本発明の実施形態について図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他色々な形態が実施可能である。
図1は、本発明における偽造防止媒体(以下、「媒体」という。)(S)の一実施例を示す平面図である。
媒体(S)は、例えば、紙幣、証券、パスポート、身分証明書等の貴重印刷物であり、
紙、プラスチックカード等の印刷可能な基材(1)上における少なくとも一部の領域(Z)内に、基材(1)と異なる色の印刷画像(2)を有している。印刷画像(2)は、可視光源下では、一つの画像として視認されるが、中赤外線領域から遠赤外線領域の正反射領域では、視認可能となる秘匿情報を有している。
図2は、印刷画像(2)を説明する平面図である。印刷画像(2)は、文字、数字、模様等の有意味情報を表しており、図2では、「ABC」の文字を表している。印刷画像(2)は、可視光源下では一つの画像として視認されるが、平滑性の違いにより、模様部(3)及びカモフラージュ部(4)に区分けされる。
原理については詳細に後述するが、平滑性が異なることで、可視光源下において一つの画像として視認される印刷画像(2)が、中赤外線領域から遠赤外線領域の正反射領域では、模様部(3)又はカモフラージュ部(4)の一方のみが視認可能となる。
次に、模様部(3)とカモフラージュ部(4)のそれぞれの構成について説明する。図3は、模様部(3)及びカモフラージュ部(4)の構成を示す平面図である。図3(a1)に示す模様部(3)は、印刷画像(2)を平滑性の差により区分けした場合の、一方の印刷部であり、図3(a1)では、印刷画像(2)である文字「ABC」のうち、文字「AC」のみを表している。
図3(a2)の拡大図に示すように、模様部(3)は、基材(1)とは異なる色のインキで形成された模様要素(3a)が万線状に配置されてなるか、又は、図3(a3)の拡大図に示すように、模様要素(3a)がマトリックス状に配置されてなる。
図3(b1)に示すカモフラージュ部(4)は、印刷画像(2)を平滑性の差により区分けした場合の、他方の印刷部であり、図3(b1)では、印刷画像(2)である文字「ABC」のうち、文字「B」のみを表している。
図3(b2)の拡大図に示すように、カモフラージュ部(4)は、基材(1)とは異なる色のインキで形成されたカモフラージュ要素(4a)が万線状に配置されてなるか、又は、図3(b3)の拡大図に示すように、模様要素(3a)がマトリックス状に配置されてなる。模様部(3)とカモフラージュ部(4)を形成するインキは、同じ色でも異なる色でも良い。以下、模様部(3)とカモフラージュ部(4)が同じ色のインキとして説明する。
本発明において、模様要素(3a)及びカモフラージュ要素(4a)は、それぞれが画線、点、画素の少なくとも一つ又はそれぞれの組合せである。図4は、模様要素(3a)及びカモフラージュ要素(4a)の形状を示す図であり、一例として模様要素(3a)を示す平面図である。
画線とは、図4(a)、図4(b)、図4(c)及び図4(d)に示すような、直線、破線、波線又は破線状の波線のことである。点とは、網目スクリーン、コンタクトスクリーン等により、印刷物上に構成された点である。点及び後述する画素は、直線状又は波線状に複数配置されて、点群又は画素群を形成する。
点群又は画線群と成ることで画線状に構成された模様要素(3a)が、万線状に配置されることで、図3(a)に示す模様部(3)となる。点形状は、円形ドットに限定されるものではなく、ランダムドットや本出願人が先に出願した特開平11−268228号公報で提案している特殊網点生成法を用いて意匠性を加味した入力画像を網点(ハーフトーンスクリーン)から成る、連続階調網点に変換した自由度のある特殊網点形状を用いても良い。
画素とは、図形、文字等の二次元画像を縦横の線で分割した、その最小単位のことである。画素形状は、図4(e)、図4(f)、図4(g)、図4(h)、図4(i)及び図4(j)に示すような、円形状、楕円形状、多角形状、文字形状のことである。図4(h)に示した文字形状は、一般的に微小文字又は特殊網点と呼ばれるが、本発明においては画素とする。さらに、図4(i)及び図4(j)に示すように、要素は、画線、点及び画素をそれぞれ組み合わせても良い。なお、本実施形態については模様要素(3a)及びカモフラージュ要素(4a)を、図4(a)に示す直線状の画線として説明する。
次に、模様部(3)とカモフラージュ部(4)の平滑性の差が生じる原理について説明する。
図5は、模様部(3)とカモフラージュ部(4)の平滑性の差を示す断面図である。模様部(3)及びカモフラージュ部(4)は、インキ膜厚又は面積率が異なることで、平滑性に差が生じる。なお、本実施形態における平滑性とは、模様部(3)及びカモフラージュ部(4)の表面の平らさ、滑らかさを表すものであり、ベック平滑度試験器(JIS P 8130)での測定値やレーザ変位計で測定される表面粗さの指標のことである。本実施形態においては、平滑性が高いほど、インキ皮膜の表面が平坦であり、平滑性が低いほど、インキ皮膜の表面が粗く凹凸がある構成となる。
図5は、模様部(3)とカモフラージュ部(4)のインキ膜厚が異なる場合の、図2のX1−X1’断面における拡大図である。なお、図5及び後述する図6(a)に示す断面図は、平滑性の差を詳細に説明するために一部を抜粋した図となっている。
図5に示すように、模様部(3)とカモフラージュ部(4)のインキ膜厚が異なる場合、印刷方式によるインキ定着挙動や付与方法に起因して平滑性が異なる。
インキの定着挙動とは、基材(1)上に付与されたインキが、どのように基材(1)に定着(硬化)するかを示すものである。例えば、模様部(3)が、カモフラージュ部(4)よりインキ膜厚が厚い場合、表面張力、乾燥や基材(1)に対する浸透の挙動等の影響により、インキから成る模様部(3)に凸形状(盛り)が発生しやすく、結果としてインキ皮膜表面の平坦な部分が減少する場合が多い。
また、十分な膜厚を持たせる場合にはインクジェット印刷等により基材(1)を被覆しながら、意図的にインキ皮膜に凹凸を付与することも可能である。例えば、基材(1)に対して、印刷(インキの吐出)を同じ位置に複数回に分けて行うことにより凹凸を付与することが可能である。よって、インキの定着挙動や、意図的な凹凸の付与により、インキ膜厚を変更することで、平滑性に差を生じさせることが可能である。
また、図6(a)は、模様部(3)とカモフラージュ部(4)の面積率が異なる場合の、図2のX1−X1’断面における拡大図であり、図6(b)は、図6(a)に示す模様要素(3a)とカモフラージュ要素(4a)の平面構成を示す拡大図である。
