JP5975335B2 - 研磨パッド及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、研磨パッド及びその製造方法に関する。特には、半導体ウェハ、ガラス、磁気ディスクなどを研磨するための湿式凝固法により製造された研磨パッド及びその製造方法に関する。
一般に、仕上げ用研磨パッドには、湿式成膜法で形成されたウレタン樹脂製の発泡シートが使用されている(特許文献1)。微細化が進む半導体デバイスなどの最終仕上げに用いられる研磨パッドでは無欠陥化、平坦化への要求がますます強くなっている。微細化により今まで問題にならなかった傷(スクラッチ)が致命的なディフェクト(欠陥)となるため、如何に傷を付けずに平坦化するかということが課題となっている。研磨時の傷(スクラッチ)については、パッド素材を柔らかくすることによって研磨時の局部微少領域での応力を分散でき、スクラッチの発生を低減することができる。
しかしながら、パッド素材を軟らかくし、硬質成分を除去していくと、スクラッチの発生は低減できるものの、パッドの強度(剛性)が低下し、従来よりも耐摩耗性(製品寿命)が低下してしまうという問題があった。
特開2002−059356号公報
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、耐摩耗性及びスクラッチの発生抑制のいずれにも優れる研磨パッド及びその製造方法を提供することを目的とする。
発明者らは、研磨面近傍の領域で、研磨パッドの樹脂部分に従来存在していた微細気泡を低減させることにより、研磨面付近のパッドの強度を構造的に高め、スクラッチの発生を低減しつつも耐摩耗性をも向上させることのできる研磨パッドを開発した。すなわち、本発明は以下の構成を有する。
(1) 湿式成膜法により形成される、複数の涙形状気泡と、該複数の涙形状気泡よりもサイズが小さい3〜10μmの円相当直径を有する複数の微細気泡とを有するポリウレタン研磨シートを含む研磨パッドであって、
ポリウレタン研磨シートの厚さをTとし、
前記ポリウレタン研磨シートを厚さ方向に切断して得られる任意の切断面のうち、ポリウレタン研磨シートの研磨面から厚さ方向に0〜T×1/6の範囲の面積をA1とし、且つ
面積A1内の涙形状気泡が占める面積をA1から差し引いた面積をB1とするとき、
面積B1に含まれる前記微細気泡の面積率が、面積B1の全面積に対して1面積%未満であることを特徴とする、前記研磨パッド。
(2) 前記ポリウレタン研磨シートを厚さ方向に切断して得られる任意の切断面のうち、ポリウレタン研磨シートの研磨面から厚さ方向にT×5/6〜T×6/6の範囲の面積をA6とし、且つ
面積A6内の涙形状気泡が占める面積をA6から差し引いた面積をB6とするとき、
面積B6に含まれる前記微細気泡の面積率が、面積B6の全面積に対して1〜15面積%である、上記(1)に記載の研磨パッド。
(3) 前記ポリウレタン研磨シートを厚さ方向に切断して得られる任意の切断面のうち、ポリウレタン研磨シートの研磨面から厚さ方向にT×1/6〜T×6/6の範囲の面積をA’とし、且つ
面積A’内の涙形状気泡が占める面積をA’から差し引いた面積をB’とするとき、
面積B’に含まれる前記微細気泡の面積率が、面積B’の全面積に対して1〜15面積%である、上記(1)又は(2)に記載の研磨パッド。
(4) 前記ポリウレタン研磨シートの厚さが、500〜1500μmである、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の研磨パッド。
(5) ジイソシアネート化合物と、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール及びポリカーボネートジオールを含むポリオール成分とが共重合されたポリウレタン樹脂を含む溶液を調製する工程、
該ポリウレタン樹脂を含む溶液を成膜基材に塗布する工程、及び
前記溶液が塗布された成膜基材を凝固液に浸漬して前記溶液を凝固する工程、
を含む、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の研磨パッドの製造方法であって、
前記ポリオール成分全体を100モル%とした場合、ポリエステルジオールの割合が50〜98モル%であり、ポリエーテルジオールの割合が1〜40モル%であり、且つポリカーボネートジオールの割合が1〜40モル%であることを特徴とする、前記製造方法。
