以下の説明は本質的には単なる例示であり、本開示、応用又は使用を制限するためのものではない。
技術に関する以下の説明は、本質的には1つ又は複数の発明の主題、製造及び使用の単なる例示であり、本出願で請求されるいずれの具体的発明又は本出願に対する優先権を主張するために出願できる他の出願若しくはそれらに付与された特許の範囲、応用又は使用を制限するためのものではない。本明細書に記載する技術の説明を吟味するにあたっては、以下の定義及び非限定的なガイドラインを考慮する必要がある。
本明細書で使用される見出し(「導入」及び「要約」等)及び副見出しは、単に本技術内のトピックの一般的組織化を目的としたものであり、本技術の開示又はそのいずれの態様を制限することを目的としたものではない。特に、「導入」に開示された主題は、新規の技術を含むことができ、本技術の詳細を構成することはできない。「要約」に開示された主題は本技術又はそのいずれの実施形態の前半位の包括的又は完全な開示ではない。本明細書のある節内での材料の分類又は議論は、便宜のためであり、特定の有用性を有する場合に行われている。いずれの所定の組成物において使用される際に、材料が本明細書における分類に従って必ず又は単独で機能しなければならないという判断は下されるべきではない。
本明細書における引用文献の引用は、これらの引用文献が本技術であること又は本明細書で開示される技術の特許性にいずれの関連を有することを認めるものではない。導入において引用した引用文献の内容のいずれの議論は、引用文献の著者が行った主張の概要を提供することのみを、目的としており、これら引用文献の内容の正確性に関する承認を構成するものではない。本明細書の「発明を実施するための形態」の節で引用した全ての引用文献は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
説明及び具体的実施例は、本技術の実施形態を示すものであるが、単に例示のみを目的とするものであり、本技術の範囲を制限するためのものではない。更に、言及した特徴を有する複数の実施形態の詳細は、追加の特徴を有する他の実施例又は言及した特徴の異なる組み合わせを組み込む他の実施形態を排除することを目的としたものではない。具体的実施例は、本技術の組成物及び方法を作製及び使用する方法を説明する目的で提供されるものであり、明示的に言及されていない限り、本技術の所定の実施形態を作製若しくは試験したこと又はしていないことを示すものではない。
本明細書で使用する単語「好ましい(preferred)」及び「好ましくは(preferably)」は、特定の状況下で特定の利益をもたらす本技術の実施形態を表すものである。しかしながら、同一の又は他の状況下で他の実施形態も好ましい場合がある。更に、1つ又は複数の好ましい実施形態の詳細は、他の実施形態が役に立たないことを暗示するものではなく、本技術の範囲から他の実施形態を排除するためのものではない。
本明細書で使用する全ての組成百分率は、特に指定しない限り全組成物の重量百分率である。本明細書で使用する単語「含む(include)」及びその変形は非限定的なものであり、従ってリスト中の品目の詳細は、本技術の材料、組成物、デバイス及び方法として使用できる他の同様の品目を排除するためのものではない。同様に、用語「できる(can)」及び「し得る、してよい(may)」並びにこれらの変形は非限定的なものであり、従って、実施形態が特定の要素又は特徴を備えることができる又は備えてよいという詳細は、これらの要素又は特徴を含まない本技術の他の実施形態を排除するものではない。
具体的なパラメータ(温度、分子量、重量百分率等)の値及び値の範囲は、本明細書で使用する他の値及び値の範囲を排除するものではない。所定のパラメータに対する2つ以上の具体的かつ例示的な値によって、パラメータに関して要求できる値の範囲の終点を定義できると考えられる。例えば、本明細書においてパラメータXが値Aを有するものと例示され、かつ値Zも有するものと例示される場合、パラメータXは約A〜約Zの値の範囲を有してよいと考えられる。同様に、あるパラメータに対する値の2つ以上の範囲(これらの範囲が入れ子になっているか、重複しているか又は別個のものであるかに関わらず)の開示により、開示する範囲の終点を用いて要求され得る値に対する全ての可能な範囲の組み合わせを包含することが考えられる。例えば、本明細書においてパラメータXが1〜10又は2〜9又は3〜8の範囲内の値を有するものと例示される場合、パラメータXは、1〜9、1.1〜9.9、1〜8、1〜3、1〜2、2〜10、2〜8、2〜3、3〜10、及び3〜9を含む、値の他の範囲を有してよいと考えられる。
本明細書において、非限定的な用語「備える(comprising)」は、用語「含む(including)」「含む(containing)」又は「有する(having)」の同義語として、本発明を説明及び請求するために使用されるが、代替として本発明又は本発明の実施形態は、列挙した成分「からなる(consisting of)」又は「から本質的になる(consisting essentially of)」等のより限定的な用語を用いて説明してよい。
略語及び定義
以下の略語及び用語は、全体を通して以下に示す意味を有する。
記号「−」は一重結合を意味し、記号「=」は二重結合を意味し、記号「≡」は三重結合を意味し、「−−−」は一重結合及び任意に二重結合を意味する。化学構造を図示又は説明する際、明示的に言及されていない限り、全ての炭素は4価となるように水素置換を有するものと仮定する。
本発明の化合物に関する「投与(administration)」及びその変形(例えば、化合物を「投与すること(administering)」)は、化合物又は化合物のプロドラッグを、治療を必要とする動物の系に導入することを意味する。本発明の化合物又はそのプロドラッグを1つ又は複数の他の作用剤(例えば抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗生物質等)と組合せて提供する場合、「投与」及びその変形はそれぞれ、化合物又は化合物のプロドラッグ及び他の作用剤の同時導入及び順次導入を含むものとして理解される。
基「R」が例えば以下の式のような環系上に「浮いている」ように図示される場合、特に定義されていない限り、置換基「R」は環系のいずれの原子上にあってよく、安定した構造が形成される限りにおいて、環原子のうちの1つから、図示した、暗示した又は明確に定義した水素を置換することを想定している。
基「R」が例えば以下の複数の式のような、縮合環又は有橋環系上に浮いているように図示される場合、特に定義されていない限り、置換基「R」は環系のいずれの原子上にあってよく、安定した構造が形成される限りにおいて、環原子のうちの1つから、図示した水素(例えば以下の式の−NH−)、暗示した水素(例えば以下の式のように、水素は図示されていないが存在するものとして理解される)、又は明確に定義した水素(例えば以下の式の場合、「Z」は=CH−と等しい)を置換することを想定している。図示した例では、「R」基は縮合環又は有橋環系の5員又は6員環上にあってよい。
以下の式のように、基「R」が飽和炭素を含む環系上に存在するように図示されている場合、本例では、「y」は2個以上であってよく、これらがそれぞれ環上の図示した、暗示した又は明確に定義した水素を置換することを想定しており;特に定義されていない限り、結果としてできる構造が安定である場合、2個の「R」が同一の炭素上にあってよい。別の例では、同一の炭素上の2個のRがこの炭素を含んでおり、これが環を形成してよく、例えば式に図示した環とスピロ環状構造を生成してよい。
「アルケニル」又は「低級アルケニル」は、2〜8個の炭素原子及び少なくとも1つの二重結合を有する直鎖又は分枝鎖炭化水素ラジカルを意味し、エテニル、プロペニル、1−ブタ−3−エニル、1−ペンタ−3−エニル、1−ヘキサ−5−エニル等を含む。
「アルケニルカルボニル」は、C(O)R基を意味し、ここでRは、本明細書で定義するようにアルケニルである。
「アルケニルオキシ」又は「低級アルケニルオキシ」は−OR基を意味し、ここでRは、本明細書で定義するようにアルキルである。代表例は、メトキシ、エトキシ、1−メトキシプロペ−1−エン−3−イル、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロポキシ、シクロヘキシルオキシ等を含む。
「アルコキシ」又は「低級アルコキシ」は−OR基を意味し、ここでRは、本明細書で定義するようにアルキルである。代表例は、メトキシ、エトキシ、1−メトキシプロペ−1−エン−3−イル、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロポキシ、シクロヘキシルオキシ等を含む。
「アルコキシアルキル」は、本明細書で定義するように1個、2個又は3個のアルコキシ基で置換された、本明細書で定義するようなアルキル基を意味する。
「アルコキシカルボニル」は−C(O)OR基を意味し、ここでRは、本明細書で定義するようにアルキルである。
「アルコキシカルボニルアルキル」は、本明細書で定義するように1個、2個又は3個のアルコキシカルボニル基で置換された、本明細書で定義するようなアルキル基を意味する。
「アルキル」又は「低級アルキル」は、1〜8個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖炭化水素基を意味する。低級アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル等を含む。(「C0〜C6−アルキル」におけるような)「C0」アルキルは共有結合である。「C6アルキル」は例えばn−ヘキシル、iso−ヘキシル等を表す。
「アルキルアミノ」は−NHRラジカルを意味し、ここでRは、本明細書で定義するようにアルキルであるか、又はそのN−オキシド誘導体、例えばメチルアミノ、エチルアミノ、n−、iso−プロピルアミノ、n−、iso−、tert−ブチルアミノ、若しくはメチルアミノ−N−オキシド等である。
「アルキルアミノアルキル」は、本明細書で定義するように、1個又は2個のアルキルアミノ基で置換されたアルキル基である。
「アルキルアミノアルキルオキシ」は−OR基を意味し、ここでRは、本明細書で定義するようにアルキルアミノアルキルである。
「アルキルカルボニル」はC(O)R基を意味し、ここでRは、本明細書で定義するようにアルキルである。
「アルキルカルボニルアミノ」は−NRC(O)R’基を意味し、ここでRは本明細書で定義するように水素又はアルキルであり、R’は本明細書で定義するようにアルキルである。
「アルキレン」は、不飽和結合を含まず、2〜8個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝鎖2価炭化水素を意味する。アルキレンの例は、エト−ジイル(−CH2CH2−)、プロポ−1,3−ジイル(−CH2CH2CH2−)、2,2−ジメチルプロポ−1,3−ジイル(-CH2C(CH3)2CH2−)等を含む。
「アルキルスルホニル」は−S(O)2R基を意味し、ここでRは、本明細書で定義するようにアルキルである。
「アルキルチオ」は−SR基を意味し、ここでRは、本明細書で定義するようにアルキルである。アルキルチオの例は、メチルチオ及びエチルチオ等を含む。
「アルキルチオアルキル」は、本明細書で定義するように、1個又は2個のアルキルチオ基で置換されたアルキル基を意味し、例えば2−(メチルチオ)−エチル及び2−(エチルチオ)−エチルである。
「アルキニル」又は「低級アルキニル」は、2〜6個の炭素原子及び少なくとも1個の三重結合を有する直鎖又は分枝鎖炭化水素ラジカルを意味し、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチン−2−イル等を含む。
「アミノ」は−NH2を意味する。
「アミノアルキル」は、少なくとも1個、具体的には1個、2個又は3個のアミノ基で置換されたアルキル基を意味する。
「アミノアルキルオキシ」は−OR基を意味し、ここでRは、本明細書で定義するようにアミノアルキルである。
「アリール」は1価6〜14員モノ−又はビ−炭素環を意味し、ここで一環式環は芳香族であり、二環式環内の環のうちの少なくとも1つは芳香族である。代表例はフェニル、ナフチル及びインダニル等を含む。
「アリールアルキル」は、本明細書で定義するように1個又は2個のアリール基で置換された、本明細書で定義するようなアルキル基である。例にはベンジル、フェネチル、フェニルビニル、フェニルアリル等を含む。
「アリールオキシ」は−OR基を意味し、ここでRは、本明細書で定義するようにアリールである。
「アリールアルキルオキシ」は−OR基を意味し、ここでRは、本明細書で定義するようにアリールアルキルである。
「アリールスルホニル」は−SO2R基を意味し、ここでRは、本明細書で定義するようにアリールである。
「カルボキシアルキル」は、1個、2個又は3個の−C(O)OH基で置換された、本明細書で定義するようなアルキル基を意味する。
「カルボキシエステル」は−C(O)OR基を意味し、ここでRは、それぞれ本明細書で定義された低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シクロアルキル、アリール又はアリールアルキルである。代表例はメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、及びベンジルオキシカルボニル等を含む。
「シアノアルキル」は、少なくとも1個、具体的には1個、2個又は3個のシアノ基で置換された、本明細書で定義するようなアルキル、アルケニル又はアルキニルラジカルを意味する。
「シクロアルキル」は、3〜13個の炭素原子を有する単環式又は多環式炭化水素ラジカルを意味する。シクロアルキルは飽和又は部分的に不飽和であり得るが、芳香族環を含むことはできない。シクロアルキルは縮合環系、有橋環系及びスピロ環系を含む。このようなラジカルの例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルを含む。
「シクロアルキルアルキル」は、本明細書で定義するように1個又は2個のシクロアルキル基で置換されたアルキル基を意味する。代表例は、シクロプロピルメチル及び2−シクロブチル−エチル等を含む。
「シクロアルキルカルボニル」は−C(O)R基を意味し、ここでRは、本明細書で定義するようにシクロアルキルである。
「ジアルキルアミノ」は−NRR’ラジカルを意味し、ここでR、R’は独立して、本明細書で定義するようにアルキルであるか、又はN−オキシド誘導体、若しくは例えばジメチルアミノ、ジエチルアミノ、N,N−メチルプロピルアミノ若しくはN,N−メチルエチルアミノ等の保護化誘導体である。
「ジアルキルアミノアルキル」は、本明細書で定義するように1個又は2個のジアルキルアミノ基で置換されたアルキル基を意味する。
「ジアルキルアミノアルキルオキシ」は−OR基を意味し、ここでRは、本明細書で定義するようにジアルキルアミノアルキルである。
「縮合環系」及び「縮合環」は、有橋環又は縮合環を含む;即ち2個の環がその環構造内に2個以上の共有原子を有する、多環式環系を意味する。本出願において、縮合多環式化合物及び縮合環系は必ずしも全てが芳香族環系ではない。典型的には、ただし必ずではないが、縮合多環式化合物は、例えばナフタレン又は1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン等の近接する一連の原子を共有する。スピロ環系はこの定義による縮合多環式化合物ではないが、本発明の縮合多環式環それ自体は、縮合多環式化合物の単一の環原子を介して付着したスピロ環を有してよい。いくつかの実施例では、当業者には理解できるように、芳香族系の2つの隣接する基は縮合して環構造を形成してよい。縮合環構造はヘテロ原子を含んでよく、1つ又は複数の基で任意に置換されてよい。更に、このような縮合基の飽和炭素(即ち飽和環構造)は2個の置換基を含むことができることに留意されたい。
「ハロアロキシ」は−OR’基を意味し、ここでR’は、本明細書で定義するようにハロアルキルであり、例えばトリフルオロメトキシ又は2,2,2−トリフルオロメトキシ等である。
「ハロアルコキシアルキル」は、本明細書で定義するように1個、2個又は3個のハロアルコキシで置換された、本明細書で定義するようなアルキル基を意味する。
「ハロゲン」又は「ハロ」はフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを意味する。
「ハロアルケニル」は、本明細書で定義するように1個又は複数のハロゲン、具体的には1〜5個のハロ原子で置換されたアルケニル基を意味する。
「ハロアルキル」は、本明細書で定義するように1個又は複数のハロゲン、具体的には1〜5個のハロ原子で置換されたアルキル基を意味する。代表例は2,2−ジフルオロエチル、トリフルオロメチル及び2−クロロ−1−フルオロエチル等を含む。
「ヘテロアリール」は、−O−、−S(O)n−(nは0、1又は2)、−N−、−N(Rx)−から独立して選択される1つ又は複数、具体的には1個、2個、3個又は4個の環式ヘテロ原子を含み、かつ残りの環原子は炭素である、5〜14個の環原子の単環式、縮合二環式、又は縮合三環式1価ラジカルを意味し、ここで単環式ラジカルを含む環は芳香族であり、二環式又は三環式ラジカルを含む縮合環の少なくとも1つは芳香族である。二環式又は三環式ラジカルを含むいずれの非芳香族環の1個又は2個の環炭素原子は、−C(O)−、−C(S)−又は−C(=NH)−基で置換してよい。Rxは水素、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アシル又はアルキルスルホニルである。縮合二環式ラジカルは有橋環系を含む。特に言及しない限り、原子価は原子価の規則が許容するヘテロアリール基のいずれの環のいずれの原子に位置してよい。特に、原子価の点が窒素に位置する場合、Rxは存在しない。より具体的には、用語ヘテロアリールは、1,2,4−トリアゾリル、1,3,5−トリアゾリル、フタルイミジル、ピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、チエニル、フラニル、インドリル、2,3−ジヒドロ−1H−インドリル(例えば2,3−ジヒドロ−1H−インドール−2−イル若しくは2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−イル等を含む)、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾジオキソール−4−イル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インドリジニル、ナフチリジン−3−イル、フタラジン−3−イル、フタラジン−4−イル、プテリジニル、プリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル(例えばテトラヒドロイソキノリン−4−イル若しくはテトラヒドロイソキノリン−6−イル等を含む)、ピロロ[3,2−c]ピリジニル(例えばピロロ[3,2−c]ピリジン−2−イル若しくはピロロ[3,2−c]ピリジン−7−イル等を含む)、ベンゾピラニル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル及びこれらの誘導体、又はこれらのN−オキシド若しくは保護化誘導体を含むがこれらに限定されない。
「ヘテロアリールアルキル」は、本明細書で定義するように1個又は2個のヘテロアリール基で置換されたアルキル基を意味する。
