図1は、本発明における特殊潜像画像形成体(1)(以下、「形成体」という。)の一例を示す平面図である。形成体(1)は、基材(2)上の少なくとも一部に本発明における潜像画像が形成された潜像画像形成領域(3)(以下、「形成領域」という。)を有している。なお、図1に示すように、形成領域(3)以外の領域には、料額、文字、他の模様等の必要な情報が公知の印刷方式(例えば、オフセット印刷、凹版印刷等)により施しても良い。
本発明における基材(2)は、上質紙、コート紙、アート紙等の紙葉類を用いることができる。ただし、本発明の特徴点である二つの潜像画像を同じ領域内に形成するために凸形状が必要であることから、基材(2)の厚みは20μm〜1000μmが良く、好ましくは50μm〜300μmが良い。また、フィルム、プラスチック、それらの複合素材等を用いることもできる。
図2(a)は、本発明の形成体(1)の形成領域(3)である。形成領域(3)は、図2(b)に示すように、基材(2)上に凸形状の複数の第1の要素(5)から成る第1の模様(4)と、隣り合う第1の要素(5)の間に形成された凹形状の複数の第2の要素(7)から成る第2の模様(6)が形成され、更に、図2(c)に示すような基材(2)と異なる色で成る複数の第3の要素(9)から成る第3の模様(8)が組み合わされて形成されている。
形成領域(3)を真上から観察したとき(以下、「第1の観察点(L1)」という。)には、図3(a)に示すように、基材(2)と異なる色で成る第3の模様(8)が可視画像として視認できるが、斜めから観察したとき(以下、「第2の観察点(L2)」という。)には、図3(b)に示すように第1の要素(5)と第3の要素(9)の配置によって、第3の模様(8)の色が視認できる部分と、第3の模様(8)の色が視認できない部分が生じ、第1の潜像画像(10)である「A」が視認できるものである。
また、本発明の形成領域(3)を透過光で観察(以下、「第3の観察点(L3)」という。)すると、第2の模様(6)については基材(2)の厚みが薄いため光の透過率が高くなることですき入れ画像として視認できるため、図3(c)に示すように第2の潜像画像(11)である「10」が視認できる。つまり、形成体(1)は、観察方法により、最大で三つの異なる画像を視認可能な形成領域(3)を備えている。なお、各潜像画像の視認原理についての詳細は後述する。次に、形成領域(3)に形成されている第1の模様(4)、第2の模様(6)及び第3の模様(8)について説明する。
(第1の模様)
第1の模様(4)について説明する。第1の模様(4)は、図4(a)に示すように、第1の要素(5)が第1の方向(S1)に第1のピッチ(P1)で複数配置されて成る。なお、本発明において、「第1の方向」とは、基材(2)に第1の要素(5)が配置される方向のことである。
第1の要素(5)は、図4(a)のA−A’線の断面図である図4(b)に示すように、凸形状の画線から成る。なお、第1の要素(5)は、半円状の断面形状に限らず、図5(a)及び図5(b)に示す断面形状としても良い。
凸形状の第1の要素(5)の形成方法としては、エンボス加工や、盛り上がりを有する印刷画線を得られる公知の印刷方法(例えば、凹版印刷、スクリーン印刷)がある。また、凸形状を形成するために他を除去して凸形状を残すことでも第1の要素(5)を形成することが可能である。例えば、抄紙工程におけるすき入れや基材(2)の一部をレーザ加工によって除去することで、形成することができる。
第1の要素(5)の構成は、図4及び図5に示す形状に限定されるものではなく、第1の観察点(L1)から観察したときに、凸形状の表面の全面が観察でき、第2の観察点(L2)から観察したときに、凸形状の場合、手前側となる表面が観察でき、奥側となる表面が観察できない形状であれば良い。なお、第2の観察点(L2)から観察したときの凸形状の表面の見え方については後述する。
第1の要素(5)は、図4において、画線のみで構成しているが、それに限らず、画線、複数の画素の少なくとも一つ又はそれぞれの組み合わせで構成しても良い。本発明において、「画線」とは、直線、破線、波線等のことであり、「画素」とは、所定の形状を有する文字、数字、記号、図形、マーク等のことである。
図6は、画素の形状を示す一例であるが、これらの形状に限定されるものではない。ただし、複数の画素を用いて第1の要素(5)を形成する場合には、複数の画素を画線状に配置することにより、肉眼では画線と視認できるように配置する必要がある。以下、本実施の形態については、図7に示す直線で構成される第1の要素(5)が配置された例を用いて説明する。
図7に示す第1のピッチ(P1)は、限定されるものではないが、前述したような貴重印刷物に本発明の形成体(1)を形成し、第2の観察点(L2)から第1の潜像画像(10)を観察するような場合、第1のピッチ(P1)は、80μm〜1000μmの範囲で形成されるのが好ましい。上記範囲において、一定のピッチで規則的に第1の要素(5)が配置される。