本実施形態における面積率とは、各要素(3a、4a)を画素又は画線とした場合には、所定の大きさ及び形状の画素、又は、所定の画線幅及び大きさの画線をベタ面積で構成した場合を100%とした際の面積に対する、画線又は画素のインキが設けられる部分のみの面積の比率をいう。
例えば、図6(b)に示すように、模様要素(3a)を画線とした場合には、所定の画線幅(W3)及び大きさ(K)の画線をベタ面積で構成した場合を100%とした際の面積に対する、画線のインキが設けられる部分のみの面積の比率をいう。
図6(b)において、カモフラージュ部(4)は面積率100%の実線から構成されたカモフラージュ要素(4a)から成る。そのため、所定の画線幅(W4)を有するカモフラージュ要素(4a)は画線上に平坦な部位が形成されることとなり、平滑性は高い。
一方、模様部(3)は、面積率90%の斜めの微細画線から構成された模様要素(3a)から成る。模様要素(3a)は複数の微細画線から構成されるため、インキが設けられる部分は、基材(1)上に、インキ膜厚に応じた微小な凹凸が形成されることとなる。よって、ベタ画線からなるカモフラージュ部(4)と比べ、平滑性が低くなる。
しかしながら、可視光領域では、面積率の差及びインキ膜厚の差に起因する平滑性の差を、肉眼で識別することができない。よって、模様部(3)及びカモフラージュ部(4)から成る一つの画像として、印刷画像(2)が視認される。
中赤外線領域から遠赤外線領域では、インキ膜厚又は面積率を互いに異ならせた場合、平滑性の差に起因し、模様部(3)とカモフラージュ部(4)において中赤外線領域から遠赤外線領域の正反射光の強度に差が生じる。ここで正反射光の強度とは、例えばサーモグラフィによる測定値のことを言う。
なお、本発明における中赤外線領域とは、3000〜5000nmの波長域のことであり、遠赤外線領域とは、8000〜14000nmの波長域のことである。
中赤外線領域から遠赤外線領域において、面積率が100%である平滑性が高い方では、正反射光の強度が高いため、画像上では輝度が高く(白く)表示される。一方、面積率が90%である平滑性が低い方は、平滑性が高い方と比較して正反射光の強度が低いため輝度が低く(黒く)表示される。
また、基材(1)については、基材(1)の平滑性に応じて、中赤外線又は遠赤外線反射特性に対応した強度の明るさが視認される。例えば、平滑性が高い時には、輝度が高く視認され、平滑性が低い時には、輝度が低く視認される。
よって、中赤外線領域から遠赤外線領域では、図2に示す印刷画像(2)は、模様部(3)とカモフラージュ部(4)のうち、一方が基材(1)と等色で視認される。もしくは、模様部(3)、基材(1)、カモフラージュ部(4)がそれぞれ異なる強度で視認される。
なお、中赤外線領域から遠赤外線領域において、模様部(3)とカモフラージュ部(4)が異なる輝度で視認される構成とする場合は、中赤外線領域から遠赤外線領域における基材(1)の影響を無視することができる。しかしながら、模様部(3)又はカモフラージュ部(4)を潜像とし、中赤外線領域から遠赤外線領域において消失又は発現させるためには、模様部(3)又はカモフラージュ部(4)の一方を、基材(1)と等色として視認されるように、基材(1)、模様部(3)及びカモフラージュ部(4)を適宜設計する。
なお、中赤外線領域から遠赤外線領域において、模様部(3)とカモフラージュ部(4)の正反射光の強度に差が生じる平滑性の差は、インキ、基材、塗布の方法等によって異なるため、中赤外線領域から遠赤外線領域において、模様部(3)及びカモフラージュ部(4)が異なる輝度で視認可能となるように、適宜設計する。
また、可視光源下において表面の凹凸の違いが視認しやすくなり、模様部(3)とカモフラージュ部(4)が等色で視認されず、模様部(3)とカモフラージュ部(4)が区分けして視認される条件は、インキ、基材、塗布の方法等によって異なるため、模様部(3)とカモフラージュ部(4)が可視光源下において肉眼で等色として認識可能となるように、適宜設計する。
なお、基材(1)の平滑性は特に限定されるものではないが、印刷後の印刷面において平滑性が高い部位と低い部位が付与可能で、かつ、中赤外線領域から遠赤外線領域において、模様部(3)及びカモフラージュ部(4)が異なる輝度で視認可能となるものを、適宜選択する。
次に、模様部(3)とカモフラージュ部(4)の区分けについて説明する。図7は、
印刷画像(2)が、インキ膜厚の差により模様部(3)とカモフラージュ部(4)に区分けされた場合を示す模式図である。なお、図7では、詳細に説明するために、模様部(3)とカモフラージュ部(4)をいずれも模式的に隣り合う矩形領域として図示している。
図7(a)は、模様部(3)とカモフラージュ部(4)のインキ膜厚が異なる場合の平面図であり、図7(b)は、図7(a)のX2−X2’断面を示す図である。図7では、一例として模様部(3)のインキ膜厚を、カモフラージュ部(4)より大きくしているが、インキ膜厚の差により模様部(3)とカモフラージュ部(4)に区分けされるならば、どちらのインキ膜厚が大きくても良い。
以下、本実施形態では、模様部(3)とカモフラージュ部(4)がインキ膜厚の差により区分けされる場合、模様部(3)のインキ膜厚(h1)が、カモフラージュ部(4)のインキ膜厚(h2)より大きいとして説明する。
模様部(3)のインキ膜厚(h1)と、カモフラージュ部(4)のインキ膜厚(h2)の差は、インキの光沢、インキの色によりその許容範囲は異なるが1μm〜30μmが、好ましい。
インキ膜厚の差が1μm未満の場合、中赤外線領域から遠赤外線領域で、模様部(3)とカモフラージュ部(4)の正反射光の強度に差が生じづらくなり、模様部(3)とカモフラージュ部(4)が区分けして視認できず、好ましくない。
また、インキ膜厚の差が30μmを超える場合、可視光源下において、模様部(3)とカモフラージュ部(4)のインキ膜厚差に起因する、図7(b)に示す側面(E)の光沢や陰影、濃度差等により、模様部(3)とカモフラージュ部(4)が容易に区分けして視認され、好ましくない。
模様部(3)とカモフラージュ部(4)のインキ膜厚の差は、インクジェットプリンタ、凹版印刷等公知の印刷版面及び印刷方式により形成する。例えば、凹版印刷のように、版面を用いる印刷方式の場合は、製版時において、模様部(3)とカモフラージュ部(4)の版面深さを異ならせることにより、印刷時に版面から基材(1)に転移するインキ量が異なることで、インキ膜厚の差が生じる。
また、スクリーン印刷のように、版面を用いるが版面深さが一定の印刷方式の場合は、
紫外線硬化型インキにより、模様部(3)及びカモフラージュ部(4)を形成したのち、インキ硬化時に、模様部(3)とカモフラージュ部(4)のどちらか一方にマスクを用いて、紫外線照射時間を異ならせることで、基材(1)に転移したインキのインキ浸透時間の差に起因してインキ浸透量が異なることで、インキ膜厚の差が生じる。
