本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の様々な実施の形態が含まれる。
本発明の潜像模様形成体(2)は、図1(a)に示すように、基材(1)に、基材(1)と同じ色又は異なる色で凹形状の第1の要素(11)が複数配置されて第1の模様(10)が形成され、第1の模様(10)の上に、第1の要素(11)の色と異なる色の第2の要素(21)が複数配置されて第2の模様(20)が形成されて成る。そして、第1の模様(10)と第2の模様(20)の配置によって、正面から観察したときは、図1(b)に示す第2の模様(20)が観察され、斜めから観察したときは、第2の要素(21)の色が観察される部分と第2の要素(21)の色が観察されない部分が生じ、図1(c)に示すように潜像画像(30)が観察される。以下、潜像模様形成体(2)の詳細な構成について説明する。
本発明において、基材(1)は、特に限定されるものではなく、紙、フィルム、プラスチック、それらの複合素材等を用いることができる。
次に、潜像模様形成体(2)の第1の模様(10)の構成について説明する。
(第1の模様)
第1の模様(10)は、図2に示すように、基材(1)に、第1の要素(11)が第1の方向(F1)に複数配置されて成る。なお、本発明において、「第1の方向(F1)」とは、基材(1)に第1の要素(11)が配置される方向のことであり、図2において第1の方向(F1)は、第1の要素(11)の長辺方向に対して垂直の方向である。
図3は、図2におけるY−Y´線の断面図、すなわち、複数配置された第1の要素(11)の断面図である。本発明において、第1の要素(11)の凹形状は、図3(a)に示す、逆三角形、図3(b)に示す半円形、図3(c)に示す台形及び図3(d)に示す四角形のいずれで形成してもよい。また、第1の要素(11)の凹形状の構成は、図3に示す形状に限定されるものではなく、更に画数の多い多角形(図示せず)や、複数の変極点を有する曲線形状であってもよい。
さらに、第1の模様(10)は、第1の方向に複数配置された凹形状の第1の要素(11)のそれぞれにおいて、一つの第1の要素(11)内で凹形状の深度を部分的に異ならせることによって、図4に示す潜像部(4A)と背景部(4B)を備える。このとき、潜像部(4A)と背景部(4B)は、互いに異なる深度の第1の要素(11)によって形成され、以降の説明は、潜像部(4A)を構成する第1の要素の深度のことを「第1の深度(DA)」、背景部(4B)を構成する第1の要素の深度のことを「第2の深度(DB)」として説明する。なお、図4は、アルファベットの「A」の文字の潜像部(4A)とその背景部(4B)を備えて成る第1の模様(10)を示している。続いて、図4に示す潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)と背景部(4B)を構成する第1の要素(11)について説明する。
図5(a)は、図4に示す破線で囲む第1の要素(11)の上面図と断面図である。図4において、破線で囲まれる第1の要素(11)は、背景部(4B)のみを構成しているため、図5(a)に示すように、第2の深度(DB)で、第1の要素(11)が形成される。また、図5(b)は、図4に示す一点鎖線で囲む第1の要素(11)の上面図と断面図である。図4において、一点鎖線で囲まれる第1の要素(11)は、潜像部(4A)と背景部(4B)を構成しているため、図5(b)に示すように、潜像部(4A)は第1の深度(DA)で形成され、背景部(4B)は第2の深度(DB)で形成され、それぞれが異なる深度で形成される。また、図5(c)は、図4に示す二点鎖線で囲む第1の要素(11)の上面図と断面図である。図4において、二点鎖線で囲まれる第1の要素(11)は、潜像部(4A)と背景部(4B)を構成しているが、一点鎖線で囲まれる第1の要素(11)に対して、潜像部(4A)の位置が異なり、図5(c)に示すように、潜像部(4A)の位置に応じて第1の深度(DA)で第1の要素(11)が形成される。このように、本発明においては、潜像部(4A)と背景部(4B)は、互いに異なる深度の第1の要素(11)によって形成される。
以上説明した第1の要素(11)は、第1の深度(DA)が、第2の深度(DB)より浅く形成される構成であるが、第1の深度(DA)が、第2の深度(DB)より深く形成される構成としても良い(図示せず)。また、潜像部(4A)及び背景部(4B)を構成する第1の要素(11)の凹形状は、前述した、図3(a)〜(d)に示す形状及びその他の形状において、同じ形状(但し、深さは異なる)であることが好ましいが、後述する潜像の観察原理において、潜像部(4A)と背景部(4B)で第2の要素(21)の視認性に差が生じる図柄であれば異なる形状であっても良い。また、図5(a)〜(c)では、潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)の第1の深度(DA)及び背景部(4B)を構成する第1の要素(11)の第2の深度(DB)が異なり、それぞれ一定の深度で形成される状態を示しているが、潜像部(4A)及び/又は背景部(4B)を構成する第1の要素(11)において、更に、深度を異ならせる構成としても良い。また、潜像部(4A)及び/又は背景部(4B)を構成する第1の要素(11)において、深度が連続的に変化する構成としても良い。なお、このような構成で成る第1の模様(10)については、後述する。
また、第1の要素(11)は、画線で構成される。本発明において、「画線」とは、直線、破線、波線等のことである。
直線で構成される第1の要素(11)が複数配置された例を、図6(a)に示す。また、破線で構成される第1の要素(11)が複数配置された例を、図6(b)に示す。また、波線で構成される第1の要素(11)が複数配置された例を、図6(c)に示す。また、画線内に図柄が付与された画線で構成される第1の要素(11)が複数配置された例を、図6(d)に示す。
