本発明の実施形態について図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他色々な形態が実施可能である。
図1は、本発明の作成方法により得られた偽造防止形成体(以下「形成体」という。)(S)を示す平面図である。形成体(S)は、例えば、紙幣及び身分証明書等の貴重印刷物であり、盛り上がりを有する万線状の画線から成る画像を積層して配置したことで、観察角度の変化により第一の画像(A)と潜像画像(C)に変化して視認される。
図2は、形成体(S)の積層構成を示す模式図である。形成体(S)は、基材(1)上に、万線状の画線(3)から成る第一の画像(A)と、盛り上がりを有する万線状の画線(4)から成る第一の背景画像(B)と、盛り上がりを有する万線状の画線(6)から成る第二の画像(C)を積層して配置したことで、基材(1)に対する観察角度の変化により、第一の画像(A)を構成する画線(3)が、第一の背景画像(B)を構成する盛り上がりを有する画線(4)の影となることで、基材(1)に対して正面と、斜め方向から観察した際に、第一の画像(A)と第二の画像が変化して視認される。
次に、形成体(S)の作成装置(M)の構成について、図3を用いて説明する。デジタル印刷機(M)は、入力部(U1)、編集部(U2)、記憶部(U3)、印刷部(U4)、通信インタフェース(U5)及び表示部(U6)を備えている。
入力部(U1)は、形成体(S)の作成に必要なデータを取得し、編集部(U2)に与える手段である。
編集部(U2)は、与えられたデータを記憶部(U3)に格納するとともに、形成体(S)の作成に必要な演算処理及び画像処理等の全てを行い、得られた結果を印刷部(U5)に与える。
記憶部(U3)は、形成体(S)の作成に必要なデータと、編集部(U2)の演算に必要な各種データ及びその演算結果を記憶する手段である。
印刷部(U4)は、編集部(U2)から与えられたデータを印刷して形成体(S)を得る手段である。印刷部(U4)には、盛り上がりを有する画線を印刷することが可能な、レーザー・プリンタ及びインクジェット・プリンタ等の無版のデジタル印刷方式を用いる。印刷版面を用いないことで、版面作成工程がなくなるだけではなく、詳細については後述するが、複数の形成体(S)を作成する際に、形成体(S)ごとに形成する画像を異なる画像とする可変印刷を行うことが可能となる。
従来、観察角度の変化により潜像画像が出現する印刷物を作成する際には、あらかじめ、基材(1)に凹凸を付与することで作成することが主流であった。そのため、基材(1)の凹凸を損傷することなく印刷することが可能な印刷部を用いることを必須としていた。一方、本発明の作成方法により得られる形成体(S)は、凹凸をインキの盛りにより形成している。よって、盛り上がりを有する画線を印刷することが可能であれば、印刷部(U4)を公知の印刷方式に置き換えた印刷部(U4)とすることができる。
通信インタフェース(U5)は、図示されていないコンピュータ端末と編集部(U2)とを接続し、必要に応じてコンピュータ端末と編集部(U2)との間で情報の転送を行う。例えば、通信インタフェース(U5)により、あらかじめ登録された外部のデータベースサーバから、画像及びテキスト等の形成体(S)の作成に必要な各種データを得ることが可能である。
表示部(U6)は、入力されたデータ及び演算結果等、形成体(S)の作成に必要なデータ、入力条件及びコマンド等の作成者に必要な情報を表示する手段であり、例えば、CRT又は液晶ディスプレイ等を少なくとも一つ有する。
図3の作成装置(M)を用いて、本実施の形態による形成体(S)を作成する方法について、その手順を示した図4のフローチャートを用いて説明する。
まず、画像データ取得ステップf1として、第一の画像(A)の原画像である第一の画像データと、第一の背景画像(B)の原画像である第一の背景画像データと、第二の画像(C)の原画像である第二の画像データを、それぞれ作成する。
なお、本実施の形態において、データは、いずれも記憶部(U3)内に格納されているものであるが、詳細に説明するために、以下模式的に図面に記載する。
まず、f1−1として、第一の画像(A)の画像データを取得するために、第一の画像(A)の原画像である第一の画像データを編集部(U2)が作成するか、又はあらかじめ作成及び/又は取得した第一の画像データを入力部(U1)より取得し、編集部(U2)を介して記憶部(U3)に格納する。なお、本実施形態においては、入力部(U1)で取得する場合と、編集部(U2)で作成する場合を併せて説明する際には、入力部(U1)及び編集部(U2)により作成するとして説明する。
第一の画像(A)は、基材(1)に対して正面から観察した際に視認可能となる図柄のことである。図2(a)においては、三つのダイヤの図形としているが、それに限らず、文字、数字及び模様等とすることが可能である。
入力部(U1)により取得した原画像が、ビットマップによる2値画像データ又はアウトライン図形データ(以下「デジタルデータ」という。)でない場合には、デジタルデータへ変換する必要があるため、編集部(U2)においては、原画像をデジタルデータへ変換するデータ変換手段を更に有することが必要となる。
よって、入力部(U1)は、第一の画像(A)の原画像である第一の画像データを取得する入力部(U1)と、取得した原画像をデジタルデータに変換するデータ変換手段を一つの機器内に備えたスキャナ等の読取機器、デジタルカメラ、ビデオカメラ及び携帯端末等の撮像機器であることが好ましい。データ変換手段を備えた入力部(U1)とすることで、画像の取得とデジタルデータへの変換を一度に行うことが可能となる。