「ヘテロシクロアルキル」は、−O−、−S(O)n−(nは0、1又は2)、−N=、−N(Ry)−(ここでRyは水素、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アシル又はアルキルスルホニルである)から独立して選択される1つ又は複数、具体的には1個、2個、3個又は3個の環式ヘテロ原子を含み、残りの環原子は炭素である、3〜8個の環原子の飽和若しくは部分的に不飽和の1価単環式基、又は5〜10個の環原子の飽和若しくは部分的に不飽和の1価縮合二環式基を意味する。1個又は2個の環炭素原子を、−C(O)−、−C(S)−又は−C(=NH)−基で置換してよい。縮合二環式ラジカルは、有橋環系を含む。特に言及しない限り、基の原子価は原子価の規則が許容するラジカル内のいずれの環のいずれの原子に位置してよい。特に、原子価の点が窒素原子に位置する場合、Ryは存在しない。より具体的には、用語ヘテロシクロアルキルは、アゼチジニル、ピロリジニル、2−オキソピロリジニル、2,5−ジヒドロ−1H−ピロリル、ピペリジニル、4−ピペリドニル、モルホリニル、ピペラジニル、2−オキソピペラジニル、テトラヒドロピラニル、2−オキソピペリジニル、チオモルホリニル、チアモルホリニル、ペルヒドロアゼピニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ジヒドロピリジニル、テトラヒドロピリジニル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、チアゾリニル、チアゾリジニル、キヌクリジニル、イソチアゾリジニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、デカヒドロイソキノリル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル及びこれらの誘導体、並びにこれらのN−オキシド若しくは保護化誘導体を含むがこれらに限定されない。
「ヘテロシクロアルキルアルキル」は、本明細書で定義するように1個又は2個のヘテロシクロアルキル基で置換された、本明細書で定義するようなアルキル基を意味する。
「ヒドロキシアルキル」は、少なくとも1個、具体的には1個、2個又は3個のヒドロキシ基で置換された、本明細書で定義するようなアルキルラジカルを意味し、ただし2個のヒドロキシ基が存在する場合、これらは同一の炭素原子上にはない。代表例はヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、1−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピル、2−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、4−ヒドロキシブチル、2,3−ジヒドロキシプロピル、1−(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル、2,3−ジヒドロキシブチル、3,4−ジヒドロキシブチル及び2−(ヒドロキシメチル)−3−ヒドロキシプロピル、具体的には2−ヒドロキシエチル、2,3−ジヒドロキシプロピル、又は1−(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチルを含むが、これらに限定されない。
「ヒドロキシアミノ」は−NH(OH)基を意味する。
「任意の(optional)」又は「任意に(optionally)」は、その後に記載されるイベント又は状況が発生してもしなくてもよいこと、及び説明が上記イベント又は状況が発生する例と発生しない例とを含むことを意味する。当業者は、1つ又は複数の任意の置換基を含むと記載されたいずれの分子について、立体配置に関して現実的な化合物及び合成可能な化合物のみを含むことが意図されていることを理解するであろう。「任意に置換された」は全ての後続の修飾語句を表す。従って例えば、「任意に置換されたアリールC1-8アルキル」という語句において、分子の「C1-8アルキル」部分及び「アリール」部分の両方が置換されていてもいなくてもよい。例示的な任意の置換のリストを、以下の「置換された」の定義において提示する。
「任意に置換されたアルキル」は、アルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、シクロアルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルケニルカルボニルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、シアノ、シアノアルキルアミノカルボニル、アルコキシ、アルケニルオキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルコキシ、カルボキシ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルカルボニルオキシ、アルキル−S(O)0-2−、アルケニル−S(O)0-2−、アミノスルホニル、アルキルアミノスルホニル、ジアルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニル−NRc−(ここでRcは水素、アルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルケニルオキシ又はシアノアルキルである)、アルキルアミノカルボニルオキシ、ジアルキルアミノカルボニルオキシ、アルキルアミノアルキルオキシ、ジアルキルアミノカルボニルオキシ、アルコキシカルボニル、アルケニルオキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アルキルアミノカルボニルアミノ、ジアルキルアミノカルボニルアミノ、アルコキシアルキルオキシ、及びC(O)NRaRb(ここでRa、Rbは独立して水素、アルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルケニルオキシ又はシアノアルキルである)から独立して選択された1つ又は複数の基、具体的には1個、2個、3個、4個又は5個の基で任意に置換された、本明細書で定義するようなアルキルラジカルを意味する。
「任意に置換されたアルケニル」は、アルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、シクロアルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルケニルカルボニルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、シアノ、シアノアルキルアミノカルボニル、アルコキシ、アルケニルオキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルコキシ、カルボキシ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルカルボニルオキシ、アルキル−S(O)0-2−、アルケニル−S(O)0-2−、アミノスルホニル、アルキルアミノスルホニル、ジアルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニル−NRc−(ここでRcは水素、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルキニル、ヒドロキシ、アルコキシ又はアルケニルオキシである)、アルキルアミノカルボニルオキシ、ジアルキルアミノカルボニルオキシ、アルキルアミノアルキルオキシ、ジアルキルアミノカルボニルオキシ、アルコキシカルボニル、アルケニルオキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アルキルアミノカルボニルアミノ、ジアルキルアミノカルボニルアミノ、アルコキシアルキルオキシ、及びC(O)NRaRb(ここでRa及びRbは独立して水素、任意に置換されたアルキル、アルケニル、任意に置換されたアルキニル、ヒドロキシ、アルコキシ又はアルケニルオキシである)から独立して選択された1つ又は複数の基、具体的には1個、2個又は3個の基で任意に置換された、本明細書で定義するようなアルケニルラジカルを意味する。
「任意に置換されたアリール」は、ハロ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、アルコキシ、カルボキシ、カルボキシエステル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、任意に置換されたヘテロアリール、−C(O)NR’R”(ここでR’は水素又はアルキルであり、R”は水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール又はヘテロシクロアルキルである)、−NR’C(O)R”(ここでR’は水素又はアルキルであり、R”はアルキル、アリール、ヘテロアリール又はヘテロシクロアルキルである)、及び−NHS(O)2R’(ここでR’はアルキル、アリール、又はヘテロアリールである)から独立して選択された1個、2個、3個、4個又は5個の基で任意に置換された、本明細書で定義するようなアリール基を意味する。
「任意に置換されたヘテロアリール」は、ハロ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、アルコキシ、ヒドロキシ、オキソ(原子価の規則が許容する限りにおいて)、カルボキシ、カルボキシエステル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、任意に置換されたアリール、−C(O)NR’R”(ここでR’は水素又はアルキルであり、R”は水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール又はヘテロシクロアルキルである)、−NR’C(O)R”(ここでR’は水素又はアルキルであり、R”はアルキル、アリール、ヘテロアリール又はヘテロシクロアルキルである)、及び−NHS(O)2R’(ここでR’はアルキル、アリール、又はヘテロアリールである)から独立して選択された1個、2個、3個、4個又は5個の基で任意に置換された、本明細書で定義するようなヘテロアリール基を意味する。
「任意に置換されたヘテロシクロアルキル」は、ハロ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヒドロキシ、オキソ、オキシム、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、アルコキシ、任意に置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたヘテロアリール、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、カルボキシ、カルボキシエステル、−C(O)NR’R”(ここでR’は水素又はアルキルであり、R”は水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール又はヘテロシクロアルキルである)、−NR’C(O)R”(ここでR’は水素又はアルキルであり、R”はアルキル、アリール、ヘテロアリール又はヘテロシクロアルキルである)、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ及び−NHS(O)2R’(ここでR’はアルキル、アリール、又はヘテロアリールである)から独立して選択された1個、2個、3個、4個又は5個の基で任意に置換された、本明細書で定義するようなヘテロシクロアルキルを意味する。
疾患、障害又は症候群を「予防する(preventing)」又はこれらの「予防(prevention)」は、ヒトにおいて疾患が発生するのを阻害すること、即ち疾患、障害又は症候群に曝露されるか又は罹りやすくなっていることがあり得るものの、疾患、障害又は症候群の症状を発現していない動物において、疾患、障害又は症候群の臨床的症状を発現させないようにすることを含む。
本明細書で使用する、疾患、障害又は症候群を「治療する(treating)」又はこれらの「治療(treatment)」は、(i)疾患、障害又は症候群を阻害すること、即ちその発現を阻止すること;及び(ii)疾患、障害又は症候群を緩和すること、即ち疾患、障害又は症候群を退行させることを含む。当該技術分野で公知であるように、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与時間、薬剤の相互作用、及び状態の重篤度に応じて全身送達と局所送達の調整が必要となり得、当業者は慣用の実験によってこれを確認できるであろう。予防法としての治療も含まれる。治療は、治療及び療法の併用を含み、例えば順次又は同時に2つ以上の治療又は両方を併用する。治療及び療法の例は、化学療法(例えば薬剤、抗体(例えば免疫療法において)、プロドラッグ等を含む作用剤の投与);手術;放射線療法;及び遺伝子療法を含むがこれらに限定されない。
本明細書で利用される「同時投与(co−administration)」又は「併用投与(combined administration)」は、選択した複数の治療的作用剤を単一の患者に投与するモードを含むことを意図したものであり、複数の作用剤を必ずしも同一投与経路によって又は同時に投与しない治療レジメンを含むことを意図する。同時投与はまた、例えば単体又は単一用量の形態で患者に同時に投与される式Iの化合物及び抗炎症剤のような「固定組合せ」での活性成分の送達を含むことができる。用語「非固定組合せ」は、投与によって、治療において効果的なレベルの複数の作用剤の組み合わせを患者の身体内において提供できるように、例えば式Iの化合物及び例えば以下に例示する抗炎症剤である第2の作用剤である活性成分を、別個の実体として患者に同時に、共に又は具体的な時間制限無しに順次投与することを意味する。
本発明の目的において、本明細書において相互交換可能に使用される用語「対象」又は「患者」は、ヒト及び他の動物、特に哺乳類、並びに他の有機体を含む。よって本方法は、ヒトの治療及び獣医分野での応用に適用可能である。具体的な実施形態では、患者は哺乳類であり、より具体的な実施形態では患者はヒトである。
「過敏症」及び/又は免疫過敏症に関連する疾患は一般に、以下に例示するがこれらに限定されないアレルギ形態を意味する:喘息、鼻炎、結膜炎、鼻結膜炎、皮膚炎、蕁麻疹、食物過敏症、薬物過敏症、昆虫刺傷過敏症及びアナフィラキシー。特に、過敏症はいずれのタイプのアレルギも含む。
本明細書で使用する「アレルギ」は「アレルギ性過敏症」を包含し、Johanssonら、2001年、Allergy 56:813−824及びJohannsonら、2004年、J.Allergy Clin.Immunol.113(5)832−835に示唆されているように理解されたい。特に指示しない限り、本出願は上記文献に挙げられたアレルギに関する術語に従う。アレルギ又はアレルギ性過敏症は、物質(アレルゲン)に対する免疫機構によって開始される過敏反応であり、遺伝的要因を有する個体において発生する場合がある(アトピー)。アレルギは抗体媒介又は細胞媒介型であり得る。大半の患者において、典型的にはアレルギ反応の要因である抗体はIgE同位体に属し(「抗体」参照)、これらの患者はIgE媒介型アレルギ(I型アレルギ)に罹患していると言える。アトピーを有する対象においてIgE媒介型アレルギ反応の全てが起こるわけではないことに留意する必要がある。非IgE媒介型アレルギでは、抗体はIgG同位体に属し得る。よって、本出願の目的において「アレルギ」はIgE媒介型アレルギ(I型アレルギ)及び非IgE媒介型アレルギの両方を指す。従って、本発明の文脈においてアレルギは好ましくはIgE媒介型アレルギを指す。アレルギは過敏反応を引き起こす抗原の源に応じて分類される。一実施形態では、アレルギは(a)食物アレルギ、(b)薬剤アレルギ、(c)ハウスダストアレルギ、(d)昆虫毒又は昆虫刺傷アレルギ、及び(e)花粉アレルギから選択される。代替として、アレルギは過敏反応の主な症状に基づいて分類される。よって別の実施形態では、アレルギは喘息、鼻炎、結膜炎、鼻結膜炎、皮膚炎、蕁麻疹及びアナフィラキシーといった疾病を含むがこれらに限定されないいずれのアレルギ形態を指す。
本明細書で使用する「I型アレルギ」:用語「I型アレルギ」及び「IgE媒介型アレルギ」は相互交換可能に使用され、アレルゲンに対するIgE媒介型過敏症に関連する。本発明の好ましい実施形態は、花粉アレルギ(花粉症);ハウスダストアレルギ;食物アレルギ;薬剤アレルギ;昆虫毒又は昆虫刺傷アレルギ、好ましくはハチ刺傷アレルギ;及び動物アレルギ、好ましくは猫アレルギを例とするIgE媒介型アレルギに関する。
本明細書で使用する「花粉症」は、鼻炎、結膜炎及び/又は喘息を含み得る、花粉に対する典型的な形態のIgE媒介型アレルギ(I型アレルギ)に包含され、ここで喘息は好ましくは花粉症の慢性形態として起こる。
本明細書で使用する「アトピー」、「アトピー性疾患」について:アトピーとは、通常はタンパク質である少量のアレルゲンに反応してIgE抗体を産生する、並びに喘息、鼻結膜炎又は湿疹/皮膚炎等の典型的な症状を発現する、個人性又は家族性の傾向である。小児におけるアトピーの第1の兆候は、下痢、喘鳴及び皮膚の発疹等のアレルギ症状であることが多く、皮膚の発疹についてのみ、原因となるIgE抗体を検出できる。典型的なアトピーを有する個体におけるアレルギ症状を「アトピー性(atopic)」と呼んでよい。本発明の一実施形態では、過敏症はアトピー性疾患であり、好ましくは(a)アトピー性喘息、(b)アトピー性湿疹、(c)アトピー性IgE媒介アレルギ、好ましくは花粉アレルギ(花粉症)、ハウスダストアレルギ又はダニアレルギからなる群から選択されるアトピー性疾患である。一実施形態では、本出願は広くIgE媒介型アレルギに関し、上記IgE媒介型アレルギがアトピー性アレルギ又は非アトピー性アレルギと考えられるかどうかに関わらない。しかしながら、本発明の特に好ましい実施形態は、アトピー性アレルギ、好ましくはIgE媒介型アトピー性アレルギに関する。
本明細書で使用する「鼻炎」は、例えば痒み、くしゃみ、分泌物の増加及び閉塞といった、鼻からの過敏症の症状に関する。鼻炎は非アレルギ性鼻炎及びアレルギ性鼻炎即ち免疫媒介性鼻炎に関する。本発明の好ましい実施形態は、アレルギ性鼻炎、好ましくはIgE媒介型及び非IgE媒介型形態のアレルギ性鼻炎に関する。特に好ましい実施形態は、IgE媒介型アレルギ性鼻炎に関する。
本明細書で使用する用語「結膜炎」は、まずアレルギ由来及び非アレルギ由来であってよい目の不快感に関し、ここでアレルギ性結膜炎はIgE媒介型及び非IgE媒介型アレルギ性結膜炎を包含する。アレルギ性結膜炎、特にIgE媒介型アレルギ性結膜炎は通常アレルギ性鼻炎と併発するため、この疾患は適切に、アレルギ性鼻結膜炎と呼ばれる。IgE媒介型結膜炎の他に、TH1機構が関わる接触性アレルギ性結膜炎が発生する。非アレルギ性結膜炎もまた、非アレルギ性鼻炎を併発することがある。本発明のいくつかの実施形態では、結膜炎は、IgE媒介型及び非IgE媒介型形態のアレルギ性結膜炎を含む、アレルギ性結膜炎に関してよい。一実施形態では、本発明はIgE媒介型アレルギ性結膜炎である。他の実施形態は、IgE媒介型アレルギ性鼻結膜炎に関する。
本明細書で使用する「喘息」又は気管支喘息は、肺の空気経路の炎症による慢性呼吸器疾患であり、気道の神経末端の感受性に影響を与え、これによって神経末端は容易に刺激されるようになる。喘息は気管支喘息、アレルギ性喘息、内因性喘息及び職業性喘息を包含することを意図する。喘息の発作が起こると、気道の内側が膨張して気道を狭め、肺に出入りする空気流を減少させる。喘息は間欠的な形態(1週間に2回以下の日中発作、1ヶ月に2回以下の夜間発作)、持続的な形態(恒常的な日中発作、頻繁な夜間発作)、及びいずれの中間形態で発生し得る。本発明の目的において、用語「喘息」は非アレルギ性及びアレルギ性喘息に関してよい。本発明のいくつかの実施形態では、喘息はIgE媒介型及び非IgE媒介型形態の喘息を含むアレルギ性喘息に関してよい。他の実施形態はIgE媒介型アレルギ性喘息、例えばアトピー性喘息に関する。
本明細書で使用する「アトピー性喘息」は、遺伝的体質を有する患者におけるIgE媒介型形態の喘息を含み、これはアトピー性湿疹及びIgE媒介型アレルギ、例えば花粉アレルギ(花粉症)、ハウスダスト又はダニアレルギに関連して発生することがある。
本明細書で使用する「皮膚炎」は皮膚の局所的な炎症に関し、とりわけ「湿疹」及び「接触性皮膚炎」を包含する。本発明のいくつかの実施形態では、皮膚炎は湿疹及び接触性皮膚炎を包含してよい。