図6に示す画線の幅(W1)は、限定されるものではないが、10μm〜1000μmの範囲で形成されるのが好ましい。なお、画線の幅(W1)を1000μmより大きくしても潜像を観察することができるが、潜像の図柄を形成するための第1の模様(10)が大きくなり、貴重印刷物を構成するデザイン、例えば、他の印刷図柄等の制約を受けるために、好ましくない。また、画線の幅(W1)を10μm以下で形成した場合、後述する第1の要素(11)と第2の要素(21)の配置に高い位置合わせ精度が必要とされ、作製が困難になるため好ましくない。
図6に示す第1のピッチ(P1)は、画線の幅(W1)以上の大きさであれば、特に限定されるものではなく、一定のピッチで規則的に第1の要素(11)が配置される。これは、第1のピッチ(P1)が画線の幅(W1)より小さいと、第1の要素(11)同士で重なってしまい、潜像部(4A)と背景部(4B)を形成できなくなるからである。そして、前述したような貴重印刷物に本発明の潜像模様形成体(2)を形成し、斜めから観察して潜像を観察するような場合、第1のピッチ(P1)は、1000μm以下で形成されるのが好ましい。より好ましくは、上記した範囲で第1のピッチ(P1)を画線の幅(W1)の2倍した値より小さい範囲で形成する、すなわち、隣り合う第1の要素(11)同士の間隔を狭くして形成するのがよい。更に好ましくは、第1の要素(11)が隣接するように、すなわち、第1のピッチ(P1)と画線の幅(W1)の値を等しくして形成するのがよい。このように、第1のピッチ(P1)を小さくして第1の要素(11)を形成又は第1の要素(11)が隣接するように形成した場合、基材(1)上に形成される第1の要素(11)の形成密度を大きくすることができるので、潜像の解像度を高め、それによって潜像の視認性の向上を図ることができる。
図5に示す、第1の深度(DA)及び第2の深度(DB)は、10〜500μmの範囲で形成するのが好ましく、前述したように、第1の深度(DA)と第2の深度(DB)は、異なる深度で形成される。このとき、第1の深度(DA)と第2の深度(DB)によって、潜像の視認性が変わるので、第1の深度(DA)と第2の深度(DB)を、観察される潜像に応じて適宜調整すればよい。なお、本発明の潜像模様形成体(2)の潜像が観察される原理については、後述する。また、第1の深度(DA)及び第2の深度(DB)を10μmより小さくしても潜像を観察することはできるが、潜像の観察できる視点の範囲が狭くなってしまうために、好ましくない。また、第1の深度(DA)及び第2の深度(DB)を500μmより大きくすることも可能であるが、基材(1)の厚さが限定されるとともに、加工効率が悪くなるという問題が生じるため、好ましくない。
以降の説明では、第1の要素(11)が、直線で構成される例で説明する。
(第2の模様)
第2の模様(20)は、図7に示すように、基材(1)に、第2の要素(21)が第2の方向(F2)に複数配置されて成る。なお、本発明において、「第2の方向(F2)」とは、基材(1)に第2の要素(21)が配置される方向のことであり、図7において第2の方向(F2)は、第2の要素(21)の長辺方向に対して垂直の方向である。なお、本発明において、第1の方向(F1)と第2の方向(F2)は、同じ方向であってもよいし、第2の方向が第1の方向と異なる方向であってもよい。図7に示す第2の方向は、図2に示す第1の方向と同じ方向である状態を示している。続いて、第2の方向が第1の方向と異なって複数配置された第2の要素(21)から成る第2の模様(20)について説明する。
この場合、第2の要素(21)は、図8(a)に示すように、第1の要素(11)が配置される第1の方向に対して、異なる方向の第2の方向に配置される。本発明において第1の方向(F1)と第2の方向(F2)が異なる場合、図8(b)に示す第1の方向と第2の方向が成す角度(α)は、0±10度の範囲で形成される。第1の方向と第2の方向が成す角度(α)の好ましい範囲は、0±1.5度の範囲である。これは、第1の方向と第2の方向が成す角度(α)の絶対値が小さい方が、潜像の図柄を視認しやすいためである。なお、第1の方向と第2の方向が成す角度(α)を10度より大きくすると、縞が生じ潜像の図柄が視認できなくなる。
第2の要素(21)は、図6に示す第1の要素(11)と同様に、画線によって構成又は図9に示す画素によって構成される。はじめに、画線で構成される第2の要素(21)について説明する。第2の要素(21)に対しては、第2のピッチ(P2)、画線の幅(W2)とする。なお、第2の要素(21)が画線で構成される場合、第2の要素(21)を第1の要素(11)と異なる画線で形成してもよい。
第2の要素(21)の画線の幅(W2)は、少なくとも10μmより大きく、上限は、第1のピッチ(P1)に対して、9/10の大きさの範囲で形成される。これは、仮に、第2の要素(21)の画線の幅(W2)が、第1のピッチ(P1)に対して9/10より大きいと、第1の要素(11)の全体に第2の要素(21)が重なり、潜像部(4A)と背景部(4B)のコントラストが得られず潜像が観察できないからである。また、第2の要素(21)の画線の幅(W2)が10μmより小さいと、第1の要素(11)と第2の要素(21)の重なる面積が小さいため潜像の視認性が低下するからである。
第2のピッチ(P2)は、第1のピッチ(P1)と略同じ大きさで形成される。略同じ大きさとは、第1のピッチ(P1)に対して4/5〜6/5の大きさの範囲である。好ましくは、同じピッチとすることがよい。これは、第1のピッチ(P1)と第2のピッチ(P2)が同じ場合、第1の要素(11)と第2の要素(21)が必ず一定の間隔で重なるため、後述する、潜像の図柄を視認しやすいからである。
