JP5971831B2 - 月桃成分の発酵方法 - Google Patents

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Description

本発明は、月桃から得た月桃液の発酵技術に関する。
本発明の発明者は、特許文献1の図1において、スクリュー構造の固液分離装置を提案した。この装置は、スクリューの入った筒体の一端側に原料植物の供給部を有し、前記筒体中に供給された生の含水植物を筒体の一端から他端に向けて押圧移動させるようにスクリューを回転可能に支持してあり、水分が搾汁された固形物(カス)の排出口を筒体の他端側に開口させてあり、該筒体の側壁に、搾汁液を通過させる小孔が多数開けてある。
こうして、円筒中で植物が押し上げられて行く際にスクリューや後続の植物で押されて、圧搾される。しかも、原料植物を円筒中に供給する時点でも種々の前処理が可能である。
特願2003−339844号 特許第3921175 号
圧搾して得た月桃の搾汁液を図2のような装置で蒸留した後に凝縮することで高品質の蒸留液を実現できた。この蒸留液は抗菌作用が有るので、歯周病の予防が期待され、特許文献2でも月桃葉抽出物が歯周病の予防に有効であると記載されている。
歯周病菌が血液の流れと共に体内を循環すると、生活習慣病を悪化させるとして、最近特に注目されている。そこで、歯周病菌の対策が色々となされており、研究もされている。
しかしながら、特許文献1の月桃蒸留液でも顕著な効果は得られず、5分も経過しないと歯周病菌は死滅しなかった。
本発明の技術的課題は、このような問題に着目し、月桃搾汁液の処理技術を模索している間に、月桃液を発酵処理すると歯周病菌の死滅効果が顕著に高まるが、皮膚常在菌であるアクネ菌や表皮ブドウ球菌が死滅しないことを突き止めたことに基づき、歯周病の治療や予防に貢献することにある。また、発酵させる月桃の部位や処理法によって抗酸化力や美肌効果を改善できることを発見した。
本発明の技術的課題は次のような手段によって解決される。請求項1は、多数の小孔から押し出すことで搾汁する際に葉や茎の軟質な肉質部分も粒子状となって一緒に混在して搾汁された月桃成分を蒸留する際に残った蒸留残り部分を静置して発酵させ、沈殿物と上澄みとに分離させ、この上澄み及び/又は沈殿物から月桃製品を得ることを特徴とする月桃発酵品の製造方法である。
請求項2は、多数の小孔から押し出すことで搾汁する際に葉や茎の軟質な肉質部分も粒子状となって一緒に混在して搾汁された月桃成分を蒸留する際に残った蒸留残り部分を静置して発酵させ、沈殿物と上澄みとに分離させる方法で、抗酸化作用を増強することを特徴とする請求項1に記載の月桃発酵品の製造方法である。
請求項3は、前記の上澄みを利用して、口に入る歯磨き、マウスウォッシュ、チューインガム、うがい薬又は飲食品に加えることで、歯周病の治療や予防をする製品とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の月桃発酵の製造方法ある。
請求項4は、前記の上澄みを蒸留することにより、歯周病菌の死滅及び/又は予防の用途の歯磨き、マウスウォッシュ、チューインガム、うがい薬又は食品の防腐用として飲食品に加えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の月桃発酵品の製造方法である。
請求項5は、前記の沈殿物を美肌品や飲食品に利用することによって、チロセナーゼ阻害活性及び/又はヒアルロニダーゼ阻害活性を高めることを特徴とする請求項1又は請求項
2に記載の月桃発酵品の製造方法である。