さらに、インクジェットプリンタ、レーザープリンタ等、版面を用いない印刷方式の場合は、印刷(インキの吐出)を複数回行うことにより形成する。例えば、乾燥機構を持つインクジェットプリンタを用い、印刷を複数回にわけて行い、同位置へ塗布と乾燥を繰り返すことで、模様部(3)及びカモフラージュ部(4)のインキ膜厚を調整する。
次に、印刷画像(2)が、面積率の差により模様部(3)とカモフラージュ部(4)に区分けされた場合について説明する。
図8は、模様部(3)とカモフラージュ部(4)の面積率の差による区分けを示す模式図である。模様部(3)とカモフラージュ部(4)が、それぞれ模様要素(3a)及びカモフラージュ要素(4a)を万線状に配置されているが、面積率の差を生じさせるために、模様要素(3a)は複数の微細要素(3b)から成る構成とし、カモフラージュ要素(4a)は実線としている。
図8(a)は、模様部(3)とカモフラージュ部(4)の面積率が異なる場合の平面図であり、図8(b)は、図8(a)の拡大図である。図8では、一例として模様部(3)の面積率を、カモフラージュ部(4)の面積率より小さくしているが、面積率差により模様部(3)とカモフラージュ部(4)に区分けされるならば、どちらの面積率が大きくても良い。
以下、本実施形態においては、模様部(3)とカモフラージュ部(4)が面積率の差により区分けされる場合、模様部(3)の面積率が、カモフラージュ部(4)の面積率より小さいとして説明する。
図8(a)及び図8(b)に示すように、模様部(3)は、模様要素(3a)が第1の方向(V)に第1のピッチ(d1)で複数配置される。また、カモフラージュ部(4)は、カモフラージュ要素(4a)が、模様要素(3a)を配置した方向と同じ方向である第1の方向(V)に、模様要素(3a)と同じ又は異なる第2のピッチ(d2)で複数配置される。
模様要素(3a)及びカモフラージュ要素(4a)を配置する、第1のピッチ(d1)及び第2のピッチ(d2)は、印刷方式、用いる基材(1)、要素幅(W3)を考慮し、それぞれ100〜3000μmの範囲内で適宜設定される。
本発明は、模様部(3)とカモフラージュ部(4)の平滑性が異なることで、中赤外線領域から遠赤外線領域において一方のみを視認可能としている。第1のピッチ(d1)及び第2のピッチ(d2)が3000μmを超える場合には、ピッチが小さい場合と比べ、基材(1)が多く露出する。よって、中赤外線領域から遠赤外線領域では、基材(1)の平滑性が影響することで、模様部(3)又はカモフラージュ部(4)の視認性が低下し、好ましくない。
また、模様要素(3a)及びカモフラージュ要素(4a)を配置する、第1のピッチ(d1)及び第2のピッチ(d2)を100μm未満とした場合は、図9に示すように、複数配置された模様要素(3a)及びカモフラージュ要素(4a)はそれぞれ隙間なく配置されることから、可視光源下において肉眼では、模様部(3)及びカモフラージュ部(4)はいずれもベタ領域として視認される。
隙間なく配置された際には、中赤外線領域から遠赤外線領域での模様部(3)及びカモフラージュ部(4)の視認性は向上することとなるが、可視光源下においては、面積率の差が濃度の差として肉眼で容易に視認可能となるため、好ましくない。
なお、図8及び図9では、第1のピッチ(d1)及び第2のピッチ(d2)をいずれも一定ピッチで図示しているが、前述した範囲内であれば、一部異なるピッチとすることも可能である。
さらには、前述した範囲内であれば、図10(a)に示すように、模様要素(3a)とカモフラージュ要素(4a)を異なるピッチとしたり、図10(b)に示すように、配置するピッチは同じだが、複数の模様要素(3a)と複数のカモフラージュ要素(4a)を第1の方向(V1)にずらして配置したりすることも可能である。
図10(a)及び図10(b)に示す配置とした場合、前述した図2に示すように、印刷画像(2)において、模様部(3)とカモフラージュ部(4)が隣接して配置していない場合は特に問題はない。しかしながら、後述する模様部(3)の周囲にカモフラージュ部(4)が配置された構成では、ピッチの差に起因して模様部(3)の輪郭が強調されるため、可視光源下において、模様部(3)とカモフラージュ部(4)が識別可能となり、好ましくない。
模様要素(3a)の画線幅(W3)と、カモフラージュ要素(4a)の画線幅(W4)は、それぞれ20〜2000μmの範囲内で適宜設定することが可能である。
各要素(3a、4a)の画線幅(W3、W4)が、20μm未満の場合は、用いるインキの濃度によっては印刷画像(2)の視認性が悪くなったり、インキ皮膜の平滑な部位が少なくなったりするため、好ましくない。例えば、白色の基材(1)上に、黒、青等の濃度が高いインキを用いる場合は問題ないが、黄色、淡いピンク色等の濃度が低いインキを用いる場合、濃度が高いインキと比べ、視認性が悪くなる。
また、各要素(3a、4a)の画線幅(W3、W4)が、2000μmを超える場合は、用いるインキの濃度によっては模様要素(3a)とカモフラージュ要素(4a)の面積率の差が肉眼で視認可能となり、好ましくない。例えば、前述した濃度が低いインキを用いる場合は問題ないが、濃度が高いインキを用いる場合、基材(1)の色と、各要素(3a、4a)色の濃度差に起因し、可視光源下において模様要素(3a)とカモフラージュ要素(4a)が識別可能となり、好ましくない。
可視光源下において、各要素(3a、4a)を同じ画線として視認可能とするために、各要素(3a、4a)は同じ画線幅で複数配置される。なお、前述した図3に示すように、基材(1)上では、模様部(3)とカモフラージュ部(4)が隣接していない場合には、同じ画線幅とすることで、各要素(3a、4a)を同じ画線として視認することが可能となるが、模様部(3)とカモフラージュ部(4)を隣接して配置した場合には、それぞれの画線幅を調整する必要がある。なお、画線幅の調整については、後で詳細に説明する。
模様部(3)とカモフラージュ部(4)の面積率の差は、インキの膜厚、インキの光沢及びインキの色によりその許容範囲は異なるが、1〜25%とする。
面積率の差が1%未満の場合、中赤外線領域から遠赤外線領域では、模様部(3)とカモフラージュ部(4)に輝度差が生じず、模様部(3)を視認しづらくなり、好ましくない。
また、面積率の差が25%を超える場合、可視光源下では、肉眼で模様部(3)とカモフラージュ部(4)の面積率の差を視認可能となることで、模様部(3)とカモフラージュ部(4)が肉眼で等色として視認されず、好ましくない。
