本発明の実施形態について図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他色々な形態が実施可能である。
(第一実施形態)
図1は、本発明における偽造防止形成体(以下「形成体」という。)(S)を示す平面図及び潜像画像の拡大図である。
図1に示す形成体(S)は、例えば、紙幣、パスポート及び身分証明書等の貴重印刷物である。形成体(S)は、紙又はプラスチックカード等の表面に印刷可能な媒体である基材(1)上における少なくとも一部に印刷領域(Z)を備え、印刷領域(Z)内に、第一の画像(A)、第一の背景画像(B)及び第二の画像(C)が重複して配置されている。形成体(S)は、観察角度の変化により、視認可能な潜像画像を有している。
図2(a)は、第一の画像(A)を説明する平面図である。第一の画像(A)は、基材(1)に対して正面から観察した際に視認可能となる図柄のことである。図2(a)においては、三つのダイヤの図形としているが、それに限らず文字、数字及び模様等とすることが可能である。
図2(b)は、図2(a)における一部の領域(P)の拡大図である。第一の画像(A)は、第一の方向(X1)に規則的に第一のピッチ(D1)で複数配置された第一の画線(3)を有して成る。第一のピッチ(D1)は、印刷方法及び第一の画線(3)の画線幅(W1)を考慮し、第一の画線(3)の画線幅(W1)と、後述する第二の画線(4)の画線幅とを足した画線幅以上1000μm以下の範囲内で適宜設定される。
本実施形態の形成体(S)は、詳細な視認原理については後述するが、観察角度の変化により、第一の画線(3)が他の画線の陰となることで、視認可能となる画像が変化する。よって、第一のピッチ(D1)が、第一の画線(3)の画線幅(W1)と第二の画線(4)の画線幅とを足した画線幅未満である場合には、観察角度の変化により視認可能となる画像を明瞭に視認することができず、好ましくない。
反対に、第一のピッチ(D1)が、1000μmを超える場合には、第一の画像(A)を構成する複数の第一の画線(3)が一つずつ目視により区別して視認される。よって、印刷領域(Z)を構成する面積が狭い場合、正面から視認される第一の画像(A)のディテール(細部)を構成することができず、意匠性が低下することから、好ましくない。
なお、図2(b)では、第一のピッチ(D1)を一定ピッチで図示しているが、前述したピッチの範囲内であれば、一部異なるピッチとすることも可能である。
図2(c)は、図2(b)におけるX−X´を切断した断面図である。第一の画線(3)の画線幅(W1)及び画線高さ(h1)は、第一のピッチ(D1)及び他の画線の画線幅を考慮し、画線幅(W1)25〜500μm、画線高さ(h1)30μm以下の範囲内で適宜設定される。
第一の画線(3)の画線幅(W1)を25μm未満とした場合、一般的な印刷方式では再現しづらく、また、正面から視認可能となる第一の画像(A)を識別しにくいことから、好ましくない。
反対に、第一の画線(3)の画線幅(W1)が500μmを超える場合と、第一の画線(3)の画線高さ(h1)が30μmを超える場合は、観察角度の変化により視認可能となる画像を形成する画線を、500μm以上の画線高さで形成しなくてはならず、画線が欠けて形成体(S)の耐久性が低下することから、好ましくない。
第一の画線(3)は、基材(1)上に平版印刷、凹版印刷又はインクジェット・プリンタ等によるハードコピー出力により形成する。第一の画線(3)の形成は、基材(1)に対して公知の印刷方法、印刷方法に適した版面及びインキ等を用いて印刷を行うことで形成する。
第一の画線(3)は、第一の色材により形成される。第一の色材については、特に限定するものではないが、明度が低く、基材(1)の表面色と明確に区別することができる色が望ましい。例えば、基材(1)の表面色を白色又はクリーム色等の明度の高い色とし、第一の色材をイエローのように明度の高い色とした場合、基材(1)の表面色及び第一の色材は、区別しづらいことから、好ましくない。
図3は、画線の一例を示す図である。画線とは、図3(a)、図3(b)、図3(c)及び図3(d)に示すような、直線、サイン波、三角波、鋸波及び矩形波等公知の画線のことである。また、図3(e)、図3(f)、図3(g)、図3(h)、図3(i)及び図3(j)に示すような、円形状、多角形状及び文字形状等の画素や点を線状に構成したものも本発明における画線とする。なお、本実施形態については、画線を図3(a)に示す直線状の画線として説明する。
次に、第一の画像(A)上に重ねて形成する第一の背景画像(B)について説明する。図4(a)は、第一の背景画像(B)を説明する平面図である。第一の背景画像(B)とは、基材(1)を傾けて観察した際に、前述した第一の画線(3)を遮蔽する画像である。
図4(b)は、図4(a)における一部の領域(P)の拡大図である。第一の背景画像(B)は、第一の画線(3)を配置した方向と同じ第一の方向(X1)に、第二のピッチ(D2)で規則的に複数配置された、盛り上がりを有する第二の画線(4)を有して成る。
本実施形態の形成体(S)は、観察角度の変化により、第一の画線(3)が他の画線に遮蔽されることで、視認可能となる画像が変化する。よって、第一の画線(3)を第二の画線(4)で遮蔽するために、二つの画線(3及び4)は、同じ方向に配置する。
複数の第二の画線(4)を配置する第二のピッチ(D2)は、印刷方法及び第二の画線(4)の画線幅(W2)を考慮し、第一の画線(3)の画線幅(W1)と第二の画線(4)の画線幅(W2)とを足した画線幅以上1000μm以下の範囲内で適宜設定される。
なお、第一の画線(3)と第二の画線(4)を異なるピッチで配置することは可能であるが、同じピッチとすることが好ましい。同じピッチとすることで、観察角度の変化により視認可能となる画像を、鮮明に視認することが可能となる。以下、第一のピッチ(D1)及び第二のピッチ(D2)を、同じピッチとして説明する。
第一の画像(A)及び第一の背景画像(B)は、図1に示すように重複して配置されるが、第一の画線(3)及び第二の画線(4)は重ならない位置に配置される。よって、第一の画線(3)及び第二の画線(4)は、第一の方向(X1)に一つずつ交互に配置されることで、観察角度の変化により、第一の画線(3)が第二の画線(4)に遮蔽される。
図4(c)は、図4(b)におけるX−X´を切断した断面図である。第二の画線(4)の画線幅(W2)は、第二のピッチ(D2)と、第一の画線(3)及び後述する第三の画線(6)の画線幅を考慮し、50〜900μmの範囲内で適宜設定される。