(6) 前記ポリオール成分中、ポリエステルジオールの割合が50〜90モル%であり、ポリエーテルジオールの割合が5〜35モル%であり、且つポリカーボネートジオールの割合が5〜35モル%である、上記(5)に記載の製造方法。
本発明の研磨パッドは、従来の研磨パッドと異なり、研磨面付近(上層)に微細気泡がほとんど存在しないため、パッドの研磨面付近の剛性が向上し、耐摩耗性を向上させることができる。また、軟質素材の樹脂から構成されているため、スクラッチの発生が抑制することも出来る。すなわち、本発明の研磨パッドは、優れたスクラッチの発生抑制と優れた耐摩耗性とを効果として両立させることができる。
本発明の研磨パッドに含まれるポリウレタン研磨シートを示す模式図。 比較例1の研磨パッド(ポリウレタン研磨シート)の、厚さ方向断面写真(100倍に拡大。写真下部の白色バーが10μm)。 比較例1の研磨パッド(ポリウレタン研磨シート)の、研磨面から厚さ方向に0〜T×1/6の範囲内における厚さ方向断面写真(1000倍に拡大。写真下部の白色バーが10μm)。 本発明に従う実施例1の研磨パッド(ポリウレタン研磨シート)の、厚さ方向断面写真(100倍に拡大。写真下部の白色バーが10μm)。 本発明に従う実施例1の研磨パッド(ポリウレタン研磨シート)の、研磨面から厚さ方向に0〜T×1/6の範囲内における厚さ方向断面写真(1000倍に拡大。写真下部の白色バーが10μm)。 実施例1の研磨パッドについて、研磨パッド中心を0mm地点としたときの、X軸方向、Y軸方向の各地点における研磨前の厚さ及びウェハ50枚研磨後の厚さを示す図。
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
本明細書及び特許請求の範囲において、湿式成膜法とは、成膜する樹脂を有機溶媒に溶解させ、その樹脂溶液をシート状の基材に塗布後、該有機溶媒は溶解するが該樹脂は溶解しない凝固液中に通して該有機溶媒を置換し、凝固させ、乾燥して発泡層を形成する方法を意味する。通常、湿式成膜法によりポリウレタン研磨シートを製造すると、形成された層は多孔質構造に形成されるのであるが、そのメカニズムは前記凝固液中を通して凝固する際に、溶媒が凝固液中に抜ける時に抜け道が空洞となって、この空洞部が研磨シートの気泡となる。この際、略涙形状のマクロ気泡とともに、略涙形状の気泡よりも小さな微細気泡が該研磨シート全体に形成される(図1参照)。
また、涙形状気泡は、異方性があり、研磨パッドの研磨層表面から底部に向けて径が大きい構造を有する。図2〜図5を見れば明らかなように、涙形状気泡は、微細気泡に比べるとはるかに大きな断面積又は体積を有する。したがって、涙形状気泡と微細気泡とは容易に区別することができる。万が一区別がつかないという場合には、例えば、円相当直径が30μm以上の気泡、好ましくは50μm以上の気泡を涙形状気泡としてもよい。
本明細書及び特許請求の範囲において、微細気泡とは、湿式成膜法により形成される略涙形状の気泡よりも小さい緻密な気泡であって、円相当直径が3〜10μmの微細気泡を意味する。
本明細書及び特許請求の範囲において、円相当直径とは、走査型電子顕微鏡(SEM)により、1000倍で撮影し、ポリウレタン研磨シートの断面画像を二値化処理し、各気泡部分の面積から算出した円相当直径である。
本明細書及び特許請求の範囲において、厚さ方向とは、ポリウレタン研磨シートの被研磨物と接触する面(研磨面)と直行する角度で、該研磨面から、該研磨面とは反対側の面へと向かう方向を意味する。
<<研磨パッド>>
本発明の第1の態様は、湿式成膜法により形成される、複数の涙形状気泡と、該複数の涙形状気泡よりもサイズが小さい3〜10μmの円相当直径を有する複数の微細気泡とを有するポリウレタン研磨シートを含む研磨パッドであって、ポリウレタン研磨シートの厚さをTとし、前記ポリウレタン研磨シートを厚さ方向に切断して得られる任意の切断面のうち、ポリウレタン研磨シートの研磨面から厚さ方向に0〜T×1/6の範囲の面積をA1とし、面積A1内の涙形状気泡が占める面積をA1から差し引いた面積をB1とするとき、面積B1に含まれる前記微細気泡の面積率が、面積B1の全面積に対して1面積%未満であることを特徴とする、前記研磨パッドである。
<ポリウレタン研磨シート>
