本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。以下において、薬液は、肥料、農薬等を溶媒(例えば、水)に溶解させた液体、および、肥料、農薬等の固形分を含む液体(例えば、水)等の液状物である。
〔実施形態〕
図1は、実施形態に係る薬液散布車両の構成例を示す側面図である。図2は、実施形態に係る薬液散布車両の構成例を示す平面図である。図3は、実施形態に係る薬液散布車両の構成例を示す正面図である。図4は、実施形態に係る薬液散布車両が有する薬液供給系統の構成例を示す構成図である。
本実施形態に係る薬液散布車両1は、作業者(オペレータ)が走行車体2に搭乗して運転操作しながら薬液を圃場に散布する作業用車両である。薬液散布車両1は、図1および図2に示すように、走行車体2と、エンジン8と、薬液タンク10と、ブーム20と、薬液供給系統30と、窓40と、遮蔽部材50L,50Rと、ワイパー機構60(図3参照)と、を含んで構成されている。なお、本実施形態において、薬液散布車両1の進行方向は、走行車体2の前後方向に沿った方向であり、薬液散布車両1の直進時、運転座席3からステアリングハンドル4に向かう方向である。また、走行車体2の車幅方向は、上記進行方向に対して水平に直交する方向である。
走行車体2は、図1に示すように、運転座席3と、ステアリングハンドル4と、メインフレーム5と、前輪6および後輪7を備える走行車輪と、を含んで構成されている。ステアリングハンドル4は、オペレータが着座する運転座席3と対向配置されている。ステアリングハンドル4は、オペレータによる回動操作によって左右の前輪6を操舵することで、薬液散布車両1の進行方向を変更する。メインフレーム5は、走行車体2の前後に延長されている。
前輪6は、走行車体2の前方に配置され、走行車体2の車幅方向の左右に配置されている。前輪6は、ステアリングハンドル4の回動操作により操舵される操舵輪である。前輪6は、フロントアクスル6aに装着され、エンジン8で発生した動力により回転駆動される。フロントアクスル6aは、メインフレーム5に取り付けられている。フロントアクスル6aは、前輪6を回転駆動させるための伝動装置をフロントアクスルケースに内装している。
後輪7は、走行車体2の後方に配置され、走行車体2の車幅方向の左右に配置されている。後輪7は、リヤアクスル7aに装着され、エンジン8で発生した動力により回転駆動される。リヤアクスル7aは、メインフレーム5に取り付けられている。リヤアクスル7aは、後輪7を回転駆動させるための伝動装置をリヤアクスルケースに内装している。
エンジン8は、例えば、ディーゼルエンジンまたはガソリンエンジンである。エンジン8は、メインフレーム5に取り付けられている。エンジン8は、メインフレーム5の前方に配置されている。エンジン8は、本実施形態においてはフロントアクスル6aの前方に配置されている。エンジン8の動力は、トランスミッション9を介して前輪6および後輪7に伝達される。トランスミッション9は、ステップフロア2aに配置されたクラッチペダルCPの踏み込み操作により係合状態と開放状態とが切り替えられ、主変速レバー71および副変速レバー72の変速操作により変速する。なお、エンジン8を含む動力発生源としては、モータを有するハイブリッドタイプであってもよい。
薬液タンク10は、ブーム20から散布される薬液を蓄える容器である。薬液タンク10は、薬液タンク取付部材5aを介してメインフレーム5に取り付けられている。薬液タンク10は、本実施形態においてはリヤアクスル7a上に配置されている。