第二の画線(4)の画線幅(W2)を50μm未満とした場合、用いるインキによっては十分、かつ、安定した画線高さ(h2)を形成しづらいことから、好ましくない。また、画線幅(W2)が900μmを超える場合、第二の画線(4)と重ならない位置に第一の画線(3)が配置できる範囲が狭くなり、第一の画線(3)の画線幅(W1)が狭くなる。よって、第一の画像(SA)が視認しづらく、好ましくない。
盛り上がりを有する第二の画線(4)の画線高さ(h2)は、第二のピッチ(D2)及び第一の画線(3)及び後述する第三の画線(6)の画線幅及び画線高さを考慮し、画線高さ(h2)20〜120μmの範囲内で適宜設定される。
第二の画線(4)の画線高さ(h2)が20μm未満の場合、観察角度を変化させた際に第一の画線(3)を十分に遮蔽できず、好ましくない。また、画線高さ(h2)が120μmを超える場合、第一の画像(A)が視認しづらく、第二の画線(4)の形状を、安定して保持するのが難しいという理由から、好ましくない。
盛り上がりを有する第二の画線(4)は、基材(1)上に、発泡インキ等の盛り上げ材をインキとして用いて平版印刷及び凸版印刷を行うことで形成する。また、他の形成方法としては、凹版印刷、孔版印刷又は盛り上がりを有するインキを印刷可能なインクジェット・プリンタ等によるハードコピー出力により形成する。
なお、第二の画線(4)に用いられる色材は、特に限定されないが、基材(1)を傾けて観察して第一の画線(3)が第二の画線(4)の陰になった際に、第一の画線(3)を十分に遮蔽できるように、第一の画線(3)に用いた色材よりも明度の低い色材であることが望ましい。
次に、第一の背景画像(B)の上に重ねて形成する第二の画像(C)について説明する。図5(a)は、第二の画像(C)を説明する平面図である。第二の画像(C)は、
基材(1)に対して斜めから観察した際に視認可能となる図柄のことである。図5(a)においては、NPBのアルファベットとしているが、それに限らず文字、数字及び模様等とすることが可能である。
なお、図5(a)において、第二の画像(C)は図柄である情報部のみで形成されているが、後述する他の構成においては、第二の画像(C)の図柄である情報部の周囲に背景部を有している構成とすることもできる。第二の画像(C)が情報部のみを有している場合には、第二の画像(C)と情報部は同一であることから、本実施形態においては、第二の画像(C)の情報部を、第二の画像(C)として説明する。
図5(b)は、図5(a)における一部の領域(P)の拡大図である。なお、図5(a)については、第三の画線(6)のみを模式的に示しているが、図5(b)及び図5(c)については、第二の画線(4)と第三の画線(6)の積層状態を示すために、第二の画線(4)を点線で図示する。
第二の画像(C)は、盛り上がりを有する第三の画線(6)が、第一の画線(3)及び第二の画線(4)を配置した方向と同じ第一の方向(X1)に第三のピッチ(D3)で規則的に複数配置されて成る。
前述のとおり、本実施形態の形成体(S)は、観察角度の変化により、第一の画線(3)が他の画線に遮蔽されることで、視認可能となる画像が変化する。よって、第一の画線(3)を、第二の画線(4)及び第三の画線(6)で遮蔽するために、三つの画線(3、4及び6)は、同じ方向に配置する。
第三の画線(6)を配置する第三のピッチ(D3)は、第二の画線(4)を配置する第二のピッチ(D2)と同様に、第一の画線(3)の画線幅(W1)と第二の画線(4)の画線幅(W2)を足した画線幅〜1000μmの範囲内で適宜設定される。以下、第三のピッチ(D3)は、第一のピッチ(D1)及び第二のピッチ(D2)と、同じピッチとして説明する。
図5(c)は、図5(b)におけるX−X´を切断した断面図である。第三の画線(6)の画線幅(W3)は、第三のピッチ(D3)及び第一の画線(3)及び第二の画線(4)の画線幅を考慮し、第二の画線(4)と同様に画線幅(W3)50〜900μmの範囲内で適宜設定するが、第二の画線(4)の画線幅(W2)以下とする。第三の画線(6)の画線幅(W3)が、下に配置する第二の画線(4)の画線幅(W2)を超える場合、観察角度の変化により視認可能となる画像が視認しづらくなり、好ましくない。
盛り上がりを有する第三の画線(6)の画線高さ(h3)は、第三のピッチ(D3)と、第一の画線(3)及び第二の画線(4)の画線幅及び画線高さを考慮し、第二の画線(4)と同様に、画線高さ(h3)20〜120μmの範囲内で適宜設定される。なお、盛り上がりを有する第三の画線(6)は、前述した第二の画線(4)と同様の形成方法により基材(1)上に付与することから、説明を省略する。
第三の画線(6)は、第三の色材により形成される、第三の色材は、第三の画線(6)の下に配置される第二の画線(4)を形成する第二の色材と等色とする。第二の色材と第三の色材を等色とすることで、正面から視認した際に、第二の画線(4)及び第三の画線(6)を区別して視認することができず、第二の画像(C)が識別不可能となる。
なお、本発明における等色とは、二つの画線を自然光下で視認した際に区別することができない又は区別することが困難な色相の差異を含むものである。
また、他の構成としては、第三の色材を半透明の色材とし、第二の色材を第三の色材よりも明度の低い色材とする。例えば、第二の画線(4)を黒色の色材により形成し、第三の画線(6)を、透過性を有するシアン色で形成した場合、透過性を有するシアン色は、下に配置される黒色に透過吸収されて、正面からは黒色として視認される。
なお、本実施形態における透過吸収とは、半透明の色材の下に、半透明の色材よりも明度の低い色材を形成し、その二つの色材を正面から視認した際に、明度の低い色材により、半透明の色材が識別不可能となることをいう。
よって、第三の色材を半透明の色材とし、第二の色材を第三の色材よりも明度の低い色材とすることで、前述した等色の色材とした場合と同様に、正面から視認した際に、第二の画線(4)及び第三の画線(6)を区別して視認することができず、第二の画像(C)が識別不可能となる。以下、本実施形態は、第三の色材を半透明の色材とし、第二の色材を第三の色材よりも明度の低い色材として説明する。
図6(a)は、基材(1)に対する第一の画像(A)、第一の背景画像(B)及び第二の画像(C)の積層順を示す模式図である。図6(a)に示すように、基材(1)上における印刷領域(Z)内に、第一の画像(A)が形成され、第一の画像(A)の上に第一の背景画像(B)が重なって形成され、更に第一の背景画像(B)の上に第二の画像(C)が重なって形成される。
