図1は、本発明における特殊潜像画像形成体(1)(以下、「形成体」という。)が付与された偽造防止印刷物(S)(以下、「印刷物」という。)を示す平面図である。印刷物(S)は一例として、商品券としている。
印刷物(S)は、紙、プラスチックカード等の印刷可能な基材(2)上に、店舗名、券種等の印刷物(S)に関する情報が、シアン、マゼンタ等の一般的に用いられるインキにより付与されている。印刷物(S)は、基材(2)上における少なくとも一部に、潜像画像形成領域(Z)(以下、「領域」という。)を備えている。領域(Z)内には、形成体(1)が配置されており、形成体(1)は、複数の画像を有している。
図2は、形成体(1)が有する複数の画像を示す平面図である。形成体(1)は、図2(a)に示す可視画像(3)と、図2(b)に示す第1の潜像画像(4)と、図2(c)に示す第2の潜像画像(5)と、図2(d)に示す第3の潜像画像(6)とを有する。
可視画像(3)は、基材(2)に対して真上から観察した場合に視認可能となる画像であり、第1の潜像画像(4)は、基材(2)を傾けて観察した場合に視認可能となる画像である。また、第2の潜像画像(5)は、基材(2)を第1の潜像画像(4)を視認する時とは反対側へ傾けて観察した場合に視認可能となる画像であり、第3の潜像画像(6)は、基材(2)を透過光下で観察した場合に視認可能となるすかし模様である。
形成体(1)が有する各画像(3、4、5、6)は、それぞれ印刷要素や、基材(2)に凹凸形状を付与することで形成された要素等、異なる要素により構成されている。以下、形成体(1)を構成する各要素について、詳細に説明する。
図3は、凸形状の要素である第1の要素(7)を示す平面図及び断面図であり、図3(a)は、第1の要素(7)を示す平面図である。図3(a)に示すように、基材(2)の少なくとも一部に備えた領域(Z)内に、第1の要素(7)が複数形成されている。
図3(b)は、図3(a)のA−A’断面図である。図3(b)に示すように、凸形状の第1の要素(7)は、第1の方向(X1)に第1のピッチ(P1)で複数形成されている。複数の第1の要素(7)は、各々が第1の側部(7L)、第2の側部(7R)及び頂上部(7T)を有している。第1の要素(7)を配置する第1のピッチ(P1)は、印刷方式、用いる基材(2)及び後述する第1の要素(7)上に印刷する第3の要素(9)の画線幅を考慮し、400〜1800μmの範囲内で適宜設定が可能である。
第1のピッチ(P1)が400μm未満である場合には、第1の要素(7)上に第3の要素(9)を印刷する際に必要な面積が充分に得られないことにより、第3の要素(9)の画線幅が細くなり、可視画像(3)、第1の潜像画像(4)及び第2の潜像画像(5)の視認性が低下し、好ましくない。
反対に、第1のピッチ(P1)が800μmより大きい場合には、第1の要素(7)上に印刷する第3の要素(9)の一つ一つを肉眼で識別することが可能となり、各画像(3、4、5、6)を視認した場合にノイズが発生し、好ましくない。なお、図3(a)では、第1のピッチ(P1)を一定ピッチで図示しているが、前述した400〜1800μmの範囲内であれば、一部異なるピッチとすることも可能である。
なお、第1の要素(7)を、全て同じ規則的なピッチである第1のピッチ(P1)で配置した場合について説明したが、複数の第1の要素(7)においては、ランダムなピッチとすることも可能である。
図4は、第1の要素(7)を第1の方向(X1)に配置した他の形態を示す平面図及び断面図である。図4(a)に示すように、第1の要素(7)は、第1の方向(X1)に、ランダムなピッチ(PL)で配置されている。図4(b)は、図4(a)におけるA−A’断面図である。ランダムなピッチ(PL)で配置する場合には、その一つ一つのピッチは、前述した第1のピッチ(P1)の範囲と同様に、400〜1800μmの範囲内で適宜設定することが可能である。また、ピッチ(PL)を、400〜1800μmの範囲内とする理由については、前述した第1のピッチ(P1)と同様であることから説明を省略する。以下、本実施の形態においては、第1の要素(7)は第1のピッチ(P1)で形成してあるとして説明する。
第1の要素(7)の幅(W1)は、第1のピッチ(P1)及び後述する第3の要素(9)の幅を考慮し、0.1〜1.0mmの範囲内で適宜設定される。第1の要素(7)の幅(W1)を0.1mm未満とした場合、第1の要素(7)上に第3の要素(9)を印刷しづらい為、好ましくない。
また、第1の要素(7)の幅(W1)を1.0mmより広くした場合には、印刷物(S)を傾けた際に第1の潜像画像(4)及び第2の潜像画像(5)を明瞭に視認することが困難となり好ましくない。