続いて、画素で構成される第2の要素(21)について説明する。本発明において「画素」とは、所定の形状を有する文字、数字、記号、図形又はマーク等のことであり、画素の形状は、特に限定されるものではない。第2の要素(21)が画素で構成される場合、第2の要素(21)は、図9に示すように、図6に示す第2の要素(21)を構成する画線を画素で置き換えたものとなる。
文字による画素で構成される第2の要素(21)が複数配置された例を、図9(a)に示す。数字による画素で構成される第2の要素(21)が複数配置された例を、図9(b)に示す。記号による画素で構成される第2の要素(21)が複数配置された例を、図9(c)に示す。図形による画素で構成される第2の要素(21)が複数配置された例を、図9(d)に示す。
図9に示す第2のピッチ(P2)の範囲は、第2の要素(21)が画線で構成される場合の第2のピッチ(P2)と同じで形成される。また、図9に示す画素の高さ(W2)は、第2の要素(21)が画線で構成される場合の画線の幅(W2)と同じ範囲で形成される。
第2の要素(21)の画素の幅(X2)は、1000μm以下の範囲で形成される。これは、画素によって第2の要素(21)が構成されたとき、肉眼で観察したときに画素の形状が観察され難い大きさが、1000μm以下であるからである。
画素のピッチ(S2)は、肉眼で観察したときに第2の要素(21)が画線として観察されるように画素の幅(X2)に応じて、適宜調整すればよい。ただし、画素のピッチ(S2)は、第2のピッチ(P2)より、小さく形成される。これは、画素のピッチ(S2)を第2のピッチ(P2)以上の大きさにすると、図9に示す第2の要素(21)を画線として認識できなくなるからである。また、画素同士が重ならないように、少なくとも画素のピッチ(S2)は、画素の幅(X2)より大きくして画素が配置される。
以上のように説明した画線の構成と、画素の構成を複合させて一つの第2の要素(21)を構成してもよい。また、複数配置された第2の要素(21)ごとに、画線、画素又はそれらの複合の構成としてもよい。
なお、以降の説明では、第2の要素(21)が直線で構成される例で説明する。
第2の要素(21)の色は、第1の要素(11)の色と異なる色であればよく、特に限定されるものではない。
以上の構成で成る第2の要素(21)は、潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)の少なくとも一部及び背景部(4B)を構成する第1の要素(11)の少なくとも一部に重なるように配置される。このとき、潜像模様形成体(2)を斜めから観察したときに、第2の要素(21)は、少なくとも潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)の観察領域に重なり、背景部(4B)を構成する第2の要素(21)の観察領域に重ならない配置、少なくとも背景部(4B)を構成する第1の要素(11)の観察領域に重なり、潜像部(4A)を構成する第2の要素(21)の観察領域に重ならない配置又は少なくとも潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)及び背景部(4B)を構成する第2の要素(21)の観察領域に重なる配置のいずれかとなり、潜像画像(30)を観察することができる。なお、斜めから観察したときに潜像画像(30)が観察される原理及び観察領域については後述する。
(第1の要素及び第2の要素の加工方法)
凹形状の第1の要素(11)の形成方法としては、エンボス、すき入れ又はレーザ加工等の加工方法を用いることができる。また、第2の要素(21)の形成方法は、オフセット印刷、グラビア印刷又はインクジェット印刷等の公知の印刷方法又はレーザ加工等を用いることができる。第2の要素(21)が印刷によって形成される場合、第2の要素(21)は、インキから成り、第2の要素(21)がレーザ加工によって形成される場合、第2の要素(21)は、凹形状の第1の要素(11)が形成された基材(11)がレーザによって変色されて成る。レーザ加工によって、第2の要素(21)を形成する場合、凹形状の第1の要素(11)が形成された基材(11)に影響しない程度にレーザの出力を調整して形成する必要がある。また、すき入れ、レーザ加工によって第1の要素(11)を形成する場合は、第2の要素(21)を形成する前に、第1の要素(11)を形成する必要がある。これは、第2の要素(21)を形成した後に、すき入れ、レーザ加工によって第1の要素(11)を形成すると、第1の要素(11)の形成時に、第2の要素(21)が破壊されてしまうからである。
以降、本発明の潜像模様形成体(2)の観察原理について説明する。なお、潜像模様形成体(2)に形成される第1の要素(11)及び第2の要素(21)は、それぞれ複数配置されているが、観察原理の説明では、便宜上、第1の要素(11)と第2の要素(21)が、それぞれ一つずつ配置された例で説明する。また、第1の深度(DA)が、第2の深度(DB)よりも浅く形成された例について説明する。