ブーム20は、散布形態において、走行車体2の前側に薬液を散布するものである。ブーム20は、図2に示すように、第1散布ブーム21(サイドブーム)と、第2散布ブーム22(サイドブーム)と、第3散布ブーム23(センターブーム)と、を含んでいる。第1散布ブーム21は、薬液散布車両1の進行方向の左側に配置され、第2散布ブーム22は、薬液散布車両1の進行方向の右側に配置されている。第3散布ブーム23は、薬液散布車両1の進行方向の前側に配置されており、第1散布ブーム21と第2散布ブーム22との間に配置されている。第1散布ブーム21と第2散布ブーム22とは、ステアリングハンドル4の右側の近傍に設けられたブーム操作部をオペレータが操作することで、薬液散布車両1の車幅方向に拡げた散布形態、または、薬液散布車両1の側面に沿う収納形態を選択して切り替え可能である。ブーム操作部は、例えば、レバーを有し、このレバーで第1散布ブーム21と第2散布ブーム22とに接続されたワイヤーを操作する機械式であってもよく、あるいは、スイッチを有し、このスイッチの入り切りで第1散布ブーム21と第2散布ブーム22とを駆動する電動モータの動作を制御する電気式であってもよい。
第1散布ブーム21と第2散布ブーム22とは、散布形態では、薬液散布車両1の進行方向側に向かって、第3散布ブーム23と略平行となる位置まで旋回し(図2の矢印Rで示す方向)、この位置で薬液散布車両1に固定される。すると、各散布ブーム21,22,23は、略一直線上に配置される。また、第1散布ブーム21と第2散布ブーム22とは、圃場で薬液を散布しないときには薬液散布車両1の進行方向に沿って収納され、第1ブーム受け81,82と第2ブーム受け83,84で支持される。第1ブーム受け81,82は、ステアリングハンドル4の前上部から車幅方向に延長されている。第2ブーム受け83,84は、薬液タンク10の後上部から車幅方向に延長されている。このため、第1散布ブーム21および第2散布ブーム22が長くても、第1散布ブーム21および第2散布ブーム22のバランスを保つことができる。また、第2ブーム受け83,84は、薬液タンク10の後上部に着脱可能に装着されている。このため、第1散布ブーム21および第2散布ブーム22の長さ(ブーム長)が異なる型式であっても対応することができる。
第1散布ブーム21は、複数のノズル21aを有し、第2散布ブーム22は、複数のノズル22aを有し、第3散布ブーム23は、複数のノズル23a(図1参照)を有している。各複数のノズル21a,22a,23aは、例えば、薬液を霧状に噴射するスプレーノズルである。各複数のノズル21a,22a,23aは、薬液を散布するための噴射口が地面GLを向いている。各複数のノズル21a,22a,23aは、散布形態では各散布ブーム21,22,23が略一直線上に配置されるので、略一直線上に配列される。なお、各複数のノズル21a,22a,23aの噴射口の向きは、地面GLを向いているものに限定されるものではなく、薬液の散布対象に応じて適宜変更することができる。
薬液供給系統10は、複数のノズル21a,22a,23aに薬液を供給するシステムである。薬液供給系統10は、図4に示すように、給水ホース31と、吐水ホース32と、散布ホース33と、アンロードホース34と、攪拌ホース35と、余水ホース36と、分岐装置37と、防除ポンプPと、を含んで構成されている。なお、本実施形態において、薬液供給系統30の「水」は、薬液を含むものとする。
給水ホース31は、薬液タンク10から防除ポンプPまで薬液を導く配管である。給水ホース31は、給水コック31aとフィルタ31bとを有している。給水コック31aは、薬液タンク10とフィルタ31bとの間に配置されており、フィルタ31bの交換、掃除等を行うときに薬液タンク10からの給水を止めることができる。フィルタ31bは、薬液タンク10内の薬液からごみ等を防除ポンプPの入口側で除去するサクションフィルタである。吐水ホース32は、防除ポンプPから分岐装置37まで薬液を導く配管である。散布ホース33は、分岐装置37から各散布ブーム21,22,23の各ノズル21a,22a,23aまで薬液を導く配管である。アンロードホース34は、吐水ホース32から供給された薬液が散布ホース33に供給されていない時に、薬液タンク10内に薬液を戻す配管である。アンロードホース34は、吐水ホース32に設けられた切換コック39から分岐している。切換コック39は、散布方向と、アンロード方向とに切り替え可能である。