本明細書及び特許請求の範囲において、ポリウレタン研磨シートとは、成膜基材上に塗布したポリウレタン樹脂を含む溶液を、凝固法により凝固して形成された樹脂シートをいう。ポリウレタン研磨シートは1層からなることが好ましい。すなわち、2枚以上の樹脂シートを貼り合わせた複層構造ではないことが好ましい。
ポリウレタン研磨シートは、ポリウレタン樹脂を含む。本発明のポリウレタン樹脂の種類に特に制限はないが、後述するように、ジイソシアネート化合物と、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、及びポリカーボネートジオールを含むポリオール成分(ジオール成分)とを共重合して得られたポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
また、ポリウレタン研磨シートは、上記成分の他に、カーボンブラック、発泡助剤、界面活性剤などが含まれていてもよい。カーボンブラックを用いる場合には、ポリウレタン樹脂溶液を構成する全固形分に対して5.0質量%以内の範囲で含まれることが好ましく、0.1〜5.0質量%含まれることがより好ましく、0.5〜3質量%含まれることがさらにより好ましい。カーボンブラックが上記範囲内で含まれていると、研磨パッドの物理強度が高くなり、耐摩耗性が向上する。しかしながら、カーボンブラックの量が多くなるとワークに傷を与える可能性が高くなるため、添加する場合には上限値以下の量に抑えることが好ましい。
(モジュラス)
ポリウレタン樹脂は、2〜10MPaの樹脂モジュラスを有することが好ましく、3〜8MPaであることがより好ましい。樹脂モジュラスが上記範囲内であると、研磨時に発生する研磨屑が被研磨物にこすりつけられることがなく傷を与えにくいため好ましい。
モジュラスとは、樹脂の硬さを表す指標であり、無発泡の樹脂シートを100%伸ばしたとき(元の長さの2倍に伸ばしたとき)に掛かる荷重を単位面積で割った値である(以下、100%モジュラスと呼ぶことがある。)。この値が高い程、硬い樹脂である事を意味する。
(微細気泡の開孔面積率)
本発明の研磨パッドは、図1に示すように、ポリウレタン研磨シートの厚さをTとし、前記ポリウレタン研磨シートを厚さ方向に切断して得られる任意の切断面のうち、ポリウレタン研磨シートの研磨面から厚さ方向に0〜T×1/6の範囲(S1)の面積をA1とし、面積A1内の涙形状気泡が占める面積をA1から差し引いた面積(図1の斜線部分)をB1とするとき、面積B1に含まれる3〜10μmの円相当直径を有する微細気泡の断面積の割合((開孔)面積率)が、面積B1の全面積に対して1面積%未満である。該面積率は、0.8面積%以下であることが好ましく、0.5面積%以下であることがより好ましく、0.3面積%以下であることがさらに好ましく、0.2面積%以下であることがさらにより好ましく、0.1面積%以下であることがことさら好ましく、0面積%、すなわち、前記微細気泡が存在しないことが特に好ましい。
ポリウレタン研磨シートの研磨面から厚さ方向にT×1/6までの面積範囲において、微細気泡の面積率が上記範囲内であると、研磨表面付近の剛性が向上し、被研磨物を研磨する際の耐摩耗性が向上する。
なお、切断面に対して垂直な方向(上側)から研磨パッド切断面を俯瞰すると、涙形状気泡部分にも微細気泡が存在するようにもみえる。しかしながら、この場合、涙形状気泡部分の微細気泡は、観測点からみて切断面よりも向こう側に存在するのであって、切断面には存在しない。したがって、単位面積あたりの涙形状気泡の面積が大きければ大きいほど、微細気泡が存在し得る面積は小さくなる。
そこで、微細気泡の面積率が涙形状気泡の大きさや数に左右されないよう、微細気泡の(開孔)面積率を求める際には、切断面の任意の面積範囲Aから該範囲内に存在する涙形状気泡の面積を差し引いた面積B(すなわち、面積Aに存在するポリウレタン樹脂組成物の面積と微細気泡の面積との合計)をベースとする。そして、面積Bに存在する微細気泡の合計面積Cを算出し、「C/B×100(%)」により微細気泡の面積率を求める。
また、本発明の研磨パッドは、前記ポリウレタン研磨シートを厚さ方向に切断して得られる任意の切断面のうち、ポリウレタン研磨シートの研磨面から厚さ方向にT×5/6〜T×6/6の範囲(S6)の面積をA6とし、面積A6内の涙形状気泡が占める面積をA6から差し引いた面積をB6とするとき、面積B6に含まれる前記微細気泡の面積率が、面積B6の全面積に対して1〜15面積%であることが好ましく、1〜10面積%であることがより好ましい。