なお、第1のピッチ(P1)を1000μmより広くしても、第1の潜像画像(10)を視認することができるが、第1の潜像画像(10)を形成するための第1の模様(4)が大きくなり、貴重印刷物を構成するデザイン、例えば、他の印刷図柄等の制約を受けるために、好ましくない。
また、第1のピッチ(P1)を80μmより狭くすることも可能であるが、第1の要素(5)の加工精度の問題や、後述する第1の要素(5)と第3の要素(9)の配置で、位置合わせに高い精度を要するために好ましくない。
第1の要素(5)における第1の方向(S1)の幅を第1の要素(5)の幅(W1)とする。第1の要素(5)の幅(W1)は、後述する潜像部(12)及び背景部(13)の区分けができ、かつ、第1の潜像画像(10)が鮮明に視認できるように、第1のピッチ(P1)に対応して形成される。
視認性の良好な第1の潜像画像(10)を形成するためには、第1の要素(5)の幅(W1)の範囲は、第1のピッチ(P1)に対して1/5〜4/5の広さの範囲が好ましく、例えば、第1のピッチ(P1)が80μmのときの第1の要素(5)の幅(W1)は、16μm〜64μmであり、第1のピッチ(P1)が1000μmのときの第1の要素(5)の幅(W1)は、200μm〜800μmというように、第1のピッチ(P1)に対して第1の要素(5)の幅(W1)を、後述する第3の要素(9)を印刷した後の第1の潜像画像(10)の視認性を鑑みて適宜調整すれば良い。
凸形状の第1の要素(5)の高さ(h1)は、10〜100μmの範囲で形成される。
第1の要素(5)の高さ(h1)を10μmより低くしても、第1の潜像画像(10)を形成すること可能だが、第1の潜像画像(10)が視認できる範囲が狭くなってしまうために、好ましくない。また、第1の要素(5)の高さ(h1)を100μmより高くすることも可能であるが、基材(2)が必要以上に厚くなり、加工効率が悪くなるという問題が生じるため、好ましくない。
以上のように説明した第1の要素(5)から成る第1の模様(4)は、規則的に配置された第1の要素(5)の位相が部分的に異なることにより、潜像部(12)と背景部(13)に区分けされる。
図8(a)は、潜像部(12)と背景部(13)を示す平面図である。本発明において、潜像部(12)とは、規則的に配置された第1の要素(5)の位相が部分的に異なることによって構成した第1の模様(4)である。また、背景部(13)とは、潜像部(12)に対して背景となる部分である。なお、第1の潜像画像は、図8(a)に示す「A」の文字に限定されず、数字、記号、図形、マーク等で形成されても良い。
図8(b)は、図8(a)において点線で囲まれた箇所の拡大図であり、潜像部(12)を構成する第1の要素(5)を潜像要素(12A)と呼び、背景部(13)を構成する第1の要素(5)を背景要素(13A)と呼ぶ。
なお、潜像要素(12A)は、図8(b)に示すように、背景要素(13A)に対して第1の方向(S1)とは反対方向である上側に位相を異ならせてもよく、また、図8(b)とは逆に、潜像要素(12A)を背景要素(13A)に対し、第1の方向(S1)と同じ方向である下側に位相を異ならせても良い。
潜像要素(12A)及び背景要素(13A)は、図8(b)に示すように離れていても良いし、図9(a)又は図9(b)に示すように、繋がっていても良い。
(第2の模様)
次に、第2の模様(6)について説明する。図10は、第2の模様(6)を示す平面図及び断面図である。第2の模様(6)は、図10(a)に示すように、凸形状の複数の第1の要素(5)の各要素間に形成された、複数の第2の要素(7)から成る。
前述のとおり、本発明の形成体(1)は、第2の観察点(L2)である傾けて視認可能となる第1の潜像画像(10)に加え、新たに第3の観察点(L1)である透過光下で視認可能となる第2の潜像画像(11)が付与されている。前述した第1の要素(5)及び第2の要素(7)は、断面形状を一部異ならせることで、基材(2)との透過率が変化する。よって、一部断面形状が異なる第1の要素(5)及び/又は第2の要素(7)を複数配置することで、透過光下で視認可能となるすかし模様である第2の潜像画像(11)を形成体(1)に付与することが可能となる。
まず、第2の要素(7)について説明する。なお、一部断面形状が異なる第1の要素(5)については後述する。図10(a)に示すように、基材(2)上に、「10」の文字形状の第2の潜像画像(11)が形成されている。図10(a)の拡大図に示すように、第2の要素(7)は、複数の第1の要素(5)間に配置されている。
図10(b)は、図10(a)におけるB−B’断面図である。基材(2)の一部である底部(7b)は、すべて断面形状が同一形状であるが、第2の要素(7)は、第2の潜像画像(11)の形状に対応し、断面形状が変化する。
図10(b)に示すように、第2の要素(7)と底部(7b)は、深さが異なる。なお、本発明においては、底部(7b)の幅(W2)及び深さ(h1)を基準とし、第2の要素(7)の深さ(h2)は、基準となる底部(7b)の基準位置(M)からの深さとして以下説明する。
