以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図1は本発明に係る燃料電池装置1の外観を示した斜視図である。また、図2は、図1におけるA−A断面を示した断面図である。図1及び図2に示したように、燃料電池装置1は、円筒形状の収納容器であるハウジング100の内部に、円筒形状である複数の燃料電池セル300を収納している。
燃料電池セル300は、固体酸化物形の燃料電池セルであって、燃料ガス(水素)と酸化剤ガス(空気)との供給を受けて発電するものである。燃料電池セル300は、それぞれの中心軸が鉛直方向に沿った状態でマニホールド700の天板701上に並設している。全ての燃料電池セル300は互いに電気的に接続されており、燃料電池セル集合体500を構成している。
マニホールド700は円筒形状の容器であって、燃料ガスを内部で分散させた後、複数の燃料電池セル300に供給するためのものである。図3に示したように、マニホールド700はその上部において水平な天板701を有している。天板701には、燃料電池セル300と同数の貫通孔702(図3では不図示)が形成されており、それぞれの燃料電池セル300が、その下端を貫通孔702に接続した状態で立設している。後に詳しく説明するように、各燃料電池セル300には、その中心軸と平行な貫通孔である燃料供給孔305が複数形成されている。これにより、マニホールド700に供給された燃料ガスが貫通孔702から燃料供給孔305に流入し、各燃料電池セル300の内部を下方から上方に向かって流れる構造となっている。
また、図3に示したように、燃料電池セル300はマニホールド700の中心軸近くには配置されていない。すなわち、燃料電池セル集合体500が上面視でドーナツ形状となるように、複数の燃料電池セル300が配置されている。
続いて、燃料電池装置1の内部を反応ガス(燃料ガス、酸化剤ガス)が流れる経路、及び、反応ガスのうち発電に供されなかった残余のガスである排ガスが流れる経路について、図4乃至図6を参照しながら説明する。図4は、燃料電池装置1の内部構造を模式的に示した図である。図4に示したように、ハウジング100の壁は4重壁となっておりそれぞれ略円筒形状である3つの空間(第一空間161、第二空間180、第三空間121)が、互いに隣接し、上面視で同心円状となるように配置されている。燃料電池装置1は、これら3つの空間をそれぞれ燃料ガス流路、排ガス流路、酸化剤ガス流路として利用している。
まず、燃料ガスが流れる経路について説明する。燃料ガスは、ハウジング100の壁に形成された3つの空間のうち最も内側に形成された第一空間161を流れて、燃料電池セル300に供給される。図4では、燃料ガス(及び原料ガス)の流れを矢印で示している。
第一空間161の内部には、第一空間161と中心軸が一致するように配置された円筒形状の仕切り板162が固定されている。仕切り板162によって、第一空間161は外側空間161aと内側空間161bとに分けられており、外側空間161aと内側空間161bとは上部で連通した状態となっている。仕切り板162の下端は、ハウジング100の内壁に対して密閉固定されている。
ハウジング100の内壁(4重壁のうち最も内側の壁)において仕切り板162の下端よりも更に下方には、内側から原料ガス供給配管164が接続されている。原料ガス供給配管164は、改質反応によって燃料ガスを生成するための原料である都市ガス等の原料ガスを、外部から供給するための配管である。このため、原料ガス供給配管164により供給される原料ガスは、外側空間161aの下部に供給されることとなる。
また、ハウジング100の内壁において仕切り板162の下端よりも更に下方には、内側から水供給配管165が更に接続されている。水供給配管165は、水蒸気改質反応に必要となる水を、外部から供給するための配管である。水供給配管165が接続された位置は、原料ガス供給配管164が接続された位置に対し、ハウジング100の中心軸を挟んで対向する位置となっている。
水供給配管165は、その先端166が第一空間161の内部において水平方向に突出している。先端166の鉛直下方には、第一空間161の外側の壁から内側に向かって水平に伸びる蒸発板167が配置されている。後に説明するように、第一空間161の外側の壁及び蒸発板167は、第二空間180を流れる排ガスの熱によって高温の状態となっている。このため、水供給配管165により外部から供給された水は、先端166から蒸発板167に滴下した直後、加熱されて水蒸気となる。すなわち、水供給配管165の先端166と蒸発板167とは、水蒸気を発生させるための気化器として機能するものである。
原料ガス供給配管164により供給された原料ガスと、蒸発板167において発生した水蒸気とは、外側空間161aにおいて混合されながら下方から上方に向かって流れる。その際、隣接する第二空間180を流れる排ガスによって加熱されるため、上方に向かって流れるに従って温度が上昇していく。その後、原料ガスと水蒸気との混合ガスは内側空間161bに流入し、内側空間161bを上方から下方に向かって流れる。
内側空間161bのうち、燃料電池セル300の中央近傍となる高さの位置には、触媒支持板168が固定されている。触媒支持板168は、金属により形成された水平な板であって、改質触媒900が落下しないように支持するものである。触媒支持板168には複数の貫通孔が形成され、通気性が確保されている。
改質触媒900は、アルミナの球体表面にニッケル等の触媒金属を担持させたものであり、内側空間161bのうち触媒支持板168の上方に多数充填されている。また、改質触媒900の上端位置は、燃料電池セル300の上端位置よりも高くなっている。尚、触媒金属を担持させる対象の材質はアルミナに限られず、燃料電池の作動温度域である600℃以上の温度において使用可能な種々の材質を採用することができる。このような材質としては、例えば、コージェライトや耐熱ステンレス等が挙げられる。
内側空間161bを流れる混合ガスは、改質触媒900の表面に触れながら、上方から下方に向かって流れる。改質触媒900は、第二空間180を流れる排ガスの熱と、燃料電池セル300の発電熱、及び、燃料電池セル300の先端における燃焼熱によって加熱された状態となっている。このため、化学反応式(1)に示す反応(水蒸気改質反応)が進行し、原料ガスは、水素リッチな燃料ガスに改質される。
CmHn+xH2O → aCO2+bCO+cH2 (1)
改質触媒900における改質反応により生成された燃料ガスは、触媒支持板168の貫通孔を通過した後、内側空間161bを更に下方に向かって流れる。ハウジング100の内壁のうち、仕切り板162の下端が固定されている部分の上部、すなわち、内側空間161bの下端となる部分の内側には、二つのL字管169a、169bの一端がそれぞれ接続されている。L字管169a、169bのそれぞれの他端は、マニホールド700の底板705に接続されている。このため、内側空間161bとマニホールド700とが、L字管169a、169bによって連通した状態となっている。
燃料ガスは、内側空間161bの下端からL字管169a、169bを通ってマニホールド700に流入し、マニホールド700の内部で分散した後、各燃料電池セル300の燃料供給孔305に供給される。燃料ガスは、燃料供給孔305を下方から上方に向かって流れながら、燃料電池セル300の発電のために消費される。発電のために消費されなかった残余の燃料ガスは、燃料電池セル300の上端から放出された直後、発電のために消費されなかった残余の酸化剤ガスと混合されて燃焼する。
次に、酸化剤ガスが流れる経路について、図5を参照しながら説明する。図5は、図4と同様に、燃料電池装置1の内部構造を模式的に示した図である。酸化剤ガスは、ハウジング100の壁に形成された3つの空間のうち最も外側に形成された第三空間121を流れて、燃料電池セル300に供給される。図5では、酸化剤ガスの流れを矢印で示している。
第三空間121は、円筒形状の空間である円筒空間121aと、円盤形状の空間である円盤空間121bとを有している。円盤空間121bは、その外周部分が円筒空間121aの上端に接続されており、円筒空間121aと連通した空間となっている。
ハウジング100の外壁(4重壁のうち最も外側の壁)の下部には、酸化剤ガス供給配管122が外側から接続されている。酸化剤ガス供給配管122は、燃料電池セル300に供給する酸化剤ガスを第三空間121に供給するための配管である。このため、酸化剤ガスは、円筒空間121aの下部に供給されることとなる。
酸化剤ガス供給配管122により供給された酸化剤ガスは、隣接する第二空間180を流れる排ガスによって加熱され次第に温度を上昇させながら、円筒空間121aを下方から上方に向かって流れる。その後、円筒空間121aの上端に達した酸化剤ガスは円盤空間121bに流入し、円盤空間121bの外周から中心に向かって流れる。
ハウジング100の中央部には、ハウジング100の上部から鉛直下方に向かって延びる酸化剤ガス供給管800が配置されている。酸化剤ガス供給管800は、各燃料電池セル300の外側面に向けて酸化剤ガスを噴射し供給するための円筒形状の管であって、その中心軸が各燃料電池セル300の中心軸と平行となるように配置されている。酸化剤ガス供給管800は、上端が円盤空間121bに連通し、下端が封止されている。酸化剤ガス供給管800の下部における側面には、複数の噴射口801が形成されている。
このような構成により、円盤空間121bの外周から中心に向かって流れた酸化剤ガスは、酸化剤ガス供給管800に流入し、酸化剤ガス供給管800の内部を上方から下方に向かって流れる。酸化剤ガスは、酸化剤ガス供給管800の内部に到達した後、複数の噴射口801から水平方向に噴射される。
後に説明するように、燃料電池セル300の外側面には空気極層が形成されている。このため、噴射口801から水平方向に噴射された酸化剤ガスは、各燃料電池セル300の外側面に沿って上昇しながら各空気極層に供給され、燃料電池セル300の発電のために消費される。発電のために消費されなかった残余の酸化剤ガスは、燃料電池セル300の上端に到達した後、発電のために消費されなかった残余の燃料ガスと混合されて燃焼する。
次に、排ガスが流れる経路について、図6を参照しながら説明する。排ガスとは、燃料ガス及び酸化剤ガスのうち発電に供されなかった残余のガスのことである。また、本実施形態では燃料電池セル300の上部において残余の燃料ガス及び酸化剤ガスを混合し燃焼させているが、かかる燃焼によって生じた二酸化炭素等のガスも排ガスと称する。
図6は、図4と同様に、燃料電池装置1の内部構造を模式的に示した図である。排ガスは、ハウジング100の壁に形成された3つの空間のうち、第一空間161と第三空間121との間に挟まれた空間である第二空間180を流れて、外部に排出される。図6では、排ガスの流れを矢印で示している。
第二空間180は、円筒空間121aと外側空間161aとに挟まれた円筒形状の空間であって、その中心軸が、円筒空間121aの中心軸、及び外側空間161aの中心軸と一致するように形成されている。排ガスは、燃料電池セル300の上端部近傍からハウジング100の内部を上昇した後、第一空間161の上端と円盤空間121bの下端とに挟まれた隙間181を通過し、第二空間180の上部に流入する。このときの排ガスは、燃料電池セル300の発電熱や残余の反応ガスの燃焼熱の影響により、高温の状態となっている。