面積B6表面における微細気泡の面積率が上記範囲内であると、研磨面付近は微細気泡が少なく耐摩耗性に優れる一方で、研磨面とは反対側には微細気泡が多数存在するために被研磨物を研磨パッドに押し付けた際に微細気泡がクッションの役割を果たし、スクラッチの発生を低減させることができる。
また、本発明の研磨パッドは、前記ポリウレタン研磨シートを厚さ方向に切断して得られる任意の切断面のうち、ポリウレタン研磨シートの研磨面から厚さ方向にT×1/6〜T×6/6の範囲(S’)の面積をA’とし、面積A’における涙形状気泡が占める面積をA’から差し引いた面積をB’とするとき、面積B’に含まれる前記微細気泡の面積率が、面積B’の全面積に対して1〜15面積%であることが好ましく、1〜10面積%であることがより好ましい。
面積B’表面における微細気泡の面積率が上記範囲内であると、ポリウレタン研磨シートの研磨面と反対側付近だけでなく研磨シート内部にも微細気泡が多数存在するため、被研磨物を研磨パッドに押し付けた際のクッション効果が高まり、スクラッチの発生を更に低減させることができる。
(厚み)
本発明の研磨パッドに含まれるポリウレタン研磨シートの厚みに特に制限はないが、500〜1500μm程度であることが好ましく、800〜1200μm程度であることがより好ましい。
本発明の研磨パッドは、好ましくは下記本発明の第2の態様に記載した保持パッドの製造方法により製造することができる。
<<研磨パッドの製造方法>>
本発明の第2の態様は、ジイソシアネート化合物と、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール及びポリカーボネートジオールを含むポリオール成分とが共重合されたポリウレタン樹脂を含む溶液を調製する工程、該ポリウレタン樹脂を含む溶液を成膜基材に塗布する工程、及び前記溶液が塗布された成膜基材を凝固液に浸漬して前記溶液を凝固する工程を含む研磨パッドの製造方法であって、前記ポリオール成分全体を100モル%とした場合、ポリエステルジオールの割合が50〜98モル%であり、ポリエーテルジオールの割合が1〜40モル%であり、且つポリカーボネートジオールの割合が1〜40モル%であることを特徴とする、前記製造方法である。
以下、各工程について詳しく説明する。
<ポリウレタン樹脂を含む溶液の調製>
ポリウレタン研磨シートの材料となるポリウレタン樹脂を、例えばポリウレタン樹脂を溶解することのできる水混和性の有機溶媒に、ポリウレタン樹脂を溶解し、ポリウレタン樹脂を含む溶液(ポリウレタン樹脂含有溶液)を得る。ポリウレタン樹脂含有溶液には、上記成分の他に、カーボンブラック、発泡助剤、界面活性剤などを添加してもよい。
(ポリウレタン樹脂)
ポリウレタン研磨シートの材料となるポリウレタン樹脂は、ジイソシアネート化合物と、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、及びポリカーボネートジオールを含むポリオール成分とを共重合することにより得られる。ポリオール成分として性質の異なる上記3種のジオールを用いることにより、ポリウレタン研磨シートの研磨面付近の微細気泡の数が低減された研磨パッドを製造することができ、耐摩耗性を向上させることができる。
ジイソシアネート化合物としては、分子内に2つ以上の水酸基を有するポリオール化合物と、分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物とを反応させることで生成したイソシアネート末端ウレタンプレポリマ(以下、単に、プレポリマと略記する。)が用いられている。例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソチオシアネート、キシリレン−1,4−ジイソチオシアネート、エチリジンジイソチオシアネート等を挙げることができる。また、これらのジイソシアネート化合物の2種以上を併用してもよい。ポリオール化合物と、ジイソシアネート化合物とを反応させるときに、イソシアネート基のモル量を水酸基のモル量より大きくすることで、プレポリマを得ることができる。
前記ポリオール成分(100モル%)中、ポリエステルジオールの割合は50〜98モル%であり、50〜90モル%であることが好ましく、55〜80モル%であることがより好ましく、55〜75モル%であることがさらにより好ましく、55〜65モル%が特に好ましい。ポリエステルジオール成分の割合が上記範囲内であると、成膜安定性に優れる。
