JP5975380B2 - 赤外線放射素子およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、赤外線放射素子およびその製造方法に関するものである。
従来から、半導体プロセスなどを利用して製造される赤外線放射素子が研究開発されている。この種の赤外線放射素子は、ガスセンサや光学分析装置などの赤外線源として使用することができる。
この種の赤外線放射素子として、例えば、図8(a),(b)に示す構成の赤外線光源100が知られている(特許文献1)。
この赤外線光源100は、基板110と、この基板110に設けられ、抵抗体115を含む薄肉部としてのメンブレン120と、このメンブレン120表面に設けられた集光部材としての集光レンズ130とにより構成されている。
基板110は、シリコンからなる半導体基板であり、メンブレン120の形成領域に対応した空洞部111を有している。抵抗体115を含むメンブレン120は、基板110に対して空洞部111上に浮いた状態に形成されており、赤外線光源100の他の部位と比べて膜厚が薄く形成されている。
また、基板110の下面には、窒化シリコン膜112が設けられ、基板110の上面には、絶縁膜113(例えば窒化シリコン膜)が設けられている。そして、絶縁膜113上には、酸化シリコン膜114が設けられている。
酸化シリコン膜114上のメンブレン120の形成領域内には、多結晶シリコン膜からなる抵抗体115が所定形状で設けられている。そして、抵抗体115には、BPSG(Boron−doped Phospho−SilicateGlass)からなる層間絶縁膜116を介して、抵抗体115とパッド部117aとを電気的に繋ぐ配線部117が接続されている。
また、パッド部117aを除いた配線部117上には、保護膜118(例えば窒化シリコン膜)が設けられている。したがって、赤外線光源100は、基板110の空洞部111上における絶縁膜113、酸化シリコン膜114、抵抗体115、層間絶縁膜116、配線部117及び保護膜118によりメンブレン120が構成されている。
そして、赤外線光源100は、メンブレン120の形成領域内における保護膜118上に、抵抗体115を発熱させることにより放射される赤外線を、赤外線センサに対して集光させる集光部材としての集光レンズ130が設けられている。集光レンズ130は、保護膜118と接する面に対向する上面130aが、図8(b)に示すような所定のRをもった凹形状となるように、酸化シリコン膜を加工して形成された凹レンズである。赤外線光源100は、赤外線センサに対して赤外線を放射する上面130aが、所定のRをもった凹形状を有しているので、集光レンズ130から放射される赤外線が赤外線センサに対して集光される。
赤外線光源100は、集光レンズ130の光軸が抵抗体115の中心位置と略一致するように設けられている。
特許文献1には、集光レンズ130を、半導体プロセスを用いて形成することが記載されている。すなわち、特許文献1には、保護膜118上のメンブレン120の形成領域内に、例えばCVD法により酸化シリコン膜を成膜し、この酸化シリコン膜をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して加工することで集光レンズ130を形成する旨が記載されている。
特開2005−207891号公報
ところで、赤外線放射素子を例えば分光式ガスセンサ用の赤外線源として用いる場合には、赤外線放射素子を間欠的に駆動することで赤外線を間欠的に放射させ、赤外線を検出する受光素子の出力をロックインアンプにより増幅することで、ガスセンサの出力のS/N比を向上できることが知られている。
しかしながら、上述の赤外線光源100では、集光レンズ130の熱容量に起因して、抵抗体115へ与える電圧波形に対する抵抗体115の温度変化の応答が遅くなって抵抗体115の温度が上昇しにくくなり、高出力化および応答速度の高速化が難しい。
そこで、上述の赤外線光源100では、集光レンズ130の熱容量を小さくするために、集光レンズ130の元となる酸化シリコン膜の厚さを薄くすることが考えられる。しかしながら、上述の赤外線光源100では、集光レンズ130の元となる酸化シリコン膜の厚さが、集光レンズ130の上面130aのRに基づいて制限されてしまう。
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、指向性を向上させることが可能であり且つ高出力化が可能な赤外線放射素子およびその製造方法を提供することにある。