本明細書で使用する用語「湿疹」は、遺伝的に決定された皮膚バリアーの欠陥に共通して関係する特定の臨床的特徴を有する複数の皮膚疾患の集合を意味する、アトピー性湿疹/皮膚炎症候群(AEDS)に関する。この遺伝的に決定された標的臓器の感受性は、湿疹の基礎を構成する。アトピー体質の小児及び若年成人では、根本的な炎症はIgE抗体関連反応(アトピー性湿疹)によって左右される。慢性のケースでは、炎症が受けるIgE抗体の影響はより少ないように見え、生検における支配的な細胞はリンパ球である。湿疹は、非アレルギ性湿疹及びアレルギ性湿疹に関する。本発明のいくつかの実施形態では、湿疹はアトピー性(IgE媒介型)湿疹及び非アトピー性形態の湿疹を含むアレルギ性湿疹を含む。いくつかの実施形態では、本発明はアトピー性(IgE媒介型)湿疹に関する。
本明細書で使用する用語「接触性皮膚炎」は、低分子量の化学物質又は刺激物との密接な接触によって引き起こされる、皮膚における局所炎症反応に関する。接触性皮膚炎は、アレルギ性及び非アレルギ性の性質のものであり得る。アレルギ性接触性皮膚炎は、免疫学的メカニズム、主にTH1リンパ球によって媒介される。ハプテンとして作用してアレルギ性接触性皮膚炎を引き起こす典型的なアレルゲンは:ニッケル、クロムイオン、香料、保存料、及びウルシオール、とりわけツタウルシ由来のウルシオールを含み得る。曝露は、経口摂取によって発生し得、所謂全身性アレルギ性接触性皮膚炎を引き起こす。接触性皮膚炎、タンパク質接触性皮膚炎のサブグループは、損傷した皮膚を介したタンパク質の吸収によって引き起こされるIgE関連反応である。本発明のいくつかの実施形態では、接触性皮膚炎はアレルギ性接触性皮膚炎を含む。更なる実施形態はタンパク質接触性皮膚炎に関する。
本明細書で使用する用語「蕁麻疹」は、刺激物やアレルゲンによって引き起こされる皮膚における非炎症反応に関し、非アレルギ性蕁麻疹及びアレルギ性蕁麻疹を含む。アレルギ性蕁麻疹は免疫機構によって媒介され、これは一般にIgE媒介型であるが、免疫複合体関連性のものでもあり得る。湿疹はまた、ラテックスアレルギを有するヒトの手にラテックス製手袋を装着した場合又はイヌアレルギを有するヒトの手をイヌが舐めた場合に発生するように、アレルゲンとの局所的な接触の後に局所的に発現し得る。本発明のいくつかの実施形態では、用語「蕁麻疹」はアレルギ性蕁麻疹、最も好ましくはIgE媒介アレルギ性蕁麻疹に関する。
本明細書で使用する「食物過敏症」は、食物に対する有害反応に関する条件を含み、非アレルギ性及びアレルギ性の性質のものであってよい。アレルギ性食物過敏症は、IgE媒介型であってよく、食物アレルギと呼ばれている。食物に対する深刻かつ一般的なアレルギ反応には、アナフィラキシーを含むことができる。本発明のいくつかの実施形態では、食物過敏症は食物アレルギ、好ましくはIgE媒介食物アレルギを含むことができる。
本明細書で使用する用語「薬剤過敏症」は、非アレルギ性及びアレルギ性の性質のものであり得る、薬剤に対する身体の過敏反応に関する。免疫機構が抗体媒介型又は細胞媒介型のいずれかであることが示されている場合、この反応を薬剤アレルギと呼ぶ。薬剤アレルギは、IgEによって媒介できる。本発明のいくつかの実施形態では、薬物過敏症は薬物アレルギ、例えばIgE媒介型薬剤アレルギを包含する。
本明細書で使用する用語「昆虫毒過敏症」又は「昆虫刺傷過敏症」は、非アレルギ性及びアレルギ性の性質のものであり得る、昆虫毒及び唾液に対する過敏反応に関する。免疫機構が媒介する昆虫毒過敏症及び昆虫刺傷過敏症は、ハチ毒アレルギにおけるように、毒又は唾液アレルギと呼ばれている。昆虫毒中の大量の毒アレルゲンは、数年で吸入する花粉アレルゲンと同程度である。このような高用量による感作は、このようなアレルギを発現するために遺伝的体質は必要ないことを意味していると考えられる。本発明のいくつかの実施形態では、「昆虫毒過敏症」又は「昆虫刺傷過敏症」は、毒アレルギ、例えば、IgE媒介型昆虫(例えばミツバチ、スズメバチ、蚊及びアリ)毒アレルギを含むがこれらに限定されないIgE媒介型毒アレルギに関する。
本明細書で使用する用語「アナフィラキシー」は、深刻な、生命を脅かす、一般的又は全身性の過敏反応を表す。この反応は通常徐々に発現し、殆どの場合は歯茎/喉、手のひら又は足の裏の痒み及び局所的な蕁麻疹から始まり;重度の喘息を特徴とする場合が多い多臓器反応を発現し;最終的には低血圧及びショックを引き起こす。低血圧及び重篤な気管支痙攣は、アナフィラキシーとして分類されるべき反応には必ずしも存在しなくてよい。アナフィラキシーは非アレルギ性及びアレルギ性の性質のものであり得る。アレルギ性アナフィラキシーは、IgG免疫複合体、補体関連機構又は免疫細胞媒介型機構等の免疫機構に関わる。アナフィラキシーは好ましくは、IgE抗体が媒介するアナフィラキシー反応(IgE媒介型アナフィラキシー)に関し、最も好ましくは、落花生誘発性食物アナフィラキシー又はハチ毒誘発性アナフィラキシーに関する。
本明細書で使用する用語「アレルゲン」は、アレルギを引き起こす物質を表す。好ましいアレルゲンは、Shough,Hら、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES、第19版(第82章)、Mack Publishing Company、Mack Publishing Group、Easton、Pa(1995年)に開示されたアレルゲンであり、上記文献は参照によりその全体が本明細書に援用される。アレルゲンは脊椎動物において抗原として作用する。本明細書で使用する用語「アレルゲン」はまた、「アレルゲン抽出物」及び「アレルゲン性エピトープ」も表す。いくつかの実施形態では、アレルゲンは:花粉(例えばイネ科植物、ブタクサ、カバノキ、マウンテンシダー);ハウスダスト及びイエダニ;哺乳動物の表皮アレルゲン及び動物の鱗屑;カビ及び菌;昆虫の体及び昆虫毒;羽;食物;並びに薬剤(例えばペニシリン)を含む。
本明細書で使用する用語「アレルギ誘発性溶液」は、対象においてアレルギ反応を誘発できる生物学的及び/又は化学的作用剤を含有する溶液を含むことができる。生物学的作用剤は、例えば花粉(例えばイネ科植物、ブタクサ、カバノキ、マウンテンシダー);ハウスダスト及びダニ;哺乳動物の表皮アレルゲン及び動物の鱗屑;カビ及び菌;昆虫の体及び昆虫毒;羽等を含む、一般に生物由来のアレルゲンを含むことができる。化学的作用剤は、食物アレルゲン;薬物(例えば、ヨウ素、硝酸銀、MSG、防腐剤又は抗生物質)を含むことができる。いくつかの実施形態では、アレルギ誘発性溶液は、異なるイネ科植物、例えば好ましくはカモガヤ、ヒメヌカボ、ホソムギ、オオアワガエリ、ナガハグサ及び/若しくはヒロハウシノケグサの混合物、イネ科植物、穀物、異なる樹木並びに/又は動物の体毛の混合物を含むことができる。アレルギ誘発性溶液は生理食塩水で調製でき、0.1%−1.0%フェノール又はチメロサールの添加によって保存できる。
本明細書で使用する用語「アレルゲン抽出物」は、結膜、鼻及び気管支抗原投与のために使用される構成要素を含む。このようなアレルゲン抽出物は市販されており、このような抽出物を製造するための方法は公知である。いくつかの実施形態では、単一のアレルゲン抽出物を使用でき、移植、注入、接触又は他の方法でこれを試験対象に曝露した場合、アレルギ反応を誘発できる。いくつかの実施形態では、アレルゲン抽出物は、例えば最も好ましくはハンノキ、トネリコ、カバノキ、ハシバミ、カモガヤ、ヒメヌカボ、ホソムギ、オオアワガエリ、ナガハグサ、ヒロハノウシノケグサ、ギョウギシバ、ブタクサ、ライ麦及び小麦からなる群から選択される樹種又は草種;様々な動物種の上皮、好ましくはネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される動物種由来の上皮;アスペルギルス属、カンジダ属、アルテルナリア属及びサッカロミケス属を例として含む糸状菌;並びにコナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニ及びコナダニを含むがこれらに限定されないダニ種から調製できる単一のアレルゲン抽出物を含むアレルギ誘発性溶液中で提供される。アレルゲン混合物を含むアレルゲン抽出物をアレルギ誘発性溶液中で用いることもできる。
本明細書で使用する「抗体」について:本明細書で使用する用語「抗体」は、エピトープ又は抗原決定基と結合できるイムノグロブリンのクラスに属する分子を表す。
本明細書で使用する用語「抗原」は、MHC分子によって提示される場合、抗体又はT細胞受容体(TCR)によって結合できる分子を表す。本明細書で使用する用語「抗原」はまた、T細胞エピトープを包含する。抗原は更に、免疫系によって認識できる並びに/又はB及び/若しくはTリンパ球の活性化をもたらす体液性免疫反応及び/若しくは細胞性免疫反応を誘発できる。本明細書で使用する抗原はまた、複数の独立した抗原の混合物であってもよい。
本明細書で使用する用語「エピトープ」は、動物、好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトの、抗原活性又は免疫原性活性を有するポリペプチドの連続した又は不連続な部分を表す。
本明細書で使用する「化合物A」、即ち式I及び表Iの化合物、即ち4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)−ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オンは、以下の構造を意味する。
「治療に効果的な量」は、患者に投与した場合に疾患の症状を改善する、本発明の化合物の量である。「治療に効果的な量」を構成する本発明の化合物の量は、化合物、疾患の状態及び重篤度、治療対象の患者の年齢等に応じて異なることになる。治療に効果的な量は、当業者がその知識及び本発明に鑑みて通常の方法で決定できる。
化合物の「薬学的に許容可能な塩」は、薬学的に許容可能である、親化合物の所望の薬理学的活性を保持する塩を意味する。薬学的に許容可能な塩は非毒性であることが理解される。適切な薬学的に許容可能な塩に関する更なる情報は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、Mack Publishing Company、Easton、PA、1985年又はS.M.Bergeら、「Pharmaceutical Salts」J.Pharm.Sci.、1977年;66:1−19に見ることができ、これらは共に、参照によりその全体が本明細書に援用される。
薬学的に許容可能な酸付加塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸;及び酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、2−ドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、グルコヘプトン酸、4,4’−メチレンビス−(3−ヒドロキシ−2−エン−1−カルボン酸)、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸等の有機酸を用いて形成したものを含む。
薬学的に許容可能な塩基付加塩は、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム塩等、親分子中に存在する酸性プロトンが金属イオンで置換される際に形成されるものを含む。具体的な塩は、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム及びマグネシウム塩である。薬学的に許容可能な有機非毒性塩基由来の塩は、一級、二級及び三級アミン、天然置換アミンを含む置換アミン、環状アミン並びに塩基性イオン交換樹脂を含むがこれらに限定されない。有機塩素の例は、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N−エチルピペリジン、トロメタミン、N−メチルグルカミン、ポリアミン樹脂等を含む。例示的な有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン及びカフェインである。
「プロドラッグ」は、例えば血液中での加水分解によって上記式の活性成分を得るために、インビボで(典型的には迅速に)変換される化合物を表す。プロドラッグの一般的な例は、カルボン酸部分を担持する活性型を有する化合物のエステル及びアミド形態を含むが、これらに限定されない。本発明の化合物の薬学的に許容されるエステルの例は、アルキル基が直鎖又は分枝鎖であるアルキルエステル(例えば約1〜約6個の炭素を有するもの)を含むが、これらに限定されない。許容されるエステルはまた、ベンジル等のシクロアルキルエステル及びアリールアルキルエステルを含むがこれらに限定されない。本発明の化合物の薬学的に許容されるアミドの例は、一級アミド並びに二級及び第三級アルキルアミド(例えば約1〜約6個の炭素を有するもの)を含むが、これらに限定されない。
「代謝産物」は、動物又はヒトの体内で代謝又は生体内変化、例えば酸化、還元若しくは加水分解等によるより極性の強い分子への生体内変化、又はコンジュゲートへの生体内変化(生体内変化に関する議論については、Goodman及びGilman「The Pharmacological Basis of Therapeutics」第8版増補版、Pergamon Press、Gilmanら編、1990年を参照)によって生成される化合物又はその塩の分解生成物又は最終生成物を表す。本明細書で使用される、本発明の化合物又はその塩の代謝産物は、体内において、化合物の生物学的に活性な形態であってよい。一実施例では、プロドラッグは、その生物学的に活性な形態、即ち代謝産物がインビボで放出されるように使用してよい。別の実施例では、生物学的に活性な代謝産物が思いがけなく、即ちプロドラッグの設計それ自体は実施されないまま、発見される。本発明の化合物の代謝産物の活性に関するアッセイは、本開示に照らして当業者には公知である。
本明細書で使用する、疾患、障害又は症候群を「治療する(treating)」又はこれらの「治療(treatment)」は、(i)疾患、障害又は症候群がヒトにおいて引き起こされるのを防止すること、即ち疾患、障害又は症候群に曝露されるか又は罹りやすくなっていることがあり得るものの、疾患、障害又は症候群の症状をまだ経験又は発現していない動物において、疾患、障害又は症候群の臨床的症状を発現させないようにすること;(ii)疾患、障害又は症候群を阻害すること、即ちその発現を阻止すること;及び(iii)疾患、障害又は症候群を緩和すること、即ち疾患、障害又は症候群を退行させることを含む。当該技術分野で公知であるように、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与時間、薬剤の相互作用、及び条件の厳しさに応じて全身送達と局所送達の調整が必要となり得、当業者は慣用の実験によってこれを確認できるであろう。
化合物
本発明は、アレルギ反応の阻害剤として使用可能な化合物に関する。本発明の化合物は、
上記化学式Iに記載されるもの又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物若しくはプロドラッグであり、ここで
R2はそれぞれ独立してC1-8アルキル、C2-8アルケニル、C2-8アルキニル、アルコキシ、アルケノキシ、C4-10シクロアルキル、C4-10ヘテロシクロアルキル、C4-10アリール、C4-10アラルキル、アラルキルオキシ、C4-10ヘテロアリール又はC4-10ヘテロアラルキルであり、ここでC1-8アルキル、C2-8アルケニル、C2-8アルキニル、アルコキシ、アルケノキシ、C4-10シクロアルキル、C4-10ヘテロシクロアルキル、C4-10アリール、C4-10アラルキル、アラルキルオキシ、C4-10ヘテロアリール又はC4-10ヘテロアラルキルはそれぞれ任意に、Q1又はQ2から独立して選択される1〜3の置換基を含み;
R3はそれぞれ独立して水素、ハロ、OH、−CN、−NO2、-N=O、-NHOQ1、-OQ1、−SOQ1、−SO2Q1、-SON(Q1)2、-SO2N(Q1)2、−N(Q1)2、−C(O)OQ1−C(O)Q1、-C(O)N(Q1)2−C(=NQ1)NQ1−、-NQ1C(=NQ1)NQ1−、−C(O)N(Q1)(OQ1)、-N(Q1)C(O)−Q1、-N(Q1)C(O)N(Q1)2、-N(Q1)C(O)O−Q1、−N(Q1)SO2Q1、−N(Q1)SOQ1、C1-8アルキル、C2-8アルケニル、C2-8アルキニル、アルコキシ、アルケノキシ、C4-10シクロアルキル、C4-10ヘテロシクロアルキル、C4-10アリール、C4-10アラルキル、アラルキルオキシ、C4-10ヘテロアリール又はC4-10ヘテロアラルキルであり、ここでC1-8アルキル、C2-8アルケニル、C2-8アルキニル、アルコキシ、アルケノキシ、C4-10シクロアルキル、C4-10ヘテロシクロアルキル、C4-10アリール、C4-10アラルキル、アラルキルオキシ、C4-10ヘテロアリール又はC4-10ヘテロアラルキルはそれぞれ任意に、Q1又はQ2から独立して選択される1〜3の置換基を含み;
Q1はそれぞれ独立して水素、C1-8アルキル、C2-8アルケニル、アルコキシ、アルケノキシ、C4-10シクロアルキル、C4-10アリール、C4-10アラルキル、アラルキルオキシ、C4-10複素環又はC4-10ヘテロアリールであり、これらはそれぞれ任意にQ2から独立して選択される1〜3の置換基を含み;
Q2はそれぞれハロ、ハロアルキル、オキソ、オキシム、アジド、アミノ、アミド、シアノ、CN、NO2、CF3、OCF3、OH、−COOH又はC1−C4アルキルであり、任意に1〜3のハロ、オキソ、オキシム、−CN、−NO2、−CF3、−OCF3、−OH、−SH、−S(O)3H、−NH2又は−COOHで置換される。
R2変数
いくつかの実施形態では、R2はそれぞれ独立してC1-8アルキル、C2-8アルケニル、C2-8アルキニル、アルコキシ、アルケノキシ、C4-10シクロアルキル、C4-10ヘテロシクロアルキル、C4-10アリール、C4-10アラルキル、アラルキルオキシ、C4-10ヘテロアリール又はC4-10ヘテロアラルキルであり、ここでC1-8アルキル、C2-8アルケニル、C2-8アルキニル、アルコキシ、アルケノキシ、C4-10シクロアルキル、C4-10ヘテロシクロアルキル、C4-10アリール、C4-10アラルキル、アラルキルオキシ、C4-10ヘテロアリール又はC4-10ヘテロアラルキルはそれぞれ任意に、水素、C1-8アルキル、C2-8アルケニル、アルコキシ、アルケノキシ、C4-10シクロアルキル、C4-10ヘテロシクロアルキル、C4-10アリール、C4-10アリールアルキル、アラルキルオキシ、又はC4-10ヘテロアリールから独立して選択される1〜3の置換基で置換され、ここでC1-8アルキル、C2-8アルケニル、アルコキシ、アルケノキシ、C4-10シクロアルキル、C4-10ヘテロシクロアルキル、C4-10アリール、C4-10アリールアルキル、アラルキルオキシ、又はC4-10ヘテロアリールはそれぞれ任意に、任意に1〜3のハロ、オキソ、オキシム、−CN、−NO2、−CF3、−OCF3、−OH、−SH、−S(O)3H、−NH2又は−COOHで置換されるハロ、オキソ、オキシム、アジド、アミノ、アミド、シアノ、CN、NO2、CF3、OCF3、OH、−COOH又はC1−C4アルキルから独立して選択される1〜3の置換基を含む。別の実施形態では、R2はC1-8アルキル、C2-8アルケニル、C4-10シクロアルキル、C4-10ヘテロシクロアルキル、C4-10アリール又はC4-10ヘテロアリールである。別の実施形態では、R2はC4-10シクロアルキル、C4-10ヘテロシクロアルキル又はC4-10ヘテロアリールである。いくつかの実施形態では、R2はC4-10ヘテロシクロアルキル又はC4-10ヘテロアリールである。