前記ポリオール成分中、ポリエーテルジオールの割合は1〜40モル%であり、5〜35モル%であることが好ましく、8〜32モル%であることがより好ましく、10〜30モル%であることがさらにより好ましい。ポリエーテルジオール成分の割合が上記下限値未満であると、研磨面付近の微細気泡の数が増加する傾向にある。一方、ポリエーテルジオール成分の割合が上限値より大きくなると、凝固速度が極端に速くなり、発泡を制御することが困難になる。したがって、成膜性が悪化する。
前記ポリオール成分中、ポリカーボネートジオールの割合は1〜40モル%であり、5〜35モル%であることが好ましく、8〜32モル%であることがより好ましく、10〜30モル%であることがさらにより好ましい。ポリカーボネートジオール成分の割合が上記範囲内であると、成膜安定性に優れる。一方で、ポリカーボネートジオール成分の割合が上限値よりも大きくなると、耐熱性は向上するものの反発弾性が低くなり、スクラッチの要因となるような研磨屑を研磨パッド側で吸収しながら排出するよりも、むしろワークにこすり付けてしまい、ワークにダメージを与えてしまう傾向にある。
(有機溶媒)
前記有機溶媒としては、ポリウレタン樹脂を溶解することができ且つ水混和性であれば特に制限なく用いることが出来る。例としては、N、N−ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、アセトンなどが挙げられる。これらの中でも、DMF又はDMAcが好ましく用いられる。
ポリウレタン樹脂含有溶液中の固形分濃度は、好ましくは15〜50質量%、より好ましくは15〜40質量%である。上記範囲内の濃度であれば、ポリウレタン樹脂含有溶液が適度な流動性を有し、後の塗布工程において成膜基材に均一に塗布することができる。また、ポリウレタン樹脂含有溶液には白濁しない程度に水を樹脂固形分に対して1〜20質量%添加してもよい。
<塗布>
上記で得られたポリウレタン樹脂含有溶液を、例えば、ナイフコーター、リバースコーター等により成膜基材上に略均一となるように、連続的に塗布する。成膜基材としては、本技術分野で通常用いられる基材であれば特に制限なく用いることができる。例としては、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム等の可撓性のある高分子フィルム、弾性樹脂を含浸固着させた不織布等が挙げられ、中でもポリエステルフィルムが好ましく用いられる。
<凝固>
ポリウレタン樹脂含有溶液が塗布された基材を、例えば、ポリウレタン樹脂に対して貧溶媒である水を主成分とする凝固液に浸漬する。
凝固液としては、水、水とDMF等の極性溶媒との混合溶液などが用いられる。中でも、水又は水とDMF等の極性溶媒との混合溶液が好ましい。極性溶媒としては、ポリウレタン樹脂を溶解するのに用いた水混和性の有機溶媒、例えばDMF、DMAc、THF、DMSO、NMP、アセトンが挙げられる。また、混合溶媒中の極性溶媒の濃度は0.5〜30質量%が好ましい。
凝固液の温度や浸漬時間に特に制限はなく、例えば5〜80℃で5〜60分間浸漬すればよい。
<洗浄乾燥>
凝固浴で凝固させて得られたシート状のポリウレタン樹脂を成膜基材から剥離した後又は剥離せずに、洗浄、乾燥処理を行う。
洗浄処理により、ポリウレタン樹脂中に残留する有機溶媒が除去される。洗浄に用いられる洗浄液としては、水が挙げられる。
洗浄後、ポリウレタン樹脂を乾燥処理する。乾燥処理は従来行われている方法で行えばよく、例えば80〜150℃で5〜60分程度乾燥機内で乾燥させればよい。上記の工程を経て、ポリウレタン研磨シートを得ることができる。
本発明の研磨パッドは、ポリウレタン研磨シート(研磨層)のみからなる単層構造であってもよく、ポリウレタン研磨シートの研磨面とは反対側の面に他の層(下層、支持層)を貼り合わせた複層からなっていてもよい。他の層の特性は特に限定されるものではないが、ポリウレタン研磨シートの反対側の面に研磨層よりも硬い層が張り合わされていることが好ましい。ポリウレタン研磨シートよりも硬い層が設けられることにより、研磨定盤の微小な凹凸が研磨面の形状に影響することを回避でき、研磨均一性(平坦性)が向上する。また、研磨布の剛性が総じて高くなることにより、研磨布を定盤に貼着させる際の、皺の発生などを抑制することができる。
