本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
本発明の潜像印刷物(1)は、図1に示すように、光透過性を有する基材(10)の一方の面の少なくとも一部に、真偽判別領域(5)を備える。図1では、基材(10)の一部に真偽判別領域(5)が設けられているが、潜像印刷物全体を真偽判別領域(5)とする構成であってもよい。
図2(a)は、本発明の潜像印刷物(1)の真偽判別領域(5)の一部斜視図であり、図2(b)は、図2(a)に示すX−X’線における断面図である。真偽判別領域(5)は、図2に示すように、光透過性を有する基材(10)の上に、光遮断性のインキによって、第1の光遮断層(11)が形成され、第1の光遮断層(11)は、部分的に光遮断性のインキが施されないことによって形成された複数の第1の光透過性要素(12A)を備える。以降の説明では、基材(10)の上に第1の光遮断層(11)が形成される面を「表側の面」とし、その反対の面を「裏側の面」として説明する。
第1の光透過性要素(12A)に隣接又は近接する位置の第1の光遮断層(11)の上には、光遮断性のインキで形成された盛り上がりを有する第1の光遮断要素(13A)が複数配置される。本発明では、光遮断性のインキで形成された盛り上がりの量のことを「第1の光遮断要素の高さ(H)」として説明することとし、第1の光遮断要素の高さ(H)を図2(b)に示す。なお、第1の光遮断要素(13A)が形成される位置の詳細な説明については、後述する。
そして、本発明の潜像印刷物(1)の真偽判別領域(5)を、基材(10)に対して斜めの方向から透過光で観察すると、図3に示すように、観察する方向によって潜像(16)が観察される。なお、図3においては、潜像印刷物(1)を四つの異なる斜めの方向から観察したときに、それぞれの方向で異なる図柄の潜像(16)が観察された状態を示している。
以下、本発明の潜像印刷物(1)の真偽判別領域(5)の詳細な構成について説明する。なお、本発明の潜像印刷物(1)は、観察する方向に応じて、複数の異なる潜像を観察できる構成とすることができるが、はじめに、一つの潜像(16)が観察される潜像印刷物(1)の構成と、潜像(16)の図柄が観察される原理について説明する。また、潜像(16)の図柄に「1」の文字が形成される例で説明する。
(光透過性基材)
本発明において、基材(10)は、光透過性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、紙、プラスチック、フィルム等を用いることができる。
(第1の光遮断層)
図4は、光透過性基材(10)の上に形成される第1の光遮断層(11)の平面図であり、第1の光遮断層(11)には、部分的に光遮断性のインキが施されないことによって形成される第1の光透過性要素(12A)を複数備える。
本発明において、第1の光遮断層(11)が備える第1の光透過性要素(12A)は、規則的に複数配置される。なお、本発明において、「第1の光透過性要素(12A)を規則的に配置する」とは、複数の第1の光透過性要素(12A)が、特定のピッチで二つの異なる方向にマトリクス状に配置された状態のことである。図4では、第1の光透過性要素(12A)が上下左右方向の二つの方向に特定のピッチで配置された状態を示しているが、二つの異なる方向は、上下左右方向に限定されず、斜め方向であってもよい。以降、第1の光透過性要素(12A)が規則的に配置される特定のピッチのことを第1のピッチ(P1)として説明する。
図4では、正方形の形状で形成された第1の光透過性要素(12A)を示しているが、本発明において、第1の光透過性要素(12A)の形状は、円、楕円、三角形、長方形、五角形、それ以上の多角形又は任意の図形であってもよい。また、図4では、複数の第1の光透過性要素(12A)が、全て同じ形状で形成されている状態を示しているが、透過光で潜像を観察するときに、目視上、同じように観察される範囲であれば、図5(a)に示すように、第1の光透過性要素(12A)は全て異なる形状で形成されてもよいし、図5(b)に示すように、一部が、異なる形状で形成されてもよい。ここでは、図4に示す構成の第1の光遮断層(11)の例で説明する。
第1の光透過性要素(12A)の大きさは、特に限定されるものではないが、前述したような銀行券、株券、有価証券、通行券、パスポート等の貴重印刷物に真偽判別領域(5)を形成する場合に、他のデザインとの関係や、潜像の図柄の解像度の問題から10μm〜500μmの範囲で形成される。
第1の光遮断層(11)を形成する光遮断性のインキは、透過光で観察するときに完全に光を遮断する必要はなく、透過光で観察したときに、第1の光遮断層(11)のうち、第1の光透過性要素(12A)が配置された部分に対し、光遮断性のインキで形成される部分が、光の透過量の差によるコントラスが得られればよい。このようなインキとしては、公知の着色インキを用いることができる。
また、光遮断性のインキは、公知の着色インキに光遮断性の効果のある炭酸カルシウム、二酸化チタン等の顔料を加えて用いてもよい。この場合、第1の光透過性要素(12A)が配置された部分に対し、光遮断性のインキで形成される部分のコントラストを高めることができるため、潜像の視認性が良好と成る。また、光遮断性のインキは、光を完全に遮断することができるカーボンブラックインキ、金属インキを用いてもよい。
第1の光遮断層(11)の形成方法は、スクリーン印刷、インクジェット印刷、凹版印刷、オフセット印刷、凸版印刷、グラビア印刷、塗布等の公知の印刷方法を用いることができる。
(第1の光遮断要素)