いくつかの実施形態では、R2はそれぞれ独立してC4-10アルキル、C4-10アルケニル、C4-10アルキニル、アルコキシ、アルケノキシ、C4-10シクロアルキル、C4-10ヘテロシクロアルキル、C4-10アリール、C4-10アラルキル、アラルキルオキシ、C4-10ヘテロアリール又はC4-10ヘテロアラルキルであり、ここでC4-10アルキル、C4-10アルケニル、C4-10アルキニル、アルコキシ、アルケノキシ、C4-10シクロアルキル、C4-10ヘテロシクロアルキル、C4-10アリール、C4-10アラルキル、アラルキルオキシ、C4-10ヘテロアリール又はC4-10ヘテロアラルキルはそれぞれ任意に、水素、C1-8アルキル、C2-8アルケニル、アルコキシ、アルケノキシ、C4-10シクロアルキル、C4-10ヘテロシクロアルキル、C4-10アリール、C4-10アリールアルキル、アラルキルオキシ又はC4-10ヘテロアリールから独立して選択された1〜3の置換基で置換され、ここでC1-8アルキル、C2-8アルケニル、アルコキシ、アルケノキシ、C4-10シクロアルキル、C4-10ヘテロシクロアルキル、C4-10アリール、C4-10アリールアルキル、アラルキルオキシ又はC4-10ヘテロアリールはそれぞれ任意に、任意に1〜3のハロ、オキソ、オキシム、−CN、−NO2、−CF3、−OCF3、−OH、−SH、−S(O)3H、−NH2、又は-COOHで置換されるハロ、オキソ、オキシム、アジド、アミノ、アミド、シアノ、CN、NO2、CF3、OCF3、OH、−COOH又はC1−C4アルキルから独立して選択される1〜3の置換基で置換される。
別の実施形態では、R2はC4-8アルキル、C4-8アルケニル、C4-10シクロアルキル、C4-10ヘテロシクロアルキル、C4-10アリール又はC4-10ヘテロアリールである。別の実施形態では、R2はC4-10シクロアルキル、C4-10ヘテロシクロアルキル又はC4-10ヘテロアリールである。いくつかの態様では、R2はC4-10ヘテロシクロアルキル又はC4-10ヘテロアリールである。いくつかの実施形態では、R2はC4-10ヘテロアリールである。いくつかの態様では、R2はピペリジン、アザベンズイミダゾール、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフリル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、シンノリニル、フラニル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、インドラジニル、インダゾリル、イソベンゾフリル、イソクロマニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフトピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソオキサゾリン、オキセタニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、キノキサリニル、テトラヒドロピラニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、アゼチジニル、アジリジニル、1,4−ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフリル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンズオキサゾリル、ジヒドロフリル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロテトラゾリル、ジヒドロチアジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロトリアゾリル、ジヒドロアゼチジニル、メチレンジオキシベンゾイル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロキノリニル、2,3−ジヒドロベンゾフリル、2,3−ジヒドロベンゾ−1,4−ジオキシニル、イミダゾ(2,1−b)(1,3)チアゾール、ベンゾ−1,3−ジオキソリル、ピリジン−N−オキシド、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−ピペリジニル、N−メチル−ピペリジニル、N−エチル−ピペリジニル、N−プロピル−ピペリジニル、ヘキサヒドロチオピラニル、アゼパニル、メチルアゼパニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニルメチル、ピリジニル、ピリジニルメチル、テトラヒドロチオピラニル、ジオキソラニルメチル、ジオキサニルメチル、N−イソプロピル−ピペリジニル、N−ブチル−ピペリジニル、N−ペンチル−ピペリジニル、N−ヘキシルピペリジニル、N−シクロヘキシル−ピペリジニル、N−アセチル−ピペリジニル、N−ベンジル−ピペリジニルである。いくつかの実施形態では、R2はピリジンである。
いくつかの実施形態では、R2は以下から選択される。
R3変数
いくつかの実施形態では、R3はそれぞれ独立して水素、ハロ、CN、−NO2、-N=O、-NHOQ1、-OQ1、−SOQ1、−SO2Q1、-SON(Q1)2、-SO2N(Q1)2、−N(Q1)2、−C(O)OQ1、−C(O)Q1、-C(O)N(Q1)2、−C(=NQ1)NQ1−、-NQ1C(=NQ1)NQ1−、−C(O)N(Q1)(OQ1)、-N(Q1)C(O)−Q1、-N(Q1)C(O)N(Q1)2、-N(Q1)C(O)O−Q1、−N(Q1)SO2Q1、−N(Q1)SOQ1、C1-8アルキル、C2-8アルケニル、C2-8アルキニル、アルコキシ、アルケノキシ、C4-10シクロアルキル、C4-10ヘテロシクロアルキル、C4-10アリール、C4-10アラルキル、アラルキルオキシ、C4-10ヘテロアリール、C4-10ヘテロアラルキルであり、ここでC1-8アルキル、C2-8アルケニル、C2-8アルキニル、アルコキシ、アルケノキシ、C4-10シクロアルキル、C4-10ヘテロシクロアルキル、C4-10アリール、C4-10アラルキル、アラルキルオキシ、C4-10ヘテロアリール、C4-10ヘテロアラルキルはそれぞれ任意に、任意に1〜3のハロ、オキソ、オキシム、−CN、−NO2、−CF3、−OCF3、−OH、−SH、−S(O)3H、−NH2又は−COOHで置換されるハロ、ハロアルキル、オキソ、オキシム、アジド、アミノ、アミド、シアノ、CN、NO2、CF3、OCF3、OH、−COOH又はC1−C4アルキルから独立して選択される1〜3の置換基で置換され;
Q1はそれぞれ独立して水素、C1-8アルキル、C2-8アルケニル、アルコキシ、アルケノキシ、C4-10シクロアルキル、C4-10アリール、C4-10アラルキル、アラルキルオキシ、C4-10複素環又はC4-10ヘテロアリールであり、これらはそれぞれ任意にQ2から独立して選択される1〜3の置換基を含み;
Q2はそれぞれハロ、ハロアルキル、オキソ、オキシム、アジド、アミノ、アミド、シアノ、CN、NO2、CF3、OCF3、OH、−COOH又はC1−C4アルキルであり、任意に1〜3のハロ、オキソ、オキシム、−CN、−NO2、−CF3、−OCF3、−OH、−SH、−S(O)3H、−NH2又は−COOHで置換される。いくつかの実施形態では、R3はそれぞれ独立して、H、C1-8アルキル、C2-8アルケニル、C2-8アルキニル、アルコキシ、アルケノキシ、C4-10シクロアルキル、C4-10ヘテロシクロアルキル、C4-10アリール、C4-10アラルキル、アラルキルオキシ、C4-10ヘテロアリール又はC4-10ヘテロアラルキルである。別の実施形態では、R3はH又はC1-8アルキルである。いくつかの実施形態では、R3は水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ヘキシル、2−エチルプロピル又はシクロヘキシルである。いくつかの実施形態では、R3は水素又はメチルである。
いくつかの実施形態では、R3はそれぞれ独立してH、C1-8アルキル、C1-8アルケニル、アルコキシ、アルケノキシ、C4-10シクロアルキル、C4-10ヘテロシクロアルキル、C4-10アリール、C4-10アラルキル、アラルキルオキシ、C4-10ヘテロアリール、C4-10ヘテロアラルキルから選択される。
式Ia
本発明は、アレルギ反応の阻害剤として使用可能な化合物に関する。本発明の化合物は、以下の化学式Ia
に記載されるもの又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物若しくはプロドラッグである。
ここで、いくつかの実施形態では、R3はそれぞれ独立して水素、ハロ、CN、−NO2、-N=O、-NHOQ1、-OQ1、−SOQ1、−SO2Q1、-SON(Q1)2、-SO2N(Q1)2、−N(Q1)2、−C(O)OQ1、−C(O)Q1、-C(O)N(Q1)2、−C(=NQ1)NQ1−、-NQ1C(=NQ1)NQ1−、−C(O)N(Q1)(OQ1)、-N(Q1)C(O)−Q1、-N(Q1)C(O)N(Q1)2、-N(Q1)C(O)O−Q1、−N(Q1)SO2Q1、−N(Q1)SOQ1、C1-8アルキル、C2-8アルケニル、C2-8アルキニル、アルコキシ、アルケノキシ、C4-10シクロアルキル、C4-10ヘテロシクロアルキル、C4-10アリール、C4-10アラルキル、アラルキルオキシ、C4-10ヘテロアリール、C4-10ヘテロアラルキルであり、ここでC1-8アルキル、C2-8アルケニル、C2-8アルキニル、アルコキシ、アルケノキシ、C4-10シクロアルキル、C4-10ヘテロシクロアルキル、C4-10アリール、C4-10アラルキル、アラルキルオキシ、C4-10ヘテロアリール、C4-10ヘテロアラルキルはそれぞれ任意に、任意に1〜3のハロ、オキソ、オキシム、−CN、−NO2、−CF3、−OCF3、−OH、−SH、−S(O)3H、−NH2又は−COOHで置換されるハロ、ハロアルキル、オキソ、オキシム、アジド、アミノ、アミド、シアノ、CN、NO2、CF3、OCF3、OH、−COOH又はC1−C4アルキルから独立して選択される1〜3の置換基で置換され;
Q1はそれぞれ独立して水素、C1-8アルキル、C2-8アルケニル、アルコキシ、アルケノキシ、C4-10シクロアルキル、C4-10アリール、C4-10アラルキル、アラルキルオキシ、C4-10複素環又はC4-10ヘテロアリールであり、これらはそれぞれ任意にQ2から独立して選択される1〜3の置換基を含み;
Q2はそれぞれハロ、ハロアルキル、オキソ、オキシム、アジド、アミノ、アミド、シアノ、CN、NO2、CF3、OCF3、OH、−COOH又はC1−C4アルキルであり、任意に1〜3のハロ、オキソ、オキシム、−CN、−NO2、−CF3、−OCF3、−OH、−SH、−S(O)3H、−NH2又は−COOHで置換される。いくつかの実施形態では、R3はそれぞれ独立して、H、C1-8アルキル、C2-8アルケニル、C2-8アルキニル、アルコキシ、アルケノキシ、C4-10シクロアルキル、C4-10ヘテロシクロアルキル、C4-10アリール、C4-10アラルキル、アラルキルオキシ、C4-10ヘテロアリール又はC4-10ヘテロアラルキルである。別の実施形態では、R3はH又はC1-8アルキルである。いくつかの実施形態では、R3は水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ヘキシル、2−エチルプロピル又はシクロヘキシルである。いくつかの実施形態では、R3は水素又はメチルである。
いくつかの実施形態では、本発明は式Iの化合物の薬学的に許容可能な付加塩も含む。本発明の化合物を有機及び無機酸に添加して、これらの薬学的に許容可能な付加塩を形成できる。式Iの化合物の薬学的に許容可能な付加塩もまた、本発明の一部である。当該技術分野で公知であるように、これらの塩を治療目的で使用する場合、薬学的に許容可能であれば、これらの塩の性質には制限は存在しない。例えば、薬学的に許容可能な塩は、薬学的に許容可能な酸付加塩である塩を含むことができる。これらの塩の例は:塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、過塩素酸、硫酸又はリン酸等の無機酸との塩;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、フマル酸、シュウ酸、マレイン酸、クエン酸等の有機酸との塩 ;並びに当業者に公知の他の鉱酸及びカルボン酸を含む。塩は、従来の様式で塩を生成するために遊離塩基形を十分な量の所望の酸と接触させることによって調製される。遊離塩基形は、極性溶媒中の溶解度等の特定の物理的特性においてその塩形態と若干異なるが、これらは本発明の目的において等価である。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は非溶媒和物形態及び溶媒和物形態(水和形態を含む)で存在できる。一般に、本発明の目的において、水、エタノール等の薬学的に許容可能な溶媒による溶媒和物形態は、非溶媒和物形態と均等である。
組成物
別の実施形態では、本発明は、活性成分として上述の式Iの発明的化合物を含む、薬学的組成物を提供する。薬学的組成物は一般に、薬学的に許容可能なビヒクル、希釈剤、賦形剤又は担体(ここではこれらをまとめて賦形材料又は不活性成分と呼ぶ)を更に含む。本発明の薬学的組成物は、アレルギ性疾患及び状況、炎症、眼球の刺激、「ドライアイ」状況(眼球乾燥症)、鼻詰まり、喘息等の呼吸気道の炎症性疾患等の治療において有用性を有する。
いくつかの実施形態では、本発明は、活性成分として式Iの発明的化合物を含む薬学的組成物の調製方法を開示する。本発明の薬学的組成物を及び方法において、活性成分は典型的には、経口錠剤、カプセル(固体充填、半固体充填又は液体充填)、粉末、経口ゲル、エリキシル剤、分散性顆粒、シロップ、懸濁液、スプレー、液滴、洗浄剤、軟膏、局所リポソーム製剤等から所望の投与形態に関して適切に選択された、従来の薬学的慣例に適合する適切な担体材料と混合した状態で投与する。例えば、錠剤又はカプセルの形態での経口投与活性薬剤成分を、ラクトース、デンプン、スクロース、セルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、滑石、マンニトール、エチルアルコール(液体形態)等、いずれの経口非毒性の、薬学的に許容可能な不活性担体と組み合わせてよい。更に、それが望ましい場合又は必要な場合には、適切な結合剤、潤滑剤、崩壊剤及び着色剤を混合物中に組み込んでよい。
適切な結合剤は、デンプン、ゼラチン、天然糖、コーン甘味料、アカシアなどの天然及び合成ゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール並びにワックスを含む。潤滑剤の中では、これらの剤形で使用されるものとしてホウ酸、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム等を挙げることができる。崩壊剤はデンプン、メチルセルロース、グアーガム等を含む。適切な場合には甘味剤及び香味剤並びに防腐剤が含まれていてもよい。上記の用語のいくつか、即ち崩壊剤、希釈剤、潤滑剤、結合剤等について、以下でより詳細に議論する。
更に、本発明の組成物は、構成要素又は活性成分の速度制御放出を提供することによって治療的効果、即ち抗ヒスタミン活性等を最適化するために、持続放出形態に製剤してよい。持続放出のための適切な剤形は、異なる崩壊速度の複数の層を含む多層錠剤、又は活性構成要素を含浸して錠剤形態に成形したポリマーマトリクス、又はこのような含浸若しくはカプセル化多孔性ポリマーマトリクスを含むカプセルを含む。
液体形態の調製は、溶液、懸濁液及び乳液を含む。例として、非経口注射用の水又は水−プロピレングリコール溶液、又は経口溶液、懸濁液及び乳液のための甘味剤及び鎮静剤の添加を挙げることができる。液体形態の製剤はまた、鼻腔投与のための溶液も含んでよい。
吸入に適したエアロゾル形態の調製は、溶液及び粉末形態の固体を含んでよく、これらは例えば窒素等の不活性圧縮ガスである薬学的に許容可能な担体と組み合わせてよい。
直腸投与用組成物は、本発明の化合物を、例えばココアバター、ポリエチレングリコール又は坐剤ワックス等の適切な非刺激性賦形剤又は担体と混合することによって調製できる坐剤であり、常温で固体であるが体温で液体となるため、適切な体腔内にある間に溶融し、その中の活性成分を放出する。
経口投与又は非経口投与用の液体形態の調製に使用直前に変換できるよう設計された固体形態の調製も含まれる。このような液体形態は溶液、懸濁液及び乳液を含む。
式Iの化合物は経皮送達することもできる。経皮送達用組成物はクリーム、ローション、エアロゾル及び/又は乳液の形態であってよく、この目的において当該技術分野で慣用のマトリクス又はリザーバタイプの経皮用パッチに含めることができる。
製剤の選択は、薬剤投与態様(例えば経口投与用、錠剤、ピル又はカプセル形態での製剤)及び薬剤物質のバイオアベイラビリティ等、様々な要素に左右される。現在、薬学的製剤は、
表面積を増大させる、即ち粒子サイズを低下させることによってバイオアベイラビリティを上昇させることができるという原理に基づいて、バイオアベイラビリティが低い薬剤に関して特に進歩している。例えば米国特許第4107288号は、10〜1000nmの範囲のサイズの粒子を有する薬学的製剤について記載しており、この製剤では、巨大分子の架橋マトリクス上に活性材料が支持されている。米国特許第5145684号は、薬学的製剤の製造について記載しており、ここでは、表面改質剤の存在下で薬剤物質をナノ粒子(平均粒子サイズ400nm)に粉砕して液体媒質中に分散することにより、特に高いバイオアベイラビリティを示す薬学的製剤を製造する。
非経口注射に適した組成物は、生理学的に許容可能な滅菌水性又は非水性溶液、分散液、懸濁液又は乳液、及び注射可能な滅菌溶液又は分散液に再構成するための滅菌粉末を含んでよい。適切な水性及び非水性担体、希釈剤、溶媒又はビヒクルの例は、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール等)、これらの適切な混合物、植物油(オリーブ油等)及びオレイン酸エチル等の注射可能な有機エステルを含む。例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散時の所望の粒子サイズの維持、及び界面活性剤の使用によって、適切な流動性を維持できる。
1つの具体的な投与経路は、治療対象の疾患の状態の重篤度によって調整できる好都合な連日投与レジメンを用いた経口経路である。
経口投与用固体剤形は、カプセル、錠剤、丸剤、粉末及び顆粒を含む。このような固体剤形では、式Iの化合物を、クエン酸ナトリウム又はリン酸二カリウム等の少なくとも1つの慣用の不活性賦形剤(若しくは担体)、又は(a)例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及びケイ酸等の充填剤若しくは増量剤、(b)例えばセルロース誘導体、デンプン、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及びアラビアゴム等の結合剤、(c)例えばグリセロール等の保湿剤、(d)例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ若しくはタピオカデンプン、アルギン酸、クロスカルメロースナトリウム、複合ケイ酸塩及び炭酸ナトリウム等の崩壊剤、(e)例えばパラフィン等の溶液遅延剤、(f)例えば第四級アンモニウム化合物等の吸収促進剤、(g)例えばセチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロール、ステアリン酸マグネシウム等の湿潤剤、(h)例えばカオリン及びベントナイト等の吸着剤、並びに(i)例えば滑石、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、又はこれらの混合物等の潤滑剤と混合する。カプセル、錠剤及び丸剤の場合、剤形は緩衝剤も含んでよい。
上述のような固体剤形は、腸溶性コーティング及び当該技術分野で公知のその他のもの等のコーティング及びシェルを有するように調製できる。これらは鎮静剤を含んでよく、1つ又は複数の式Iの化合物を消化管の特定の部位において遅延放出するような化合物であってもよい。使用可能な埋め込み形態の組成物の例は、ポリマー物質及びワックスである。活性化合物は、適切な場合には1つ又は複数の上述の賦形剤と共にマイクロカプセル化された形態であってもよい。
