本発明の実施形態について図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他色々な形態が実施可能である。
図1は、本発明における特殊潜像模様形成体(以下「形成体」という。)を示す平面図の一例である。図1(a)は、本発明の形成体が付与された、偽造防止印刷物(S)の一例として商品券を示す平面図である。偽造防止印刷物(S)は、紙、プラスチックカード等の基材(2)上に、店舗名、券種等が、シアン、マゼンタ等の一般的に用いられるインキにより付与されている。偽造防止印刷物(S)には、少なくとも基材(2)上における少なくとも一部の領域(Z)に形成体(1)が付与されている。形成体(1)は、カラー画像として凸状万線(3)及び一般的に用いられるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)等の印刷インキにより形成している。
図1(b)、図1(c)及び図1(d)は、図1(a)に示した形成体(1)が付与された領域(Z)の拡大図である。図1(a)に示した形成体(1)には、図1(b)に示す第一の画像(7)及び図1(c)に示す第二の画像(8)と、更に、図1(d)に示す、第一の画像(7)及び第二の画像(8)を合成したカムフラージュ画像(9)が形成されている。
形成体(1)に各画像を形成することで、一定の観察角度においては、いずれか一つの画像しか視認することができないが、観察角度を変化させることで、その観察角度ごとに、異なる画像を視認することが可能となる。
なお、以降、本発明の実施形態について用いる図は、説明をわかりやすくするために、図2(a)を、少なくとも基材(2)上における少なくとも一部の領域(Z)に付与された形成体(1)とし、図2(b)を第一の画像(7)とし、図2(c)を第二の画像(8)とし、更に、図2(d)を、第一の画像(7)及び第二の画像(8)を合成したカムフラージュ画像(9)と、各々模式的に説明する。
図3は、本発明における形成体(1)が形成された基材(2)を、可視光源下で観察した際の視点(E1、E2、E3)及び基材(2)の位置関係を示す図である。なお、凸状万線(図示せず)は、基材(2)表面上における第一の方向(X)に複数配置されている。
異なる画像を視認することが可能な観察角度とは、基材(2)に対して下方、上方及び正面から観察した際の観察角度である。本発明においては、基材(2)に対して視点が(E1)に示す位置関係にあるとき、下方(以下「第一の観察角度(E1)」という。)から観察したこととし、視点が(E2)に示す位置関係にあるとき、上方(以下「第二の観察角度(E2)」という。)から観察したこととし、更に、視点が(E3)に示す位置関係にあるとき、正面(以下「第三の観察角度(E3)」という。)で観察したこととする。
図2(a)に示した形成体(1)は、基材(2)に対して第一の観察角度(E1)から観察すると、図2(b)に示す第一の画像(7)が視認でき、また、第二の観察角度(E2)から観察すると、図2(c)に示す第二の画像(8)が視認可能である。さらに、第三の観察角度(E3)から観察すると、図2(d)に示す、第一の画像(7)及び第二の画像(8)を合成したカムフラージュ画像(9)を視認することが可能である。なお、形成体(1)を構成する要素構成については後述する。
(本発明における本要素構成の第一実施形態)
図4(a)は、本発明における形成体(1)を構成する本要素構成の第一実施形態(以下「第一要素構成」という。)を示す模式図であり、図4(a)は、形成体(1)における平面図である。図4(a)に示すように、少なくとも基材(2)上における一部の領域(Z)に、凸状万線(3)が形成されている。凸状万線(3)は、第一の方向(X)に第一のピッチ(d)で配置されている。
凸状万線(3)における第一のピッチ(d)とは、印刷方式、用いる基材(2)等を考慮して適宜設定されるものであるが、300〜1000μmとすることが好ましい。第一のピッチ(d)が、300μm未満である場合には、後述する第一の要素(10)及び/又は第二の要素(11)を、一つの要素内において、網点及び/又は画素によって表現する際に、必要な面積を充分に得られない場合があり好ましくない。
反対に、第一のピッチ(d)が、1000μm以上である場合には、形成体(1)を第三の観察角度(E3)から視認した際に、第一の要素(10)及び第二の要素(11)の一つ一つを肉眼で識別することが可能となり、カムフラージュ画像(9)が、一様な濃度として視認することができないという問題点があり好ましくない。このことから、第一のピッチ(d)とは、300〜1000μmとすることが好ましい。
なお、図4(b)において、第一のピッチ(d)は同一ピッチとしているが、それに限らず、前述した300〜1000μmの範囲内であれば、適宜設定することが可能である。