攪拌ホース35は、薬液タンク10内の薬液を攪拌するために、常時所定の流量の薬液を薬液タンク10内に流す配管である。攪拌ホース35は、分岐装置37から分岐して薬液タンク10に接続されている。攪拌ホース35は、攪拌ノズル35aと切換コック35bとを有している。攪拌ノズル35aは、薬液タンク10の下部側面に取り付けられており、薬液タンク10内に薬液を噴射することで、薬液タンク10内の薬液を攪拌する。切換コック35bは、外部からの水等の供給方向と、薬液タンク10内の攪拌方向とに切り替え可能である。余水ホース36は、圧力が過度に上昇した場合の薬液、および、散布や攪拌に使用されなかった薬液を薬液タンク10内に戻す配管である。
分岐装置37は、吐水ホース32から送られてきた薬液を散布ホース33に分岐させるものである。分岐装置37には、切換コック37aと、安全弁37bと、圧力計37cと、散布コック38と、が設けられている。切換コック37aは、攪拌ホース35に対する薬液の供給と非供給とを切り替える。安全弁37bは、吐水ホース32内の薬液の圧力が過度に上昇した場合に、薬液を薬液タンク10に戻して吐水ホース32内の薬液の圧力上昇を抑制する。圧力計37cは、散布ホース33に送られる薬液の圧力を表示する。
散布コック38は、第1散布コック38aと、第2散布コック38bと、第3散布コック38cと、を含んでいる。第1散布コック38aは、第1散布ブーム21に接続される第1散布ホース33aに設けられており、ノズル21aと分岐装置37との間に配置されている。第2散布コック38bは、第2散布ブーム22に接続される第2散布ホース33bに設けられており、ノズル22aと分岐装置37との間に配置されている。第3散布コック38cは、第3散布ブーム23に接続される第3散布ホース33cに設けられており、ノズル23aと分岐装置37との間に配置されている。各散布コック38a,38b,38cは、各ノズル21a,22a,23aに対する薬液の供給と非供給とを切り替える。なお、本実施形態において、分岐装置37は、運転座席3に対して進行方向の右側に配置されている。このため、運転座席3に着座するオペレータが各コック38a,38b,38cを操作しやすく、圧力計37cを視認しやすい。
防除ポンプPは、フィルタ31bを通過した薬液を吸引した後に加圧して、分岐装置37に向かって吐出する。防除ポンプPは、図示しない電動モータにより駆動される。また、防除ポンプPは、ステアリングハンドル4付近に配置された防除ポンプ操作部のスイッチをオペレータが操作することで、電動モータの駆動または停止を選択して切り替えることができる。
窓40は、図1に示すように、運転座席3の前方かつステアリングハンドル4の前方に配置されている。窓40は、エンジンカバー8aの上方に設けられている。窓40は、図3に示すように、フレーム41と、窓ガラス42と、支持軸43と、を含んでいる。フレーム41は、四隅の角が取られた矩形状であり、ステップフロア2aの車幅方向の幅と同等の幅で形成されている。窓ガラス42は、フレーム41に支持されている。窓ガラス42は、例えば、強化ガラス等である。支持軸43は、窓40の支持構成を強固にするものである。支持軸43は、フレーム41の上部から運転席3に向けて延びた後、運転座席3の後方から略鉛直方向の下方に向けて延びている。つまり、支持軸43は、上部のフレーム41から運転座席3の上方を通過し、運転座席3の後方まで延びている。また、支持軸43は、運転座席3の後方まで延びた下端部43aが薬液タンク10に取り付けられている。すなわち、支持軸43の下端部43aは、薬液タンク10とともに薬液タンク取付部5aに固定されている。このため、薬液タンク10の支持構成が強固となっている。