経口投与用液体剤形は、薬学的に許容可能な乳液、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシル剤を含む。このような剤形は例えば、1つ若しくは複数の式Iの化合物又はその薬学的に許容可能な塩及び任意の薬学的アジュバントを、例えば水、生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール、エタノール等の担体;例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド等の可溶化剤及び乳化剤;油、特に綿実油、落花生油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油;グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル;又はこれらの物質の混合物等に溶解させる、分散させる等し、溶液又は懸濁液を形成することによって調製される。
懸濁液は、活性化合物に加えて、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカント、又はこれらの物質の混合物等の懸濁化剤を含んでよい。いくつかの実施形態では、組成物をリポソームの形態で投与してもよい。リポソームは一般に、リン脂質又は他の脂質物質由来であり、水性媒体中に分散された単層又は多層水和液晶で形成される。リポソームを形成できるいずれの非毒性かつ生理学的に許容可能かつ代謝可能な脂質を使用できる。リポソーム形態の組成物は、安定剤、防腐剤、賦形剤等を含んでよい。好ましい脂質は、天然及び合成のリン脂質及びフォスファチジルコリン(レシチン)である。リポソームを形成するための方法は当該技術分野で公知であり、これに関して、Prescott編、Methods in Cell Biology、第14巻、Academic Press、New York、N.Y.(1976年)p.33以降を特に参照し、この文献の内容は参照により本明細書に援用される。
直腸投与用組成物は、本発明の化合物を、例えばココアバター、ポリエチレングリコール又は坐剤ワックス等の適切な非刺激性賦形剤又は担体と混合することによって調製できる坐剤であり、常温で固体であるが体温で液体となるため、適切な体腔内にある間に溶融し、その中の活性成分を放出する。
式Iの化合物の局所投与用剤形は、軟膏、粉末、スプレー及び吸入薬を含む。活性化合物は、滅菌条件下で生理学的に許容可能な担体及び必要に応じていずれの防腐剤、緩衝剤又は噴霧剤と混合する。圧縮ガスを用いて、本発明の化合物をエアロゾル形態に分散してよい。この目的のために適切な不活性ガスは窒素、二酸化炭素等である。
一般に、所望の投与態様に応じて、薬学的に許容可能な組成物は、本発明の1つ若しくは複数の化合物又はその薬学的に許容可能な塩を約1〜約99重量%、及び適切な薬学的賦形剤を99〜1重量%含むことになる。一実施例では、組成物は本発明の1つ若しくは複数の化合物を約5〜約75重量%含み、残りは1つ又は複数の適切な薬学的賦形剤である。固定用量での製剤の場合、このような製品は、上述の用量範囲内の本発明の組成物及び許容容量範囲内の1つ又は複数の他の薬学的作用剤を有する。本発明の化合物は、1つ又は複数の公知の薬学的に許容可能な薬剤と組み合わせての製剤が不適切である場合、これと順次交替して使用してよい。
好ましくは、薬学的調製は単位剤形で行われる。このような形態では、所望の目的を達成するために、調製は、適切な量の活性化合物、例えば治療有効量の式Iの化合物を含む適切なサイズの単位用量に分割される。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は一般に、特定の用途に応じて約0.01〜約100ミリグラム、好ましくは約0.1〜約50ミリグラム、より好ましくは約0.5〜約25ミリグラム、典型的には約1〜約10ミリグラムに変更又は調整し得る単位剤形に製剤された、ある量の式Iの本発明の化合物を含む。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、治療有効量の式Iの選択的抗アレルギ性ベンゾシクロヘプタチオフェン誘導体化合物、又は式Iの化合物、又は表1に記載の化合物、及び薬学的に許容可能な担体、ビヒクル又は賦形剤を含む。いくつかの実施形態では、本発明は、治療有効量の選択的抗アレルギ性ベンゾシクロヘプタチオフェン誘導体化合物を含む薬学的組成物を提供し、ここで選択的抗アレルギ性ベンゾシクロヘプタチオフェン誘導体化合物は表1に示されたものであり、この化合物は薬学的に許容可能な担体、ビヒクル又は賦形剤と混合された形態である。別の例示的な薬学的組成物は、4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)−ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オンを含む治療有効量の選択的抗アレルギ性ベンゾシクロヘプタチオフェン誘導体化合物を、薬学的に許容可能な担体、ビヒクル又は賦形剤と混合された形態で含むことができる。薬学的組成物の一実施例では、薬学的組成物は、式Iの選択的抗アレルギ性ベンゾシクロヘプタチオフェン誘導体化合物を含む薬学的単位容量組成物を含み、この化合物は、薬学的単位容量組成物中に、約0.01〜約100ミリグラム、好ましくは約0.1〜約50ミリグラム、より好ましくは約0.5〜約25ミリグラム、典型的には約1〜約10ミリグラムで存在し、この化合物は少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体、ビヒクル又は賦形剤と混合された形態である。薬学的組成物の更なる実施例は、表1に示す選択的抗アレルギ性ベンゾシクロヘプタチオフェン誘導体化合物を含む薬学的単位容量組成物を含み、この化合物は、薬学的単位容量組成物中に、約0.01〜約100ミリグラム、好ましくは約0.1〜約50ミリグラム、より好ましくは約0.5〜約25ミリグラム、典型的には約1〜約10ミリグラムで存在し、この化合物は少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体、ビヒクル又は賦形剤と混合された形態である。いくつかの実施形態では、薬学的単位容量組成物は、治療有効量の4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)−ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オンを含み、この化合物は、薬学的単位容量組成物中に、約0.01〜約100ミリグラム、好ましくは約0.1〜約50ミリグラム、より好ましくは約0.5〜約25ミリグラム、典型的には約1〜約10ミリグラムで存在し、この化合物は少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体、ビヒクル又は賦形剤と混合された形態である。
実際に使用する用量は、患者の年齢、性別、体重及び治療対象の状態の重篤度に応じて変化し得る。このような技術は当該技術分野で公知である。1つの例示的実施形態では、単位容量は、1mgの化合物Aを遊離塩基形態で含む(これは約1.29mgの水素フマル酸塩の形態の化合物Aに相当する)固体錠剤の薬学的組成物を含む。別の例示的実施形態では、5mLのシロップは、1mg/5mLの化合物Aを遊離塩基形態で含む(これは約1.29mg/5mLの水素フマル酸塩の形態の化合物Aに相当する)を含む。
このような剤形を調製する実際の方法は公知であるか、又は当業者に明らかであり、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences、第18版(Mack Publishing Company、Easton、Pa.、1990年)を参照されたい。いずれの場合においても、投与する組成物は、本発明の教示によって疾患状態を治療するために、治療有効量の本発明の化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含む。
眼科用組成物
眼軟膏、粉末、スプレー、液滴、洗浄液、軟膏、局所用リポソーム製剤を含む眼科用製剤もまた、本発明の範囲内にあるものと考えられる。本明細書で使用する眼科用組成物の化合物の「濃度」は、組成物の全体積に対する化合物の重量濃度(即ちg/mL又はwt/vol)を意味し、典型的には%で表される。
いくつかの実施形態では、眼科用組成物は、約0.01%〜約0.1%、又は約0.02%〜約0.05%の遊離塩基の形態又は同等の塩の形態、例えばフマル酸塩の形態の式Iの組成物を、適切な眼科用担体と混合された形態で含むことができる。いくつかの実施形態では、眼科用組成物は、約0.01%〜約0.1%(wt/vol)の濃度の4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)−ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オンを含むことができる。いくつかの実施形態では、局所的眼科用投与のために、眼科用担体は:水、水とC1−〜C7−アルカノール等の水混和性溶媒との混合物、0.5〜5重量%のオレイン酸エチルを含む植物油又は鉱油、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、及び眼科用に使用できる他の非毒性水混和性ポリマーを含むことができ、メチルセルロース等のセルロース誘導体;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースのアルカリ金属塩;ポリアクリル酸又はアクリル酸エチルの塩等のアクリレート又はメタクリレート;ポリアクリルアミド;ゼラチン、アルギン酸塩、ペクチン、トラガカント、カラヤゴム、キサンタンガム、カラギーナン、寒天及びアカシア等の天然物;酢酸デンプン及びヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン誘導体;並びにポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、中性カルボポール等の好ましくは架橋ポリアクリル酸、又はこれらのポリマーの混合物等の他の合成物を含んでもよい。好ましい担体は、水、メチルセルロース等のセルロース誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプルピルセルロース、中性カルボポールの塩、又はそれらの混合物である。極めて好ましい担体は水である。担体の濃度は、例えば活性成分の濃度の1〜100000倍である。
いくつかの実施形態では、局所的投与用の眼科用組成物は、非イオン性等張化剤を任意に含んでもよい。いくつかの実施形態では、非イオン性等張化剤はグリセロールを含むが、例えば尿素、ソルビトール、マンニトール、プロピレングリコール、及びデキストロース等の他の等張化剤を使用してよい。いくつかの実施形態では、非イオン性等張化剤は、組成物は400〜750ミリオスモル/キログラム(mOsm/Kg)、好ましくは425〜700mOsm/kg、より好ましくは550〜700mOsm/Kg、更に好ましくは600〜700mOsm/kg、一層好ましくは650〜700mOsm/kgの浸透圧を有するような濃度で提供される。いくつかの実施形態では、グリセロールは非イオン性等張化剤として、3%〜10%、好ましくは4〜8%、より好ましくは5%〜7%、更に好ましくは5.5%〜6.5%、一層好ましく5.75〜6.25%の濃度で使用される。更に他の実施形態では、グリセロールは非イオン性等張化剤として、組成物が400〜750mOsm/Kg、好ましくは425〜700mOsm/Kg、より好ましくは550〜700mOsm/Kg、更に好ましくは600〜700mOsm/Kg、一層好ましくは650〜700mOsm/Kgの浸透圧を有するよう、3.5%超、好ましくは4.5%超、より好ましくは5.5%超、更に好ましくは5%〜7%、一層好ましくは5.5%〜6.5%の濃度で使用される。
組成物を特に複数用量用途にパッケージングする場合、本発明の眼科用組成物は任意に、1つ又は複数の防腐剤も含んでよい。例示的な防腐剤は、塩化ベンザルコニウム、polyquad防腐剤(Alcon);過ホウ酸(例えば、Ciba製過ホウ酸ナトリウム); purite防腐剤(安定化二酸化塩素)(Allergan); 塩化ベンゾキソニウム等の他の第四級アンモニウム化合物;例えば、チオメルサール、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル及びホウ酸フェニル等のチオサリチル酸のアルキル水銀塩;例えばメチルパラベン又はプロピルパラベン等のパラベン;例えばクロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール等のアルコール;例えばクロルヘキシジン又はポリヘキサメチレンビグアニド等のグアニジン誘導体等を含むことができる。眼科用組成物中で防腐剤を使用する場合、防腐剤は典型的には0.005〜0.02%、好ましくは0.01%の濃度で提供されるが、他の濃度を用いてもよい。
一実施形態では、点眼用懸濁液として使用される溶液は、約0.025%の遊離塩基形態の化合物A(これは約0.032%の水素フマル酸塩の形態の化合物Aに相当する)を含む。
1つの例示的実施形態では、局所用溶液の形態の眼科用組成物は:(1)0.25mg(0.025%)の化合物A;(2)0.10mg(0.010%)の塩化ベンザルコニウム;(3)21.25mg(2.125%)のグリセロール100%;(4)約0.75mg(約0.075%)の水酸化ナトリウム1N;及び(5)注射用(滅菌)水を含むことができ、総量が1.0mLとなる。
投与方法
本発明の組成物は、注射による投与に適した形態、経口嚥下に適した製剤(例えばカプセル、錠剤、カプレット、エリキシル剤等)、局所投与に適した軟膏、クリーム又はローションの形態、点眼薬としての送達に適した形態、鼻腔内吸入又は経口吸入等の吸入による投与に適したエアロゾル形態、非経口投与、即ち皮下、筋肉内、腹腔内又は静脈内注射に適した形態であり得る。典型的には、動物、好ましくはヒトに投与できる本発明の化合物の投与量は、動物の種類及び治療対象の疾患状態、動物の年齢及び投与経路を含むがこれらに限定されない、いずれの数の因子に応じて変化することになる。
肺送達のために製剤された本発明の薬学的組成物は、溶液又は懸濁液の液滴の形態の1つ又は複数の活性成分を提供してもよい。このような製剤は、1つ又は複数の活性成分を含む
水性若しくはアルコール希釈溶液又は懸濁液として調製、パッケージング又は販売してよく、いずれの噴霧デバイス又は霧化デバイスを用いて便利に送達できる。このような製剤は更に、例えばサッカリンナトリウム等の香味剤、揮発性油、緩衝剤、界面活性剤、又はメチルヒドロキシベンゾエート等の防腐剤等の1つ又は複数の追加の不活性成分を含んでよい。この送達経路によって供給される液滴は好ましくは約0.1〜約200ナノメートルの平均直径を有する。肺送達に便利なものとして本明細書に記載の製剤は、本発明の薬学的組成物の鼻腔内送達にも便利である。
いくつかの実施形態では、鼻腔内投与に適した例示的製剤は、活性成分を含みかつ約0.2〜500マイクロメートルの壁員粒子サイズ又は粒形を有する粗粉末である。このような製剤は、鼻孔付近に保持された粉末容器から鼻道を通して急速吸入によって投与できる。経鼻投与に適した製剤は例えば、わずか約0.1%(w/w)から100%にも及ぶ活性成分を含んでよく、更に本明細書に記載の追加の成分のうち1つ又は複数を含んでよい。
本発明の薬学的組成物は、口腔投与に適した製剤として調製、パッケージング又は販売してよい。このような製剤は例えば、慣用の方法を用いて作製される錠剤又はトローチ剤の形態であってよく、例えば0.1〜50%(w/w)の活性成分、(これに伴う範囲の)口内で溶解又は崩壊可能な化合物を含む残りの部分、及び任意に本明細書に記載の追加の成分のうち1つ又は複数を含んでよい。代替として、口腔投与に適した製剤は、1つ又は複数の活性成分を含む、粉末又はエアロゾル化若しくは霧化溶液又は懸濁液を含んでよい。このような粉末化、エアロゾル化又は霧化製剤は、分散時に好ましくは約0.1〜約200ナノメートルの平均粒子サイズ又は平均液滴サイズを有し、更に、本明細書に記載の追加の不活性成分のうちの1つ又は複数を含んでよい。
本明細書で使用する「追加の不活性成分」は、賦形剤;界面活性剤;分散剤;不活性希釈剤;造粒剤及び崩壊剤;結合剤;潤滑剤;甘味剤;香味剤;着色剤;防腐剤;ゼラチン等の生理学的に分解可能な組成物;水性ビヒクル及び溶媒;油性ビヒクル及び溶媒;懸濁剤;分散剤又は湿潤剤;乳化剤;粘滑剤;緩衝剤;塩;増粘剤;充填剤;乳化剤;酸化防止剤;抗生物質;抗真菌剤;安定剤;及び薬学的に許容可能なポリマー材料又は疎水性材料を含むがこれらに限定されない。本発明の薬学的組成物が含み得る他の「追加の不活性成分」は当該技術分野で公知であり、例えばGenaro編(1985年、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton、Pa.)に記載されており、この文献はその全体を参照により本明細書に援用されるものとする。
本発明の化合物又はその薬学的に許容可能な塩は、使用する特定の化合物の活性、化合物の代謝安定性及び作用期間、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与態様及び時間、配設速度、薬剤の組み合わせ、特定の疾患状態の重篤度、並びに治療を受けている対象に応じて変化する治療有効量で投与される。一般に、活性成分を含むヒト用経口剤形は、1日1回又は2回投与できる。投与量及び頻度は、担当の臨床医の判断によって調節される。本発明の化合物は、1日に約0.01〜約100mgの用量レベルで、単回投与又は分割投与によって患者に投与できる。約70キログラムの体重を有する通常のヒト成体では、体重1キログラムあたり1日約0.0001〜約10mg、又はより好ましくは体重1キログラムあたり1日約0.0005〜約1mg、又は体重1キログラムあたり1日約0.001〜約0.5mgの用量が例である。しかしながら、使用する具体的用量は変更できる。例えば、用量は患者の要求、治療対象の状態の重篤度、及び使用する化合物の薬学的活性を含む多数の因子に左右され得る。特定の患者に対する最適な用量の決定は、当業者に公知である。
眼科用組成物として、組成物は典型的には液滴として投与され、アレルギ製結膜炎に罹患しているか又はこれに罹りやすい患者の眼に組成物1滴を1日2回適用するが、特定の組成物の構造を含む複数の因子に応じて、より多量又は少量の組成物を、より高い又は低い頻度で使用してよい。
典型的には、治療的応用において、治療は疾患状態の期間にわたって行われる。更に、個々の投与の最適な量及び間隔は、治療対象の疾患状態の特性及び程度、投与の形態、経路及び部位、並びに治療対象の特定の個人の特性によって決定されることは、当業者には明らかであろう。また、このような最適な条件は、従来技術によって決定できる。
所定の日数に対する1日あたりの組成物の投与回数等の、最適な治療単位は、従来の治療単位決定試験を用いて当業者が決定できることもまた、当業者には明らかであろう。上述の薬学的組成物の投与は複数回、好ましくは1〜5回、1日間隔、1週間間隔又は1月間隔で繰り返すことができる。いくつかの実施形態では、単位容量を1日1〜3回又は1日1回、持続放出形態で投与してよく、これによって本明細書に記載のアレルギ又はアレルギ製疾患の1つ又は複数の症状を緩和できる。投与頻度は、臨床試験によって実験的に確認でき、処方を行う臨床医の経験に比例する合理的な利益/リスク比を提供するような投与頻度が推奨される。本明細書に記載の組成物の、様々なアレルギ性疾患又は状態の治療における治療有効量を決定するための方法は、当業者に公知である。例えば、アトピー性皮膚炎の症状は、例えばN.Engl.J.Med、1997年、337:816−21に記載されているように評価できる。喘息の症状は、Juniperら、Health Qual. Life Outcomes、2005年9月16日、3:58に記載のアンケート及びアンケートと肺活量測定との組み合わせを含む様々な方法で評価でき、例えば、喘息症状の重篤度は、N.Engl.J.Med、2000年、343:1054−63に記載されているように、メタコリン投与前後の肺活量測定によって評価できる。これらの参考文献は、参照により本明細書に援用されるものとする。花粉アレルギはとりわけ経鼻誘発試験を用いて評価でき、他のアレルギ、例えば食物アレルギ、化学物質アレルギ、植物アレルギ、ハウスダスト又はイエダニアレルギは、結膜誘発プロシージャ又は免疫学又はアレルギ医療において通常使用される皮膚穿刺試験を用いて評価できる。