請求項1は、多数の小孔から押し出すことで搾汁する際に葉や茎の軟質な肉質部分も粒子状となって一緒に混在して搾汁された月桃成分を蒸留する際に残った蒸留残り部分を静置して発酵させ、沈殿物と上澄みとに分離させ、この上澄み及び/又は沈殿物から月桃製品を得る製造方法であるが、明細書の段落[0023]に記載のように、「搾汁方法は特に限定しないが、特許文献1の図1のように、多数の小孔から押し出すことで搾汁すると葉や茎の軟質な肉質部分も粒子状となって汁部分と一緒に混在する。」と記載されている。明細書の段落[0027]に記載のように、搾汁液には、液体だけでなく、原料植物である月桃の細かく破砕された軟質の葉肉や茎の肉質の粒子も混在しているので、沈殿物11ができるが、図2のように蒸留装置で蒸留した場合、蒸留した後に、蒸留容器2中に葉や茎の肉質分も残留している。しかも、液体成分が全部蒸発しないで、蒸留残り部分として多少残るようにすると、蒸留残りの濃縮液とすることができる。その結果、蒸留残りの濃縮液と葉や茎の肉質分がどろどろに溶けた状態で残ったゼリー状の濃縮物11となって底部に残る。長時間の蒸留工程で葉肉や茎肉成分は充分に煮詰まって軟化しているため、ドロドロのゼリー状製品11となる。この蒸留残り加熱濃縮液は、そのまま又は濾過して、あるいは適当に希釈して、製品化できる。食品などの防腐用の添加物としても有効である。
或いは、この加熱濃縮後の残留物を静置して再度発酵させると、沈殿物と上澄みとが分離しかつ上澄み液が増えるので、これを蒸留することにより、透明で高品質の発酵液として採取してもよい。なお、蒸留しないでそのまま使用してもよい。
請求項2のように、多数の小孔から押し出すことで搾汁する際に葉や茎の軟質な肉質部分も粒子状となって一緒に混在して搾汁された月桃成分を蒸留する際に残った蒸留残り部分を静置して発酵させ、沈殿物と上澄みとに分離させる方法で、抗酸化作用を増強する製造方法であるが、明細書の段落[0019]と段落[0020]に記載のように、チロシナーゼ阻害活性又はヒアルロニダーゼ阻害活性を高める方法によると、美肌物質を容易に増強できる。また、月桃由来物を単に蒸留する方法に比べて、月桃由来成分の抗酸化作用などの効能を効率的に増強できる。
請求項3のように、前記の上澄みを利用して、口に入る歯磨き、マウスウォッシュ、チューインガム、うがい薬又は飲食品に加えることで、歯周病の治療や予防をする製品とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の月桃発酵品の製造方法であるが、段落[0046]に記載のように、生の月桃の葉や茎の抽出液を発酵処理してから蒸留することにより、皮膚常在菌であるアクネ菌や表皮ブドウ球菌は死滅させずに歯周病の治療や予防に利用できる。したがって、口腔に入る歯磨き、マウスウォッシュ、チューインガム、うがい薬、茶やサプリメントなどの飲食品に前記のような月桃発酵物を加えることで、皮膚常在菌であるアクネ菌や表皮ブドウ球菌は死滅させずに歯周病の治療や予防、軽減に貢献でき、歯周菌が血液と共に循環して健康を害するなどの問題が解消される。また、月桃由来の抗酸化作用などの効能を効率的に増強でき、皮膚疾患関連にも有効である。
請求項4は、前記の上澄みを蒸留することにより、歯周病菌の死滅及び/又は予防の用途の歯磨き、マウスウォッシュ、チューインガム、うがい薬又は食品の防腐用として飲食品に加えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の月桃発酵品の製造方法であるが、段落[0031]に記載のように、○2のように、本発明の技術で発酵処理してから蒸留した液体の場合は、1分で死滅した。すなわち、歯周病菌に対しては、高い死滅効果を示したことが確認された。