凸状万線(3)は、基材(2)上に、凹版印刷、スクリーン印刷、エンボス、すき入れ、レーザ加工等により形成する。凹版印刷、スクリーン印刷等による凸状万線(3)の形成は、基材(2)に対して凹版印刷、スクリーン印刷等、所望の印刷方法に適した版面及びインキを用いて印刷を行い、インキの盛りにより凸形状を形成し、その凸形状を凸状万線(3)とする。
エンボスによる凸状万線(3)の形成は、所望の凸状万線(3)の大きさに合わせた、凹型及び凸型を用いて、基材(2)を、凹型及び凸型で挟み込み圧力を加えることで、基材(2)上に、凹形状(基材(2)に対して凹ませる)又は凸形状(基材(2)に対して突起させる)を形成し、その凹形状又は凸形状を凸状万線(3)とする。なお、凹形状においては、前述の通り、基材(2)の一部を凹ませることで凸状万線(3)を形成することとなるが、本発明においては、総称して凸状万線(3)と呼ぶ。
すき入れによる凸状万線(3)の形成は、基材(2)を紙とした際に、製造装置である抄紙機上における、ダンディロール部、円網部、プレスパート部等において、紙の原材料(紙料)を排除(凹部)又は増加(凸部)することで形成する。なお、凹部においては、前述の通り、紙料を排除することで凸状万線(3)を形成することとなるが、本発明においては、総称して凸状万線(3)と呼ぶ。
レーザ加工により凸状万線(3)の形成は、基材(2)の一部を、所望のレーザ加工装置を用いて、レーザ除去することにより形成する。つまり、基材(2)の一部に凹部を形成することで凸状万線(3)を形成することとなるが、本発明においては、作製方法に関わらず、総称して凸状万線(3)と呼ぶ。
凸状万線(3)を、エンボス、すき入れ及びレーザ加工により基材(2)に形成する場合において、透明度の高い基材(2)、例えば無色透明フィルム等を用いることは好ましくない。透明度の高い基材(2)を用いると、後述するが、凸状万線(3)により各々の要素が遮蔽することで画像が出現するという効果は生じなくなる。しかしながら、基材に、着色繊維、染料等が混入された有色透明基材については、各々の要素を遮蔽する効果が生じるものもあることから、適宜選択するものとする。
なお、図4(a)において、第一の観察角度(E1)から視認した場合の凸状万線(3)の形状は、直線状の直万線としているが、波線状の波万線とすることも可能である。
同様に、凸状万線(3)を、印刷により基材(2)に形成する場合において、透明インキを用いることは好ましくない。透明インキを用いると、後述するが、凸状万線(3)により各々の要素が遮蔽することで画像が出現するという効果は生じなくなる。しかしながら、顔料、染料等が混入された有色透明インキについては、各々の要素を遮蔽する効果が生じるものもあることから、適宜選択するものとする。
図4(b)は、本発明における図4(a)に示した基材(2)を、B−B’部分で第一の方向(X)に切断した断面図である。図4(b)に示すように、基材(2)における底部(12)から、垂直する方向に高さを有する凸状万線(3)を形成する。第一の方向(X)に第一のピッチ(d)で複数配置された凸状万線(3)は、各々が第一の側部(4)、第二の側部(5)及び頂上部(6)を有している。第一の側部(4)及び第二の側部(5)は、第一の方向(X)と垂直する方向に対し、同じ高さの頂上部(6)を繋いだ直線に対し、対となる関係である。
前述した第一の観察角度(E1)から観察した場合、凸状万線(3)における第一の側部(4)は、隣り合う凸状万線(3)の影となることなく観察可能である。一方、第二の側部(5)は、隣り合う凸状万線(3)の影となり、視認することができない。また、第二の観察角度(E2)から観察した場合、凸状万線(3)における第二の側部(5)は、隣り合う凸状万線(3)の影となることなく観察可能である。一方、第一の側部(4)は、隣り合う凸状万線(3)の影となり、視認することができない。さらに、第三の観察角度(E3)から観察した場合、凸状万線(3)における第一の側部(4)及び第二の側部(5)は、隣り合う凸状万線(3)の影となることなく観察可能である。
図5は、本発明における凸状万線(3)の形状を示す断面図である。凸状万線(3)の断面形状は、図4(b)において示した台形状に限定されず、図5に示した各種の形状とすることが可能である。例えば、図5(a)に示すように、凸状万線(3)の断面形状は、図4(b)と同一形状だが、それぞれの凸状万線(3)のピッチである第一のピッチ(d)を狭くしても良い。第一のピッチ(d)を狭くすることで、図5(a)及び後述する図5(c)に示すように、基材(2)から凸状万線(3)が隆起する際の底部(12)を、面状ではなく点状とすることも可能である。
また、図5(b)に示すように、非対称形状や、図5(c)、図5(d)及び図5(e)に示すように、凸状万線(3)における頂上部(6)を、面状ではなく点状とすることも可能であり、更には、図5(f)及び図5(g)に示すように、半円状としても良い。半円状とした場合の第一の側部(4)及び第二の側部(5)は、同じ高さの頂上部(6)を繋いだ直線に対し、対となるように、一方を第一の側部(4)とし、他方を第二の側部(5)とする。