第2の要素(7)を底部(7b)より深くすることで、第2の要素(7)と底部(7b)の透過率が異なり、透過光下で観察した際に、底部(7b)より深い第2の要素(7)が、底部(7b)と比べて明るく(白く)視認される。よって、複数の第2の要素(7)を第2の潜像画像(11)の形状に合わせて適宜形成することで、前述した透過光下で視認可能な第2の潜像画像(11)が形成される。
なお、図10(b)においては、第2の潜像画像(11)を形成する第2の要素(7)の深さ(h2)は一定である。第2の要素(7)の深さ(h2)及び幅(W2)を一定とした場合には、透過光下で視認可能な第2の潜像画像(11)は、階調を有しないベタのすかし模様として視認される。第2の潜像画像(11)を形成する第2の要素(7)の深さ(h2)及び幅(W2)を変化させた場合には、透過光下で視認可能な第2の潜像画像(11)は、階調を有するすかし模様として視認されるが、それについては後述する。
第2の要素(7)の深さ(h2)は、30μm〜70μmとする。30μm以下とした場合は、底部(7b)との透過率があまり変わらず、透過光下において第2の潜像画像(11)が不鮮明に視認されることから好ましくない。
70μm以上とした場合は、第1の要素(5)上に印刷画線である第3の要素(9)を印刷しづらくなり、好ましくない。さらには、第2の要素(7)が薄くなることで形成体(1)の耐久性が低下し、好ましくない。
前述した図10(b)においては、第2の要素(7)及び底部(7b)は、幅(W2)が一定だが、深さを変えることで、基材(2)との透過率を異ならせて、第2の潜像画像(11)を形成していた。しかしながら、基材(2)と第2の要素(7)の透過率を変化させることが可能な構成であれば、図10(b)に示した断面形状に限らず、他の断面形状とすることも可能である。
図11は、第2の潜像画像(11)を形成する第2の要素(7)の他の断面形状を示す断面図である。図11(a)、図11(b)、図11(c)及び図11(d)は、前述した図10(b)の断面図と同様に基材(2)を第1の方向(S1)に対して平行に切断した断面図である。前述した第2の要素(7)の深さを底部(7b)より深くする断面形状に限らず、各種形状とすることが可能である。
図11(a)、図11(b)、図11(c)及び図11(d)に示すように、第2の要素(7)の幅(W2)を、底部(7b)と比べて狭く又は広くしたり、また、第2の要素(7)の深さ(h2)を底部(7b)と比べて深く又は浅くしたりすることで、第2の要素(7)と底部(7b)の透過率を変化させることが可能である。いずれの形状においても、底部(7b)と比べ、透過率が高い場合には、底部(7b)より明るく視認され、反対に透過率が低い場合には、底部(7b)より暗く視認される。
なお、図11においては、幅(W2)及び深さ(h2)をいずれも変化させることで、第2の要素(7)を形成しているが、幅(W2)及び深さ(h2)のどちらか一方のみを変化させた場合でも、透過率の変化があることから、第2の潜像画像(11)を形成することは可能である。
さらには、一つの第2の要素(7)内において、幅及び深さを異ならせることも可能である。図12(a)は、幅が異なる一つの第2の要素(7)の平面図であり、図12(b)及び図12(c)は、図12(a)におけるC−C’断面図及びD−D’断面図である。図12(b)及び図12(c)に示すように、一つの第2の要素(7)内において、幅を変化させることで、C−C’断面位置における第2の要素(7)と、D−D’断面位置における第2の要素(7)との透過率を変化させることも可能である。
図13(a)は、深さが異なる一つの第2の要素(7)の平面図である。図13(b)は、図13(a)におけるE−E’断面図であり、底部(7b)の断面形状を示す図である。図13(b)に示すように、底部(7b)は第2の要素(7)の幅方向と垂直する長さ方向であるX方向(X1)に対して深さが一定である。
図13(c)、図13(d)及び図13(e)は、図13(a)におけるF−F’断面図である。図13(c)、図13(d)及び図13(e)に示すように、第2の要素(7)は、X方向(X1)に深さを多段又は緩やかに変化させることで、底部(7b)との透過率を変化させて形成することも可能である。
次に、一部断面形状が異なる第1の要素(5)について説明する。図14は、一部断面形状が異なる第1の要素(5)を示す平面図及び断面図である。図14(a)は、例として三つの第1の要素(5)が第1の方向(S1)に配置している。第1の要素(5)は、第1aの要素(5a)及び/又は第1bの要素(5b)から成る。
図14(b)、図14(c)及び図14(d)は、図14(a)におけるG−G’断面図である。複数の第1の要素(5)において、第1bの要素(5b)は、すべて断面形状が同一形状である。一方、第1aの要素(5a)は、第2の潜像画像(11)に対応し、断面形状が変化する。以下、本実施の形態において、第1の要素(5)は、断面形状が異なる第1aの要素(5a)を有していない場合には、第1bの要素(5b)のみから形成されているとして説明する。