アレルギ性疾患及び障害の治療方法
いくつかの実施形態では、本発明は、治療を必要とする対象におけるアレルギ性疾患又はこれに関連する症状を治療するための方法を提供し、本方法は、治療有効量の式Iの抗アレルギ性ベンゾシクロヘプタチオフェン誘導体化合物又はその薬学的に許容可能な塩、又はその溶媒和物若しくはプロドラッグ、及び薬学的に許容可能な担体、ビヒクル又は賦形剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、式Iの化合物はフマル酸塩の形態である。いくつかの実施形態では、式Iの化合物のフマル酸塩は、表1の化合物のフマル酸塩である。いくつかの実施形態では、式Iの化合物のフマル酸塩は、4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)−ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オンのフマル酸塩である、任意に、いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、上述のように1つ又は複数の医学的に許容可能な賦形剤(非活性成分)との混合物中に存在してよい。薬学的組成物は、アレルギ、アレルギ性疾患、過敏症関連疾患又は喘息等の気道炎症に関連する呼吸器疾患の治療のための、以下に記載の1つ又は複数の追加の治療剤を含んでよい。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、アナフィラキシー、薬剤過敏症、皮膚アレルギ、湿疹、アレルギ性鼻炎、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、ドライアイ疾患、アレルギ性接触アレルギ、食物過敏症、アレルギ性結膜炎、昆虫毒アレルギ、気管支喘息、アレルギ性喘息、内因性喘息、職業性喘息、アトピー性喘息、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)に関連する1つ又は複数の症状を予防、治療又は軽減するにあたって効果的である。
本発明の方法で治療できる過敏症関連疾患又は障害は、アナフィラキシー、薬物反応、皮膚アレルギ、湿疹、アレルギ性鼻炎、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、ドライアイ疾患(又は乾性角結膜炎(KCS)とも呼ばれ、角膜炎、乾性角、眼球乾燥症と呼ばれることもある)、アレルギ性接触アレルギ、食物アレルギ、アレルギ性結膜炎、昆虫毒アレルギ、及び気道炎症に関連する呼吸器疾患(例えばIgE媒介型喘息及び非IgE媒介型喘息)を含むがこれらに限定されない。
気道炎症に関連する呼吸器疾患は、鼻炎、アレルギ性鼻炎、気管支喘息、アレルギ性(外因性)喘息、非アレルギ性(内因性)喘息、職業性喘息、アトピー性喘息、運動誘発性喘息、咳喘息、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)を含んでよいがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、本発明はアレルギ性疾患の症状を治療又は軽減するための方法を提供し、本方法は、治療有効量の式Iの抗アレルギ性ベンゾシクロヘプタチオフェン誘導体化合物又はその薬学的に許容可能な塩、又はその溶媒和物若しくはプロドラッグ、及び薬学的に許容可能な担体、ビヒクル又は賦形剤を、対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、本発明は治療を必要とする対象の喘息を治療するための方法を提供し、本方法は、治療有効量の式Iの抗アレルギ性ベンゾシクロヘプタチオフェン誘導体化合物又はその薬学的に許容可能な塩、又はその溶媒和物若しくはプロドラッグを投与することを含む。いくつかの実施形態では、式Iの化合物は組成物中に、遊離塩基形態又は同等の塩の形態、例えばフマル酸塩の形態で、体重1キログラムあたり約0.0001〜約10mg又は体重1キログラムあたり約0.0005〜約1mgの範囲の単位容量又は1日用量だけ存在してよい。いくつかの実施形態では、式Iの化合物は組成物中に、遊離塩基形態又は同等の塩の形態で、適切な薬学的担体、ビヒクル又は賦形剤と混合された状態で存在してよい。いくつかの実施形態では、それを必要とする対象の喘息を治療するための方法は、4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)−ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オン又はその薬学的に許容可能な塩又はその溶媒和物若しくはプロドラッグを含む組成物を投与することを含み、4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)−ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オンは、体重1キログラムあたり約0.0001〜約10mg又は体重1キログラムあたり約0.0005〜約1mgの範囲の単位容量又は1日用量で投与される。いくつかの実施形態では、喘息を治療するための方法は、治療有効量の式I若しくは表1の抗アレルギ性ベンゾシクロヘプタチオフェン誘導体化合物、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物若しくはプロドラッグを投与することを含み、ここでこの組成物又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物若しくはプロドラッグは、1日に体重1キログラムあたり約0.0001〜約10mgの量で対象に投与される。
一実施形態では、本発明は、式Iの化合物を含む組成物、及び本発明の組成物の経口又は吸入投与によって肺疾患を治療する方法を提供する。好ましくは、本組成物は気道における過敏反応を防止し、肥満細胞の関与(例えばIgE媒介型の肥満細胞の脱顆粒)並びに肥満細胞、好塩基球、好酸球、好中球、単球、マクロファージ、樹状細胞及びT細胞等の免疫エフェクタ細胞によるサイトカイン過剰産生による気道の過敏症を低減する。一態様では、本発明の組成物は、ヒスタミン作動性及びコリン作動性抗原投与に反応する気管支収縮を予防する。別の態様では、組成物は、コリン作動に対するIL−13誘発性過剰応答性を減少させる。更に別の態様では、組成物は、IgE媒介型肥満細胞脱顆粒及び不適切なサイトカイン免疫反応に続く気管支収縮を阻止する。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物及び/又は以下に詳細に説明する追加の治療剤は、治療有効量又は代替として潜在性有効量で投与できる。式Iの抗アレルギ性ベンゾシクロヘプタチオフェン誘導体化合物を追加の治療剤と組み合わせて使用してヒト患者におけるアレルギ、これに関連するアレルギ性疾患又は症状を治療又は予防する場合、ここに開示する式Iの抗アレルギ性ベンゾシクロヘプタチオフェン誘導体化合物及び追加の治療剤は、薬学的有効量又は抗アレルギ若しくは抗炎症有効量で存在してよい。これらの累加又は相乗効果により、これらを上述のような組み合わせで使用する場合、これらはそれぞれ潜在性薬学的有効量又は抗アレルギ若しくは抗炎症有効量、即ち、サイトカイン産生若しくは脂肪細胞脱顆粒を完全に阻害若しくは低減する、並びに/又はアレルギ反応、炎症及びサイトカイン過剰産生に関連する状態若しくは症状を低減若しくは緩和するにあたって、単独で使用した場合に、このような式Iの抗アレルギ性ベンゾシクロヘプタチオフェン誘導体化合物及び追加の治療剤を薬学的有効量で使用した場合と比較して、より低い薬学的有効性をもたらすような量で存在することもできる。
本発明の方法を用いてアレルギ、アレルギ性疾患又は気道炎症に関連する症状を治療又は緩和できる一方で、本発明の化合物を用いて、アレルギ、喘息、自己免疫、炎症又は関連状態における1つ又は複数の不適切な免疫反応又はその症状を阻害又は緩和することもできる。化合物のこれらの効果は:(1)肥満細胞の活性化及び脱顆粒;(2)望ましくない細胞傷害性免疫細胞の過敏症の低減;(3) アレルギ、喘息若しくは別の自己免疫若しくは炎症状態における、例えば望ましくないIgA、IgE、IgG若しくはIgM 等の、望ましくない自己抗体若しくは他の抗体合成の低減;(4)自己反応性T若しくはB細胞の望ましくない発現、増殖若しくは活性の阻害;(5)1つ若しくは複数のサイトカイン、インターロイキン若しくは細胞表面抗原、例えば本明細書に記載のサイトカイン、インターロイキン若しくは細胞表面抗原の発現の変更;(6)アレルギ状態における好酸球増加の減少;(7)例えば炎症状態若しくは自己免疫疾患における、ICAM−1、IL−1α、IL−1β、TNFα、IL−13、IL−4、IL−6若しくはIL−8のうちの1つ若しくは複数のレベル若しくは活性の検出可能な減少;(8)TNF、IFN−γ及びIL−1のうちの1つ若しくは複数のレベル若しくは生物活性の減少;(9)例えば喘息における、アラキドン酸代謝の誘発の低減若しくはトロンボキサン若しくはプロスタグランジン等のエイコサノイド代謝産物の低減;(10)例えば特発性肺線維症若しくはアレルギ性喘息等のアレルギ若しくは炎症における、IL−4、IL−6、IL−8若しくはIL−10合成、レベル若しくは活性の低減;又は(11)感染症、炎症若しくは自己免疫等の状態において、例えば影響を受けた細胞からのチオレドキシンの放出を低減することによる、好中球走化性の低減若しくは阻害のうちの1つ又は複数を検出可能に緩和することを含む。
一実施形態では、本発明は、このような治療を必要とする対象に対して本発明の組成物を投与することを含む、喘息の予防又は治療の方法であり、ここで組成物の量は、対象の喘息を予防又は治療するために十分な量である。喘息において、気道での慢性炎症プロセスは、肺の内部での空気流に対する抵抗を増大させるにあたって主要な役割を果たす。特に肥満細胞、好酸球、好塩基球、Tリンパ球、好中球、上皮細胞といった多くの細胞及び細胞要素が炎症プロセスに関与する。これらの細胞の反応の結果として、気道の内側に沿って存在する気道平滑筋細胞の、特定の刺激に対する既存の感度及び過敏反応性がこれに伴って上昇する。従って、本発明はまた、本発明の化合物を用いて喘息を迅速に治療することを含み、ここでこの化合物は、様々な免疫細胞からの炎症誘発性メディエータの産生を調節できる。喘息の迅速な治療とは、治療有効量の本発明の組成物の投与によって、対象の喘息状態の少なくとも1つの症状が、投与後4時間以内、又は3時間以内、又は2時間以内、又は1時間以内、又は30分以内に目に見えて低減されることを意味し得る。いくつかの実施形態では、本発明の化合物はまた、喘息に罹患し喘息の症状を呈している対象に対して投与すると、式Iの化合物を含む薬学的有効量の組成物の最初の投与後約1〜約72時間、又は約1〜約48時間、又は約1〜約24時間、又は約1〜約12時間、又は約1〜約4時間、又は約2〜約72時間、又は約6〜約72時間、又は約12〜約72時間、又は約18〜約72時間、又は約24〜約72時間、又は約48〜約72時間、又は約60〜約72時間の範囲の期間、対象の喘息の症状の緩和をもたらし得る。
気道の周囲の組織の炎症及び浮腫を低減することにより、気道の径を増大させることもできる。気道の炎症及び浮腫(流体の蓄積)は、喘息の慢性的特徴である。炎症及び浮腫は、本発明の化合物の適用によって創傷治癒を刺激し、正常な組織を再生することによって低減できる。継続的な侵食及び再生にさらされている上皮又は上皮の一部の治癒により、より関連が少ない気道炎症を有する健康な上皮の再生が可能となる。炎症がより少ない気道は、平常時及び収縮時の両方においてより大きな気道直径を有する。気道壁の組織が放出する炎症メディエータは、気道平滑筋収縮のための刺激として作用し得る。炎症メディエータの産生及び放出を低減する治療により、平滑筋収縮、気道の炎症及び浮腫を低減できる。炎症メディエータの例は、サイトカイン、ケモカイン及びヒスタミンである。炎症メディエータを産生及び放出する組織は、気道平滑筋、上皮、肥満細胞、好酸球及び好塩基球気道を含むがこれらに限定されない。本発明の化合物を用いたこれらの構造の治療により、気道構造の、炎症誘発性メディエータを産生又は放出する能力を低減できる。放出される炎症メディエータの低減は、慢性炎症を低減でき、これによって気道の内径を増大させることができ、気道平滑筋の過敏反応性も低減し得る。
いずれの特定の理論に拘束されることを望むものではないが、本発明の化合物は喘息の治療に使用できると考えられる。これは、本発明の化合物が免疫反応を少なくとも調製できるためである。好ましくは、喘息を治療する本方法は、薬学的に許容可能な組成物中に存在する表1の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物若しくはプロドラッグを投与することを包括し、化合物又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物若しくはプロドラッグは、1日に体重1キログラムあたり0.0001〜約10mgの量で対象に投与される。
本明細書に示す結果は、本発明の化合物が低容量で所望の経口バイオアベイラビリティを呈することを例証している。例えば、本発明の化合物の経口投与は経口的に、既知のアレルギ治療用化合物、ケトチフェンと比較して、動物モデルにおいてDNP誘発性腫脹の有意な阻害、並びに耳及び足の重量の増加を生じ、いくつかのアッセイではケトチフェンの活性を上回りさえすることが観察された(図3Bにおける、化合物で処置したマウスの足の重量を参照)。これらの結果は、以下の実施例7に示すような本発明の化合物が、インビボでのアレルゲン刺激後のアレルギ性炎症に対して治療効果を有することを示唆している。従って、本発明は、活性成分の所望のバイオアベイラビリティを達成する方法を提供する。
一実施形態では、本発明は、そのような治療を必要とする対象に本発明の組成物を投与することを含む、COPOの予防又は治療方法であり、ここで組成物の量は、対象のCOPOの予防又は緩和に十分な量である。
一実施形態では、本発明は、そのような処置を必要とする対象に本発明の組成物を投与することを含む、気管支収縮、肺の炎症又は肺アレルギの予防又は治療方法であり、ここで組成物の量は、対象の気管支収縮、肺の炎症又は肺アレルギの予防又は治療に十分な量である。
ヒト及び動物におけるアレルギ反応については極めてよく研究されており、関連のある基本的な免疫機構は公知である。ヒトにおけるアレルギ状態又はアレルギ性疾患は、湿疹、アレルギ性鼻炎又は鼻感冒、花粉症、結膜炎、気管支又はアレルギ性喘息、蕁麻疹及び食物アレルギ;アトピー性皮膚炎;アナフィラキシー;薬物アレルギ;血管浮腫;及びアレルギ性結膜炎。を含むがこれらに限定されない。イヌにおけるアレルギ性疾患は、季節性皮膚炎;通年性皮膚炎;鼻炎:結膜炎;アレルギ性喘息;及び薬物反応を含むがこれらに限定されない。ネコにおけるアレルギ性疾患は、皮膚炎及び呼吸器疾患;並びに食物アレルギを含むがこれらに限定されない。ウマにおけるアレルギ性疾患は、「細胞性肺気腫」等の呼吸器疾患及び皮膚炎を含むがこれらに限定されない。ヒト以外の霊長類におけるアレルギ性疾患は、アレルギ性喘息及びアレルギ性皮膚炎を含むがこれらに限定されない。
アレルギ反応を引き起こす分子の総称はアレルゲンである。数多くの種類のアレルゲンが存在する。IgE型の組織感作イムノグロブリンが外来アレルゲンと反応すると、アレルギ反応が発生する。IgE抗体は肥満細胞及び/又は好塩基球に結合し、これらの特殊化した細胞は、抗体分子の末端を架橋するアレルゲンによってそのように刺激された場合、アレルギ反応の化学メディエータ(血管作用性アミン)を放出する。ヒトにおけるアレルギ反応の最もよく知られたメディエータとして、ヒスタミン、血小板活性化因子、アラキドン酸代謝物、及びセロトニンがある。ヒスタミン及び他の血管作用性アミンは通常、肥満細胞及び好塩基球の白血球に貯蔵されている。肥満細胞は動物組織全体に分散しており、好塩基球は血管系内を循環する。これらの細胞はヒスタミンを製造して、IgE結合が関与する一連の特別なイベントが発生してヒスタミンの放出を誘発しない限り、細胞内でヒスタミンを貯蔵する。
従って、本発明の化合物は、好酸球及び本明細書に記載の他の免疫細胞等、1つ又は複数の他の種類の細胞による、サブスタンスP神経ペプチド、胸腺及び活性化調節ケモカイン、脂質メディエータ及びサイトカイン、例えばTNF−α、MCP−1、RANTES、CXCL10、CXCL8(IL−8)、IL−1、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−9、IL−10、IL−13及びIL−23等の1つ又は複数の生物学的メディエータの産生を減少させることによって、IgE媒介型脂肪細胞脱顆粒及び関連する反応を少なくとも部分的に低減するために使用できる。
1つの例示的実施例では、症状を低減するため、喘息反応を阻害するため、又はアレルギ反応を予防するために本発明の化合物を使用できる。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、喘息及びアレルギの両方の症状を治療及び/又は軽減するために有用である。いくつかの実施形態では、本明細書で考える予防又は治療方法は、本発明の化合物を、他の適切な治療又は追加の治療剤(例えば喘息/アレルギ用医薬)と任意に組み合わせて使用することを含む。本明細書で使用する追加の治療剤は、症状を低減し、喘息反応若しくはアレルギ反応を阻害し、又はアレルギ反応若しくは喘息反応の発現を予防する、問題の組成物である。アレルギ性疾患又は呼吸器疾患(例えば喘息)の症状を治療又は軽減するための方法の更なる実施形態では、本方法はまた、式Iの抗アレルギ性ベンゾシクロヘプタチオフェン誘導体化合物又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物若しくはプロドラッグを、例えば抗炎症剤、抗生物質、気管支拡張作用薬/β−2アゴニスト、アドレナリンアゴニスト、メチルキサンチン化合物、抗ヒスタミン薬、プロスタグランジン誘導剤、吸入グルココルチコイド、全身グルココルチコイド、免疫調節剤、ロイコトリエン調節剤、IgEブロッカー、肥満細胞安定剤、抗コリン剤、メトトレキサート、PDE−4阻害剤、K+チャネルオープナー、VLA−4アンタゴニスト、ニューロキンアンタゴニスト、TXA2合成阻害剤、キサンタニン化合物、アラキドン酸アンタゴニスト、5−リポキシゲナーゼ阻害剤、トロンボキシンA2受容体アンタゴニスト、トロンボキサンA2アンタゴニスト、5−リポキシゲナーゼ活性化タンパク質阻害剤、プロテアーゼ阻害剤及びそれらの組み合わせである追加の治療剤と任意に組み合わせて投与することを含む。
このような組み合わせを使用すると持続的薬理学的効果の改善がもたらされ、これは疾病の管理の改善につながる。例えば、本発明の化合物と追加の治療剤との組み合わせの効率は、各医薬を単独で使用する場合よりも改善される。いくつかの例では、本発明の化合物と追加の治療剤との組み合わせは相乗的に作用する。いくつかの例では、本発明の化合物と追加の治療剤との組み合わせは累加的に作用する。いくつかの例では、本発明の化合物と追加の治療剤との組み合わせは、単独で使用した場合にいずれかの薬剤が有する副作用の重篤度を低減するよう作用する。