さらには、図5(i)に示すように、凸状万線(3)の形状は、一つ一つが異なる形状とすることも可能であり、また、図5(j)に示すように、隣り合う一つの凸状万線(3)のピッチが一定でない構成とすることも可能である。その場合において、一つ一つのピッチは、300〜1000μmの範囲内とする。
図6及び図7は、本発明における第一の要素(10)及び第二の要素(11)を示す模式図である。以降、一例として本発明における第一の要素(10)について説明する。なお、図6及び図7においては、一例として前述した第一の観察角度(E1)からの視認した際に、図8に示す、第一の画像(7)が視認可能となる形成体(1)について説明する。
まず、第一の原画像(7’)を準備する。図6(a)は、第一の原画像(7’)を示す図である。第一の原画像(7’)は、第一の観察角度(E1)から視認可能な第一の画像(7)の元となる原画像である。一例として第一の原画像(7’)は、連続階調により表現された、連続階調画像とする。
次に、第一の原画像(7’)を、複数画線状に分割する。図6(b)は、一例として、図6(a)に示した第一の原画像(7’)を、第一の方向(X)と直交する方向に画線幅(D1)で、複数画線状に16分割した模式図である。第一の原画像(7’)を複数画線状に分割することで、配列(10’)を形成する。配列(10’)を形成する、第一の原画像(7’)を複数画線状に分割した一つ一つが、本発明における第一の要素(10a、10b、10c、10d、・・・・、10o、10p)となる。図6(b)に示した第一の要素(10a、10b、10c、10d、・・・・、10o、10p)は、各々が要素内において、分割した領域ごとに、図6(a)に示した第一の原画像(7’)の連続階調に対応した階調を有する。
なお、第一の原画像(7’)を複数画線状に分割する方向は、第一の方向(X)と直交する方向に限らず、第一の方向(X)と平行する方向、第一の方向(X)に対して、30度傾いた方向(図示せず)等、適宜設定することが可能である。
前述の通り、第一の要素(10)は、凸状万線(3)における第一の側部(4)に付与する。そのため、第一の要素(10)を付与した場合に、第一の側部(4)から第一の要素(10)がはみ出し、凸状万線(3)における第一の側部(4)以外の個所に付与されないように、画線幅(D1)は適宜設定する必要がある。
なお、図6(b)においては、同じ画線幅(D1)で16分割したが、前述の通り、第一の側部(4)から第一の要素(10)がはみ出さないのであれば、第一の原画像(7’)を第一の方向(X)に分割する数及び/又は画線幅(D1)は、16分割及び/又は同じ画線幅に限らず、各々適宜設定することが可能である。このように、第一の原画像(7’)を、画線幅(D1)で第一の方向(X)に複数分割することで、図6(b)に示すように、配列(10’)が形成される。
図7(a)は、図6(b)に示した配列(10’)を形成する複数の第一の要素(10a、10b、10c、10d、・・・・、10o、10p)における一つの第一の要素(10b)を抽出した模式図であり、図7(b)は、その一部(L1)を拡大した模式図であり、図7(c)は、更に、その一部(L2)を拡大した模式図である。図7(c)に示すように、第一の要素(10b)は、前述した第一の原画像(7’)の階調に併せて、網点がランダムに複数配置された群となる。なお、図7(c)においては、網点により群を形成しているが、画素のみ又は画素及び網点がランダムに複数配置された群とすることも可能である。
以上、第一の要素(10)について説明したが、本発明においては、第二の要素(11)についても、同様に形成する。なお、その際には、第一の原画像(7’)とは異なる原画像である第二の原画像(図示せず)を用いて形成する。
次に、第一の要素(10)及び第二の要素(11)を、基材(2)上に配置する配列順序について説明する。図9は、本発明における複数の第一の要素(10)又は第二の要素(11)を、所定の順序で配置した場合を示す模式図である。図9及び後述する図11においては、第一の要素(10)を一例として説明する。
第一の原画像(7’)を複数画線状に分割することで、配列(10’)を形成する。配列(10’)を形成する、第一の原画像(7’)を複数画線状に分割した一つ一つである第一の要素(10a、10b、10c、10d、・・・・、10o、10p)は、第一の原画像(7’)に対応した順序で、一つずつ第一の側部(4)に配置されることで、第一の画像(7)が形成される。
第一の原画像(7’)に対応した配列とは、図6(a)及び図6(b)において前述した配列(10’)を形成する、複数の第一の要素(10a、10b、10c、10d、・・・・、10o、10p)における、連続した10a、10b、10c、10dという順序のことである。