その後、排ガスは第二空間180を上方から下方に向かって流れる。その際、隣接する円筒空間121aを流れる酸化剤ガス、及び、外側空間161aを流れる混合ガスに熱を奪われるため、第二空間180を上方から下方に流れるに従って排ガスの温度は次第に下がっていく。第二空間180の下部には、排ガス排出配管182が外側から接続されている。第二空間180の下部に到達した排ガスは、排ガス排出配管182を通じて外部に排出される。
続いて、ハウジング100の詳細な構造について、図7及び図8を参照しながら説明する。ハウジング100は、外郭120と内郭160という二つのユニットにより構成されている。図7は、外郭120の構造を示した断面斜視図である。図8は、内郭160の構造を示した断面斜視図である。
まず、外郭120の構造について説明する。図7に示したように、外郭120は、第一円筒130と、第一円筒130の内部に配置された第二円筒131とにより、二重管のユニットとして形成されている。第一円筒130と第二円筒131とは、中心軸が一致するように配置されており、両者の間に挟まれた空間として、既に説明した円筒空間121aを形成している。
第一円筒130の上端には水平な天板132を備えており、天板132が第一円筒130の上端を塞いでいる。同様に、第二円筒131の上端には、水平な天板133を備えており、天板133が第二円筒131の上端を塞いでいる。天板132と天板133との間に挟まれた空間として、既に説明した円盤空間121bを形成している。
第一円筒130の下端からは、内側の第二円筒131に向かって水平に延びる底板134が形成されており、底板134の内周部と第二円筒131の下端とが溶接により密閉固定されている。このため、第一円筒130、第二円筒131、天板132、及び天板133は、一体のユニットとなっている。
第二円筒131の下端からは、外方に向けて水平に延びるように、第一フランジ135が形成されている。第一フランジ135は、上面視で円形のフランジであって、その中心位置が第二円筒131の中心軸上となるように形成されている。第一フランジ135には複数のボルト穴136が貫通形成されており、これらボルト穴136にボルトを挿入し締結することによって、外郭120をベース板BSに対して固定することが可能となっている。
第一円筒130の下部には酸化剤ガス供給配管122が溶接により固定されており、酸化剤ガス供給配管122と円筒空間121aとが連通している。また、第二円筒131の下部であって底板134よりも下方の位置には、排ガス排出配管182が溶接により固定されており、排ガス排出配管182と第二円筒131の内側の空間とが連通している。
後に説明するように、第二円筒131の内側に内郭160を配置することによってハウジング100が構成されるが、その際、第二円筒131と内郭160とに挟まれた空間として第二空間180が形成される。このため、ハウジング100においては、排ガス排出配管182と第二空間180とが連通した状態となる。
続いて、内郭160の構造について説明する。図8に示したように、内郭160は、第三円筒170と、第三円筒170の内部に配置された第四円筒171とにより、二重管のユニットとして形成されている。第三円筒170と第四円筒171とは、中心軸が一致するように配置されており、両者の間に挟まれた空間として、既に説明した第一空間161を形成している。
第三円筒170の上端と、第四円筒171の上端とは同じ高さとなっており、両者は水平な天板172により接続されている。また、第三円筒170の下端と、第四円筒171の下端とは同じ高さとなっており、両者は水平な底板173により接続されている。このように、第三円筒170と第四円筒171とにより挟まれた空間である第一空間161は、その上端が天板172により塞がれており、下端が底板173により塞がれている。第三円筒170、第四円筒171、天板172、及び底板173、一体のユニットとなっている。
内郭160の下端からは、外方に向けて水平に延びるように形成された第二フランジ175が形成されている。第二フランジ175は、上面視において第一フランジ135と同一形状である円形のフランジであって、その中心位置が第四円筒171の中心軸上となるように形成されている。第二フランジ175には複数のボルト穴176が貫通形成されている。ボルト穴176は、第一フランジ135に形成されたボルト穴136と同一の配置となるように形成されている。
第四円筒171のうち仕切り板162の下端よりも下方には、内側から原料ガス供給配管164、及び水供給配管165が接続され、それぞれ溶接固定されている。また、第四円筒171のうち仕切り板162の下端よりも上方には、内側空間161bに連通するように円筒形状の配管177a、177b(配管177bは不図示)が形成されている。配管177a、177bは、それぞれL字型の継手を接続することにより、L字管169a、169bを形成するための配管である。
第四円筒171のうち、配管177a、177bよりも上方には、マニホールド設置台178が形成されている。マニホールド設置台178は、マニホールド700の重量を下方から支えるため水平な板であって、第四円筒171から内側に向かって水平に延びており、その外周部は第四円筒171に溶接固定されている。マニホールド設置台178の中央は大きく開口しており、L字管169a、169と干渉しないようになっている。
図4を再び参照しながら説明する。図4に示したように、ハウジング100は、互いの中心軸を一致させた状態で、第二円筒131の内部に内郭160を配置することにより構成されている。すなわち、外郭120の内部に内郭160を配置することにより構成されている。
外郭120の第一フランジ135と内郭160の第二フランジ175との間には、円形のシール部材101が配置されており、第二空間180を流れる排ガスが外部に流出することがシール部材101によって防止されている。シール部材101は、マイカを成分に含む耐熱性のシールリングである。
シール部材101は、その厚さ(高さ)が一様な薄板形状となっている。このため、外郭120と内郭160との鉛直方向(中心軸方向)による相対位置が、シール部材101によって規定されている。すなわち、シール部材101が高さ規制部材として機能している。
第二空間180における排ガスの流れを適切且つ一様とするには、隙間181の高さが適切且つ一様となるように、外郭120と内郭160との相対位置を調整する必要がある。本実施形態では上記のように、シール部材101によってかかる相対位置が規定されるため、組み立て時における外郭と内郭との位置合わせ作業を容易に行うことが可能となっている。
また、第二空間180における排ガスの流れを一様とするには、外郭120の中心軸と内郭160の中心軸とが一致するように位置合わせを行うことが必要となる。本実施形態においては、外郭120の下端から外方に向けて延びるように形成された第一フランジ135と、内郭160の下端から外方に向けて延びるように形成された第二フランジ175とを有している。外郭120の中心軸と内郭160の中心軸が一致した状態においては、第一フランジ135の外周部と第二フランジ175の外周部とが上面視で一致するように、これらのフランジが形成されている。
このような構成により、ハウジング100の組み立て時においては、第一フランジ135の外周部と第二フランジ175の外周部とが一致することを目視で確認することにより、外郭120と内郭160との水平方向における相対位置を容易に一致させることができる。また、目視による確認の他、鉛直方向と平行な面を有する治具を側方から同時に当てることによって、外郭と内郭との水平方向における相対位置を一致させることもできる。
ハウジング100においては、第二空間180を流れる排ガスが、第一空間161を流れる原料ガス及び燃料ガスと、第三空間121を流れる酸化剤ガスとを加熱している。すなわち、ハウジング100の壁を3重壁とすることにより、熱交換器として利用している。
更に、二重管のユニットとして形成された外郭120及び内郭160を組み合わせることによりハウジング100を構成している。外郭120及び内郭160は、いずれも構造が比較的単純な二重管のユニットであるため、それぞれ容易に組み立てることができる上、その設計自由度も高い。壁の内部に形成される流路を、流れるガスの種類等に応じて最適なものとすることができる。
ハウジング100は、外郭120の内部に内郭160を配置することにより組み立てられる。4つの円筒を溶接等により一つずつ接合しながらハウジングを組み立てるような場合と比較すると、本発明では上記のように、予め作成した外郭120及び内郭160という二つのユニットを組み合わせて配置するという単純な作業により、多重管であるハウジング100を容易に組み立てることが可能となっている。
燃料電池装置1では、第一空間161の一部には改質触媒900が配置されており、第一空間161を燃料ガスが流れる流路として利用している。ハウジング100の壁に形成された第一空間161の一部に改質触媒900を配置しているため、原料ガスを改質して燃料ガスとするための改質器を別途設ける必要がない。その結果、燃料電池装置1はコンパクトなものとなっており、燃料電池装置1の組み立て作業が容易なものなっている。
また、燃料ガスが流れる第一空間161は、ハウジング100の壁に形成された空間のうち最も内側の空間である。このため、第一空間161を流れる燃料ガスは、隣接する第二空間180を流れる排ガスによって加熱されるだけでなく、第四円筒171を介して燃料電池セルの発電熱によっても加熱されることとなる。その結果、改質触媒900における吸熱反応に伴う燃料ガスの温度低下を抑制している。
ハウジング100のうち、水供給配管165の先端166と蒸発板167とは、上記のように水蒸気を発生させるための気化器として機能している。このため、水蒸気を発生させるための気化器を別途設ける必要がない。その結果、燃料電池装置1は更にコンパクトなものとなっており、燃料電池装置1の組み立て作業は更に容易なものとなっている。
また、気化器として機能する水供給配管165の先端166と蒸発板167とは、第一空間161のうち改質触媒900が配置された位置よりも下方に配置されている。換言すれば、排ガスの流路である第二空間180の流路方向における下流側となる位置に形成されている。その結果、第二空間180を流れる排ガスは、上流側において先ず改質触媒900を加熱し、その後、下流側において蒸発板167等を加熱することとなる。
改質反応は高温で発生する吸熱反応であるため、改質触媒900には多量の熱を供給する必要がある。一方、蒸発板167等は水を気化させる程度の熱しか必要としないため、蒸発板167等に供給する熱は改質触媒に比べて少量でよい。ハウジング100においては、それぞれが必要とする熱量に応じて適切な温度の排ガスに触れるよう、改質触媒900と蒸発板167等とを配置しているため、排ガスの熱を有効に利用することができ、燃料電池装置1全体の運転効率を向上させている。
次に、図9乃至図14を参照しながら、燃料電池セル300について説明する。図9は、一本の燃料電池セル300を示した斜視図である。本実施形態においては、円筒形状からなる複数の小型セル301をその中心軸に沿って一直線状に配置することにより、一本の燃料電池セル300を構成している。小型セル301は、それぞれが燃料極支持体302、電解質層303、空気極層304を備えたセルとなっており、一本の燃料電池セル300においては、複数の小型セル301を間に集電部材310を介して電気的に直列接続した状態となっている。すなわち、燃料電池セル300は連結円筒型と称されるものであり、1Vを超える高い発電電圧において電力を出力することが可能となっている。