また、あらかじめ作成及び/又は取得した画像データを第一の画像データとして用いる場合、入力部(U1)は、あらかじめ作成及び/又は取得した原画像を、既にデジタルデータとして記録してあるCD−ROM、FD及びUSBメモリ等の情報記録媒体からデジタルデータを取得するMOドライブ、CD−ROMドライブ、FDドライブ及びイメージカードリーダ等の入出力機器としても良い。
この場合の原画像は、既にデジタルデータ化されているため、編集部(U2)を介す必要はない。よって、入力部(U1)により取得した後、編集部(U2)を介すことなく、記憶部(U3)に格納する。いずれの作成及び/又は取得方法においても、記憶部(U3)に格納した第一の画像データは、複数の画素から成る。
画素とは、格子状に配列して画像を形成する点のことであり、色に関する情報を数値として持つものである。画素により画像を形成する画像形式は、TIFF形式又はBMP形式等、画素により画像を形成可能であれば画像形成に制限はない。データ上において、画像データは複数の画素から構成されているが、出力物上においては複数の画線から構成される。
次に、f1−2として、第一の背景画像(B)の画像データを取得するために、第一の背景画像(B)の原画像である第一の背景画像データを編集部(U2)により作成するか、又は外部から通信インタフェース(U5)を介し、第一の背景画像データとして入力部(U1)より取得し、編集部(U2)を介して記憶部(U3)に格納する。格納した第一の背景画像データは、複数の画素から成る。
第一の背景画像(B)は、第一の画像(A)上に重ねて形成する画像である。図1に示すように、正面から観察した際には、後述する第二の画像(C)を構成する画線は、第一の背景画像(B)により隠蔽され、基材(2)を傾けて観察した際には、前述した第一の画線(3)が、第一の背景画像(B)の死角となることで、視認可能となる画像が変化する。
よって、第一の背景画像(B)は、同一領域に配置した第一の画像(A)及び後述する第二の画像(C)を隠蔽するために、第一の画像データ及び第二の画像データよりも大きい画像データとする。
大きい画像データとは、例えば、第一の画像データの大きさ(縦×横)を500ピクセル×1400ピクセルとし、第二の画像データの大きさを600ピクセル×1300ピクセルの場合、第一の背景画像データの大きさは、縦横いずれも第一の画像データ及び第二の画像データのピクセル数よりも大きく設定することである。前述の数値とした場合には、第一の背景画像データの大きさは、縦を600ピクセルよりも大きく設定し、横を1400ピクセルよりも大きく設定する。
なお、第一の背景画像(B)は、図2(a)においては、長方形の図形としているが、
第一の画像データ及び第二の画像データよりも大きい画像データであればそれに限らず文字、数字及び模様等とすることが可能である。
次に、f1−3として、第二の画像(C)の画像データを取得するために、第二の画像(C)の原画像である第二の画像データを編集部(U2)により作成するか、又は外部から通信インタフェース(U5)を介し、第二の画像データとして入力部(U1)より取得し、編集部(U2)を介して記憶部(U3)に格納する。格納した第二の画像データは、複数の画素から成る。
第二の画像(C)は、基材(1)に対して斜め方向から観察した際に視認可能となる図柄のことである。図2(a)においては、文字「NPB」を図柄としているが、それに限らず数字及び模様等とすることが可能である。
次に、基本線データ取得ステップf2として、第一の画像(A)、第一の背景画像(B)及び第二の画像(C)を構成する画線の基準となる万線状の画線に対して、画像ごとに位置座標、ピッチ及び配列方向を設定し、基本線データを入力部(U1)又は編集部(U2)で作成する。作成した基本線データは、記憶部(U3)に格納する。
まず、f2−1として、第一の画像(A)を構成する画線の基準となる万線状の画線に対して、位置座標、ピッチ及び配列方向を設定する。
第一の画像(A)を構成する画線のピッチ(D1)は、基材(1)上への出力方法及び第一の画線(3)の画線幅(W1)を考慮し、第一の画線(3)の画線幅(W1)と、後述する第二の画線(4)の画線幅とを足した画線幅以上1000μm以下の範囲内で適宜設定する。
形成体(S)は、観察角度の変化により、第一の画線(3)が他の画線の陰となることで、視認可能となる画像が変化する。よって、ピッチ(D1)を、第一の画線(3)の画線幅(W1)と第二の画線(4)の画線幅とを足した画線幅未満で設定した場合、観察角度の変化により視認可能となる画像を明瞭に視認することができず、好ましくない。
反対に、ピッチ(D1)を、1000μmを超えて設定した場合、第一の画像(A)を構成する複数の第一の画線(3)が一つずつ目視により区別して視認される。よって、正面から視認される第一の画像(A)のディテール(細部)を構成することができず、意匠性が低下することから、好ましくない。
なお、ピッチ(D1)は、一定ピッチに限らず、前述したピッチの範囲内であれば、一部異なるピッチで設定することも可能である。
第一の画線(3)の配列方向は、万線状の画線が並行となるように、任意の方向に設定する。
図5は、基本線データを示す模式図であり、第一の基本線データ(L1)は、第一の画像(A)の基本線データである。図示しない第一の画線(A)を構成する画線の基準となる万線状の画線に対して、位置座標を設定する前に、まず、後述する第二の基本線データ(L2)及び第三の基本線データ(L3)と共通する位置の少なくとも三点を、各基本線データにおけるそれぞれの基準点として設定する。図5においては、各基本線データ(L1、L2及びL3)の四隅のうち、三点(P1、P2及びP3)を基準点として設定する。