遮蔽部材50L,50Rは、図3に示すように、走行車体2を正面から見て、エンジンカバー8aの左右両側面側に配置されている。遮蔽部材50L,50Rは、窓40の左右両側の下部から下方に向けて延びており、ステップフロア2aにまで延びている。遮蔽部材50L,50Rは、ステップフロア2aのステップ取付部から後方へ曲げられている。すなわち、遮蔽部材50L,50Rは、窓40の左右両側の下部から、エンジンカバー8aの左右両側面に沿ってステップフロア2aにまで延びて形成されている。これにより、窓40と遮蔽部材50L,50Rとがエンジンカバー8aを取り巻くように配置される。つまり、走行車体2を正面から見て、エンジンカバー8aの両側面側が遮蔽部材50L,50Rにより塞がれるので、走行車体2の進行方向の前側から運転座席3へ薬液が飛散することを抑えることができる。また、窓40の下方にエンジンカバー8aと遮蔽部材50L,50Rとが配置されるので、運転座席3に着座するオペレータの足元へ薬液が飛散することを抑えることができる。また、遮蔽部材50L,50Rは、左側の遮蔽部材50Lから右側の遮蔽部材50Rまでの幅がステップフロア2aの車幅方向の幅よりも狭く形成されている。つまり、窓40の左右幅が左側の遮蔽部材50Lから右側の遮蔽部材50Rまでの左右幅より広く形成されている。
遮蔽部材50L,50Rは、フレーム51L,51Rと、遮蔽板52L,52Rと、を含んでいる。フレーム51L,51Rは、窓40のフレーム41の下部と溶接やボルト等の締結部材により接合されており、フレーム41と一体的に形成されている。フレーム51L,51Rは、窓40のフレーム41の下部からステップフロア2aに向けて延びている。フレーム51L,51Rは、遮蔽板52L,52Rを支持している。遮蔽板52L,52Rは、エンジンカバー8aとの隙間を小さくするように、車幅方向の中心側がエンジンカバー8aの外形に沿って形成されている。このため、ブーム20から走行車体2の前方に薬液を散布する際、走行車体2の前方から薬液が運転座席3に飛散することを抑えることができる。また、遮蔽板52L,52Rは、本実施形態においては透明部材である。透明部材としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂やガラス等、耐薬品性や耐候性を有するものが好ましい。これにより、運転座席3に着座するオペレータは、前輪6の前方(図2の矢印EPで示す方向)を目視可能となる。つまり、オペレータは、圃場の作物CRと前輪6との位置関係を目視することができるので、作物CRに対して適切な位置を維持しつつ薬液散布車両1を走行させることができる。
なお、特に図示していないが、本実施形態においては、運転座席3の左右両側にも遮蔽部材が設けられている。運転座席3の右側の遮蔽部材は、右側の遮蔽部材50Rのフレーム51Rと薬液タンク10との隙間を小さくするように、フレーム51Rから薬液タンク10まで延びている。また、運転座席3の右側の遮蔽部材は、ステップフロア2aとの隙間を小さくするように、下方に延びている。運転座席3の左側の遮蔽部材は、右側の遮蔽部材と同様に、左側の遮蔽部材50Lのフレーム51Lから薬液タンク10まで延びている。運転座席3の左側の遮蔽部材は、右側の遮蔽部材と同様に、ステップフロア2aに向けて延びている。また、運転座席3の左側の遮蔽部材は、フレーム51Lに設けたヒンジを介してドアのように開閉可能である。このため、分岐装置37やワイパー操作部61などが配置されていない運転座席3の左側からオペレータが乗降する際、運転座席3の左側の遮蔽部材を開閉することができる。また、運転座席3の左右両側から薬液が運転座席3へ飛散することを抑えることができる。
ワイパー機構60は、窓ガラス42の外側表面に付着した薬液を払拭可能であり、ウインドウウォッシャー液を窓ガラス42に吹き付け可能である。ワイパー機構60は、図2および図3に示すように、ワイパー操作部61と、水タンク62と、噴射ノズル63と、ワイパーブレード64と、を含んで構成されている。ワイパー操作部61は、ブーム操作部および防除ポンプ操作部と同様に、ステアリングハンドル4の近傍の右側に配置されている。つまり、ワイパー操作部61は、オペレータの手元付近に配置されているので、前方から視線を逸らさずに操作することができる。