第1の要素(7)の高さ(h1)は、第1のピッチ(P1)及び後述する第3の要素(9)の幅を考慮し、30〜70μmの範囲内で適宜設定することが可能である。高さ(h1)を30μm未満とした場合、印刷物(S)を傾けた際に第1の潜像画像(4)及び第2の潜像画像(5)を明瞭に視認することが困難となり好ましくない。
また、第1の要素(7)の高さ(h1)を70μmより高くした場合には、第1の要素(7)上に第3の要素(9)を印刷しづらくなり、好ましくない。
なお、第1の要素(7)は直線状としているが、直線状に限らず第1の要素(7)上に第3の要素(9)を印刷可能であれば波線状、破線状等とすることが可能である。
また、第1の要素(7)を複数集合させて形成される形状は、領域(Z)内に形成可能であれば、図5に示す各種形状とすることが可能であることは、言うまでも無い。
さらに、第1の要素(7)の断面形状は、前述した図3のA−A’断面図に示す形状に限らず、第1の要素(7)上に、後述する印刷要素である第3の要素(9)を形成することが可能であれば、図6に示す、各種の断面形状とすることが可能である。なお、図6は、前述した図3と同様に、基材(2)を第1の方向(X1)に対して平行に切断した断面図である。
次に、形成体(1)を構成する要素の一つである、第2の要素(8a)について説明する。図7は、第2の要素(8a)を示す平面図及び断面図であり、図7(a)は、第2の要素(8a)を示す平面図である。図7(a)に示すように、第2の要素(8a)は、複数の第1の要素(7)の各要素間に形成されている。
図7(b)は、図7(a)におけるB−B’断面図である。本発明における第2の要素(8a)とは、二つの隣り合う第1の要素(7)間に形成された、基材(2)よりも透過率の高い領域のことである。第2の要素(8a)の幅(W2)は、前述した第1の要素(7)を配置した第1のピッチ(P1)及び後述する第3の要素(9)の幅を考慮し、200μm〜800μmの範囲で適宜設定することが可能である。幅(W2)を200μm未満とした場合には、第1の要素(7)上に第3の要素(9)を印刷しづらくなり、好ましくない。
また、第2の要素(8a)の幅(W2)を800μm以上とした場合には、印刷物(S)を傾けた際に第1の潜像画像(4)及び第2の潜像画像(5)を明瞭に視認することが困難となり、好ましくない。
前述のとおり、本発明の形成体(1)は、基材(2)を傾けて視認可能となる各潜像画像(4、5)に加え、新たに透過光下で視認可能となる第3の潜像画像(6)が付与されている。前述した第1の要素(7)及び第2の要素(8a)は、断面形状を一部異ならせることで、基材(2)との透過率が変化する。よって、一部断面形状が異なる第1の要素(7)及び/又は第2の要素(8a)を複数配置することで、透過光下で視認可能となるすかし模様である第3の潜像画像(6)を形成体(1)に付与することが可能となる。
まず、第2の要素(8a)について説明する。なお、一部断面形状が異なる第1の要素(7)については、後述する。図7(a)に示すように、基材(2)上に、「NPB」の文字形状の第3の潜像画像(6)が形成されている。図7(a)の拡大図に示すように、第2の要素(8a)は、複数の第1の要素(7)間に配置されている。
図7(b)は、図7(a)におけるB−B’断面図である。基材(2)の一部である底部(8b)は、全て断面形状が同一形状であるが、第2の要素(8a)は、第3の潜像画像(6)に対応して、断面形状が変化する。
図7(b)に示すように、第2の要素(8a)と底部(8b)は、深さが異なる。なお、本発明においては、底部(8b)の幅(W2)及び深さ(h1)を基準とし、第2の要素(8a)の深さ(h2)は、基準となる底部(8b)の基準位置(M)からの深さとして以下説明する。第2の要素(8a)を底部(8b)より深くすることで、第2の要素(8a)と底部(8b)の透過率が異なり、透過光下で観察した際に、底部(8b)より深い第2の要素(8a)が、底部(8b)と比べて明るく(白く)視認される。よって、複数の第2の要素(8a)を第3の潜像画像(6)の形状に合わせて適宜形成することで、前述した透過光下で視認可能な第3の潜像画像(6)が形成される。
なお、図7(b)においては、第3の潜像画像(6)を形成する第2の要素(8a)の深さ(h2)は一定である。第2の要素(8a)の深さ(h2)及び幅(W2)を一定とした場合には、透過光下で視認可能な第3の潜像画像(6)は、階調を有しないベタのすかし模様として視認される。第3の潜像画像(6)を形成する第2の要素(8a)の深さ(h2)及び幅(W2)を変化させた場合には、透過光下で視認可能な第3の潜像画像(6)は、階調を有するすかし模様として視認されるが、それについては後述する。
