21cの周縁部を攪拌ピンにより掘削し、ショルダ部の先端部を所定深さに食い込ませる。
・ ショルダ部の先端部を所定深さに食い込ませた状態のまま、接合用回転ツールを開口21cに沿って移動する。摩擦攪拌によって、フィンプレート22の接合部22dとフレーム21の開口21cの周縁部が塑性化し接合される。接合用回転ツールを開口21cの全周に亘り移動して、開口21cの全周を接合する。
高熱伝導性絶縁層16は、絶縁膜16aと、絶縁膜16aの両面に形成された接着層16bとを有する。
絶縁膜16aは、例えば、エポキシ樹脂にセラミック粒子が分散されて形成されている。樹脂よりも熱伝導性に優れる酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等のセラミックシートの両面に放熱グリースを塗布したシートを用いてもよい。シートではなく、グリース、コンパウンド等を用いることもできる。
・ フレーム21とフィンプレート22が接合されて形成された冷却ケース23の空間23aに、半導体ユニット30を収容する。
・ 冷却ケース23のフィンプレート22を外方に押し広げて、冷却ケース23と半導体ユニット30との間に高熱伝導性絶縁層16を挿入する。この際、フィンプレート22は、連結部22cにおいて容易に変形させることができる。
・ フィンプレート22を解放して変形前の形状に復元し、高熱伝導性絶縁層16に、冷却ケース23の内面および半導体ユニット30の外面を接着する。接着後、フィンプレート22の連結部22cは、スプリングバックにより元の位置戻る。必要に応じ、フィンプレート22を半導体ユニット30側に押し付けてもよい。
・ この後、冷却ケース23の空間23aに絶縁性封止剤17を充填して、半導体ユニット30の周側面全体を被覆する。この際、フィンプレート22の連結部22cの下面と半導体ユニット30の間に、絶縁性封止剤17の一部17aが充填される。絶縁性封止剤17としては、例えば、エポキシ系接着剤を用いる。
以下に、その理由を説明する。
比較例としての半導体モジュール60は、導体板64a、64bを収納する冷却ケース61は、フランジ部61aと、多数のフィン62が形成された一対のベース部63を有する。冷却ケース61のフランジ部61aと各ベース部63との間には、ベース部63より薄肉の連結部65が形成されている。一対のベース部63は、下端部61bにおいて一体的に連接されている。連結部65は、ベース部63の上層部側が除去され、ベース部63の下層部側に設けられている。
導体板64a、64bおよび一対のベース部63は、高熱伝導性絶縁層16に接着されている。
従って、ベース部63は、矢印Y方向で示すように外方に向かって湾曲する方向、換言すれば、ベース部63の下層部側(半導体ユニット30に面する側)の中央領域側が半導体ユニット30側に凸状となるように変形しようとする。しかし、ベース部63の下端部61bは連接され、ベース部63の上端は、上部側のフランジ部61a内に充填された絶縁性封止剤67により移動を阻止されている。
このため、ベース部63と連結部65の接合部に引張応力が大きな作用する。これにより、この部分が金属疲労により破壊され易くなる。
図13において、縦軸の熱ひずみ[%]および横軸の金属疲労までの回数は、共に対数目盛である。
図13に図示される如く、比較例における熱ひずみは1.5%程度であり、疲労回復に至るまでの回数は6×102程度である。これに対し、本発明の一実施の形態の場合には、熱ひずみは、0.48%程度であり、疲労回復に至るまでの回数は8×103程度である。
このように、本発明の一実施の形態では、フィンプレート22の連結部22cに発生する熱ひずみは、比較例の1/3程度(熱応力も1/3程度)に低減され、金属疲労までの回数では、1桁以上大きくなることが確認された。
図14は、本発明の半導体モジュールの実施形態2の縦断断面図である。
実施形態2の半導体モジュール1Aが実施形態1として図2に示す半導体モジュール1と相違する点は、一方のフィンプレート22Aには、薄肉の連結部22cが形成されていない点である。すなわち、一方のフィンプレート22Aは側面22eに、直接、接合部22dが連接されている。フィンプレート22Aの接合部22dは、他方のフィンプレート22の接合部22dよりも肉厚にしてもよい。
半導体モジュール1Aのその他の構造は、実施形態1に示された半導体モジュール1と同様であり、従って、同様な効果を奏する。
なお、図14では、半導体ユニット30の裏面側に、薄肉の連結部22cが形成されていないフィンプレート22Aを配置した構造としたが、逆に、半導体ユニット30の表面側に、薄肉の連結部22cが形成されていないフィンプレート22Aを配置する構造としてもよい。
図15は、本発明の半導体モジュールの実施形態3の縦断断面図である。
実施形態3の半導体モジュール1Bが実施形態1として図2に示す半導体モジュール1と相違する点は、フレーム21Aに、フィンプレート22の一方が一体化して形成されている点である。
すなわち、フレーム21Aは、半導体ユニット30の裏面側に対応する放熱部27を有し、放熱部27に多数のフィン27aが立設されている。フレーム21Aの半導体ユニット30の表面側には、実施形態1と同様に、フィンプレート22が開口21c内に配置された状態で、フレーム21の開口21cの縁部に接合されている。
実施形態3の構造では、実施形態2と同様に強度の向上を図ることができ、また、部品点数の削減および組立作業の効率化を図ることができる。
なお、図15では、フレーム21Aは、半導体ユニット30の裏面側に対応する側に、多数のフィン27aを有する放熱部27を一体に形成した構造としたが、逆に、半導体ユニット30の表面側に対応する側に、多数のフィン27aを有する放熱部27を一体に形成した構造としてもよい。
図16は、本発明の半導体モジュールの実施形態4を示すもので、高熱伝導性絶縁層16およびその近傍の拡大断面図である。
