JP5991179B2 - 液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置 - Google Patents

液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置 Download PDF

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Description

本発明は、ノズルからインクを噴射させる液体噴射ヘッド、及び、これを備えた液体噴射装置に関する。
液体噴射装置は液体噴射ヘッドを備え、この噴射ヘッドから各種の液体を噴射する装置である。この液体噴射装置としては、例えば、インクジェット式プリンターやインクジェット式プロッター等の画像記録装置があるが、最近ではごく少量の液体を所定位置に正確に着弾させることができるという特長を生かして各種の製造装置にも応用されている。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターを製造するディスプレイ製造装置,有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイやFED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極形成装置,バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置に応用されている。そして、画像記録装置用の記録ヘッドでは液状のインクを噴射し、ディスプレイ製造装置用の色材噴射ヘッドではR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を噴射する。また、電極形成装置用の電極材噴射ヘッドでは液状の電極材料を噴射し、チップ製造装置用の生体有機物噴射ヘッドでは生体有機物の溶液を噴射する。
この種の液体噴射ヘッドには、圧力室が形成された圧力室形成基板と、ノズルが開口されたノズル基板との間に、連通基板を設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。これらの基板は接着剤を介して接合されている。また、連通基板には、圧力室とノズルとを連通させる連通孔が設けられている。そして、このような液体噴射ヘッドでは、圧電素子(圧力発生手段の一種)を駆動することにより圧力室内の液体に圧力変化を与え、この圧力変化を利用して圧力室内の液体を、連通孔を介してノズルから噴射させている。
ところが、連通基板とノズル基板とを接着剤を用いて接着する際に、ノズル基板からはみ出た接着剤が毛細管力により連通孔の内角部分に沿って上側(圧力室側)に進行する場合があった。このため、連通基板とノズル基板とを接着した後において、硬化した接着剤が連通孔の内面に残ることがあった。特に、圧力室中央側の内面に残った接着剤は、その先端部が圧力室内に露出するため、圧力室からノズルに向かう液体の流れによって、先端部側から剥がれる虞があった。この剥がれた接着剤が、ノズルから外側に突出すると、ノズルから噴射される液滴の噴射特性(液滴の量、飛翔速度、飛翔方向等)がばらつく虞があった。また、この接着剤がノズルを目詰まりさせる虞もあった。
そこで、図8に示すように、連通孔92の一側(圧力室中央側)の内面に傾斜面を設け、接着剤の進行を防止する技術が開発されている。具体的には、図8に示すように、連通基板90に設けられた連通孔92を、圧力室側の第1の流路部93と、この第1の流路部93よりも幅が広いノズル98側の第2の流路部94と、第1の流路部93と第2の流路部94とを接続する傾斜面を有する中間流路部95とから構成する。これにより、連通基板90とノズル基板91とを接着する際に、第2の流路部94の内面を上側に向けて接着剤が進行したとしても、中間流路部95の傾斜面でその進行を緩和することができる。その結果、接着剤の剥がれを抑制でき、ノズル98から噴射される液滴の噴射特性の変化やノズル98の目詰まりを抑えることができる。
特開平8−258258号公報