複層構造を有する場合には、複数の層同士を両面テープや接着剤などを用いて、必要により加圧しながら接着・固定すればよい。この際用いられる両面テープや接着剤に特に制限はなく、当技術分野において公知の両面テープや接着剤の中から任意に選択して使用することが出来る。
さらに、本発明の研磨パッドは、必要に応じて、ポリウレタン研磨シートの研磨面及び/又はその裏面を研削処理したり、溝加工やエンボス加工を表面に施したりしてもよく、基材及び/又は粘着層をポリウレタン研磨シートと張り合わせてもよく、光透過部を備えてもよい。
研削処理の方法に特に制限はなく、公知の方法により研削することができる。具体的には、サンドペーパーによる研削が挙げられる。
溝加工及びエンボス加工の形状に特に制限はなく、例えば、格子型、同心円型、放射型、ハニカム形状などの形状が挙げられる。
本発明の研磨パッドを使用するときは、研磨パッドを研磨層の研磨面が被研磨物と向き合うようにして研磨機の研磨定盤に取り付ける。そして、スラリーを供給しつつ、研磨定盤を回転させて、被研磨物の加工表面を研磨する。
本発明の研磨パッドにより加工される被研磨物としては、ハードディスク用ガラス基板やアルミ基板、薄型ディスプレイ用マザーガラス、半導体ウェハ、半導体デバイス、シリコン、磁気ディスクなどが挙げられる。中でも、本発明の研磨パッドは、半導体デバイスを加工するのに好適に用いられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
各実施例及び比較例において、特段の指定のない限り、「部」とは「質量部」を意味するものとする。
[実施例1]
ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオールをそれぞれ60%、30%、10%のモル比割合で共重合したポリオールとジフェニルメタンジイソシアネートとを反応させたポリウレタン樹脂A(100%モジュラス6.0MPa)(30部)及びDMF(70部)を含む溶液100部に、別途のDMF47.2部、及びカーボンブラックを全固形分量の2.0質量%量となるよう添加し、混合することにより樹脂含有溶液を得た。得られた樹脂含有溶液を、クリアランス1.50mmに設定したリバースコーターを用いて、ポリエステルフィルム上にキャストした。その後、樹脂含有溶液をキャストしたポリエステルフィルムを凝固浴(凝固液は水)に18℃で30分間浸漬し、該樹脂含有溶液を凝固させた後、洗浄・乾燥させて、樹脂シートを得た。得られた樹脂シートとPET製の基材を有する両面テープとを貼り合わせ研磨パッドを得た。
[実施例2]
ポリウレタン樹脂Aの代わりに表1に記載のポリウレタン樹脂B(100%モジュラス6.0MPa)を使用したこと以外は実施例1と同様にして研磨パッドを得た。
[実施例3]
ポリウレタン樹脂Aの代わりに表1に記載のポリウレタン樹脂C(100%モジュラス6.0MPa)を使用したこと以外は実施例1と同様にして研磨パッドを得た。
[実施例4]
ポリウレタン樹脂Aの代わりに表1に記載のポリウレタン樹脂D(100%モジュラス6.0MPa)を使用したこと以外は実施例1と同様にして研磨パッドを得た。
[比較例1]
ポリウレタン樹脂Aの代わりに表1に記載のポリウレタン樹脂E(100%モジュラス6.0MPa)を使用したこと以外は実施例1と同様にして研磨パッドを得た。
[比較例2]
ポリウレタン樹脂Aの代わりに表1に記載のポリウレタン樹脂F(100%モジュラス6.0MPa)を使用したこと以外は実施例1と同様にして研磨パッドを得た。
[比較例3]
ポリウレタン樹脂Aの代わりに表1に記載のポリウレタン樹脂G(100%モジュラス6.0MPa)を使用したこと以外は実施例1と同様にして研磨パッドを得た。
[比較例4]
ポリウレタン樹脂Aの代わりに表1に記載のポリウレタン樹脂H(100%モジュラス6.0MPa)を使用したこと以外は実施例1と同様にして研磨パッドを得た。
[比較例5]
ポリウレタン樹脂Aの代わりに表1に記載のポリウレタン樹脂I(100%モジュラス6.0MPa)を使用したこと以外は実施例1と同様にして研磨パッドを得た。
<評価>
上記の各実施例及び比較例の研磨パッドについて、成膜性、微細気泡の開孔面積率、平均摩耗量、パッド摩耗厚み均一性、スクラッチの有無を評価した。その結果を表2〜4に示す。
(成膜性)
ポリウレタン樹脂成膜後、収縮率が10%未満の場合を○、収縮率が10〜20%以上の場合を△、収縮率が20%より大きい場合、あるいは、湿式凝固時に成膜基材から剥離してしまった場合×評価した。その結果を表4に示す。