図10(a)は、第1の要素(11)と第2の要素(21)が、それぞれ一つずつ配置された状態の一例を示す平面図であり、図10(a)において、破線から右側の第1の要素(11)が潜像部(4A)を構成し、破線から左側の第1の要素(11)が背景部(4B)を構成している状態を示している。また、図10(a)は、第1の要素(11)の一部に、第2の要素(21)が重なる状態を示している。図10(b)は、潜像模様形成体(2)を観察するときの視点の位置を示す図である。本発明において、観察点(L1)は、基材(1)の真上から観察した場合の視点の位置を示しており、観察点(L2)は、基材(1)に形成された潜像の図柄の方向に向かって、例えば、図4に示す第1の模様(10)の場合、第1の模様(10)の下側から、かつ、基材(1)に対して斜めの方向から潜像を観察するときの視点の位置を示している。また、観察点(L3)は、基材(1)に形成された図柄の方向と逆の方向に向かって、例えば、図4に示す第1の模様(10)の場合、第1の模様(10)の上側から、かつ、基材(1)に対して斜めの方向から潜像を観察するときの視点の位置を示している。以降、潜像模様形成体(2)の潜像の観察原理について、観察点(L2)から観察したときについてはじめに説明し、その後、観察点(L3)から観察したときの潜像の観察原理について説明する。
図11(a)は、図10(a)に示すM−M’線、すなわち潜像部(4A)における断面図であり、観察点(L1)から観察した状態を示す図である。このとき、観察点(L1)のように、基材(1)の真上から観察した場合、潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)の上に形成された第2の要素(21)の全体を視認することができる。また、図11(b)は、図10(a)に示すN−N’線、すなわち背景部(4B)における断面図であり、観察点(L1)から観察した状態を示す図である。このとき、背景部(4B)を観察点(L1)のように、基材(1)の真上から観察した場合、背景部(4B)を構成する第1の要素(11)に重なる第2の要素(21)の全体を観察することができる。このように、潜像模様形成体(2)を観察点(L1)から観察した場合、潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)の上に形成された第2の要素(21)と背景部(4B)を構成する第1の要素(11)の上に形成された第2の要素(21)が、同じように観察できることから、全体としては、潜像部(4A)と背景部(4B)を区別することはできず、一つの第2の要素(21)が観察される。そして、図10は、第1の要素(11)と第2の要素(21)が、それぞれ一つずつ配置された例を示した図であるが、本発明の潜像模様形成体(2)を観察点(L1)から観察した場合、第2の要素(21)の色で、図1(b)に示す第2の模様(20)が観察される。
図12(a)は、図10(a)に示すM−M’線、すなわち潜像部(4A)における断面図であり、観察点(L2)から観察した状態を示す図である。なお、図12(a)において、潜像部(4A)を観察する観察点(L2)の基材(1)に対する入射角を「β」として図示している。このとき、第1の要素(11)に重なる第2の要素(21)のうち、基材(1)の死角となる部分、すなわち、図12(a)において、斜線で示す部分は第2の要素(21)を観察することができないが、残りの部分で第2の要素(21)を観察することができる。以降の説明では、潜像画像(30)を観察する場合において、凹形状の第1の要素(11)のうち、死角となる領域のことを「死角領域」とし、凹形状の第1の要素(11)のうち、死角領域を除く領域を「観察領域」とする。なお、観察点(L3)から観察した場合の観察領域と死角領域については後述するが、観察点(L3)から観察した場合の観察領域と死角領域は、観察点(L2)から観察した場合の観察領域と死角領域と入れ替わる。一方、図12(b)は、図10(a)に示すN−N’線、すなわち背景部(4B)における断面図であり、観察点(L2)から観察した状態を示す図である。図12(b)において、背景部(4B)を観察する観察点(L2)の基材(1)に対する入射角を「β’」として図示しており、更に、凹形状の第1の要素(11)の死角領域を斜線で示している。本発明の潜像模様形成体(2)において、潜像画像(30)を観察するときの入射角(β’)と入射角(β)は同じ角度であるが、第1の深度(DA)と第2の深度(DB)が異なるため、図12に示すように、潜像部(4A)及び背景部(4B)を構成する第1の要素(11)のそれぞれで死角領域が異なり、潜像部(4A)と背景部(4B)で第2の要素(21)の視認性に差が生じる。そして、図12(b)に示す配置の第1の要素(11)と第2の要素(21)を観察点(L2)の斜めから観察した場合、第2の要素(21)は、基材(1)の死角となって観察することができない。
以上説明した観察原理によって、図10に示す配置、すなわち、前述した第2の要素(21)が、少なくとも潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)の観察領域に重なり、背景部(4B)を構成する第2の要素(21)の観察領域に重ならない配置のとき、第1の要素(11)と第2の要素(21)を観察点(L2)から観察した場合、潜像部(4A)のみが第2の要素(21)の色で観察される。そして、図10は、第1の要素(11)と第2の要素(21)が、それぞれ一つずつ配置された例を示した図であるが、図10に示す配置で成る本発明の潜像模様形成体(2)を観察点(L2)から観察した場合、図1(c)に示すように、第2の要素(21)の色で潜像部(4A)が視認されて潜像画像(30)を観察することができる。
なお、本発明において、潜像画像(30)が観察できる視点の位置、すなわち、観察点(L2)の基材(1)に対する入射角(β)及び入射角(β’)の範囲は、一つの角度に限定されるものではない。実際に、潜像画像(30)を観察する際には、所定の入射角(β)及び入射角(β’)で観察したときに潜像部(4A)と背景部(4B)のコントラストが最も得られ、潜像画像(30)の視認性が良くなるが、その角度と異なる角度であっても、潜像部(4A)と背景部(4B)を構成する第1の要素(11)に形成された第2の要素(21)の視認性が異なる位置であれば、潜像画像(30)を観察することができる。
