JP5991474B2 - 魚肉練り製品、及び魚肉練り製品の製造方法 - Google Patents
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古来から求める食感を実現するために、魚肉練り製品の製造工程において、坐りと戻りの温度、及び時間の調整を行っていた。具体的には、ちくわ、又はかまぼこ等の水産練り製品では、原料の魚から採取し調製した魚のすり身を塩擂り後、調味したものを所定の形に整形後、50℃以下の温度にしばらく置き、蒸し、及び焼き等の最終加熱によって80℃前後近くまで品温を上げて製品としてきた。
ここで、50℃以下の温度帯においてはゲルの構造形成が行われ、これを「坐り(Suwari)」といい、50℃以上の温度帯においてはゲルの崩壊が起こり、これを「戻り(Modori)」という。そして、魚肉練り製品のゲル形成能を高める方法としては、5〜20℃以下で一晩(12〜16時間)放置してゲル形成を高める低温坐りと、30〜45℃で5〜60分程度放置してゲル形成を高める高温坐りの二種類がある。この坐り段階でのゲル形成をしっかり行うことで、坐り処理の後に80℃程度まで加熱処理する工程において、通常、60℃近辺で生ずる戻りによる物性の低下を抑制することができる。
したがって、魚肉練り製品の食感と物性を向上させる重要なポイントは、坐りを強くすることで、戻り温度帯における前記の物性の低下を防止、すなわち戻りを抑制することにある。
しかしながら、最近では、魚肉練り製品のゲル弾性力をさらに高めたものが求められてきた。
本発明の第2の発明は、前記成分(A)の含量は、トリプシンインヒビター活性が前記すり身1000質量部に対して10000〜400000TIU(Trypsin Inhibitor Unit)となる量であり、前記成分(B)の含量が、前記すり身1000質量部に対して1〜25質量部である、第1の発明に記載の魚肉練り製品である。
本発明の第3の発明は、すり身に、全脂大豆粉、脱脂大豆粉、大豆ホエー、豆乳粉末、及び抽出大豆たん白からなる群より選択される1種又は2種以上からなる成分(A)と、小麦全粒粉、小麦胚芽粉砕物、及び大麦全粒粉からなる群より選択される1種又は2種以上からなる成分(B)と、を配合することを特徴とする魚肉練り製品の製造方法である。
本発明の第4の発明は、前記成分(A)の含量は、トリプシンインヒビター活性が前記すり身1000質量部に対して10000〜400000TIUとなる量であり、前記成分(B)の含量が、前記すり身1000質量部に対して1〜25質量部である、第3の発明に記載の魚肉練り製品の製造方法である。
本発明の第5の発明は、全脂大豆粉、脱脂大豆粉、大豆ホエー、豆乳粉末、及び抽出大豆たん白からなる群より選択される1種又は2種以上からなる成分(A)と、小麦全粒粉、小麦胚芽粉砕物、及び大麦全粒粉からなる群より選択される1種又は2種以上からなる成分(B)と、を含有し、前記成分(A)の含量が10〜50質量%であり、前記成分(B)の含量が50〜90質量%であることを特徴とする魚肉練り製品用製剤である。
本発明の第6の発明は、すり身に、第5の発明に記載の魚肉練り製品用製剤を、トリプシンインヒビター活性が前記すり身1000質量部に対して10000〜400000TIUとなる量で添加することを特徴とする魚肉練り製品の製造方法である。
また、本発明に係る魚肉練り製品の製造方法、及び本発明に係る魚肉練り製品用製剤により、ゼリー強度が強く食感が良好な魚肉練り製品を簡便に製造することができる。
本発明に係る魚肉練り製品は、すり身と、全脂大豆粉、脱脂大豆粉、大豆ホエー、豆乳粉末、及び抽出大豆たん白からなる群より選択される1種又は2種以上からなる成分(A)と、小麦全粒粉、小麦胚芽粉砕物、コーン全粒粉、コーンフラワー、コーン胚芽粉砕物、大麦全粒粉、大麦糠、あわ全粒粉、及びひえ全粒粉からなる群より選択される1種又は2種以上からなる成分(B)と、を原料として含むことを特徴とする。すり身原料に、大豆由来原料である成分(A)と、大豆以外に由来する特定の原料群(成分(B))とを併用して添加することにより、すり身原料のゲル形成能を著しく向上させることができる。このため、本発明に係る魚肉練り製品は、大豆由来原料のみをすり身に添加した製品よりも、ゼリー強度がより強く、食感が良好である。
生全脂大豆粉は、例えば、乾燥大豆を脱皮処理後、乾燥し、粉砕処理することにより製造することができる。また、加熱脱臭全脂大豆粉は、例えば、乾燥大豆(原料)を脱皮処理後、加熱脱臭処理し、その後乾燥し、粉砕処理することにより製造することができる。