燃料電池セル300の上部にはアノードキャップ350が配置されている。アノードキャップ350は、最も上方に配置された小型セル301の上端に接続された金属製のキャップである。また、燃料電池セル300の下部にはカソードキャップ370が配置されている。カソードキャップ370は、最も下方に配置された小型セル301の下端に接続された金属製のキャップである。アノードキャップ350及びカソードキャップ370は、燃料電池セル300からの電力を取り出したり、他の燃料電池セル300と電気的に接続したりする際における電極端子として機能する。
小型セル301の構造について、図10を参照しながら説明する。図10は、燃料電池セル300のうち一つの小型セル301を示した斜視図である。小型セル301は、円筒形状の多孔質材により形成された燃料極支持体302と、その側面のほぼ全体に形成された電解質層303と、電解質層303の表面に形成された空気極層304とを有している。
小型セル301は固体電解質形燃料電池(SOFC)であるので、燃料極支持体302を構成する材料としては、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレートとの混合体といった材料が用いられる。
電解質層303を構成する材料としては、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレートといった酸素イオン導電性酸化物が用いられる。
空気極層304を構成する材料としては、例えば、Sr、Caから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀といった材料が用いられる。もっとも、燃料極支持体302や電解質層303及び空気極層304を構成する材料はこれらに限られるものではない。
図10に示したように、燃料極支持体302には、その中心軸と平行に貫通形成された複数の燃料供給孔305が、当該中心軸を囲むように円形に配置されている。燃料供給孔305は、マニホールド700から供給された燃料ガスの通路として機能するものである。燃料供給孔305は多孔質材により形成されているため、燃料ガスは燃料供給孔305を通過しながら一部が電解質層の近傍まで到達し、発電のために消費されることとなる。
燃料極支持体302のうちその中心軸の周りの部分は、燃料供給孔305に囲まれた略円柱形状の領域となっている。当該領域は、貫通孔が形成されていないため、中実の状態であるということができる。以下の説明では、この略円柱形状の中実部分を中実円柱部306と称し、その端面を中実面307と称することがある。図10では、中実円柱部306と他との境界(すなわち、中実面307の外周部分)を、点線Bで示している。
電解質層303は、小型セル301の軸方向端部近傍において、その表面に空気極層304が形成されていない露出部308a、308bを有している。露出部308aは小型セル301の下端部近傍に形成されている部分であり、露出部308bは小型セル301の上端部近傍に形成されている部分である。小型セル301の中心軸方向に沿った露出部308aの長さは、同方向に沿った露出部308bの長さよりも短くなるように形成されている。
小型セル301同士の接続方法について説明する。図11は燃料電池セル300の断面図である。図12は図11の一部を拡大したものであって、小型セル301同士の接続部分の構造を示した断面図である。図13は、燃料電池セル300の構造を説明するための分解斜視図であって、一つの小型セル301の近傍における集電部材310等の配置を示している。
特に図13で明らかなように、集電部材310は、円筒形状の周壁部311と、周壁部311の一端側に形成された略円盤形状の水平壁部312を有している。周壁部311のうち水平壁部312が形成されていない方の端部は開放端となっている。
周壁部311は、その内径が空気極層304と略一致するように形成されている。また、周壁部311の軸方向における長さは、露出部308aの長さ(小型セル301の中心軸方向に沿った長さ)よりも長い。燃料電池セル300においては、集電部材310よりも上部に配置された小型セル301の露出部308aが周壁部311の内部に挿入され、周壁部311の内側のうち上部が、当該小型セル301の空気極層304に接触した状態となっている。
水平壁部312の中央には、周壁部311が延びる方向とは反対側に突出した平面を成す中央凸部313が形成されている。水平壁部312のうち中央凸部313の周囲の部分は、中央凸部313と略平行な平面となっている。中央凸部313は、中実面307よりも僅かに小さい円形の平面であって、燃料電池セル300においては、集電部材310よりも下部に配置された小型セル301の中実面307が、中央凸部313に接触した状態となっている。
このように、上下に隣り合う小型セル301同士の間に集電部材310が配置されることにより、上部の小型セル301の空気極層304と、下部の小型セル301の燃料極支持体302(中実面307)とが、電気的に接続されている。その結果、燃料電池セル300を構成する全ての小型セル301が、電気的に直列に接続された状態となっている。
このような構成により、各小型セル301における発電により生じた電流は、燃料電池セル300の軸方向に沿って流れる。図14は、燃料電池セル300における電流の流れを示す図である。図14に示したように、発電により生じた電流は、燃料極支持体302の中実円柱部306をその軸方向に沿って流れ、中実面307に到達する。その後、集電部材310の中央凸部313から水平壁部312を通って周壁部311に到達し、上部に配置された小型セル301の空気極層304に流入する。
このように、燃料電池セル300では、貫通孔の形成されていない中実円柱部306を電流経路の一部として利用しており、中実円柱部306をその中心軸方向に沿って電流が流れる。このため、電流経路の断面積を広く確保しており、ジュール熱による損失を低減している。また、集電部材310は、各小型セル301の両端ではなく一端においてのみ空気極層304と接する(空気極層304の一部を覆う)ため、空気極層304の広い部分を発電に寄与させている。
小型セル301同士の電気的な接続は以上のとおりであるが、次に、物理的な接続方法(固定方法)について説明する。燃料電池セル300では、小型セル301と、その下方に配置された集電部材310との間に、円形のガラスリング320aを配置している。また、集電部材310と、その下方に配置された小型セル301との間に、円形のガラスリング320bを配置している。
燃料電池セル300の製造時においては、これらのガラスリング320a、320bを加熱して一度溶融させており、溶融したガラスによって集電部材310と小型セル301とが濡れた状態となった後、常温に戻している。その結果、ガラスリング320a、320bによって各集電部材310と各小型セル301とが接着固定されている。
集電部材310と小型セル301とが円還状のガラスにより接着固定されているため、燃料電池セル300が発電に伴って高温となり熱膨張した場合においても、集電部材310と小型セル301との電気的な接続を保ち、燃料電池セル300の発電性能を維持することができる。また、集電部材310と小型セル301との間が中心軸の周りに連続的に(円還状に)シールされるため、燃料供給孔305を通過する燃料ガスの外部への漏洩や、外部からの酸化剤ガスの侵入を防止することができる。
集電部材310の上部(周壁部311の内側)に配置されるガラスリング320aは、上部に配置された小型セル301の燃料極支持体302と集電部材310とを電気的に絶縁する機能も有している。また、集電部材310の下部(中央凸部313の外側)に配置されるガラスリング320bは、下部に配置された小型セル301の空気極層304と集電部材310とを電気的に絶縁する機能も有している。このように、ガラスリング320a、320bによって、隣り合う小型セル301の燃料極支持体302同士、又は空気極層304同士が電気的に接続(接触)されてしまうことを確実に防止している。その結果、隣り合う小型セル301同士が電流損失を生じることなく電気的に直列に接続されるため、発電効率が向上している。
集電部材310の水平壁部312のうち、中央凸部313の周囲には、中央凸部313を囲むように複数の貫通孔340が形成されている。また、これら複数の貫通孔340は、各燃料供給孔305と対応する位置に形成され、燃料供給孔305と同じ個数となるよう形成されている。
このため、燃料供給孔305を流れる燃料ガスは、貫通孔340を自由に通過することができ、集電部材310その流れを遮ってしまうことがない。また、上記のような貫通孔340の配置は、燃料ガスの流路を確保することを目的とした必要最小限の配置ということができる。このため、貫通孔340を無駄に形成することによって集電部材310の剛性が低下してしまうことがない。
次に、燃料電池セル300の製造方法について説明する。燃料電池セル300は、焼結済みの小型セル301を複数個用意し、間に集電部材310を介した状態でこれらをガラス接合することにより製造される。尚、各小型セル301を製造する方法については、従来の円筒型燃料電池セルの製造方法と変わることがなく、一般的に行われている浸漬塗布法等を用いることができるため、具体的な説明を省略する。
まず、焼結済みの小型セル301のうちの一つを、その中心軸が鉛直方向に沿うように配置する。このとき、露出部308aが下方となり、露出部308bが上方となるように配置する(第一セル配置工程)。
続いて、第一セル配置工程で配置された小型セル301の上部端面に、ガラスリング320bを設置する(第一絶縁部材配置工程)。図13に示したように、ガラスリング320bは、その下部に配置される小型セル301の端面に接する端面被覆部331bと、端面被覆部331bの外周部から当該小型セル301の中心軸方向に沿って延び、小型セル301の側面に接する側面被覆部332bとを有している。すなわち、ガラスリング320bは、その断面がL字状となるように形成されており、小型セル301の上部端面に配置された際、小型セル301の端面と側面との2面に渡って被覆した状態となる。
ガラスリング320bが上記のように形成されているため、集電部材310と小型セル301の接続部分から、燃料供給孔305を通過する燃料ガスが漏洩することを確実に防止している。また、側面被覆部332bが小型セルの側面を囲むように配置されているため、第一絶縁部材配置工程においてガラスリング320bが水平方向(中心軸方向と平行な方向)にずれてしまうことが防止される。その結果、燃料電池セル300の製造作業が容易なものとなっている。
更に、後に説明する加熱工程においてガラスリング320bが加熱されて溶融した際、側面被覆部332bの部分が呼び水となって端面被覆部331bが外周側に引かれることとなる。その結果、端面被覆部331bが内側(中心軸側)に流れて燃料供給孔305を塞いでしまうことが防止される。
ガラスリング320bを設置した後、小型セル301の上部端面のうちガラスリング320bの内側の部分には、絶縁リング330bを配置する。絶縁リング330bは、ガラスリング320bよりも融点の高い絶縁材料によって形成された、矩形断面を有する円環状の部材である。絶縁リング330bの外径は端面被覆部331bの内径と略同一である。また、絶縁リング330bは、小型セル301の上部端面において燃料供給孔305を塞がないように、その内径が決められている。すなわち、絶縁リング330bの内周部よりも内側に、全ての燃料供給孔305が配置された状態となっている。また、絶縁リング330bの厚さは、溶融前におけるガラスリング320bの厚さよりも僅かに薄くなっている。