なお、第一の画像(A)、第一の背景画像(B)及び第二の画像(C)が重なるとは、あくまでも画像同士が重なるという意味であって、前述のとおり各画像を構成する画線同士が全て重なるという意味ではない。
図6(b)は、図6(a)における一部の領域(P)の拡大図を示す模式図であり、図6(c)は、図6(b)におけるX−X´を切断した断面図である。なお、図6(b)は、基材(1)上に全ての画像(A、B及びC)が積層された状態を示す。
図6(b)及び図6(c)に示すように、第二の画像(C)を形成する第三の画線(6)は、第一の背景画像(B)を形成する第二の画線(4)の画線幅以下で第二の画線(4)上に積層して配置される。また、第一の画像(A)を形成する第一の画線(3)は、積層して配置された第二の画線(4)及び第三の画線(6)と重ならない位置に配置される。
第一の画線(3)と積層して配置された第二の画線(4)及び第三の画線(6)が重なる場合には、正面から視認される第一の画像(A)が不鮮明に視認され、好ましくない。また、潜像画像である第二の画像(C)の一部が正面から視認されてしまい、好ましくない。
なお、隣接する位置とは、隣り合う二つの画線の少なくとも一部が接していることをいい、近接する位置とは、隣り合う二つの画線が接してはいないが近くにあることをいう、本発明の近接する位置は、二つの画線が重なり合うことなく配置される距離であれば特に限定はない。
次に、第1の実施形態における形成体(S)の視認状態について説明する。図7(a)は、形成体(S)を基材(1)に対して正面である第一の観察角度(E1)から観察した際の模式図であり、図7(b)は、図7(a)における一部の領域(P)の拡大図であり、図7(c)は、図7(b)におけるX−X´を切断した断面図である。
なお、形成体(S)に対する第一の観察角度(E1)と、基材(1)に対する第一の観察角度(E1)は同一であることから、以下の説明において、基材(1)に対する観察角度の説明は省略し、形成体(S)を第一の観察角度(E1)から観察したとして説明することとし、他の観察角度も同様とする。
第一の画線(3)は、積層して配置された第二の画線(4)及び第三の画線(6)と重ならない位置に配置していることから、第一の観察角度(E1)から観察した場合に視認可能となり、第一の画像(A)が視認される。
積層して配置された第二の画線(4)は、低明度の第二の色材により形成され、第三の画線(6)は、有色透過性の第三の色材により形成される。また、第二の画線(4)の画線幅は、第三の画線(6)の画線幅以上で形成される。
よって、下層に形成した第二の画線(4)で、上層に形成した第三の画線(6)の色材が透過吸収され、二つの画線(4及び6)を肉眼で区別して視認することが不可能となり、下層に配置した複数の第二の画線(4)から成る第一の背景画像(B)が視認される。
以上、形成体(S)を第一の観察角度(E1)から観察した場合、図7(a)に示すように、第一の画像(A)及び第一の背景画像(B)が視認可能となるが、第一の画像(A)と第一の背景画像(B)の面積率の差及び/又は色相の差により第一の画像(A)が有意的に視認される。以下、本実施形態においては、所定の観察角度において、二つの画像(例えば、画像Aと画像B)が視認可能となる場合においても、面積率の差及び/又は色相の差により、一方の画像(例えば、画像A)が有意的に視認される場合、その所定の観察角度においては、一方の画像(例えば、画像A)が視認されるとして説明する。
なお、本発明でいう色相とは、「赤みを帯びた色」又は「青みを帯びた色」等の画像全体の相対的な色みの違いを区別するものであって、「赤」又は「青」等の絶対的な色を指すものではない。
次に、形成体(S)を傾けて観察した場合について説明する。図8(a)は、形成体(S)に対して斜めである第二の観察角度(E2)から観察した際の模式図であり、図8(b)は、図8(a)における一部の領域(P)の拡大図であり、図8(c)は、図8(b)におけるX−X´を切断した断面図である。なお、第二の観察角度(E2)とは、形成体(S)に対して第一の方向(X1)と同じ方向から観察した際の観察角度である。
図8(c)に示すように、形成体(S)を第二の観察角度(E2)から観察した場合、第一の画線(3)は、積層して配置された第二の画線(4)及び第三の画線(6)の死角となり、遮蔽されることから視認することができず、複数の第二の画線(4)から成る第一の背景画像(B)が視認される。
第三の画線(6)は、盛り上がりを有して第二の画線(4)上に積層して配置されることから、基材(1)の表面色の一部は、第三の画線(6)を形成する第三の色材により透過吸収されて、第三の画線(6)の色相で視認され、複数の第三の画線(6)から成る第二の画像(C)が視認される。
また、第三の画線(6)が積層されない第二の画線(4)は、第二の画線(4)と第二の観察角度(E2)から見て後方(図8(c)、左側)の第二の画線(4)が重なり合うことなく、第二の画線(4)の濃度と色相を保っている。
よって、形成体(S)を第二の観察角度(E2)から観察した場合、図8(a)に示すように、第二の画像(C)及び第一の背景画像(B)が視認可能となるが、第二の画像(C)と第一の背景画像(B)の面積率の差及び/又は色相の差により第二の画像(C)が視認される。
以上、本発明の形成体(S)は、盛りのある画線を多層構成とすることで、観察角度の変化により、第一の画像(A)と第二の画像(C)が変化して視認される。第一の画像(A)と第二の画像(C)は、多層構成とすることで、互いに異なる色及び形状とすることが可能となり、意匠性に優れている。よって、本発明の形成体(S)は、目視により、容易に形成体(S)の真偽を判定することが可能となるだけではなく、従来よりも意匠性に優れた潜像画像が付与された形成体(S)となる。
なお、前述した各画線(3、4及び6)を形成する色材のうち、少なくとも一つの色材が、一つの機能性材料を含むことも可能である。機能性材料とは、蛍光顔料、燐光顔料、蓄光顔料、フォトクロミック顔料、赤外反射・吸収材料、磁性材料及び各種電子線による作用を備えた材料等の公知の機能性を有する材料のことである。機能性材料を含む場合、形成体(S)に対する観察角度の変化による画像のチェンジ効果に加えて、各種の機能性を追加することができる。
例えば、第三の画線(6)に蛍光発光材料を加えた場合、第一の観察角度(E1)から第一の画像(A)が視認され、第二の観察角度(E2)から第二の画像(C)が視認され、紫外波長光を照射した際には、第一の背景画像(B)内に発光した第二の画像(C)が視認される。