図14(b)に示すように、第1aの要素(5a)と第1bの要素(5b)は、幅(W1)が異なる。なお、本発明においては、第1bの要素(5b)の幅(W1)及び高さ(h1)を基準とし、第1aの要素(5a)の高さ(h1)は、基準となる第1bの要素(5b)の基準位置(M)からの高さとして以下説明する。
図14(b)、図14(c)及び図14(d)に示すように、第1aの要素(5a)の高さ(h1)を、第1bの要素(5b)の高さ(h1)と異ならせたり、第1aの要素(5a)の幅(W1)を、第1bの要素(5b)の幅(W1)と異ならせたりすることで、第1aの要素(5a)と第1bの要素(5b)の透過率が異なり、透過光下で観察した際に、第1bの要素(5b)より透過率が高い場合には、第1aの要素(5a)は、第1bの要素(5b)と比べて明るく(白く)視認される。
反対に、第1bの要素(5b)より透過率が低い場合には、第1aの要素(5a)は、第1bの要素(5b)と比べて暗く(黒く)視認される。よって、複数の第1aの要素(5a)を第2の潜像画像(11)の形状に合わせて適宜形成することで、前述した透過光下で視認可能な第2の潜像画像(11)が形成される。
さらに、他の断面形状としては、一つの第1の要素(5)内において、高さ(h1)を変化させることで、第1aの要素(5a)を形成することも可能である。図15は、第1aの要素(5a)の他の断面形状を示す平面図及び断面図である。図15(a)は、第1bの要素(5b)の平面図であり、図15(b)は、図15(a)のH−H’断面図である。図15(b)に示す第1bの要素(5b)は、X方向(X1)に対して高さが一定である。
図15(c)、図15(d)、図15(e)及び図15(f)は、図15(a)におけるI−I’断面図である。図15(c)、図15(d)、図15(e)及び図15(f)に示すように、第1aの要素(5a)は、X方向(X1)に高さを多段又は緩やかに変化させることで、第1bの要素(5b)との透過率を変化させて形成することも可能である。
なお、前述した第2の要素(7)と同様に、第1aの要素(5a)においても、一つの第1の要素(5)内において第1aの要素(5a)の幅を徐々に広く、又は、狭くした形状とすることも可能である。
さらには、図には示さないが、前述した形状を種々組み合わせることで、第1aの要素(5a)及び第2の要素(7)を構成することが可能であることは言うまでもない。また、第2の潜像画像(11)においても、前述した第1aの要素(5a)及び第2の要素(7)を組み合わせて形成することも可能である。
次に、第1の要素(5)及び第2の要素(7)の形成方法について説明する。各要素(5、5a、5b、7、7b)は、基材(2)上に、エンボス加工、凹版印刷、スクリーン印刷、すき入れ又はレーザ加工により形成される。
エンボス加工による各要素(5、5a、5b、7、7b)の形成は、各要素(5、5a、5b、7、7b)の形状に合わせた凹型及び凸型を用いて、公知のエンボス加工機により形成される。
凹版印刷、スクリーン印刷による第1の要素(5)の形成は、基材(2)に対して公知の凹版印刷方法又は公知のスクリーン印刷方法に適した版面及びインキを用いて印刷を行うことで、インキの盛りにより形成する。第1の要素(5)を凹版印刷、スクリーン印刷及びエンボス加工により形成した場合には、形成された第1の要素(5)は、基材(2)に対し、盛りのある凸形状として形成される。それにより、第1の要素(5)の形成に伴い、隣り合う、二つの第1の要素(5)間に第2の要素(7)が形成される。
すき入れによる各要素(5、5a、5b、7、7b)の形成は、基材(2)を紙とした際に、すき入れを施すことが可能な公知の抄紙機を用いて形成される。
レーザ加工による各要素(5、5a、5b、7、7b)の形成は、公知のレーザ加工装置を用いて基材(2)の一部を除去することで形成する。基材(2)に対し、第1の要素(5)の周囲をレーザ加工により除去することで形成した場合には、この除去した領域は、第1の要素(5)より薄く(凹形状)なる。
よって、第1の要素(5)の形成に伴い、隣り合う二つの第1の要素(5)間に第2の要素(7)が形成される。また、予め、第1の要素(5)を凹版印刷、スクリーン印刷、エンボス加工、すき入れ及びレーザ加工により形成した後に、隣り合う、二つの第1の要素(5)間をレーザ加工により除去することで、第2の要素(7)を形成することも可能である。
なお、第2の潜像画像(11)を形成する第1aの要素(5a)及び第2の要素(7)においては、エンボス加工で形成することは好ましくない。基材(2)を紙とし、エンボス加工により第1aの要素(5a)及び第2の要素(7)を形成した場合には、第1aの要素(5a)及び第2の要素(7)と、基材(2)との繊維密度が同じとなり、いずれも透過率が同じとなる。よって、透過光下で観察しても第1aの要素(5a)及び第2の要素(7)と、基材(2)とは、明暗の差が生じず、透過光下において視認可能な第2の潜像画像(11)を形成することができなくなる。