次に、図8(c)に図示した、模様要素(3a)を構成する微細要素(3b)について詳細に説明する。模様要素(3a)は、カモフラージュ要素(4a)よりも面積率を小さくするために、図8(c)の拡大図に示すように、複数の微細要素(3b)で構成される。微細要素(3b)とは、画線幅(W3b)の傾斜した微細画線であり、第1の方向(V1)とは異なる第2の方向(V2)に複数配置されることで、模様要素(3a)となる。
微細要素(3b)の画線幅(W3b)は、前述した模様部(3)とカモフラージュ部(4)の面積率の差が1〜25%となるように、適宜設定する。
一例とし、図8(c)において、カモフラージュ要素(4a)の画線面積率を100%とするために、画線幅(W4)300μmの実線とした。また、模様要素(3a)の画線面積率を80%とするために、ピッチ100μm、画線幅(W3b)80μmの微細要素(3b)から成る構成とした。
なお、模様要素(3a)とカモフラージュ要素(4a)は面積率が異なることから、インキの濃度によっては可視光源下において肉眼で等色として認識されなくなることもあるが、等色で認識されない場合の対応については後述することとし、ここでは等色として認識されたものとして説明する。
この場合、画線面積率は、一方であるカモフラージュ要素(4a)が100%であるのに対し、他方である模様要素(3a)は80%となり、画線の表面性が異なる。よって、中赤外線領域から遠赤外線領域では、模様部(3)とカモフラージュ部(4)の正反射光の強度に差が生じ、模様部(3)とカモフラージュ部(4)が区分けして視認可能となる。
なお、図8(c)では、模様要素(3a)を傾斜した微細画線である微細要素(3b)を万線状に配置することで構成しているが、中赤外線領域から遠赤外線領域で、模様部(3)とカモフラージュ部(4)の輝度差が生じる構成であればこれに限らず、他の構成とすることも可能である。
図11は、微細要素(3b)の構成を示す平面図であり、図11(a)から図11(d)は、それぞれ左図が模様要素(3a)を示し、右図が模様要素(3a)を構成する微細要素(3b)を示す模式図である。
例えば、図11(a)に示すように、模様要素(3a)を複数の縦方向に分断された画線である微細要素(3b)を万線状に配置することで構成したり、図11(b)に示すように、模様要素(3a)を複数の横方向に分断された画線である微細要素(3b)を万線状に配置することで構成したりすることも可能である。
また、図8(c)や図11(a)では、微細要素(3b)の画線幅(W3b)を、複数の微細要素(3b)では、すべて同じとしているが、図11(b)に示すように、複数の微細要素(3b)では、画線幅(W3b1)と画線幅(W3b2)のように異なる画線幅が混在した構成とすることも可能である。なお、複数の微細要素(3b)において画線幅を異ならせる場合は、可視光源下では複数の模様要素(3a)を等色に視認可能であり、かつ、中赤外線領域から遠赤外線領域では、模様部(3)とカモフラージュ部(4)の輝度差が生じる構成となるように、適宜調整する。
なお、微細要素(3b)は図8(c)において重なることなく配置されているが、部分的に重なる領域を有して配置されてもよい。しかしながら、微細要素(3b)が重なる領域については、用いるインキによっては濃度が高く視認されることから、重なる領域の大きさについては、適宜調整する。
さらには、微細要素(3b)は画線状に限らず、図11(c)及び図11(d)に示す、マトリックス状に配置した構成とすることも可能である。その際においても、前述した画線と同様に、中赤外線領域から遠赤外線領域で、模様部(3)とカモフラージュ部(4)の輝度差が生じる構成となるように、適宜調整する。
なお、図8(c)及び図11では、面積率の差を生じさせるために、模様部(3)を、微細要素(3b)から成る模様要素(3a)を複数配列することで形成し、カモフラージュ部(4)を、面積率100%の画線であるカモフラージュ要素(4a)で形成していたが、肉眼で等色に視認可能であり、かつ、中赤外線領域から遠赤外線領域では、カモフラージュ部(4)と輝度差が生じる構成であればこれに限らず、他の構成とすることも可能である。
例えば、前述した模様部(3)とカモフラージュ部(4)の面積率の差が1〜25%となるのであれば、図12(a)に示すように、模様要素(3a)及びカモフラージュ要素(4a)を、いずれも微細要素(3b、4b)で構成することも可能である。また、その際の微細要素(3b、4b)の形状は、同じ形状でも、図12(a)に示すように、模様要素(3a)とカモフラージュ要素(4a)で異なる形状としても、どちらでも良い。
また、図12(b)に示すように、模様部(3)を構成する複数の模様要素(3a)において、複数の模様要素(3a)は、一つ一つが互いに異なる形状の微細要素(3b)から構成されても良く、更には、一つの模様要素(3a)内では、異なる形状の微細要素(3b)から成る構成としても良い。図11及び図12に示した複数の微細要素(3b)により模様要素(3a)を構成することで、模様部(3)とカモフラージュ部(4)は、網点面積率の差や、画素の粗密により、面積率の差が生じる。
次に、模様部(3)及びカモフラージュ部(4)を形成する有色インキについて説明する。
模様部(3)を形成するインキと、カモフラージュ部(4)を形成するインキは、同じインキでも異なるインキでも良い。
同じインキとした場合には、一種類のインキを用いて、赤外特性を有する媒体(S)を作製することが可能となり、複数種類のインキを用いた場合と比べ、より安価で作製することが可能となり、好ましい。
また、模様部(3)を形成するインキと、カモフラージュ部(4)を形成するインキは、等色のインキでも異なる色のインキでも良い。さらには、模様部(3)及びカモフラージュ部(4)は、複数種類のインキから成る構成でも良い。
なお、模様部(3)及びカモフラージュ部(4)を形成する有色インキは、中赤外線領域から遠赤外線領域において、基材(1)と正反射光の強度が異なり、サーモグラフィ等で認識可能なインキとする。
上記インキは、例えばレーザープリンタで使用されるトナー、インクジェットプリンタで使用されるプロセスインキ等でも良く、更には、中赤外線領域から遠赤外線領域において正反射光の強度が強くなる導電性インキを用いることが、好ましい。中赤外線領域から遠赤外線領域では正反射光の強度が強くなる導電性インキを用いることで、中赤外線領域から遠赤外線領域で基材(1)の正反射光の強度との差が大きくなり、更に容易に観察が可能となる。
導電性インキは、導電性を有する物質が含まれるインキのことであり、具体的には、銅粉、銀粉、カーボン、メジウム等を混合したインキのことである。
次に、図13を用いて、以上の構成から成る媒体(S)の視認状態について説明する。図13(a1)及び図13(a2)は、一例として模様部(3)の面積率を、カモフラージュ部(4)の面積率よりも小さく構成した媒体(S)を、可視光源下で観察した際の模式図及び平面図であり、図13(b1)及び図13(b2)は、図13(a)の媒体(S)を中赤外線領域から遠赤外線領域で観察した際の模式図及び平面図である。