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、気管支拡張剤及び/又はβ2アドレナリン受容体アゴニストを含む。気管支拡張剤又はβ2アドレナリン受容体アゴニストは、気管支拡張又は平滑筋弛緩を引き起こす一群の化合物である。気管支拡張剤及び/又はβ2アドレナリン受容体アゴニストは、アルブテロールとしても知られているサルメテロール(セレベント(登録商標)、グラクソ・スミスクライン製)、サルブタモール;ベントリン(登録商標)/ベントルリン(登録商標)、グラクソ・スミスクライン製;アスタリン(登録商標)、シプラ製;プロベンチル(登録商標)、シェリング・プラウ製、プロ−エア(登録商標)、テバ製、テルブタリン(ブレチン(登録商標)/ブリカニル(登録商標)/Brethaire(登録商標))、ホルモテロール(フォラジル(登録商標)/フォラジル(登録商標)、ノバルティス製;OXIS(登録商標)、アストラゼネカ製;アトック(登録商標)、アステラス製;パフォロミスト(登録商標)、デイ製)、フェノテロール(ベロテック(登録商標)、ベーリンガーインゲルハイム製)、ビトルテロール(トルナラート(登録商標)、エランファーマシューティカル製)、ピルブテロール(マックスエア(登録商標)、3M製)、及びオルシプレナリン(アロテック(登録商標)/アルペント(登録商標)/メタプレル(登録商標)/ノバスマソル(登録商標))を含むがこれらに限定されない。長時間作用性β2アドレナリン受容体アゴニスト及び気管支拡張剤は、抗炎症治療に加えて、長期間にわたる症状の予防のために使用される。これらは、アデニル酸シクラーゼを活性化し、環状AMPを増加させ、気管支収縮の機能的拮抗を生成することにより、気管支拡張又は平滑筋弛緩を引き起こす。これらの化合物はまた、肥満細胞メディエータ放出を阻害し、血管透過性を低下させて粘膜繊毛クリアランスを上昇させる。長時間作用性β2アドレナリン受容体アゴニストは、アルブテロールとしても知られているサルメテロールを含むがこれに限定されない。これらの化合物は通常、コルチコステロイドと組み合わせて使用され、一般にはいずれの炎症治療と一緒でなければ使用されない。これらは、頻脈、骨格筋振戦、低カリウム血症等の副作用と関連している。現在使用されている吸入ステロイドと長時間作用性気管支拡張剤との最も一般的な組み合わせは、フルチカゾン/サルメテロール(アドベアー(登録商標)/セレタイド(登録商標)、グラクソ・スミスクライン製)、及びブデソニド/ホルモテロール(シムビコート(登録商標)、アストラゼネカ製)である。
短時間作用性β2アドレナリン受容体アゴニスト/気管支拡張剤は、気道平滑筋を弛緩させて空気流を増大させる。これらの化合物群は、急性喘息系の治療のための好ましい薬剤
である。短時間作用性β2アドレナリン受容体アゴニストは、ビトルテロール(トルナラート(登録商標)、エランファーマシューティカル製)、ピルブテロール(マックスエア(登録商標)、3M製)、及びテルブタリン(ブレチン(登録商標)/ブリカニル(登録商標)/Brethaire(登録商標))を含むがこれらに限定されない。短時間作用性β2アドレナリン受容体アゴニストの使用に伴ういくつかの副作用は、頻脈、骨格筋振戦、低カリウム血症、乳酸の増加、頭痛及び高血糖を含む。例えば吸入エピネフリン及びエフェドリン錠剤等、以前の及び選択性の低いアドレナリン作動性アゴニストもまた、喘息の治療に使用されてきた。これらの薬剤は、アルブテロールと同様の又はこれより少ない心臓の副作用を引き起こす。吸入エピネフリンは、急性喘息増悪を停止させるために使用してよい。これらの薬剤は非経口投与してよいが、副作用はこの投与経路から生じ得る。
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は例えばテオフィリン(ジメチルキサンチンとしても知られている;エリキソフィリン(登録商標)/テオールエア(登録商標)/テオチン(登録商標)/ヌエリン(登録商標)/シノフィラート(登録商標)/ブロンコジル(登録商標)/エアロラート(登録商標)/テオベント(登録商標))、ドキソフィリン(マキシベント(登録商標)/アンシマール(登録商標)/ベンタックス(登録商標))、及びアミノフィリン(フィロコンチン(登録商標)/トリフィリン(登録商標)/ミノマール(登録商標))を含むメチルキサンチン化合物を含むことができ、症状の長期的にわたる制御及び予防に使用されてきた。これらの化合物は、ホスホジエステラーゼ阻害及び同様のアデノシン拮抗による気管支拡張を引き起こす。また、これらの化合物は気管支粘膜への好酸球浸潤を達成し、上皮内Tリンパ球数を減少させることができると考えられる。これらの化合物において特に問題となるのは、用量依存性の急性毒性である。その結果、代謝クリアランスの個人差から生じる毒性及び狭い治療領域を考慮するために、日常的な血清濃度を監視しなければならない。副作用は、頻脈、吐き気、嘔吐、頻脈性不整脈、中枢神経系刺激、頭痛、発作、吐血、高血糖及び低カリウム血症を含む。
アレルギの治療のために、他の喘息/アレルギ用の追加の治療剤を、本発明の化合物と組み合わせて使用できる。アレルギの治療に有用な追加の治療剤は、抗ヒスタミン剤、プロスタグランジン誘導剤及びステロイドを含むがこれらに限定されない。
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は抗ヒスタミン剤である。抗ヒスタミン剤は、肥満細胞又は好塩基球から放出されるヒスタミンと反作用する。これらの化合物は当該技術分野で公知であり、アレルギの治療に一般的に使用されている。抗ヒスタミン剤は
ロラタジン(クラリチン(登録商標)/クラリチン−D(登録商標)、シェリング・プラウ製;アラバート(登録商標)、ワイス製)、セチリジン(ジルテック(登録商標)/レアクチン(登録商標)、ファイザー製)及び類似体、ブクリジン(ビバジン(登録商標)/ヒスタブチジン(登録商標)/ブクリフェン(登録商標)/ブクロジン(登録商標)/ロンギフェン)、フェキソフェナジン(アレグラ(登録商標)/テルファスト(登録商標)、サノフィ・アベンティス製)、テルフェナジン(セルダン(登録商標)、シェリング・プラウ製)、デスロラタジン(ネオクラリチン(登録商標)/クララマックス(登録商標)/クラリネックス(登録商標)/アエリウス(登録商標)、シェリング・プラウ製)、ノルアステミゾール(ソルターラ(登録商標)、セプラコール製)、エピナスチン(エレスタット(登録商標)/レレスタット(登録商標)、アラガン製)、エバスチン(ケスチン(登録商標)/エバスチン(登録商標)/エバステル(登録商標)/アレバ(登録商標)、ファーマケア製)、アステミゾール(ヒスマナール(登録商標)、ヤンセン製)、レボカバスチン(リボスチン(登録商標)、ヤンセン製)、アゼラスチン(アステリン(登録商標)、メダ製)、トラニラスト(リザベン(登録商標))、ミゾラスチン(ミゾレン)(登録商標))、ベタヒスチン(SERC(登録商標))等を含むがこれらに限定されない。
いくつかの実施形態では、追加の治療剤はプロスタグランジンを含むことができる。プロスタグランジン誘導剤は、プロスタグランジン活性を誘発して平滑筋弛緩を調整する化合物である。プロスタグランジン誘発剤の例は、レバミピドである。
本発明の化合物と組み合わせて使用できる追加の治療剤はまた、ステロイド及び免疫調節剤を含む。グルココルチコイドは、グルココルチコイド受容体(GR)と結合する能力及び同様の効果を誘発する能力を特徴とするステロイドホルモンの群である。グルココルチコイドは、その特異的受容体、標的細胞及び効果によって、鉱質コルチコイド及び性ステロイドと区別される。技術用語として、コルチコステロイドは、(いずれも副腎皮質によって産生されるホルモンのミミックとしての)グルココルチコイド及び鉱質コルチコイドの両方を表すが、グルココルチコイドの同義語として使用される場合がある。本文書では、グルココルチコイドとコルチコステロイドは相互交換可能なものとして使用する。
いくつかの実施形態では、追加の治療剤はコルチコステロイドを含むことができる。コルチコステロイドは、症状の発現を予防するため、並びに開始因子に由来する炎症を抑制、制御及び反転するために長期間にわたって使用される。吸入によって投与できるコルチコステロイドと、全身投与されるコルチコステロイドがある。吸入されたコルチコステロイドは、後期反応アレルゲンを阻害し、気道過敏反応性を低減することによる抗炎症機能を有する。これらの薬剤はまた、サイトカイン産生、接着タンパク質の活性化、並びに炎症性細胞遊走及び活性化を阻害する。これらはまた、β2受容体のダウンレギュレーションを反転させ、微小血管漏出を阻害すると考えられている。
コルチコステロイドは一般に、進行を防止するため、炎症を反転させるため、及び疾患からの迅速な回復のために、重度の増悪を緩和するために使用される。コルチコステロイドは、グルコース代謝における可逆的異常、食欲増進、体液貯留、体重増加、気分変動、高血圧、消化性潰瘍、及び稀に大腿部の無菌性壊死症に関連する。これらの化合物は、十分に制御されていない持続性喘息における炎症反応の短期間(例えば3〜10日)にわたる防止に有用である。これらはまた、炎症を抑制及び制御し、並びに実際には反転させるための、重篤な持続性喘息における症状の長期間にわたる防止においても機能する。全身性のコルチコステロイドに関連する副作用は、吸入コルチコステロイドに関係するものよりもかなり強い。長期間使用に関連する副作用としては、副腎軸抑制、成長抑制、皮膚菲薄化、高血圧、糖尿病、クッシング症候群、白内障、筋力低下及び稀に免疫機能障害がある。
本発明の化合物とステロイドとの組み合わせは、若年対象(例えば小児)の治療に特によく適している。今日まで、ステロイド治療の中には成長遅延に関連するものがあると報告する観察により、小児におけるステロイドの使用は制限されてきた。従って、本発明によると、本発明の化合物はステロイドと組み合わせて使用でき、ステロイドの必要な用量を少なくすることができる。
コルチコステロイドは、プロピオン酸ベクロメタゾン(吸入:ベコチブ(登録商標)/Qvar(登録商標);鼻スプレー:ベコナーゼ(登録商標)/バンセナーゼ(登録商標))、ブデソニド(リノコート(登録商標)/パルミコート(登録商標)、アストラゼネカ製)、フルニソリド(エアロビッド(登録商標)/ナザリン(登録商標)/ナザレル(登録商標))、プロピオン酸フルチカゾン(フロベント(登録商標)/フロナーゼ(登録商標)、グラクソ・スミスクライン製、フリクソチド(登録商標)/フリクソナーゼ(登録商標)、アレン&ハンバリーズ製)、フルチカゾンフランカルボン酸(ベラミスト(登録商標)、グラクソ・スミスクライン製)、及びトリアムシノロン(ケナログ(登録商標)/アリストコート(登録商標)/ナザコート(登録商標)/トリナザール(登録商標)/トリダーム(登録商標)/アズマコ−rt(登録商標)/トリル(登録商標)/ボロンA(登録商標)/トリストジェクト(登録商標)/フォウゲラ(登録商標)/トリコートル(登録商標)/トリエセンス(登録商標))を含むがこれらに限定されない。デキサメタゾンは抗炎症作用を有するコルチコステロイドであるが、これは高吸収性であり、有効用量において長期間にわたる抑制性副作用を有するため、吸入形態での喘息/アレルギの治療には通常使用されない。本発明によると、本発明の化合物と組み合わせて投与すると、デキサメタゾンを低用量で投与でき、これによって副作用を低減できるため、デキサメタゾンを喘息/アレルギの治療のために使用できる。更に、本発明の化合物を投与して、デキサメタゾンの副作用を、高濃度においてさえ低減できる。コルチコステロイドに関連する副作用としては、咳、発声障害、口腔カンジダ症(カンジダ症)、及び高用量においては副腎抑制、骨粗鬆症、成長抑制、皮膚の菲薄化、容易な痣の形成といった全身性の副作用がある。
全身性のコルチコステロイドは、メチルプレドニゾロン(メドロール(登録商標)/ソル−メドロール(登録商標)、サンド製)、プレドニゾロン(テバ、KVファーマシューティカル製)及びプレドニゾン(デルタゾンプレドニゾン(登録商標)、ファルマシア&アップジョン製)を含むがこれらに限定されない。
吸入グルココルチコイドは、最も広く使用されている予防薬であり、通常は:シクレソニド(オルベスコ(登録商標)、ナイコメッド)、ベクロメタゾン(吸入:ベコチブ(登録商標)/Qvar(登録商標);鼻スプレー:ベコナーゼ(登録商標)/バンセナーゼ(登録商標))、ブデソニド(リノコート(登録商標)/パルミコート(登録商標)、アストラゼネカ製)、フルニソリド(エアロビッド(登録商標)/ナザリン(登録商標)/ナザレル(登録商標))、フルチカゾン(フロベント(登録商標)/フロナーゼ(登録商標)/ベラミスト(登録商標)、グラクソ・スミスクライン製、フリクソチド(登録商標)/フリクソナーゼ(登録商標)、アレン&ハンバリーズ製)、モメタゾン(ナスルクス(登録商標)/アズマネックスツイストハーラー(登録商標)、シェリング・プラウ)、トリアムシノロン(ケナログ(登録商標)/アリスト(登録商標)/ナザコート(登録商標)/トリナーゼ(登録商標)/トリダーム(登録商標)/アズマコ−rt(登録商標)/トリル(登録商標)/ボロンA(登録商標)/トリストジェクト(登録商標)/フォウゲラ(登録商標)/トリコートル(登録商標)/トリエセンス(登録商標))の吸入デバイスとして構成される。コルチコステロイドの使用の有害な副作用のため、一般には吸入ステロイドが予防のために使用される。これは吸入ステロイドの場合には経口製剤の高用量とは異なり、肺を標的としてより少ない用量を使用するためである。
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は免疫調節剤を含むことができる。免疫調節剤は、抗炎症剤、ロイコトリエンアンタゴニスト、IL−4ムテイン、可溶性IL−4受容体、免疫抑制剤、抗IL−4抗体、IL−4アンタゴニスト、抗IL−5抗体、可溶性IL−13受容体−Fc融合タンパク質、抗IL−9抗体、CCR3アンタゴニスト、CCR5アンタゴニスト、VLA−4阻害薬、IgEのダウンレギュレータ等を含むがこれらに限定されない。
いくつかの実施形態では、追加の治療剤はロイコトリエン改質剤を含むことができる。ロイコトリエン改質剤は、軽い持続性喘息における症状の長期間にわたる制御及び防止のために使用されることが多い。ロイコトリエンは、肥満細胞、好酸球、及び好塩基球から放出される生化学的メディエータであり、気道平滑筋の収縮を引き起こし、血管透過性、粘液分泌を増大させ、喘息患者の気道において炎症細胞を活性化する。ロイコトリエン改質剤は、LTD−4及びLTE−4受容体に対して選択的に競合することにより、ロイコトリエン受容体アンタゴニストとして機能する。これらの化合物は、モンテルカスト(シングレア(登録商標)、メルク製)、ザフィルルカスト(アコレート(登録商標)/アコライト(登録商標)/バンチコン(登録商標)、アストラゼネカ製)、プランルカスト及びジレウトン(ジフロ(登録商標)、アボット製)を含むがこれらに限定されない。ジロートン錠剤は、5−リポキシゲナーゼ阻害剤として機能する。
いくつかの実施形態では、追加の治療剤はIgEのダウンレギュレータを含むことができる。IgEのダウンレギュレータは、ペプチド、又はIgE受容体と結合して抗原特異的IgEの結合を防止する能力を有する他の分子を含む。IgEの別の種類のダウンレギュレータは、ヒトIgE分子のIgE受容体結合領域を標的とするモノクローナル抗体である。よって、抗IgE抗体又は抗体フラグメントは、IgEのダウンレギュレータの一種である。当業者は、同じ機能を有する結合ペプチドの機能的に活性な抗体断片を調製できる。他のタイプのIgEダウンレギュレータは、細胞表面上のFc受容体へのIgE抗体の結合を阻害し、IgEが既に結合されている結合部位からIgEを変位させることができる、ポリペプチドである。IgEブロッカーの例は、オマリズマブ(ゾレア(登録商標))であり、これは選択的にIgEに結合できる、ジェネンテック/ノバルティス製の組み換えDNA由来IgGlkモノクローナル抗体である。
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は肥満細胞安定剤を含むことができる。肥満細胞安定剤は、その名称が暗示するように、肥満細胞膜を安定化し、好酸球及び上皮細胞からのメディエータの活性化及び放出を阻害する。クロモリンナトリウム(クロモグリク酸;鼻スプレー:リナクロム(登録商標)(英国)、ナザルクロム(登録商標)、プレバリン(登録商標)(オランダ);吸入:インタル(登録商標);経口形式:ガストロクロム(登録商標))及びネドクロミル(吸入:トリアデ(登録商標);点眼用:アロクリル(登録商標))を例とするこのような化合物は、運動に起因する初期喘息症状又はアレルゲンに起因するアレルギ症状を予防するための長期間制御医薬として使用される。これらの化合物は、クロリドチャネル機能に干渉することによって、アレルゲンに対する初期及び後期反応を阻害すると考えられる。
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は抗コリン剤を含むことができる。抗コリン剤は、神経伝達物質であるアセチルコリンを中央神経系及び末梢神経系において阻害する物質である。抗コリン剤は頻繁に、ニューロンのアセチルコリン受容体上でアセチルコリンが媒介する効果を、競合的阻害によって低減する。従って、これらの効果は可逆性である。抗コリン剤は、影響を及ぼす受容体に応じて以下のように分類される:(a)抗ムスカリン剤は、ムスカリン性アセチルコリン受容体に作用する;抗コリン剤の大部分は抗ムスカリン剤である;及び(b)抗ニコチン剤は、ニコチン性アセチルコリン受容体に作用する。抗コリン剤は一般に、急性気管支痙攣の緩和に使用される。これらの化合物は、ムスカリン性コリン受容体の競合的阻害によって機能すると考えられている。抗コリン剤は、臭化イプラトロピウム(アトロベント(登録商標)/アポベント(登録商標)、ベーリンガーインゲルハイム製)、オキシトロピウム及びチオトロピウム(スピリーバ(登録商標)、ベーリンガーインゲルハイム/ファイザー製)を含むがこれらに限定されない。これらの化合物は、コリン媒介型気管支痙攣のみを反転し、抗原へのいずれの反応を変更しない。副作用は、口及び気道分泌物の乾燥、個人によっては喘鳴の増大、眼に噴霧した場合の視力障害を含む。イプラトロピウムはまた、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び喘息の管理のためにアルブテロール(商品名コンビベント(登録商標)及びダルブ(登録商標))と、並びに喘息の管理のためにフェノテロール(商品名デュオベント(登録商標)及びベロデュアル(登録商標))と組み合わせられる。
いくつかの実施形態では、追加の治療剤はメトトレキサートを含むことができる。メトトレキサートは、癌及び自己免疫疾患の治療に使用される、抗代謝及び抗葉酸剤である。これは葉酸の代謝を阻害することによって作用する。難治性喘息の症例を伴う強直性脊椎炎、クローン病、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、及び強皮症を含む、一部の自己免疫疾患に対する治療として使用されている。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物と組み合わせることができる有用な追加の治療剤は:アルブテロール、レバルブテロール、ピルブテロール、アルホルモテロール、ホルモテロール、サルメテロール、サルブタモール、テルブタリン、ビトルテロール、フルチカゾン、ブデソニド、並びにイプラトロピウム、臭化イプラトロピウム、オキシトロピ及びチオトロピウムを含む抗コリン薬を含む、β2−アゴニスト;経口、全身及び吸入グルココルチコイドを含み、ベクロメタゾン、ブデソニド、フルニソリド、フルチカゾン、モメタゾン、トリアムシノロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、シクレソニドを含む、コルチコステロイド、グルココルチコイド;モンテルカスト、ザフィルルカスト、プランルカスト及びジロイトンを含むロイコトリエン改質剤;クロモリン及びネドクロミルを含む肥満細胞安定剤;テオフィリン、アミノフィリン、並びにイプラトロピウム及びアルブテロール、フルチカゾン及びサルメテロール、ブデソニド及びホルモテロールを含む併用剤を含む、エピネフリン、エフェドリン、メチルキサンチン;ヒドロキシジン、ルパタジン、ジフェンヒドラミン、ケトチフェン、ノルケトティフェン、ロラタジン、セチリジン及びヒドロコルチゾンを含む抗ヒスタミン剤;タクロリムス及びピメクロリムスを含む免疫系調節剤;シクロスポリン;アザチオプリン;ミコフェノール酸モフェチル;オマリズマブを含むIgEブロッカー、並びにこれらの組み合わせを含むことができる。