しかしながら、基材(2)をプラスチックや、シート状の樹脂とした場合においては、製造工程においてエンボス加工をすることで、第1aの要素(5a)及び第2の要素(7)と、基材(2)との厚みが変化し、透過光下で観察した際に明暗の差が生じる。よって、第2の潜像画像(11)を形成する第1aの要素(5a)及び第2の要素(7)の形成方法については、用いる基材(2)により適宜設定する。
なお、第2の潜像画像(11)を形成する第1aの要素(5a)及び/又は第2の要素(7)の深さ(h2)及び高さ(h1)並びに幅(W1、W2)を一定とした場合、例えば、第1aの要素(5a)の高さ(h1)をすべて同じ高さで形成した場合には、第1aの要素(5a)の透過率はすべて同じとなる。よって、透過光下で視認可能な第2の潜像画像(11)は、階調を有しないベタ画像として視認される。
一方、第2の潜像画像(11)を形成する第1aの要素(5a)及び/又は第2の要素(7)の深さ(h2)及び高さ(h1)並びに幅(W1、W2)を、複数変化させた場合、例えば、第1aの要素(5a)の高さ(h1)を複数異ならせて形成した場合には、変化させた高さに対応し、第1aの要素(5a)の透過率はそれぞれ異なる。透過率が二箇所以上異なることで、よって、透過光下で視認可能な第2の潜像画像(11)は、階調を有する画像として視認される。
図16(a)は、階調を有するすかし模様である第2の潜像画像(11’)を示す平面図である。第2の潜像画像(11’)を形成する第1aの要素(5a)及び/又は第2の要素(7)の透過率を複数異ならせることで、階調豊かな第2の潜像画像(11’)が形成されており、図16(a)において第2の潜像画像(11’)は、第1aの要素(5a)と第2の要素(7)から成る。
図16(b)は、図16(a)に示した第2の潜像画像(11’)のJ−J’断面図である。第2の潜像画像(11’)を形成する第1aの要素(5a)の高さは第1の方向(S1)に徐々に低くなることで透過率が増加し、階調を有する明るさで視認される。また、第2の潜像画像(11’)を形成する第2の要素(7)は第1の方向(S1)に徐々に浅くなることで透過率が低下し、階調を有する暗さで視認される。このように、複数配置された第1aの要素(5a)の高さ及び第2の要素(7)の深さを異ならせることで、階調を有する第2の潜像画像(11’)が形成される。
第2の潜像画像(11’)を形成する第1aの要素(5a)及び第2の要素(7)の断面形状は、図13(b)に示す断面形状に限らず、形成体(1)に複数配置された第1aの要素(5a)及び第2の要素(7)の透過率を異ならせることが可能であれば、前述した各種形状とすることが可能であり、更には前述した形状を組み合わせることで形成することも可能である。
前述した一つの要素内において、高さ、深さ及び幅が変化している場合、その形状の変化に対応して一つの要素内において、透過率が異なり濃淡が生じて視認される。それにより、階調を有する第2の潜像画像(11’)を形成することが可能となる。
なお、第2の潜像画像(11’)を階調画像とするためには、基材(2)上における、第1の要素(5)及び第2の要素(7)において、少なくとも第1aの要素(5a)及び/又は第2の要素(7)の透過率が異なる箇所が二箇所以上必要である。透過率が異なる箇所が二箇所以上あることで、透過光下で観察した際に、一つの第2の潜像画像(11’)内において濃淡が生じ、階調を有する透過画像として視認される。
第2の潜像画像(11、11’)は、第1の要素(5)及び/又は第2の要素(7)の幅、深さ等断面形状を一部異ならせることで形成される。それにより、形成体(1)を市場に流通される印刷物に付与し、流通過程において第1の要素(5)及び/又は第2の要素(7)が摩耗した場合でも、透過光下で第2の潜像画像(11、11’)の有無を観察することで、真偽判別を行うことが可能となる。また、他の効果としては、断面形状を一部異ならせることで形成していることから、同一領域内に傾けて視認可能となる潜像画像と、透過光下で視認可能となる潜像画像を形成することが可能となる。
以上、本実施の形態の形成体(1)は、基材(2)と透過率の異なる第1aの要素(5a)及び/又は第2の要素(7)を複数形成することで、透過光下において視認可能となる第2の潜像画像(11、11’)を付与することが可能となる。
(第3の模様)
次に、可視画像である第3の模様(8)について説明する。第3の模様(8)は、図17(a)に示すように、第3の要素(9)が第2のピッチ(P2)で第2の方向(S2)に複数配置されて成る。本発明において、「第2の方向」とは、第3の要素(9)が配置される方向のことである。また、第3の要素(9)における第2の方向(S2)の幅を第3の要素(9)の幅(W3)とする。
なお、第3の要素(9)は、前述した第1の要素(5)と同様に、画線又は複数の画素、またはこれらの組合せで形成しても良い。第1の要素(5)の構成で説明したところは省略する。第3の要素(9)は、第1の要素(5)と異なる形状の画線又は画素、またはこれらの組合せで形成しても良い。