図13において、模様部(3)及びカモフラージュ部(4)を、同じ色の有色インキで形成した場合、図13(a1)に示すように、可視光源下において媒体(S)を肉眼で観察した際、模様部(3)とカモフラージュ部(4)は同じ色のインキで形成していることから、肉眼では区別して視認することができない。よって、図13(a2)に示すように、印刷画像(2)は、一様な濃度を有する画像として視認される。
また、図13(b1)に示すように、媒体(S)を中赤外線領域から遠赤外線領域で観察した場合には、前述のとおり平滑性が高い(面積率が大きい)領域であるカモフラージュ部(4)は、正反射光の強度が高いため、輝度が高く(白く)表示される。一方、平滑性が低い(面積率小さい)領域である模様部(3)及び基材(1)は、平滑性が高い方と比較して正反射光の強度が低いため輝度が低く(黒く)表示される。
よって、中赤外線領域から遠赤外線領域では、図13(b2)に示すように、模様部(3)は輝度が低く視認されることにより、基材(1)と等色に視認され、文字「AC」は視認することができない。一方、カモフラージュ部(4)は輝度が高く視認されることで、基材(1)と異なる輝度で視認される。それにより、カモフラージュ部(4)である文字「B」のみが視認可能となる。
なお、模様部(3)においても、面積率又はインキ膜厚の大きさによっては、中赤外線領域から遠赤外線領域で基材(1)との差が視認されるが、本実施形態では、輝度が高く視認される方のみが視認されているとして説明する。
また、図13において、模様部(3)及びカモフラージュ部(4)を、異なる色の有色インキで形成した場合、図13(a1)に示すように、可視光源下において媒体(S)を肉眼で観察した際、模様部(3)である文字「AC」と、カモフラージュ部(4)である文字「B」は異なる色で視認される。
なお、媒体(S)を中赤外線領域から遠赤外線領域で観察した場合には、前述した模様部(3)とカモフラージュ部(4)が同じ色のインキで形成された場合と同様であることからに、説明を省略する。
さらには、図13において、可視光源下におけるカモフラージュ部(4)の隠蔽性を向上させるために、可視光源下において模様部(3)の文字「AC」のうち、文字「A」のみと、カモフラージュ部(4)である文字「B」を同じ色の有色インキで形成し、模様部(3)の文字「C」のみを異なる色の有色インキで形成しても良い。
例えば、印刷画像(2)において、文字「A」「B」を赤色のインキで形成し、文字「C」を青色で形成した場合、図13(a1)に示すように、可視光源下において媒体(S)を肉眼で観察した際、印刷画像(2)において、文字「AB」が赤色で、文字「C」が青い色で視認される。
実際には、中赤外線領域から遠赤外線領域において視認可能な画像はカモフラージュ部(4)の文字「B」であるが、模様部(3)の一部とカモフラージュ部(4)のインキの色を同色とし、模様部(3)の一部である文字「C」のみを異なる色とすることで、観察者は文字「C」に秘匿情報が付与されていると感じる。
このように、模様部(3)とカモフラージュ部(4)の一部を等色とすることで、異なる色がダミー情報として視認されるという効果を奏することが可能となる。
なお、模様部(3)とカモフラージュ部(4)を同じ色のインキで形成し、インキ膜厚の差により区分けした場合、模様部(3)とカモフラージュ部(4)の画線幅又は画素の大きさは、インキ膜厚差により生じる印刷濃度の違いを考慮し、インキ膜厚の大きい方の画線幅又は画素の大きさを印刷濃度の違いに応じて低くするほうが望ましい。
模様部(3)とカモフラージュ部(4)のインキ膜厚が異なり、画線幅や画素の大きさを同じとした場合、インキ膜厚の大きい方が、濃度が高く視認される。よって、肉眼において模様部(3)とカモフラージュ部(4)を等色に形成するのが難しく、好ましくない。
一方、模様部(3)とカモフラージュ部(4)のインキ膜厚が異なり、画線幅又は画素の大きさを異ならせる場合、インキ膜厚に起因する印刷画線の濃度差を考慮して、濃度差の比率に応じて膜厚が高い部位の画線幅もしくは画素の大きさを略同じ比率で小さくすることで、肉眼で等色に見える画線又は画素を構成することが可能となる。よって、画線幅もしくは画素の大きさが同じ場合と比べて色合わせが簡易になり、好ましい。
例えば、インキ膜厚の差により、画線幅200μmの画線の印刷濃度が10%濃くなった場合においては、インキ膜厚の大きい方の画線幅を。約180μmとすることで、肉眼ではその差が視認しづらい二つの領域を作成することが可能である。なお、ここでは画線の幅を変更する例を示したが、肉眼で等色に見えればよく、画素の大きさなど他の手段で調整してもよい。
前述のとおり、模様部(3)とカモフラージュ部(4)は同じインキで形成される。しかしながら、可視光源下において同じインキでは、インキ膜厚の大きいところは濃度が濃く視認され、インキ膜厚の小さいところは濃度が薄く視認される。よって、印刷画像(2)を形成するインキの濃度や、模様部(3)及びカモフラージュ部(4)の膜厚差によっては、可視光源下において模様部(3)が視認可能となる可能性がある。
そこで、同じ面積率で模様部及びカモフラージュ部を形成する場合には、基材(1)上に、あらかじめ印刷画像(2)を形成するインキの色に影響を与えない色のインキを用いて下地印刷を施すことにより、ある程度のインキ膜厚を基材(1)上に形成しておくことが、好ましい。
例えば、模様部(3)とカモフラージュ部(4)のうち、インキ膜厚を大きく形成する一方を配置する基材(1)上に、あらかじめ下地印刷を施すことで、ある程度のインキ膜厚を基材(1)上に形成したのち、下地印刷の上に、模様部(3)又はカモフラージュ部(4)のうち、インキ膜厚を大きく形成する一方を配置し、他方を基材(1)上に配置する。
それにより、一種類のインキを用いた場合と同様に、模様部(3)とカモフラージュ部(4)はインキ膜厚の差が生じるが、下地印刷を除く、模様部(3)及びカモフラージュ部(4)を形成する、インキの塗布量を同一にすることが可能となり、可視光源下における濃度差が生じづらくなる。
よって、一種類のインキを用いた場合と比べ、可視光源下において、模様部(3)とカモフラージュ部(4)が区分けしづらい、隠蔽性の高い印刷画像(2)として形成することが可能となる。
図14は、下地印刷を有する印刷画像(2)を示す模式図である。なお、図14では、詳細に説明するために、模様部(3)とカモフラージュ部(4)をいずれも模式的に隣り合う矩形領域として図示している。