しかしながら、上記のように連通孔92を有する液体噴射ヘッドでは、液体を流路内に充填する際(液体の初期充填時)に、連通孔92の内部における傾斜面96の下方に気泡が溜まる不具合があった。詳しく説明すると、液体の初期充填時において圧力室側から液体が供給されると、図8(a)に示すように、第1の流路部93の上方から下方に向けて液体Lが進行する。ここで、この液体Lの液面は、その両端部が液体Lの連通孔92の内面に対する接触角で、当該内面に接しながら移動するため、断面が円弧状になる。なお、図8および図9では、液体Lの連通孔92の内面に対する接触角が90度より小さい場合、すなわち、連通基板90が親液体性の場合を示している。その後、液面の一端が中間流路部95の傾斜面96に差し掛かると、図8(b)に示すように、液体Lの進行方向が斜め方向に変化する。そして、液体Lは、図9(a)に示すように、液面の他端が第2の流路部94の下端、すなわち、ノズル基板91に到達するまで斜め方向に進行する。液面の他端がノズル基板91に到達すると、図9(b)に示すように、この他端がノズル基板91に沿って横方向に移動し始め、液体Lの進行方向が略横方向になる。この液面の他端部がノズル98に到達すると、ノズル98内に液体Lが充填され、液体Lの初期充填が完了する。このとき、図9(c)に示すように、連通孔92の内部の隅々まで液体Lが充填されず、傾斜面96の下方に気泡が取り残される。このような、気泡bが連通孔92内に残留すると、インクの噴射不良の原因となっていた。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧力室からノズルに至る流路内に液体を充填する際、気泡が残留することを抑制ができる液体噴射ヘッド、及び、液体噴射装置を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、圧力発生手段の駆動により容積が変化する圧力室および該圧力室の下流側の端部に連通する連通流路が形成された第1の部材と、
ノズルが形成され、該ノズルが前記連通流路と連通する状態で第1の部材の一側の面に接合されて前記連通流路の底面を区画する第2の部材と、
を備えた液体噴射ヘッドであって、
前記連通流路は、前記圧力室側の第1の流路部と、該第1の流路部よりも幅が広い前記ノズル側の第2の流路部と、前記第1の流路部と前記第2の流路部とを接続する傾斜面を有する中間流路部と、を有し、
前記第2の流路部の長さをH、該第2の流路の最大幅をW、前記連通流路の底面に平行な仮想面と前記傾斜面とのなす角をθとしたとき、
H−Wtan(π/4−θ/2)≧0…(1)
を満たすことを特徴とする。
また、本発明は、圧力発生手段の駆動により容積が変化する圧力室および該圧力室の下流側の端部に連通する連通流路が形成された第1の部材と、
ノズルが形成され、該ノズルが前記連通流路と連通する状態で第1の部材の一側の面に接合されて前記連通流路の底面を区画する第2の部材と、
を備えた液体噴射ヘッドであって、
前記連通流路は、前記圧力室側の第1の流路部と、該第1の流路部よりも幅が広い前記ノズル側の第2の流路部と、前記第1の流路部と前記第2の流路部とを接続する傾斜面を有する中間流路部と、を有し、
前記第2の流路部の長さをH、該第2の流路の最大幅をW、前記中間流路部の長さをh、該中間流路部の幅の変化長をwとしたとき、
h/w≧(W−H)/(2HW)…(2)
を満たすことを特徴とする。
本発明によれば、連通流路が上記(1)式または(2)式を満たすので、圧力室からノズルに至る流路内に液体を充填する際に、当該流路内に気泡が残留することを抑制できる。
上記構成において、前記連通流路内を流れる液体の当該連通流路の内面に対する接触角をφ、前記第2の流路の最大幅方向と交差する方向の最小幅をTとしたとき、
H−Wtan(π/4−θ/2)≧(T/2)×(1/cosφ−tanφ)…(3)
を満たすことが望ましい。
この構成によれば、連通流路が上記(3)式を満たすので、圧力室からノズルに至る流路内に液体を充填する際に、当該流路内に気泡が残留することをより確実に防止できる。
そして、本発明の液体噴射装置は、上記各構成の液体噴射ヘッドを備えたことを特徴とする。
プリンターの構成を説明する斜視図である。 記録ヘッドの要部断面図である。 (a)は図2における領域Aの拡大図、(b)は(a)におけるB−B断面図である。 連通孔内に液体が充填される様子を説明する模式図。 連通孔内に液体が充填される様子を説明する模式図。 他の実施形態における連通孔内に液体が充填される様子を説明する模式図。 他の実施形態における連通孔内に液体が充填される様子を説明する模式図。 従来の液体噴射ヘッドにおける連通孔内に液体が充填される様子を説明する模式図。 従来の液体噴射ヘッドにおける連通孔内に液体が充填される様子を説明する模式図。