一方、図4に示すように、○1に示す従来の月桃蒸留液はアクネ菌すなわち、皮膚常在菌は5分で死滅したのに対し、○2の本発明による発酵処理した蒸留液ではアクネ菌は死滅しなかった。従って、皮膚常在菌であるアクネ菌は死滅させずに歯周病を治療や予防をでき、理想的な対策が可能となる。
また、図5のように、皮膚常在菌の一種である表皮ブドウ球菌に対しては、○1に示す従来の月桃蒸留液も、○2に示す本発明により発酵処理した蒸留液も、殺菌力が抑制された。
請求項5のように、前記の沈殿物を美肌品や飲食品に利用することによって、チロセナーゼ阻害活性及び/又はヒアルロニダーゼ阻害活性を高めることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の月桃発酵品の製造方法であるが、段落[0046]に記載のように、生の月桃の葉や茎の抽出液を発酵処理してから蒸留することにより、皮膚常在菌であるアクネ菌や表皮ブドウ球菌は死滅させずに歯周病の治療や予防に利用できる。したがって、口腔に入る歯磨き、マウスウォッシュ、チューインガム、うがい薬、茶やサプリメントなどの飲食品に前記のような月桃発酵物を加えることで、皮膚常在菌であるアクネ菌や表皮ブドウ球菌は死滅させずに歯周病の治療や予防、軽減に貢献でき、歯周菌が血液と共に循環して健康を害するなどの問題が解消される。さらに、月桃由来の抗酸化作用などの効能を効率的に増強でき、皮膚疾患関連にも有効である。また段落[0039]には、抗酸化試験の結果と皮膚疾患関連酵素阻害活性試験の結果が示されている。すなわち、図10に、抗酸化試験の結果と皮膚疾患関連酵素阻害活性試験の結果を示す。この表から明らかなように、最も高い活性を示したのはDPPH、ABTSともに、葉・茎・種子の濃縮液の発酵物であった。蒸留液には、ABTSの活性がなかった。DPPH、ABTSの両方とも、葉・茎・種子濃縮液の発酵物が根茎濃縮液の発酵物よりも高い活性を示した。
2つの活性試験ともに濃縮液の発酵物の方が高く、ヒアルロニダーゼ阻害活性は根茎の方が葉・茎・種子より高い結果となっている。コラゲナーゼ阻害とエラスターゼ阻害活性は確認されなかった。
月桃搾汁液の処理工程を示すようにフローチャートである。 月桃搾汁液の蒸留装置の実施形態を示す縦断面図である。 月桃発酵液の歯周病菌に対する死滅効果の試験結果を示す図である。 月桃発酵液のアクネ菌に対する死滅効果の試験結果を示す図である。 月桃発酵液の表皮ブドウ球菌に対する死滅効果の試験結果を示す図である。 多連式の蒸留装置を示す側面図である。 月桃発酵液の製法の全容を示す図である。 液状物とペーストに分けて溶媒毎の成分を示した表である。 月桃成分の発酵物のHPLCによるDK,DDKの含有量測定結果とポリフェノール総量を示した表である。 抗酸化試験の結果と皮膚疾患関連酵素阻害活性試験の結果を示した表である。 月桃ペーストの酵素阻害試験の結果を示した表である。 嫌気性菌や好気性菌を確実に利用できるようにした発酵装置を示す側面図の例である。
次に本発明による月桃液の発酵処理が実際上どのように具体化されるか実施形態で説明する。図1は月桃搾汁液の発酵工程を示すようにフローチャートであり、ステップS1が原料となる生の月桃である。この月桃を洗って清浄にし、次いでステップS2で搾汁すると、ステップS3のように搾汁液となり、月桃液が得られる。搾汁方法は特に限定しないが、特許文献1の図1のように、多数の小孔から押し出すことで搾汁すると葉や茎の軟質な肉質部分も粒子状となって汁部分と一緒に混在する。