また、他の構成としては、第三の画線(6)を形成する第三の色材に磁性材料を加えた場合、観察角度の変化による真偽判別に加え、公知の磁気ヘッドを有する読取装置により磁気強度を読み取ることで、機械読取により形成体(S)の真偽判別を行うことが可能となる。
従来の偽造防止を有する印刷物としても、機能性材料を含む色材を用いることで、その機能性材料が有する機能性が付与された印刷物は存在するが、盛り上がりを有しない印刷画線は、画線内に機能性材料を多く含むことができず、機能性材料が有する機能性の効果を十分に発揮することができないという問題があった。
しかしながら、本発明の形成体(S)は、盛り上がりを有する画線から成る構成であることから、各画線(3、4及び6)を形成する色材に、機能性材料を十分に含有させることが可能となる。よって、機能性材料が有する機能性に対応した認証方法により、真偽判別を行うことが可能となる。
さらに、本発明の形成体(S)は、積層構造であることから、各層を構成する色材に互いに異なる機能性材料を含むことも可能であり、その場合、より偽造防止効果が向上した形成体(S)を得ることができる。
(第一変形例)
次に、形成体(S)の第一変形例について説明する。図9(a)は、第一変形例における第二の画像(C)を説明する平面図であり、図9(b)は、図9(a)における一部の領域(P)の拡大図であり、図9(c)は、図9(b)におけるX−X´を切断した断面図である。なお、前述した形成体(S)と重複する箇所については、説明を一部省略する。
図9(a)に示すように、第一変形例において第二の画像(C)は、背景部(C1)を有する。以下、第一変形例においては、NPBで示す図柄を情報部とし、その周囲を背景部(C1)として説明する。
図9(b)に示すように、背景部(C1)は、第三の画線(6)と同じ第三の色材により、第三の画線(6)を配置した方向と同じ第一の方向(X1)に、第三の画線(6)と異なる位相で規則的に複数配置された、盛り上がりを有する第四の画線(7)を有して成る。なお、第四の画線(7)を配置するピッチ、形状、画線幅、画線高さ及び形成する色材については、前述した第三の画線(6)と同様であることから、説明を省略する。
背景部(C1)は、ネガ又はポジの情報部であり、情報部と背景部(C1)は、ネガポジの関係である。以下の説明において、第一変形例の形成体(S)は、第二の画像(C)の情報部をネガ画像とし、背景部(C1)をポジ画像として説明する。
第三の画線(6)と第四の画線(7)の位相差は、全ての第三の画線(6)及び第四の画線(7)が、第二の画線(4)上に配置される範囲内で適宜設定する。第二の画線(4)上に、第三の画線(6)及び第四の画線(7)が配置されない場合には、第二の観察角度(E2)から第二の画像(C)を視認することができず、好ましくない。
次に、第一変形例の構成から成る形成体(S)の視認状態について説明する。図10(a)は、第一変形例の形成体(S)を第一の観察角度(E1)から観察した際の模式図であり、図10(b)は、図10(a)における一部の領域(P)の拡大図であり、図10(c)は、図10(b)におけるX−X´を切断した断面図である。
第一の画線(3)は、積層して配置した第二の画線(4)、第三の画線(6)及び第四の画線(7)と重ならない位置に配置していることから、第一の観察角度(E1)から観察した場合に視認可能となり、第一の画像(A)が視認される。
積層して配置された、第二の画線(4)、第三の画線(6)及び第四の画線(7)は、下層に形成した第二の画線(4)により、上層に形成した第三の画線(6)及び第四の画線(7)の色材が透過吸収され、第二の画線(4)、第三の画線(6)及び第四の画線(7)を肉眼で区別して視認することが不可能となり、下層に配置した複数の第二の画線(4)から成る第一の背景画像(B)が視認される。
よって、形成体(S)を第一の観察角度(E1)から観察した場合、図10(a)に示すように、第一の画像(A)及び第一の背景画像(B)が視認可能となるが、第一の画像(A)と第一の背景画像(B)の面積率の差及び/又は色相の差により第一の画像(A)が視認される。
次に、第一変形例の形成体(S)を傾けて観察した場合について説明する。図11(a)は、第一変形例の形成体(S)を、第二の観察角度(E2)から観察した際の模式図であり、図11(b)は、図11(a)における一部の領域(P)の拡大図であり、図11(c)は、図11(b)におけるX−X´を切断した断面図である。
図11(c)に示すように、形成体(S)を第二の観察角度(E2)から観察した場合、第一の画線(3)は、盛り上がりを有する第二の画線(4)の死角となることで視認されず、第一の背景画像(B)が視認される。
また、第三の画線(6)及び第四の画線(7)は、同じ画線高さ(h3)で盛り上がりを有して第二の画線(4)上に積層して配置されることから、第二の画線(4)上に第三の画線(6)が積層されている部分は、第三の画線(6)と第二の観察角度(E2)から見て後方(図11(c)、左側)の第二の画線(4)とが重なり合って視認されるとともに、基材(1)の表面色の一部が、第三の画線(6)を形成する色材により透過吸収されて第三の画線(6)の色相で視認される。よって、複数の第三の画線(6)から成るネガ状の第二の画像(C)が視認される。
第二の画線(4)上に第四の画線(7)が積層されている部分は、第二の画線(4)上に配置された第四の画線(7)が第二の観察角度(E2)から見て前方(図11(c)、右側)にあり、第二の画線(4)の画線幅(W3)に含まれて視認されることから、第四の画線(7)と第二の画線(4)は重なり合って視認されず、第二の画線(4)が明度と色相を保った画線として視認される。
以上、形成体(S)を第二の観察角度(E2)から観察した場合、図11(a)に示すように、ネガ状の第二の画像(C)と、第一の背景画像(B)が視認可能となるが、第二の画像(C)と第一の背景画像(B)の面積率の差及び/又は色相の差により、第二の画像(C)がネガ画像として視認される。
次に、形成体(S)を第二の観察角度(E2)とは異なる方向に傾けて観察した場合について説明する。図12(a)は、第一変形例の形成体(S)を、第三の観察角度(E3)から観察した際の模式図であり、図12(b)は、図12(a)における一部の領域(P)の拡大図であり、図12(c)は、図12(b)におけるX−X´を切断した断面図である。
第三の観察角度(E3)とは、第一の方向(X1)と平行する方向であり、第二の観察角度(E2)とは、基材(1)に対して逆の斜め方向のことである。