市販の生全脂大豆粉としては、例えば、日清オイリオグループ(株)製の商品「ソーヤフラワーNSA」が挙げられ、加熱脱臭全脂大豆粉としては、例えば、日清オイリオグループ(株)製の商品「アルファプラスHS−600」が挙げられる。
また、脱脂大豆粉としては、市販品を使用することもできる。市販品としては、例えば、日清オイリオグループ(株)製の脱脂大豆粉末(商品名「ソーヤフラワーA」)等が挙げられる。
豆乳粉末は、喫食可能なものであれば特に限定されるものではない。豆乳粉末は、例えば、大豆を粉砕したものを水に入れて抽出後、おからを分離して得られた溶液を乾燥処理することにより製造することができる。具体的は、大豆に6倍量の水を加水し、40℃で攪拌しながら1時間抽出を行う。続いて、横型連続遠心分離機(メイン:4000rpm、バック:3000rpm)で固形分(おから)を除去し、得られた溶液を、噴霧乾燥(入り口180℃、出口90℃)することにより、豆乳粉末を製造することができる。また、市販の豆乳を噴霧乾燥により粉末化することにより豆乳粉末を製造することもできる。
成分(A)は、トリプシンインヒビター活性がすり身1000質量部に対して400000TIUとなる量よりも多い量を添加することもできるが、添加効果は頭打ちとなってしまうため、成分(A)の添加量を増やしたとしても、さらなる食感改良はあまり期待することができない。
a)200mL容の三角フラスコにサンプル約1.00gをとり、0.005N NaOH溶液50mLを加える。
b)室温(25℃)で60分間振とうし、均一に溶かす。
c)振とう後、3000rpmで10分間遠心分離し、上清を濾紙(No.5B)で濾過し、サンプル液を得る。
d)得られたサンプル液を、予想されるTIUに応じた濃度に希釈する。
e)試験管にサンプル希釈液をそれぞれ0(サンプルブランク2個)、0.6、0.9、1.2、1.5、及び1.8mLとり、脱イオン水で2mLにする。
f)上記の各希釈液にトリプシン溶液2mLを加え、攪拌し、37℃恒温槽に10分間おく。
g)DL−BAPA溶液(37℃保存)5mLを加え、正確に10分後、30%酢酸溶液1mLでよく攪拌し反応を停止する。
h)試薬ブランクとして、脱イオン水2mL、トリプシン溶液2mL、30%酢酸溶液1mL、及びDL−BAPA溶液5mLの順に加えたものを用意する。
i)前記g)で得た反応液を濾紙(5C)を用いて濾過し、得られた濾液の410nmの波長における吸光度を、試薬ブランクを対照として、10mmのガラスセルを用いて測定する。
j)得られた測定結果を用い、下記の計算式によりTIUの値を求める。なお、TIU値は、サンプルブランクの示す吸光度(平均値)に対して、希釈液中の吸光度が40〜60%にあてはまるものを有意とする。また、40〜60%の範囲の当てはまるものが複数個ある場合には、50%により近いものを有効とする。
TIU/mg=(A−B)/0.01×サンプル量
A:サンプルブランクの吸光度の平均値、B:希釈サンプルの吸光度
澱粉を使用する場合、その配合量は、すり身1000質量部に対して、20〜200質量部であることが好ましく、50〜150質量部であることがより好ましく、50〜120質量部であることがさらにより好ましく、80〜120質量部であることが最も好ましい。
本発明に係る魚肉練り製品用製剤は、脱脂大豆粉、大豆ホエー、豆乳粉末、及び抽出大豆たん白からなる群より選択される1種又は2種以上からなる成分(A)と、小麦全粒粉、小麦胚芽粉砕物、コーン全粒粉、コーンフラワー、コーン胚芽粉砕物、大麦全粒粉、大麦糠、あわ全粒粉、及びひえ全粒粉からなる群より選択される1種又は2種以上からなる成分(B)と、を含有し、前記成分(A)の含量が10〜50質量%であり、前記成分(B)の含量が50〜90質量%であることを特徴とする。予め、成分(A)及び成分(B)を含有する製剤にしておくことにより、両者を一度にすり身に添加することができ、本発明に係る魚肉練り製品をより簡便に製造することができる。
トリプシンインヒビター活性が前記範囲内となるように添加することにより、当該魚肉練り製品用製剤によるすり身のゲル形成能向上効果が充分に発揮される。
なお、以下の実施例等において、ケーシングかまぼこは、戻り加熱処理後に加熱処理を行うかまぼこの製造方法(かまぼこの製造方法1)により製造した。図1は、かまぼこの製造方法1のフローを示す図である。