図6(a)は、真偽判別領域(5)の平面図である。図6(a)に示すように、第1の光透過性要素(12A)に隣接又は近接する位置の第1の光遮断層(11)の上には、光遮断性のインキで形成された盛り上がりを有する第1の光遮断要素(13A)が配置され、潜像の図柄が模られる。図6(a)は、潜像(16)の図柄として、「1」の文字が白抜きの状態で模られており、「1」の文字の背景となる部分に第1の光遮断要素(13A)が配置された状態を示しているが、図6(b)に示すように、潜像の図柄である「1」の文字が第1の光遮断要素(13A)で模られ、「1」の文字の背景となる部分に第1の光遮断要素(13A)が配置されない構成としてもよい。ここでは、図6(a)に示す配置の構成で、第1の光透過性要素(12A)に隣接して第1の光遮断要素(13A)が配置される例について説明する。
続いて、第1の光透過性要素(12A)に対して、第1の光遮断要素(13A)が配置される方向について説明する。
本発明において、第1の光遮断要素(13A)は、第1の光透過性要素(12A)に対して、第1の方向、第2の方向、・・・、第nの方向(nは自然数)のうち、少なくとも一つの方向に配置される。なお、第1の方向、第2の方向、・・・、第nの方向は互いに異なる方向である。また、本発明において、第1の光遮断要素(13A)が第1の光透過性要素(12A)に対して配置される方向の数は、観察される潜像の数及び基材(10)に対して斜めから観察する方向の数と同じである。ここでは、一つの潜像(16)が観察される潜像印刷物(1)について説明しているので、第1の光遮断要素(13A)が配置される方向の数も一つであり、第1の光遮断要素(13A)が配置される一つの方向を「第1の方向(S1)」として説明する。
図7は、第1の光遮断層(11)の上に配置される第1の光遮断要素(13A)の配置の例を示す平面図である。この配置の例では、図7の拡大図に示すように、第1の光透過性要素(12A)に対して、下方向を第1の方向(S1)とし、第1の光遮断要素(13A)が隣接して配置された状態を示している。本発明では、図7に示すように、第1の光透過性要素(12A)に対して同じ第1の方向に配置された第1の光遮断要素(13A)によって、図6に示すように、一つの潜像(16)の図柄が模られ、第1の方向に配置された第1の光遮断要素(13A)を有する第1の光透過性要素(12A)によって、潜像(16)が形成される。以降、第1の方向に配置された第1の光遮断要素(13A)を有する第1の光透過性要素(12A)によって形成される潜像のことを「第1の潜像(16A1)」として説明する。
なお、本発明において、第1の光遮断要素(13A)が配置される第1の方向(S1)は、図7に示す方向(下方向)に限定されず、図8(a)に示すように、第1の光透過性要素(12A)に対して上方向であってもよいし、図8(b)に示すように、第1の光透過性要素(12A)に対して右方向であってもよいし、図8(c)に示すように、第1の光透過性要素(12A)に対して左方向であってもよい。また、図8(d)に示すように、第1の光遮断要素(13A)が第1の光透過性要素(12A)に対して斜め方向に配置されて、第1の光透過性要素(12A)と第1の光遮断要素(13A)が点で接する配置であってもよい。ただし、前述のように、一つの潜像(16)の図柄を模るために、第1の光透過性要素(12A)に対して第1の光遮断要素(13A)が配置される第1の方向は、全ての第1の光遮断要素(13A)において、同じ方向である。
図9は、第1の光透過性要素(12A)と第1の光遮断要素(13A)が隣接して配置された状態を詳細に説明するための図であり、図7に示す配置の例に対して、第1の光遮断要素(13A)の輪郭を破線で示している。本発明において、第1の光透過性要素(12A)に隣接して第1の光遮断要素(13A)が配置される場合、図9の拡大図に示すように、第1の光透過性要素(12A)と第1の光遮断要素(13A)の輪郭が互いに接して配置された状態となっている。
図9(b)は、図9(a)の拡大図のY−Y’線における断面図である。図9(a)では、第1の光透過性要素(12A)と第1の光遮断要素(13A)の輪郭が互いに接して配置されているが、実際には、図9(b)の断面図に示すように、第1の光透過性要素(12A)に隣接する第1の光遮断層(11)の上に第1の光遮断要素(13A)が配置される。このように、第1の光透過性要素(12A)と第1の光遮断要素(13A)同士は、直接隣接するものではないが、本発明では、図9に示す第1の光透過性要素(12A)に隣接する第1の光遮断層(11)の上に第1の光遮断要素(13A)が配置された状態のことを「隣接する配置」として説明する。
続いて、第1の光遮断要素(13A)の形状について説明する。本発明において、第1の光遮断要素(13A)の形状は、特に限定されることはなく、図10(a)に示す台形、図10(b)に示す三角形でもよいし、その他の形状でもよい。また、図10(c)に示すように、複数の第1の光遮断要素(13A)の形状は異なってもよい。また、好ましくは、第1の光遮断要素(13A)の第1の方向に対する垂直方向の幅(W1)が、第1の光透過性要素(12A)の第1の方向に対する垂直方向の幅(W2)と同じか、第1の光遮断要素(13A)の、第1の方向に対して垂直な方向の幅(W1)が、第1の光透過性要素(12A)の、第1の方向に対する垂直方向の幅(W2)より大きくするのがよい。第1の光遮断要素(13A)の第1の方向に対する垂直方向の幅(W1)と第1の光透過性要素(12A)の第1の方向に対する垂直方向の幅(W2)の関係について、以下に説明する。例として、長方形の形状の第1の光遮断要素(13A)が、正方形の形状の第1の光透過性要素(12A)に対して下方向に配置された例で説明する。
第1の光遮断要素(13A)の第1の方向に対する垂直方向の幅(W1)とは、図11(a)に示すように、第1の方向(S1)に対して垂直方向に位置する第1の光遮断要素(13A)の最端位置間の距離のことであり、図11(a)に示す構成と配置の場合、第1の光遮断要素(13A)の右端から左端までの距離となる。第1の光透過性要素(12A)の幅(W2)についてもこれと同様である。前述したように、第1の光遮断要素(13A)の幅(W1)が、第1の光透過性要素(12A)の幅(W2)と同じか(図11(a))、又は、第1の光透過性要素(12A)の幅(W2)より大きく形成される(図11(b))。 なお、正方形の形状の第1の光透過性要素(12A)に対して、五角形の形状の第1の光遮断要素(13A)を下方向に配置した場合、第1の光遮断要素(13A)の幅(W1)は、図12に示すとおりとなる。