基準点を設定する際には、まず、各画像データから、任意の画像データを一つ選ぶ。図5においては、第一の基本線データ(L1)を選び、次に、基準点である任意の三点を選ぶ。なお、各基本線データは、複数の画素から構成されていることから、点とは、一つの画素のことをいう。
第一の基本線データ(L1)においては、まず、一つ目の基準点(P1)をゼロ点(0,0)の座標として設定した後、一つ目の基準点(P1)からX方向へ、X1の距離にある点を二つ目の基準点(P2)とし、さらに、一つ目の基準点(P1)からY方向へ、Y1の距離にある点を三つ目の基準点(P3)とした。このように、P1、P2及びP3を、第一の基本線データ(L1)における基準点に設定する。次に、第一の基本線データ(L1)を構成する複数の画素に対して、ゼロ点(0,0)に対する距離を示す、固有の位置情報である位置座標を設定する。
なお、TIFF形式、JPEG形式及びBMP形式等の一般的な画像形式では、画素が必ず縦横の直交する二つの軸方向に沿って平行に配置されるという特性を持つ。よって、各画像データを構成する全ての画素が、必ず縦横の直交する二つの軸方向に沿って平行に配置されるという特性を持つ場合は、各画像データの縦横方向が自明であり、回転を考慮する必要がないため、基準点は、各基準線データにおいて、それぞれ一点のみで良い。以下、本発明においては、各基準線データが同じ大きさであり、三つの基準点を有した構成として説明する。
次に、f2−2として、第一の背景画像(B)を構成する画線の基準となる万線状の画線に対して、位置座標、ピッチ及び配列方向を設定する。
第一の背景画像(B)を構成する画線のピッチ(D2)は、基材(1)上への出力方法及び第二の画線(4)の画線幅(W2)を考慮し、第一の画線(3)の画線幅(W1)と第二の画線(4)の画線幅(W2)とを足した画線幅以上1000μmの範囲内で適宜設定する。
なお、第一の画線(3)と第二の画線(4)を異なるピッチに設定することは可能であるが、同じピッチに設定することが好ましい。同じピッチに設定することで、観察角度の変化により視認される画像が鮮明に視認可能な形成体(S)を作成することができる。以下、第一の画線(3)と第二の画線(4)のピッチを、同じピッチに設定したとして説明する。
第二の画線(4)の配列方向は、f2−1で設定した第一の画像(A)を構成する画線と同じ方向に設定する。
次に、第一の基本線データ(L1)で設定した三つの基準点と共通する位置に、図5に示す第二の基本線データ(L2)の基準点を設定する。第二の基本線データ(L2)においては、まず、一つ目の基準点(P1)をゼロ点(0,0)の座標として設定した後、第一の基本線データ(L1)と同様に、一つ目の基準点(P1)からX方向へ、X1の距離にある点を二つ目の基準点(P2)とする。
さらに、一つ目の基準点(P1)からY方向へ、Y1の距離にある点を三つ目の基準点(P3)とした。各基本線データにおける、三つの基準点間の距離は、同一である。このように、各基本線データにおける共通する位置の任意の三つの点を、それぞれの基準点とする。なお、第二の基本線データ(L2)を構成する複数の画素においても、ゼロ点(0,0)に対する距離を示す固有の位置情報である位置座標を設定する。
次に、f2−3として、第二の画像(C)を構成する画線の基準となる万線状の画線に対して、位置座標、ピッチ及び配列方向を設定する。
第二の画像(C)を構成する画線のピッチ(D3)は、第二の画線(4)を配置するピッチ(D2)と同様に、第一の画線(3)の画線幅(W1)と第二の画線(4)の画線幅(W2)を足した画線幅〜1000μmの範囲内で適宜設定する。以下、第三の画線(6)のピッチ(D3)は、第一の画線(3)及び第二の画線(4)のピッチと、同じピッチに設定したとして説明する。
第三の画線(6)の配列方向は、f2−1及びf2−2で設定した第一の画像(A)及び第一の背景画像(B)を構成する画線と同じ方向に設定する。
次に、第一の基本線データ(L1)で設定した三つの基準点と共通する位置に、図5に示す第三の基本線データ(L3)の基準点を設定する。なお、基準点については、前述した第二の基本線データ(L2)と同様に設定する。第三の基本線データ(L3)を構成する複数の画素においても、ゼロ点(0,0)に対する距離を示す固有の位置情報である位置座標を設定する。
次に、マスク処理ステップf3として、編集部(U2)で、各画像データと各画像データに対応した基本線データを重ねて、各画像データと重複しない基本線画像データを除去してマスク画像データを作成する。作成したマスクデータは、記憶部(U3)に格納する。
図6は、マスク処理ステップを示す模式図である。まず、f3−1として、第一の画像データ(iA)と、第一の画像データ(iA)に対応した基本線データである第一の基本線データ(L1)を重ねる。次に、第一の画像データ(iA)と重複しない基本線画像データ(L1)を除去して第一マスク画像データ(i3)を作成する。マスク処理を行うことで、第一の画像データ(iA)は、複数の画線で構成された画像データである第一マスク画像データ(i3)となる。
次に、f3−2として、第一の背景画像データと、第一の背景画像データに対応した基本線データである第二の基本線データ(L2)を重ねる。次に、第一の背景画像データと重複しない第二の基本線画像データ(L2)を除去して第二マスク画像データを作成する。同様に、f3−3として、第二の画像データと、第二の画像データに対応した基本線データである第三の基本線データ(L3)を重ねた後、第二の画像データと重複しない第三の基本線画像データ(L3)を除去して第三マスク画像データを作成する。