図14(a)は、下地層(5)を有する模様部(3)とカモフラージュ部(4)を示す平面図であり、図14(b)は、図14(a)のX3−X3’断面を示す図である。図7では、一例として下地印刷である下地層(5)を施したのち、その上に模様部(3)を形成している。
下地層(5)を構成するインキは可視光領域での影響を抑えるため、基材(1)と同色のインキ、又は、白インキ、透明インキ等模様部(3)のインキよりも濃度が低いインキが望ましい。下地層(5)のインキが、模様部(3)のインキよりも濃度が高い場合、可視光源下において模様部(3)と下地層(5)の色が混色して視認されることで、模様部(3)とカモフラージュ部(4)が異なる色として視認され、好ましくない。
図14(b)において、下地層(5)と模様部(3)は同じ面積で付与しているが、必ずしも同じ面積で付与する必要はなく、例えば、下地層(5)が基材(1)と同色のインキの場合は模様部(3)よりも大きめの面積で付与してもよい。
なお、下地層(5)のインキ膜厚(h1a)、模様部(3)のインキ膜厚(h1b)及び基材(1)上に形成するカモフラージュ部(4)のインキ膜厚(h2)は、模様部(3)とカモフラージュ部(4)が肉眼で略等色となるように、適宜調整をする。その結果、可視光源下において、模様部(3)とカモフラージュ部(4)が等色で視認されことによって、肉眼で区分けしづらい、隠蔽性の高い印刷画像(2)として形成することが可能となる。
例えば、基材(1)と同色のインキを下地層(5)に用いる場合、下地層(5)のインキ膜厚(h1a)は、表面に凹凸が施されるように印刷し、下地層(5)上に形成する模様部(3)のインキ膜厚(h1b)と、基材(1)上に形成するカモフラージュ部(4)のインキ膜厚(h2)を略同じインキ膜厚となるように施すように調整する。
その結果、下地層(5)の上に形成する模様部(3)のインキ膜厚(h1b)と、基材(1)上に形成するカモフラージュ部(4)のインキ膜厚(h2)が同じインキ膜厚となることで、可視光源下において、模様部(3)とカモフラージュ部(4)が等色で視認される。よって、肉眼で区分けしづらい、隠蔽性の高い印刷画像(2)として形成することが可能となる。
また、模様部(3)とカモフラージュ部(4)に平滑性の差を生じさせるために、模様部(3)と下地層(5)は、異なる面積率で構成するほうが望ましい。
例えば、基材(1)上に下地層(5)を面積率85%で形成したのち、その上に、模様部(3)を面積率90%で形成した場合、下地層(5)の面積率が小さいことから、二つを積層した場合、同じ面積率で積層した場合と比較して表面が荒くなり平滑性が低くなる。よって、模様部(3)とカモフラージュ部(4)の平滑性の差が大きく成りやすいことから、異なる面積率で構成するほうが望ましい。
次に、印刷画像(2)の他の構成について説明する。
図15は、印刷画像(2)の他の構成を説明する平面図である。前述した印刷画像(2)は、図2に示したように、模様部(3)とカモフラージュ部(4)は、領域(Z)内において模様部(3)と隣接しない異なる位置に配置されていたが、図15では、模様部(3’)の周囲にカモフラージュ部(4’)を配置する。
模様部(3’)とカモフラージュ部(4’)は、等色のインキで形成され、かつ、インキ膜厚又は面積率が異なる。よって、模様部(3’)の周囲にカモフラージュ部(4’)を配置した場合、可視光領域においては、等色のインキから形成されるため、面積率の差又はインキ膜厚の差に起因する平滑性の差を肉眼で識別することができず、模様部(3’)とカモフラージュ部(4’)は等色で視認される。よって、一様な色のベタ領域として印刷画像(2’)が視認される。
媒体(S’)を中赤外線領域から遠赤外線領域で観察した場合には、模様部(3’)とカモフラージュ部(4’)が、インキ膜厚の差又は面積率の差により、輝度差が生じて視認される。よって、印刷画像(2’)内に、模様部(3’)である「JP」の有意味情報が潜像画像として視認可能となる。
以上、模様部(3’)の周囲にカモフラージュ部(4’)を配置した場合には、可視光源下においては、模様部(3’)である有意味情報が視認されず、中赤外線領域から遠赤外線領域で観察した場合には、潜像画像として模様部(3’)が視認可能となる。
なお、模様部(3’)とカモフラージュ部(4’)の配置については、図15において示した配置に限らず、少なくとも一部が隣接することで可視光源下では、印刷画像(2’)とカモフラージュ部(4’)を、等色のインキで形成されたベタの印刷領域として肉眼で視認でき、かつ、模様部(3’)の形状が識別できない配置であれば、適宜設定することが可能である。
図16は、模様部(3’)とカモフラージュ部(4’)の配置の一例を示す平面図である。図16(a)に示すように、模様部(3’)の一部と隣接するように、カモフラージュ部(4’)を配置してもよい。また、図16(b)に示すように、模様部(3’)は一つに限らず、複数配置しても良い。さらには、図16(c)に示すように、カモフラージュ部(4’)の周囲に模様部(3’)を配置する、図15とは逆の配置としても良い。
図17は、図15と同様に、模様部(3’)の周囲にカモフラージュ部(4’)を配置した印刷画像(2’)であり、印刷画像(2’)は、万線状の画線である模様要素(3a’)から成る。図8と同様に、模様部(3’)及びカモフラージュ部(4’)は、万線状の画線から模様要素(3a’)及びカモフラージュ要素(4a’)により、それぞれ構成することが可能である。
前述した図8において、模様部(3)とカモフラージュ部(4)は、隣接して配置していないことから、模様要素(3a)及びカモフラージュ要素(4a)は同じ画線幅(W3、W4)で、同じピッチである第1のピッチ(d1)及び第2のピッチ(d2)で、同一方向である第1の方向(V)に配置することにより、実際にはそれぞれの画線の面積率やインキ膜厚が異なるが、肉眼で識別不能としていた。
図15において示したように、模様部(3’)の周囲にカモフラージュ部(4’)を配置し、図8に示すように、万線状の画線である、模様要素(3a)及びカモフラージュ要素(4a)からそれぞれ成る構成とし、インキ膜厚の差により模様部(3’)とカモフラージュ部(4’)を区分けして形成した場合、用いるインキの色及び面積率の差によっては、肉眼では、模様部(3’)とカモフラージュ部(4’)に濃度差が生じ、等色として視認することができない可能性がある。その際には、図14において前述したように、下地層(5)を形成したのち、模様部(3’)を形成することで、可視光源下における濃度差を解消することが可能となる。
また、面積率の差により区分けして形成した場合においても、インキ膜厚差と同様に、用いるインキの色、基材(1)の色及び面積率の差によっては、肉眼では、模様部(3’)とカモフラージュ部(4’)に濃度差が生じ、等色として視認することができない可能性がある。