第2の要素(8a)の深さ(h2)は、30μm〜70μmとする。30μm以下とした場合は、底部(8b)との透過率があまり変わらず、透過光下において第3の潜像画像(6)が不鮮明に視認されることから好ましくない。
70μm以上とした場合は、第1の要素(7)上に印刷画線である第3の要素(9)を印刷しづらくなり、好ましくない。さらには、第2の要素(8a)が薄くなることで印刷物(S)の耐久性が低下し、好ましくない。
前述した図7においては、第2の要素(8a)及び底部(8b)は、幅(W2)が一定だが、深さを変えることで、基材(2)との透過率を異ならせて、第3の潜像画像(6)を形成していた。しかしながら、基材(2)と第2の要素(8a)の透過率を変化させることが可能な構成であれば、図7に示した断面形状に限らず、他の断面形状とすることも可能である。
図8は、第3の潜像画像(6)を形成する第2の要素(8a)の他の断面形状を説明する図である。図8(a)、図8(b)、図8(c)及び図8(d)は、前述した図7(b)の断面図と同様に基材(2)を第1の方向(X1)に対して平行に切断した断面図である。前述した第2の要素(8a)の深さを底部(8b)より深くする断面形状に限らず、各種形状とすることが可能である。
図8(a)、図8(b)、図8(c)及び図8(d)に示すように、第2の要素(8a)の幅(W2)を、底部(8b)と比べて狭く又は広くしたり、また、第2の要素(8a)の深さ(h2)を底部(8b)と比べて深く又は浅くすることで、第2の要素(8a)と底部(8b)の透過率を変化させることが可能である。いずれの形状においても、第2の要素(8a)は、底部(8b)と比べ、透過率が高い場合に底部(8b)より明るく視認され、反対に透過率が低い場合に底部(8b)より暗く視認される。
なお、図8においては、幅(W2)及び深さ(h2)をいずれも変化させることで、第2の要素(8a)を形成しているが、幅(W2)及び深さ(h2)のどちらか一方のみを変化させた場合でも、透過率の変化があることから、第3の潜像画像(6)を形成することは可能である。
さらには、一つの第2の要素(8a)内において、幅及び深さを異ならせることも可能である。図9(a)は、第2の要素(8a)の他の断面形状を説明する図であり、図9(b)及び図9(c)は、図9(a)におけるA−A’断面図及びB−B’断面図である。図9(b)及び図9(c)に示すように、一つの第2の要素(8a)内において、幅及び深さを変化させることで、A−A’断面位置における第2の要素(8a)と、B−B’断面位置における第2の要素(8a)との透過率を変化させることも可能である。
さらに、他の断面形状として、一つの第2の要素(8a)内において、深さ(h2)を変化させることも可能である。図10(a)は、第2の要素(8a)の他の断面形状を説明する図である。図10(b)は、図10(a)におけるB−B’断面図であり、底部(8b)の断面形状を示す図である。図10(b)に示すように、底部(8b)は第2の方向(X2)に対して深さが一定である。
図10(c)、図10(d)及び図10(e)は、図10(a)におけるC−C’断面図である。図10(c)、図10(d)及び図10(e)に示すように、第2の要素(8a)は、第2の方向(X2)に深さを多段又は緩やかに変化させることで、底部(8b)との透過率を変化させて形成することも可能である。
次に、一部断面形状が異なる第1の要素(7)について説明する。図11は、一部断面形状が異なる第1の要素(7)を示す平面図及び断面図である。図11(a)は、例として三つの第1の要素(7)が第1の方向(X1)に配置している。第1の要素(7)は、第1aの要素(7a)及び/又は第1bの要素(7b)から成る。
図11(b)、図11(c)及び図11(d)は、図11(a)におけるA−A’断面図である。複数の第1の要素(7)において、第1bの要素(7b)は、全て断面形状が同一形状である。一方、第1aの要素(7a)は、第3の潜像画像(6)に対応して、断面形状が変化する。以下、本実施の形態において、第1の要素(7)は、断面形状が異なる第1aの要素(7a)を有していない場合には、第1bの要素(7b)のみから形成されているとして説明する。
図11(b)に示すように、第1aの要素(7a)と第1bの要素(7b)は、幅(W1)が異なる。なお、本発明においては、第1bの要素(7b)の幅(W1)及び高さ(h1)を基準とし、第1aの要素(7a)の高さ(h1)は、基準となる第1bの要素(7b)の基準位置(M)からの高さとして以下説明する。