図12(c)に示すように、形成体(S)を第三の観察角度(E3)から観察した場合、第一の画線(3)は、盛り上がりを有する第二の画線(4)の死角となることで視認されず、複数の第二の画線(4)から成る第一の背景画像(B)が視認される。
また、第三の画線(6)及び第四の画線(7)は、同じ画線高さ(h3)で盛り上がりを有して第二の画線(4)上に積層して配置されることから、第二の画線(4)上に第四の画線(7)が積層されている部分は、第四の画線(7)と第三の観察角度(E3)から見て後方(図12(c)、右側)の第二の画線(4)が重なり合って視認されるとともに、基材(1)の表面色の一部が第四の画線(7)を形成する色材により透過吸収されて第四の画線(7)の色相で視認される。よって、複数の第四の画線(7)から成るポジ状の第二の画像(C)が視認される。
第二の画線(4)上に第三の画線(6)が積層されている部分は、第二の画線(4)上に配置された第三の画線(6)が第三の観察角度から(E3)から見て前方(図12(c)、左側)にあり、第二の画線(4)の画線幅(W3)含まれて視認されることから、第三の画線(6)と第二の画線(4)は重なり合って視認されず、第二の画線(4)が濃度と色相を保った画線として視認される。
以上、形成体(S)を第三の観察角度(E3)から観察した場合、図12(a)に示すように、ポジ状の第二の画像(C)と第一の背景画像(B)が視認可能となるが、第二の画像(C)と第一の背景画像(B)の面積率の差及び/又は色相の差により、第二の画像(C)がポジ画像として視認される。
(第二変形例)
次に、形成体(S)の第二変形例について説明する。図13(a)は、第二変形例における第二の画像(C)を説明する平面図であり、図13(b)は、図13(a)における一部の領域(P)の拡大図であり、図13(c)は、図13(b)におけるX−X´を切断した断面図である。なお、前述した形成体(S)と重複する箇所については、説明を一部省略する。
図13(a)及び図13(b)に示すように、第二変形例において第二の画像(C)は、一つの第二の画線(4)上に、前述した第三の画線(6)に加えて第五の画線(8)が第三の画線(6)と同じ長さで対応して配置される。
なお、図13(a)において、第二の画像(C)は、情報部のみを有していることから、第二の画像(C)と情報部は同一である。よって、第二変形例においては、第二の画像(C)の情報部を第二の画像(C)として説明する。
本発明における対応して配置するとは、図13(b)に示すように、一つの第二の画線(4)上に配置した第三の画線(6)及び第五の画線(8)が、第二の画線(4)の長手方向における中心に対して向かい合うように下層の第二の画線(4)の画線幅を超えることなく配置されていることを指す。なお、第三の画線(6)及び第五の画線(8)は、重なり合うことなく同じ長さで対応して配置される。
つまり、第二変形例における第二の画像(C)は、第三の画線(6)及び第五の画線(8)を1セットとした場合、セットである第三の画線(6)及び第五の画線(8)を第一の方向(X1)に複数配置することで形成される。
第五の画線(8)は、第三の画線(6)と異なる色の第五の色材により形成する。なお、異なる色とは、同じ色相で濃度が異なる色としてもよく、例えば、第三の画線(6)を淡い赤色とし、第五の画線(8)を濃い赤色とすることも可能である。
第三の画線(6)を形成する第三の色材が、第二の画線(4)を形成する第二の色材と等色の場合、第五の画線(8)を形成する第五の色材は、第二の色材より明度が高く透過性を有する有色とする。
また、第三の画線(6)を形成する第三の色材が、第二の画線(4)を形成する第二の色材より明度が高く透過性を有する有色の場合、第五の画線(8)を形成する第五の色材は、第二の色材より明度が高く透過性を有する有色又は第二の色材と等色とする。
第五の色材は、第二の色材と第三の色材が等色の場合と、第三の色材が第二の色材より明度が高く透過性を有する場合とで、前述のとおり適宜選択すればよく、第一の観察角度(E1)から観察した場合に、第二の画線(4)上に形成した全ての画線を隠蔽することが可能となる。
次に、第二変形例の形成体(S)の視認状態について説明する。図14(a)は、第二変形例の形成体(S)を、第一の観察角度(E1)から観察した際の模式図であり、図14(b)は、図14(a)における一部の領域(P)の拡大図であり、図14(c)は、図14(b)におけるX−X´を切断した断面図である。
第一の画線(3)は、積層して配置した各画線(4、6及び8)と重ならないことから、第一の観察角度(E1)から視認可能であり、第一の画像(A)が視認される。
第二の画線(4)上に積層して配置された第三の画線(6)及び第五の画線(8)は、下層に形成した第二の画線(4)により、上層に形成した第三の画線(6)及び第五の画線(8)の色材が透過吸収され、第二の画線(4)、第三の画線(6)及び第五の画線(8)を肉眼で区別することができず、下層に配置した第一の背景画像(B)が視認される。
よって、形成体(S)を第一の観察角度(E1)から観察した場合、図14(a)に示すように、第一の画像(A)及び第一の背景画像(B)が視認可能となるが、第一の画像(A)と第一の背景画像(B)の面積率の差及び/又は色相の差により第一の画像(A)が視認される。
次に、第二変形例の形成体(S)を傾けて観察した場合について説明する。図15(a)は、第二変形例の形成体(S)を第二の観察角度(E2)から観察した際の模式図であり、図15(b)は、図15(a)における一部の領域(P)の拡大図であり、図15(c)は、図15(b)におけるX−X´を切断した断面図である。
図15(c)に示すように、形成体(S)を第二の観察角度(E2)から観察した場合、第一の画線(3)は、盛り上がりを有する第二の画線(4)の死角となることで視認されず、第一の背景画像(B)が視認される。
また、第三の画線(6)及び第五の画線(8)は、同じ画線高さ(h3)で盛り上がりを有して第二の画線(4)上に積層して配置されることから、第二の画線(4)上に第三の画線(6)が積層されている部分は、第三の画線(6)と第二の観察角度(E2)から見て後方(図15(c)、左側)の第二の画線(4)とが重なり合って視認されるとともに、基材(1)の表面色の一部が、第三の画線(6)を形成する色材により透過吸収されて第三の画線(6)の色相で視認される。よって、第二の画像(C)が第三の画線(6)を形成した第三の色材の色で視認される。