続いて、観察点(L3)から観察した場合の潜像の観察原理について説明する。図13(a)は、図10(a)に示すM−M’線、すなわち潜像部(4A)における断面図であり、観察点(L3)から観察した状態を示す図である。図13(a)において、潜像部(4A)を観察する観察点(L3)の基材(1)に対する入射角を「β」として図示している。観察点(L3)から観察した場合には、前述したように、観察点(L2)から観察した場合の観察領域及び死角領域とは異なり、図13(a)において、斜線で示す領域が死角領域となり、第1の要素(11)のうち、死角領域を除く領域が観察領域となる。そして、潜像部(4A)では、第1の要素(11)に重なる第2の要素(21)のうち、基材(1)の死角となる部分、すなわち、図13(a)において、斜線で示す領域は第2の要素(21)を観察することができないが、残りの部分で第2の要素(21)を観察することができる。一方、図13(b)は、図10(a)に示すN−N’線、すなわち背景部(4B)における断面図であり、観察点(L3)から観察した状態を示す図である。図13(b)において、背景部(4B)を観察する観察点(L3)の基材(1)に対する入射角を「β’」として図示している。観察点(L3)から観察した場合には、観察点(L2)から観察した場合の観察領域及び死角領域とは異なり、図13(b)において、斜線で示す領域が死角領域となり、第1の要素(11)のうち、死角領域を除く領域が観察領域となる。そして、背景部(4B)では、第1の要素(11)に重なる第2の要素(21)が基材(1)の死角となって観察することができない。このように、観察点(L3)から観察した場合においても、第1の深度(DA)と第2の深度(DB)が異なるため、図13に示すように、潜像部(4A)及び背景部(4B)を構成する第1の要素(11)のそれぞれで死角領域が異なり、潜像部(4A)と背景部(4B)で第2の要素(21)の視認性に差が生じるため潜像画像(30)を観察することができる。
以上説明した観察原理によって、図10に示す配置の第1の要素(11)と第2の要素(21)を観察点(L3)から観察した場合、潜像部(4A)のみが第2の要素(21)の色で観察される。そして、図10は、第1の要素(11)と第2の要素(21)が、それぞれ一つずつ配置された例を示した図であるが、本発明の潜像模様形成体(2)を観察点(L3)から観察した場合、図1(c)に示すように、第2の要素(21)の色で潜像部(4A)が視認される潜像画像(30)を観察することができる。また、観察点(L3)から観察した場合、観察される潜像画像(30)は、アルファベットの「A」の文字が逆向きとなる。
以上、観察点(L2)と観察点(L3)から観察される潜像画像(30)について説明したが、本発明の潜像模様形成体(1)は、観察点(L2)、観察点(L3)又は観察点(L2)及び観察点(L3)のいずれかの観察位置で観察したときに、第1の深度(DA)と第2の深度(DB)が異なることによって潜像部(4A)と背景部(4B)で第2の要素(21)の視認性に差が生じ、潜像画像(30)が観察される。しかしながら、本発明において、観察点(L2)と観察点(L3)の両方で、潜像画像(30)が観察できるかどうかは、第1の要素(21)と第2の要素(21)の画線の構成とその配置によるものであり、作製される潜像模様形成体(2)によって異なるので、以降の説明では、便宜上、観察点(L2)から観察したときに観察される潜像画像(30)とその構成について説明する。
このように、本発明の潜像模様形成体(2)は、一つの第1の要素(11)において、第1の深度(DA)と第2の深度(DB)が異なって潜像部(4A)と背景部(4B)が形成され、第2の要素(21)が重なることで潜像画像(30)を出現させることができるため、従来の特許文献1及び2記載の潜像模様形成体のように、凹形状の位相を異ならせることがなく、第1のピッチ(P1)を小さくして第1の要素(11)を形成又は第1の要素(11)が隣接するように形成できる。その結果、前述したように、基材(1)上に形成される第1の要素(11)の形成密度を大きくすることができるので、潜像の解像度を高め、それによって潜像の視認性の向上を図ることができる。
以上説明した、本発明の潜像模様形成体(2)で観察される潜像は、潜像部(4A)のみが第2の要素(21)の色で観察されるものであるが、第1の要素(11)と第2の要素(21)の構成及び配置によって、前述した潜像画像(30)に対して、視認性の異なる潜像画像(30)を観察することができる。以下、その構成について説明する。
図14(a)は、図12(a)に示す断面図に対して、潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)の観察領域に重なる第2の要素(21)の面積が大きい状態を示している。このように形成された第1の要素(11)と第2の要素(21)を斜めから観察した場合、図12(a)に示す構成に対して、第2の要素(21)を観察できる範囲が広くなり、濃い色で観察される。逆に、図14(b)に示すように、図12(a)に示す断面図に対して、潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)の観察領域に重なる第2の要素(21)の面積を小さくした場合、第2の要素(21)を観察できる範囲が狭くなり、薄い色で観察される。このように、観察点(L2)から観察したときの観察領域に重なる第2の要素(21)の面積によって、視認される潜像画像(30)の濃度を変化させることができる。