図9(a)は、本発明における凸状万線(3)に、複数配置された第一の要素(10a、10b、10c、10d)が、各々、一つずつ第一の側部(4a、4b、4c、4d)に配置された基材(2)を、一部拡大した模式図である。図9(a)に示すように、少なくとも基材(2)上における一部の領域(Z)に、凸状万線(3)が形成されている。凸状万線(3)は、一つ一つが第一の方向(X)に配置され、例えば、図9(a)においては、第一の方向(X)に、3a、3b、3c、3dという配列で配置されている。
図9(b)は、配列(10’)を示す図である。図9(b)に示した配列(10’)は、図6(b)と同様に、第一の原画像(7’)を、画線幅(D1)で画線状に第一の方向(X)に16分割し、形成されている。
配列(10’)を形成する、複数の第一の要素(10a、10b、10c、10d、・・・・、10o、10p)を、第一の原画像(7’)を複数画線状に分割した際の、対応した順序で、一つずつ第一の側部(4a、4b、4c、4d)に配置する。例えば、図9(b)で示す、配列(10’)を形成する、複数の第一の要素(10a、10b、10c、10d、・・・・、10o、10p)のうち、連続する四つの第一の要素(10a、10b、10c、10d)を、各々、図9(a)に示す第一の側部(4a、4b、4c、4d)に、連続した配列のままで、一つずつ配置するというように、複数の第一の要素(10a、10b、10c、10d、・・・・、10o、10p)を形成する際に、前述した図6(b)に示した第一の原画像(7’)を、画線幅(D1)で複数画線状に分割した際の、連続した10a、10b、10c、10dという第一の原画像(7’)に対応した順序を保ちながら、凸状万線(3)における第一の側部(4a、4b、4c、4d)に配置することである。
他の形態としては、図9(b)に示すように、第一の原画像(7’)に対応した順序を保っているのであれば、前述した連続した順序において、10a、10c、10e・・・・10oと一つずつ飛ばしながら配置することも可能である。前述の通り、第一の要素(10)は、凸状万線(3)における第一の側部(4)に、一つずつ配置することから、画線幅(D1)は、凸状万線(3)における第一のピッチ(d)を考慮した上で適宜設定し、60〜200μmが用いられる。そのため、肉眼においては、図9(a)に示すように、10a、10b、10c、10d・・・・10pと配置した場合も、10a、10c、10e・・・・10oと一つずつ飛ばしながら配置(図示せず)した場合も、第一の観察角度(E1)から観察した際に、第一の画像(7)を視認することが可能となる。
なお、第一の原画像(7’)に対応した配列順序を保っているのであれば、二本以上飛ばしながら配置することも可能である。その場合においては、第一の要素(10)における画線幅(D1)、第一の画像(7)の大きさ及び第一の観察角度(E1)からの視認性を適宜考慮し、何本飛ばすかを設定する。なお、図9においては、第一の要素(10)を一例として説明したが、第二の要素(11)についても、同様に形成することが可能である。
図10は、図4と同様に、本発明における形成体(1)を構成する本要素構成の第一実施形態を示す模式図であり、図10(a)は、形成体(1)における平面図である。図10(b)は、本発明における図10(a)に示した基材(2)を、A−A’部分で第一の方向(X)に切断した断面図である。図10(b)に示すように、基材(2)上において、凸状万線(3)における第一の側部(4)には、前述のとおり、第一の要素(10)を、第一の原画像(図示せず)に対応した配列で配置する。
前述の通り、第一の画像(7)は、第一の観察角度(E1)において視認可能な画像である。そのことから、第一の要素(10)は、第一の観察角度(E1)において、隣り合う凸状万線(3)の影となることなく観察可能な、第一の側部(4)に複数配置する。
凸状万線(3)における第二の側部(5)には、第二の要素(11)を、第二の原画像(図示せず)に対応した配列で配置する。前述の通り、第二の画像(8)は、第二の観察角度(E2)において視認可能な画像である。そのことから、第二の要素(11)は、第二の観察角度(E2)において、隣り合う凸状万線(3)の影となることなく観察可能な、第二の側部(5)に複数配置する。
次に、第一の画像(7)及び第二の画像(8)が、少なくとも一部重複された領域について説明する。図11は、本発明における第一の要素(10)、第二の要素(11)及び凸状万線(3)の位置関係を示す模式図である。
図11(a)、図11(b)、図11(c)及び図11(d)に示す位置関係は、図11(e)に示すように、凸状万線(3)に複数配置された第一の要素(10)及び第二の要素(11)における、一つの凸状万線(3)を、第三の観察角度(E3)から観察した際の拡大図である。