本発明の赤外線放射素子は、基板と、前記基板の一表面側に設けられた薄膜部と、前記薄膜部における前記基板側とは反対側に設けられた発熱体層とを備え、前記発熱体層への通電により前記発熱体層から赤外線が放射される赤外線放射素子であって、前記基板は、前記薄膜部における前記発熱体層側とは反対側の表面を露出させる開孔部が厚み方向に貫設されてなり、前記薄膜部は、前記開孔部と前記発熱体層とを隔離するダイヤフラム部と、前記基板の前記一表面側で前記開孔部の周部に設けられ前記ダイヤフラム部を支持する支持部とを備え、前記ダイヤフラム部は、前記開孔部側に窪み内面が回転2次曲面状である凹部を備え、前記発熱体層は、その表面が少なくとも前記凹部において前記内面に沿った回転2次曲面状に形成されてなることを特徴とする。
この赤外線放射素子において、前記ダイヤフラム部は、複数の前記凹部がアレイ状に設けられてなることが好ましい。
この赤外線放射素子において、前記ダイヤフラム部は、外周形状が円形状であることが好ましい。
この赤外線放射素子において、前記ダイヤフラム部は、外周形状が矩形状であることが好ましい。
本発明の赤外線放射素子の製造方法は、前記赤外線放射素子の製造方法であって、前記基板の上記一表面側に前記ダイヤフラム部の前記凹部を形成するための窪み部を形成する第1工程と、前記第1工程の後で前記基板の前記一表面側に前記薄膜部を形成する第2工程と、前記第2工程の後で前記薄膜部上に前記発熱体層を形成する第3工程と、前記第3工程の後で前記基板における前記開孔部の形成予定領域を前記基板の他表面側からエッチングすることで前記凹部を備えた前記ダイヤフラム部を形成する第4工程とを備えることを特徴とする。
本発明の赤外線放射素子においては、指向性を向上させることが可能であり且つ高出力化が可能となる。
本発明の赤外線放射素子の製造方法においては、指向性を向上させることが可能であり且つ高出力化が可能な赤外線放射素子を提供することが可能となる。
(a)は実施形態1の赤外線放射素子の概略平面図、(b)は実施形態1の赤外線放射素子の概略断面図である。 実施形態1の赤外線放射素子の製造方法を説明するための主要工程断面図である。 実施形態1の赤外線放射素子の動作説明図である。 比較例の赤外線放射素子の動作説明図である。 (a)は実施形態2の赤外線放射素子の概略平面図、(b)は実施形態2の赤外線放射素子の概略断面図である。 実施形態2の赤外線放射素子の製造方法を説明するための主要工程断面図である。 実施形態2の赤外線放射素子の動作説明図である。 (a)は従来の赤外線光源の平面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
以下では、本実施形態の赤外線放射素子1について図1に基づいて説明する。
赤外線放射素子1は、基板2と、この基板2の一表面側に設けられた薄膜部5と、薄膜部5における基板2側とは反対側に設けられた発熱体層3とを備えている。この赤外線放射素子1は、発熱体層3への通電により発熱体層3から赤外線が放射される。
基板2は、薄膜部5における発熱体層3側とは反対側の表面を露出させる開孔部2aが厚み方向に貫設されている。
薄膜部5は、開孔部2aと発熱体層3とを隔離するダイヤフラム部51と、基板2の上記一表面側で開孔部2aの周部に設けられダイヤフラム部51を支持する支持部52とを備えている。
ダイヤフラム部51は、開孔部2a側に窪む凹部53を備えている。凹部53は、内面53aが凹曲面である。
発熱体層3は、凹部53の内面53aに沿って形成されている。発熱体層3は、少なくとも凹部53の内面53aに沿って形成されていればよい。
また、赤外線放射素子1は、基板2の上記一表面側で発熱体層3に一部が接するように形成された一対のパッド7,7を備えている。なお、各パッド7,7の各々と発熱体層3との間に配線を設けてもよい。
以下、赤外線放射素子1の各構成要素について詳細に説明する。
基板2は、上記一表面が(100)面の単結晶のシリコン基板により形成されているが、これに限らず、(110)面の単結晶のシリコン基板により形成してもよい。また、基板2は、単結晶のシリコン基板に限らず、多結晶のシリコン基板でもよいし、シリコン基板以外でもよい。基板2の材料は、薄膜部5の材料よりも熱伝導率が大きく且つ熱容量が大きな材料が好ましい。