従来は、前記の搾汁液を直ちに蒸留し凝縮させたが、本発明はステップS4のように発酵処理する。ただし、前処理として一旦加熱、又はアルコール等の殺菌剤を吹き付けるか、漬け込んで殺菌してもよい。発酵に際して特別の菌を用いることも可能ではあるが、大気中に存在する菌で発酵させてもよい。現実には、製品を統一するために、発酵している発酵液から、新しく発酵させる液に約10%程度を種菌として使う。発酵温度は25〜45℃程度がよく、約2〜6カ月程度で足りるが、気温の高い夏場だと短めに、気温の低い冬場だと長めとし、閉鎖した有底容器に入れて発酵させる。
次いで、ステップS5のように蒸留処理する。ただし、蒸留しないで、発酵処理した後、フィルターで濾過して、月桃発酵物の原液として使用してもよい。なお、使用に際して希釈してもよい。
ステップS5のように蒸留して凝縮させた場合は、ステップS6において、蒸留し精製した液体が得られる。その結果、この蒸留精製液は高品質となり、歯周病の治療や予防に効果的な月桃発酵品となる。
図2は、蒸留装置の一例で、原料となる月桃搾汁液又は月桃発酵液1を蒸留容器2に入れた状態で、ガス炎3などで加熱して蒸気を発生させる。蒸留容器2は直接ガス炎3で加熱してもよいが、加熱液4を介在させて、間接的に加熱することもできる。すなわち、外容器5中に加熱液4を入れ、その中に蒸留容器2を入れる。
蒸発容器2中で発生した月桃蒸気は蒸気管27を経て、水道Wで給水した冷却水6中の凝縮管7に送って冷却し蒸留精製液とする。そして、出口8から回収する。なお、凝縮管7の出口側に真空ポンプPを設けて負圧にし、蒸留容器2中も負圧にすると、減圧蒸留が可能となり、月桃蒸気を効率的に凝縮管7側に引き出して、生産効率を上げることができる。
ところで、搾汁液には、液体だけでなく、原料植物である月桃の細かく破砕された軟質の葉肉や茎の肉質の粒子も混在しているので、沈殿物11ができるが、図2のように蒸留装置で蒸留した場合、蒸留した後に、蒸留容器2中に葉や茎の肉質分も残留している。しかも、液体成分が全部蒸発しないで、蒸留残り部分として多少残るようにすると、蒸留残りの濃縮液とすることができる。その結果、蒸留残りの濃縮液と葉や茎の肉質分がどろどろに溶けた状態で残ったゼリー状の濃縮物11となって底部に残る。
長時間の蒸留工程で葉肉や茎肉成分は充分に煮詰まって軟化しているため、ドロドロのゼリー状製品11となる。この蒸留残り加熱濃縮液は、そのまま又は濾過して、あるいは適当に希釈して、製品化できる。食品などの防腐用の添加物としても有効である。
或いは、この加熱濃縮後の残留物を静置して再度発酵させると、沈殿物と上澄みとが分離しかつ上澄み液が増えるので、これを蒸留することにより、透明で高品質の発酵液として採取してもよい。なお、蒸留しないでそのまま使用してもよい。
発酵濃縮液が残るように蒸留する工程において、蒸留開始時から蒸留終了時までのすべての蒸留発酵液をまとめて採取して製品にしてもよいが、蒸留初期の蒸留液とその後の蒸留液を別々に採取して、別々の製品や用途に用いることも有効である。例えば、蒸留に60分を要すると仮定した場合、最初の10分間の蒸留液を採取してA製品とし、次の20分間の蒸留液を採取してB製品とする。そして、最後の30分間の蒸留液をC製品とする。
このように、時間経過ごとに別々に採取すると、最初のA製品は揮発性の成分を大量に含む高濃度の上質の製品となり、最後に採取したC製品は、最も揮発性成分の少ない製品となる。したがって、C製品は、食品などに添加するのに使用し、最初に採取したA製品は、香りも強い良品であるため、歯周病菌の死滅及び/又は予防の用途に使用できる。
特許文献1に示す従来法で月桃搾汁液をそのまま蒸留した際に、蒸発しないで残った濃縮
された残留物を所定の期間だけ静置して発酵させることも可能である。この発酵液をフィルターで濾して、そのまま使用することも可能ではあるが、見た目の清浄さや使い勝手など、品質向上の目的から、再度蒸留してもよい。