次に、形状設定ステップf4として、編集部(U2)で、第一の画像(A)、第一の背景画像(B)及び第二の画像(C)を構成する第一の画線(3)、第二の画線(4)及び第三の画線(6)の画線幅及び画線高さをそれぞれ編集部(U2)により設定する。設定した、各画線の画線幅及び画線高さのデータは、記憶部(U3)に格納する。
まず、f4−1として、第一の画像(A)を構成する第一の画線(3)の画線幅(W1)及び画線高さ(h1)を設定する。
図7(a)は、第一の画線(3)を示す模式図である。なお、図7においては、詳細に説明するために、基材(1)も踏まえて模式的に図示しているが、実際には、デジタルデータとして記憶部(U3)内に格納されている。
画線幅(W1)及び画線高さは、ピッチ(D1)及び他の画線の画線幅を考慮し、画線幅(W1)25〜500μm、画線高さ(h1)30μm以下の範囲内で適宜設定する。
第一の画線(3)の画線幅(W1)を25μm未満で設定した場合、一般的な印刷方式では再現しづらく、また、正面から視認可能となる第一の画像(A)を識別しにくいことから、好ましくない。
反対に、第一の画線(3)の画線幅(W1)を、500μmを超えて設定した場合と、第一の画線(3)の画線高さ(h1)を、30μmを超えて設定した場合は、観察角度の変化により視認可能となる画像を形成する画線を、500μm以上の画線高さで基材(1)上に形成しなくてはならず、画線が欠けて形成体(S)の耐久性が低下することから、好ましくない。
次に、f4−2として、第一の背景画像(B)を構成する第二の画線(4)の画線幅(W2)及び画線高さ(h2)を設定する
図7(b)は、第二の画線(4)を示す模式図である。画線幅(W2)は、ピッチ(D2)と、第一の画線(3)及び後述する第三の画線(6)の画線幅を考慮し、50〜900μmの範囲内で適宜設定する。
第二の画線(4)の画線幅(W2)を50μm未満に設定した場合、用いる色材によっては十分、かつ、安定した画線高さ(h2)を基材(1)上に形成しづらいことから、好ましくない。また、画線幅(W2)が900μmを超えて設定した場合、第二の画線(4)と重ならない位置に第一の画線(3)が配置できる範囲が狭くなり、第一の画線(3)の画線幅(W1)が狭くなる。よって、第二の画像(C)が視認しづらく、好ましくない。
盛り上がりを有する第二の画線(4)の画線高さ(h2)は、ピッチ(D2)及び第一の画線(3)及び後述する第三の画線(6)の画線幅及び画線高さを考慮し、画線高さ(h2)20〜120μmの範囲内で適宜設定する。
第二の画線(4)の画線高さ(h2)を20μm未満に設定した場合、観察角度を変化させた際に第一の画線(3)を十分に遮蔽できず、好ましくない。また、画線高さ(h2)を、120μmを超えて設定した場合、第一の画像(A)が視認しづらく、基材(1)上に第二の画線(4)の形状を、安定して保持することが難しいという理由から、好ましくない。
次に、f4−3として、第二の画像(C)を構成する第三の画線(6)の画線幅(W3)及び画線高さ(h3)を設定する。
図7(c)は、第三の画線(6)を示す模式図である。画線幅(W3)及びピッチ(D3)は、第一の画線(3)及び第二の画線(4)の画線幅及びピッチを考慮し、第二の画線(4)と同様に、画線幅(W3)50〜900μmの範囲内で適宜設定するが、第二の画線(4)の画線幅(W2)以下に設定する。
第三の画線(6)の画線幅(W3)が、下に配置する第二の画線(4)の画線幅(W2)を超える場合、観察角度の変化により視認可能となる画像が視認しづらくなり、好ましくない。
盛り上がりを有する第三の画線(6)の画線高さ(h3)は、ピッチ(D3)と、第一の画線(3)及び第二の画線(4)の画線幅及び画線高さを考慮し、第二の画線(4)と同様に、画線高さ(h3)20〜120μmの範囲内で適宜設定する。
次に、色設定ステップf5として、編集部(U2)で第一の画線(3)、第二の画線(4)及び第三の画線(6)を形成する色材の色を設定する。設定した各画線の色データは、記憶部(U3)に格納する。
まず、f5−1として、図7(a)に示した第一の画線(3)を形成する第一の色材の色を設定する。
第一の色材は、特に限定されないが、明度が低く、基材(1)の表面色と明確に区別することができる色に設定することが望ましい。例えば、用いる基材(1)の表面色を白色又はクリーム色等の明度の高い色とし、第一の色材をイエローのように明度の高い色とした場合、基材(1)の表面色及び第一の色材が区別しづらいことから、好ましくない。
次に、f5−2として、図7(b)に示した第二の画線(3)を形成する第二の色材の色を設定する。
第二の色材は、特に限定がないが、基材(1)を傾けて観察して第一の画線(3)が第二の画線(4)の陰になった際に、第一の画線(3)を十分に遮蔽することができるように、第一の画線(3)に設定した第一の色材よりも明度の低い色材に設定することが望ましい。
次に、f5−3として、図7(c)に示した第三の画線(6)を形成する第三の色材の色を設定する。
第三の色材は、第三の画線(6)の下に配置する第二の画線(4)を形成する第二の色材と同じ色に設定する。第二の色材と第三の色材を同じ色に設定することで、正面から視認した際に、第二の画線(4)及び第三の画線(6)を区別して視認することができず、第二の画像(C)が識別不可能となる。
また、他の色材の設定としては、第三の色材を半透明の色材とし、第二の色材を第三の色材よりも明度の低い色材に設定する。例えば、第二の画線(4)を形成する第二の色材を黒色の色材に設定した場合、第三の画線(6)を形成する第三の色材を透過性を有するシアン色の色材に設定する。それにより、透過性を有するシアン色の第三の色材は下に配置した黒色の第二の色材に透過吸収されて、正面からは黒色として視認可能となる。