続いて、本発明の観察原理で説明した潜像模様形成体(2)において、第1の深度(DA)が第2の深度(DB)より深く形成された場合について説明する。この場合、観察点(L2)から観察すると、潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)と第2の要素(21)は、図12(b)に示す断面図の配置関係となり、背景部(4B)を構成する第1の要素(11)と第2の要素(21)は、図12(a)に示す断面図の配置関係となる。すなわち、前述した第2の要素(21)が、少なくとも背景部(4B)を構成する第1の要素(11)の観察領域に重なり、潜像部(4A)を構成する第2の要素(21)の観察領域に重ならない配置である。そして、観察点(L2)から観察した場合、背景部(4B)が第2の要素(21)の色で視認されて、図15に示す潜像画像(30)を観察することができる。
以上説明した、潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)の第1の深度(DA)及び背景部(4B)を構成する第1の要素(11)の第2の深度(DB)は、それぞれ一定の深度で形成される例であるが、続いて、前述したような、潜像部(4A)及び/又は背景部を構成する第1の要素において、更に深度を異ならせる構成とした場合について説明する。その一例として、図16に示す潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)が二つの異なる深度で形成されて成る第1の模様(10)について説明する。
図16に示す第1の模様(10)は、潜像部(4A)をリング形状とし、潜像部(4A)の左半分と右半分で第1の要素(11)の深度を異ならせて形成した例である。
図17(a)は、図16に示す一点鎖線で囲まれた第1の要素(11)の上面図と断面図を示す図である。図17(a)に示すように潜像部(4A)は、左側半分が第1の深度(DA1)で形成され、右側半分が第1の深度(DA2)で形成される。なお、図17(a)では、左側の潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)の深度が、右側の潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)の深度より浅く形成されている状態を示している。また、図17(b)は、図16に示す二点鎖線で囲まれた第1の要素(11)の上面図と断面図を示す図である。図17(b)においても、左側の潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)は、第1の深度(DA1)で形成され、右側の潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)は、第1の深度(DA2)で形成される。
このように、形成した潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)の観察領域に第2の要素(21)を重ねて配置し、かつ、背景部(4B)を構成する第1の要素(11)の観察領域に第2の要素(21)が重ならないように配置して、斜めから観察した場合(図示せず)、これまで説明してきた観察原理によって、浅い方の深度(DA1)で形成された左側半分の潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)に重なる第2の要素(21)の面積が、深い方の深度(DA2)で形成された右側半分の潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)に重なる第2の要素(21)の面積より大きくなる結果、図18に示すように、第2の要素(11)の色で左側半分が濃く、右側半分が薄い潜像画像(30)が観察される。なお、本説明では、潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)が二つの異なる深度で形成される構成について説明したが、本発明において第1の模様(10)は、潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)が、更に多くの異なる深度で形成される構成としても良いし、前述したように、潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)の深度が連続的に変化する構成としても良い。このように、第1の要素(11)を複数の異なる深度で形成することによって、潜像の表現できる濃度範囲を広げることができる。なお、背景部(4B)を構成する第1の要素(11)についても同様である。
続いて、第1の要素(11)と第2の要素(21)の配置において、前述した少なくとも潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)及び背景部(4B)を構成する第2の要素(21)の観察領域に重なる配置について説明する。なお、この配置の一例を図19に示す。この場合、図19(a)及び(b)に示すように、潜像部(4A)及び背景部(4B)を構成する第1の要素(11)の観察領域に第2の要素(21)が重なるため、斜めから観察した時に、潜像部(4A)と背景部(4B)が、第2の要素(21)の色で観察されるが、前述した潜像部(4A)が二つの異なる深度で形成される構成とした場合の潜像画像(30)の観察原理と同様に、第1の深度(DA)と第2の深度(DB)が異なることによって第2の要素(21)の視認性が異なり、浅い方の深度(DA)で形成された潜像部(4A)が濃く、深い方の深度(DB)で形成された背景部(4B)が薄く視認され、図20に示す潜像画像(30)を観察することができる。