このように配置された絶縁リング330bは、後に説明する加熱工程においてガラスリング320bが加熱されて溶融した際においても自らは溶融せず、固体の状態を維持する。このため、溶融したガラスリング320bが内側(中心軸側)に流れて燃料供給孔305を塞いでしまうことが防止される。
ガラスリング320bは、上記のように内側に流れることが規制されている一方、外側に向かって(中心軸から遠ざかる方向に向かって)流れることは何ら規制されておらず、許容されている。すなわち、ガラスリング320bを密閉した空間に閉じ込めること等によって全ての方向に流れることを規制するのではなく、小型セル301の中心軸から遠ざかる方向に流れることは許容している。このため、ガラスリング320bが熱膨張した状態であっても、無理な力を加えることなくその流れ方向が規制される。その結果、ガラスリング320bは燃料供給孔305から遠ざかる方向にのみ流れることとなるため、燃料供給孔305を塞いでしまうことを確実に防止している。
尚、本実施形態においては、ガラスリング320bと絶縁リング330bとが別体となっており、それぞれ個別に小型セル301の上部端面に設置する例を説明したが、ガラスリング320bと絶縁リング330bとは一体のものとして用意してもよい。すなわち、端面被覆部331bの内周面と、絶縁リング330bの外周面とが接触した状態で、ガラスリング320bと絶縁リング330bとが一体に形成されていてもよい。このような構成とすることにより、燃料電池セル300の製造時において、ガラスリング320bと絶縁リング330bとを一体として取り扱うことができ、製造時の作業性を向上させることができる。また、ガラスリング320bと絶縁リング330bとの位置合わせ作業が省略されるため、製造時の作業性は更に向上する。
続いて、絶縁材料によって棒状に形成されたシャフトを2本準備する(シャフト準備工程)。これらシャフトは、後の工程において、複数の小型セル301、及び複数の集電部材310が水平方向等に位置ずれしないように、燃料供給孔305及び貫通孔340を貫通した状態で配置されるものである。シャフトは、燃料電池セル300よりも長く形成され、一本の燃料電池セル300を構成する全ての小型セル301及び全ての集電部材310を貫いた状態とすることが可能となっている。このようなシャフトは、ガラスリング320a、320bよりも融点が高く、且つ、燃料極支持体302を固体拡散等によって汚染しないような材質のものが使用できる。
続いて、第一セル配置工程で配置された小型セル301のうち、二つの燃料供給孔305に対して、それぞれ上記シャフトを挿入する(シャフト挿入工程)。このとき、二本のシャフトの上端は、いずれも燃料供給孔305から上方に向けて大きく突出した状態となっている。
続いて、第一絶縁部材配置工程で配置されたガラスリング320bの上部に、集電部材310を配置する(集電部材配置工程)。集電部材310は、中央凸部313が下方となり、周壁部311が上方となるように配置される。また、中央凸部313の中心が小型セル301の中心軸状となるように配置される。
このとき、シャフト挿入工程において二つの燃料供給孔305に対し挿入されたシャフトが、いずれも、集電部材310に形成された貫通孔340を貫通した状態となるように、集電部材310を配置する。このような状態とすることにより、以後の工程において、貫通孔340が燃料供給孔305の直上となる位置からずれてしまうことが防止される。
続いて、集電部材配置工程で配置された集電部材310の上部(水平壁部312の上部であって、周壁部311の内周側)に、ガラスリング320aを配置する(第二絶縁部材配置工程)。ガラスリング320aは、ガラスリング320bと同一形状、同一素材からなるものであり、その上部に配置される小型セル301の端面に接する端面被覆部331aと、端面被覆部331aの外周部から当該小型セル301の中心軸方向に沿って延び、小型セル301の側面に接する側面被覆部332aとを有している。
ガラスリング320aを設置した後、集電部材310の上部のうちガラスリング320aの内側の部分には、絶縁リング330aを配置する。絶縁リング330aは、絶縁リング330bと同一形状、同一素材からなるものであり、絶縁リング330aの外径は端面被覆部331aの内径と略同一である。絶縁リング330aの厚さは、溶融前におけるガラスリング320aの厚さよりも僅かに薄くなっている。
尚、ガラスリング320aの断面がL字状となるように形成した効果、及び、その内側に絶縁リング330aを配置した効果については、それぞれガラスリング320b、絶縁リング330bについて説明したものと同一であるため、説明を省略する。
続いて、第一セル配置工程で配置した小型セル301とは別の小型セル301を、集電部材配置工程で配置された集電部材310の上部において、その中心軸が鉛直方向に沿うように配置する(第二セル配置工程)。このとき、露出部308aが下方となり、露出部308bが上方となるように配置する。また、また、当該小型セル301の中心軸が、第一セル配置工程で配置した小型セル301の中心軸と一致するように配置される。
このとき、シャフト挿入工程において挿入されたシャフトが、いずれも、当該小型セル301に形成された燃料供給孔305を貫通した状態となるように、小型セル301を配置する。このとき、当該小型セル301は、シャフトによってガイドされながらガラスリング320aの上部に配置される。
その結果、以降の工程においては、この第二セル配置工程で配置された小型セル301の燃料供給孔305が、その下方に配置された小型セル301の燃料供給孔305に対応する位置からずれてしまうことが確実に防止される。
すなわち、これらシャフトは、互いに隣り合う二つの小型セル301において、それぞれに形成された燃料供給孔305同士が直線状に連通した状態を維持するための、位置ずれ防止手段として機能するものである。
尚、本実施形態においては、燃料極支持体302に形成されている燃料供給孔305にシャフトを挿入する例を説明したが、シャフトを挿入する対象は、必ずしも既存の燃料供給孔305である必要はない。例えば、燃料供給孔305とは別に、シャフトを挿入するための専用の孔を燃料極支持体302に形成し、これにシャフトを挿入することとしてもよい。この場合、接続工程が完了した後において、シャフトは必ずしも取り外す必要はない。
以降は、以上の説明における第一セル配置工程、第一絶縁部材配置工程、集電部材配置工程、第二絶縁部材配置工程、及び第二セル配置工程を、一本の燃料電池セル300が有する小型セル301の個数に応じて繰り返す。その結果、二本のシャフトに全体が貫かれた状態で、複数の小型セル301及び複数の集電部材310が、鉛直方向に積み上げられた状態となっている。
続いて、最上部に配置された小型セル301に対して、鉛直下方に向かう荷重を加えた状態とする(荷重工程)。荷重を加える方法としては、例えば、所定の質量を有する重石を、左右方向を治具で支えながら小型セル301の上端に乗せた状態とするなど、種々の方法を採ることができる。このとき、二本のシャフトには荷重を加えず、小型セル301、集電部材310、ガラスリング320a、320bにのみ荷重が加わった状態とする。
荷重は、後の加熱工程においてガラスリング320a、320bが溶融した際、これらを圧縮して変形させることにより、小型セル301の中実面307と、集電部材310の中央凸部313とが、確実に接触した状態となるように加えられるものである。
続いて、電気炉等によって全体を加熱し、ガラスリング320a、320bを溶融させる(加熱工程)。ガラスリング320a、320bが溶融していずれも液体となる結果、集電部材310と小型セル301との両方が、溶融したガラスにより濡れた状態となる。このため、電気炉等から取り出され常温に戻った後は、全ての集電部材310及び小型セル301がガラスにより接着固定された状態となる。
ガラスリング320a、320bが溶融する前の状態においては、集電部材310の中央凸部313と、その下方にある小型セル301の中実面307とは、非接触の状態となっている。このため、固体であるガラスリング320a、320bが、その上方にある小型セル301の重量を外周部近くにおいて支えている。
加熱工程によりガラスリング320a、320bが溶融すると、これらはいずれも液体となるため、その支持力を失う。このとき、荷重工程において加えられた鉛直方向の荷重によって、溶融したガラスリング320a、320bは圧縮される方向に変形する。その結果、ガラスリング320a、320bにより支持されていた各小型セル301は互いに接近しながら次第に下方に移動し、最終的には、全ての小型セル301が電気的に直列接続された状態となる。すなわち、各小型セル301の中実面307と、各集電部材310の中央凸部313とが接触した状態となる(接続工程)。
このように、一度の加熱によって全ての小型セルが同時に直列接続され、一本の燃料電池セル300が形成される。すなわち、連結円筒型の燃料電池セルを、少ない工程で容易に製造することができる。
上記のように、ガラスリング320a、320bが溶融する前の状態においては、ガラスリング320a、320bが、その上方にある小型セル301の重量をその外周部近くにおいて支えている。このため、積み上げられた複数の小型セル301は(互いに接着固定はされていないが)バランスよく安定した状態となっている。
加熱工程によりガラスリング320a、320bが溶融し支持力を失うと、集電部材310が小型セル301の中央部においてのみ接触した状態となるため、特にガラスリング320bの近傍は不安定になる恐れがある。
しかし、本実施形態に係る燃料電池セル300では、集電部材310の中央凸部313と、燃料極支持体302の中実面307とが面接触した状態に移行すると同時に、集電部材310がその上方に配置された全ての小型セル301の重量を支える。かかる重量が、集電部材310の中央凸部313によって面で支えられるため、ガラスリング320a、320bが溶融して支持力を失った直後以降においても、集電部材310によって小型セル301が安定して支持される。その結果、途中で安定性を損なうことなく接続工程が完了するため、複数の小型セル301が一直線状に配置された状態を保ったまま、直線形状の燃料電池セル300を形成することができる。
また、集電部材310の中央凸部313は、小型セル301の中心軸上にその中心が配置されるように、集電部材310の水平壁部312の中央に形成されている。その結果、中央凸部313は、中実面307と面接触する領域の中心位置が、小型セル301の中心軸上となるように形成されている。このため、ガラスリング320a、320bが溶融した際において、集電部材310の中央部全体には鉛直方向に沿った力のみがかかり、水平方向に沿った力がかかってしまうことが抑制される。集電部材310及びその上方にある小型セル301が傾いてしまうことが抑制され、複数の小型セル301が一直線状に配置された状態をより安定的に保つことが可能となっている。
集電部材310の中央凸部313は、中実面307よりも僅かに小さい円形の平面となるように形成されている。これにより、中実面307の大部分が中央凸部313と面接触することとため、集電部材310の上部に配置された小型セル301が安定して支持され、複数の小型セル301が一直線状に配置された状態を安定的に保つことが可能となっている。