基板2の外周形状は、矩形状である。基板2の外形サイズ、すなわち、チップサイズは、特に限定するものではないが、例えば、10mm×10mm以下に設定するのが好ましい。また、基板2は、開孔部2aの開口形状を円形状としてある。また、基板2の開孔部2aは、上記一表面側から上記他表面側にかけて開口面積が略一定となる形状に形成されている。この場合、基板2の開孔部2aは、例えば、誘導結合プラズマ型のドライエッチング装置を用いたエッチングにより形成することができる。赤外線放射素子1は、基板2の上記他表面側に、開孔部2aを形成する際のマスク層が残っていてもよい。なお、マスク層としては、例えば、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜との積層膜などを用いることができる。
薄膜部5は、上述のように、開孔部2aと発熱体層3とを隔離するダイヤフラム部51と、基板2の上記一表面側で開孔部2aの周部に設けられダイヤフラム部51を支持する支持部52とを備えている。ダイヤフラム部51は、外周形状が円形状である。すなわち、赤外線放射素子1は、上述のように開孔部2aの開口形状を円形状としてあり、基板2の上記他表面側から見たダイヤフラム部51の形状が円形状となっている。
薄膜部5は、例えば、基板2側のシリコン酸化膜と、このシリコン酸化膜における基板2側とは反対側に積層されたシリコン窒化膜とで構成することができる。薄膜部5の積層構造は特に限定するものではない。また、薄膜部5の層構造は、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜の積層構造に限らず、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜の単層構造でもよいし、その他の材料からなる単層構造や、2層以上の積層構造でもよい。薄膜部5は、赤外線放射素子1の製造時において基板2の上記他表面側から基板2をエッチングして開孔部2aを形成する際のエッチングストッパ層としての機能も有している。
ダイヤフラム部51は、上述のように、開孔部2a側に窪み内面53aが凹曲面である凹部53を備えている。凹部53の内面53aを構成する凹曲面は、回転2次曲面状であることが好ましい。本実施形態では、凹部53の内面53aを構成する凹曲面は、曲率半径が略一定の凹曲面としてあるが、回転2次曲面状の形状であれば、例えば、回転放物面状などの形状としてもよい。
発熱体層3は、外周形状を矩形状としてある。すなわち、発熱体層3は、平面視形状を矩形状としてある。発熱体層3の平面視形状は、矩形状に限定するものではなく、例えば、円形状や多角形状などでもよい。また、発熱体層3は、平面視においてダイヤフラム部51全体を覆う大きさに形成されている。発熱体層3は、平面視においてダイヤフラム部51の外周形状よりも小さくしてもよく、この場合は、発熱体層3と各パッドとを電気的に接続する金属膜からなる配線部を設ければよい。いずれにしても、赤外線放射素子1は、発熱体層3における基板2の厚み方向に沿った中心軸(図示せず)が、ダイヤフラム部51における基板2の厚み方向に沿った中心軸と揃うように発熱体層3をパターン設計することが好ましい。また、赤外線放射素子1は、発熱体層3のうち凹部53に積層されている部分の表面が、凹部53の内面53aに沿った凹曲面(例えば、回転2次曲面状)の形状となるように、発熱体層3の膜厚を設定することが好ましい。
発熱体層3の材料としては、窒化タンタルを採用しているが、これに限らない。発熱体層3の材料は、例えば、窒化チタン、ニッケルクロム、タングステン、チタン、トリウム、白金、ジルコニウム、クロム、バナジウム、ロジウム、ハフニウム、ルテニウム、ボロン、イリジウム、ニオブ、モリブデン、タンタル、オスミウム、レニウム、ニッケル、ホルミウム、コバルト、エルビウム、イットリウム、鉄、スカンジウム、ツリウム、パラジウム、ルテチウムなどを採用してもよい。また、発熱体層3の材料としては、導電性のポリシリコンや導電性のアモルファスシリコンなどを採用してもよい。発熱体層3の材料について、基板2と発熱体層3との線膨張係数差に伴う熱応力に起因して発熱体層3が破壊されるのを防止するという観点からは、基板2の材料との線膨張係数差が小さい材料が好ましい。
薄膜部5の厚さと発熱体層3の厚さとの合計厚さは、例えば、0.1μm〜10μm程度の範囲で設定することが好ましい。
一対のパッド7,7は、基板2の上記一表面側において、発熱体層3の両端部(図1(a),(b)における左右両端部)それぞれと各々の一部が接する形で形成されている。各パッド7は、発熱体層3とオーミック接触をなしている。