(微細気泡の開孔面積率)
発泡シートの断面(厚さ方向)を日本電子製JSM6060LV 走査型電子顕微鏡(SEM)により、1000倍で撮影し、画像データを画像処理ソフト(ナノシステム(株)のNanoHunter NS2K−Pro)に取り込み、解析し微細孔気泡の面積を求め、その面積と同面積の真円相当径を気泡径として、直径3〜10μmの微細気泡をカウントし、各測定領域(S1〜S6及びS’:図1参照)における気泡開孔面積率を求めた。なお、測定視野は幅250μm×発泡シートの厚み(約1mm)の範囲とし、シート断面でマクロ発泡(涙形状気泡)ではない樹脂部分(V:μm2)に存在する微細気泡をカウントし、微細気泡の面積の総合計(P:μm2)により開孔面積率を算出した。
開孔面積率(%)=P/V×100
測定は3視野行い、平均値を求めた。
なお、画像処理ソフトにより微細気泡の円相当径、および、開孔面積率を求めるための処理条件は、(1)モノクロ変換、(2)スケール設定:1画素=0.400000(μm)、(3)領域設定(発泡の切断最表面の樹脂壁領域のみに領域設定する)、(4)ヒストグラムの部分的拡大: 拡大範囲=130〜130、(5)メディアンフィルタ(3×3、4近傍、処理回数=1)、(6)白黒反転、(7)処理領域上の画像除去:除去する辺(上辺、下辺、左辺、右辺)、(8)特徴量(円相当径 面積)による画像のみ選択(0.0〜100.0μm、8近傍)、(9)孤立点除去、(10)穴埋め、(11)収縮(8近傍、処理回数=3)、(12)隣と隣接しない膨張(4近傍、処理回数=1)(13)円相当径計測(面積から計算、8近傍)とした。
その結果を表2に示す。
研磨面から0〜T×1/6の範囲(S1)について、微細気泡の開孔面積率を以下の基準に基づいて評価した。その結果を表3に示す。
○…微細気泡の開孔面積率が1%未満
×…微細気泡の開孔面積率が1%以上
(平均摩耗量及びパッド摩耗厚み均一性)
次に、研磨パッドを片面研磨機の定盤に取り付け、シリコンウェハ上のSiO2熱酸化膜を回転させながら、パッド面に押し付けて研磨し、摩耗量とパッド摩耗厚み均一性(摩耗された厚みの面内均一性)を評価した。このときの研磨条件は次の通りである。
(研磨条件)
使用研磨機:(株)荏原製作所製、商品名「F−REX300」
研磨速度(定盤回転数):70rpm
加工圧力:176g/cm2
スラリー:コロイダルシリカスラリ(pH:11.5)
スラリー流量:200mL/分
研磨時間:60秒
被研磨物:SiO2熱酸化膜付きシリコンウェハ
(平均摩耗量)
研磨パッドの中心を0地点としてX軸直線、Y軸直線を設定し、パッド中心から±150mm〜±230mmの範囲において、研磨する前の研磨パッドの厚み及びウェハを50枚研磨後の研磨パッドの厚みを10mm間隔で測定した(図6参照)。図6は実施例1の結果を示している。図6において、膜厚1.47mm付近の破線は、実施例1の研磨前の研磨パッドの厚さを表す。白色のドット及び黒色のドットは、それぞれX軸及びY軸における50枚研磨後の研磨パッドの厚さを表す。上記破線と白色のドット又は黒色のドットとの差が、各地点における50枚研磨後の研磨パッドの摩耗量を表す。各地点における研磨前後の厚み差を求め、全測定地点における該厚み差の平均値を平均摩耗量とした。
実施例及び比較例の研磨パッドの平均摩耗量を以下の基準に従って評価した。その結果を表4に示す。
○…平均摩耗量が0.120mm以下
×…平均摩耗量が0.120mm超過
(パッド摩耗厚み均一性)
上記各地点(但し外周2mm除外)の摩耗量の結果を基に、以下の評価基準に従って、各実施例及び比較例における研磨パッドのパッド摩耗厚み均一性を評価した。その結果を表4に示す。
○…下記(1)及び(2)のいずれにも当てはまらない場合。
×…下記(1)及び(2)の一方又は両方に当てはまる場合。
(1)パッド中心からの距離が等しいX軸地点、Y軸地点において、摩耗量が50μm以上異なる。
(2)研磨パッドの研磨領域(パッド中心より±45〜±345mm)における最大摩耗量と最小摩耗量の差が100μm以上。
<スクラッチの確認>
スクラッチの発生状況については、研磨加工後のウェハの表面を顕微鏡観察することでスクラッチの有無を判定した。その結果を表4に示す。
○…スクラッチなし
×…スクラッチあり
<結果>
