JP6123728B2 - 麺皮類および麺皮包餡食品 - Google Patents

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本発明は、麺皮類及び麺皮包餡食品に関する。
小麦粉や米粉等の澱粉含有素材を主原料として、水やその他副材料を加えて練りシート状に圧延してなる麺皮類は、日本を含め世界の各地域においても広く用いられる食品素材である。麺皮類に具材やソース類を包み、茹でたり蒸したりして調理する麺皮包餡食品には、焼売、餃子、ワンタン、小龍包、ラビオリ等があり、これらは惣菜として良く普及している。麺皮包餡食品は飲食店内で調理・喫食される場合のほか、調理後すぐに喫食されない形態で提供される場合も多い。
これら麺皮包餡食品のうち、茹でたり蒸したりすることにより調理されるものは、調理後の麺皮のソフトで歯切れの良い食感が、経時的な麺皮の硬化によって、好ましい食感が損われる場合がある。
麺皮包餡食品の品質向上、あるいは経時的な品質低下の抑制について、種々の方法が検討されている。例えば麺皮類に乳化剤を含有する乳化物を添加する方法(特許文献1)、おから粉末、糖類、食用油脂、グリセリン脂肪酸エステルからなる水中油型の乳化油脂組成物を餃子の皮等に配合する方法(特許文献2)、シュウマイ等の皮にトレハロースや加工澱粉を添加する方法(特許文献3)が提案されている。
特開2008-212036号公報 特開平7-213226号公報 特開2004-141026号公報
従来技術では、麺皮類の歯切れやソフト感といった食感が経時的に悪化する問題を十分に解決できておらず、更なる改良技術が望まれている。さらに、特許文献1の技術では乳化剤の添加により特有の悪風味を与える場合があり、特許文献2の技術では乳化油脂組成物を予め調製して添加するなど工程が煩雑になり生産性に問題が出る場合もあった。
本発明では、茹で調理あるいは蒸し調理後の歯切れ、ソフト感等の食感を改良し、さらに、これらの効果を維持することの出来る麺皮類と、それを用いてなる麺皮包餡食品を提供することを目的とした。
本発明者らは、前記の目的を達成すべく種々検討した結果、水溶性エンドウ多糖類を麺皮類の生地中に添加することで、茹で調理あるいは蒸し調理された麺皮類ならびに麺皮包餡食品の歯切れ、ソフト感等といった食感を改良し、またこれらの効果を維持出来ることを見出した。さらに麺皮包餡食品を例えば、冷蔵保存される場合であっても、それらの効果を維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)水溶性エンドウ多糖類を含有することを特徴とする、茹で調理あるいは蒸し調理される麺皮包餡食品に用いる麺皮類、
(2)水溶性エンドウ多糖類を穀粉に対して0.1〜5重量%含有する、(1)記載の麺皮類、
(3)(1)に記載の麺皮類に具材を包んでなる麺皮包餡食品、
(4)水溶性エンドウ多糖類を穀粉に対して0.1〜5重量%配合し、生地を調製することを特徴とする茹で調理あるいは蒸し調理される麺皮包餡食品に用いる麺皮類の製造方法、
である。
本発明の麺皮類や麺皮包餡食品は、茹で調理あるいは蒸し調理された際の歯切れ、ソフト感が優れ、また、保存後においてもこれらの効果を持続することができる。製造から調理までの保存工程、また調理から喫食までの時間経過に伴う品質の劣化を抑えることで、食品の提供者、消費者の両者にとって高い価値を持つ麺皮包餡食品を提供することが出来る。
(麺皮類)
本発明の麺皮類は水溶性エンドウ多糖類を含有することを特徴とする。
本発明における麺皮類とは、強力粉、準強力粉、薄力粉、中力粉等の小麦粉、米粉等の澱粉を主成分とする穀粉に、水やその他副材料を入れて練りシート状に圧延したものをいい、蒸し調理あるいは茹で調理される麺皮包餡食品に用いられるものである。代表的な麺皮類として、焼売の皮、餃子の皮、ワンタンの皮、小龍包等の皮、ラビオリの皮等が例示出来る。
(麺皮包餡食品)
本発明における麺皮包餡食品とは、肉、魚介類、豆、乳製品、卵、野菜等からなる具材や、それらを調理してなるソース、ペースト類を、餡として麺皮類の中に包んだものであり、茹で調理あるいは蒸し調理される食品のことをいう。代表的な麺皮包餡食品として、焼売、餃子、ワンタン、小龍包、ラビオリ等が例示出来る。本発明の麺皮包餡食品は、蒸し調理、茹で調理の加熱調理を行った後に提供される。また、調理の前後あるいは半調理された状態で冷凍や冷蔵の保存工程を取り、喫食の前に改めて加熱される場合もある。改めて加熱される場合は、前述の加熱調理のほかにも、電子レンジ等によるマイクロ波加熱が行われる場合もある。