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下の説明では、本発明の液体噴射装置として、液体噴射ヘッドの一種であるインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッド)を搭載したインクジェット式プリンター(以下、プリンター)を例に挙げる。
プリンター1の構成について、図1を参照して説明する。プリンター1は、記録紙等の記録媒体2(着弾対象の一種)の表面に対して液体状のインクを噴射して画像等の記録を行う装置である。このプリンター1は、記録ヘッド3、この記録ヘッド3が取り付けられるキャリッジ4、キャリッジ4を主走査方向に移動させるキャリッジ移動機構5、記録媒体2を副走査方向に移送する搬送機構6等を備えている。ここで、上記のインクは、有機溶剤を主成分とする溶剤系インクや水を主成分とする水系インク等があり、液体供給源としてのインクカートリッジ7に貯留されている。このインクカートリッジ7は、記録ヘッド3(後述するホルダ14)に対して着脱可能に装着される。なお、インクカートリッジ7がプリンター1の本体側に配置され、当該インクカートリッジ7からインク供給チューブを通じて記録ヘッド3に供給される構成を採用することもできる。
上記のキャリッジ移動機構5はタイミングベルト8を備えている。そして、このタイミングベルト8はDCモーター等のパルスモーター9により駆動される。従ってパルスモーター9が作動すると、キャリッジ4は、プリンター1に架設されたガイドロッド10に案内されて、主走査方向(記録媒体2の幅方向)に往復移動する。キャリッジ4の主走査方向の位置は、位置情報検出手段の一種であるリニアエンコーダー11によって検出され、その検出信号、即ち、エンコーダーパルス(位置情報の一種)をプリンター1の制御部(図示せず)に送信する。キャリッジ4の移動範囲内における記録領域よりも外側の端部領域には、キャリッジ4の走査の基点となるホームポジションが設定されている。プリンター1は、このホームポジションから反対側の端部へ向けてキャリッジ4が移動する往動時と、反対側の端部からホームポジション側にキャリッジ4が戻る復動時との双方向で記録紙5上に文字や画像等を記録する所謂双方向記録を行う。
次に記録ヘッド2について説明する。図2は、記録ヘッド2の要部断面図である。本実施形態における記録ヘッド2は、ヘッドケース15、コンプライアンス基板16、保護基板17、圧電素子18(圧力発生手段の一種)、振動板19、流路基板20、連通基板21およびノズル基板22を積層して構成されている。なお、以下の説明では、便宜上、ヘッドケース15側を上、ノズル基板22側を下として説明する。また、各基板は、接着剤によって接合(接着)されている。
ヘッドケース15は、インクカートリッジ3からのインクを後述するリザーバー32に供給するケース流路24が形成された部材である。ケース流路24は、下端側がリザーバー32の上部(天井部分)と連通され、上端側がインクカートリッジ3に接続されるインク導入針(図示せず)と連通されている。また、ヘッドケース15の下面のうちコンプライアンス基板16の封止部29(後述)に対向する部分には、封止膜26の可撓変形を阻害しない程度の封止空間25が備えられている。
コンプライアンス基板16は、可撓性を有する封止膜26と金属等の硬質の部材からなる固定基板27とを積層した基板であり、ヘッドケース15の下面に接合(接着)されている。このコンプライアンス基板16には、リザーバー32にインクを導入するインク導入口28が厚さ方向に貫通して形成されている。また、コンプライアンス基板16のリザーバー32に対向する領域のうちインク導入口28以外の領域は、固定基板27が除去された封止膜26のみからなる封止部29となっている。これにより、リザーバー32は可撓性を有する封止部29により封止され、コンプライアンスが得られることになる。
保護基板17は、圧電素子18に対向する領域にその変位を阻害しない程度の大きさの圧電素子保持空間30が形成された基板であり、コンプライアンス基板16の下面に接合(接着)されている。この保護基板17には、後述する流路基板20の連通空部37に対向する位置に、厚さ方向に貫通した導入空部31が設けられている。導入空部31は連通空部37と連通し、圧力室35にインクを供給するリザーバー32(共通液室)を構成する。