図11(b)、図11(c)及び図11(d)に示すように、第1aの要素(7a)の高さ(h1)を、第1bの要素(7b)の高さ(h1)と異ならせたり、第1aの要素(7a)の幅(W1)を、第1bの要素(7b)の幅(W1)と異ならせることで、第1aの要素(7a)と第1bの要素(7b)の透過率が異なり、透過光下で観察した際に、第1bの要素(7b)より透過率が高い場合には、第1aの要素(7a)は、第1の要素(7b)と比べて明るく(白く)視認される。
反対に、第1bの要素(7b)より透過率が低い場合には、第1aの要素(7a)は、第1bの要素(7b)と比べて暗く(黒く)視認される。よって、複数の第1aの要素(7a)を第3の潜像画像(6)の形状に合わせて適宜形成することで、前述した透過光下で視認可能な第3の潜像画像(6)が形成される。
さらに、他の断面形状として、一つの第1の要素(7)内において、高さ(h1)を変化させることで、第1aの要素(7a)を形成することも可能である。図12は、第1aの要素(7a)の他の断面形状を説明する平面図及び断面図であり、図12(a)は、第1の要素(7)の平面図である。図12(b)に示す第1bの要素(7b)は、第2の方向(X2)に対して高さが一定である。
図12(c)、図12(d)、図12(e)及び図12(f)は、図12(a)におけるC−C’断面図である。図12(c)、図12(d)、図12(e)及び図12(f)に示すように、第1aの要素(7a)は、第2の方向(X2)に高さを多段又は緩やかに変化させることで、第1bの要素(7b)との透過率を変化させて形成することも可能である。
なお、前述した第2の要素(8a)と同様に、第1aの要素(7a)においても、一つの第1の要素(7)内において第1aの要素(7a)の幅を徐々に広く、又は、狭くした形状とすることも可能である。
さらには、図には示さないが、前述した形状を種々組み合わせることで、第1aの要素(7a)及び第2の要素(8a)を構成することが可能であることは言うまでもない。また、第3の潜像画像(6)においても、前述した第1aの要素(7a)及び第2の要素(8a)を組み合わせて形成することも可能である。
次に、第1の要素(7)及び第2の要素(8a)の形成方法について説明する。各要素(7、8a)は、基材(2)上に、エンボス加工、凹版印刷、スクリーン印刷、すき入れ又はレーザ加工により形成される。
エンボス加工による各要素(7、8a)の形成は、各要素(7、8a)の形状に合わせた凹型及び凸型を用いて、公知のエンボス加工機により形成される。
凹版印刷、スクリーン印刷による第1の要素(7)の形成は、基材(2)に対して公知の凹版印刷方法又は公知のスクリーン印刷方法に適した版面及びインキを用いて印刷を行うことで、インキの盛りにより形成する。第1の要素(7)を凹版印刷、スクリーン印刷及びエンボス加工により形成した場合には、形成された第1の要素(7)は、基材(2)に対して、盛りのある凸形状として形成される。それにより、第1の要素(7)の形成に伴い、隣り合う、二つの第1の要素(7)間に第2の要素(8a)が形成される。
すき入れによる各要素(7、8a)の形成は、基材(2)を紙とした際に、すき入れを施すことが可能な公知の抄紙機を用いて形成される。
レーザ加工による各要素(7、8a)の形成は、公知のレーザ加工装置を用いて基材(2)の一部を除去することで形成する。基材(2)に対して、第1の要素(7)の周囲をレーザ加工により除去することで形成した場合には、この除去した領域は、第1の要素(7)より薄く(凹形状)なる。よって、隣り合う二つの第1の要素(7)間に第2の要素(8a)が、第1の要素(7)の形成に伴い形成される。また、あらかじめ、第1の要素(7)を凹版印刷、スクリーン印刷、エンボス加工、すき入れ及びレーザ加工により形成した後に、隣り合う、二つの第1の要素(7)間をレーザ加工により除去することで、第2の要素(8a)を形成することも可能である。
なお、第3の潜像画像(6)を形成する第1aの要素(7a)及び第2の要素(8a)においては、エンボス加工で形成することは好ましくない。基材(2)を紙とし、エンボス加工により第1aの要素(7a)及び第2の要素(8a)を形成した場合には、第1aの要素(7a)及び第2の要素(8a)と、基材(2)との繊維密度が同じとなり、いずれも透過率が同じとなる。よって、透過光下で観察しても第1aの要素(7a)及び第2の要素(8a)と、基材(2)とは、明暗の差が生じず、透過光下において視認可能な第3の潜像画像(6)を形成することができなくなる。