各パッド7の材料としては、Al−Siを採用している。各パッド7の材料は、特に限定するものではなく、例えば、Au、Cuなどを採用してもよい。また、各パッド7は、少なくとも、発熱体層3と接する部分が発熱体層3とオーミック接触が可能な材料であればよく、単層構造に限らず、多層構造でもよい。例えば、各パッド7は、発熱体層3側から順に、第1層、第2層、第3層が積層された3層構造として、発熱体層3に接する第1層の材料を高融点金属(例えば、クロムなど)とし、第2層の材料をニッケルとし、第3層の材料をAuとしてもよい。各パッド7の厚さは、0.5〜2μm程度の範囲で設定することが好ましい。
以下では、本実施形態の赤外線放射素子1の製造方法の一例について図2を参照しながら説明する。
赤外線放射素子1を製造するにあたっては、まず、上記一表面が(100)面の単結晶のシリコン基板などからなる基板2を準備する(図2(a)参照)。
基板2を準備した後には、基板2の上記一表面側にダイヤフラム部51の凹部53を形成するための窪み部23を形成する第1工程を行うことによって、図2(b)に示す構造を得る。第1工程では、まず、熱酸化法やCVD法などによって、基板2の上記一表面側に第1のシリコン酸化膜21を形成するとともに他表面側に第2のシリコン酸化膜22を形成する。その後には、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して、第1のシリコン酸化膜21をパターニングする。その後には、第1のシリコン酸化膜21および第2のシリコン酸化膜22をマスクとして、基板2を上記一表面側から等方性エッチングすることで窪み部23を形成する。
第1工程の後には、第1のシリコン酸化膜21および第2のシリコン酸化膜22をエッチングにより除去した後、基板2の上記一表面側に薄膜部5を形成する第2工程を行うことによって、図2(c)に示す構造を得る。薄膜部5の形成方法は、例えば、CVD法などを採用することができる。
第2工程の後には、薄膜部5上に発熱体層3を形成する第3工程を行う。発熱体層3の形成方法は、スパッタ法や蒸着法やCVD法などを採用することができる。
第3工程の後には、各パッド7を形成した後(図2(d)参照)、基板2における開孔部2aの形成予定領域を基板2の上記他表面側からエッチングすることで凹部53を備えたダイヤフラム部51を形成する第4工程を行うことによって、図2(e)に示す構造の赤外線放射素子1を得る。各パッド7の形成にあたっては、例えば、スパッタ法や蒸着法やCVD法などの薄膜形成技術と、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術とを利用することができる。また、開孔部2aの形成にあたっては、例えば、基板2の上記他表面側にシリコン酸化膜とシリコン窒化膜との積層膜(図示せず)からなるマスク材料層をCVD法などにより形成し、その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用してマスク材料層をパターニングすることでマスク層を形成し、その後、基板2を上記他表面側からエッチングすることで開孔部2aを形成すればよい。基板2の開孔部2aは、例えば、誘導結合プラズマ型のドライエッチング装置を用いたエッチングにより形成することができる。ここで、本実施形態の赤外線放射素子1の製造方法では、開孔部2aの形成時に、薄膜部5をエッチングストッパ層として利用することにより、薄膜部5の厚さの精度を高めることが可能となるとともに、薄膜部5における開孔部2a側に基板2の一部や残渣が残るのを防止することが可能となる。ここで、本実施形態の赤外線放射素子1の製造方法では、開孔部2aの形成時に、薄膜部5をエッチングストッパ層として利用することにより、薄膜部5の厚さの精度を高めることが可能となり、赤外線放射素子1ごとの、薄膜部5の機械的強度のばらつきや、ダイヤフラム部51の熱容量のばらつきを抑制することが可能となる。
また、上述の赤外線放射素子1の製造にあたっては、開孔部2aの形成が終了するまでのプロセスを、ウェハレベルで行い、開孔部2aを形成した後、個々の赤外線放射素子1に分離すればよい。つまり、赤外線放射素子1の製造にあたっては、例えば、基板2の基礎となるシリコンウェハを準備して、このシリコンウェハに複数の赤外線検出素子1を上述の製造方法に従って形成し、その後、個々の赤外線検出素子1に分離すればよい。
ところで、赤外線放射素子1において発熱体層3から放射される赤外線のピーク波長λは、発熱体層3の温度に依存する。ここで、ピーク波長をλ〔μm〕、発熱体層3の絶対温度をT〔K〕とすれば、ピーク波長λは、