また、ワイパー操作部61は、例えば、ウインドウウォッシャー液の噴射と停止とを切り替えるためのウインドウウォッシャースイッチと、ワイパーブレード64の駆動と停止とを切り替えるためのワイパースイッチと、を有する。水タンク62は、窓ガラス42に吹き付けられるウインドウウォッシャー液を蓄える容器である。水タンク62は、ステップフロア2aに搭載されており、右側の遮蔽部材50Rとステアリングハンドル4との間に配置されている。噴射ノズル63は、水タンク62内のウインドウウォッシャー液を窓ガラス42に吹き付けるためのノズルである。噴射ノズル63と水タンク62との間には、ウインドウウォッシャーポンプが設けられている。ワイパーブレード64は、フレームにワイパーラバーが一体的に取り付けられている。ワイパーブレード64は、ワイパーモータにより往復動可能である。
ここで、バッテリー90は、防除ポンプPを駆動する電動モータ、ウインドウウォッシャーポンプ、ワイパーモータ等に電力を供給するものである。バッテリー90は、進行方向の左側のブームマストBの後方に配置されている。バッテリー90は、例えば、バッテリー取付部材91を介してフロントアクスル6a上に取り付けられている。これにより、バッテリー90は、ステップフロア2aの下に収納する場合よりもアクセス性が向上するので、メンテナンス性がよくなり、構成も簡略化することができる。また、走行車体2の進行方向の左側にバッテリー90が配置され、進行方向の右側に水タンク62が配置されているので、走行車体2の車幅方向のバランスがよくなる。
本実施形態に係る薬液散布車両1は、以上のごとき構成であり、以下、その基本的動作について説明する。薬液散布車両1を走行させる場合、オペレータがクラッチペダルCPと主変速レバー71と副変速レバー72とを操作することにより、主変速レバー71および副変速レバー72の変速位置に応じた速度で走行する。また、ステアリングハンドル4を回動操作して前輪6を操舵することにより、薬液散布車両1が所望の方向に進行する。
また、薬液を散布する場合、オペレータがブーム操作部を操作して第1散布ブーム21と第2散布ブーム22とを走行車体2の車幅方向に拡げた散布形態とし、防除ポンプ操作部のスイッチを入りにすることにより、各散布ブーム21,22,23の各ノズル21a,22a,23aから薬液が散布される。この際、運転座席3の前方には窓40と遮蔽部材50L,50Rとが配置され、運転座席3の左右両側には図示しない遮蔽部材が配置されているので、各散布ブーム21,22,23から散布される薬液が運転座席3へ飛散することが抑えられる。
また、窓40に付着した薬液等を除去する場合、オペレータがワイパー操作部61のウインドウウォッシャースイッチを操作して噴射ノズル63から窓ガラス42に向けてウインドウウォッシャー液を噴射させ、ワイパースイッチを操作してワイパーブレード64を往復動させることにより、窓ガラス42上の薬液等がウインドウウォッシャー液とともに払拭される。
また、薬液の散布を一時的に停止する場合、オペレータが分岐装置37に設けられた散布コック38を開放状態から閉止状態に切り替えることにより、防除ポンプPから吐水ホース32に送られる薬液が、散布ホース33に送られずにアンロードホース34を介して薬液タンク10内に戻され、薬液の散布が一時停止される。なお、散布コック38を開放状態に切り替えることにより、防除ポンプPから吐水ホース32に送られる薬液が、散布ホース33に送られるので、薬液の散布を再開することができる。
また、薬液の散布を終了する場合、オペレータが散布コック38を開放状態から閉止状態に切り替えることにより、各散布ブーム21,22,23からの薬液の散布が停止される。次に、オペレータが防除ポンプ操作部のスイッチを切りにすることにより、防除ポンプPが停止される。次に、オペレータがブーム操作部を操作することにより、散布形態にある第1散布ブーム21と第2散布ブーム22とが薬液散布車両1の進行方向とは反対方向に向かって、メインフレーム5と略平行となる位置まで旋回(図2の矢印Rで示す方向の逆方向)し、この位置で各ブーム受け81〜84に支持されて、薬液散布車両1に固定され、薬液の散布が終了される。