第1の光遮断要素(13A)の幅(W1)を第1の光透過性要素(12A)の幅(W2)以上の大きさで形成する理由は、第1の光遮断要素(13A)の幅(W1)を、第1の光透過性要素(12A)の幅(W2)より大きくすることによって、透過光で斜めから観察したときに、第1の光透過性要素(12A)を透過する光を完全に遮断して、潜像(16)を観察するためのコントラストを得るためである。なお、潜像(16)の観察原理については後述する。以降の説明では、図11に示すように、第1の光遮断要素(13A)の幅(W1)が第1の光透過性要素(12A)の幅(W2)以上の大きさで形成される構成で説明する。
第1の光遮断要素(13A)は、第1の光遮断層(11)を形成するために用いるインキと同じインキを用いることができる。なお、潜像を一つだけ形成する場合において、第1の光遮断層(11)と第1の光遮断要素(13A)の色が異なると、真偽判別領域(5)が設けられた表側の面から反射光によって観察したときに、第1の光遮断要素(13A)の配置によって、潜像の図柄が視認されてしまうことから、潜像を一つだけ形成する場合には、第1の光遮断層(11)を形成するインキと等色のインキを用いる必要がある。なお、本発明において、「等色」とは、第1の光遮断層(11)を形成するインキと第1の光遮断要素(13A)を形成するインキの色差ΔEが6未満の範囲のことである。一方、本発明において、複数の異なる方向から観察される潜像を、複数形成する場合には、第1の光遮断要素(13A)を形成するインキは、第1の光遮断層(11)を形成するインキと等色のインキであってもよいし、異なる色のインキであってもよい。この理由については後述する。
第1の光遮断要素(13A)は、スクリーン印刷、インクジェット印刷、凹版印刷、塗布等の各種印刷方法を用いることができる。このような印刷方法で第1の光遮断要素(13A)を形成する理由は、後述する潜像(16)の観察原理で説明するが、第1の光遮断要素(13A)は、斜めから観察したときに、第1の光透過性要素(12A)を透過する光を遮断するためのインキの厚さが必要であり、上述する印刷方法では、インキの厚盛りが可能であるからである。
続いて、以上の構成で成る潜像印刷物(1)において、透過光で観察したときに潜像が観察される原理について説明する。
(潜像の観察原理)
本発明の潜像印刷物(1)は、基材(10)に対して、第1の光遮断層(11)が設けられた表側の面又は裏側の面から透過光で傾けることで、潜像(16)を観察することができる。はじめに、基材(10)に対して、表側の面から観察する場合について説明する。
図13(a)は、図7に示すY−Y’線における断面図と、Y−Y’線上の潜像印刷物(1)に対して、真上及び斜めの方向から観察するときの状態を示す図である。また、図13(b)は、図7に示すX−X’線における断面図と、X−X’線上の潜像印刷物(1)に対して、真上及び斜めの方向から観察するときの状態を示す図である。本発明の潜像印刷物(1)の潜像を観察する場合、図13(a)及び(b)に示すように、視点(20)と光源(21)の間に潜像印刷物(1)を配置し、潜像印刷物(1)を透過する光源(21)の光によって観察する。なお、本発明の潜像印刷物(1)の潜像を観察するために、特別な光源を用いる必要はなく、太陽光の下や、室内の蛍光灯の下で潜像を観察することができる。
図13(a)及び(b)において、観察点(O)は、潜像印刷物(1)に対して、真上から観察した場合の視点(20)の位置である。また、観察点(A)は、第1の光透過性要素(12A)に対して、第1の光遮断要素(13A)が配置された第1の方向(S1)側から逆方向に向かって、かつ、基材(10)に対して斜めの方向から観察した場合の視点(20)の位置である。また、図13(a)及び(b)において、実線の矢印は、視点(20)の位置から観察する方向を示しており、破線の矢印は、光源(21)の光の進行方向を示している。なお、実際に前述した観察条件の下では、図13(a)及び(b)に示す破線の矢印以外の方向にも光が透過しているが、図13(a)及び(b)では、潜像(16)の観察に影響する方向のみを図示している。
ここで、視点(20)が観察点(O)に位置するとき、第1の光透過性要素(12A)が形成された部分では、光源(21)の光がそのまま透過して、マトリクス状に配置された第1の光透過性要素(12A)の形状が観察されるだけで第1の潜像(16A1)を観察することができない。
続いて、観察点(A)から観察する場合について説明する。視点(20)が観察点(A)に位置するとき、図7に示す真偽判別領域(5)のY−Y’線上、すなわち、「1」の文字に対して背景と成る部分であり、第1の光透過性要素(12A)に隣接して第1の光遮断要素(13A)が形成された部分では、図13(a)に示すように、光源(21)の光が第1の光遮断要素(13A)によって遮断されて、光源(21)の光が視点(20)に届かない。これは、第1の光遮断要素(13A)の第1の方向(S1)に対する垂直方向の幅(W1)が第1の光透過性要素(12A)の第1の方向(S1)に対する垂直方向の幅(W2)と同じか大きいため、基材(10)と第1の光透過性要素(12A)を透過する光が、第1の光遮断要素(13A)によって遮断されるためである。一方、図7に示す真偽判別領域(5)のX−X’線上、すなわち、「1」の文字の部分であり、第1の光透過性要素(12A)に対して、第1の光遮断要素(13A)が形成されない部分では、図13(b)に示すように、光源(21)の光が基材(10)と第1の光透過性要素(12A)を透過し、第1の光透過性要素(12A)を透過した光は、第1の光遮断要素(13A)によって遮断されることなく視点(20)に届く。