λ=2898/T
となり、発熱体層3の絶対温度Tと発熱体層3から放射される赤外線のピーク波長λとの関係がウィーンの変位則を満足している。要するに、赤外線放射素子1では、発熱体層3が黒体を構成している。赤外線放射素子1は、例えば、図示しない外部電源から一対のパッド7,7間に与える入力電力を調整することにより、発熱体層3に発生するジュール熱を変化させることができ、発熱体層3の温度を変化させることができる。したがって、赤外線放射素子1は、発熱体層3への最大入力電力に応じて発熱体層3の温度を変化させることができ、また、発熱体層3の温度を変化させることで発熱体層3から放射される赤外線のピーク波長λを変化させることができる。また、本実施形態の赤外線放射素子1では、発熱体層3の温度を高くするほど赤外線の放射量を増大させることが可能となる。このため、赤外線放射素子1は、広範囲の赤外線波長域において高出力の赤外線光源として用いることが可能となる。例えば、赤外線放射素子1をガスセンサの赤外線光源として使用する場合には、発熱体層3から放射される赤外線のピーク波長λを4μm程度にするのが好ましく、発熱体層3の温度を800K程度とすればよい。ここにおいて、本実施形態の赤外線放射素子1では、発熱体層3が上述のように黒体を構成している。これにより、赤外線放射素子1は、発熱体層3の単位面積が単位時間に放射する全エネルギEがTに略比例するものと推測される(つまり、シュテファン−ボルツマンの法則を満足するものと推測される)。
以上説明した本実施形態の赤外線放射素子1は、基板2と、この基板2の一表面側に設けられた薄膜部5と、薄膜部5における基板2側とは反対側に設けられた発熱体層3とを備えている。ここで、赤外線放射素子1は、基板2に、薄膜部5における発熱体層3側とは反対側の表面を露出させる開孔部2aが貫設されており、薄膜部5が、開孔部2aと発熱体層3とを隔離するダイヤフラム部51と、基板2の上記一表面側で開孔部2aの周部に設けられダイヤフラム部51を支持する支持部52とを備えている。また、赤外線放射素子1は、ダイヤフラム部51が、開孔部2a側に窪む凹部53を備え、凹部53の内面53aが凹曲面である。そして、赤外線放射素子1は、発熱体層3が凹部53の内面53aに沿って形成されている。しかして、本実施形態の赤外線放射素子1においては、発熱体層3が凹部53の内面53aに沿って形成されていることにより、指向性を向上させることが可能である。凹部53の内面53aを構成する凹曲面は、回転2次曲面状であることが好ましい。これにより、赤外線放射素子1は、正面方向(図1(b)の上方向)の指向性を向上させることが可能となる。図3は、赤外線放射素子1の動作説明図であり、一対のパッド7,7間に通電したときに発熱体層3から放射される赤外線の放射方向を矢印付きの実線で模式的に示してある。一方、図4は、ダイヤフラム部51が平板状であり発熱体層3の表面が平面である比較例の赤外線放射素子1’の動作説明図であり、一対のパッド7,7間に通電したときに発熱体層3から放射される赤外線の放射方向を矢印付きの実線で模式的に示してある。また、図3,4には、赤外線放射素子1,1’から放射された赤外線が照射される所望の照射部10を模式的に示してある。この照射部10は、例えば、赤外線を受光する受光素子などである。
赤外線放射素子1は、発熱体層3においてダイヤフラム部51に積層されている部分の表面が凹曲面となっている。これにより、赤外線放射素子1は、図4に示した比較例の赤外線放射素子1’のように赤外線が等方的に放射される無指向性のものに比べて、図3に示すように放射する赤外線の指向性を強くすることができる。つまり、赤外線放射素子1では、正面方向(図3の上方向)への指向性が向上し、例えば、図4の比較例と入力電力を同じとし、照射部10の大きさを同じとした場合、照射部10への照射効率を向上させることが可能となり、放射された赤外線の損失を低減することが可能となる。ここで、照射部10が受光素子の場合には、この受光素子の受光効率を向上させることが可能となる。
したがって、本実施形態の赤外線放射素子1は、指向性を向上させながらも、図8に示した従来例のように集光レンズ130を備えた赤外線光源100に比べて、ダイヤフラム部51を含む積層構造全体の熱容量を低減することが可能となる。よって、赤外線放射素子1は、一対のパッド7,7間へ与える電圧波形に対する発熱体層3の温度変化の応答を速くすることが可能となるから、発熱体層3の温度が上昇しやすくなり、高出力化および応答速度の高速化を図ることが可能となる。