振動板19は、弾性膜および絶縁体膜が積層された弾性基板であり、保護基板17の下面に接合(接着)されている。この振動板19の導入空部31に対応する部分は上下に貫通しており、導入空部31と連通空部37とを連通させている。また、振動板19(絶縁体膜)上であって、後述する流路基板20の圧力室35に対向する部分には、下電極膜、圧電体層及び上電極膜が順次積層された圧電素子18が形成されている。圧電素子18には、図示しない配線部材が接続されており、この配線部材を通じて制御部からの駆動信号(駆動電圧)が印加される。この駆動信号の印加によって、圧電素子18が撓み変形し、圧力室35内の容積を変化させる。
流路基板20は、振動板19(弾性膜)の下面に接合(接着)された、シリコン単結晶またはステンレス鋼(SUS)からなる基板である。この流路基板20には、連通空部37、圧力室35、およびインク供給路36が板厚方向に貫通した状態で形成されている。連通空部37は、導入空部31に対応する部分に形成された空部であり、導入空部31と共にリザーバー32を構成している。また、圧力室35は、ノズル列方向に直交する方向に延在した長尺な空部であり、各ノズル44に対応して複数形成されている。そして、圧力室35は、この圧力室35よりも狭い幅で形成されたインク供給路36を介して連通空部37(リザーバー32)と連通している。
連通基板21は、流路基板20の下面に接合(接着)された、シリコン単結晶またはステンレス鋼(SUS)からからなる基板である。連通基板21の圧力室35に対向する部分のうちインク供給路36(リザーバー32)とは反対側(下流側)の端部には、圧力室35とノズル44とを連通させる連通孔39(本発明における連通流路に相当)が板厚方向を貫通した状態で形成されている。本実施形態の連通孔39は、流路基板20と連通板21との接合面側から見て角形状に形成されており、圧力室35の延在方向(ノズル列方向に直交する方向)の幅が圧力室35の延在方向に直交する方向(ノズル列方向)の幅よりも大きくなるように設定されている。そして、この連通孔39の圧力室35の延在方向における幅が、上方から下方に向けて広がるように、圧力室35の中央側(図2における左側)の内面の途中に傾斜面43を形成している。なお、連通孔39の詳しい構成は、後述する。また、流路基板20と連通基板21とが接合された部材が本発明の第1の部材に相当する。
ノズル基板22(本発明における第2の部材に相当)は、連通基板21の下面に接合(接着)された、シリコン単結晶またはステンレス鋼(SUS)からからなる基板である。このノズル基板22によって、連通孔39の底面は区画されている。また、この連通孔39の底面を区画する部分のうち略中央には、ノズル44が開設されている。このノズル44は、ドット形成密度に対応したピッチで列状に開設されている。例えば、360dpiに対応するピッチで360個のノズル44を列設することでノズル列(ノズル群の一種)が構成されている。
なお、連通基板21とノズル基板22とを接着する接着剤は、液体状のエポキシ系接着剤が使用される。この接着剤は、転写印刷等の方法により連通基板21の下面に塗布される。そして、従来の構成では、ノズル基板22と連通基板21とを接着する際に、連通孔39からはみ出した接着剤が、連通孔39の内角部分に沿って上昇する虞がある。ここで、連通孔39の圧力室35の中央側(図2における左側)の内面の上部は、圧力室35の底面と直交しており、接着剤がこの内面に沿って上昇した場合、その上端が圧力室35の底面部分に露出することになる。その後、接着剤が硬化すると、この露出した部分の接着剤がインクの流れによって剥がれ易くなる。しかしながら、本発明では、上記したように連通孔39の圧力室35の中央側の内面の途中に傾斜面43を設けているため、接着剤がこの内面に沿って上昇し難くなっている。これにより、連通孔39における接着剤の剥がれが抑制されている。一方、連通孔39の傾斜面43とは反対側(図2における右側)の内面は、圧力室35のインク供給路36とは反対側(下流側)の壁面と揃えられており、この内面に沿って上昇した接着剤は流路基板20と連通基板21とを接着する接着剤と接続される。このため、この部分の接着剤は剥がれ難くなっている。
そして、上記のような記録ヘッド2では、製造時やインクカートリッジ3の交換時等によって、インクカートリッジ3が接続されると、このインクカートリッジ3内に貯留されたインクが、ケース流路24、インク導入口28、リザーバー32、インク供給路36、圧力室35、連通孔39、及びノズル44内に供給される。この状態で圧電素子18を駆動させると、圧力室35内のインクに圧力変動(容積の変化)が生じる。この圧力変動を利用することで連通孔39を介してノズル44からインクを噴射している。