以上のように、本実施形態に係る薬液散布車両1によれば、運転座席3の前方に窓40が設けられており、窓40の左右両側の下部から下方に遮蔽部材50L,50Rが設けられている。これにより、各散布ブーム21,22,23から走行車体2の前側に薬液を散布しても、走行車体2の前側から運転座席3へ薬液が飛散することを抑えることができる。
また、遮蔽部材50L,50Rは、遮蔽板52L,52Rが透明部材であるので、運転座席3に着座するオペレータから前輪6の前方を目視することができる。つまり、圃場の作物CRと前輪6との位置関係をオペレータが目視することができるので、作物CRに対して適切な位置を保ちながら薬液散布車両1を走行させることができる。
また、本実施形態に係る薬液散布車両1によれば、窓40の上部のフレームから運転座席3の上方を通過し、運転座席3の後方まで延びる支持軸43が設けられている。これにより、窓40の支持構成を強固にすることができ、窓40の前後方向の揺れを抑えることができる。
また、遮蔽部材50L,50Rは、窓40の左右両側の下部から下方に設けられているので、構成を簡略化することができる。このため、低コスト化することができる。
また、支持軸43は、薬液タンク10をフレーム5に固定するための薬液タンク取付部材5aに取り付けられているので、薬液タンク10の支持構成を強固にすることができる。
また、支持軸43は、窓40の上部のフレームから運転座席3の上方を通過し、運転座席3の後方まで延びるので、運転座席3の左右両側を解放することができ、オペレータの乗降が容易になる。
また、バッテリー90は、進行方向の左側のブームマストBの後方に配置されているので、アクセス性が向上する。このため、メンテナンス性がよくなり、構成も簡略化することができる。
また、収納形態において、走行車体2の進行方向の前側に配置された第1ブーム受け81,82と、後側に配置された第2ブーム受け83,84とで、第1散布ブーム21および第2散布ブーム22を支持するので、第1散布ブーム21および第2散布ブーム22の撓み等を抑制することができる。
また、ワイパー操作部61とブーム操作部と防除ポンプ操作部とは、ステアリングハンドル4の近傍の右側に配置され、互いに近接配置されているので、運転座席3に着座するオペレータの手元付近に配置される。このため、オペレータは、前方から視線を逸らさずに各操作部を操作することができるようになり、薬液散布車両1の操作性を向上することができる。
なお、本実施形態において、薬液散布車両1は、トランスミッション9を介してエンジン8の動力を前輪6および後輪7に伝達しているが、エンジン8とトランスミッション9との間に油圧式無段変速装置(HST:Hydro Static Transmission)を設け、エンジン8の動力を油圧式無段変速装置の可変油圧ポンプに入力し、油圧式無段変速装置の定量油圧モータから出力した動力をトランスミッション9に入力し、トランスミッション9内の副変速装置を介して前輪6および後輪7に伝達してもよい。また、油圧ポンプと油圧モータとを介してエンジン8の動力を前輪6および後輪7に伝達してもよい。これにより、種々の動力伝達装置を用いることができる。
また、本実施形態において、散布コック38は、オペレータが手動で操作するものであるが、散布コック38をアクチュエータで開閉し、このアクチュエータを運転座席3やステアリングハンドル4の近傍に設けたスイッチで操作するようにしてもよい。これにより、オペレータの操作にかかる負担を軽減することができる。
また、本実施形態において、支持軸43は、運転座席3の車幅方向の中心位置に配置されているが、運転座席3の右側に偏倚させてもよい。つまり、オペレータが運転座席3に乗降しない右側に支持軸43を偏倚させることで、乗降時に支持軸43がオペレータに干渉することを抑えることができる。
また、支持軸43は薬液タンク取付部材5a以外にも運転座席3の基部や薬液タンク10に取り付けてもよい。