また、本実施形態の赤外線放射素子1では、基板2を単結晶のシリコン基板から形成し、薄膜部5をシリコン酸化膜とシリコン窒化膜とで構成してある。これにより、赤外線放射素子1は、薄膜部5に比べて基板2の熱容量および熱伝導率それぞれが大きく、基板2がヒートシンクとしての機能を有するので、小型で入力電力に対する応答速度が速く且つ赤外線の放射特性の安定性を向上させることが可能となる。また、本実施形態の赤外線放射素子1では、発熱体層3の材料として、シリコンよりも高融点のTaNを採用すれば、発熱体層3の温度をシリコンの最高使用温度(シリコンの融点よりもやや低い温度)まで上昇させることが可能となり、赤外線発光ダイオードに比べて赤外線の放射量を大幅に増大させることが可能となる。また、赤外線放射素子1は、各パッド7において少なくとも発熱体層3に接する部位がシリコンよりも高融点の金属により形成されていれば、発熱体層3の温度を各パッド7の材料に制約されることなく上昇させることが可能となる。
また、本実施形態の赤外線放射素子1の製造方法によれば、上述の第1工程、第2工程、第3工程および第4工程を備えていることにより、指向性を向上させることが可能であり且つ高出力化が可能な赤外線放射素子1を提供することが可能となる。
(実施形態2)
以下では、本実施形態の赤外線放射素子1について図5に基づいて説明する。なお、実施形態1の赤外線放射素子1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
本実施形態の赤外線放射素子1では、ダイヤフラム部51に、複数の凹部53がアレイ状(図示例では、2次元アレイ状)に設けられている。すなわち、ダイヤフラム部51は、複数の凹部53を備えている。各凹部53は、実施形態1と同様、開孔部2a側に窪んでおり、内面53aが凹曲面となっている。ここで、赤外線放射素子1は、例えば、基板2の厚み方向に直交する2次元面内で凹部53が2次元的な周期構造を有するように配列されていることが好ましい。図5に示した例では、単位格子が正方形の仮想的な2次元正方格子の各格子点の各々に各凹部53の中心が位置しているが、これに限らず、例えば、単位格子が正三角形の仮想的な2次元三角格子の各格子点の各々に各凹部53の中心が位置しているようにしてもよい。また、赤外線放射素子1は、例えば、複数の凹部53が、1つの仮想円上で円周方向に離間して配列された構成としてもよい。また、赤外線放射素子1は、例えば、複数の凹部53が、2次元面内の形状が渦巻き状である仮想渦巻き上で離間して配列された構成としてもよい。ダイヤフラム部51は、各凹部53の大きさを同じとしてあるが、必ずしも同じ大きさでなくてもよい。
複数の凹部53は、一対のパッド7,7の並ぶ方向および基板2の厚み方向に直交する方向に沿った中心線を対称軸として線対称に配置されていることが好ましい。これにより、赤外線放射素子1は、複数の凹部53が中心線を対称軸として線対称に配置されていない場合に比べて、発熱体層3の温度の面内ばらつきを抑制することが可能となる。
基板2は、開孔部2aの開口形状を矩形状としてある。基板2の開孔部2aは、上記一表面側に比べて他表面側での開口面積が大きくなる形状に形成されている。この基板2の開孔部2aは、基板2の厚み方向において薄膜部5から離れるほど開口面積が徐々に大きくなる形状に形成されている。基板2の開孔部2aは、基板2をエッチングすることにより形成されている。基板2の開孔部2aは、例えば、基板2が(100)面の単結晶のシリコン基板の場合には、アルカリ系溶液をエッチング液として用いた異方性エッチングにより形成することができる。
発熱体層3は、外周形状を矩形状としてある。すなわち、発熱体層3は、平面視形状を矩形状としてある。平面形状を矩形状としてあるが、特に矩形状に限定するものではなく、例えば、円形状や多角形状などでもよい。
薄膜部5は、実施形態1と同様、開孔部2aと発熱体層3とを隔離するダイヤフラム部51と、基板2の上記一表面側で開孔部2aの周部に設けられダイヤフラム部51を支持する支持部52とを備えている。ダイヤフラム部51は、外周形状が矩形状である。すなわち、赤外線放射素子1は、上述のように開孔部2aの開口形状を矩形状としてあり、基板2の上記他表面側から見たダイヤフラム部51の形状が矩形状となっている。