尚、中央凸部313の形状としては、中実面307と同一な円形の平面となるように形成してもよい。この場合、中央凸部313と中実面307とが面接触する範囲は最大となるため、複数の小型セル301が一直線状に配置された状態をより安定的に保つことが可能となる。
接続工程が終了した後、燃料供給孔305に挿入されていた二本のシャフトを取り外す。その後、最も上方に配置されている小型セル301の上端に、アノードキャップ350を取り付ける。図11に示したように、アノードキャップ350は、小型セル301の外径と略同一の内径を有する円筒形状の電気接続部351と、電気接続部351の内径よりも小さい内径を有する円筒形状の縮径部352とを有している。電気接続部351と縮径部352とは、互いの中心軸が一致するように配置されており、それぞれの内部空間は連通している。
電気接続部351の下端は、集電部材310と同一の形状となっている。すなわち、電気接続部351の下端に形成された略円盤形状の水平壁部353を有しており、水平壁部353の中央には、電気接続部351が延びる方向とは反対側に突出した平面を成す中央凸部354が形成されている。水平壁部353のうち中央凸部354の周囲の部分は、中央凸部354と略平行な平面となっている。中央凸部354は、集電部材310の中央凸部313と同一形状の円形の平面である。水平壁部353のうち、中央凸部354の周囲には、中央凸部354を囲むように複数の貫通孔355が形成されている。貫通孔355の個数及び配置は、集電部材310に形成された貫通孔340と同一である。
アノードキャップ350は、最も上方に配置された小型セル301の中実面307に対して中央凸部354を接触させた状態で、ガラス接合される。従って、アノードキャップは、最も上方に配置された小型セル301の燃料極支持体302と電気的に接続された状態となっている。
アノードキャップ350と小型セル301とをガラス接合する方法は、集電部材310と小型セル301とをガラス接合する方法と同様である。すなわち、ガラスリング320bと同一形状のガラスリング360を、小型セル301と水平壁部353との間に配置した状態で当該ガラスリング360を加熱溶融させ、小型セル301とアノードキャップ350とを接合する。このとき、絶縁リング330bと同一形状、同一素材の絶縁リング361をガラスリング360の内側に配置することにより、溶融したガラスリング360が燃料供給孔305や貫通孔355を塞いでしまうことを防止している。
縮径部352の上端は外部に開放されている。このため、縮径部352の上端及び貫通孔355の一方から流入した燃料ガスは、アノードキャップ350の内部を通過して他方に抜けることが可能となっている。
最も下方に配置されている小型セル301の下端には、カソードキャップ370を取り付ける。図11に示したように、カソードキャップ370はアノードキャップ350と略同一の形状であって、小型セル301の外径と略同一の内径を有する円筒形状の電気接続部371と、電気接続部371の内径よりも小さい内径を有する円筒形状の縮径部372とを有している。電気接続部371と縮径部372とは、互いの中心軸が一致するように配置されており、それぞれの内部空間は連通している。一方、電気接続部351の端部(上端)は開放端となっており、この点のみがアノードキャップ350の形状と異なっている。
カソードキャップ370は、最も下方に配置された小型セル301の空気極層304に対して電気接続部371の内周側を接触させた状態で、ガラス接合される。従って、カソードキャップ370は、最も下方に配置された小型セル301の空気極層304と電気的に接続された状態となっている。
カソードキャップ370と空気極層304との接触部分全体をガラスシール380で覆うことにより、カソードキャップ370の内部の燃料ガスが、当該接触部分から外部に流出することを防止している。
縮径部372の下端は外部に開放されている。このため、縮径部372の下端及び電気接続部371の上端の一方から流入したガスは、カソードキャップ370の内部を通過して他方に抜けることが可能となっている。
次に、燃料電池セル300に対して供給される燃料ガスの流れについて説明する。既に説明したように、燃料ガスはマニホールド700に供給され、マニホールド700の内部で分散した後、各燃料電池セル300に供給される。図15は、燃料電池装置1のマニホールド700を示した斜視図である。
図15に示したように、マニホールド700はその上部において水平な天板701を有しており、天板701には、燃料電池セル300と同数の貫通孔702が形成されている。燃料電池セル300は、アノードキャップ350又はカソードキャップ370のいずれか一方を下方に向けた状態で、図11に示すような絶縁ブッシュ770を介して各貫通孔702に接続される。絶縁ブッシュ770は、アノードキャップ350又はカソードキャップ370とマニホールド700との間を、電気的に絶縁するために配置されるものである。
絶縁ブッシュ770は、アルミナセラミックスなどの絶縁材料により形成されており、小型セル301の外径と略同一の外径を有する支持部771と、貫通孔702の直径よりも僅かに小さい外径を有する縮径部772を有している。支持部771と縮径部772とは、中心軸が一致するように配置されており、当該中心軸を貫くように貫通孔773が形成されている。貫通孔773の内径は、アノードキャップ350の縮径部352の外径(及び、カソードキャップ370の縮径部372の外径)よりも僅かに大きい。
燃料電池セル300をマニホールド700の上部に立設する際は、まず絶縁ブッシュ770の縮径部352をマニホールド700の貫通孔702に上方から挿入する。その後、アノードキャップ350の縮径部352、又はカソードキャップ370の縮径部372のいずれかを、絶縁ブッシュ770の貫通孔773に上方から挿入する。
このような状態で、縮径部352と貫通孔702との間、及び貫通孔773と縮径部352(又は縮径部372)との間を、ガラスシールによって気密な状態で固定する。その結果、マニホールド700に供給された燃料ガスは、外部に漏えいすることなく貫通孔702から電気接続部351(又は電気接続部371)の内部に流入する。燃料ガスは、電気接続部351(又は電気接続部371)の内部で分散した後に燃料供給孔305に流入し、各燃料電池セル300の内部を下方から上方に向かって流れる。
図16には、マニホールド700の天板701を外した状態を斜視図で示している。図15及び図16に示したように、マニホールド700は、天板701の外周部から下方に延びる外側壁703を有している。また、外側壁703の内側には内側壁704を有している。外側壁703及び内側壁704は、いずれも天板701に垂直な円形の壁であって、上面視で同心円状に配置されている。
マニホールド700は、その下端において天板701と平行な底板705を有している。外側壁703の上端及び下端は、それぞれ天板701及び底板705に対して溶接されている。同様に、内側壁704の上端及び下端は、それぞれ天板701及び底板705に対して溶接されている。このため、マニホールド700の内部はドーナツ形状の空間となっており、内側壁704の内側(ドーナツの「穴」に相当する部分)には、燃料ガスは流入しない。
マニホールド700の底板705には、湾曲管710a、710bが貫通した状態で溶接固定されている。湾曲管710a、710bは、いずれも両端が開口した円管であって、下端が底板705の下方に突出し、上端がマニホールド700の内部に配置されている。
湾曲管710aの下端、及び湾曲管710bの下端は、それぞれL字管169a、169bに接続される。このため、L字管169a、169bから供給される燃料ガスは、湾曲管710a、710bのそれぞれの上端からマニホールド700の内部に噴出される。すなわち、湾曲管710aの上端及び湾曲管710bの上端は、それぞれ噴射口711a及び噴射口711bとなっている。
図16に示したように、噴射口711a及び噴射口711bは、いずれもマニホールド700の円周方向に沿って燃料ガスを噴射するように配置されている。このため、噴射口711a及び噴射口711bから噴射された燃料ガスは、図16に矢印で示したように、マニホールド700の内部を円周方向に旋回して流れることとなる。更に、噴射口711aから噴射された燃料ガスと、噴射口711bから噴射された燃料ガスとが、同一方向に旋回して流れるように噴射口711a及び噴射口711bが配置されている。
このように、噴射口711a及び噴射口711bを配置することによって、燃料ガスはドーナツ形状のマニホールド700内を円周方向に旋回して流れながら、貫通孔702を通じて各燃料電池セル300の燃料供給孔305へと供給される。このように旋回する流れにおいては、燃料ガスの局所的な滞留等が発生しにくいため、マニホールド700内部において燃料ガスが均等に分散する。その結果、全ての燃料電池セル300に対して燃料ガスを均等に供給することが可能となっている。
尚、本実施形態においては、噴射口711a及び噴射口711bは水平方向に燃料ガスを噴射するように配置されているが、底板705に向けて燃料ガスを噴射するように配置してもよい。この場合、噴射口711a及び噴射口711bから噴射した燃料ガスは、底板705の近傍においてしっかりと旋回流を形成した後に上方に向かい、天板701の貫通孔702を経由して各燃料電池セル300に供給される。このため、マニホールド700内における燃料ガスの分散性を更に向上させることができる。また、噴射口711a及び噴射口711bから噴射した燃料ガスの高速な流れ(噴流)は底板705に向かうため、かかる墳流が、天板701の貫通孔702を経由して各燃料電池セル300に供給される燃料ガスの流れの一部を阻害してしまうことを抑制することができる。
また、マニホールド700内部の空間はドーナツ形状となっており、内側壁704の内側(ドーナツの「穴」に相当する部分)には、燃料ガスは流入しない。すなわち、燃料ガスが旋回して流れる際において、その流速が最も低下しやすい中央部(ドーナツ形状の「穴」に相当する部分)をマニホールドから除外している。その結果、マニホールド700内において生じる燃料ガスの流速差(内周部分と外周部分との流速差)が低減される。これにより、湾曲管710a、710bから導入される燃料ガスの流量が大きい場合であっても、マニホールド700内において燃料ガスを均等に分散させ、全ての燃料電池セル300に対して燃料ガスを均等に供給することが可能となっている。
マニホールド700内部の空間をドーナツ形状とすることにより、内周部分と外周部分との間における燃料ガスの流速差は上記のように低減される。しかし、かかる流速差を完全に無くすことはできない。外側壁703近傍においては流速が大きいため、遠心力の影響によって、燃料ガスの圧力が内側壁704近傍よりも大きくなってしまう。その結果、外側壁703近傍の貫通孔702から燃料電池セル300に供給される燃料ガスの流量は、内側壁704近傍の貫通孔702から燃料電池セル300に供給される燃料ガスの流量よりも大きくなる傾向がある。
そこで、本実施形態に係る燃料電池装置1では、マニホールド700の天板701に形成される貫通孔702の配置を工夫することにより、燃料電池セル300に供給される燃料ガスの流量を均等にしている。