いくつかの実施形態では、公知のアレルゲン感受性を有する対象のアレルギ性疾患を治療するための方法は、式Iの化合物を、上記公知のアレルゲンの用量を増加させた注射と組み合わせて送達することにより、アレルゲンへの耐性を誘発して更なるアレルギ反応を予防することを含むことができる。アレルゲン注射療法(アレルゲン免疫療法)は、アレルギ性鼻炎の重篤度を低減することが知られている。アレルゲン注射療法をアナフィラキシーショック等の副作用のリスクと関連付けることは可能であるが、本発明の化合物及び当該アレルギの治療において公知である任意の追加の治療剤を、アレルゲンと組み合わせて使用することにより、副作用の多くを回避できる。
いくつかの場合においては、対象は、任意の追加の治療剤があってもなくてもよい本発明の組成物による治療に加えて、アレルゲン、アレルゲン誘発溶液又はアレルゲン抽出物に曝露される。この特定の方法では、対象はアレルゲン、アレルゲン誘発溶液又はアレルゲン抽出物に曝露されると言うことができる。本明細書で使用する用語「曝露される」は、対象をアレルゲンと接触させる能動的なステップ、又はインビボでのアレルゲン、アレルゲン誘発溶液若しくはアレルゲン抽出物への対象の受動的な曝露のいずれかを表す。アレルゲンへの対象の能動的な曝露の方法は当該技術分野で公知である。一般に、アレルゲン、アレルゲン誘発溶液又はアレルゲン抽出物は、静脈内、筋肉内、経口、経皮、粘膜、鼻腔内、気管内、又は皮下投与等のいずれの手段によって直接対象に投与される。アレルゲン、アレルゲン誘発溶液又はアレルゲン抽出物は全身又は局所投与できる。アレルゲン、アレルゲン誘発溶液又はアレルゲン抽出物を身体内の免疫細胞に対して曝露できる場合、対象はアレルゲン、アレルゲン誘発溶液又はアレルゲン抽出物に受動的に曝露される。対象の周囲の環境にアレルゲンが存在する場合、即ちアレルゲンが花粉である場合に、アレルゲンが体内に入ることにより、対象はアレルゲン、アレルゲン誘発溶液又はアレルゲン抽出物に受動的に曝露され得る。
本明細書で使用する用語「予防する(prevent)」「予防された(prevented)」又は「予防すること(preventing)」は、アレルギ性障害又は喘息性障害の治療に対してこれらを使用する場合、抗原に対する対象の耐性を増大させる、即ち対象がアレルゲンに対するアレルギ又は喘息反応を発現する可能性を低下させる予防的治療、及びアレルギ性障害又は喘息性障害の発現後に、アレルギ/喘息に対処するための、例えばこれを完全に低減若しくは排除する又は悪化を防止するための治療を表す。
別の態様では、本発明は、喘息若しくはアレルギ又は喘息若しくはアレルギを発現するリスクを有する対象に対して、本発明の化合物と組み合わせて追加の治療剤を治療的用量の部分量だけ投与することにより、追加の治療剤の用量を低減する方法を含み、ここで治療的用量の部分量の追加の治療剤と、本発明の化合物との組み合わせは、対象の喘息又はアレルギの予防又は治療に治療的結果をもたらす。本方法により、使用する追加の治療剤の用量を低下させることができる。これによって、薬剤の使用量が低下することによるコストの低下、及び用量の低下による、薬物由来の副作用を誘発する危険性の低下を含む、複数の利点が得られる。
他の態様によると、本発明は、本発明の化合物及び追加の治療剤を異なる投薬スケジュールで投与することにより、喘息及び/又はアレルギを治療又は予防する方法を提供する。一態様では、本発明は、免疫反応を調節するために有効な量の本発明の化合物を対象に投与し、続いて追加の治療剤を対象に投与することによって、喘息又はアレルギを予防又は治療する方法である。他の態様では、本発明は、ある程度の症状の緩和をもたらすために有効な量の追加の治療剤を対象に投与し、続いて本発明の化合物を対象に投与することによって、喘息又はアレルギを予防又は治療する方法である。
キット
本発明はまた、本発明の組成物及び送達デバイスを備えるキットも提供する。組成物は、単回単位用量又は複数単位容量の形態で、及びバルク形態で存在すると便利であり得、調剤分野で公知のいずれの方法で調製してよい。キット内にある組成物は既に製剤されているか、又はキット内で化合物と他の成分とを分離して提供し、かつその製剤及び投与レジメンの支持を提供する。キットはまた、本明細書の他の箇所で説明したもの等の他の作用剤を含んでよく、例えばキットが非経口投与用である場合には、別個の容器内に担体を提供してよく、この担体は滅菌されていてよい。本組成物はまた、凍結乾燥形態で提供してもよく、投与前に液体担体を添加するための、滅菌されていてよい別個の容器内に提供してもよい。
特定の実施形態では、本発明のキットは、本発明の化合物、アプリケータ、及びその使用のための指示書を備える。別の実施形態では、キットは、本明細書の他の箇所で説明したもの等の式Iの化合物、上記化合物を保持する容器、及び指示書を備えることができる。当業者はアプリケータを提供できる。
好ましくは、本発明のキットは、式Iの化合物、式Iaの化合物若しくは表1の化合物又はこれらの組み合わせを含む。より好ましくは、キットは化合物Aを含む。更に、キットは、指示書、及びアレルギ又はアレルギ若しくは呼吸器疾患若しくは状態の治療のための本発明の1つ又は複数の化合物の投与のためのアプリケータを備えることができる。本発明のキットを用いて、本明細書で開示する疾病及び状態を治療できる。しかしながら、本発明で説明するキットは上述の使用に制限されるものではなく、本明細書に開示する教示から考えられるいずれの方法において使用できる。
ここで以下の実施例を参照して、本発明を説明する。これらの実施例は説明のみを目的として提供されるものであり、本発明はこれらの実施例に制限されるものと解釈されるべきではない。寧ろ本発明は、本明細書で提供される教示の結果として明らかであるいずれの及び全ての変更例を包含するものと解釈されるべきである。
実施例
実施例1 4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オンの合成
スキームIでは、3−ブロモメチル−5−メチル−ピリジン(4)を用いてノルケトチフェン(2)をアルキル化することによって4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オン(5)を得る。化合物(4)は、3,5−ルチジン(3)をクロロホルム及び四塩化炭素の溶媒混合液中のNBS及びAIBNで処理することによって得た。ノルケトチフェン(2)は、ケトチフェンを1−クロロギ酸クロロエチル及びメタノールでそれぞれ処理することによって得た。ノルケトチフェン(2)はまた、ケトチフェンをクロロギ酸ビニルで処理することによっても得られる。同様にノルケトチフェン(2)は、ケトチフェンを2,2,2−クロロギ酸トリクロロエチルで処理することによって得られる(米国特許第7557128号参照)。代替として、ノルケトチフェン(2)は、ケトチフェンを臭化シアン(フォンブラウン脱アルキル化)又はクロロギ酸エチル(Helvetica Chimica Acta、1976年、59(3)、876参照)で処理し、続いて塩基性又は酸性水溶液中で加水分解することによって得られる。
実施例2 4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オンの合成(合成スキームII)
スキームIIでは、DMF中のDCC及びHOBtを用いてノルケトチフェン(2)を5−メチル−ニコチン酸(6)でアシル化して化合物(7)を得て、化合物(7)をオキシ塩化リン及び水素化ホウ素ナトリウムで還元する(Journal of Medicinal Chemistry、1994年、37、2697−2703参照)ことによって、4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オン(5)を得ることができる。
実施例3 4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オンの合成(合成スキームIII)
スキームIIIでは、化合物(8)と3−(4−クロロ−ピペリジン−1−イルメチル)−5−メチル−ピリジンから調製したグリニャール誘導体(9)(Drugs of the Future、1996年、21(10):1032−1036及びスペイン特許第ES2120899号参照)との反応によって、アルコール(10)を産生し、これを最終的にHBrで除去してH2SO4で脱水して、4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オン(5)を得る。代替として、HBrによるアルコール(10)の脱水によって化合物(11)を得て、これをピペリジン及びカリウムt−ブトキシドで処理して、化合物(12)を産生する、化合物(12)を塩酸水溶液で処理することにより、4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オン(5)を得る。化合物(8)は、Helvetica Chimica Acta、1976年、59(3)、876−877に従って調製できる。
実施例4 4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オンの合成(合成スキームIV)
スキームIVでは、化合物(13)とグリニャール誘導体(9)との反応によってアルコール(14)を得て、これを塩酸水溶液で処理して4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オン(5)を産生することによって、4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オン(5)を合成できた。化合物13は、Helvetica Chimica Acta、1976年、59(3)、876−877に従って調製できる。
実施例5 アレルギに対する4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オンのインビボでの予防効果:IgE媒介型遅発皮膚反応(耳及び足の腫脹)
マウスに、4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オン(1mg/kg)又はケトチフェン(1mg/kg)を、図1Aに示すスケジュール投薬レジメンあたり2回、丸で囲んだ投薬番号で示すように経口投与した。第1の投薬(丸で囲んだ数字1で示す)はIgE注射の1日前に行い、第2の投薬(丸で囲んだ数字2で示す)は2日目に、ジニトロフルオロベンゼン(DNFB、アレルゲンとして)抗原投与の前に行った。マウスは2μgの抗DNP IgE mAb(シグマ製)の静脈注射によって受動的に感作された。24時間後、20μlのアセトン−オリーブ油(4:1)中のDNFB(0.3%wt/vol、シグマ製)を左後脚又は左耳の両側に塗布することにより皮膚の反応を誘発し、20μlのアセトン−オリーブ油を右後脚又は右耳に塗布することにより、対照とした。足肉趾又は耳の厚さを、デジタルマイクロメータを用いて24時間後に測定した。右耳又は右後脚の厚さ(アセトン−オリーブ油のみで処理)は、基礎値として使用した。組織厚さのDNFB誘発性増大を、基礎値の百分率として表した。
この動物モデルでは肥満細胞が放出したサイトカイン及びケモカインによって耳及び足の腫脹が大いに誘発される。図1Bに示すように、4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オンの投与は、アレルゲンDNFB誘発性の耳及び足の腫脹を大きく低減する。この結果から、4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オンが、肥満細胞のサイトカイン及びケモカイン産生を阻害することによって、肥満細胞媒介型遅発アレルギ性炎症を阻害するらしいことを示唆する。
実施例6 アレルギに対する4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オンのインビボでの予防効果:IgE媒介型受動的皮膚アナフィラキシー(エバンスブルー染料漏出)
マウスに、4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オン(1mg/kg)又はケトチフェン(1mg/kg)を、図2Aに示す投薬スケジュールあたり1回経口投与した。続いてマウスは、20ngの抗ジニトロフェニル(DNP)IgE mAb(シグマ製)の左耳への皮内注射によって感作され、右耳には対照として生理食塩水を注射した。24時間後、マウスを、200μlのエバンスブルー染料(1%wt/vol、シグマ製)中の100μgのDNP−ウシ血清アルブミン(BSA)(アレルゲンとして)の静脈注射によって抗原投与した。30分後、耳パンチ(8mm)を300μlのホルムアルデヒド中に採取し、80℃の水浴中で2時間インキュベートし、エバンスブルー染料を抽出した。吸光度は620nmと決定された。
このマウスモデルでは、ヒスタミン等の肥満細胞顆粒関連メディエータによってエバンスブルー染料漏出が大いに誘発される。ヒスタミン等の顆粒関連メディエータは、内皮及び血管平滑筋細胞を刺激して、血管透過性の上昇を引き起こす。4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オンの投与は、図2Bに示すビヒクル対照と比較して、アレルゲン(DNP)誘発性エバンスブルー染料漏出を大きく低減した。エバンスブルー染料漏出及び組織腫脹の両方に対する阻害効果は、4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オンの経口投与の24時間後に観察したものであり、これはこの化学的化合物の長期間持続性の効果を示唆するものであることに、重要なこととして留意されたい。
実施例7 アレルギに対する4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オンのインビボでの治療効果:IgE媒介型遅発皮内反応(耳及び足の腫脹)
4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オンのインビボでの治療効果を実証するために、マウスを2μgの抗DNP IgE mAbの静脈注射によって受動的に感作した。図3Aに示すように、24時間後、20μlのアセトン−オリーブ油(4:1)中のDNFB(0.3%wt/vol、シグマ製)を左後脚又は左耳の両側に塗布することにより、皮膚の反応を誘発し、20μlのアセトン−オリーブ油を右後脚又は右耳に塗布することにより、対照とした。DNFBの塗布の3時間後、図3Aにおいて丸で囲んだ数字「1」で示すように、マウスに4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オン(1mg/kg、経口投与)、ケトチフェン(1mg/kg経口投与)又は対照として生理食塩水を投与した。足肉趾又は耳の厚さを、デジタルマイクロメータを用いて24時間後に測定した。右耳又は右後脚の厚さ(アセトン−オリーブ油のみで処理)は、基礎値として使用した。組織厚さのDNFB誘発性増大を、基礎値の百分率として表した。
図3Bに示すように、抗原DNPチャレンジの後に4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オンを塗布すると、ケトチフェンと比較して、DNP誘発性腫脹が大いに阻害され、この動物モデルの耳及び足の重さが増大し、いくつかのアッセイではケトチフェンの活性を上回りさえすることがわかった(図3Bの化合物処理マウスの足の重さ参照)。これらの結果は、4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オンがアレルゲンチャレンジ後のアレルギ性炎症に対してインビボで治療効果を有することを示唆する。
実施例8 4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オンは、インビトロで、肥満細胞によるアレルゲン誘発性サイトカインIL−6産生を阻害する
マウス骨髄由来肥満細胞(BMMC)を、トリニトロフェニル(TNP)を標的とするIgEに富むTIP141馴化培地を3:1の比で補充した新鮮な完全培地において再懸濁した。BMMCは典型的には0.5百万個/mlで感作した。感作に続いて、BMMCを、10%FBSのみを補充したRPMI1640で広範囲にわたって洗浄した。続いてBMMCを、0.1、1、10又は100μMの濃度の4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オン又はケトチフェンで1時間処理し、その後抗原TNP−BSA(10ng/ml)で6時間刺激した。無細胞上清中のサイトカインレベルをELISAで決定した。図4に示すように、肥満細胞を4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オンで処理すると、肥満細胞によるサイトカインIL−6産生が大幅に低減されることがわかり、いくつかの同一濃度においてはケトチフェンよりも更に効果的であった。
上述の結果は:(1)4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オンは、インビボで、アレルゲン誘発性遅発アレルギ性炎症を阻害すること;(2)4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オンは、インビボで、アレルゲン誘発性受動性皮内アナフィラキシーを阻害すること;及び(3)4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オンは、インビボで、肥満細胞によるアレルゲン誘発性サイトカインIL−6産生を阻害することを実証している。
実施例9 4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オンによるインビトロでの好酸球の増殖の阻害
マウス骨髄由来好酸球(1×105細胞/ウェル)を96ウェルプレートに3重に播種し、IL−5(50ng/ml)を用いて培養した。好酸球を4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オン(化合物A)又はケトチフェンで1時間処理した。次に細胞を、0.5μCiの3H−チミジンと共に18時間律動させた。吸気マニホールドを用いて細胞をガラスファイバペーパーに採取し、広範囲にわたって洗浄して、取り込まれなかったチミジンを除去した。ファイバペーパーを乾燥させて、2.5mlのシンチレーション液(エコライト)と共にバイアルに添加した。チミジン取り込みをワラック製ベータカウンタで測定した。
3H−チミジンの取り込み(好酸球増殖)は、液体シンチレーション計数(CPM)によって定量化した。4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オン又はケトチフェンで処置することによって、その用量に応じてチミジンの取り込みが低減された。これらの結果は、4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オン及びケトチフェンが好酸球増殖を阻害することを示唆している。重要なことには、図5に示すように、4−[1−(5−メチル−ピリジン−3−イルメチル)ピペリジン−4−イリデン]−4,9−ジヒドロ−1−チア−ベンゾ[f]アズレン−10−オンは、ケトチフェンに比べて有意に強い好酸球増殖阻害を示した(*、p<0.01、n=3の実験)。
本明細書で説明した実施形態及び実施例は例示的なものであり、本技術の組成物及び方法の範囲全体を説明するものとして制限することを意図したものではない。いくつかの実施形態、材料、組成物及び方法に対する同等の変更、修正及び変形例が本技術の範囲内で可能であり、実質的に同様の結果が得られる。