なお、本実施形態における透過吸収とは、半透明の色材の下に、半透明の色材よりも明度の低い色材を形成し、その二つの色材を正面から視認した際に、明度の低い色材により、半透明の色材が識別不可能となることをいう。
よって、第三の色材を半透明の色材に設定し、第二の色材を第三の色材よりも明度の低い色材に設定することで、前述した同じ色の色材とした場合と同様に、正面から視認した際に、第二の画線(4)及び第三の画線(6)を区別して視認することができず、第二の画像(C)が識別不可能となる。以下、本実施形態は、第三の色材を半透明の色材に設定し、第二の色材を第三の色材よりも明度の低い色材に設定したとして説明する。
次に、画像データ作成ステップf6として、形状設定ステップf4及び色設定ステップf5で設定した条件である、第一の画線(3)、第二の画線(4)及び第三の画線(6)の画線幅、画線高さ及び色材をもとに、編集部(U2)で第一の画線データ、第二の画線データ及び第三の画線データを作成する。作成した、各画線データは、記憶部(U3)に格納する。
まず、f6−1として、f4−1及びf5−1で設定した第一の画線(3)の画線幅、画線高さ及び色材をもとに、f3−1で作成した第一マスク画像データ(i3)に適用して所定の位置に配置処理を行うことで、第一の画線データ(i3)を作成する。図8(a)は、作成した第一の画線データ(i3)を示す模式図である。画線幅、画線高さ及び色材の適用は、別途、画線設定用の設定パラメータ情報としてその都度設定値を入力するか、又は設定パラメータ保管テーブル等から適時設定値を呼び出して作成し、第一の画線データ(i3)を記憶部(U3)に格納する。
なお、形成体(S)を作成する場合、ほとんどの印刷方式において、形成体(S)と画線データ間では、ドットゲインによる画線面積率又は網点面積率の上昇が見込まれることから、画線データの作成にあたっては、あらかじめそれを見込んだ画線面積率又は網点面積率にする必要があることはいうまでもない。
次に、f6−2として、f4−2及びf5−2で設定した第二の画線(4)の画線幅、画線高さ及び色材をもとに、f3−2で作成した第二マスク画像データに適用して所定の位置に配置処理を行うことで、第二の画線データ(i4)を作成する。図8(b)は、作成した第二の画線データ(i4)を示す模式図である。作成した、第二の画線データ(i4)は、記憶部(U3)に格納する。
次に、f6−3として、f4−3及びf5−3で設定した第三の画線(6)の画線幅、画線高さ及び色材をもとに、f3−3で作成した第三マスク画像データに適用して所定の位置に配置処理を行うことで、第三の画線データ(i6)を作成する。図8(c)は、作成した第三の画線データ(i6)を示す模式図である。作成した、第三の画線データ(i4)は、記憶部(U3)に格納する。
次に、第一の画像(A)、第一の背景画像(B)及び第二の画像(C)を積層して配置するために、積層出力ステップf7として、印刷部(U6)でf6で作成した各画線データをもとに、基材(1)上に画線を形成する。
基材(1)は、上質紙、コート紙、カード及びシート状のプラスチック等、公知の印刷が可能なものを用いる。本発明においては、フラットな基材(1)に対して、盛り上がりを有する色材を複数積層することで、凹凸を付与する。よって、従来のように、基材(1)に、あらかじめエンボス、すき入れ又は凹版印刷等で凹凸を付与する必要がないことから、用いる基材(1)に特段の限定はなく、従来よりも設計及び出力機の幅が広がる。
まず、第一の画線データ(i3)を、基材(1)上にデジタル印刷方式により印刷して万線状の第一の画線(3)を形成する。
次に、第二の画線データ(i4)を、基材(1)上に印刷した万線状の第一の画線(3)と重ならない位置に、印刷して万線状の盛り上がりを有する第二の画線(4)を形成する。印刷方式は、前述した第一の画線(3)と同様の印刷方式とする。
次に、第三の画線データ(i6)を、万線状の第二の画線(4)の上に印刷して万線状の第三の画線(6)を形成する。印刷方式は、第二の画線(4)と同様に、第三の画線(6)を盛りのある画線として形成することが可能な印刷方式であれば、特に限定されるものではない。
なお、盛り上がりを有する第二の画線(4)及び第三の画線(6)が、一度の印刷で所望の画線高さとならない場合には、所望の高さとなるまで複数回、同一箇所に印刷を繰り返して画線を形成する。
図9は、前述した作成方法により形成した形成体(S)であり、これらの形成体(S)における視認状態について説明する。図9(a)は、形成体(S)を、基材(1)に対して正面である第一の観察角度(E1)から観察した際の模式図であり、図9(b)は、図9(a)における一部の領域(P)の拡大図であり、図9(c)は、図9(b)におけるX−X´を切断した断面図である。
なお、形成体(S)に対する第一の観察角度(E1)と、基材(1)に対する第一の観察角度(E1)は、同一であることから、以下の説明において、基材(1)は省略し、形成体(S)を第一の観察角度(E1)から観察したとし、他の観察角度も同様として説明する。
第一の画線(3)は、積層して配置した第二の画線(4)及び第三の画線(6)と重ならない位置に配置していることから、第一の観察角度(E1)から観察した場合、視認可能となり、第一の画像(A)が視認される。積層して配置した、第二の画線(4)は低明度の第二の色材で形成され、第三の画線(6)は有色透過性の第三の色材で形成している。また、第二の画線(4)の画線幅は、第三の画線(6)の画線幅以上で形成される。