まず、冷凍すり身(スケソウダラすり身2級)を室温で半解凍し、真空カッター(Stephan社製、Stephan Universal Machine UM−5)へ投入した。真空カッターで、すり身を荒擂りし、この段階で、全加水量の1/3量の水を添加し、成分(A)及び/又は成分(B)を添加した。擂潰は、擂り上がり後のすり身の温度が1〜3℃になるまで行った(荒擂り工程、約5分間)。
次に、食塩を添加し、すり身温度が3〜8℃になるまで、減圧下で約1分間擂潰し、その後、全加水量の1/3量の水を添加し、すり身温度が8〜10℃になるまで、減圧下で約1分間擂潰した(塩擂り工程、約2分間)。
次に、残りの1/3量の水を添加し、馬鈴薯澱粉を添加し、すり身温度が10〜13℃になるまで、減圧下で擂潰し(本擂り工程、約1分間)、擂り上がり品を得た。
次に、得られた擂り上がり品を、ケーシング(株式会社クレハ製、クレハロンシームA08、55mm×300mm No.4)に詰めて結束後、60℃で、40分間戻り加熱処理をした後、92℃で40分間加熱処理を行った。その後、流水で冷却し、ケーシングかまぼこを得た。
製造したケーシングかまぼこについて、破断応力〔g〕、及び破断変形〔mm〕を、Stable Micro Systems社製のテクスチャーアナライザー(TA).XTplus(XTPL15型、直径8mm球状プランジャー)を用いて測定し、それらの値の積をゼリー強度〔g・mm〕として算出し、ゲルの強度を評価した。
表1〜3に示す配合により、実施例1〜4及び比較例1〜11のケーシングかまぼこを製造し、その破断応力と破断変形を測定し、ゼリー強度を算出した。測定及び算出の結果を表1〜3に示す。なお、全脂大豆粉は日清オイリオグループ(株)製の商品「アルファプラスHS−600」を用いた。コーン胚芽粉砕物は、コーン胚芽を、大阪ケミカル(株)製の粉砕機(Vita−Mix ABSOLUTE Blender)を用いて粉砕(粉砕条件レベル:VARIABLE、可変速度ダイヤル:9、粉砕時間:30秒間)して得られたものを使用した。小麦胚芽粉砕物は、GIUSTO′S社製の未加熱の小麦胚芽商品「Raw Wheat Germ」を、大阪ケミカル(株)製の粉砕機(Vita−Mix ABSOLUTE Blender)を用いて粉砕(粉砕条件レベル:VARIABLE、可変速度ダイヤル:9、粉砕時間:30秒間)して得られたものを使用した。また、表1〜3中の「全脂大豆粉」の欄の三行目は、すり身1000質量部当たりに添加した全脂大豆粉のトリプシンインヒビター活性を示す。
図2のグラフからわかるように、全脂大豆粉は、すり身1000質量部に対し3質量部以上では、ゼリー強度はほぼ同程度であり、全脂大豆粉添加によるゼリー強度の増強効果は頭打ちになった。図3のグラフからわかるように、コーン胚芽粉砕物は、すり身1000質量部に対する添加量1〜10質量部で、添加量依存的にゼリー強度が強くなっていた。また、すり身1000質量部に対して全脂大豆粉3質量部を添加したものに、さらにコーン胚芽粉砕物を添加すると、コーン胚芽粉砕物の添加量依存的にゼリー強度が強くなっていた。
図2及び図3の結果から、全脂大豆粉とコーン胚芽粉砕物を併用することにより、全脂大豆粉単独で用いた場合よりも、すり身のゲル形成能を増強させることができ、よりゼリー強度の強い魚肉練り製品が製造できることがわかった。
図4のグラフからわかるように、小麦胚芽粉砕物は、すり身1000質量部に対する添加量1〜10質量部で、添加量依存的にゼリー強度が強くなっていた。また、すり身1000質量部に対して全脂大豆粉3質量部を添加したものに、さらに小麦胚芽粉砕物を添加すると、小麦胚芽粉砕物の添加量依存的にゼリー強度が強くなっていた。
図2及び図4の結果から、全脂大豆粉と小麦胚芽粉砕物を併用することにより、全脂大豆粉単独で用いた場合よりも、すり身のゲル形成能を増強させることができ、よりゼリー強度の強い魚肉練り製品が製造できることがわかった。
表4に示す配合により、実施例5〜7、及び比較例12〜14のケーシングかまぼこを製造し、その破断応力と破断変形を測定し、ゼリー強度を算出した。測定及び算出の結果を表4に示す。なお、全脂大豆粉は日清オイリオグループ(株)製の商品「アルファプラスHS−600」を用いた。コーンフラワーは、(株)サニーメイズ製の商品「コーンフラワーNO.7」を使用した。大麦全粒粉は、大麦(品種:イチバンボシ)を、大阪ケミカル(株)製の粉砕機(Vita−Mix ABSOLUTE Blender)を用いて粉砕(粉砕条件レベル:VARIABLE、可変速度ダイヤル:9、粉砕時間:30秒間)して得られたものを使用した。小麦全粒粉は、日清製粉(株)製の商品「小麦全粒粉」を使用した。また、表4中の「全脂大豆粉」の欄の三行目は、すり身1000質量部当たりに添加した全脂大豆粉のトリプシンインヒビター活性を示す。