本発明における対応して配置とは、図11(a)、図11(b)及び図11(c)に示すように、複数配置された第一の要素(10)及び第二の要素(11)のうち、一つの凸状万線(3)に配置した一つの第一の要素(10)及び第二の要素(11)が、凸状万線(3)における同じ高さの頂上部(6)を繋いだ直線に対し、対となるように配置していることを指す。なお、図11(d)は、第一の要素(10)及び第二の要素(11)が対応して配置していない場合を示す模式図である。
図11(a)に示すように、第一の要素(10)及び第二の要素(11)が対応して配置されている凸状万線(3)において、各々の凸状万線(3)における第一の要素(10)及び第二の要素(11)の長さを等しく、かつ、すべてが対応して配置されたことで、第一の画像(7)、第二の画像(8)及び後述するカムフラージュ画像(9)は、前述した図2に示すような、すべて重複した領域に形成され、かつ、形状及び大きさが同一となる。
図12は、本発明における第一の要素(10)及び第二の要素(11)が凸状万線(3)に対応して配置した場合の、第一の画像(7)、第二の画像(8)及びカムフラージュ画像(9)を示す平面図である。
図12(a)においては、前述した図2と同様に、図11(a)に示すように、第一の要素(10)及び第二の要素(11)が配置されている。つまり、第一の要素(10)及び第二の要素(11)が対応して配置されている凸状万線(3)において、各々の凸状万線(3)における第一の要素(10)及び第二の要素(11)は、要素の長さが等しく、かつ、すべてが対応して配置されている。
前述した図2においては、複数配置された第一の要素(10)及び第二の要素(11)は、要素の長さが全て等しいとしている。それにより、観察角度を変化させることで観察可能な、第一の画像(7)、第二の画像(8)及びカムフラージュ画像(9)は、すべて領域(Z)内における同じ位置に、同じ大きさで、四角形状に観察可能となる。
一方、図12(a)に示した、第一の要素(図示せず)及び第二の要素(図示せず)が対応して配置されている凸状万線(図示せず)において、各々の凸状万線における前記第一の要素(図示せず)及び第二の要素(図示せず)は、要素の長さが等しく、かつ、すべて対応して配置されている。それにより、観察角度を変化させることで観察可能な、第一の画像(7)、第二の画像(8)及びカムフラージュ画像(9)は、すべて領域(Z)内における同じ位置に、同じ大きさで観察可能となるが、図2に示す四角形状の画像ではなく、一例として、三角形状の画像が視認される。
図11(b)及び図11(c)は、第一の画像(7)及び第二の画像(8)が、一部重複した領域における、第一の要素(10)及び第二の要素(11)を示す。本発明における少なくとも一部が対応して配置とは、図11(b)及び図11(c)に示すように、複数配置された第一の要素(10)及び第二の要素(11)のうち、一つの凸状万線(3)に配置した一つの第一の要素(10)及び第二の要素(11)が、凸状万線(3)おける同じ高さの頂上部(6)を繋いだ直線に対し、少なくとも一部分が向かい合うように配置していることを指す。向かい合う部分が一部である場合には、第一の画像(7)及び第二の画像(8)は、一部重複した領域を形成する。
図12(b)においては、図11(c)に示すように、第一の要素(10)及び第二の要素(11)が配置されている。複数配置された第一の要素(10)及び第二の要素(11)のうち、少なくとも一部が一つの凸状万線(3)に対応して配置されている。
さらに、第一の要素(10)及び第二の要素(11)が対応して配置されている凸状万線(3)において、各々の凸状万線(3)における第二の要素(11)は、要素の長さが第一の要素(10)の長さより短く、かつ、第一の要素(10)に対応して配置されている。
それにより、図12(b)に示すように、観察角度を変化させることで観察可能な、第一の画像(7)、第二の画像(8)及びカムフラージュ画像(9)は、すべて領域(Z)内における、一部重複した領域に視認されるが、第二の画像(8)においては、第一の画像(7)が視認される領域内において、視認される。
前述のとおり、カムフラージュ画像(9)は、第一の画像(7)及び第二の画像(8)の合成画像であるが、図12(b)においては、第一の画像(7)及び第二の画像(8)が重複しない領域、つまり、第一の画像(7)のみで形成された領域を含む。カムフラージュ画像(9)内における第一の画像(7)のみで形成された領域は、第一の要素(10)のみで形成されることになり、後述するが、略同一な濃度として視認することはできないが、カムフラージュ画像(9)の視認性を低下させないように、第一の画像(7)のみで形成された領域の大きさ、配置場所等は適宜設定する。