比較例1〜3の研磨パッドは、研磨面付近においても微細気泡が存在しており、摩耗量が多く、実施例に比べ耐摩耗性に劣っていた。また、下層部にミクロボイドを多く有していた比較例2ではスクラッチが発生した。さらには、比較例3では成膜性が悪かった。また、比較例2〜3の研磨パッドは、摩耗量が部位によってばらついていた。
比較例4〜5の研磨パッドについては、ポリウレタン樹脂の凝集が強く、ポリウレタンシートが基材から浮き、成膜性できなかったため、微細気泡の開孔面積率、摩耗量、摩耗厚み均一性、スクラッチの有無を測定することが出来なかった。
一方、本発明の研磨パッド(実施例1〜4)は、研磨面付近に微細気泡が存在しなかった。そのため、研磨パッドの摩耗量が少なく、耐摩耗性に優れていた。また、スクラッチも生じず、研磨代の分布がウェハ面内で概ね均一であった。
本発明の研磨パッドは、従来の研磨パッドと異なり、研磨面付近(上層)に微細気泡がほとんど存在しないため、パッドの研磨面付近の剛性が向上し、耐摩耗性を向上させることができる。また、軟質素材の樹脂から構成されているため、スクラッチの発生が抑制することも出来る。すなわち、本発明の研磨パッドは、優れたスクラッチの発生抑制と優れた耐摩耗性とを効果として両立させることができる。よって、本発明の研磨パッド及びその製造方法は、産業上極めて有用である。

Claims (6)

  1. 湿式成膜法により形成される、複数の涙形状気泡と、該複数の涙形状気泡よりもサイズが小さい3〜10μmの円相当直径を有する複数の微細気泡とを有するポリウレタン研磨シートを含む研磨パッドであって、
    ポリウレタン研磨シートの厚さをTとし、
    前記ポリウレタン研磨シートを厚さ方向に切断して得られる任意の切断面のうち、ポリウレタン研磨シートの研磨面から厚さ方向に0〜T×1/6の範囲の面積をA1とし、且つ
    面積A1内の涙形状気泡が占める面積をA1から差し引いた面積をB1とするとき、
    面積B1に含まれる前記微細気泡の面積率が、面積B1の全面積に対して1面積%未満であることを特徴とする、前記研磨パッド。
  2. 前記ポリウレタン研磨シートを厚さ方向に切断して得られる任意の切断面のうち、ポリウレタン研磨シートの研磨面から厚さ方向にT×5/6〜T×6/6の範囲の面積をA6とし、且つ
    面積A6内の涙形状気泡が占める面積をA6から差し引いた面積をB6とするとき、
    面積B6に含まれる前記微細気泡の面積率が、面積B6の全面積に対して1〜15面積%である、請求項1に記載の研磨パッド。
  3. 前記ポリウレタン研磨シートを厚さ方向に切断して得られる任意の切断面のうち、ポリウレタン研磨シートの研磨面から厚さ方向にT×1/6〜T×6/6の範囲の面積をA’とし、且つ
    面積A’内の涙形状気泡が占める面積をA’から差し引いた面積をB’とするとき、
    面積B’に含まれる前記微細気泡の面積率が、面積B’の全面積に対して1〜15面積%である、請求項1又は2に記載の研磨パッド。
  4. 前記ポリウレタン研磨シートの厚さが、500〜1500μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の研磨パッド。
  5. ジイソシアネート化合物と、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール及びポリカーボネートジオールを含むポリオール成分とが共重合されたポリウレタン樹脂を含む溶液を調製する工程、
    該ポリウレタン樹脂を含む溶液を成膜基材に塗布する工程、及び
    前記溶液が塗布された成膜基材を凝固液に浸漬して前記溶液を凝固する工程、
    を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の研磨パッドの製造方法であって、
    前記ポリオール成分全体を100モル%とした場合、ポリエステルジオールの割合が50〜98モル%であり、ポリエーテルジオールの割合が1〜40モル%であり、且つポリカーボネートジオールの割合が1〜40モル%であることを特徴とする、前記製造方法。
  6. 前記ポリオール成分中、ポリエステルジオールの割合が50〜90モル%であり、ポリエーテルジオールの割合が5〜35モル%であり、且つポリカーボネートジオールの割合が5〜35モル%である、請求項5に記載の製造方法。
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