第二の画線(4)上に第五の画線(8)が積層されている部分は、第二の観察角度から(E2)から見て後方(図15(c)、左側)にあり、第二の画線(4)の画線幅(W3)に含まれて視認されることから、第五の画線(8)と第二の画線(4)が重なり合うことで視認されず、第二の画線(4)が明度と色相を保った画線として視認される。
以上、形成体(S)を第二の観察角度(E2)から観察した場合、図15(a)に示すように、第一の背景画像(B)と第三の色材の色の第二の画像(C)が視認可能となるが、第二の画像(C)と第一の背景画像(B)の面積率の差及び/又は色相の差により、第二の画像(C)が第三の色材の色で視認される。
次に、形成体(S)を第三の観察角度(E3)から観察した場合について説明する。図16(a)は、形成体(S)を第三の観察角度(E3)から観察した際の模式図であり、図16(b)は、図16(a)における一部の領域(P)の拡大図であり、図16(c)は、図16(b)におけるX−X´を切断した断面図である。
図16(c)に示すように、形成体(S)を第三の観察角度(E3)から観察した場合、第一の画線(3)は、盛り上がりを有する第二の画線(4)の死角となることで視認されず、第一の背景画像(B)が視認される。
また、第二の画線(4)上に第五の画線(8)が積層されている部分は、第五の画線(8)と第三の観察角度(E3)から見て後方(図16(c)、右側)の第二の画線(4)とが重なり合って視認されるとともに、基材(1)の表面色の一部が、第五の画線(8)を形成する色材により透過吸収されて、第五の画線(8)の色相で視認される。よって、第二の画像(C)が、第五の画線(8)を形成した第五の色材の色で視認される。
第二の画線(4)上に第三の画線(6)が積層されている部分は、第三の観察角度から(E3)から見て後方(図16(c)、右側)にあり、第二の画線(4)の画線幅(W3)に含まれて視認されることから、第三の画線(6)と第二の画線(4)が重なり合うことで視認されず、第二の画線(4)が、濃度と色相を保った画線として視認される。
以上、形成体(S)を第三の観察角度(E3)から観察した場合、図16(a)に示すように、第一の背景画像(B)と第五の色材の色の第二の画像(C)が視認可能となるが、第二の画像(C)と第一の背景画像(B)の面積率の差及び/又は色相の差により、第二の画像(C)が第五の色材の色で視認される。
(第三変形例)
次に、形成体(S)の第三変形例について説明する。図17(a)は、第三変形例における第二の画像(C)を説明する平面図であり、図17(b)は、図17(a)における一部の領域(P)の拡大図であり、図17(c)は、図17(b)におけるX−X´を切断した断面図である。なお、前述した形成体(S)と重複する箇所については、説明を一部省略する。
図17(a)及び図17(b)に示すように、第三変形例において第二の画像(C)は、NPBの文字である情報部と背景部(C1´)を有している。情報部は、前述した第二変形例と同様に、一つの第二の画線(4)上に、第三の画線(6)及び第五の画線(8)が同じ長さで対応して配置されて成る。
第三の画線(6)は、第三の色材と、第三の色材の色とは異なる第六の色材に区分けされ、第五の画線(8)は、第五の色材と、第五の色材とは異なる色の第七の色材に区分けされる。以下、第三変形例の図中においては、第三の画線(6)のうち、第三の色材に区分けされた部分を黒色で示し、第六の色材に区分けされた部分(9)を斜線で示す。また、第五の画線(8)のうち、第五の色材に区分けされた部分を斜線で示し、第七の色材に区分けされた部分(10)を黒色で示す。
第二の画像(C)の情報部と背景部(C1´)は、複数の第三の画線(6)が、第三の色材と第三の色材とは異なる第六の色材に区分けされた境界と、複数の第五の画線が、第五の色材と第五の色材とは異なる第七の色材に区分けされた境界により区分けされる。
さらに、第六の色材は、第五の色材と等色であり、第七の色材は、第三の色材と等色である。例えば、第六の色材及び第五の色材を赤色とし、第七の色材及び第三の色材を青色とする。よって、第三の画線(6)及び第五の画線(8)は、それぞれ赤色と青色の二色に区分けされた一本の画線として第二の画線(4)上に積層して配置される。以下の説明において、第三変形例は、第五の色材及び第六の色材を赤色とし、第三の色材及び第七の色材を青色として説明する。
第三の画線(6)における第三の色材に区分けされた部分と、第五の画線(8)における第七の色材に区分けされた部分(10)は、第一の方向(X1)に複数配置されることで、第二の画像(C)の情報部と成る。
また、第三の画線(6)における第六の色材に区分けされた部分(9)と、第五の画線(8)における第五の色材に区分けされた部分は、第一の方向(X1)に複数配置されることで、第二の画像(C)の背景部(C1´)と成る。
次に、第三変形例の形成体(S)の視認状態について説明する。図18(a)は、第三変形例の形成体(S)を、第一の観察角度(E1)から観察した際の模式図であり、図18(b)は、図18(a)における一部の領域(P)の拡大図であり、図18(c)は、図18(b)におけるX−X´を切断した断面図である。
第一の画線(3)は、積層して配置した各画線(4、6及び8)と重ならずに配置していることから視認可能であり、第一の画像(A)が視認される。
積層して配置された各画線(4、6及び8)は、下層に形成した第二の画線(4)により、上層に形成した第三の画線(6)及び第五の画線(8)の色材が透過吸収され、肉眼で各画線(4、6及び8)を区別することができず、下層に配置した第一の背景画像(B)が視認される。
よって、形成体(S)を第一の観察角度(E1)から観察した場合、図18(a)に示すように、第一の画像(A)及び第一の背景画像(B)が視認可能となるが、第一の画像(A)と第一の背景画像(B)の面積率の差及び/又は色相の差により第一の画像(A)が視認される。
次に、第三変形例の形成体(S)を傾けて観察した場合について説明する。図19(a)は、形成体(S)を第二の観察角度(E2)から観察した際の模式図であり、図19(b)は、図19(a)における一部の領域(P)の拡大図であり、図19(c)は、図19(b)におけるX−X´を切断した断面図である。
図19(c)に示すように、形成体(S)を第二の観察角度(E2)から観察した場合、第一の画線(3)は、盛り上がりを有する第二の画線(4)の死角となることで視認されず、第一の背景画像(B)が視認される。