また、月桃は、そのままを洗浄し煮て殺菌してから発酵させてもよいが、小さく切り刻んだり、裂いたり、破砕したり、粉砕してから煮て殺菌し発酵させてもよい。月桃成分を抽出するには、水や月桃搾汁液や月桃蒸留水などの溶媒に漬け込んでもよい。そして、月桃成分を抽出して、又は抽出しながら発酵処理してもよい。
月桃成分の抽出には、月桃の葉や茎の他に、根や花や種も使用できる。これらの2種以上を併用してもよい。図3の○1は月桃の葉と茎とを蒸留しただけの液体の歯周病菌試験結果であるが、図示のように死滅するまでに5分を要し、余り有効ではなかった。これに対し、○2のように、本発明の技術で発酵処理してから蒸留した液体の場合は、1分で死滅した。すなわち、歯周病菌に対しては、高い死滅効果を示したことが確認された。
一方、図4に示すように、○1に示す従来の月桃蒸留液はアクネ菌すなわち、皮膚常在菌は5分で死滅したのに対し、○2の本発明による発酵処理した蒸留液ではアクネ菌は死滅しなかった。従って、皮膚常在菌であるアクネ菌は死滅させずに歯周病を治療や予防をでき、理想的な対策が可能となる。
また、図5のように、皮膚常在菌の一種である表皮ブドウ球菌に対しては、○1に示す従来の月桃蒸留液も、○2に示す本発明により発酵処理した蒸留液も、殺菌力が抑制された。
月桃液の発酵物を多量に生産するには、図6の多連蒸留装置を使用すると均質な製品が得られる。図2の蒸留装置1台で蒸留すると、蒸留の回毎に香りや成分などの品質が異なり、製品化が困難である。そこで、本発明は、各蒸留容器21、22、23…のように複数台設け、それぞれの蒸留容器の蒸気出口を共通の蒸気ガイド管27に接続し、混ぜた状態の蒸気を凝縮器6に導いて液体にする。
このように蒸気の状態で1本の蒸気ガイド管27で混合すると、各蒸留容器21、22、23…毎に香りなどの品質が異なっていても、最終的に均質な凝縮製品となる。しかも、大量に生産できる。
図7は、月桃発酵液の製法の全容を示す図で、原料とする月桃は、葉と根茎と種子から成るAと茎のみのBとに分けられる。
次に別々に搾汁し、別々に蒸留する。このとき、発酵する前に蒸留した製品を(1) とし、底側に沈殿した加熱濃縮後の残留物を(2) とする。また、この残留物のうち、上澄みをaとし、ペースト状の沈殿物をbとする。
用語の解説は次のとおりである。
DKとDDKの効能:DKとDDKは、ノイラミニダーゼ( インフルエンザ)とHIV-1インテグラーゼに対して活性を持つことが報告されているほか、抗潰瘍と抗血栓活性を持っている事が証明されている。さらにDKが皮膚疾患に関連する酵素に対して抑制効果を示す事も報告されている。
活性酸素:活性酸素は細胞中で生産され人体の生理機能の調整に関与するが、紫外線やストレス、タバコなどにより過剰に生産される事で、酸化ストレスによる悪影響を及ぼし、最終的に皮膚細胞の細胞死、関節炎、炎症、肺の損傷や癌などを引き起こす。そういった酸化反応を阻害する機能を持った物質を抗酸化物質と呼ぶ。
抗酸化物質(ポリフェノール):フェノールとフラボノイドに分けられる。フェノールは殺菌消毒薬などに使われている。フラボノイドに属する色素成分の生理作用は、毛細血管を保護し丈夫にする作用、抗酸化、抗癌、抗菌・抗ウイルス、抗アレルギー、抗う歯、血
圧上昇抑制、抗変異原性作用など。
皮膚疾患関連酵素:
*チロシンを分解してメラニン合成を促進させるチロシナーゼ。
*ムコ多糖類の一種であるヒアルロン酸を分解し皮膚中の水分や張力を減少させるヒアルロニダーゼ。
*細胞外マトリックスの繊維成分であるコラーゲンを分解し皮膚の紫外線からの防御機能を阻害するコラギナーゼ。
*コラーゲンを支えるエラスチンを分解し皮膚のしわ、たるみを引き起こすエラスターゼ等がある。
なお、IC50とは、(酵素、細胞、受容体、微生物)の半数を阻害するのにどれだけの濃度が必要かを示し、低い数値が阻害剤の活性が高いといえる。