第2のピッチ(P2)は、第1のピッチ(P1)と略同じ広さで形成される。略同じ広さとは、第1のピッチ(P1)に対して4/5〜6/5の広さの範囲である。好ましくは、同じピッチとするのが良い。これは、第1のピッチ(P1)と第2のピッチ(P2)が同じ場合、第1の要素(5)と第3の要素(9)が必ず一定の間隔で重なるため、第1の潜像画像(10)を視認しやすいからである。
第3の要素(9)の幅(W3)は、少なくとも10μmより広く、上限は、第1のピッチ(P1)に対し、9/10の広さの範囲で形成される。これは、仮に、第3の要素(9)の幅(W3)が第1のピッチ(P1)に対して9/10より広いと、潜像要素(12A)、背景要素(13A)に第3の要素(9)が重なるので、コントラストが得られず第1の潜像画像(10)が視認できないからである。第3の要素(9)の幅(W3)が10μmより狭いと、第1の要素(5)と第3の要素(9)の重なる面積が小さいため、第1の潜像画像(10)の視認性が低下し、好ましくない。
本発明において、「第1の方向」とは、第1の要素(5)が配置される方向のことであり、「第2の方向」とは、第3の要素(9)が配置される方向のことである。本発明の形成体(1)において、第1の方向(S1)と第2の方向(S2)は、同じ方向であっても良いし、第2の方向(S2)が第1の方向(S1)と異なる方向でも良い。
図17(b)は、第2の方向(S2)を第1の方向(S1)に対して異ならせて複数配置された第3の要素(9)から成る第3の模様(8)の一例を示す平面図である。
第3の要素(9)は、図17(c)の拡大図に示すように、第1の要素(5)が配置される方向を示すE−E’線に対し、傾けて形成される。このとき、第1の要素(5)と第3の要素(9)の傾斜角(α)は、±0.5度から±3度の範囲で形成される。第1の要素(5)と第3の要素(9)の傾斜角(α)の好ましい範囲は、±0.5度から±1.5度である。これは、第1の要素(5)と第3の要素(9)の傾斜角(α)が小さい方が、第1の潜像画像(10)を視認しやすいためである。
第3の模様(8)は、第1の潜像画像(10)における潜像部(12)と背景部(13)から成る領域よりも大きく形成され、潜像部(12)と背景部(13)を覆うように配置される。これは、潜像部(12)と背景部(13)に第3の模様(8)が重ならない部分があると第1の潜像画像(10)全体を視認できないからである。
第3の模様(8)を形成する第3の要素(9)の色は、基材(2)の色と異なる色であればよく、特に限定されるものではない。
第3の要素(9)の形成方法は、オフセット印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷方法又はレーザ加工等を用いることができる。なお、印刷によって第3の模様(8)が形成される場合は、第3の要素(9)はインキから成り、レーザ加工によって第3の模様(8)が形成される場合は、第3の要素(9)は、基材(2)がレーザによって変色されて成る。
(第1の模様と第3の模様の配置)
次に第1の模様(4)と第3の模様(8)の配置と、視認できる第1の潜像画像(10)について説明するが、まず、第2の要素(7)を除外して本発明の第1の潜像画像(10)の視認原理について説明する。
まず、図18〜図20を用いて、凸形状の第1の要素(5)上に配置された第3の要素(9)の視認原理について説明する。
図18(a)は、図4(b)に示す 円弧の凸形状の第1の要素(5)と第3の要素(9)が重なって配置されている状態の一例を示す平面図であり、その一部を拡大したものである。なお、L−L’線は、凸形状の第1の要素(5)の頂点(Q)の位置を示しており、本発明において、「凸形状の頂点」とは、基材(2)を第2の観察点(L2)から観察したときに凸形状の第1の要素(5)の手前側となる面のうち、最も高い部分のことである。
図18(a)に示す配置では、第3の要素(9)が、第1の要素(5)の頂点(Q)を境とし、第1の要素(5)の表面の半分に重なる状態を示している。このとき、第1の観察点(L1)から観察した場合、第3の要素(9)が視認することができ、第3の要素(9)の色を視認することができる。
一方、第2の観察点(L2)から観察した場合には、第1の要素(5)の頂点(Q)を境とし、手前側となる第1の要素(5)の表面では視認することができるが、奥側の表面は第1の要素(5)の裏側にあたり、死角となることから視認することができない。
また、基材(2)の平らな部分は、第1の要素(5)の死角となって基本的に視認することができないが、第1の要素(5)の頂点(Q)を境とし、手前側となる第1の要素(5)の表面に近い側の部分は、第1の要素(5)の形状や第1のピッチ(P1)及び画線の幅(W1)によって、視認できることもある。
また、第1の要素(5)の頂点(Q)を境とし、手前側となる第1の要素(5)の表面において視認できる範囲も、第1の要素(5)の形状、第1のピッチ(P1)及び第1の要素(5)の幅(W1)によって若干の差はあるが、以降、第1の要素(5)の頂点(Q)を境とし、手前側となる第1の要素(5)の表面のみが視認できるものとし、基材(2)を第2の観察点(L2)から観察したときに、第1の要素(5)の頂点(Q)を境とし、手前側となる第1の要素(5)の表面のことを「観察部(V)」、奥側となる第1の要素(5)の表面及び基材(2)の平らな部分のことを「非観察部(V’)」として説明する。