続いて、基材(10)に対して、裏側の面から観察する場合について説明する。図14は、図7に示すY−Y’線における断面図と、Y−Y’線上の潜像印刷物(1)に対して、裏側の面の真上及び斜めの方向から観察するときの状態を示す図である。この場合、図14に示すように、基材(10)の裏側の面に視点(20)を配置し、基材(10)の表側の面に位置する光源(21)の光によって観察する。
図14において、観察点(O’)は、潜像印刷物(1)に対して、裏側の面の真上から観察した場合の視点(20)の位置である。また、観察点(A’)は、第1の光透過性要素(12A)に対して、第1の光遮断要素(13A)が配置された第1の方向(S1)側に向かって、かつ、基材(10)に対して斜めの方向から観察した場合の視点(20)の位置である。
ここで、視点(20)が観察点(O’)に位置するとき、第1の光透過性要素(12A)が形成された部分では、光源(21)の光がそのまま透過して、マトリクス状に配置された第1の光透過性要素(12A)の形状が観察されるだけで第1の潜像(16A1)を観察することができない。一方、視点(20)が観察点(A’)に位置するとき、表側の面から観察した場合と同様の原理によって、「1」の文字に対して背景と成る部分では、図14に示すように、光源(21)の光が第1の光遮断要素(13A)によって遮断され、「1」の文字の部分では、光源(21)の光がそのまま透過して(図示せず)、光源(21)の光が視点(20)に届く。
このように、本発明の潜像印刷物(1)を透過光で傾けて観察すると、第1の光遮断要素(13A)の有無によって、光源(21)の光が透過する部分と、透過しない部分が生じ、第1の光遮断要素(13A)の配置によって模られた第1の潜像(16A1)が観察される。この場合、「1」の文字が周囲に対して明るく観察される。以上が、本発明の潜像印刷物(1)において潜像が観察される原理である。
なお、第1の光遮断要素の高さ(H)は、第1の光遮断層(11)の厚さ、第1の光透過性要素(12A)の大きさ、観察する角度に応じて、傾けて観察したときに光が遮断できるように、適宜調整すればよい。
また、第1の光遮断要素(13A)の幅(W1)が、第1の光透過性要素(12A)の幅(W2)より小さくなるほど、第1の光透過性要素(12A)のみが形成された部分との透過光のコントラストが小さくなり潜像の視認性が低下するので、第1の光遮断要素(13A)の幅(W1)を第1の光透過性要素(12A)の幅(W2)より小さくする場合には、観察される潜像の視認性に応じて、第1の光遮断要素(13A)の幅(W1)を適宜調整する必要がある。
以上の説明は、第1の光透過性要素(12A)に隣接して第1の光遮断要素(13A)が配置される構成であるが、続いて、第1の光透過性要素(12A)に近接して第1の光遮断要素(13A)が配置される構成について説明する。
本発明において、第1の光透過性要素(12A)に近接する第1の光遮断要素(13A)の位置とは、前述した潜像の観察原理によって潜像を観察するために、基材(10)に対して斜めから観察したときに、第1の光遮断要素(13A)が第1の光透過性要素(12A)を透過する光を遮断することが可能な位置のことである。
第1の光透過性要素(12A)に近接して第1の光遮断要素(13A)が配置される場合においても、第1の光透過性要素(12A)に対して同じ第1の方向(S1)に配置された第1の光遮断要素(13A)によって、一つの潜像の図柄が模られ、第1の方向(S1)に配置された第1の光遮断要素(13A)を有する第1の光透過性要素(12A)によって、第1の潜像(16A1)が形成される。また、第1の方向(S1)、第1の光遮断要素(13A)の形状についても、第1の光透過性要素(12A)に隣接して第1の光遮断要素(13A)が配置される場合と同様である。また、実際には、第1の光透過性要素(12A)に近接した第1の光遮断層(11)の上に第1の光遮断要素(13A)が配置されるが、この状態のことを「近接する配置」として説明する。
具体的な配置の例としては、図15(a)に示すように、各々の第1の光遮断要素(13A)を、第1の光透過性要素(12A)に対して、第1の方向(S1)に離れた同じ位置に配置してもよいし、図15(b)に示すように、各々の第1の光遮断要素(13A)の位置が異なってもよいし、図15(c)に示すように、複数の第1の光遮断要素(13A)の形状が異なってもよい。第1の光透過性要素(12A)に近接して第1の光遮断要素(13A)が配置する場合においては、基材(10)に対して斜めから観察したときに、第1の光透過性要素(12A)を透過する光を遮断するように、第1の光遮断要素の高さ及び/又は第1の光透過性要素(12A)に対して第1の光遮断要素(13A)を配置する位置を適宜調整する必要がある。
また、以上に説明した、「隣接する配置」と「近接する配置」に対して、図16に示すように、第1の光透過性要素(12A)に対して隣接して配置される第1の光遮断要素(13A)と第1の光透過性要素(12A)に対して近接して配置される第1の光遮断要素(13A)を備える構成であってもよい。
続いて、観察する方向に応じて、複数の潜像(16)の図柄が観察される潜像印刷物(1)の構成について説明する。ここでは、これまで説明した潜像(16)の図柄である「1」の文字に加えて、潜像印刷物(1)を観察する方向に応じて「2」、「3」、「4」の図柄が観察される例で説明する。また、第1の光透過性要素(12A)に隣接して第1の光遮断要素(13A)が形成される例で説明する。
図17(a)は、潜像の図柄の一つである「1」の文字に対応した第1の光遮断要素(13A)の配置を示す図である。図17(b)は、潜像の図柄の一つである「2」の文字に対応した第1の光遮断要素(13A)の配置を示す図である。図17(c)は、潜像の図柄の一つである「3」の文字に対応した第1の光遮断要素(13A)の配置を示す図である。図17(d)は、潜像の図柄の一つである「4」の文字に対応した第1の光遮断要素(13A)の配置を示す図である。