しかしながら、基材(2)をプラスチックや、シート状の樹脂とした場合においては、製造工程においてエンボス加工をすることで、第1aの要素(7a)及び第2の要素(8a)と、基材(2)との厚みが変化し、透過光下で観察した際に明暗の差が生じる。よって、第3の潜像画像(6)を形成する第1aの要素(7a)及び第2の要素(8a)の形成方法については、用いる基材(2)により適宜設定する。
なお、第3の潜像画像(6)を形成する第1aの要素(7a)及び/又は第2の要素(8a)の深さ(h2)及び高さ(h1)並びに幅(W1、W2)を一定とした場合、例えば、第2aの要素(7a)の高さ(h1)を全て同じ高さで形成した場合には、第1aの要素(7a)の透過率は全て同じとなる。よって、透過光下で視認可能な第3の潜像画像(6)は、階調を有しないベタ画像として視認される。
一方、第3の潜像画像(6)を形成する第1aの要素(7a)及び/又は第2の要素(8a)の深さ(h2)及び高さ(h1)並びに幅(W1、W2)を、複数変化させた場合、例えば、第1aの要素(7a)の高さ(h1)を複数異ならせて形成した場合には、変化させた高さに対応して、第1aの要素(7a)の透過率はそれぞれ異なる。よって、透過光下で視認可能な第3の潜像画像(6)は、階調を有する画像として視認される。
図13(a)は、階調を有するすかし模様である第3の潜像画像(6’)を示す平面図である。第3の潜像画像(6’)を形成する第1aの要素(7a)及び/又は第2の要素(8a)の透過率を複数異ならせることで、階調豊かな第3の潜像画像(6’)が形成されている。
図13(a)は、第3の潜像画像(6’)の平面図及び拡大図である。第3の潜像画像(6’)は、第1aの要素(7a)と第2の要素(8a)から成る。
図13(b)は、図13(a)に示した第3の潜像画像(6’)のB−B’断面図である。第3の潜像画像(6’)を形成する第1aの要素(7a)の高さは第1の方向(X1)に徐々に低くなることで透過率が増加し、階調を有する明るさで視認される。また、第3の潜像画像(6’)を形成する第2の要素(8a)は第1の方向(X1)に序々に浅くなることで透過率が低下し、階調を有する暗さで視認される。このように、複数配置された第1aの要素(7a)の高さ及び第2の要素(8a)の深さを異ならせることで、階調を有する第3の潜像画像(6’)が形成される。
第3の潜像画像(6’)を形成する第1aの要素(7a)及び第2の要素(8a)の断面形状は、図13(b)に示す断面形状に限らず、形成体(1)に複数配置された第1aの要素(7a)及び第2の要素(8a)の透過率を異ならせることが可能であれば、前述した図7、図8、図9、図10、図11及び図12に示す形状とすることが可能であり、更には前述した形状を組み合わせることで形成することも可能である。
なお、前述した、図9、図10及び図12に示した、一つの要素(7、8a)内において、高さ、深さ及び幅が変化している要素(7、8a)においては、その形状の変化に対応して一つの要素(7、8a)内において、透過率が異なり濃淡が生じて視認される。それにより、階調を有する第3の潜像画像(6’)を形成することが可能となる。
なお、第3の潜像画像(6’)を階調画像とするためには、基材(2)上における、第1の要素(7)及び第2の要素(8a)において、少なくとも第1aの要素(7a)及び/又は第2の要素(8a)の透過率が異なる箇所が複数箇所必要である。透過率が異なる箇所が複数あることで、透過光下で観察した際に、一つの第3の潜像画像(6’)内において濃淡が生じ、階調を有する透過画像として視認される。
第3の潜像画像(6、6’)は、第1の要素(7)及び/又は第2の要素(8a)の幅、深さ等断面形状を一部異ならせることで形成される。それにより、形成体(1)を市場に流通される印刷物(S)に付与し、流通過程において第1の要素(7)及び/又は第2の要素(8a)が摩耗した場合でも、透過光下で第3の潜像画像(6、6’)の有無を観察することで、真偽判別を行うことが可能となる。また、他の効果としては、断面形状を一部異ならせることで形成していることから、同一領域内に傾けて視認可能となる潜像画像と、透過光下で視認可能となる潜像画像を形成することが可能となる。
以上、本実施の形態の形成体(1)は、基材(2)と透過率の異なる第1aの要素(7a)及び/又は第2の要素(8a)を複数形成することで、透過光下において視認可能となる第3の潜像画像(6、6’)を付与することが可能となる。