また、第三の画線(6)及び第五の画線(8)は、同じ画線高さ(h3)で盛り上がりを有して第二の画線(4)上に積層して配置されることから、第二の画線(4)上に第三の画線(6)が積層されている部分は、第三の画線(6)と、第二の観察角度(E2)から見て後方(図19(c)、左側)の第二の画線(4)が重なり合って視認されるとともに、基材(1)の表面色の一部が、第三の画線(6)に含まれる色材によって透過吸収され、第三の画線(6)の色相で視認される。
よって、第三の画線(6)における第三の色材に区分けされた部分で形成された第二の画像(C)の情報部が、青色で視認され、第三の画線(6)における第六の色材に区分けされた部分(9)で形成された背景部(C1´)が、赤色で視認される。
第二の画線(4)に第五の画線(8)が積層されている部分は、第二の画線(4)上に配置された第五の画線(8)が、第二の観察角度(E2)から見て前方(図19(c)、右側)にあり、第二の画線(4)の画線幅(W3)に含まれて視認されることから、第五の画線(8)と第二の画線(4)が重なり合うことで視認されず、第二の画線(4)が、明度と色相を保った画線として視認される。
以上、形成体(S)を第二の観察角度(E2)から観察した場合、図19(a)に示すように、第一の背景画像(B)、青色の情報部と赤色の背景部(C1´)から成る第二の画像(C)が視認可能となるが、第一の背景画像(B)と、第二の画像(C)及び第二の背景部(C1´)との面積率の差及び/又は色相の差により、青色の情報部と赤色の背景部(C1´)から成る第二の画像(C)が視認される。
次に、形成体(S)を第三の観察角度(E3)から観察した場合について説明する。図20(a)は、形成体(S)を、第三の観察角度(E3)から観察した際の模式図であり、図20(b)は、図20(a)における一部の領域(P)の拡大図であり、図20(c)は、図20(b)におけるX−X´を切断した断面図である。
図20(c)に示すように、形成体(S)を第三の観察角度(E3)から観察した場合、第一の画線(3)は、盛り上がりを有する第二の画線(4)の死角となることで視認されず、第一の背景画像(B)が視認される。
また、第二の画線(4)上に、第五の画線(8)が積層されている部分は、第五の画線(8)と、第三の観察角度(E3)から見て後方(図20(c)、右側)の第二の画線(4)が重なり合って視認されるとともに、基材(1)の表面色の一部が、第五の画線(8)に含まれる色材により透過吸収され、第五の画線(8)の色相で視認される。
よって、第五の画線(8)における第七の色材に区分けされた部分で形成された第二の画像(C)の情報部が、赤色で視認され、第五の画線(8)における第五の色材に区分けされた部分(10)で形成された背景部(C1´)が青色で視認される。
第二の画線(4)に、第三の画線(6)が積層されている部分は、第三の観察角度(E3)から観察した場合、第二の画線(4)上に配置された第三の画線(6)は、第三の観察角度(E3)から見て前方(図20(c)、左側)にあり、第二の画線(4)の画線幅(W3)に含まれて視認されることから、第二の画線(4)と、第三の画線(6)が重なり合うことで視認されず、第二の画線(4)が、濃度と色相を保った画線として視認される。
以上、形成体(S)を第三の観察角度(E3)から観察した場合、図20(a)に示すように、第一の背景画像(B)、赤色の情報部と青色の背景部(C1´)から成る第二の画像(C)が視認可能となるが、第一の背景画像(B)と、第二の画像(C)及び第二の背景部(C1´)の面積率の差及び/又は色相の差により、赤色の情報部と青色の背景部(C1´)から成る第二の画像(C)が視認される。よって、基材(1)に対して観察角度を変化させることで、第二の画像(C)と第二の背景部(C1´)の色が反転して視認される。
(第四変形例)
次に、形成体(S)の第四変形例について説明する。図21(a)は、第二の背景画像(D)を説明する平面図であり、図21(b)は、図21(a)における一部の領域(P)の拡大図であり、図21(c)は、図21(b)におけるX−X´を切断した断面図である。前述した実施形態において、背景画像は、一つであったが、第一の背景画像(B)をN個(Nは二以上の整数)の背景画像が積層した多層構成としても良い。なお、前述した形成体(S)と重複する箇所については、説明を一部省略する。
図21においては、第一の背景画像(B)を二個の背景画像が積層した構成としており、第一の背景画像(B)と第二の背景画像(D)が積層されている。第二の背景画像(D)とは、前述した第一の背景画像(B)とともに、基材(1)を傾けて観察した際に、第一の画像(A)を遮蔽する画像のことであり、盛り上がりを有する第六の画線(11)が、規則的に第一の方向(X1)に複数配置されて成る。第二の背景画像(D)を形成する第六の画線(11)と、第一の背景画像(B)を形成する第二の画線(4)のピッチ及び画線幅は同じとする。それにより、観察角度の変化により出現する画像を、鮮明に視認することが可能となる。なお、第六の画線(11)の配置及び画線高さは、前述した第二の画線(4)と同様であることから、説明を省略する。
前述のとおり、第四変形例の形成体(S)は、盛り上がりを有する画線を積層して配置することで、観察角度の変化により画像が変化する。しかしながら、盛り上がりを有する画線の形成方法は、印刷方式及び印刷装置が限定される。第二の背景画像(D)を備えた三層構成とすることで、前述した二層構成よりも、各画線の盛り上がりを低く設定することが可能となる。よって、二層構成と比べて印刷方式及び印刷装置の限定が少なくなる。
また、前述のとおり、各画線を形成する色材に機能性材料を含むことで、観察角度の変化による画像のチェンジ効果に加え、各種の機能性を追加することを可能としている。よって、N個の背景画像を形成する色材に、互いに異なる機能性材料を含むことで、背景画像の個数に比例し、より多くの機能性を付与することが可能となる。
第六の画線(11)を形成する色材は、基材(1)と異なる色であれば特に限定するものではないが、第二の画線(4)と等色又は明度の高い色材とすることが好ましい。すなわち、形成体(S)を第一の観察角度(E1)から観察した際に、第二の画線(4)とともに、第三の画線(6)を十分に遮蔽することができる色材であることが好ましい。
また、前述した二層構成の形成体(S)では、第二の画線(4)を形成する第二の色材と、第三の画線(6)を形成する第三の色材を等色とすることで、形成体(S)を第一の観察角度(E1)から観察した際に、第二の画線(4)で第三の画線(6)を遮蔽する構成とすることも可能であった。これは、二つの画線(4及び6)を等色とすることで、観察角度の変化により視認可能となる第二の画像(C)を隠蔽するためである。