以降の説明では、図17に示すそれぞれの潜像(16)の図柄を模る第1の光遮断要素(13A)を区別するため、図17(a)に示す第1の光遮断要素を符号「(13A1)」として説明する。また、図17(b)に示す第1の光遮断要素を符号「(13A2)」として説明する。また、図17(c)に示す第1の光遮断要素を符号「(13A3)」として説明する。また、図17(d)に示す第1の光遮断要素を符号「(13A4)」として説明する。
以上に説明した、第1の光遮断要素(13A1、13A2、13A3、13A4)のそれぞれは、第1の光透過性要素(12A)に対して異なる方向に配置される。前述したように、第1の光遮断要素(13A1、13A2、13A3、13A4)が第1の光透過性要素(12A)に対して配置される方向の数は、観察される潜像の数と同じである。ここでは、四つの潜像が観察される例で説明しているので、第1の光遮断要素(13A1、13A2、13A3、13A4)のそれぞれは、第1の方向から第4の方向までの異なる方向に配置される。
図18は、第1の光遮断層(11)の上に重なる第1の光遮断要素(13A1、13A2、13A3、13A4)の配置の一例を示す平面図である。この配置の例では、図18の拡大図に示すように、正方形で形成された第1の光透過性要素(12A)に対して、下方向に第1の光遮断要素(13A1)が形成され、右方向に第1の光遮断要素(13A2)が形成され、上方向に第1の光遮断要素(13A3)が形成され、左方向に第1の光遮断要素(13A4)が形成された状態を示している。図18の拡大図に示すように、複数の潜像が観察される潜像印刷物(1)においては、一つの第1の光透過性要素(12A)に対して、複数の異なる方向に第1の光遮断要素が配置される箇所もある。
このように、複数の潜像(16)の図柄が観察される潜像印刷物(1)において、第1の光遮断要素(13A1、13A2、13A3、13A4)のそれぞれが配置される方向は異なる。以降の説明では、複数の潜像が観察される潜像印刷物(1)において、第1の光遮断要素(13A1)が配置される方向を「第1の方向(S1)」、第1の光遮断要素(13A2)が配置される方向を「第2の方向(S2)」、第1の光遮断要素(13A3)が配置される方向を「第3の方向(S3)」、第1の光遮断要素(13A4)が配置される方向を「第4の方向(S4)」とする。
複数の潜像が観察される潜像印刷物(1)においても、一つの潜像の図柄を模るために、第1の光透過性要素(12A)に対して、第1の光遮断要素(13A1、13A2、13A3、13A4)のそれぞれが配置される方向は同じ方向であり、第1の光透過性要素(12A)に対して第1の方向に配置された第1の光遮断要素(13A1)によって、潜像の図柄の一つである「1」の文字が模られ、第1の方向(S1)に配置された第1の光遮断要素(13A1)を有する第1の光透過性要素(12A)によって、「1」の文字の潜像(以下、第1の潜像(16A1)という)が形成される。また、第1の光透過性要素(12A)に対して第2の方向(S2)に配置された第1の光遮断要素(13A2)によって、潜像の図柄の一つである「2」の文字が模られ、第2の方向に配置された第1の光遮断要素(13A2)を有する第1の光透過性要素(12A)によって、「2」の文字の潜像(以下、第2の潜像(16A2)という)が形成される。また、第1の光透過性要素(12A)に対して第3の方向(S3)に配置された第1の光遮断要素(13A3)によって、潜像の図柄の一つである「3」の文字が模られ、第3の方向に配置された第1の光遮断要素(13A3)を有する第1の光透過性要素(12A)によって、「3」の文字の潜像(以下、第3の潜像(16A3)という)が形成される。また、第1の光透過性要素(12A)に対して第4の方向(S4)に配置された第1の光遮断要素(13A4)によって、潜像の図柄の一つである「4」の文字が模られ、第4の方向に配置された第1の光遮断要素(13A4)を有する第1の光透過性要素(12A)によって、「4」の文字の潜像(以下、第4の潜像(16A4)という)が形成される。なお、第1の光遮断要素(13A1、13A2、13A3、13A4)の配置は、図18に示す配置に限定されるものではなく、第1の光遮断要素(13A1、13A2、13A3、13A4)のそれぞれが配置される方向が異なっていればよい。
以上に説明したように、第1の光透過性要素(12A)に対して、第1の光遮断要素(13A1、13A2、13A3、13A4)が異なる方向に配置されて、真偽判別領域(5)には、図19に示すように、第1の光遮断要素(13A1、13A2、13A3、13A4)が配置される。複数の潜像を形成する場合には、図19に示すように、各潜像の図柄が、カモフラージュされるため、反射光で表側から観察しても潜像(16)を視認することができない。このため、第1の光遮断要素(13A1、13A2、13A3、13A4)を形成するインキは、第1の光遮断層(11)を形成するインキと異なる色であってもよい。
(潜像の観察)
以上の構成で成る潜像印刷物(1)の潜像を観察する場合、図20に示すように、四つの観察点(A、B、C、D)の位置から潜像を観察することができる。なお、図20において、観察点(A)は、第1の光透過性要素(12A)に対して第1の光遮断要素(13A1)が形成された第1の方向(S1)側から逆方向に向かって、かつ、基材(10)に対して斜めの方向から観察した場合の視点(20)の位置である。また、図20において、観察点(B)は、第1の光透過性要素(12A)に対して第1の光遮断要素(13A2)が形成された第2の方向(S2)側から逆方向に向かって、かつ、基材(10)に対して斜めの方向から観察した場合の視点(20)の位置である。また、図20において、観察点(C)は、第1の光透過性要素(12A)に対して第1の光遮断要素(13A3)が形成された第3の方向(S3)側から逆方向に向かって、かつ、基材(10)に対して斜めの方向から観察した場合の視点(20)の位置である。また、図20において、観察点(D)は、第1の光透過性要素(12A)に対して第1の光遮断要素(13A4)が形成された第4の方向(S4)側から逆方向に向かって、かつ、基材(10)に対して斜めの方向から観察した場合の視点(20)の位置である。