(水溶性エンドウ多糖類)
本発明における水溶性エンドウ多糖類とは、エンドウ種子から抽出される水溶性の多糖類を指す。好ましくはエンドウ種子の子実部から抽出されたものであり、更に好ましくは黄色エンドウの種子から抽出されたものである。その製造方法は、例えば国際出願PCT/JP2012/065907号明細書に記載される製造例で得ることが出来る。
(水溶性エンドウ多糖類の製造法)
工業的には、エンドウ種子に含まれる蛋白質画分並びに澱粉画分を除去した繊維画分を原料として、水または熱水で抽出して得ることが出来る。製造法の一例を示せば、原料に5〜20倍量の水を加水したのち、酸或いはアルカリを添加してpH3からpH12の範囲、好ましくはpH4からpH10の範囲に調整する。続いて、60℃以上150℃以下、好ましくは80℃以上130℃以下の温度で水溶性エンドウ多糖類を抽出する。抽出時間は概ね0.5〜3時間であるが、原料の状態や温度等により、任意に調整することが出来る。抽出した水溶性エンドウ多糖類は、不溶性繊維分を遠心分離機等により分離した後に、任意で除澱粉・除蛋白・除低分子等の精製処理や殺菌処理を行い、そのまま水溶液として用いても良いし、乾燥して用いても良い。
(分子量)
本発明に使用する水溶性エンドウ多糖類は、構成成分として分子量1万以上の高分子成分を含むが、以下の条件でのゲル濾過で分析される、分子量1万以上と認められる画分をもって、高分子成分と定義する。平均絶対分子量(MM)は10万から100万が好ましく、20万から80万がより好ましい。
ゲル濾過は、HPLC(TSK-gel G-5000PWXL: 東ソー φ7.8mm×300mm)を用い、平均絶対分子量(MM)は、カラム通液後にトルエンでキャリブレーションしたマルチアングルレーザーライトスキャッタリング(MALLS)により求める。分析条件は、溶離液:50mM酢酸ナトリウム水溶液(pH5.0)、流速:1.0mL/min、 RI検出器及びMALLS検出器にて行う。
(構成糖)
本発明に使用する水溶性エンドウ多糖類は、構成糖として酸性糖であるガラクツロン酸が含まれるものである。また主要な中性糖としてアラビノースとガラクトースが含まれるものである。その他の中性糖としてグルコース、ラムノース、キシロースおよびフコースが含まれていても良い。酸性糖であるガラクツロン酸の糖組成は3〜40重量%であることが好ましい。また中性糖の糖組成は60〜97重量%であることが好ましい。また中性糖としてアラビノースの糖組成が20〜50重量%であるのが好ましく、ガラクトースの糖組成は10〜30重量%であるのが好ましい。 尚、水溶性エンドウ多糖類の全糖含量はフェノール硫酸法を用いた比色定量法にて、ガラクツロン酸含量はBlumenkrantz法を用いた比色定量法にて測定する。中性糖の組成は、硫酸分解した後、電気化学検出器を用いたイオンクロマトグラフィー法(HPLC-PAD法)を用いて測定する。
(水溶性エンドウ多糖類の麺皮類への添加)
本発明で使用する水溶性エンドウ多糖類は、粉状、粒状、液状など様々な形態で添加することが出来る。添加方法として、例えば、他の原料と粉体混合する方法、予め水溶液にして添加する方法、乳化物の水相側に予め溶解させた状態で添加する方法が挙げられるが、生地の混練過程において他の原料と均一に混ぜることができる添加方法であればどのような方法を選択しても差し支えない。
添加量は、所望する麺皮類の物性、食感によって任意に選択して良いが、対穀粉0.1重量%以上が好ましく、0.1〜5重量%がより好ましく、0.5〜5重量%が更に好ましく、1〜5重量%が最も好ましい。0.1重量%未満の場合は、物性や食感の改良効果が十分でない場合がある。また、添加量が多すぎるとベタつき等が生じ作業性が低下する場合があるため、5重量%以下が好ましい。
(食感)
水溶性エンドウ多糖類は麺皮中の澱粉や蛋白質に作用し、麺皮包餡食品の食感を改良することができる。
また、蒸し調理、茹で調理される麺皮包餡食品の場合、調理後の時間経過と共に澱粉の老化と乾燥が進み、麺皮の食感が硬く曳きが強く歯切れの悪いものになるが、水溶性エンドウ多糖類を添加することにより食感の悪化が大きく抑制される。