図12(b)においては、第一の画像(7)が視認される領域内に第二の画像(8)が視認されるように、第一の要素(10)及び第二の要素(11)を配置したが、反対に、第二の画像(8)が視認される領域内に第一の画像(7)が視認されるように、第一の要素(10)及び第二の要素(11)を配置することも可能である。その場合においては各要素の長さ及び配置場所は適宜設定する。
図2、図12(a)及び図12(b)において、第一の画像(7)、第二の画像(8)及びカムフラージュ画像(9)は、各々大きさは同じ又は異なるが、同一形状の画像としていたが、図11(a)、図11(b)及び図11(c)に示すように、複数配置された第一の要素(10)及び第二の要素(11)のうち、少なくとも一部が一つの凸状万線(3)に対応して配置されているのであれば、図12(c)に示すように、第一の画像(7)、第二の画像(8)及びカムフラージュ画像(9)を異なる形状及び大きさの画像とすることも可能である。
前述の通り、本発明における凸状万線(3)に配置した第一の要素(10)及び第二の要素(11)のピッチは、300〜1000μmである。そのことから、第一の画像(7)及び第二の画像(8)が重複した領域においては、第一の原画像(7’)を第一の方向(X)に複数画線状に分割し、形成された第一の要素(10)と、第二の原画像(8’)を第一の方向(X)に複数画線状に分割し、形成された第二の要素(11)が混色して視認される。つまり、肉眼では、第三の観察角度(E3)から視認した場合、第一の要素(10)及び第二の要素(11)により形成されたカムフラージュ画像(9)は、略同一の濃度を有する画像として視認される。なお、カムフラージュ画像(9)の視認原理については、後で詳細に説明する。
(第一要素構成における各画像の視認原理)
本発明に関わる形成体(1)を、観察角度を変化させ観察した際の、視認原理について説明する。なお、後述する視認原理を説明する図13、図14及び図15においては、図2において示したように、基材(2)上における領域(Z)において、第一の画像(7)及び第二の画像(8)は、すべて重複した領域に形成し、かつ、第一の画像(7)、第二の画像(8)及びカムフラージュ画像(9)は、形状及び大きさを同一とした。
まず、本発明に関わる第一要素構成における形成体(1)を、第一の観察角度(E1)から観察した際の視認原理について説明する。図13は、本発明における基材(2)上の領域(Z)に付与された形成体(1)を、第一の観察角度(E1)から観察した際の平面図及び断面図を示す図である。
(第一の観察角度(E1)から観察)
形成体(1)を第一の観察角度(E1)から観察した際の、視認原理について説明する。図13(a)に示すように、形成体(1)を第一の観察角度(E1)から観察した際には、第一の画像(7)は観察可能だが、第二の画像(8)及びカムフラージュ画像(9)は凸状万線(3)の影となり観察することができない。
図13(b)は、本発明にかかわる図13(a)に示した形成体(1)を、第一の方向(X)に切断したA−A’断面図である。第一の観察角度(E1)から観察した場合、凸状万線(3)における第一の側部(4)は、隣り合う凸状万線(3)の影となることなく観察可能である。つまり、複数配置された第一の要素(10)は観察可能である。一方、第二の側部(5)は、隣り合う凸状万線(3)の影となり、視認することができない。つまり、複数配置された第二の要素(11)は観察することができない。
図13(b)に示した、第一の画像(7)及び第二の画像(8)を形成した領域内における凸状万線(3)は、第一の側部(4)に第一の要素(10)が付与され、第二の側部(5)に第二の要素(11)が付与されている。つまり、第一の原画像(図示せず)に対応した配列順序で配置した第一の要素(10)は、すべて視認することが可能である。一方、複数配置した第二の要素(11)は、すべて視認することができない。
このように、形成体(1)を第一の観察角度(E1)から観察した際には、第一の側部(4)のみが観察可能となり、第一の側部(4)に付与した第一の要素(10)のみが視認可能となる。なお、前述の通り、本発明においては凸状万線(3)のピッチは300〜1000μmと狭いことから、複数配置された第一の要素(10)は、その一つ一つを肉眼で識別することができなくなり、集合体として視認される。つまり、肉眼では、第一の画像(7)の原画像である第一の原画像(図示せず)を複数画線状に分割し、形成した第一の要素(10)により形成された第一の画像(7)が視認される。
(第二の観察角度(E2)から観察)
次に、本発明に関わる第一要素構成における形成体(1)を、第二の観察角度(E2)から観察した際の視認原理について説明する。図14は、本発明における基材(2)上の領域(Z)に付与された形成体(1)を、第二の観察角度(E2)から観察した際の平面図及び断面図を示す図である。図14(a)に示すように、基材(2)を第二の観察角度(E2)から観察した際には、第二の画像(8)は観察可能だが、第一の画像(7)及びカムフラージュ画像(9)は観察することができない。