図18は、面積率の差を示す模式図である。図18(a)に示す領域(N1)は画線面積率100%であり、図18(b)に示す領域(N2)は、画線面積率100%である。各領域(N1、N2)は、それぞれ縦(X1、X2)×横(Y1、Y2)が同じ大きさで、同じインキにより形成される。
面積率が異なる場合、基材(1)及びインキの色にもよるが、例えば基材(1)が白色で、各領域(N1、N2)を形成するインキが黒色の場合、図18(a)に示す画線面積率100%の場合と比べ、図18(b)に示す画線面積率80%の構成については、20%の白色の基材(1)が露出している。よって、肉眼において、図18(b)の方が、淡く視認されてしまい、等色として視認することができない可能性がある。
そこで、面積率の差により区分けした場合には、可視光源下において、肉眼で模様部(3’)及びカモフラージュ部(4’)を等色で視認させるために、基材(1)の露出に伴う、濃度差をカバーするために、模様部(3’)及びカモフラージュ部(4’)のうち、面積率の大きい一方を構成する要素、例えばカモフラージュ部(4’)を構成するカモフラージュ要素(4a’)の画線幅又は要素幅を、他方である模様部(3’)を構成する模様要素(3a’)の画線幅又は要素幅よりも、若干細く構成する。
一例として図17においては、カモフラージュ部(4’)は実線であるカモフラージュ要素(4a’)から成り、模様部(3’)は万線状の微細画線である微細要素(3b’)から成る。よって、模様部(3’)の方が、カモフラージュ部(4’)より面積率が小さい。
そこで、可視光源下において、面積率の異なる模様部(3’)とカモフラージュ部(4’)を等色で視認させるために、面積率の大きいカモフラージュ部(4’)を構成するカモフラージュ要素(4a’)の画線幅(W4)を、模様部(3’)を構成する模様要素(3a’)の画線幅(W3)よりも、若干細く構成する。
カモフラージュ要素(4a’)の画線幅(W4)を若干細くすることで、細くする前のカモフラージュ要素(4a’)よりも濃度が淡く視認される。よって、模様要素(3a’)と、カモフラージュ要素(4b’)は、面積率の大きい一方の画線幅を若干細くしたことで、同じ画線幅で形成した場合と比べ、模様要素(3a’)とカモフラージュ要素(4a’)を、等色として同じように視認することが可能となる。
なお、模様要素(3a)とカモフラージュ要素(4a)の画線幅が異なる場合には、用いるインキの色、光沢等により異なる濃度として視認される場合がある。よって、各要素(3a、4a)の画線幅は、出力物を確認して適宜調整する。
次に、図17の構成から成る媒体(S’)の視認状態について説明する。図19(a1)及び図19(a2)は、一例として模様部(3’)の面積率を、カモフラージュ部(4’)の面積率よりも小さく構成した媒体(S’)を、可視光源下で観察した際の模式図及び平面図であり、図19(b1)及び図19(b2)は、図19(a)の媒体(S’)を中赤外線領域から遠赤外線領域で観察した際の模式図及び平面図である。
図19(a1)に示すように、可視光源下において媒体(S’)を肉眼で観察した場合、模様部(3’)とカモフラージュ部(4’)は同じインキで形成していることから、肉眼では区別して視認することができない。よって、図19(a2)に示すように、印刷画像(2’)は、一様な濃度を有する領域として視認される。
また、図19(b1)に示すように、媒体(S’)を中赤外線領域から遠赤外線領域で観察した場合には、前述のとおり平滑性が高い(面積率が大きい)領域であるカモフラージュ部(4’)は、正反射光の強度が高いため、輝度が高く(白く)表示される。一方、平滑性が低い(面積率小さい)領域である模様部(3’)及び基材(1)は、平滑性が高い方と比較して正反射光の強度が低いため輝度が低く(黒く)表示される。
よって、中赤外線領域から遠赤外線領域では、図19(b2)に示すように、模様部(3’)は輝度が低く視認されることにより、基材(1)と等色に視認される。一方、カモフラージュ部(4’)は輝度が高く視認されることにより、模様部(3’)と異なる輝度で視認される。それにより、模様図(3’)とその周囲に配置したカモフラージュ部(4’)は輝度差が生じ、模様部3’である文字「JP」が視認可能となる。
次に、印刷画像(2)の他の構成について説明する。
図20は、印刷画像(2)の他の構成を説明する平面図である。前述した印刷画像(2’)は、図17に示したように、模様部(3’)の周囲にカモフラージュ部(4’)を等色のインキで形成していたが、複数色のインキで、模様部(3’)及びカモフラージュ部(4’)を形成しても良い。
図20に示す印刷画像(2’’)は赤色のインキから成る、有意味情報である文字「J」の周囲に、青色のインキから成る背景を有する構成である。印刷画像(2’’)は、可視光源下では、赤色の文字「J」と青色の背景から成る一つの画像として視認されるが、平滑性の差により、模様部(3’’)及びカモフラージュ部(4’’)に区分けされる。
印刷画像(2’’)を、平滑性の差により、模様部(3’’)とカモフラージュ部(4’’)に区分けする点については同じだが、図20においては、可視で視認される有意味情報と、模様部(3’’)を異なる有意味情報としている。
可視光領域においては、面積率の差又はインキ膜厚の差に起因する平滑性の差を肉眼で識別することができず、有意味情報である文字「J」が視認される。
媒体(S’’)を中赤外線領域から遠赤外線領域で観察した場合には、模様部(3’’)とカモフラージュ部(4’’)が、インキ膜厚の差又は面積率の差により、輝度差が生じて視認される。よって、印刷画像(2’’)内に、模様部(3’’)である「P」の有意味情報が潜像画像として視認可能となる。
以上、模様部(3’’)の周囲にカモフラージュ部(4’’)を配置し、可視光源下で視認される有意味情報と、模様部(3’’)の形状を異ならせることで、可視光源下と、中赤外線領域から遠赤外線領域において、画像がチェンジする構成とすることが可能である。
なお、図20において、印刷画像(2’’)は、赤色のインキから成る有意味情報「J」と、青色のインキから成る背景とで構成したが、これに限らず、前述したとおり、中赤外線領域から遠赤外線領域において、基材(1)と正反射光の強度が異なり、サーモグラフィ等で認識可能なインキを用いた画像であれば、顔画像、風景等の階調画像や、封数色のインキを用いたフルカラー画像等、所望の画像とすることが可能である。
以下、実施例1を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明を限定するものではない。実施例1として図17に示した媒体(S’)を作製した。なお、印刷画像(2’)における模様部(3’)及びカモフラージュ部(4’)は、それぞれ万線状の画線である模様要素(3a’)及びカモフラージュ要素(4a’)で形成した。