図20(b)は、図20(a)に示すX−X’線における断面図である。視点(20)が観察点(A)に位置するとき、第1の光透過性要素(12A)に隣接して第1の光遮断要素(13A1)が形成された部分、すなわち、「1」の文字に対して背景と成る部分では、光源(21)の光が第1の光遮断要素(13A1)によって遮断される。一方、第1の光透過性要素(12A)に隣接して第1の光遮断要素(13A1)が形成されない部分、すなわち、「1」の文字の部分では、光源(21)の光がそのまま透過して、「1」の文字が第1の潜像(16A1)として観察される。なお、図20(b)に示すように、視点(20)が観察点(A)に位置するとき、第1の光遮断要素(13A3)が「1」の文字の潜像(16)の観察に影響することはない。
次に、視点(20)が観察点(C)に位置するときの潜像の観察原理ついて説明する。視点(20)が観察点(C)に位置するとき、第1の光透過性要素(12A)に隣接して第1の光遮断要素(13A3)が形成された部分、すなわち、「3」の文字に対して背景と成る部分では、光源(21)の光が第1の光遮断要素(13A3)によって遮断される。一方、第1の光透過性要素(12A)に隣接して第1の光遮断要素(13A3)が形成されない部分、すなわち、「3」の文字の部分では、光源(21)の光がそのまま透過して、「3」の文字が第3の潜像(16A3)として観察される。なお、図20(b)に示すように、視点(20)が観察点(C)に位置するとき、第1の光遮断要素(13A1)が「3」の文字の潜像(16)の観察に影響することはない。
図20(c)は、図20(a)に示すY−Y’線における断面図である。視点(20)が観察点(B)に位置するとき、第1の光透過性要素(12A)に隣接して第1の光遮断要素(13A2)が形成された部分、すなわち、「2」の文字に対して背景と成る部分では、光源(21)の光が第1の光遮断要素(13A2)によって遮断される。一方、第1の光透過性要素(12A)に隣接して第1の光遮断要素(13A2)が形成されない部分、すなわち、「2」の文字の部分では、光源(21)の光がそのまま透過して、「2」の文字が第2の潜像(16A2)として観察される。なお、図20(c)に示すように、視点(20)が観察点(B)に位置するとき、第1の光遮断要素(13A4)が「2」の文字の潜像(16)の観察に影響することはない。
次に、視点(20)が観察点(D)に位置するときの潜像の観察原理ついて説明する。視点(20)が観察点(D)に位置するとき、第1の光透過性要素(12A)に隣接して第1の光遮断要素(13A4)が形成された部分、すなわち、「4」の文字に対して背景と成る部分では、光源(21)の光が第1の光遮断要素(13A4)によって遮断される。一方、第1の光透過性要素(12A)に隣接して第1の光遮断要素(13A4)が形成されない部分、すなわち、「4」の文字の部分では、光源(21)の光がそのまま透過して、「4」の文字が第4の潜像(16A4)として観察される。なお、図20(c)に示すように、視点(20)が観察点(D)に位置するとき、第1の光遮断要素(13A2)が「4」の文字の潜像(16)の観察に影響することはない。
このように、複数の潜像の図柄に対応した第1の光遮断要素(13A1、13A2、13A3、13A4)のそれぞれを、一つの第1の光透過性要素(12A)に対して異なる方向に配置する構成とした場合には、透過光で観察する方向に応じて、第1の潜像(16A1)から第4の潜像(16A4)までの、複数の異なる潜像(16)が観察される。そして、潜像印刷物(1)の観察者は、斜めの方向から観察される潜像(16)と、観察する方向によって現れる潜像(16)の図柄が変化することで真偽判別を行うことができる。なお、裏側の面から観察した場合も、観察する方向に応じて四つの潜像を観察することができる。
複数の潜像が形成された潜像印刷物(1)において、図21(a)に示すように、第1の光遮断要素(13A)の形状が部分的に異なってもよい。また、図21(b)に示すように、第1の光透過性要素(12A)に近接して第1の光遮断要素(13A)を配置してもよい。また、図21(c)に示すように、第1の光透過性要素(12A)のうち、一部に第1の光遮断要素(13A)を隣接して配置し、残りは第1の光透過性要素(12A)に第1の光遮断要素(13A)を近接して配置する構成としてもよい。このとき、複数形成される第1の光透過性要素(12A)の一つに対して配置される第1の光遮断要素(13A)が、他の第1の光透過性要素(12A)を通して観察される潜像(16)に影響しないように、第1の光遮断要素(13A)を配置する必要がある。
複数の潜像が形成される潜像印刷物(1)について、四つの潜像が観察される例で説明したが、本発明の潜像印刷物(1)においては、さらに、異なる方向に第1の光遮断要素(13A)を配置することで、多数の潜像を出現させることができる。
以上の構成で成る潜像印刷物(1)において、第1の光遮断層(11)の上に、画素及び画線のいずれか又はそれらの組み合わせから成り、反射光で観察される画像(以下、反射画像(30)という)を備える構成としてもよい。反射画像(30)を構成する画線と画素は、第1の光透過性要素(12A)及び第1の光遮断要素(13A)と重複しない位置に形成される。このとき、第1の光遮断層(11)と第1の光遮断要素(13A)は、同じ色のインキで形成するのが好ましい。これは、第1の光遮断層(11)と第1の光遮断要素(13A)を同じ色のインキで形成することで、反射光で観察した場合には、一定の背景として観察されるので、反射画像の視認性に与える影響が小さいからである。