麺皮が厚めのものでは、麺皮のもちもちとした食感が失われるのを抑制し、ソフトな食感を長時間楽しむことが出来る。これらの効果は、蒸し餃子、茹で餃子、蒸し焼売、茹でワンタン、小龍包、煮込みラビオリ等で顕著である。
(他の多糖類・蛋白質素材との併用)
水溶性エンドウ多糖類に加えて、麺皮生地の物性や好ましい食感を損わない範囲で、ガム剤、増粘剤、蛋白質、あるいはその加水分解物を配合することが出来る。併用出来る物質としては、例えば、生澱粉、加工澱粉、各種セルロース、寒天、カラギーナン、ファーゼラン、グアーガム、ローカストビーンガム、フェノグリークガム、コンニャクマンナン、タマリンド種子多糖類、タラガム、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、ジェランガム、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、イヌリンなどの多糖類、ゼラチン、コラーゲン、グルテン等の蛋白質が例示出来る。添加方法は、水溶性エンドウ多糖類の場合と同様に、他の原料と均一に混ぜることができる添加方法が好ましい。
(他の機能剤との併用)
水溶性エンドウ多糖類に加えて、麺皮生地の物性や好ましい食感を損わない範囲で、他の機能剤、例えば、糖質、乳化剤、酵素等と併用することが出来る。糖質としては、ショ糖、トレハロース、澱粉加水分解物、ソルビトール、還元澱粉加水分解物などの糖質及び糖アルコール類、乳化剤としては、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の界面活性剤、酵素としては、β-アミラーゼ、α-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼなどの澱粉分解酵素や、キシラナーゼ、グルカナーゼなどのヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、或はセルラーゼ、プロテアーゼ、ペプチダーゼなどの蛋白質分解酵素等が例示出来る。添加方法は、水溶性エンドウ多糖類の場合と同様に、他の原料と均一に混ぜることができる添加方法が好ましい。
(麺皮類の製造)
本発明の麺皮類を製造するに際しては、公知の方法に準じて行うことが出来る。例えば、小麦粉、水溶性エンドウ多糖類、水等の原料をミキサーにて混合、混練し、だまが発生した場合には篩等を用いてだまを解消して麺皮類の生地を得る。得られた生地は、圧延や複合を行った後、熱風乾燥や焼成等の加熱処理によって固化してもよいし、加熱しないで使用することも出来る。生地の厚さは、所望する食品の食感によって任意に選択して差し支えないが、中に具材を包む際の妨げにならない厚さが好ましい。生地は、最終製品の形状や大きさに応じて、任意に切り出しや成型を行っても良い。
以下に実施例を記載することで本発明を説明する。例中の「部」は重量部を意味する。
(製造例1)水溶性エンドウ多糖類の製造
エンドウの種子50kgを脱皮した後、5倍量の水を加えて24時間浸漬した。ホモミキサー(5,000rpm、30分間)にて種子を砕き、蛋白質と澱粉を抽出した。遠心濾過機を用いて1,500×g、20分間で水に分散している蛋白質や澱粉などの成分を除去し、繊維質を回収した。更に、繊維質に5倍量の水を加えてホモミキサー(3,000rpm、30分間)で攪拌し、遠心濾過(1,500×g、20分間)により繊維質を回収した。この操作を2回繰り返し、凍結乾燥して10kgのエンドウ繊維を得た。エンドウ繊維80部を920部の水に分散し、塩酸を用いてpH5に調整した後、120℃にて90分間加熱して水溶性エンドウ多糖類を抽出した。エンドウ繊維100部に対して0.2部に相当するアミラーゼ(「Fungamyl」ノボザイム社製)を抽出液に添加し、澱粉を分解した後、不溶性繊維を遠心分離(5,000rpm、30分間)にて除去して上清を回収した。この上清に60重量%になるようにエタノールを加えて水溶性エンドウ多糖類を沈殿させ、90重量%の含水エタノールで精製し、得られた沈殿を風乾して水溶性エンドウ多糖類を得た。
得られた水溶性エンドウ多糖類の分析値を表1に示した。
(表1)水溶性エンドウ多糖類の分析値
Figure 0006123728
(実施例1)蒸し餃子の製造