次に、傾けて視認可能となる潜像画像を形成する、第3の要素(9)について説明する。図14(a)は、基材(2)を傾けることで視認可能となる第1の潜像画像(4)を示す平面図であり、図14(b)は、図14(a)に黒枠で示す領域を拡大した模式図である。なお、図14(b)において、実際は両側部(7L、7R)に第3の要素(9)が配置されているが省略している。
図14(b)に示すように、第1の側部(7L)に配置された第3の要素(9)は、第1の画像要素(9a1)及び第1の背景要素(9b1)から成る。第1の画像要素(9a1)は、基材(2)とは異なる色の第1の色であり、第1の背景要素(9b1)は、基材(2)及び第1の色とは異なる色の第2の色である。第1の画像要素(9a1)は、第1の色の第1の色材から成り、第1の背景要素(9b1)は、第2の色の第2の色材から成る。このように、第1の潜像画像(4)を形成する第3の要素(9)は、基材(2)とは異なる第1の色及び第2の色により第1の画像要素(9a1)と第1の背景要素(9b1)に区分けされる。
第1の画像要素(9a1)と第1の背景要素(9b1)が基材(2)と同じ色である場合、基材(2)上に印刷した第3の要素(9)を、肉眼で区別して視認することができない。よって、第1の画像要素(9a1)及び第1の背景要素(9b1)は、基材(2)と異なる色の色材で形成する。
本発明における異なる色とは、同じ色相で濃度が異なる色としてもよく、例えば、第1の画像要素(9a1)を形成する色材を淡い赤色とし、第1の背景要素(9b1)を形成する色材を濃い赤色とすることも可能である。
なお、本発明において、後述する第2の潜像画像(5)を形成する色材についても、それぞれの色材の色が同じ色又は異なる色として視認される際の定義については、第1の画像要素(9a1)と第1の背景要素(9b1)の色の関係と同様であることから、以下説明を省略する。
第1の画像要素(9a1)が複数配置されることで、図14(a)に示す第1の潜像画像(4)における第1の模様部(4a)が形成される。また、第1の背景要素(9b1)が複数配置されることで、図14(a)に示す第1の潜像画像(4)における第1の背景部(4b)が形成される。
次に、第2の潜像画像(5)について説明する。図15(a)は、基材(2)を傾けることで視認可能となる第2の潜像画像(5)を示す平面図であり、図15(b)は、図15(a)に黒枠で示す領域を拡大した模式図である。なお、図15(b)と、前述した図14(b)は、同一の第1の要素(7)の一つを拡大した模式図である。また、図15(b)において、実際は両側部(7L、7R)に第3の要素(9)が配置されているが省略している。
図15(b)に示すように、第2の側部(7R)に配置された第3の要素(9)は、第2の画像要素(9a2)及び第2の背景要素(9b2)から成る。第2の画像要素(9a2)は、第2の色であり、第2の背景要素(9b2)は、第1の色である。第2の画像要素(9a2)は、第2の色材から成り、第2の背景要素(9b2)は、第1の色材から成る。このように、第2の潜像画像(5)を形成する第3の要素(9)は、基材(2)とは異なる第1の色及び第2の色により第2の画像要素(9a2)と第2の背景要素(9b2)に区分けされる。
第2の画像要素(9a2)が複数配置されることで、図15(a)に示す第2の潜像画像(5)における第2の模様部(5a)が形成される。また、第2の背景要素(9b2)が複数配置されることで、図15(a)に示す第2の潜像画像(5)における第2の背景部(5b)が形成される。
次に、可視画像(3)について説明する。図16(a)は、可視画像(3)を示す平面図であり、図16(b)は、図16(a)に示す黒枠で領域を拡大した模式図である。なお、図16(b)と、前述した図14(b)及び図15(b)は、同一の第1の要素(7)の一つを拡大した模式図である。可視画像(3)は、第1の側部(7L)及び第2の側部(7R)に配置した全ての第3の要素(9)から成る。つまり、可視画像(3)は、第1の側部(7L)に配置した第3の要素(9)から成る第1の潜像画像(4)と、第2の側部(7R)に配置した第3の要素(9)から成る第2の潜像画像(5)の合成画像である。
なお、第1の要素(7)上に配置した第3の要素(9)の他の構成並びに配置については、本出願人が先に出願した特開2012−006168号、特開2012−006169号、特願2010−267219号及び特願2010−267219号に記載された構成及び配置とすることが可能である。したがって、ここでの説明は省略する。