図14(b)は、本発明にかかわる図14(a)に示した形成体(1)を、第一の方向(X)に切断したA−A’断面図である。第二の観察角度(E2)から観察した場合、凸状万線(3)における第二の側部(5)は、隣り合う凸状万線(3)の影となることなく観察可能である。つまり、複数配置された第二の要素(11)は観察可能である。一方、第一の側部(4)は、隣り合う凸状万線(3)の影となり、視認することができない。つまり、複数配置された第一の要素(10)は観察することができない。
図14(b)に示す、第一の画像(7)及び第二の画像(8)を形成した領域内における凸状万線(3)は、前述のとおり、第一の側部(4)に第一の要素(10)が付与され、第二の側部(5)に第二の要素(11)が付与されている。つまり、複数配置した第一の要素(10)は、すべて視認することができない。一方、第二の原画像(図示せず)に対応した配列順序で配置した第二の要素(11)は、すべて視認することが可能である。
このように、形成体(1)を第二の観察角度(E2)から観察した際には、第二の側部(5)のみが観察可能となり、第二の側部(5)に付与した第二の要素(11)のみが視認可能となる。なお、前述の通り、本発明においては凸状万線(3)のピッチは300〜1000μmと狭いことから、複数配置された第二の要素(11)は、その一つ一つを肉眼で識別することができなくなり、集合体として視認される。つまり、肉眼では、第二の画像(8)の原画像である第二の原画像(図示せず)を複数画線状に分割し、形成した第二の要素(11)により形成された第二の画像(8)が視認される。
(第三の観察角度(E3)から観察)
次に、形成体(1)を第三の観察角度(E3)から観察した際の、視認原理について説明する。図15は、本発明における基材(2)上の領域(Z)に付与された形成体(1)を、第三の観察角度(E3)から観察した際の平面図及び断面図を示す図である。図15(a)に示すように、基材(2)を第三の観察角度(E3)から観察した際には、第一の画像(7)及び第二の画像(8)が合成されることで形成されたカムフラージュ画像(9)を新たに視認することが可能である。
図15(b)は、本発明にかかわる図15(a)に示した形成体(1)を、第一の方向(X)に切断したA−A’断面図である。第三の観察角度(E3)から観察した場合、凸状万線(3)における第一の側部(4)及び第二の側部(5)は、いずれも隣り合う凸状万線(3)の影となることなく観察可能である。つまり、複数配置された第一の要素(10)及び第二の要素(11)は、いずれも視認可能である。
図15(b)に示す、第一の画像(7)及び第二の画像(8)を形成した領域内における凸状万線(3)は、前述のとおり第一の側部(4)に第一の要素(10)が付与され、第二の側部(5)には第二の要素(11)が付与されている。つまり、複数配置された第一の要素(10)及び第二の要素(11)は、すべて視認することが可能である。
このように、形成体(1)を第三の観察角度(E3)から観察した際には、第一の側部(4)及び第二の側部(5)いずれも観察可能となり、第一の側部(4)に付与した第一の要素(10)及び第二の側部(5)に付与した第二の要素(11)もいずれも視認可能となる。
なお、前述の通り、本発明における凸状万線(3)に配置した第一の要素(10)及び第二の要素(11)のピッチは、300〜1000μmと狭いことから、複数配置された第一の要素(10)及び第二の要素(11)は、その一つ一つを肉眼で識別することができなくなり、集合体として視認される。つまり、肉眼では、第一の画像(7)の原画像である第一の原画像(図示せず)を第一の方向(X)に複数画線状に分割し、形成した第一の要素(10)により形成された第一の画像(7)と、第二の画像(8)の原画像である第二の原画像(図示せず)を第一の方向(X)に複数画線状に分割し、形成した第二の要素(11)により形成された第二の画像(8)が合成されることで形成された、カムフラージュ画像(9)が、略同一の濃度を有する画像として視認される。
なお、説明を簡潔にするために、基材(2)に対して視点が第一の観察角度(E1)にあるとき、第一の画像(7)が視認され、視点が第二の観察角度(E2)にあるとき第二の画像(8)が視認され、更に、視点が第三の観察角度(E3)にあるときカムフラージュ画像(9)が視認されるとした。
例えば、基材(2)に対して視点を第三の観察角度(E3)から第一の観察角度(E1)へと徐々に変化させていく中で、それに伴い、第二の側部(5)は、徐々に隣り合う凸状万線(3)の影となり、視認できる面積が少なくなっていき、第一の観察角度(E1)から視認した際には、完全に第二の側部(5)は、視認することができなくなる。