次に、本発明の連通孔39について詳しく説明する。図3(a)は図2における領域Aの拡大図であり、図3(b)は図3(a)におけるB−B断面図である。なお、図3(b)は説明の都合上、インクInが充填される途中の図を表わしている。
連通孔39は、圧力室35側の第1の流路部40と、該第1の流路部40よりも圧力室35の延在方向(ノズル列に直交する方向)における幅が広いノズル44側の第2の流路部41と、第1の流路部40と第2の流路部41とを接続する傾斜面43を有する中間流路部42と、から構成されている。第1の流路部40は、圧力室35側から連通基板21の途中まで、連通基板21(ノズル基板22)の表面に対して垂直な方向に延在した部分である。すなわち、第1の流路部40を区画する内面は、連通基板21の表面に対して垂直に形成されている。第2の流路部41は、ノズル44側から連通基板21の途中まで、連通基板21(ノズル基板22)の表面に対して垂直な方向に延在した部分である。すなわち、第2の流路部41を区画する内面は、連通基板21の表面に対して垂直に形成されている。一方、中間流路部42は、圧力室35の中央側(図3における左側)の内面が斜めに傾斜した傾斜面43となっており、その他の面が連通基板21の表面に対して垂直に形成されている。この傾斜面43は、圧力室35の中央側における第1の流路部40の内面と、第2の流路部41の内面とを接続する面であり、圧力室35の中央側に向けて下り傾斜している。また、第1の流路部40の傾斜面43側以外の内面、中間流路部42の傾斜面43以外の内面、および第2の流路部41の傾斜面43側以外の内面は、連通基板21の平面内における位置が揃えられており、段差なく接続されている。このため、各流路部の圧力室35の延在方向に直交する方向(ノズル列方向)における幅は、図3(b)に示すように、同じ幅に揃えられている。なお、この幅は、角流路部40〜42の圧力室35の延在方向における幅よりも狭くなっている。
ここで、連通孔39は、図3(a)に示すように、第2の流路部41の長さ(高さ)をH、該第2の流路の最大幅(すなわち圧力室35の延在方向における幅)をW、連通流路の底面に平行な仮想面S(中間流路部42と第2の流路部41との境界面)と傾斜面43とのなす角をθとしたとき、下記の(1)式を満たすように構成されている。
H−Wtan(π/4−θ/2)≧0…(1)
なお、中間流路部42の長さをh、該中間流路部42の幅の変化長(第2の流路の最大幅と第1の流路の最大幅の差)をwとして、上記(1)式と同等の条件を求めると下記の(2)式になる。このため、連通孔39は(2)式も満たすように構成されている。
h/w≧(W−H)/(2HW)…(2)
これにより、ノズル44に至るまでの流路内に最初にインクを充填する際(インクの初期充填時)に、連通孔39内に気泡が残留することを抑制できる。特に、連通孔39は、図3(b)に示すように、内部を流れるインクの当該連通孔39の内面に対する接触角をφ、第2の流路の最大幅方向と交差する方向の最小幅(すなわち圧力室35の延在方向に直交する方向における幅)をTとしたとき、下記の(3)式を満たすように構成されることが望ましい。
H−Wtan(π/4−θ/2)≧(T/2)×(1/cosφ−tanφ)…(3)
これにより、インクの初期充填時に、連通孔39内に気泡が残留することをより確実に抑制できる。
これら(1)式〜(3)式の根拠および導出について以下に説明する。はじめに、図3〜図7を用いて上記(1)式の導出を説明する。なお、図3〜図7に示す実施形態では、インクInの連通孔39の内面に対する接触角が90度より小さい場合、すなわち、連通基板21が親インク性の場合を示している。まず、図4および図5に示す実施形態について説明する。この実施形態では、連通孔39が上記(1)式〜(3)式を満たすように設定されている。インクInの初期充填時において、インクInが記録ヘッド2内の流路の上流側から順次充填され、連通孔39内に至ると、図4(a)に示すように、第1の流路部40を下方に向けて移動し始める。このインクInの液面(空気との境界面)は、インクInの連通孔39の内面に対する接触角で、その両端部が当該内面に接しながら移動するため、断面が上に凸の円弧状になる。ここで、連通孔39の断面において、インクInの液面の一側(図4(a)における左側)の端部と連通孔39の内面との交点をP、インクInの液面の他側(図4(a)における右側)の端部と連通孔39の内面との交点をP′とすると、点Pにおける接触角と点P′における接触角とが等しくなるため、インクInの液面は(第1の流路部40の両側の内面の中心を通る線に対して)左右対称になる。また、PとP′を結ぶ仮想線は、ノズル基板22に対して平行になる。