本発明において第3の要素(9)とは、画線や、複数の点が同一方向に配置された網点群又は複数の画素が同一方向に配置された画素群のことである。図17は、本発明における第3の要素(9)の一例を示す図である。画線とは、図17(a)に示す直線、図17(b)に示す破線、図17(c)に示す波線、図17(d)に示す破線状の波線である。画線幅は、一般的に60〜200μmが用いられる。網点とは、網目スクリーン、コンタクトスクリーン等により、印刷物上に構成された点である。
画素とは、図形、文字等の二次元画像を縦横の線で分割し、分割した最小単位のことである。網点及び画素は、直線状又は波線状に複数配置されて、画線状に構成される。画素は、図17(e)に示す円形状、図17(f)に示す楕円形状、図17(g)に示す三角形状とする。さらに画素は、図17(g)に示すように、回転させて配列しても良く、また、図17(h)に示すように文字形状としてもよい。さらに、図17(i)及び図17(j)に示すように、一つの要素内において、画線、網点又は画素の少なくとも二種類以上を組み合わせて同一方向に配置しても良い。
次に、前述した各画像を視認するための観察角度について説明する。図18は、形成体(1)が付与された基材(2)を観察した際の視点(E1、E2、E3、E4)を示す図である。なお、第1の要素(7)は、基材(2)上における第1の方向(X1)に配置されている。
本発明においては、基材(2)に対して、視点が(E1)に示す位置関係にあるとき、第1の観察角度(E1)から観察したとし、視点が(E2)に示す位置関係にあるとき、第2の観察角度(E2)から観察したとし、視点が(E3)に示す位置関係にあるとき、第3の観察角度(E3)から観察したとし、視点が基材(2)に対して(E4)に示す位置関係であり、かつ、透過光下で観察した場合、第4の観察角度(E4)で観察したとする。
次に、形成体(1)を各観察角度(E1、E2、E3、E4)から観察した際の、視認原理について説明する。図19は、形成体(1)を、第1の観察角度(E1)から観察した際の平面図及び断面図である。なお、図19においては、前述した図7に示した複数の第2の要素(8a)から成る第3の潜像画像(6)が付与れているとする。よって、基材(2)に形成された第1の要素(7)は、全て同一形状の、第1bの要素(7b)である。
図19に示すように、基材(2)を第1の観察角度(E1)から観察した際には、第1の要素(7)における両側部(7L、7R)は、いずれも隣り合う第1bの要素(7b)の影となることなく視認可能である。よって、複数の第3の要素(9)から成る可視画像(3)が視認される。
図20は、形成体(1)を、第2の観察角度(E2)から観察した際の平面図及び断面図である。図20に示すように、基材(2)を第2の観察角度(E2)から観察した際には、第1bの要素(7b)における第1の側部(7L)は、隣り合う第1bの要素(7b)の影となることなく視認可能である。一方、第2の側部(7R)は、隣り合う第1bの要素(7b)の影となり視認することができない。
よって、基材(2)を第2の観察角度(E2)から観察した際には、第1の側部(7L)に配置された第3の要素(9)のみが視認可能となり、複数の第1の画像要素(9a1)から成る第1の模様部(4a)と、複数の第1の背景要素(9b1)から成る第1の背景部(4b)とで構成された第1の潜像画像(4)が視認される。なお、第1の潜像画像(4)は、第1の模様部(4a)は、第1の色で視認され、第1の背景部(4b)は、第2の色で視認される。
図21は、形成体(1)を、第3の観察角度(E3)から観察した際の平面図及び断面図である。図12に示すように、基材(2)を第3の観察角度(E3)から観察した際には、第1bの要素(7b)における第2の側部(7R)は、隣り合う第1bの要素(7b)の影となることなく視認可能である。一方、第1の側部(7L)は、隣り合う第1bの要素(7b)の影となり視認することができない。
よって、基材(2)を第3の観察角度(E3)から観察した際には、第2の側部(7R)に配置された第3の要素(9)のみが視認可能となり、複数の第2の画像要素(9a2)から成る第2の模様部(5a)と、複数の第2の背景要素(9b2)から成る第2の背景部(5b)とで構成された第2の潜像画像(5)が視認される。なお、第2の潜像画像(5)は、第2の模様部(5a)は、第2の色で視認され、第2の背景部(5b)は、第1の色で視認される。
なお、形成体(1)には、透過画像である第3の潜像画像(6)が形成されているが、反射光下における第1の観察角度(E1)、第2の観察角度(E2)及び第3の観察角度(E3)から視認した際には、いずれも、可視画像(3)、第1の潜像画像(4)及び第2の潜像画像(5)が主体的に視認されることから、第3の潜像画像(3’)の存在は認識されない。