図17には、マニホールド700の天板701に形成された貫通孔702の配置を示している。図17に示したように、貫通孔702は、マニホールド700の中心軸を中心とした3つの円形の列を成すように配置されている。最も内側の列(図17において、点線L1に沿う列)では、貫通孔702が比較的密に配置されている。一方、最も外側の列(図17において、点線L3に沿う列)では、貫通孔702が比較的粗に配置されている。このように、貫通孔702は、天板701において内側壁704に近いでは密に配置されており、外側壁703に近づくほど粗となるように配置されている。
換言すれば、天板701のうち貫通孔702の一列が形成されている領域において、当該領域内に形成されている貫通孔702の開口面積の総和が占める比率を開口率と定義すると、内側の列が形成されている領域における開口率は、外側の列が形成されている領域における開口率よりも高くなるように、貫通孔702が配置されている。その結果、天板701の内側の領域を燃料ガスが通過する際の流路抵抗は、天板701の外側の領域を燃料ガスが通過する際の流路抵抗よりも小さくなっている。
上記のように、マニホールド700の内部のうち内側壁704近傍における燃料ガスの圧力は、外側壁703近傍における燃料ガスの圧力よりも高くなっている。しかし、天板701の内側の領域を燃料ガスが通過する際の流路抵抗が、天板701の外側の領域を燃料ガスが通過する際の流路抵抗よりも小さいため、当該圧力差の影響が相殺される。その結果、各貫通孔702を通過してそれぞれの燃料電池セル300に供給される燃料ガスの流量について、内側壁704近傍と外側壁703近傍との間で差が生じることが抑制され、全ての燃料電池セル300に対して燃料ガスを更に均等に供給することが可能となっている。
既に説明したように、燃料ガスは、燃料電池セル300に形成された燃料供給孔305を下方から上方に向かって流れた後、発電のために消費されなかった残余分が燃料電池セル300の上端部近傍において燃焼する。このため、燃料電池セル300の上端は高温となるが、燃料電池セル集合体500の中央部分は熱がこもりやすいため、内側壁704に近い位置(中央部分)に配置された燃料電池セル300の上端が最も高温となる。
このため、内側壁704に近い位置における気流の上昇力が強くなり、当該位置に配置された燃料電池セル300の燃料供給孔305を下方から上方に向かう燃料ガスの流れが促進されることとなる。その結果、各貫通孔702を通過してそれぞれの燃料電池セル300に供給される燃料ガスの流量において、内側壁704近傍と外側壁703近傍との間で差が生じることが更に抑制されている。
続いて、噴射口711a及び噴射口711bの具体的な配置について更に説明する。図18は、マニホールド700の内部における噴射口711a、711bの配置を説明するための図である。図18に示したように、マニホールド700を上面から見た場合において、内側壁704と外側壁703との中央部(内側壁704までの距離と外側壁703までの距離とが等しい部分であって、図18の点線Cで示した部分)に、噴射口711a及び噴射口711bが配置されている。
噴射口711a及び噴射口711bは、内側壁704と外側壁703との中央部から内側の領域(図18において、点線Cの内側の領域)に配置することが望ましい。当該内側の領域においては、上記のように燃料ガスの圧力が低くなる傾向がある。これに対し、天板701の内側の領域に噴射口711a及び噴射口711bを配置すると、マニホールド700内のうち外側壁703と外側壁703との中央部から内側壁704寄りの領域に、燃料ガスの供給源が配置されることとなる。その結果、内側壁704近傍における圧力と、外側壁703近傍における圧力との差が緩和されるため、各貫通孔702を通過してそれぞれの燃料電池セル300に供給される燃料ガスの流量を、より均等なものとすることができる。
次に、燃料電池セル300に対して供給される酸化剤ガスの流れについて説明する。既に説明したように、酸化剤ガスは、酸化剤ガス供給管800の下部側面に形成された複数の噴射口801から水平方向に噴射され、燃料電池セル300の外側面に形成された空気極層304に供給される。
図19は、酸化剤ガス供給管800と燃料電池セル300との配置を模式的に示した図である。図19に示したように、噴射口801は、酸化剤ガス供給管800の周方向に沿って一定の間隔を開けて形成されている。噴射口801はジグザグ状に並んでおり、隣り合う二つ噴射口801は、互いにその高さが異なっている。
全ての噴射口801は、燃料電池セル300のうち最も下方に配置された小型セル301の下端よりも低い位置に形成されている。また、全ての噴射口801は、アノードキャップ350又はカソードキャップ370のうち、燃料電池セル300の下方に配置された方の下端よりも高い位置に形成されている。
このため、噴射口801から水平方向に噴射された酸化剤ガスは、燃料電池セル300のうち最も下方に配置された小型セル301の空気極層304(発電部位)よりも下方に向かって流れ、アノードキャップ350の電気接続部351(又はカソードキャップ370の電気接続部371)の外側面に直接当たることとなる。
酸化剤ガスは、第二空間180を流れる排ガスの熱によって温度が上昇しているが、発電中における燃料電池セル300の温度に比べれば低温である。このため、燃料電池セル300の外側面のうち酸化剤ガスが直接当たる部分は、冷却されて温度が低下してしまう。しかし、上記のように当該部分は発電部位ではないため、温度が低下しても燃料電池セル300の発電効率への影響は小さい。また、発電部位は発電反応によって熱が発生する部位であるため、酸化剤ガスが直接当たる部分に熱が奪われたとしてもその影響は小さく、発電部位の温度低下は更に抑制される。発電部位の温度低下が抑制されるため、電力取り出しに伴う小型セル301への負担も軽減される。このように、燃料電池装置1では、最も下方に配置された小型セル301の下端よりも低い位置に全ての噴射口801を形成することにより、酸化剤ガスの供給に伴う燃料電池セル300の過剰冷却を防止し、発電効率の低下や燃料電池セル300の破損を防止している。
また、噴射口801から噴射された酸化剤ガスが、アノードキャップ350の電気接続部351(又はカソードキャップ370の電気接続部371)の外側面に直接当たるように、全ての噴射口801が形成されている。このため、アノードキャップ350(又はカソードキャップ370)は、酸化剤ガスが直接当たることによって冷却される。
既に説明したように、アノードキャップ350及びカソードキャップ370は、燃料電池セル300同士を電気的に接続する際における電極端子として機能するものであり、金属により形成されている。このため、アノードキャップ350(又はカソードキャップ370)の温度が下がると、その電気抵抗は小さくなり、電力損失が低減される。
以上のように、燃料電池装置1では、酸化剤ガスがアノードキャップ350の電気接続部351(又はカソードキャップ370の電気接続部371)の外側面に直接当たるように噴射口801を形成することによって、電力損失を低減し、燃料電池装置1全体の発電効率を向上させている。
また、酸化剤ガスが直接当たるアノードキャップ350の電気接続部351(又はカソードキャップ370の電気接続部371)は、小型セル301と直径が略同一の円筒形状であり、その中心軸が燃料電池セル300の中心軸と一致している。
このため、アノードキャップ350(又はカソードキャップ370)に当たった後における酸化剤ガスの流れは、従来のように円筒型の燃料電池セルの発電部位(空気極層)に当たった場合の流れとほとんど変わることがない。
このため、燃料電池装置1のようにアノードキャップ350(又はカソードキャップ370)に酸化剤ガスを直接当てるような構成とした場合であっても、従来通り各燃料電池セル300に対して酸化剤ガスを均等に供給することを目的としては、酸化剤ガス供給管800及び燃料電池セル300の配置を変更する必要がない。
燃料電池装置1においては、図5等で示されるように、複数の燃料電池セル300が酸化剤ガス供給管800を囲むように立設している。換言すれば、酸化剤ガス供給管800は、最も発電熱がこもりやすい場所である燃料電池セル集合体500の中央を貫くように配置されている。このため、酸化剤ガス供給管800は加熱されて比較的高温の状態となる。
酸化剤ガスは、このように高温となった酸化剤ガス供給管800の内部を上方から下方に向かって流れた後で、噴射口801から噴射される。このため、酸化剤ガス供給管800の内部を流れる過程で酸化剤ガスは十分に加熱された後、燃料電池セル300に供給されることとなる。その結果、酸化剤ガスの供給による燃料電池セル300の温度低下は更に抑制され、発電効率の低下や燃料電池セル300の破損を防止することが可能となっている。
次に、燃料電池装置1を上方から見た場合における酸化剤ガスの流れについて説明する。既に説明したように、燃料電池セル300は、マニホールド700の天板701において、マニホールド700の中心軸を中心とした3つの円形列を成すように配置されている。
図20に示したように、最も内側の円形列を成す燃料電池セル300の一つを第一燃料電池セルC1とし、その一つ外側の円形列を成す燃料電池セル300のうち、第一燃料電池セルC1に最も近い位置にあるものを第二燃料電池セルC2とし、最も外側の円形列を成す燃料電池セル300のうち、第二燃料電池セルC2に最も近い位置にあるものを第三燃料電池セルC3としたときに、これら第一燃料電池セルC1、第二燃料電池セルC2、及び第三燃料電池セルC3が、ハウジング100の直径方向に対して斜めに並ぶように配置されることにより、放射列HLを形成している。
ここで、各円形列に含まれる燃料電池セル300の個数は、どの円形列でも同数となっている。また、各円形列においては、燃料電池セル300は互いに等間隔に配置されている。このため、上記のような第一燃料電池セルC1として、最も内側の円形列からどの燃料電池セル300を選択して定義したとしても、第二燃料電池セルC2、第三燃料電池セルC3、及び、これらにより形成される放射列HLを定義することができる。換言すれば、一つの円形列に含まれる燃料電池セル300の個数と同数の放射列HLが存在しており、全ての燃料電池セル300は、いずれかの放射列HL(燃料電池セル部)に含まれているということができる。
図20は、図19におけるD−D断面を示しており、当該断面に沿った酸化剤ガスの流れを示している。噴射口801は、最も内側の円形列において互いに隣り合う燃料電池セル300の間(セル間隙間)に向けて酸化剤ガスを噴出するように配置されている。また、噴射口801は、最も内側の円形列に含まれる燃料電池セル300の個数と同じ数だけ形成されている。尚、D−D断面は、ジグザグに配置された噴射口801のうち高い位置に形成された噴射口801と同じ高さの断面である。従って、図20における噴射口801は、酸化剤ガス供給管800の周方向に沿って一つおきに描かれている。
図20では、酸化剤ガスの流れ(主流)を矢印MFLで示している。噴射口801から噴射された酸化剤ガスは、放射列HLを成す第一燃料電池セルC1、第二燃料電池セルC2、第三燃料電池セルC3に順に当たりながら、その流れ方向を変えていく。
具体的には、第一燃料電池セルC1の外側面に対する酸化剤ガスの到達点において、当該到達点における法線に対して左側に傾斜した方向から斜めに入射するように、酸化剤ガスが第一燃料電池セルC1に当たる。このため、酸化剤ガスは、第一燃料電池セルC1に当たった後は右側にその流れ方向を変えて、第二燃料電池セルC2に向かう。