表5に示す配合により、実施例8のケーシングかまぼこを製造し、その破断応力と破断変形を測定し、ゼリー強度を算出した。配合、測定及び算出の結果を、実施例1と共に表5に示す。なお、全脂大豆粉は日清オイリオグループ(株)製の商品「アルファプラスHS−600」を用いた。抽出大豆たん白は、不二製油(株)製の商品「プロフィット1000」を使用した。コーン胚芽粉砕物は、コーン胚芽を、大阪ケミカル(株)製の粉砕機(Vita−Mix ABSOLUTE Blender)を用いて粉砕(粉砕条件レベル:VARIABLE、可変速度ダイヤル:9、粉砕時間:30秒間)して得られたものを使用した。
また、実施例8では、全脂大豆粉と抽出大豆たん白の合計のトリプシンインヒビター活性が、実施例1と同じ108000TIUになるように配合した。
表6に示す配合により、比較例15〜18のケーシングかまぼこを製造し、その破断応力と破断変形を測定し、ゼリー強度を算出した。配合、測定及び算出の結果を、比較例1及び3と共に表6に示す。なお、全脂大豆粉は日清オイリオグループ(株)製の商品アルファプラスHS−600を用い、小麦粉(小麦粒から果皮や胚芽の部分をふすまとして取り除いた胚乳の部分を挽いたもの)は(株)富澤商店製の商品「カメリア」を用い、コーンスターチ(トウモロコシの澱粉部を精製したもの)は日本食品化工(株)製の商品「日食コーンスターチIPY」を用いた。
全脂大豆粉(日清オイリオグループ(株)製の商品「アルファプラスHS−600」)600g及びコーン胚芽粉砕物2000gをビニール袋に入れて振とうすることにより、魚肉練り製品用製剤2600gを製造した。なお、コーン胚芽粉砕物は、コーン胚芽を、大阪ケミカル(株)製の粉砕機(Vita−Mix ABSOLUTE Blender)を用いて粉砕(粉砕条件レベル:VARIABLE、可変速度ダイヤル:9、粉砕時間:30秒間)して得られたものを使用した。
Claims (6)
- すり身と、
全脂大豆粉、脱脂大豆粉、大豆ホエー、豆乳粉末、及び抽出大豆たん白からなる群より選択される1種又は2種以上からなる成分(A)と、
小麦全粒粉、小麦胚芽粉砕物、及び大麦全粒粉からなる群より選択される1種又は2種以上からなる成分(B)と、
を原料として含むことを特徴とする魚肉練り製品。 - 前記成分(A)の含量は、トリプシンインヒビター活性が前記すり身1000質量部に対して10000〜400000TIU(Trypsin Inhibitor Unit)となる量であり、
前記成分(B)の含量が、前記すり身1000質量部に対して1〜25質量部である、請求項1に記載の魚肉練り製品。 - すり身に、
全脂大豆粉、脱脂大豆粉、大豆ホエー、豆乳粉末、及び抽出大豆たん白からなる群より選択される1種又は2種以上からなる成分(A)と、
小麦全粒粉、小麦胚芽粉砕物、及び大麦全粒粉からなる群より選択される1種又は2種以上からなる成分(B)と、
を配合することを特徴とする魚肉練り製品の製造方法。 - 前記成分(A)の含量は、トリプシンインヒビター活性が前記すり身1000質量部に対して10000〜400000TIUとなる量であり、
前記成分(B)の含量が、前記すり身1000質量部に対して1〜25質量部である、請求項3に記載の魚肉練り製品の製造方法。 - 全脂大豆粉、脱脂大豆粉、大豆ホエー、豆乳粉末、及び抽出大豆たん白からなる群より選択される1種又は2種以上からなる成分(A)と、
小麦全粒粉、小麦胚芽粉砕物、及び大麦全粒粉からなる群より選択される1種又は2種以上からなる成分(B)と、
を含有し、前記成分(A)の含量が10〜50質量%であり、前記成分(B)の含量が50〜90質量%であることを特徴とする魚肉練り製品用製剤。 - すり身に、請求項5に記載の魚肉練り製品用製剤を、トリプシンインヒビター活性が前記すり身1000質量部に対して10000〜400000TIUとなる量で添加することを特徴とする魚肉練り製品の製造方法。
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