図16に図示された実施形態4においては、フィンプレート22Aの側面22eが、ベース部22aの下面側、換言すれば、半導体ユニット30側に向かって、面積が縮小する方向に傾斜されている。
上述した如く、フィンプレート22の連結部22cとベース部22aの側面22eの交差部には、熱集中に起因する応力集中が生じる。また、半導体ユニット30と冷却ケース23との間に高熱伝導性絶縁層16を配置する際、連結部22cを変形するために、この変形に伴う応力集中が生じる。
側面傾斜角θが50〜60度では、傾斜角θの増大と共に、熱ひずみは直線的に上昇する。側面傾斜角θが60〜70度では、傾斜角θの増大と共に、熱ひずみは直線的に上昇するが、熱ひずみの上昇率は、側面傾斜角θが50〜60度の範囲の場合よりも小さい。側面傾斜角θが70度以上では、傾斜角θが増大しても熱ひずみは、ほぼ一定である。
下面22gに対する側面22eの傾斜角θは、70度程度以下が好ましく、60度以下がより好ましい。傾斜角θが小さすぎすると、フィンプレート22が大きくなるため、傾斜角θは、例えば、30度以上とすることが好ましい。
2 中継端子ユニット
3 半導体冷却ユニット
6 封止樹脂
16 高熱伝導性絶縁層
17 絶縁性封止剤
20 CAN冷却ユニット
21、21A フレーム(枠体)
21a ベース部
21b フランジ部
22、22A フィンプレート(放熱部)
22a ベース部
22b、27a フィン
22c 連結部
22d 接合部
22e 側面
22f 面取り
22g 下面
30 半導体ユニット
31、31U、31L 半導体素子
32、32U、32L ダイオード
33〜36 導体板
Claims (13)
- 複数の接続端子を有する半導体素子と、前記半導体素子の表裏面に対向して配置された一対の導体板とを有する半導体ユニットと、
前記半導体ユニットを挿入する挿入用開口部を有し、内部に前記半導体ユニットが収納された冷却ケースとを備え、
前記冷却ケースは、前記各導体板に対向し、それぞれ、複数の放熱用のフィンを有する一対の放熱部と、前記放熱部に連結され、前記半導体ユニットの前記接続端子に接続される接続部材を挿通する開口部を有する金属製の枠体とを備え、
前記放熱部は、少なくとも一方が前記枠体と別体として形成され、前記一方の放熱部は、少なくとも、外面に前記フィンが形成されたベース部と、前記ベース部よりも薄肉に形成された連結部を有し、前記連結部は、前記放熱部の一側縁において前記半導体ユニットに対面する側とは反対側に形成され、前記枠体は、前記一方の放熱部が配置される開口部を有し、前記一方の放熱部は前記枠体の前記開口部に配置され、前記連結部の先端部において前記枠体に接合されていることを特徴とする半導体モジュール。 - 請求項1に記載の半導体モジュールにおいて、前記各放熱部と前記半導体ユニットとの間に、熱伝導性絶縁層が介在されていることを特徴とする半導体モジュール。
- 請求項1または2に記載の半導体モジュールにおいて、前記半導体ユニットは、前記各導体板の表面を露出すると共に前記各導体板の側面を覆う封止樹脂を含むことを特徴とする半導体モジュール。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体モジュールにおいて、前記冷却ケース内に前記半導体ユニットの周囲を覆う封止剤が内蔵されていることを特徴とする半導体モジュール。
- 請求項4に記載の半導体モジュールにおいて、前記封止剤の一部は、前記連結部の下面と前記半導体ユニットとの間に充填されていることを特徴とする半導体モジュール。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体モジュールにおいて、前記連結部は前記ベース部の側面に設けられ、前記ベース部の前記側面は、前記ベース部の前記半導体ユニットに対面する面の面積が縮小する方向に傾斜する傾斜面とされていることを特徴とする半導体モジュール。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体モジュールにおいて、前記連結部は前記ベース部の側面に設けられ、前記連結部と前記側面の交差部には、前記連結部の下面と前記側面とを繋ぐ面が形成されていることを特徴とする半導体モジュール。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体モジュールにおいて、前記連結部の先端は、前記連結部の他の部分よりも厚肉であることを特徴とする半導体モジュール。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の半導体モジュールにおいて、前記一方の放熱部は、A1050により形成されていることを特徴とする半導体モジュール。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の半導体モジュールにおいて、前記放熱部の他方は、周側縁部に段状に形成された薄肉の接合部を有する、前記枠体とは別体に形成された部材であることを特徴とする半導体モジュール。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の半導体モジュールにおいて、前記放熱部の他方は、前記枠体に一体化して形成されていることを特徴とする半導体モジュール。
- 請求項1に記載の半導体モジュールの製造方法であって、前記一方の放熱部の連結部は、ほぼ全周に亘って連続して形成され、前記枠体に摩擦攪拌により接合されていることを特徴とする半導体モジュールの製造方法。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の半導体モジュールの製造方法であって、前記一方の放熱部と前記枠体とは摩擦攪拌接合により接合されていることを特徴とする半導体モジュールの製造方法。
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