その後、第二燃料電池セルC2の外側面に対する酸化剤ガスの到達点において、当該到達点における法線に対して左側に傾斜した方向から斜めに入射するように、酸化剤ガスが第二燃料電池セルC2に当たる。このため、酸化剤ガスは、第二燃料電池セルC2に当たった後は更に右側にその流れ方向を変えて、第三燃料電池セルC3に向かう。
その後、第三燃料電池セルC3の外側面に対する酸化剤ガスの到達点において、当該到達点における法線に対して左側に傾斜した方向から斜めに入射するように、第三燃料電池セルC3に当たる。このため、酸化剤ガスは、第三燃料電池セルC3に当たった後は更に右側にその流れ方向を変えて、ハウジング100の側壁(第四円筒171)に向かう。
放射列HL(燃料電池セル部)は、ハウジング100の直径方向に対して斜めに交差する軸(長軸)に沿って並ぶような列である。上記のように、酸化剤ガスは、放射列HLを形成する各燃料電池セル300に対してそれぞれ一方側から斜めに入射するように当たり、その度に流れ方向を右側に変えながら流れる。図20においては、酸化剤ガスはハウジング100の側壁(第四円筒171)に近づくに従って、次第に右側に向かうようにその流れ方向を変えていく。
上記のような酸化剤ガスの流れは、燃料電池集合体500を形成する全ての放射列HLについて同一となっている。すなわち、各噴射口801から噴射された酸化剤ガスは燃料電池セル300の外側面に到達するが、当該到達点における法線に対して、全て左側に傾斜した方向から斜めに入射する。その後、燃料電池セル300に当たることにより右側に流れ方向を変えながら、第四円筒171に到達する。
以上のような構成により、第四円筒171に到達する酸化剤ガスは、第四円筒171に対して垂直に衝突することなく斜めに入射し、その後、第四円筒171に沿って一方向(図20では右回り)に旋回して流れる。このため、ハウジング100の側壁(第四円筒171)近傍において酸化剤ガスの流れに乱れが生じることが抑制され、それに起因して燃料電池セル300への酸化剤ガスの供給が均等でなくなってしまうことが防止される。その結果、燃料電池装置1は安定した発電性能を維持することが可能となっている。
図21は、一つの放射列HL(燃料電池セル部)を形成する3本の燃料電池せる300の配置を示した図である。図21に示したように、上方から見た場合において、第二燃料電池セルC2の中心と第三燃料電池セルC3の中心とを結ぶ直線LL1がハウジング100の直径方向に対して成す角度θ1は、第一燃料電池セルC1の中心と第二燃料電池セルC2の中心とを結ぶ直線LL2がハウジング100の直径方向に対して成す角度θ2よりも大きくなっている。すなわち、放射列HLは、湾曲した軸(長軸)を成すような形状となっており、当該長軸はハウジング100の直径方向に対して斜めに交差している。また、長軸の湾曲度合いは、酸化剤ガス供給管800の中心側よりもハウジング100の側壁(第四円筒171)側の方が大きくなっている。
燃料電池セル300をこのような配置とすることによって、酸化剤ガス供給管800の噴射口801から噴射された酸化剤ガスは、湾曲した長軸に沿って並べられた燃料電池セル300に当たりながら流れる。長軸の湾曲度合いは、第四円筒171に近づくほど、すなわち、下流側に行く程大きくなっている。このため、酸化剤ガスは、下流側に行く程、ハウジング100の側壁(第四円筒171)の周方向により近づくように流れ方向が変化する。その結果、酸化剤ガスはよりスムーズに第四円筒171に沿いながら、一方向に旋回して流れることとなる。その結果、第四円筒171の近傍において酸化剤ガスの流れに乱れが生じることを更に抑制している。
以上のように、燃料電池装置1においては、噴射口801に対する燃料電池セル300の配置を工夫することによって、ハウジング100の側壁(第四円筒171)に到達した酸化剤ガスが一方向に旋回して流れるような構成となっている。
次に、燃料電池セル300の空気極層304のうち一部において、酸化剤ガスの供給量が不足してしまうことを防止するための構成について説明する。図20等を参照しながら説明したように、酸化剤ガスは、最も内側の円形列において互いに隣り合う燃料電池セル300の間(セル間隙間)に向けて各噴射口801から噴射される。このため、酸化剤ガスの流れは、噴射口801に近い最も内側の円形列をなす燃料電池セル300の近傍を通過する際にその流速が比較的大きく、直進性の高い流れ(換言すれば、分散性の低い流れ)となっている。その結果、酸化剤ガスは当該燃料電池セル300の外側面全体には回り込みにくく、特に、燃料電池セル300の下部において、酸化剤ガスが直接当たる部分近傍の背面側(第四円筒171に近い方の外側面)には供給されにくい。その結果、空気極層304の一部に対する酸化剤ガスの供給量が不足してしまう傾向がある。
上記のような現象に対する対策としては、酸化剤ガスが燃料電池セル300の下部に当たった後において直ちに上昇することを抑制することが考えられる。酸化剤ガスが直ちに上昇せず、燃料電池セル300の下部において滞留する時間が長ければ、燃料電池セル300の下部における酸化剤ガスの分散が促進されることとなる。その結果、上記のように酸化剤ガスの供給量の不足が最も生じやすい部分、すなわち、燃料電池セル300の下部において、酸化剤ガスが直接当たる部分近傍の背面側に対しても、十分な量の酸化剤ガスを供給することが可能となる。
酸化剤ガスが燃料電池セル300の下部に当たった後において直ちに上昇することを抑制するための具体的な方法の一例としては、燃料電池セル300が備える複数の集電部材310のうち、下方に配置される一部の集電部材310を、図22に示したような形状の集電部材310aとすることが挙げられる。図22は、燃料電池セル300とは別の実施形態に係る燃料電池セル300aの、集電部材310aを示す斜視図である。
燃料電池セル300aにおいては、図22に示した集電部材310aを、最下方に配置された小型セル301の上部に配置した点のみが燃料電池セル300と異なっており、その他は燃料電池セル300と同一である。すなわち、燃料電池セル300aでは、複数の集電部材のうち最下方の一つだけが集電部材310aとなっており、その他の集電部材は図13に示したような集電部材310となっている。
図22に示したように、集電部材310aは、円筒形状の周壁部311から、外方に向かって水平に延びる上昇抑制壁319aを備えている。このような集電部材310aを備えた燃料電池セル300aによって燃料電池セル集合体500を構成すれば、燃料電池セル300aに当たった酸化剤ガスは直ちに上昇せず、燃料電池セル300aの下部において滞留しやすくなる。すなわち、上昇抑制壁319aが酸化剤ガス分散促進手段として機能する。その結果、燃料電池セル300aの下部における酸化剤ガスの分散が促進されるため、燃料電池セル300aの外側面全体に酸化剤ガスが回り込みやすくなり、燃料電池装置1の発電性能を更に安定させることができる。
燃料電池装置1では、以下に説明するように、噴射口801をジグザグ状に並ぶように形成することによっても、燃料電池セル300aの下部における酸化剤ガスの分散を促進している。
図20に示したように、最も内側の円形列において互いに隣り合う燃料電池セル300の間(セル間隙間)に向けて噴射された酸化剤ガスは、その大部分がハウジング100の側壁(第四円筒171)に向かう流れ(主流)となり、矢印MFLで示したように流れる。
一方、最も内側の円形列をなす燃料電池セル300に当たった酸化剤ガスの一部は、コアンダ効果によって当該燃料電池セル300の外側面に沿って回り込むように流れ(環流)、酸化剤ガスが直接当たる部分の背面側に向かう。図20では、このような流れを矢印SFLで示した。このような流れによって、酸化剤ガスが直接当たる部分の背面側に形成された空気極層304に対しても、酸化剤ガスが供給されることとなる。
矢印SFLで示したように、燃料電池セル300の外側面に沿って回り込む流れ(環流)は、その後、セル間隙間を通って酸化剤ガス供給管800に向かうような流れとなる。すなわち、最も内側の円形列におけるセル間隙間のうち、噴射口801から噴射された酸化剤ガスが向かうセル間隙間を第一隙間g1とし、これと隣り合うセル間隙間を第二隙間g2とすると、第一隙間g1に向かって噴射された酸化剤ガスの一部が、同じ高さにおいて第二隙間g2を通り酸化剤ガス供給管800に向かって流れることとなる。
仮に、全てのセル間隙間に対して同一の高さで酸化剤ガスを噴射するように、噴射口801を一直線上に形成した場合、図20に矢印MFL2で示したような流れが加わることとなる。このような流れは、第二隙間g2を通り酸化剤ガス供給管800に向かう流れ(矢印SFLで示した流れ)と同一の高さで衝突してしまうため、燃料電池セル300において酸化剤ガスが直接当たる部分の背面側に向かう流れが妨げられることとなる。また、矢印MFL2で示した流れの一部も燃料電池セル300の外側面に沿って回り込む流れとなるが、この流れも矢印SFLで示した流れと衝突してしまう。その結果、燃料電池セル300の背面側の近傍に形成された空気極層304に対して供給される酸化剤ガスの量が不足してしまうこととなってしまう。
このため、燃料電池装置1では、矢印SFLで示した流れと矢印MFL2で示したような流れとが、互いに隣り合う二つのセル間隙間において同一の高さで発生しないよう、酸化剤ガス供給管800において噴射口801をジグザグ状に並べて形成している。その結果、図19におけるD−D断面である図20に示したように、噴射口801から噴射された酸化剤ガスは、互いに隣り合う二つのセル間隙間において同一の高さで衝突することがない。
このように、燃料電池装置1では、噴射口801の配置を工夫することにより、燃料電池セルの背面側に向かう酸化剤ガスの流れが同一の高さで衝突することを確実に防止し、燃料電池セル300の下部における酸化剤ガスの分散を促進している。
続いて、燃料電池セル集合体500における、各燃料電池セル300の電気的な接続について説明する。図20を参照しながら説明したように、マニホールド700の上部に立設する複数の燃料電池セル300は、ハウジング100の直径方向に対して斜めに並ぶような放射列HLを複数形成するように配置されている。図23は、燃料電池セル300同士の電気的な接続を説明するための図であって、燃料電池装置1のうち、マニホールド700と、その上部において互いに隣り合う二つの放射列HLを形成する6本の燃料電池セル(C110、C120、C130、C210、C220、C230)のみを描いている。
図23において手前側の放射列HLを形成する燃料電池セルC110、燃料電池セルC120、燃料電池セルC130は、いずれもアノードキャップ350を上方に向けて配置されている。これら3つのアノードキャップ350は、上部接続部材400によって電気的に接続されている。上部接続部材400は、両端にクリップ401が形成された金属であって、それぞれのクリップ401がアノードキャップ350の電気接続部351を掴んだ状態で装着されている。
また、燃料電池セルC110、燃料電池セルC120、燃料電池セルC130のカソードキャップ370はいずれも下方に配置されているが、これら3つのカソードキャップ370は、下部接続部材410によって電気的に接続されている。下部接続部材410は、両端にクリップ411が形成された金属であって、それぞれのクリップ411がカソードキャップ370の電気接続部371を掴んだ状態で装着されている。