図8に、液状物とペーストに分けて溶媒毎の成分を示す。この表は全容を比較しやすくまとめたものであり、詳細は図9〜11に示す。図9に、HPLCによるDK,DDKの含有量測定結果とポリフェノール総量を示す。この表から明らかなように、DKを多く含むのは、(葉・茎・種子蒸留液)、(根茎濃縮液の発酵物)、(葉・茎・種子濃縮液の発酵物)の順であった。
DDKを多く含むのは、(根茎蒸留液)(葉・茎・種子濃縮液の発酵物)(葉・茎・種子蒸留液)(根茎濃縮液の発酵物)の順であった。
ポリフェノール総量は、フェノール、フラボノイドとも、根茎濃縮液の発酵物が最も多く含有していることが分かった。
葉・茎・種子濃縮液の発酵物と根茎濃縮液の発酵物の含有化合物を、GC・MS分析により測定した結果、同定された化合物は12種類で、試料4種類すべてに、フェノールと安息香酸と酢酸エチル抽出試料と2-0- メチルキシロースが含まれていた。
このように、ゲットウの根茎から単離された2種類の5,6-デヒドロカワイン(DK)とジヒドロ5,6-デヒドロカワイン(DDK)が、ノイラミニダーゼとHIV-1インテグラーゼに対して阻害活性を持つ。それに加え、DKは皮膚の疾患に関連する酵素に対して抑制効果を示している。
図10に、抗酸化試験の結果と皮膚疾患関連酵素阻害活性試験の結果を示す。この表から明らかなように、最も高い活性を示したのはDPPH、ABTSともに、葉・茎・種子の濃縮液の発酵物であった。蒸留液には、ABTSの活性がなかった。DPPH、ABTSの両方とも、葉・茎・種子濃縮液の発酵物が根茎濃縮液の発酵物よりも高い活性を示した。
2つの活性試験ともに濃縮液の発酵物の方が高く、ヒアルロニダーゼ阻害活性は根茎の方が葉・茎・種子より高い結果となっている。コラゲナーゼ阻害とエラスターゼ阻害活性は確認されなかった。
図11に、月桃ペースト酵素阻害試験の結果を示す。この表から明らかなように、月桃ペーストに含まれる化合物は22種類が確認できた。含量が多かったのは、3- クロロプロピオン酸、2- プロペン酸(アクリル酸)、安息香酸(食品の保存料)であった。
以上の各種試験の資料は、図10の抗酸化試験や皮膚疾患関連酵素阻害活性試験、図9のポリフェノール等の試験では、濃縮液を用いた。濃縮液とは、加熱濃縮後の残留物を2〜8ケ月間静置し発酵させた上澄みである。
これらの試験結果を総合すると、月桃成分を発酵させることにより、歯周病菌に対する殺菌力が高まるだけでなく、抗酸化力や皮膚疾患阻害活性、フラボノイドの数値も高まっている。
以上の月桃濃縮液や月桃ペーストの安全性試験の結果は次のとおりである。1.遺伝毒性、発がん性の有無を確認するための復帰突然変異試験の結果、陰性と判定された。2.目刺激性試験の結果、無刺激性と判定された。3.皮膚刺激性試験の結果、無刺激性と判定された。4.光毒性試験の結果、陰性と判定された。このように、各種の安全性の試験を行った結果、安全との確認も行われた。なお、本発明で「根茎」とは、生姜のような根の部分と茎の部分とが混在しているという意味である。
月桃や月桃抽出物の発酵は、嫌気性菌を主に使用する場合と好気性菌を主に使用する場合とに分けられるが、図1で説明したように、閉鎖した有底容器に入れて発酵させる場合は、大気を遮断して発酵させるので、嫌気性菌を主に使用する場合である。これに対し、閉鎖した容器を使用しない場合は、自由に外気が入れるので、好気性菌を主に使用する場合に該当する。