発熱体層3は、外周形状を矩形状としてある。すなわち、発熱体層3は、平面視形状を矩形状としてある。発熱体層3の平面視形状は、矩形状に限定するものではなく、例えば、円形状や多角形状などでもよい。赤外線放射素子1は、発熱体層3のうち凹部53に積層されている部分の表面が、凹部53の内面53aに沿った凹曲面(例えば、回転2次曲面状)の形状となるように、発熱体層3の膜厚を設定することが好ましい。
以下では、本実施形態の赤外線放射素子1の製造方法の一例について図6を参照しながら説明する。
赤外線放射素子1を製造するにあたっては、まず、上記一表面が(100)面の単結晶のシリコン基板などからなる基板2を準備する(図6(a)参照)。
基板2を準備した後には、基板2の上記一表面側にダイヤフラム部51の各凹部53の各々を形成するための複数の窪み部23を形成する第1工程を行うことによって、図6(b)に示す構造を得る。第1工程では、まず、熱酸化法やCVD法などによって、基板2の上記一表面側に第1のシリコン酸化膜21を形成するとともに他表面側に第2のシリコン酸化膜22を形成する。その後には、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して、第1のシリコン酸化膜21をパターニングする。その後には、第1のシリコン酸化膜21および第2のシリコン酸化膜22をマスクとして、基板2を上記一表面側から等方性エッチングすることで複数の窪み部23を形成する。
第1工程の後には、第1のシリコン酸化膜21および第2のシリコン酸化膜22をエッチングにより除去した後、基板2の上記一表面側に薄膜部5を形成する第2工程を行うことによって、図6(c)に示す構造を得る。薄膜部5の形成方法は、例えば、CVD法などを採用することができる。
第2工程の後には、薄膜部5上に発熱体層3を形成する第3工程を行う。発熱体層3の形成方法は、スパッタ法や蒸着法やCVD法などを採用することができる。
第3工程の後には、各パッド7を形成した後(図6(d)参照)、基板2における開孔部2aの形成予定領域を基板2の上記他表面側からエッチングすることで複数の凹部53を備えたダイヤフラム部51を形成する第4工程を行うことによって、図6(e)に示す構造の赤外線放射素子1を得る。各パッド7の形成にあたっては、例えば、スパッタ法や蒸着法やCVD法などの薄膜形成技術と、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術とを利用することができる。また、開孔部2aの形成にあたっては、例えば、基板2の上記他表面側にシリコン酸化膜とシリコン窒化膜との積層膜(図示せず)からなるマスク材料層をCVD法などにより形成し、その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用してマスク材料層をパターニングすることでマスク層を形成し、その後、基板2を上記他表面側からエッチングすることで開孔部2aを形成すればよい。基板2の開孔部2aは、例えば、基板2が(100)面の単結晶のシリコン基板の場合、アルカリ系溶液をエッチング液として用いた異方性エッチングにより形成すればよい。ここで、本実施形態の赤外線放射素子1の製造方法では、開孔部2aの形成時に、薄膜部5をエッチングストッパ層として利用することにより、薄膜部5の厚さの精度を高めることが可能となるとともに、薄膜部5における開孔部2a側に基板2の一部や残渣が残るのを防止することが可能となる。ここで、本実施形態の赤外線放射素子1の製造方法では、開孔部2aの形成時に、薄膜部5をエッチングストッパ層として利用することにより、薄膜部5の厚さの精度を高めることが可能となり、赤外線放射素子1ごとの、薄膜部5の機械的強度のばらつきや、ダイヤフラム部51の熱容量のばらつきを抑制することが可能となる。
本実施形態の赤外線放射素子1は、ダイヤフラム部51が、開孔部2a側に窪む複数の凹部53を備え、各凹部53の各々の内面53aが凹曲面である。そして、赤外線放射素子1は、発熱体層3が各凹部53の各々の内面53aに沿って形成されている。しかして、本実施形態の赤外線放射素子1においては、発熱体層3が各凹部53の各々の内面53aに沿って形成されていることにより、指向性を向上させることが可能である。各凹部53の各々の内面53aを構成する凹曲面は、回転2次曲面状であることが好ましい。これにより、赤外線放射素子1は、正面方向(図5(b)の上方向)の指向性を向上させることが可能となる。図7は、赤外線放射素子1の動作説明図であり、一対のパッド7,7間に通電したときに発熱体層3から放射される赤外線の放射方向を矢印付きの実線で模式的に示してある。また、図7には、赤外線放射素子1から放射された赤外線が照射される所望の照射部10を模式的に示してある。この照射部10は、例えば、赤外線を受光する受光素子などである。