インクInが進行し、インクInの液面の一側端部(点P)が傾斜面43に到達すると、図4(b)に示すように、この液面の進行方向が斜めに変化する。すなわち、点Pにおける接触角と点P′における接触角が等しくなるように液面が移動し、PとP′を結ぶ仮想線は、ノズル基板22に対して斜めになる。このとき、インクInの液面は、連通孔39の断面において、傾斜面43とこれに対向する内面(第1の流路部40の内面から第2の流路部41の内面まで連続する面)との中心を通る線に対して左右対称になる。そして、図4(b)に示すように、インクInの液面の一側端部(点P)が傾斜面43の下端に到達すると、インクInの液面の他側端部(点P′)はノズル基板22の上面(連通孔39の底面)から距離h2だけ離れた第2の流路部41の途中に位置する。このため、その後、図5(a)に示すように、インクInの液面の一側端部(点P)が第2の流路部41の内面に到達した際に、インクInの液面の他側端部(点P′)は連通孔39の底面に到達せずに、第2の流路部41の内面に位置することになる。すなわち、インクInの液面が第1の流路部40に位置していたときと同様に、連通孔39の断面において、点Pにおける接触角と点P′における接触角とが等しくなるため、インクInの液面が(第2の流路部41の両側の内面の中心を通る線に対して)左右対称になり、PとP′を結ぶ仮想線がノズル基板22に対して平行になる。
その後、インクInの液面が下方に進行すると、インクInの液面の端部側が先に連通孔39の底面に到達し、図5(b)に示すように、ノズル44から空気を排出しながら、この底面の端部から中央部に向けてインクInを満たしていく。そして、図5(c)に示すように、このノズル44から連通孔39内の略全部の空気を排出すると、インクInの充填が完了する。なお、インクInは、ノズル44内の途中まで進行し、メニスカスを形成する。
このように、図8および図9に示す従来の液体噴射ヘッドと異なり、連通孔39の断面において、インクInの液面の一側端部(点P)が傾斜面43の下端に到達した際に、インクInの液面の他側端部(点P′)がノズル基板22の上面(連通孔39の底面)から距離h2だけ離れているため、すなわち、連通孔39の底面に到達していないため、連通孔39内に気泡が残留することを抑制できる。このことから、気泡が残留することを抑制する条件はh2>0となる。
次にh2=0の場合を考察する。図6および図7に示す連通孔39では、図6(b)に示すように、h2=0になるように設定している。すなわち、インクInが進行し、インクInの液面の一側端部(点P)が傾斜面43の下端に到達すると同時に、インクInの液面の他側端部(点P′)が連通孔39の底面に到達するように設定されている。この場合、インクInの液面の一側端部(点P)が第2の流路部41の内面に沿って下方に移動すると共に、インクInの液面の他側端部(点P′)が底面に沿って移動する。このため、図7(a)に示すように、インクInの液面の他側端部(点P′)が先にノズル44に到達する。そして、ノズル44内の途中までインクInが進行し、インクInの充填が完了する。この場合、図7(b)に示すように、僅かな空気が気泡bとして連通孔39内に取り残される可能性がある。しかしながら、気泡bが連通孔39内に取り残されたとしても、この場合の気泡bは従来の液体噴射ヘッドの初期充填時に残る気泡bと比べて少量であるため、その後のフラッシング動作等のメンテナンス処理において、インクInを噴射(吐出)する際に容易に排出することができる。