よって、下層に形成された第二の画線(4)は、上層に形成された第三の画線(6)の色材が透過吸収され、二つの画線(4及び6)を肉眼で区別して視認することが不可能となり、下層に配置した複数の第二の画線(4)から成る第一の背景画像(B)が視認される。
以上、形成体(S)を第一の観察角度(E1)から観察した場合、図9(a)に示すように、第一の画像(A)及び第一の背景画像(B)が視認可能となるが、第一の画像(A)と第一の背景画像(B)の面積率の差及び/又は色相の差により、第一の画像(A)が有意的に視認される。以下、本実施形態においては、所定の観察角度において、二つの画像(例えば、画像Aと画像B)が視認可能となる場合においても、面積率の差及び/又は色相の差により、一方の画像(例えば、画像A)が有意的に視認される場合、その所定の観察角度においては、一方の画像(例えば、画像A)が視認されるとして説明する。
なお、本発明でいう色相とは「赤みを帯びた色」又は「青みを帯びた色」等の画像全体の相対的な色みの違いを区別するものであって、「赤」又は「青」等の絶対的な色を指すものではない。
次に、形成体(S)を傾けて観察した場合について説明する。図10(a)は、形成体(S)を、基材(1)に対して斜めである第二の観察角度(E2)から観察した際の模式図であり、図10(b)は、図10(a)における一部の領域(P)の拡大図であり、図10(c)は、図10(b)におけるX−X´を切断した断面図である。なお、第二の観察角度(E2)とは、形成体(S)に対して第一の方向(X1)と同じ方向から観察した際の観察角度である。
図10(c)に示すように、形成体(S)を第二の観察角度(E2)から観察した場合、第一の画線(3)は、積層して配置した第二の画線(4)及び第三の画線(6)の死角となり遮蔽されることから視認されず、複数の第二の画線(4)から成る第一の背景画像(B)が視認される。
第三の画線(6)は、盛り上がりを有して第二の画線(4)上に積層して配置することから、基材(1)の表面色の一部は、第三の画線(6)を形成する第三の色材により透過吸収されて、第三の画線(6)の色相で視認され、複数の第三の画線(6)から成る第二の画像(C)が視認される。
また、第三の画線(6)が積層されない第二の画線(4)は、第二の画線(4)と第二の観察角度(E2)から見て後方(図10(c)、左側)の第二の画線(4)が重なり合うことなく、第二の画線(4)の濃度と色相を保っている。
以上、形成体(S)を第二の観察角度(E2)から観察した場合、図10(a)に示すように、第二の画像(C)及び第一の背景画像(B)が視認可能となるが、第二の画像(C)と第一の背景画像(B)の面積率の差及び/又は色相の差により第二の画像(C)が視認される。
本発明の作成方法により得られる形成体(S)は、フラットな基材(1)に対して盛り上がりを有するインキから成る画線を印刷している。観察角度の変化により潜像画像が出現する形成体(S)を、デジタル印刷機を用いたオンデマンド印刷により作成することが可能となる。
また、盛り上がりを有する画線を複数積層して配置し、その積層した画線を傾けた際に生じる死角を利用することで、第一の画像(A)と第二の画像(C)が変化して視認される。よって、従来凹凸形状により生じる死角を利用した印刷物は、基材(1)自体又は基材(1)上に、あらかじめ、エンボス、すき入れ又は凹版印刷等で凹凸を形成しておくことが必要であったが、その必要がないことから、画像のデザイン、形状及び色等を、ユーザが全て自由に作成することが可能となる。
なお、前述した作成方法からなる形成体(S)においては、観察角度の変化による画像の出現という一次認証に加え、更に二次認証を付与することも可能である。
従来の偽造防止印刷物も、機能性材料を含む色材を用いることで、その機能性材料が有する機能性が付与された二次認証が可能な印刷物は存在するが、盛り上がりを有しない印刷画線は、画線内に機能性材料を多く含むことができず、機能性材料が有する機能性の効果を十分に発揮することができないという問題があった。
しかしながら、本発明の作成方法により得られる形成体(S)は、盛り上がりを有する画線から成る構成であることから、各画線(3、4及び6)を形成する色材に、機能性材料を十分に含有させることが可能となる。よって、機能性材料が有する機能性に対応した、二次認証により真偽判別を行うことが可能となる。
さらに、本発明の形成体(S)は、積層構造であることから、各層を構成する色材に互いに異なる機能性材料を含むことも可能となり、より偽造防止効果が向上した形成体(S)となる。
次に、一次認証に加え、二次認証が付与された形成体(S)の作成方法について説明する。
形成体(S)に二次認証を付与する場合には、色設定ステップf5において、前述した色材の色の設定に加え、各画線(3、4及び6)を形成する色材に含ませる機能性材料の設定を行う。
機能性材料とは、蛍光顔料、燐光顔料、蓄光顔料、フォトクロミック顔料、赤外反射・吸収材料、磁性材料及び各種電子線による作用を備えた材料等、公知の機能性を有する材料のことである。機能性材料を含む場合、形成体(S)に対する、観察角度の変化による画像のチェンジ効果に加えて、各種の機能性を追加することができる。
例えば、f5−2において、第二の画線(4)を形成する第二の色材に赤外励起可視発光材料を含ませる設定をし、f5−3において、第三の画線(6)に紫外励起可視発光材料を含ませる設定をした場合、作成方法により得られる形成体(S)は、第一の観察角度(E1)から第一の画像(A)が視認され、赤外波長光を照射した際には、可視発光した第一の背景画像(B)内に第一の画像(A)が視認される。また、第二の観察角度(E2)から第二の画像(C)が視認され、紫外波長光を照射した際には、第一の背景画像(B)内に可視発光した第二の画像(C)が視認される。