準強力粉(「特飛龍」日清製粉株式会社製)100部、製造例1の水溶性エンドウ多糖類1.5部、食塩1部、水38部をミキサーを用いて12分間混合した。生地を製麺機に2回通した後室温で15分間熟成させ、更に製麺機に4回通して厚さ2.8mmまで圧延した。生地は、伸びが良好で収縮が少なく、高い作業性を有していた。生地を直径10cm の円形に型抜きし、餃子の皮を得た。豚ひき肉100部、キャベツ200部、ニラ100部、酒5部、塩2.5部を混合して餃子の具材とし、これを餃子の皮で9g包んだものを餃子とした。餃子を蒸し器に入れ強火で10分間蒸し、蒸し餃子Aを得た。
(実施例2〜3)蒸し餃子の製造(2)
実施例4の餃子の皮の製造において、厚さを2.8mmとし、水溶性エンドウ多糖類の添加量を、0.5部、5部とした以外は同様の方法で餃子の皮を得、これに餃子の具材を9g包み、蒸し器に入れ強火で10分間蒸し、それぞれ、蒸し餃子B、Cを得た。
(実施例4)茹で餃子の製造
実施例1の餃子の皮で餃子の具材を9g包んだ後、沸騰した湯中で5分間茹で、湯を切って茹で餃子Aを得た。
(比較例1〜2)
実施例1、4の麺皮包餡食品の製造において、水溶性エンドウ多糖類を添加しない以外は同様の方法、配合にて餃子を製造し、蒸し餃子Z、茹で餃子Zを得た。
(比較例3〜4)
実施例1、4の麺皮包餡食品の製造において、水溶性エンドウ多糖類を水溶性大豆多糖類(「ソヤファイブ-S-DN」不二製油株式会社製)で代える以外は同様の方法、配合にて餃子を製造し、蒸し餃子Y、茹で餃子Yを得た。
(麺皮包餡食品の官能評価)
実施例1〜4、比較例1〜4で製造した麺皮包餡食品を官能評価に供した。官能評価では、10人のパネラーによる評価点の平均値を算出し、各項目に関する評価とした。
・歯切れ
5点:曳きがなく、歯切れが非常に良好である。
4点:曳きがなく、歯切れが良好である。
3点:曳きが殆どなく、歯切れは標準的である。
2点:曳きがあり、歯切れが悪い。
1点:曳きが強く、歯切れが非常に悪い。
・ソフト感
5点:ソフト感が強く、非常に良好である。
4点:ソフト感があり、良好である。
3点:ソフト感が感じられるが、強くはない。
2点:ソフト感が弱く、固めである。
1点:ソフト感がなく、固い。

歯切れ感、ソフト感とも調理後4時間後の評価の平均点が3.6点以上ある場合、合格と判断した。
実施例1〜4及び比較例1〜4の蒸し餃子及び茹で餃子について、調理直後、調理4時間後(室温22℃中に静置)に官能評価を行った。結果を表2に示した。
(表2)蒸し餃子及び茹で餃子の官能評価
Figure 0006123728
蒸し餃子A〜Cは、皮の曳きがなくソフトで歯切れ良い食感であった。特に4時間、8時間が経過した後でも、皮の硬化や乾燥が抑制されており、良好な柔らかさと歯切れが持続されており、蒸し餃子YやZよりも優れた食感であった。柔らかさと歯切れが失われなかった。
茹で餃子Aも同様に、茹で餃子Z、Yに対して曳きのないソフトな食感が調理の直後から8時間後まで持続しており、評価が良好であった。
茹で餃子Aを、調理の後に湯を切り4℃で5時間冷蔵保存した場合においても、同様の処理を行った茹で餃子Z、Yに対して皮のソフト感と歯切れが明確に優れていた。
本発明の麺皮類や麺皮包餡食品は、歯切れ、ソフト感が優れ、また、保存後においてもこれらの効果を持続することができる。従って、製造から調理までの保存工程、また調理から喫食までの時間経過に伴う品質の劣化を抑えることができるため、食品の提供者、消費者の両者にとって高い価値を持つ麺皮包餡食品を提供することができる。

Claims (4)

  1. 水溶性エンドウ多糖類(不溶性食物繊維を分離していない態様のものを除く。)を含有することを特徴とする、茹で調理あるいは蒸し調理される麺皮包餡食品に用いる麺皮類。
  2. 水溶性エンドウ多糖類を穀粉に対して0.1〜5重量%含有する、請求項1記載の麺皮類。
  3. 請求項1に記載の麺皮類に具材を包んでなる麺皮包餡食品。
  4. 水溶性エンドウ多糖類(不溶性食物繊維を分離していない態様のものを除く。)を穀粉に対して0.1〜5重量%配合し、生地を調製することを特徴とする茹で調理あるいは蒸し調理される麺皮包餡食品に用いる麺皮類の製造方法。
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