よって、三層構成においては、第二の画線(4)、第三の画線(6)及び第六の画線(11)を形成する色材を等色とする構成の他に、第二の画像(C)を構成する第三の画線(6)と、第二の画線(4)及び第六の画線(11)を混色した色が、等色となる構成とすることも可能である。
例えば、第二の画像(C)を構成する第三の画線(6)を紫色の色材により形成し、第二の画線(4)を、透過性を有するシアン色の色材により形成し、第六の画線(11)を、透過性を有するマゼンタ色の色材により形成する。それにより、形成体(S)を第一の観察角度(E1)から観察した際には、第二の画像(C)を構成する第三の画線(6)は紫色で視認される。また、第二の画線(4)及び第六の画線(11)は、透過性を有するシアン色と透過性を有するマゼンタ色が混色し、透過性を有する紫色として視認される。よって、第二の画線(4)、第三の画線(6)及び第六の画線(11)を等色で構成した場合と同様に、第一の観察角度(E1)において、第二の画像(C)を隠蔽することが可能となる。
よって、本発明において積層した画線を形成する色材が等色とは、二層構成の場合には、積層した二つの画線を形成する色材が等色(例えば、いずれもシアン色)であり、三層構成以上の場合には、積層した複数の画線が等色(例えば、いずれもシアン色)であることに加え、最上層となる第二の画像(C)を構成する第三の画線(6)を形成する色材と、第三の画線(6)の下に積層して配置された複数の画線(例えば、第二の画線(4)及び第六の画線(11))を形成する色材が混色した色が等色であることも含まれる。
なお、第一の背景画像(D)を、二個の背景画像が積層した構成として説明をしたが、二個に限らず、複数の背景画像を積層して配置することも可能である。背景画像を複数積層することで、各画線の盛り上がりを、より低く設定することが可能となり、印刷装置の限定が少なくなるとともに、層数に比例し、より多くの機能性材料を含むことが可能となる。
以下、実施例1を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明を限定するものではない。実施例1として、図1に示した二層構成の形成体(S)を作製した。基材(1)は、不透明度80%の白色プラスチックカードとした。
第一の画線(3)は、画線幅(W1)100μm、画線高さ(h1)10μmの直線状とし、第一のピッチ(D1)を300μmとして形成した。また、第一の色材は、マゼンタ色とした。
盛り上がりを有する第二の画線(4)は、画線幅(W2)150m、画線高さ(h2)30μmの直線状とし、第二のピッチ(D2)を300μmとして形成した。また、第二の色材は、深緑色とした。
盛り上がりを有する第三の画線(6)は、画線幅(W3)100m、画線高さ(h3)30μmの直線状とし、第三のピッチ(D3)を300μmとして形成した。また、第三の色材は、透過性を有するシアン色とした。また、第三の色材には、紫外励起可視発光特性を有する顔料を含ませた。
第一の画線(3)、第二の画線(4)及び第三の画線(6)は、基材(1)上に、第一の色材、第二の色材及び第三の色材を用いてインクジェット・プリンタ(トライテック社製「Patternig JET」)により印刷することで形成した。なお、各色材においては、インクジェット・プリンタで出力可能となるように、あらかじめ調整を行った。
実施例1で作製した形成体(S)を、第一の観察角度(E1)から観察したところ、第一の画像(A)である三つのダイヤの図形をマゼンタ色で視認することができた。次に、形成体(S)を傾けて観察したところ、第二の画像(C)であるNPBのアルファベットをシアン色で視認することができた。さらに形成体(S)を、紫外線光源下で観察したところ、第二の画像(C)であるNPBのアルファベットを発光画像として視認することができた。
図22は、実施例2の形成体(S)を示す図である。なお、前述した実施例1と同一の構成については適宜説明を省略する。実施例2における形成体(S)は、図22(c)に示すように、三つの背景画像を有した積層構成とした。
第二の背景画像(D)を形成する盛り上がりを有する第六の画線(11)は、画線幅150μm、画線高さ20μmの直線状とし、第一の背景画像(B)と同じピッチで形成した。
第三の背景画像(図示せず)を形成する盛り上がりを有する第七の画線(12)は、画線幅150μm、画線高さ20μmの直線状とし、第一の背景画像(B)と同じピッチで形成した。
第一の画線(3)を形成する第一の色材は、実施例1と同じ色材とした。第二の画線(4)を形成する第二の色材は、透過性を有するシアン色とし、第三の画線(6)を形成する第三の色材は、カーボンブラックを主体とした黒色とし、第六の画線(11)を形成する第八の色材は、透過性を有するマゼンタ色とし、第七の画線(12)を形成する第九の色材は、透過性を有するイエロー色とした。
第一の画線(3)、第二の画線(4)、第三の画線(6)、第六の画線(11)及び第七の画線(12)は、基材(1)上に、第一の色材、第二の色材、第三の色材、第八の色材及び第九の色材を用いてフラット式のスクリーン印刷機により印刷することで形成した。なお、各色材においては、スクリーン印刷可能となるように、あらかじめ調整を行った。
実施例1で作製した形成体(S)を第一の観察角度(E1)から観察したところ、第一の画像(A)である三つのダイヤの図形をマゼンタ色で視認することができた。その際、四層構成である画線のうち、基材(1)に対して最上層に位置する第三の画線(6)は、黒色で視認することができた。また、第三の画線(6)の下に積層した第二の画線(4)、第六の画線(11)及び第七の画線(12)は、透過性を有するシアン色、マゼンタ色及びイエロー色が混色した黒色として視認することができた。よって、第三の画線(6)と第三の画線(6)の下に積層した複数の画線は、等色として視認することができた。
次に、形成体(S)を傾けて観察したところ、第二の画像(C)であるNPBのアルファベットを黒色で視認することができた。
一般の商業印刷で使用されるブラック(Bk)は、カーボンブラックを主体としていることから、赤外線吸収特性を有する。一方、シアン、マゼンタ及びイエローは、赤外線吸収特性を有さない。よって、形成体(S)を赤外線光源下で観察したところ、第二の画像(C)であるNPBのアルファベットを視認することができた。
以上、本発明に係る実施例に基づいて実施の形態を説明したが、上記実施例に限定されることなく特許請求の範囲記載の技術思想の範囲内で、更にいろいろな実施例があることはいうまでもない。