模様部(3’)とカモフラージュ部(4’)は、面積率の差により区分けされる構成とした。
基材(1)は、白色のマット紙(EPSON社製「フォトマット紙」)とした。
模様部(3’)を構成する模様要素(3a’)の画線幅(W3)は、310μmとし、カモフラージュ部(4)を構成するカモフラージュ要素(4a’)の画線幅(W4)は、260μmとした。模様要素(3a’)は、面積率86%となるように、斜めの微細画線である微細要素(3b’)を複数配置し、カモフラージュ要素(4a’)は面積率100%の実線とした。なお、模様要素(3a’)及びカモフラージュ要素(4a’)は、いずれも1mmの一定ピッチで配置した。
模様部(3’)及びカモフラージュ部(4’)は、基材(1)上に、黒色の有色インキを用いて、レーザープリンタ(EPSON社製「LP―S5000」)により印刷することで形成した。
模様部(3’)とカモフラージュ部(4’)を形成する有色インキは、上記レーザープリンタに対応する通常のトナーであるカーボンブラック(Bk)を使用した。
実施例1で作製した媒体(S’)を、可視光源下で観察したところ、印刷画像(2’)は1色のインキで構成された濃度が一様な万線構成のベタ領域が視認できた。
次に、媒体(S’)をサーモグラフィ(NEC Avio赤外線テクノロジー株式会社製サーモギアG120W2)により、波長域8000〜14000nmの遠赤外線領域で観察したところ、模様部(3’)とカモフラージュ部(4’)に輝度差が生じ、模様部(3)である文字「JP」が視認できた。
次に、実施例2として図21に示した印刷画像(2’)を有する媒体(S’)を作製した。なお、印刷画像(2’)における、模様部(3’)及びカモフラージュ部(4’)は、ドット形状の模様要素(3a’)及びカモフラージュ要素(4a’)で、それぞれ形成した。また、印刷画像(2’)は、インキの膜厚差により、模様部(3’)とカモフラージュ部(4’)に区分けし、模様部(3’)は、図14に示した下地層(5)を有する構成とした。
基材(1)は、白色のコート紙(EPSON社製「写真用紙」)とした。
模様部(3’)を構成する模様要素(3a’)のドット径(W3)は340μmとし、カモフラージュ部(4)を構成するカモフラージュ要素(4a’)のドット径(W4)は、450μmとした。
下地層(5)は、模様部(3’)を構成する模様要素(3a’)と同じ大きさ及び形状のドットとした。
下地層(5)のインキ膜厚は15μmとし、その上に形成する模様要素(3a’)のインキ膜厚は10μmとし、カモフラージュ要素(4a’)のインキ膜厚は10μmとした。
なお、模様要素(3a’)、カモフラージュ要素(4a’)は、いずれも460μmの一定ピッチで配置した。
模様部(3’)、下地層(5)及びカモフラージュ部(4’)は、基材(1)上に有色インキを用いて、UV乾燥機構を備えたインクジェットプリンタ(Tritek社製「Patterning JET」)により印刷することで形成した。
模様部(3’)とカモフラージュ部(4’)を形成する有色インキは、上記インクジェットプリンタに対応する通常のシアンインキを使用した。下地層(5)を形成する有色インキには、上記インクジェットプリンタに対応する通常の白色インキを使用した。なお、下地層(5)に用いる白色インキは、基材(1)の色に近似した色を用いた。
実施例2で作製した媒体(S’)を、可視光源下で観察したところ、印刷画像(2’)は青色のベタ領域として視認できた。
次に、媒体(S’)をサーモグラフィ(NEC Avio赤外線テクノロジー株式会社製サーモギアG120W2)により、波長域8000〜14000nmの遠赤外線領域で観察したところ、模様部(3’)とカモフラージュ部(4’)に輝度差が生じ、模様部(3’)である「JP」の有意味情報が視認できた。
実施例3として図20に示した媒体(S’’)を作製した。印刷画像(2’’)における模様部(3’’)及びカモフラージュ部(4’’)は、万線状の画線である模様要素(3a’’)及びカモフラージュ要素(4a’’)で形成した。また、模様要素(3a’’)及びカモフラージュ要素(4a’’)は画素である微小文字「JPN」を複数配置した画素群により形成した。
基材(1)は、白色のコート紙(Tochiman社製カラーレーザー用紙 片面強光沢186g/m2)とした。
模様部(3’’)を構成する模様要素(3a’’)の画線幅(W3)は、1300μmとし、カモフラージュ部(4)を構成するカモフラージュ要素(4a’’)の画線幅(W4)は、1200μmとした。
模様要素(3a’’)は、画線の面積率が46%となるように、斜め方向の楕円形状である微細要素(3b)を一部重畳するように複数配置し、カモフラージュ要素(4a’’)は画線の面積率が48%の直線で構成された微小文字を複数配置した。なお、模様要素(3a’’)及びカモフラージュ要素(4a’’)は、カモフラージュ部(4’’)が有意味情報「P」となるように、いずれも1750μmの一定ピッチ(d3、d4)で万線状に複数配置した。
さらに可視光領域下で異なる有意味情報「J」となるように、模様部(3’’)及びカモフラージュ部(4’’)を構成する模様要素(3a’’)及びカモフラージュ要素(4a’’)のうち、有意味情報「J」を構成する模様要素(3a’’)及びカモフラージュ要素(4a’’)をマゼンタ色に設定し、有意味情報「J」の背景を構成する模様要素(3a’’)及びカモフラージュ要素(4a’’)をシアン色に設定した。
模様部(3’’)及びカモフラージュ部(4’’)は、基材(1)上に、あらかじめ有意味情報「J」の構成に合わせて設定したシアン色及びマゼンタ色に合わせて、シアン職の有色インキとマゼンタ色の有色インキを用いて、レーザープリンタ(CANON社製「LBP―5300」)により印刷することで形成した。
実施例3で作製した媒体(S’’)を、可視光源下で観察したところ、印刷画像(2’’)は有意味情報「J」がマゼンタ色で視認でき、背景がシアン色で視認できた。
また、媒体(S’’)を近赤外線カメラにより、波長域700〜1000nmの近赤外線領域で観測した場合には近赤外透過特性のインキのため何も視認されなかった。
次に、媒体(S’’)をサーモグラフィ(NEC Avio赤外線テクノロジー株式会社製サーモギアG120W2)により、波長域8000〜14000nmの遠赤外線領域で観察したところ、模様部(3’’)とカモフラージュ部(4’’)に輝度差が生じ、模様部(3)である文字「P」が視認できた。
以上、本発明に係る実施例に基づいて実施の形態を説明したが、上記実施例に限定されることなく特許請求の範囲記載の技術思想の範囲内で、更にいろいろな実施例があることは言うまでもない。