なお、本発明において、「画素」とは、印刷画像を構成する最小単位である印刷網点自体か、あるいは印刷網点を複数集合させて形成した一塊の画像要素であって、例えば円、三角形や四角形等を含む多角形、星形等の各種図形、あるいは文字や記号等が含まれ、画素の形状は如何なるものであってもよい。また、本発明において、「画線」とは、印刷画像を形成する最小単位である印刷網点を、所定方向に隙間なく連続して配置することにより形成した画像要素であって、例えば直線、曲線、波線、点線や破線等の分断線等が含まれ、画線の形状は如何なるものであってもよい。
第1の光遮断層(11)の上に、画素によって反射画像(30)が形成される構成について、図を用いて説明する。図22(a)は、画素の幅(X)、画素の高さ(Y)の正方形の画素(31)がピッチ(P2)で規則的に配置されて、アルファベットの「B」の文字が形成されて成る反射画像(30)を示している。このような、反射画像(30)を第1の光遮断層(11)の上に形成する場合、図22(b)に示すように、反射画像(30)を構成する画素(31)の一つ一つを第1の光遮断層(11)の上に形成していく。図22(b)に示す画素(31)は、反射画像(30)の一部を構成するものであるが、実際には、複数の画素の集合によって、反射画像(30)が形成される。反射画像(30)は、「B」の文字の他に、数字、記号、図形、図柄、マーク及び模様のいずれか又はその組み合わせで形成されてもよい。
なお、反射画像(30)を形成した潜像印刷物(1)は、透過光による観察においても、光が基材(10)や光透過性要素(12)を回り込んで、反射画像(30)が観察されてしまうことがあり、その場合、潜像(16)の視認性が低下してしまう。透過光による観察で、反射画像(30)が観察されないためには、図23に示すように、画素(31)に隣接する位置に第2の光遮断要素(13B)を形成すればよい。第2の光遮断要素(13B)の構成は、第1の光遮断要素(13A)と同様であり、光遮断性のインキで形成されて盛り上がりを有する構成となっている。なお、第2の光遮断要素(13B)を形成するインキは、第1の光遮断要素(13A)を形成するインキと特色のインキであってもよいし、異なる色のインキであってもよい。反射画像(30)を備える潜像印刷物(1)において、画素(31)に近接する位置に第2の光遮断要素(13B)を形成してもよいが(図示せず)、第2の光遮断要素(13B)が、透過光で観察される潜像(16)に影響しない位置に配置する必要がある。このように、画素(31)に隣接又は近接する位置に第2の光遮断要素(13B)を形成することによって、透過光で傾けて観察したときに、画素(31)が第2の光遮断要素(13B)の影となるので、画素(31)が観察されることはない。
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態の潜像印刷物(1)は、真上から透過光を観察した場合に、マトリクス上に配置された第1の光透過性要素(12A)を通して、光が観察されるだけであって、文字や数字、記号、図形、マーク、模様の有意味な情報が得られるものではないが、第2の実施の形態は、真上から観察した場合も、画像を観察することができる。第2の実施の形態の潜像印刷物(1)について、第1の実施の形態と異なる点について説明する。なお、第2の実施の形態の潜像(16)の図柄は、第1の実施の形態で説明した複数の潜像(16)が観察される潜像印刷物(1)の構成と同じであり、四つの方向から潜像(16)の図柄が形成される例で説明する。
(第1の光遮断層)
図24(a)は、第2の実施の形態における、真偽判別領域(5)の第1の光遮断層(11)を示す平面図であり、第1の光遮断層(11)には、図24(b)に示す背景画像(17)と図24(c)に示す情報画像(18)が形成される。続いて、背景画像(17)と情報画像(18)の構成について説明する。
(背景画像)
図24(b)に示す背景画像(17)は、第1の光透過性要素(12A)が、規則的に複数配置されて成る。すなわち、第2の実施の形態において、第1の光遮断層(11)に形成される背景画像(17)の構成は、第1の実施の形態で説明した、第1の光遮断層(11)に形成される第1の光透過性要素(12A)の構成と同じである。このとき、背景画像(17)を構成する第1の光透過性要素(12A)に隣接又は近接する位置には、第1の実施の形態と同様に、潜像(16)の図柄を模る第1の光遮断要素(13A1、13A2、13A3、13A4)が配置される(図示せず)。
図24(b)に示す構成の第1の光遮断層(11)のみを、透過光で真上から観察した場合、規則的に配置された第1の光透過性要素(12A)を光が透過するが、光の透過する間隔が一定であるので、濃淡のないフラットな明るさの画像として観察される。
第2の実施の形態では、続いて説明する情報画像(18)を形成するための第2の光透過性要素が配置される点が異なる。
(情報画像)
図24(c)に示す情報画像(18)は、背景画像(17)を構成する第1の光透過性要素(12A)と重複しない位置に配置された第2の光透過性要素(12B)によって構成される。図24(c)では、第1の光透過性要素(12A)と第2の光透過性要素(12B)が重複しない位置に配置された状態を分かりやすく示すために、情報画像(18)を構成する第2の光透過性要素(12B)を斜線で示すとともに、背景画像(17)を構成する第1の光透過性要素(12A)を点線で示し、第1の光遮断層(11)の範囲のみを破線で図示している。なお、第2の光透過性要素(12B)は、第1の光透過性要素(12A)と同様に、光遮断性のインキが施されないことによって形成され、図24(c)に示す例では、第2の光透過性要素(12B)の配置によって、三角形の図柄の情報画像(18)が形成された状態を示している。