これらのことから、h2≧0となるように、連通孔39を構成すれば、気泡bが残留することを抑制ができることが分かった。ここで、図3(a)を参照しながら、h2の算出方法について説明する。連通孔39の断面において、傾斜面43の下端の点(傾斜面43と第2の流路部41の内面とが交差する点)をC、傾斜面43の延長線上と傾斜面43と対向する連通孔39(第1の流路部40)の内面との交点をD、このDを頂点とし、辺CDを等辺の1つとする二等辺三角形の残りの点をEとする。また、点Cを通る連通孔39の底面(ノズル基板22)に平行な仮想面Sと、傾斜面43とは反対側の連通孔39の内面との交点をFとする。ここで、連通孔39の断面において、インクInの液面の一側端部(点P)が傾斜面43に位置する場合、インクInの液面は、傾斜面43とこれに対向する内面との中心を通る線、すなわち、二等辺三角形CDEの等辺DCと等辺DEとの間の中線に対して左右対称になる。このため、インクInの液面の一側端部(点P)が傾斜面43の下端(点C)に到達すると、インクInの液面の他側端部(点P′)が点Eに到達することになり、連通孔39の底面から点Eまでの距離がh2になる。
ここで、角DCFがθであるため、幾何学的関係から、角ECFは(π/4−θ/2)であることが分かる。また直角三角形ECFの底辺CFの長さがWであるため、辺EFの長さがWtan(π/4−θ/2)となることが分かる。そして、連通孔39の底面から点Fまでの距離、すなわち第2の流路部41の長さHと、辺EFの長さとの差をとることで距離h2を求めることができる。すなわち、距離h2は下記式になる。
h2=H−Wtan(π/4−θ/2)
これに気泡が残留することを抑制ができる条件h2≧0をあてはめると上記(1)式を導出することができる。
また、h2=0となる境界条件を算出すると、幾何学的関係から下記式になる。
h/w=(W−H)/(2HW)
このため、気泡が残留することを抑制ができる条件は、下記(2)式になる。
h/w≧(W−H)/(2HW)…(2)
ここで、上記したように距離h2が0の場合や小さい場合には、少量の気泡が連通孔39内に残留する可能性がある。このため、距離h2は、ある程度の長さを有することが望ましい。ここで、シミュレーションの結果によれば、圧力室35の延在方向に直交する断面(図3(a)におけるB−B断面)において、第2の流路部41におけるインクInの液面の端部と中央(最も上に凸の部分)との距離をh3としたとき(図3(b)参照)、h2≧h3を満たしていれば、気泡が残留することをより確実に防止できることが分かった。この条件に付いて、図3(b)を参照しながら説明する。圧力室35の延在方向に直交する断面において、第2の流路部41まで進行したインクInの液面は、(第2の流路部41の両側の内面の中心を通る線に対して)左右対称な、上に凸の円弧状になる。このため、圧力室35の延在方向に直交する断面からみれば、液面が上下方向に距離h3の広がりを持つことになる。この広がりをマージンとして取っておけば、図4(b)のようにインクInの液面の一側端部が傾斜面43の下端に到達した場合において、他側端部が連通孔39の底面に到達しない状態に確実にすることができる。すなわち、h2≧h3を満たしていれば、気泡が残留することをより確実に防止できる。
次にh3について、算出する。圧力室35の延在方向に直交する断面において、インクInの液面を円弧とする仮想円の中心をOとし、インクInの液面の一側(図3(b)における左側)の端部と第2の流路部41の内面との交点をQ、インクInの液面の他側(図3(b)における右側)の端部と第2の流路部41の内面との交点をQ′とする。また、点Oから線分QQ′に下ろした垂線と線分QQ′との交点をGとする。インクInの連通孔39の内面に対する接触角φとすると、幾何学的関係から、角OQGはφであることが分かる。また、線分QQ′の長さは、圧力室35の延在方向に直交する方向における第2の流路の幅(第2の流路の最小幅)Tであるので、辺QGの長さは(T/2)となる。そして、直角三角形OQGの辺OQの長さ(すなわち仮想円の半径)は、(T/2)×(1/cosφ)になる。また、辺OGの長さは、(T/2)×(tanφ)になる。ここで、仮想円の半径と、辺OGの長さとの差をとると、距離h3を求めることができる。すなわち、h3は下記式になる。
h3=(T/2)×(1/cosφ−tanφ)
この式に上記した条件h2≧h3をあてはめると上記した(3)式を導出することができる。すなわち、上記(3)式を満たせば、連通孔39内に気泡が残留することをより確実に防止できる。