つまり、複数配置された第一の要素(10)及び第二の要素(11)の集合体であるカムフラージュ画像(9)から、徐々に第二の要素(11)が含まれる比率が少なくなり、略同一な濃度を有する第一の要素(10)及び第二の要素(11)の集合体から、第一の要素(10)のみからなる集合体へと徐々に変化していく。そして、視点が基材(2)に対して第一の観察角度(E1)となるときに、第一の要素(10)のみが観察可能となることから、第一の要素(10)のみで形成された第一の画像(7)が観察される。
さらに、基材(2)を第一の観察角度(E1)より大きな角度で傾けた場合においても、同様に第一の要素(10)のみで形成された画像として観察される。このように、基材(2)に対して徐々に観察角度を変化させることにより、それに伴い、徐々に各画像の濃度変化を確認することができる。
また、第一の画像(7)及び第二の画像(8)において、一方の画像が他方の画像と比較して濃度が高い場合、例えば、第一の画像(7)が淡い黄色で、第二の画像(8)が黒色である場合においては、第三の観察角度(E3)から観察した際に、第一の画像(7)及び第二の画像(8)いずれの画像も視認可能だが、肉眼においては、濃度が高い第二の画像(8)が良く見えることから、カムフラージュ画像(9)は略同一な濃度とはならない。そのことから、第一の画像(7)及び第二の画像(8)は、第三の観察角度(E3)から観察した際に、各々の画像のみが視認可能とならないよう、適宜濃度を設定する。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明を限定するものではない。
(実施例)
実施例とし、図16(a1)に示した網点により連続階調が付与された第一の原画像(7’)、図16(b2)に示した網点により連続階調が付与された第二の原画像(8’)を用いて、図1(a)に示した形成体(1)を作製した。形成体(1)は、基材(2)として上質紙(日本製紙製 NPI上質紙 81.4g/m2)を用いた。基材(1)上に、スクリーン印刷機(RANAS製 MF―250)を用いて、スクリーン印刷用UV硬化型インキにより、凸状万線(3)を形成した。凸状万線(3)は、250μmの画線幅であり、ピッチ(d)を500μmとした。
次に、第一の原画像(7’)を、ピッチ80μmで、複数画線状に等分割し、図16(a2)に示した、複数の第一の要素(10)を、80μmの一定幅の画線として形成した。図16(a3)は、図16(a2)に示した、複数の第一の要素(10)を一部拡大した図である。図16(a3)に示したように、複数の第一の要素(10)は、図9に示したように、連続した配列順を保ちながら、第一の要素(10a、10c、10e・・・・10n)と一つずつ飛ばしながら配置した。第一の要素(10)は、オフセットインキ(T&K TOKA製 ベストキュア 藍)を用いて印刷した。
次に、第二の原画像(8’)を、ピッチ80μmで、複数画線状に等分割し、図16(b2)に示した、複数の第二の要素(11)を、80μmの一定幅の画線として形成した。図16(b3)は、図16(b2)に示した、複数の第二の要素(11)を一部拡大した図である。図16(b3)に示したように、複数の第二の要素(11)は、図9に示した第一の要素(10)と同様に、連続した配列順を保ちながら、第二の要素(11a、11c、11e・・・・11n)と一つずつ飛ばしながら配置した。第二の要素(11)は、オフセットインキ(T&K TOKA製 ベストキュア 紅)を用いて印刷した。なお、第一の要素(10)及び第二の要素(11)は、各々オフセット印刷機(下垣鉄工所製 EP―60)により基材(2)上に形成した。
実施例1にて作製した形成体(1)が形成された基材(2)を、可視光源下で第一の観察角度(E1)から肉眼で観察したところ、図17(a1)に示した第一の画像(7)が、シアン色の連続階調画像として視認でき、図17(b1)に示した第二の画像(8)及び図17(c1)に示したカムフラージュ画像(9)は視認できなかった。
次に、形成体(1)を、第二の観察角度(E2)から肉眼で観察したところ、図17(b1)に示した第二の画像(8)が、マゼンタ色の連続階調画像として視認でき、図17(a1)に示した第一の画像(7)及び図17(c1)に示したカムフラージュ画像(9)は視認できなかった。
さらに、形成体(1)を第三の観察角度(E3)から肉眼で観察したところ、図17(c1)に示した第一の画像(7)及び第二の画像(8)の合成画像であるカムフラージュ画像(9)が、一様な濃度の紫色として視認できた。なお、肉眼では、一様な濃度として視認されたが、図17(c2)に示した、カムフラージュ画像(9)の一部拡大した図に示すように、実際には、第一の要素(10)及び第二の要素(11)が、交互に配置されていた。
以上、本発明に係る実施例1に基づいて実施の形態を説明したが、上記実施例に限定されることなく特許請求の範囲記載の技術思想の範囲内で、更にいろいろな実施例があることは言うまでもない。