図22は、形成体(1)を、第4の観察角度(E4)から観察した際の平面図及び断面図である。前述のとおり、図22における第3の潜像画像(6)は、複数の第2の要素(8a)により形成されている。図22に示すように、第2の要素(8a)と底部(8b)は、深さが異なる。よって、基材(2)を第4の観察角度(E4)から観察した際には、第2の要素(8a)は、基材(2)及び底部(8b)より透過率が高くなり、基材(2)、第1bの要素(7b)及び底部(8b)と比べ、明るく視認される。よって、複数の第2の要素(8a)により形成された第3の潜像画像(6)が透過画像として視認される。
なお、第1bの要素(7b)及び底部(8b)をエンボス加工により形成した場合には、第1bの要素(7b)と底部(8b)は、同じ透過率となる。よって、第4の観察角度(E4)から観察した場合には、基材(2)、第1bの要素(7b)及び底部(8b)は同じ明るさで視認され、第3の潜像画像(6)は、基材(2)、第1bの要素(7b)及び底部(8b)よりも明るく視認される。
一方、第1bの要素(7b)及び底部(8b)をすき入れ又はレーザ加工により形成した場合には、第1bの要素(7b)と底部(8b)は、異なる透過率となる。よって、第4の観察角度(E4)から観察した場合には、基材(2)、第1bの要素(7b)及び底部(8b)は異なる明るさで視認される。例えば、図22に示す形成体(1)において、第1bの要素(7b)及び底部(8b)をすき入れにより形成した場合には、底部(8b)は、第1bの要素(7b)と比べ基材(2)が薄いことから透過率が高くなる。よって、第1bの要素(7b)が暗く視認され、底部(8b)が明るく視認される。
なお、説明を簡潔にするため、複数の第3の要素(9)において図示しないが、実際には第4の観察角度(E4)である透過光下で観察した場合は、前述した可視画像(3)内に第3の潜像画像(6)が視認される。
以下、実施例1を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明を限定するものではない。実施例1として、図1に示した形成体(1)を作製した。基材(2)は、坪量83g/m2、紙厚85μmとし、公知の抄紙機を用いて形成した。また、基材(2)の色は、不透明度を80%(JIS−P8149)にするため顔料及び添量を適宜加えて卵黄色とした。
なお、実施例1においては、第3の潜像画像(6)を、第2の要素(8a)のみで形成した。よって、全ての第1の要素(7)は、第1bの要素(7b)のみで形成した。
第1bの要素(7b)は、幅(W1)300μm、高さ(h1)50μmの直線状であり、第1のピッチ(P1)を500μmとして形成した。
第2の要素(8a)及び底部(8b)の幅(W2)は、いずれも200μmの直線状とした。また、第2の要素(8a)の厚さは20μm(デジタルリニアゲージ DG−925 小野測器製)とし、底部(8b)の厚さは40μm(デジタルリニアゲージ DG−925 小野測器製)とした。
第2の要素(8a)は、不透明度が60%(JIS−P8149)であり、基材(2)、第1bの要素(7b)及び底部(8b)と比べ、透過率を高く形成した。
第1bの要素(7b)、第2の要素(8a)及び底部(8b)は、公知の長網抄紙機を用いて基材(2)を製造する工程において、公知のすき入れ方法により、形成した。
第3の要素(9)は、図14(b)及び図14(b)に示した130μmの一定幅の画線として形成した。また、第1の画像要素(9a1)及び第2の背景要素(9b2)は、オフセットインキ(T&K TOKA製 ベストキュア 藍)を用いて印刷し、第1の背景要素(9b1)及び第2の画像要素(9a2)は、オフセットインキ(T&K TOKA製 ベストキュア 紅)を用いて印刷した。なお、第3の要素(9)は、オフセット印刷機(下垣鉄工所製 EP―60)により第1bの要素(7b)上に印刷することで形成した。
実施例1にて作製した形成体(1)を、第1の観察角度(E1)から肉眼で観察したところ、可視画像(3)が視認できた。次に、形成体(1)を、第2の観察角度(E2)から観察したところ、第1の潜像画像(4)における、第1の模様部(4a)がシアン色で視認でき、第1の背景部(4b)がマゼンタ色で視認できた。次に、形成体(1)を第3の観察角度(E3)から観察したところ、第2の潜像画像(5)における第2の模様部(5a)が、マゼンタ色で視認でき、第2の背景部(5b)がシアン色で視認できた。さらに、形成体(1)を、第4の観察角度(E4)である透過光下で観察したところ、「NPB」の文字形状の第3の潜像画像(6)が透過画像として視認できた。