JP2019142168A - 透過潜像印刷物 - Google Patents
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本発明における透過潜像印刷物(1)を構成する基材(2)は、上質紙やコート紙、フィルムやプラスチックのように光を透過する特性、いわゆる光透過性を有する必要がある。ただし、不透明なプラスチックや金属では透過光下での効果は得られない。
図3に、第1の実施の形態の印刷画像(3)の構成を示す。印刷画像(3)は、第一の領域(4)と第二の領域(5)の二つの領域を有する。本実施の形態において、印刷画像(3)は籠目模様を表現しており、第一の領域(4)は扇パターンで構成された外周部、そして、第二の領域(5)は風車模様で構成された中央部を形成しており、合成された模様として印刷画像(3)の籠目模様となる。印刷画像(3)は、基材(2)と異なる色彩であれば、透明以外のいかなる色彩であってもよい。なお、本発明における「色彩」とは、色相、彩度及び明度の概念を含んで色を表したものである。また、画像要素の形成に使用する「色材」については、以降、「インキ」と称して説明する。
図4は、第一の領域(4)の構成を示す図である。第一の領域(4)は、図4の拡大図に示すように、第1のインキによる第1の画像要素(6)が所定のピッチで複数配置されることで、所定の面積率を有する第一の画像(8)として形成される。なお、本発明において「面積率」とは、基材(2)における一定の面積の中に配置される要素の面積の割合のことである。第1の画像要素(6)を形成するための第1のインキとしては、プロセスインキや特色インキ等の着色インキを使用する。なお、第1のインキは、後述する第二の領域(5)の画像の形成に使用する光遮断性のある材料を含まない着色インキである。
第二の領域(5)は、図5(a)に示すように、第二の画像(9)と第三の画像(11)で構成され、第二の画像(9)と第三の画像(11)の積層関係は、図5(b)に示すように、第二の画像(9)の上方に第三の画像(11)が重なる構成である。以下、第二の画像(9)及び第三の画像(11)の構成について説明する。
図6は、第二の画像(9)の構成を示す図である。第二の画像(9)は、図6の拡大図に示すように、第1の画像要素(6)を形成するインキと同じ第1のインキによる第2の画像要素(7)が、所定のピッチにて複数配置されることで、所定の面積率を有して、第二の領域(5)に形成される。図6の拡大図に示す第2の画像要素(7)は、円形の画素で構成された例を示しており、この場合、第2の画像要素(7)が第2Aの方向(VA2)に第2aのピッチ(P2a)、第2Bの方向(VB2)に第2bのピッチ(P2b)にて複数配置される。なお、第2の画像要素(7)が配置される第2Aの方向(VA2)と第2Bの方向(VB2)は、異なる方向であれば図6に示す方向に限定されるものではない。また、第2の画像要素(7)が配置される方向(VA2、VB2)は、第1の画像要素(6)が配置される方向(VA1、VB1)と同じ方向であってもよいし、異なる方向であってもよい。
図7は、第三の画像(11)の構成を示す図である。第二の領域(5)の第二の画像(9)の上方に積層して形成する第三の画像(11)は、図7の拡大図に示すように、白色であって、かつ、光遮断性を有するインキによる第3の画像要素(10)が所定のピッチで複数配置されることで、所定の面積率を有する第三の画像(11)が形成される。そして、第3の画像要素(10)は、第2の画像要素(7)と同じピッチ(P3a、P3b)にて第2の画像要素(7)が配置される方向(VA2、VB2)に配置されることにより、第2の画像要素(7)の上方に重なって形成される。
続いて、本発明の第一の領域(4)と第二の領域(5)が、反射光下では等色の印刷画像(3)として形成される構成及び理由について説明する。第1のインキの具体例として、青色の着色インキを用い、第一の画像(8)を面積率45%、第二の画像(9)を面積率80%にて形成したとすると、第二の画像(9)は第一の画像(8)よりも面積率が高いことから、青色の色が濃い状態にて形成される。また、白色であり、光遮断性を有するインキから成る第三の画像(11)が、第二の画像(9)の上方に積層されると、反射光下にて第二の領域(5)は、第二の画像(9)の濃い青色の色と第三の画像(11)の白色が混色した色として視認される。このように、濃い青色と白色が混色して、濃い青色の色が淡くなることにより、反射光下における第二の領域(5)の色を第一の領域(4)の青色と等色にすることができる。