また、他の構成としては、f5−3において、第三の画線(6)を形成する第三の色材に磁性材料を含ませる設定をした場合、観察角度の変化による真偽判別に加え、公知の磁気ヘッドを有する読取装置により磁気強度を読み取ることで、機械読取により形成体(S)の真偽判別を行うことが可能となる。
以上、本発明の形成体(S)の作成方法は、色設定と同時に機能性材料の設定を行うことで、ユーザが所望の機能性(二次認証)を、簡易に追加することが可能となる。
なお、本発明の形成体(S)の印刷方法は、オンデマンド印刷とする。オンデマンド印刷により作成することで、観察角度の変化により視認可能となる第一の画像(A)及び第二の画像(C)を、形成体(S)ごとに異なる画像として印刷することが可能となる。すなわち、第一の画像(A)及び第二の画像(C)を可変画像として扱うことが可能となる。
さらに、基材(1)上に積層して配置する各画線(3、4及び6)を、形成体(S)の個体ごとに異なる色材を用いて形成することが可能となる。前述のとおり、本実施形態の形成体(S)は、各画線(3、4及び6)を形成する色材のうち、少なくとも一つの色材が、一つの機能性材料を含むことも可能である。よって、異なる色材を用いて形成可能となることで、形成体(S)に機能性を可変要素として付与することが可能となる。
また、本発明の形成体(S)をデジタル印刷機(M)により作成することで、傾けるという一次認証により視認可能な画像と、機能性という二次認証により視認可能な画像を、一つの形成体(S)にいずれも可変要素として付与することが可能となる。
なお、第一の画像(A)及び第二の画像(C)を可変画像として、形成体(S)を作成する場合、画像データ取得ステップf1において、作成する複数の第一の画像データを、互いに異なる画像とし、複数の第一の背景画像データを互いに異なる画像とし、更に、複数の第二の画像データを、互いに異なる画像として入力部(U1)又は編集部(U2)で作成する。
また、機能性を可変要素とする場合には、色設定ステップf3において、前述した色の設定に加え、各画線(3、4及び6)を形成する色材に含ませる機能性材料を、複数の形成体(S)ごとに異なる機能性材料を設定する。
さらに、積層出力ステップf7において、画像データ取得ステップf1において作成した複数の画像データの中から所望の画像データを選び、印刷部(U4)から、所望の画像データをもとに異なる画像を複数印刷する。作成した複数の形成体(S)は、所望の画像が可変情報として付与された印刷物となる。
以上、本発明の形成体(S)の作成方法は、複数の形成体(S)を作成する際に、
画像データ取得ステップf1において複数の画像データを作成し、色設定ステップf5において、基材(1)ごとに異なる機能性材料を色材に含ませる設定をし、さらに、積層出力ステップf7において、画像データ取得ステップf1において所望の画像データを選び印刷することで、簡易に、画像及び機能性を可変要素として付与することが可能となる。よって、一次認証により視認可能な画像に加え、二次認証においても、ユーザの所望の機能性を自由に可変要素として形成体(S)に付与することが可能となる。
なお、前述した本発明の作成方法により作成した形成体(S)は、いずれも二層構成であったが、一層構成である第一の背景画像(B)を、N個(Nは二以上の整数)の背景画像が積層されたN層構成の形成体(A)についても、作成することが可能である。
図11は、本発明の作成方法により得られた複数の背景画像が積層された形成体(S)を示す図であり、一例として、背景画像を、第一の背景画像(B)と第二の背景画像(D)を積層した二層構成としている。図11(a)は、新たに積層する第二の背景画像(D)を説明する平面図であり、図11(b)は、図11(a)における一部の領域(P)の拡大図であり、図11(c)は、図11(b)におけるX−X´を切断した断面図である。
第二の背景画像(D)は、前述した第一の背景画像(B)とともに、基材(1)を傾けて観察した際に、第一の画像(A)を遮蔽する画像のことであり、盛り上がりを有する第四の画線(11)が、規則的に第一の方向(X1)に複数配置されて成る。
前述のとおり、本発明においては、盛り上がりを有する画線を積層して印刷することで、形成体(S)を作成する。しかしながら、盛り上がりを有する画線の印刷方法は、印刷方式及び印刷装置が限定される。複数の背景画像を備えた構成とすることで、前述した背景画像が一層構成よりも、各画線の盛り上がりを低く設定することが可能となる。よって、印刷方式及び印刷装置の限定が少なくなる。
また、前述のとおり、色設定ステップf5において、各画線を形成する色材に機能性材料を含ませることで、観察角度の変化による画像のチェンジ効果に加え、各種の機能性を追加することを可能としている。よって、複数の背景画像を備えた構成とすることで、より多くの機能性を付与することが可能となる。次に、複数の背景画像が付与された形成体(S)の作成方法について説明するが、一層の背景画像から成る形成体(S)の作成方法と重複する点については、省略する。
まず、画像取得ステップf1において、更にN個の背景画像の原画像である、N個の背景画像データを取得又は作成する。例えば、背景画像が三個の場合、Nは三となり、前述したf1−3の次に、更にf1−4において、第二の背景画像データを作成し、f1−5において、第三の背景画像データを作成する。なお、各背景画像データの作成方法については、f1−2において前述した第一の背景画像(B)と同様であることから、説明を省略する。