図24(c)では、第1の光透過性要素(12A)と第2の光透過性要素(12B)の配置のみを示しているが、前述のように、第1の光透過性要素(12A)に隣接又は近接する位置には、第1の光遮断要素(13A1、13A2、13A3、13A4)が配置されており、第2の光透過性要素(12B)は、第1の光透過性要素(12A)及び第1の光遮断要素(13A)と重複しない位置に配置される。
図24(c)に示すように、背景画像(17)を構成する第1の光透過性要素(12A)と情報画像(18)を構成する第2の光透過性要素(12B)が、重なり合わないように配置されることによって、観察者が、潜像印刷物(1)を真上から観察した場合に、第1の光透過性要素(12A)と第2の光透過性要素(12B)が形成された領域の中に、面積率の差異による明暗が生じ、情報画像(18)が観察される。なお、本発明における面積率とは、第1の光遮断層(11)の一定の面積の中に形成される光透過性要素の割合のことであり、面積率の大きい部分は明るく観察され、面積率の小さい部分は暗く観察される。図24に示す例の場合、フラットな明るさの画像として観察される背景画像(17)に対して、情報画像(18)が明るく観察される。
図24(c)に示す情報画像(18)は、複数の第2の光透過性要素(12B)の配置によって、「三角形」の図柄が形成される例を示しているが、本発明において、情報画像(18)に形成される図柄は、三角形の他に、円でも多角形でも星型等でも良く、その他に文字、数字、記号、図形、マーク及び模様のいずれか又はその組み合わせでもよい。
情報画像(18)を構成する第2の光透過性要素(12B)の形状は、背景画像(17)を構成する第1の光透過性要素(12A)と異なる形状であってもよい。また、情報画像(18)を構成する一つ一つの第2の光透過性要素(12B)の大きさは、同じ大きさでもよいし、異なる大きさであってもよい。図24(c)に示す複数の第2の光透過性要素(12B)は、全て同じ大きさで形成される例を示しており、この場合、濃淡のないフラットな明るさの情報画像(18)が形成される。一方、仮に、複数の第2の光透過性要素(12B)の一部を異ならせた場合には、第2の光透過性要素(12B)の大きさによって明暗が生じ、複数の明るさを有する情報画像(18)が形成される。
図25は、第2の実施の形態の潜像印刷物(1)の真偽判別領域(5)の一部斜視図であり、第1の光遮断層(11)には、第1の光透過性要素(12A)が規則的に複数配置されて図24(b)に示した背景画像(17)が形成され、第1の光透過性要素(12A)に隣接する位置には、第1の実施の形態と同様に、潜像(16)の図柄を模る第1の光遮断要素(13A)が配置される。また、第1の光透過性要素(12A)及び第1の光遮断要素(13A)と重複しない位置に、第2の光透過性要素(12B)が複数配置されて図24(c)に示した情報画像(18)が形成される。さらに、第2の実施の形態の潜像印刷物(1)においては、情報画像(18)を構成する第2の光透過性要素(12B)の輪郭の全体に隣接する第1の光遮断層(11)の上に、光遮断性のインキで形成された第3の光遮断要素(13C)が配置される。第3の光遮断要素(13C)の構成についても、第1の光遮断要素(13A)と同様であり、光遮断性のインキで形成されて盛り上がり有する構成となっている。なお、第3の光遮断要素(13C)を形成するインキは、第1の光遮断要素(13A)を形成するインキと特色のインキであってもよいし、異なる色のインキであってもよい。図25では、第2の光透過性要素(12B)に隣接して第3の光遮断要素(13C)が配置された状態を示しているが、第2の光透過性要素(12B)に近接する位置に第3の光遮断要素(13C)を配置してもよい。ただし、この場合には、第3の光遮断要素(13C)が、透過光で観察される潜像(16)に影響しない位置に配置する必要がある。
(潜像の観察)
以上の構成で成る潜像印刷物(1)を斜めの方向から観察した場合には、情報画像(18)を構成する第2の光透過性要素(12B)の周囲の全体に、第3の光遮断要素(13C)が配置されることによって、どの方向から観察しても光源の光が遮断されるので、潜像(16)の観察に影響することはなく、斜めの方向から観察した場合には、第1の実施の形態と同様に、第1の光透過性要素(12A)と第1の光遮断要素(13A1、13A2、13A3、13A4)の関係で潜像(16)が観察される。
また、第2の実施の形態の潜像印刷物(1)は、前述したように、正面から観察した場合には、第1の光透過性要素(12A)と第2の光透過性要素(12B)が形成された領域の中に、面積率の差異による明暗が生じ、情報画像(18)が観察されることから、真偽判別を行わない状態、すなわち、斜めから観察しない状態においても、有意味な情報を観察することができ、印刷物としての意匠性を備えるともに、真偽判別の際には、正面から観察される有意味な情報から潜像(16)の図柄に変化することで、真偽判別を行うことができる。
以上に説明した第2の実施の形態においても、図26に示すように、第1の光透過性要素(12A)及び第2の光透過性要素(12B)が配置されていない第1の光遮断層(11)の上に、画素(31)を形成して、反射画像(30)を備える構成としてもよい。このとき、透過光による観察の際に、光の回り込みによって反射画像(30)が観察されるのを防止するため、画素(31)に隣接又は近接する位置に第2の光遮断要素(13B)を配置してもよい(図示せず)。ただし、画素(31)に近接して第2の光遮断要素(13B)を配置する場合には、第2の光遮断要素(13B)が、透過光で観察される潜像(16)に影響しない位置に配置する必要がある。なお、反射画像(30)は、図26に示す画素(31)による構成だけでなく、前述のように画線であってもよいし、画素と画線の組み合わせであってもよい。