確実に嫌気性菌のみとするには、図12のように、容器2に、加熱殺菌済みの月桃液1を入れ、密閉する。上蓋9に開閉式の空気穴を開けて、気圧計Mを設ける。また、開閉式の空気出入口を設け、そこからコンプレッサーC等を配管して、容器2内を減圧して、中の月桃液1を減圧状態にする。圧力計Mで監視しながら、スターラー(磁力式攪拌装置)10などで攪拌等を行ない、コンプレッサーCによる気体排出を定期的に行う。空気が少ない状態になっているので、菌の生活環境は嫌気性菌が優位の状態となる。なお、Vは開閉バルブである。
逆に、好気性菌を使用する場合は、容器2に、加熱殺菌済みの月桃液1を入れて密閉し、上蓋9に開閉式の空気穴を開けて、空気圧計Mを接続し、また開閉式の空気出入口からコンプレッサーC等を使って、容器2内に空気を注入し、月桃液1を加圧状態にする。圧力計Mを監視しながら、攪拌等や滅菌フィルターを通した空気注入を定期的に行う。月桃液1の酸素溶存度を高め、菌の生活環境を好気状態にすることで、好気性菌が優位となり、好気性発酵が行われる。
前記嫌気性発酵と好気性発酵を断続的に行い発酵させるが、単独で嫌気発酵や好気発酵をさせても良い。
以上のように、本発明によると、生の月桃の葉や茎の抽出液を発酵処理してから蒸留することにより、皮膚常在菌であるアクネ菌や表皮ブドウ球菌は死滅させずに歯周病の治療や予防に利用できる。したがって、口腔に入る歯磨き、マウスウォッシュ、チューインガム、うがい薬、茶やサプリメントなどの飲食品に前記のような月桃発酵物を加えることで、皮膚常在菌であるアクネ菌や表皮ブドウ球菌は死滅させずに歯周病の治療や予防、軽減に貢献でき、歯周菌が血液と共に循環して健康を害するなどの問題が解消される。また、月桃由来の抗酸化作用などの効能を効率的に増強でき、皮膚疾患関連にも有効である。
1 月桃搾汁液又は発酵済みの月桃液
2 蒸留容器
27 蒸気管
3 ガス炎
4 加熱液
5 外容器
6 冷却水(凝縮器)
W 水道
7 凝縮管
8 出口8
P 真空ポンプ
11 ゼリー状の濃縮物
○1 従来の月桃蒸留液の特性
○2 本発明により発酵処理した後に蒸留した液の特性
21、22、23… 蒸留容器
9 上蓋
10 磁力式攪拌装置
M 気圧計
C コンプレッサー

Claims (5)

  1. 多数の小孔から押し出すことで搾汁する際に葉や茎の軟質な肉質部分も粒子状となって一緒に混在して搾汁された月桃成分を蒸留する際に残った蒸留残り部分を静置して発酵させ、沈殿物と上澄みとに分離させ、この上澄み及び/又は沈殿物から月桃製品を得ることを特徴とする月桃発酵品の製造方法。
  2. 多数の小孔から押し出すことで搾汁する際に葉や茎の軟質な肉質部分も粒子状となって一緒に混在して搾汁された月桃成分を蒸留する際に残った蒸留残り部分を静置して発酵させ、沈殿物と上澄みとに分離させる方法で、抗酸化作用を増強することを特徴とする請求項1に記載の月桃発酵品の製造方法。
  3. 前記の上澄みを利用して、口に入る歯磨き、マウスウォッシュ、チューインガム、うがい薬又は飲食品に加えることで、歯周病の治療や予防をする製品とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の月桃発酵の製造方法。
  4. 前記の上澄みを蒸留することにより、歯周病菌の死滅及び/又は予防の用途の歯磨き、マウスウォッシュ、チューインガム、うがい薬又は食品の防腐用として飲食品に加えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の月桃発酵品の製造方法。
  5. 前記の沈殿物を美肌品や飲食品に利用することによって、チロセナーゼ阻害活性及び/又はヒアルロニダーゼ阻害活性を高めることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の月桃発酵の製造方法。
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