第一の背景画像(B)をN層構成とする場合、それぞれの背景画像を構成する画線の位置座標、ピッチ及び配列方向は、全ての背景画像において同じに設定する。同じに設定することで、観察角度の変化により視認される画像が鮮明に視認可能な形成体(S)を作成することができる。よって、全ての背景画像を構成する画線の基準となる基本線データは、全ての背景画像において同じ基本線データを用いることから、N層構成となった場合、複数の背景画像において、それぞれ基本線データ取得ステップ及びマスク処理ステップを行う必要はない。
次に、形状設定ステップf4において、更に、N個の背景画像データからN個の背景画像データを構成する画線の画線幅及び画線高さをそれぞれ設定する。N個の背景画像データを構成する画線の画線幅は、全て同じ画線幅に設定する。同じ画線幅に設定することで、観察角度の変化により視認される画像が鮮明に視認可能な形成体(S)を作成することができる。
N個の背景画像を構成する、盛り上がりを有する画線の画線高さは、f4−2において、前述した第二の画線(4)の画線高さ(h2)と同様の範囲内で適宜設定するが、複数の背景画像を追加する場合、それぞれの背景画像を構成する画線の画線高さは、前述した範囲内において低く(例えば、20μm)設定することが好ましい。低く設定することで、複数積層した背景画像を形成する各画線の形状を、安定して保持することが可能となる。
次に、色設定ステップf5において、N個の背景画像を構成する画線の色を設定する。N個の背景画像を構成する画線の色は、基材(1)と異なる色であれば特に限定されないが、前述した第一の背景画像(B)と同様に、基材(1)を傾けて観察して第一の画線(3)が第二の画線(4)の陰になった際に、第一の画線(3)を十分に遮蔽することができるように、第一の画線(3)に設定した第一の色材よりも明度の低い色材に設定することが望ましい。
なお、f5−2において、第三の色材を、第三の画線(6)の下に配置する第二の画線(4)を形成する第二の色材と同じ色に設定するとしたが、複数の背景画像を追加した場合、第三の画線(6)の下に、第四の画線、・・・第Nの画線が積層した構成となる。その際には、第三の色材と、他の背景画像を構成する画線を形成する色材を全て同じ色に設定する。
また、他の色材の設定としては、第三の色材を半透明の色材とし、他の背景画像を構成する画線を形成する色材を第三の色材よりも明度の低い色材に設定する。例えば、第三の画線(6)を形成する第三の色材を、透過性を有するシアン色の色材に設定した場合、他の背景画像を構成する画線を形成する色材を、明度の低い黒色、紺色及び暗緑色等に設定する。それにより、透過性を有する第二の画像(C)を構成する画線を形成する色材は、下に配置した明度の低い色材に透過吸収されて、正面からは明度の低い色として視認可能となる。
なお、形成体(S)に機能性を追加する場合には、f5−Nの色設定において、前述した色の設定に加え、N個の背景画像を構成する画線を形成する色材に含ませる機能性材料の設定を行う。
次に、画線データ作成ステップf6において、更にf6−Nとして、f4−N及びf5−Nで設定した条件をもとに、N個の背景画像ごとにN個の画線データを作成する。作成した、N個の画線データは、記憶部(U3)に格納する。
次に、積層出力ステップf7において、印刷部(U4)により第三の画線データ(6i)を印刷して万線状の第三の画線(6)を形成する前に、N個の背景画像ごとに作成したN個の画線データを、基材(1)上における万線状の第一の画線(3)と重ならない位置に順次印刷して、万線状の画線が積層したN層構成の背景画像を形成する。なお、N個の背景画像の印刷方法については、前述した第二の画線データ(4i)の印刷方法と同様とする。
N層構成の背景画像の最上部となる第Qの画線データを印刷して万線状の第Qの画線を形成した後、第三の画線データを第Qの画線上に公知の印刷方法により出力して万線状の第三の画線(6)を形成する。
作成した形成体(S)は、前述した形成体(S)と同様に、基材(1)に対して正面である第一の観察角度(E1)から観察した際には、第一の画像(A)が視認され、形成体(S)を、基材(1)に対して斜めである第二の観察角度(E2)から観察した際には、第二の画像(C)が視認される。
以上、前述した本発明の作成方法により得られる形成体(S)は、いずれも潜像画像を有する構成であったが、本発明の作成方法により、従来の凹版印刷物と同様の触感を有する印刷物を簡易に作成することも可能である。
図12は、本発明の作成方法により得られる触感を有する形成体(S´)を説明する模式図である。前述の作成方法と同様に、基材(1)上に、盛りを有する万線状の画線から成る複数の画像(B、C及びD)を、積層して配置する。図12においては、一つの画像(図12においては、人物の目)である形成体(S´)を複数の画像(B、C及びD)を積層し、作成した。なお、形成体(S´)は、凹版印刷物と同様の印刷物を作成することを目的としていることから、観察角度の変化により出現する潜像画像を有さない。よって、各画像を構成する画線の幅、画線高さ及び配列方向に特段の限定はない。
作成された形成体(S´)は、図12の拡大図に示すように、凹版印刷物と同様の意匠性、立体的な奥行き感及び触感を有しているが、印刷方式をオンデマンド印刷とした場合、形成体(S´)のデザインをユーザが自由に変更することが可能となる。さらには、従来の凹版印刷は、余剰インキが多く非常にコストがかかるという問題があったが、デジタル印刷方式においては余剰インキが発生しない。よって、本発明の作成方法により、低コストで凹版印刷と同様の形成体(S)を作成することが可能となることはいうまでもない。
以上、本発明に係る実施例に基づいて実施の形態を説明したが、上記実施例に限定されることなく特許請求の範囲記載の技術思想の範囲内で、更にいろいろな実施例があることはいうまでもない。