なお、図18(b)に示す観察部(V)及び非観察部(V’)は、K−K’線上のものであるが、実際には、図18(a)に示すように、一つの第1の要素(5)において、所定の位置において第1の要素(5)の頂点(Q)を全体に渡って結ぶ線、すなわちL−L’線を境として観察部(V)と非観察部(V’)に区分けされる。
前述した、図5(b)に示す形状の第1の要素(5)が形成される場合、観察部(V)と非観察部(V’)の範囲が異なるので、次に説明する。
図19は、図5(b)に示す形状の第1の要素(5)が形成された基材(2)に第3の要素(9)が重なる配置の断面図である。このとき、基材(2)を第2の観察点(L2)から観察すると、手前側となる第1の要素(5)の表面(V1)と第1の要素(5)の上面(V2)に形成された第3の要素(9)を視認することができる。
しかし、第1の要素(5)の上面(V2)に形成される第3の要素(9)は、手前側となる第1の要素(5)の表面(V1)に形成される第3の要素(9)に対して視認性が弱く、第1の潜像画像(10)の視認性への影響は小さいため、実際には、手前側となる第1の要素(5)の表面(V1)に重なる第3の要素(9)によって、第1の潜像画像(10)が視認される。
したがって、図19に示す第1の要素(5)は、第2の観察点(L2)から観察したときに手前側となる第1の要素(5)の表面(V1)が観察可能となる。また、図19に示す第1の要素(5)の非観察部(V’)の範囲は、頂点(Q)を境とし、奥側となる第1の要素(5)の表面、第1の要素(5)の上面(V2)及び基材(2)の平らな部分となる。
このように、第3の要素(9)が、第1の要素(5)の観察部(V)に重なる場合には、第2の観察点(L2)から観察したときに第3の要素(9)の色を視認することができ、第3の要素(9)が、第1の要素(5)の観察部(V)に重ならない場合、すなわち、第3の要素(9)が、第1の要素(5)の奥側の表面(V’)又は基材(2)の平らな部分に重なる場合には、第3の要素(9)の色を視認することができない。
次に、図18(a)に示す配置と異なる第1の要素(5)と第3の要素(9)の配置について説明する。図20は、図18に示す配置と異なる、第1の要素(5)と第3の要素(9)の配置の一例を示した図である。
図20(a)に示す配置は、第3の要素(9)が、第1の要素(5)の観察部(V)の約半分に重なり、残りが基材(2)の平らな部分に重なる状態を示している。
図20(b)は、図20(a)に示すM−M’線における断面図を示す図である。このとき、第1の要素(5)の観察部(V)に第3の要素(9)が重なっている部分のみ、その色を視認することができる。ただし、図18に示す配置に対し、第1の要素(5)の観察部(V)に対する第3の要素(9)の重なる面積が小さいため、薄い色で視認できる。また、基材(2)の平らな部分に重なる第3の要素(9)は、第1の要素(5)の死角となって視認することができない。
本発明は、以上の視認原理を利用しており、第1の模様(4)の潜像要素(12A)及び背景要素(13A)がそれぞれ異なる位相に配置することによって、第1の要素(5)の各要素と第3の要素(9)の重なり方がそれぞれ異なり、その結果、第2の観察点(L2)から観察したときの第3の要素(9)の視認性が異なることから第1の潜像画像(10)が視認できるものである。
続いて、第1の要素(5)と第3の要素(9)の具体的な配置と、視認できる潜像画像ついて説明する。なお、第1のピッチ(P1)と第2のピッチ(P2)が同じピッチで配置されて成る第1の模様(4)と第3の模様(8)の配置と視認できる潜像画像について説明する。
また、第1の観察点(L1)から観察した場合には、いずれの場合も第3の要素(9)を観察することができるので説明を省略し、基材(2)に対して図面の下方から、かつ、第2の観察点(L2)から観察した場合に視認可能となる潜像画像について説明する。また、以降説明する第1の要素(5)と第3の要素(9)の配置を示す図において、観察部(V)は、図面に示す各要素の半分から下側とし、非観察部(V’)は、図面に示す各要素の半分から上側とする。
図21を用いて、第1の配置について説明する。図21(a)は、第1の配置である、第3の要素(9)が、潜像要素(12A)の全体及び背景要素(13A)の観察部(V)の一部に重なる状態を示している。また、背景要素(13A)の観察部(V)に重なる第3の要素(9)の面積率が、潜像要素(12A)の観察部(V)に重なる第3の要素(9)の面積率より小さい状態を示している。
第1の配置の形成体(1)を第2の観察点(L2)から観察した場合、潜像要素(12A)の観察部(V)と背景要素(13A)の観察部(V)に第3の要素(9)が重なっているため、潜像部(12)と背景部(13)が第3の要素(9)の色で視認できる。このとき、背景要素(13A)の観察部(V)に重なる第3の要素(9)の面積率が、潜像要素(12A)の観察部(V)に重なる第3の要素(9)の面積率より小さいため、図21(b)に示すように、第1の潜像画像(10)として背景部(13)は潜像部(12)より薄い濃度で視認できる。