このように、燃料電池セルC110、燃料電池セルC120、燃料電池セルC130は、上部が上部接続部材400により電気的に接続され、下部が下部接続部材410により電気的に接続されることで、互いに電気的に並列接続された一つの並列ユニットPU1を形成している。
図23において奥側の放射列HLを形成する燃料電池セルC210、燃料電池セルC220、燃料電池セルC230は、いずれも燃料電池セルC120等とは天地逆となるように配置されている。すなわち、これらはカソードキャップ370を上方に向けて配置されている。これら3つのカソードキャップ370は、上部接続部材400によって電気的に接続されている。上部接続部材400の両端に形成されたクリップ401が、カソードキャップ370の電気接続部371を掴んだ状態となっている。
また、燃料電池セルC210、燃料電池セルC220、燃料電池セルC230のアノードキャップ350はいずれも下方に配置されているが、これら3つのアノードキャップ350は、下部接続部材410によって電気的に接続されている。下部接続部材410の両端に形成されたクリップ411が、アノードキャップ350の電気接続部351を掴んだ状態となっている。
このように、燃料電池セルC210、燃料電池セルC220、燃料電池セルC230は、上部が上部接続部材400により電気的に接続され、下部が下部接続部材410により電気的に接続されることで、互いに電気的に並列接続された一つの並列ユニットPU2を形成している。
並列ユニットPU1の上部に配置された3つのアノードキャップ350のうちの一つと、奥側に配置された並列ユニットPU2の上部に配置された3つのカソードキャップ370のうちの一つとは、図示しないユニット間接続部材によって電気的に接続されている。
また、図23には図示しないが、並列ユニットPU1の手前側に隣り合う放射列HLを形成する3本の燃料電池セルC310、C320、C330は、カソードキャップ370を上方に向けて配置されている。燃料電池セルC310、C320、C330は、燃料電池セルC210、C220、C230と同様の構成により互いに電気的に並列に接続されることで、並列ユニットPU2を形成している。
並列ユニットPU1の下部に配置された3つのカソードキャップ370のうちの一つと、手前側に配置された並列ユニットPU2の下部に配置された3つのアノードキャップ350のうちの一つとは、やはり図示しないユニット間接続部材によって電気的に接続されている。
その他の燃料電池セル300でも同様であって、全ての放射列HLにおいて、それぞれを形成する3本の燃料電池セル300は互いに電気的に並列接続され、アノード極を上方に有する並列ユニットPU1、又はカソード極を上方に有する並列ユニットPU2を形成している。
図24に示したように、並列ユニットPU1及び並列ユニットPU2は、酸化剤ガス供給管800の周囲を囲む円弧に沿うように配置されており、その周方向に沿って、並列ユニットPU1と並列ユニットPU1とが交互に並ぶように配置されている。
また、上記のように配置された全ての並列ユニットPU1及び並列ユニットPU2が電気的に直列接続されるように、互いに隣り合う並列ユニットPU1と並列ユニットPU2とが、ユニット間接続部材によって一端同士を接続されている。直列接続の一端側における並列ユニットPU1のカソードキャップ370には、集電バスバー451が接続されている。また、直列接続の他端側における並列ユニットPU2アノードキャップ350には、集電バスバー452が接続されている。集電バスバー451、452は、いずれもマニホールド700の中央に形成された空間(ドーナツ形状の「穴」部分)を通じて下方に延びており、燃料電池装置1の電力出力端子に接続されている。
燃料電池セル300が以上のように電気的に接続される結果、燃料電池セル集合体500の発電電圧(集電バスバー451と集電バスバー452との間に生じる電圧)は、(小型セル301一本当たりの発電電圧)×(一本の燃料電池セル300に含まれる小型セル301の数)×(並列ユニットPU1、PU2の数)となる。
1本当たりの発電電圧が高い連結円筒型の燃料電池セル300を直列接続したことにより、燃料電池セル集合体500の発電電圧を高めている。その結果、取り出す電流が小さくなっており、燃料電池セル300の劣化を抑制している。
また、全ての燃料電池セル300を互いに電気的に直列接続するのではなく、上記のように、並列ユニットPU1、PU2を構成する3本の燃料電池セル300が、電気的に並列接続された状態となっている。このため、並列ユニットPU1、PU2を構成する燃料電池セル300の一部が低温となり、発電性能が低下した場合であっても、互いに並列接続されている他の燃料電池セル300によって発電性能が補われることとなる。その結果、低温となった燃料電池セル300に対する負担が軽減される。
また、それぞれの並列ユニットPU1、PU2においては、燃料電池セル300は、酸化剤ガス供給管800からハウジング100の側壁(第四円筒171)に向かう方向に沿って並ぶように配置されている。このように、温度分布が大きくなりやすい方向に沿って並ぶように燃料電池セル300を配置することによって、各並列ユニットPU1、PU2には、発電時における負担の大きな燃料電池セル300と、負担の小さな燃料電池セル300とが、バランスよく含まれることとなる。その結果、燃料電池セル集合体500を構成する全ての燃料電池セル300において発電時における負担が分散されるため、燃料電池装置1の発電性能を長期間に渡り維持することが可能となっている。
燃料電池装置1は、上記のように複数の並列ユニットPU1、PU2を備えており、これらを電気的に直列接続している。このような構成において、一部の並列ユニットPU1、PU2に負担がかかってしまうと、当該並列ユニットPU1、PU2に含まれる燃料電池セル300が劣化し、燃料電池装置1の発電性能が低下してしまうこととなる。そこで、燃料電池装置1では、酸化剤ガスの到達量や温度分布等、燃料電池セル300が発電するための環境が全ての並列ユニットPU1、PU2について同一となるよう様々な工夫を行うことにより、一部の並列ユニットPU1、PU2に負担がかかってしまうことを抑制している。
第一に、酸化剤ガス供給管800とハウジング100の側壁(第四円筒171)とを上面視で同心円状に配置した上で、複数の並列ユニットPU1、PU2を、やはりこれらと同心円を成すように円形に配置している。
第二に、各並列ユニットPU1、PU2は、それぞれ同数の燃料電池セル300によって形成されている。更に、並列ユニットPU1、PU2の集合体である燃料電池セル集合体500は、酸化剤ガス供給管800の中心軸に対して回転対称となるように配置されている。
第三に、酸化剤ガス供給管800に形成された噴射口801は、並列ユニットPU1、PU2の個数と同じ数だけ形成され、各並列ユニットPU1、PU2と対応する位置に形成されている。更に、噴射口801からこれに対応する並列ユニットPU1、PU2までの距離は、全ての噴射口801について同一となっている。
このような構成により、噴射口801から噴射された酸化剤ガスが各並列ユニットPU1、PU2に到達するまでの距離、各並列ユニットPU1、PU2に沿って流れる際の流れ方向、及び流量が、全ての並列ユニットPU1、PU2について同一となる。更に、各並列ユニットPU1、PU2を通過した後にハウジング100の側壁(第四円筒171)に到達する酸化剤ガスの流れ方向や流量についても、全ての並列ユニットPU1、PU2について同一となる。その結果、各並列ユニットにおける環境はほぼ同一なものとなるため、一部の並列ユニットPU1、PU2に負担がかかってしまうことが抑制されている。
次に、改質触媒900と燃料電池セル300との位置関係について説明する。既に説明したように、燃料電池装置1では、発電のために消費されなかった残余の燃料ガス及び残余の酸化剤ガスを、燃料電池セル300の上端近傍において混合し燃焼させている。このため、燃焼熱の影響によって、燃料電池セル300の上部は下部に比べて高温になってしまう傾向がある。
特に、本実施形態に係る燃料電池セル300は、複数の小型セル301を連結することにより形成された連結円筒型のセルであるから、軸方向に沿った熱伝導が抑制されることにより当該方向に沿った温度差がつきやすい。このため、燃料電池セル300の上部が高温になってしまう傾向はさらに大きくなり、上部に配置された小型セル301の劣化が促進されてしまう可能性が高い。
更に、体積の小さい小型セル301を電気的に直列してなる燃料電池セル300においては、上部の小型セル301が高温となり劣化した場合、その劣化が更に小型セル301の温度上昇を引き起こすため、当該小型セル301において加速度的に劣化が進行してしまうという問題がある。換言すれば、連結円筒型の燃料電池セル300は、温度ばらつきに対する耐久性が極めて低いため、燃料電池セル300全体の温度を均一に保つことが必須の課題である。
そこで、燃料電池装置1では、改質触媒900と燃料電池セル300との位置関係を工夫することにより、燃料電池セル300の上部が高温になってしまうことを抑制している。図4を再び参照して説明すると、内側空間161bに配置された改質触媒900は、燃料電池セル300の上部に対応する高さの位置において燃料電池セル300の側方を囲むように配置している。一方、燃料電池セル300の下部に対応する高さの位置には配置されていない。
このため、燃料電池セル300のうち温度が上昇しやすい部分、すなわち、上方に配置された小型セル301のみが、改質触媒900で起こる吸熱反応の影響により選択的に冷却されることとなる。その結果、燃料電池セル300の上部と下部との間に生じる温度差を低減し、局所的な温度上昇に起因した燃料電池セル300の劣化を抑制している。
また、改質触媒900の上端位置は、最も上方に配置された小型セル301の上端位置よりも高くなっている。このような構成とすることにより、燃料電池セル300の周囲に配置された改質触媒900のうち、当該小型セル301の上端よりも上の部分に配置された改質触媒900により、当該小型セル301の上端が集中的に冷却されることとなる。その結果、上方に配置された小型セル301の温度が他の部分の温度よりも上昇してしまうことを確実に防止している。
また、燃料電池セル300のうち最も上方に配置された小型セル301の上端には、アノードキャップ350又はカソードキャップ370が装着されている。残余の燃料ガスは、これらアノードキャップ350等のうち縮径部352(又は縮径部372)の上端に形成された開口から放出された後、当該開口の近傍で燃焼する。このような構成によって、かかる燃焼の炎が形成される位置は、最も上方に配置された小型セル301の上端から更に上方に離間した位置となっている。その結果、上方に配置された小型セル301の温度上昇を更に抑制している。
更に、改質触媒900の上端位置は、燃料電池セル300の上方に配置されたアノードキャップ350の縮径部352(又はカソードキャップ370の縮径部372)の上端に形成された開口よりも高い位置となっている。すなわち、燃焼の炎が形成される位置、及びアノードキャップ350又はカソードキャップ370の側方全体を囲むように改質触媒900が配置される。
このような構成により、燃焼の熱が改質触媒900によって奪われ、アノードキャップ350等も冷却されるため、上方に配置された小型セル301の温度が上昇することを更に抑制している。また、アノードキャップ350等は熱伝導率が高い金属により形成されているため、かかる冷却はさらに効率的に行われる。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。