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の内容は、これら実施例の範囲に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1は、基材(1)に紙材を用い、第1の方向と第2の方向が同じ方向であり、第1の深度(DA)と第2の深度(DB)がそれぞれ一定の深度で形成され、第1の深度(DA)が第2の深度(DB)より浅く形成される潜像模様形成体(2)である。実施例1の潜像模様形成体(2)について図を用いて説明する。
実施例1の潜像模様形成体(2)において、基材(1)は、200μmの紙材を用いた。
実施例1の潜像模様形成体(2)の第1の模様(10)は、図2に示すとおりであり、第1の模様(10)を構成する第1の要素(11)を、画線の幅(W1)が100μmの直線で成る構成とし、第1のピッチ(P1)を150μmで第1の方向に複数配置して形成した。このとき、第1の深度(DA)を60μm、第2の深度(DB)を120μmで形成して、図4に示すアルファベットの「A」の文字の潜像部(4A)とその背景部(4B)を備えて成る構成とした。なお、第1の要素(11)は、レーザ加工によって基材(1)の一部を除去することによって形成した。
実施例1の潜像模様形成体(21)の第2の模様(21)は、図7に示すとおりであり、第2の模様(20)を構成する第2の要素(21)を、画線の幅(W2)が80μmの直線で成る構成とし、第2のピッチ(P2)が150μmで第2の方向に複数配置して形成した。このとき、第2の要素(21)は、黒色とし、インクジェットプリンタによって形成した。また、第2の要素(21)は、図12に示すように、潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)の観察領域に重なり、背景部(4B)を構成する第1の要素(11)の観察領域に重ならないように配置した。
以上の構成で成る実施例1の潜像模様形成体(2)を、真上から観察すると、図1(b)に示す第2の模様(21)が観察され、斜めから観察すると、異なる深度の第1の要素(11)で形成された潜像部(4A)と背景部(4B)において、第2の要素(21)の視認性が異なることによって、図1(c)に示す潜像画像(30)が観察された。
(実施例2)
実施例2は、実施例1に対して、第1の深度(DA)が第2の深度(DB)より深く形成される潜像模様形成体(2)である。実施例2の潜像模様形成体(2)について、実施例1と異なる点について説明する。
実施例2の第1の模様(10)は、第1の深度(DA)を120μm、第2の深度(DB)を60μmで形成した。また、第2の要素(21)は、背景部(4B)を構成する第1の要素(11)の観察可能な領域に重なり、潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)の観察可能な領域に重ならないように配置した。
以上の構成で成る実施例2の潜像模様形成体(2)を斜めから観察すると、図1(c)に示す潜像画像(30)に対して、図15に示すネガポジ反転した潜像画像(30)が観察された。
(実施例3)
実施例3は、実施例1に対して、第1の要素(11)が隣接する、すなわち、第1のピッチ(P1)と画線の幅(W1)の値が等しい潜像模様形成体(2)である。また、第1のピッチ(P1)と第2のピッチ(P2)が等しい潜像模様形成体(2)である。実施例3の潜像模様形成体(2)について、実施例1と異なる点について説明する。
実施例3の潜像模様形成体(2)の第1の模様(10)は、図21に示すとおりであり、第1の模様(10)を構成する第1の要素(11)を、画線の幅(W1)が100μmの直線で成る構成とし、第1のピッチ(P1)を100μmで形成し、星型の潜像部(4A)とその背景部(4B)を備えて成る構成とした。なお、第1の深度(DA)及び第2の深度(DB)については実施例1と同じである。また、第2の模様(20)を構成する第2の要素(21)を、画線の幅(W2)が50μmの直線で成る構成とし、第2のピッチ(P2)が100μmで形成した。
以上の構成で成る実施例3の潜像模様形成体(2)は、実施例1に対して、基材(1)に形成される第1の要素(11)と第2の要素(21)の形成密度が大きいため、斜めから観察すると解像度と視認性のよい潜像画像(30)が観察された。
(実施例4)
実施例4は、実施例1に対して、第1の要素(11)に重なる第2の要素(21)の位置が異なり、潜像部(4A)及び背景部(4B)を構成する第1の要素(11)の観察領域に第2の要素(21)が重なる潜像模様形成体(2)である。実施例4の潜像模様形成体(2)について、実施例1と異なる点について説明する。
実施例4において、潜像部(4A)及び背景部(4B)を構成する第1の要素(11)のそれぞれの観察領域に、第2の要素(21)が重なる状態を図19に示す。図19(a)は、潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)に重なる第2の要素(21)を示している。前述したように、第1の要素(11)に重なる第2の要素(21)の位置が異なるため、図12(a)に示す配置に対して、第1の要素(11)の観察領域に重なる第2の要素(21)の面積が大きくなり、その分、基材(1)の死角領域に重なる第2の要素(21)の面積が小さくなる。また、図19(b)は、背景部(4B)を構成する第1の要素(11)に重なる第2の要素(21)を示している。前述したように、第1の要素(11)に重なる第2の要素(21)の位置が異なるため、図12(b)に示す配置に対して、第1の要素(11)の観察領域に第2の要素(21)が重なり、その分、基材(1)の死角領域に重なる第2の要素(21)の面積が小さくなる。