赤外線放射素子1は、発熱体層3においてダイヤフラム部51の各凹部53の各々に積層されている各部分の表面が凹曲面となっている。これにより、赤外線放射素子1は、図4に示した比較例の赤外線放射素子1’のように赤外線が等方的に放射される無指向性のものに比べて、図7に示すように放射する赤外線の指向性を強くすることができる。つまり、赤外線放射素子1では、正面方向(図7の上方向)への指向性が向上し、例えば、図4の比較例と入力電力を同じとし、照射部10の大きさを同じとした場合、照射部10への照射効率を向上させることが可能となり、放射された赤外線の損失を低減することが可能となる。ここで、照射部10が受光素子の場合には、この受光素子の受光効率を向上させることが可能となる。
したがって、本実施形態の赤外線放射素子1は、指向性を向上させながらも、図8に示した従来例のように集光レンズ130を備えた赤外線光源100に比べて、ダイヤフラム部51を含む積層構造全体の熱容量を低減することが可能となる。よって、赤外線放射素子1は、一対のパッド7,7間へ与える電圧波形に対する発熱体層3の温度変化の応答を速くすることが可能となるから、発熱体層3の温度が上昇しやすくなり、高出力化および応答速度の高速化を図ることが可能となる。
また、本実施形態の赤外線放射素子1の製造方法によれば、上述の第1工程、第2工程、第3工程および第4工程を備えていることにより、指向性を向上させることが可能であり且つ高出力化が可能な赤外線放射素子1を提供することが可能となる。
なお、各実施形態の赤外線放射素子1は、ガスセンサ用の赤外光源(赤外線光源)に限らず、例えば、炎検知用の赤外光源、赤外光通信用の赤外光源、分光分析用の赤外光源などに使用することが可能である。
1 赤外線放射素子
2 基板
2a 開孔部
3 発熱体層
5 薄膜部
23 窪み部
51 ダイヤフラム部
52 支持部
53 凹部
53a 内面

Claims (6)

  1. 基板と、前記基板の一表面側に設けられた薄膜部と、前記薄膜部における前記基板側とは反対側に設けられた発熱体層とを備え、前記発熱体層への通電により前記発熱体層から赤外線が放射される赤外線放射素子であって、前記基板は、前記薄膜部における前記発熱体層側とは反対側の表面を露出させる開孔部が厚み方向に貫設されてなり、前記薄膜部は、前記開孔部と前記発熱体層とを隔離するダイヤフラム部と、前記基板の前記一表面側で前記開孔部の周部に設けられ前記ダイヤフラム部を支持する支持部とを備え、前記ダイヤフラム部は、前記開孔部側に窪み内面が回転2次曲面状である凹部を備え、前記発熱体層は、その表面が少なくとも前記凹部において前記内面に沿った回転2次曲面状に形成されてなることを特徴とする赤外線放射素子。
  2. 前記ダイヤフラム部は、複数の前記凹部がアレイ状に設けられてなることを特徴とする請求項1に記載の赤外線放射素子。
  3. 前記ダイヤフラム部は、外周形状が円形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の赤外線放射素子。
  4. 前記ダイヤフラム部は、外周形状が矩形状であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の赤外線放射素子。
  5. 前記発熱体層は、平面視において前記ダイヤフラム部全体を覆う大きさに形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の赤外線放射素子。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の赤外線放射素子の製造方法であって、前記基板の上記一表面側に前記ダイヤフラム部の前記凹部を形成するための窪み部を形成する第1工程と、前記第1工程の後で前記基板の前記一表面側に前記薄膜部を形成する第2工程と、前記第2工程の後で前記薄膜部上に前記発熱体層を形成する第3工程と、前記第3工程の後で前記基板における前記開孔部の形成予定領域を前記基板の他表面側からエッチングすることで前記凹部を備えた前記ダイヤフラム部を形成する第4工程とを備えることを特徴とする赤外線放射素子の製造方法。
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