なお、上記のような連通孔39は、連通基板21がステンレス鋼(SUS)からなる場合、先端側を根元部分よりも径を小さくし、途中に傾斜面43に対応した面を設けたパンチを用いて、連通基板21の一側(第2の流路部41側)の面から打ち抜くことで作成できる。また、連通基板21がシリコン単結晶からなる場合、エッチング処理によって作成できる。この場合、例えば、基板表面が結晶方位面(110)面であるシリコンウェハーを用い、エッチング処理により各流路部を作成すると共に、基板表面に対して約30度傾斜した(111)面を連通孔39内の傾斜面43の位置に残すことで、上記のような連通孔39を作成することができる。この場合、結晶方位面(111)面を傾斜面43として利用することができるため、上記のような連通孔39の作成が容易になる。
ところで、上記した実施形態では、圧力発生手段として、所謂撓み振動型の圧電素子18を例示したが、これには限られず、例えば、所謂縦振動型の圧電素子を採用することも可能である。その他、圧力発生手段としては、発熱によりインクを突沸させることで圧力変動を生じさせる発熱素子や、静電気力により圧力室の区画壁を変位させることで圧力変動を生じさせる静電アクチュエーターなどの圧力発生手段を採用する構成においても本発明を適用することが可能である。
そして、以上では、液体噴射ヘッドの一種であるインクジェット式記録ヘッド2を備えたプリンター1を例に挙げて説明したが、本発明は、他の液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用することができる。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等を備えた液体噴射装置にも本発明を適用することができる。
1…プリンター,4…キャリッジ,7…インクカートリッジ,15…ヘッドケース,16…コンプライアンス基板,17…保護基板,18…圧電素子,19…振動板,20…流路基板,21…連通基板,22…ノズル基板,24…ケース流路,25…封止空間,26…封止膜,27…固定基板,28…インク導入口,29…封止部,30…圧電素子保持空間,31…導入空部,32…リザーバー,35…圧力室,36…インク供給路,37…連通空部,39…連通孔,40…第1の流路部,41…第2の流路部,42…中間流路部,43…傾斜面,44…ノズル,45…アクチュエーターユニット

Claims (4)

  1. 圧力発生手段の駆動により容積が変化する圧力室および該圧力室の下流側の端部に連通する連通流路が形成された第1の部材と、
    ノズルが形成され、該ノズルが前記連通流路と連通する状態で第1の部材の一側の面に接合されて前記連通流路の底面を区画する第2の部材と、
    を備えた液体噴射ヘッドであって、
    前記連通流路は、前記圧力室側の第1の流路部と、該第1の流路部よりも幅が広い前記ノズル側の第2の流路部と、前記第1の流路部と前記第2の流路部とを接続する傾斜面を有する中間流路部と、を有し、
    前記第2の流路部の長さをH、該第2の流路の最大幅をW、前記連通流路の底面に平行な仮想面と前記傾斜面とのなす角をθとしたとき、
    H−Wtan(π/4−θ/2)≧0
    を満たすことを特徴とする液体噴射ヘッド。
  2. 圧力発生手段の駆動により容積が変化する圧力室および該圧力室の下流側の端部に連通する連通流路が形成された第1の部材と、
    ノズルが形成され、該ノズルが前記連通流路と連通する状態で第1の部材の一側の面に接合されて前記連通流路の底面を区画する第2の部材と、
    を備えた液体噴射ヘッドであって、
    前記連通流路は、前記圧力室側の第1の流路部と、該第1の流路部よりも幅が広い前記ノズル側の第2の流路部と、前記第1の流路部と前記第2の流路部とを接続する傾斜面を有する中間流路部と、を有し、
    前記第2の流路部の長さをH、該第2の流路の最大幅をW、前記中間流路部の長さをh、該中間流路部の幅の変化長をwとしたとき、
    h/w≧(W−H)/(2HW)
    を満たすことを特徴とする液体噴射ヘッド。
  3. 前記連通流路内を流れる液体の当該連通流路の内面に対する接触角をφ、前記第2の流路の最大幅方向と交差する方向の最小幅をTとしたとき、
    H−Wtan(π/4−θ/2)≧(T/2)×(1/cosφ−tanφ)
    を満たすことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
  4. 請求項1から請求項3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドを備えたことを特徴とする液体噴射装置。
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