次に、図22を用いて、第2の配置について説明する。図22(a)は、第2の配置である、第3の要素(9)が、潜像要素(12A)の観察部(V)の少なくとも一部に重なり、背景要素(13A)の観察部(V)に重ならない配置を示す。
第2の配置の形成体(1)を第2の観察点(L2)から観察した場合、潜像要素(12A)の観察部(V)に第3の要素(9)が重なっているため、潜像部(12)が第3の要素(9)の色で視認できる。その結果、図22(b)に示すように第1の潜像画像(10)として潜像部(12)のみが第3の要素(9)の色で視認できる。
次に、図23を用いて、第3の配置について説明する。図23(a)は、第3の配置である、第3の要素(9)が背景要素(13A)の観察部(V)の少なくとも一部に重なり、潜像要素(12A)の観察部(V)に重ならない配置を示す。
第3の配置の形成体(1)を第2の観察点(L2)から観察した場合、背景要素(13A)の観察部(V)と第3の要素(9)が重なっているため、背景部(13)が第3の要素(9)の色で視認できる。その結果、図23(b)に示すように第1の潜像画像(10)として背景部(13)のみが第3の要素(9)の色で視認できる。
つまり、第1の要素(5)と、第3の要素(9)との位置関係が、第1の配置、第2の配置、第3の配置のいずれの位置関係であっても、第1の潜像画像(10)を視認することが可能である。このことから、製造時における第1の要素(5)と第3の要素(9)との位置合わせに高い精度を必要としないため、生産性に優れている。
次に第2の要素(7)と第3の要素(9)の配置と視認できる第2の潜像画像(11)について図24〜図26を用いて説明する。
また、第3の観察点(L3)から観察した場合には、いずれの場合も第3の要素(9)を視認できるので説明を省略し、第3の観察点(L3)である透過光で視認可能となる第2の潜像画像(11)について説明する。
第3の要素(9)が、第2の要素(7)に重ならない配置の一例を図24に示す。この形成体(1)を第3の観察点(L3)から観察した場合、第2の要素(7)は、基材(2)で最も薄く、第3の要素(9)で覆われていないため、単純に明るく見えることで、第2の潜像画像(11)が視認できる。
次に、第3の要素(9)が、第2の要素(7)にすべて重なる配置の一例を図25に示す。この形成体(1)を第3の観察点(L3)から透過光で観察した場合、第2の要素(7)は、第3の要素(9)で完全に覆われているため、第2の要素(7)が第3の要素(9)の色で視認できるか、又は第3の要素(9)で透過光を遮蔽されて視認することができない。
第2の要素(7)が第3の要素(9)の色で視認できる場合は、第3の要素(9)を構成するインキが光を完全に遮断するものでないことが必要である。使用するインキについては、形成体(1)とした時の光の透過量が少なくとも第2の要素(7)を視認できる程度になるように調整する必要がある。
また、印刷方法としては、形成体(1)の膜厚が厚くならないオフセット印刷やグラビア印刷が好ましく、膜厚が厚くなるスクリーン印刷や凹版印刷を用いる場合には、光の透過を阻害しないように、染料を成分とするようなインキを使用することが好ましい。このような場合は、第2の要素(7)と第3の要素(9)が重なっている箇所が、第3の要素(9)の色彩で淡く明るく見えるため、他の箇所とは異なる色合いに視認できるが、形成領域(3)全体では、第2の潜像画像(11)として視認することができる。
また、第3の要素(9)が、第2の要素(7)に一部重なる配置の一例を図26に示す。この形成体(1)を第3の観察点(L3)から透過光で観察した場合、第2の要素(7)は、その一部を第3の要素(9)で覆われているため、覆われていない部分は単純に明るく視認できる。
覆われた部分において、第3の要素(9)を構成するインキが光を完全に遮断しない場合は、第3の要素(9)の色で視認できる。
覆われた部分の第3の要素(9)を構成するインキが光を完全に遮断する場合でも、第3の要素(9)に覆われていない部分から透過光が見えるため、第2の潜像画像(11)を視認することができる。
つまり、第2の要素(7)と、第3の要素(9)との位置関係が、前記三つのどの位置関係であっても、第2の潜像画像(11)を視認することができる。また、前述の第1の要素(5)と、第3の要素(9)との位置関係が、どの位置関係であっても、第1の潜像画像(10)が視認することができることから、予め第1の要素(5)及び第2の要素(7)が形成された基材(2)と、第3の要素(9)との位置合わせに高い精度を必要としないため、生産性に優れている。
この形成体(1)を作製する順番については、第2の要素(7)の後に第3の要素(9)を配置する場合を例に説明してきたが、第1の要素(5)に第3の要素(9)を先に配置してから第2の要素(7)を配置して形成しても良い。