以上の構成で成る潜像模様形成体(2)を斜めから観察すると、潜像部(4A)と背景部(4B)を構成する第1の要素(21)の観察領域に第2の要素(21)が重なっているため、いずれも第2の要素(21)の色で観察されるが、異なる深度で形成された潜像部(4A)と背景部(4B)では、図19に示すように、それぞれを構成する第1の要素(11)の観察領域に重なる第2の要素(21)の面積が異なり、観察領域に重なる第2の要素(21)の面積が大きい潜像部(4A)は濃く、観察領域に重なる第2の要素(21)の面積の小さい背景部(4B)は薄く視認され、図20に示す潜像画像(30)が観察された。
(実施例5)
実施例5は、実施例1の潜像模様形成体(2)に対して第1の方向と第2の方向が異なる潜像模様形成体(2)である。実施例5の潜像模様形成体(2)について、実施例1と異なる点について説明する。
実施例5において、第2の模様(20)は、第2の要素(21)を第1の方向と異なる第2の方向に複数配置して形成した。このとき、第2の方向は、第1の方向に対して1度異なる方向とした。なお、第1の模様(10)に第2の模様(20)が重なる状態を示す平面図を図22に示す。図22に示すように、第1の方向に対して、第2の方向を異ならせることによって、潜像部(4A)と背景部(4B)を構成する第1の要素(11)に第2の要素(21)が重なるが、同じ潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)又は同じ背景部(4B)を構成する第1の要素(11)であっても、部分的に第2の要素(21)の重なる面積が異なる配置となる。
以上の構成で成る潜像模様形成体(2)を斜めから観察すると、潜像部(4A)と背景部(4B)を構成する第1の要素(11)の観察領域に重なる第2の要素(21)の面積が部分的に変化することによって、図23に示すグラデーションのかかった潜像画像(30)が観察された。
(実施例6)
実施例6は、実施例1の潜像模様形成体(2)に対して、潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)が二つの異なる深度で形成される潜像模様形成体(2)である。実施例6の潜像模様形成体(2)について、実施例1と異なる点について説明する。
実施例6において、第1の模様(10)は、図16に示すようにリング形状の潜像部(4A)とその背景部(4B)を備える構成とした。また、潜像部(4A)の左半分と右半分で第1の要素(11)の深度を異ならせ、図17に示すように、左側半部の潜像部(4A)の第1の深度(DA1)を50μm、右側半部の潜像部(4A)の第1の深度(DA2)を80μmで形成した。また、第2の要素(21)は、潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)の観察可能な領域に重なり、背景部(4B)を構成する第1の要素(11)の観察可能な領域に重ならないように配置した。
以上の構成で成る潜像模様形成体(2)を斜めから観察すると、2つの異なる深度で形成された潜像部(4A)の観察可能な領域に第2の要素(21)が重なるため、潜像部(4A)は第2の要素(21)の色で観察されるが、浅い方の深度、すなわち第1の深度(DA1)で形成された第1の要素(11)の観察可能な領域に重なる第2の要素(21)の面積が、深い方の深度、すなわち第1の深度(DA2)で形成された第1の要素(11)の観察可能な領域に重なる第2の要素(21)の面積より大きいため、図18に示すように、潜像部(4A)のうち、左側半分は濃く、右側半分が薄くなった潜像画像(30)が観察される。
(実施例7)
実施例7は、実施例1に対して、潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)の深度を連続的に変化させて成る潜像模様形成体(2)である。実施例7の潜像模様形成体(2)について実施例1と異なる点について説明する。
実施例7の第1の模様は、図24に示すように円形状の潜像部(4A)とその背景部(4B)を備える構成とした。そして、図25に示すように、潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)の深度が連続的に変化するように潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)を形成した。なお、図25(a)は、図24に示す二点破線で囲まれた第1の要素(11)の平面図と断面図である。図25(a)に示すように、円形状の最も左側の部分を、潜像部(4A)において最も深い深度とし、円形状の最も右側の部分を、潜像部(4A)において最も浅い深度とした。なお、潜像部(4A)において最も深い第1の深度(DA1)を、90μmとし、最も浅い第1の深度(DA2)を、50μmとし、その間は、第1の深度(DA1)で形成される部分と第1の深度(DA2)で形成される部分を、直線で結ぶように連続的に深度を異ならせた。また、図25(b)は、図24に示す一点破線で囲まれた第1の要素(11)の平面図と断面図である。実施例7において潜像部(4A)は、第1の方向に複数配置された第1の要素(11)において、第1の要素(11)の垂直方向で同じ位置する部分は、同じ深度となるように形成した。図25(b)の断面図に示す波線は、その構成を示すためのものである。なお、第2の要素(21)は、潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)の観察領域に重なり、背景部(4B)を構成する第1の要素(11)の観察領域に重ならないように配置した。
以上の構成で成る潜像模様形成体(2)を斜めから観察すると、潜像部(4A)を構成する第1の要素(11)の観察領域に第2の要素(21)が重なるため、潜像部(4A)は第2の要素(21)の色で観察された。このとき、円形状を構成する第1の要素(11)の左側から右側にかけて、観察領域に重なる第2の要素(21)の面積が大きくなるため、図26に示すように 左側から右側にかけて濃度が変化する潜像画像(30)が観察された。