以上、記載のとおり形成した印刷画像(3)の積層状態の一例を図9に示す。印刷画像(3)の一部分、X−X’の断面構造を印刷画像(3)下に示す。第一の領域(4)には、第1の画像要素(6)による第一の画像(8)が基材(2)の上方に形成され、第二の領域(5)には、第2の画像要素(7)による第二の画像(9)の上方に積層して第3の画像要素(10)による第三の画像(11)が形成されている。なお、本発明において各画像要素(6、7、10)を形成する方法としては、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の印刷機械を使用する方法、又はレーザプリンタを使用する方法がある。
以上の構成で形成された透過潜像印刷物(1)を、反射光下において観察した状態を図10(a)に示す。図10(a)のように、透過潜像印刷物(1)を光源(L1)からの反射光下において反射画像の観察者(E1)が観察すると、印刷画像(3)の第一の領域(4)と第二の領域(5)は等色に観察され、籠目模様が認識できる。これは、前述のとおり、第一の領域(4)と第二の領域(5)が等色に感じられるように第1の画像要素(6)、第2の画像要素(7)及び第3の画像要素(10)を適宜形成しているからである。なお、本発明でいう「等色」とは、観察者が注意を払わずに画像を一べつした場合に同じ色彩であると感じられる程度に二つの色彩が近い状態を指すこととする。具体的には、色差ΔE(本発明ではCIE1976L*a*b*色差式によるものとする。)が7以下の数値までを本発明上の等色と定義する。
透過画像の観察者(E2)と光源(L2)との間に透過潜像印刷物(1)を配置した観察状態を図10(b)に示す。図10(b)のように透過潜像印刷物(1)を透過光下にて観察すると、第二の領域(5)が第一の領域(4)より暗くなり、反射光下にて等色に視認されていた二つの領域が区分けされ、第一の画像(8)である「扇パターン」と第二の画像(9)である「風車模様」がそれぞれ視認できる。これは、光源(L2)によって基材(2)を透過した光のうち、第一の領域(4)では第1のインキによる第1の画像要素(6)を透過した光量と、基材(2)を透過した光量とが感じられることに加えて、一方の第二の領域(5)では、第二の画像(9)の面積率が第一の画像(8)の面積率より高い、すなわち、光を遮断する第2の画像要素(7)の面積が広いことで第一の領域(4)よりも暗くなるからである。さらに、第二の画像(9)を透過した光は、更に、第3の画像要素(10)によって遮断されることで、より暗くなり、その結果、第一の領域(4)と第二の領域(5)に瞭然とした明暗差が生じて視認されるからである。
以上、第1の画像要素(6)、第2の画像要素(7)及び第3の画像要素(10)が円形の画素で構成された例について説明したが、次に画線で構成された例について説明する。
第1の実施の形態は、第1の画像要素(6)と第2の画像要素(7)とを同じ第1のインキにより形成した構成について説明したが、次に、第2の画像要素(7)を、第1の画像要素(6)を形成する第1のインキと異なる色の第2のインキによって形成する形態について説明する。なお、第2の実施の形態において、第2のインキの構成は、第1のインキと同じ色相であり、かつ、濃度が異なるインキ(以後、第2Aのインキという。)と、第1のインキと色相が異なるインキ(以後、第2Bのインキという。)の二通りがあり、それぞれの構成について順に説明する。
次に、第3の実施の形態として、第一の画像(8)及び第二の画像(9)について色相の異なる複数色のインキを使用した複数の画像要素によって形成する形態について説明する。以下の説明においては画像要素が円形の画素で構成される例について説明するが、前述のとおり画像要素に限定はなく画線としてもよい。
第一の領域(4)は、図14に示すように、第1のインキによる第1の画像要素(6)と、第1のインキとは異なる色相の第1Aのインキによる第1Aの画像要素(6’)が、所定のピッチで複数配置されることで、所定の面積率を有する第一の画像(8)が形成される。第1のインキ及び第1Aのインキとしては、前述のとおり、プロセスインキや特色インキなど通常の着色インキを使用すればよく、光遮断性のある金属顔料は含まない着色インキを使用する。例えば、第1のインキに紅インキ、第1Aのインキに藍インキを使用した場合、紅インキと藍インキが混色した紫色として第一の領域(4)が形成される。
図15においては、第二の領域(5)は、第一の画像(8)を形成するインキと同じ第1のインキによる第2の画像要素(7)と、第1Aのインキによる第2Aの画像要素(7’)とが所定のピッチで複数配置されることで、所定の画線面積率を有する第二の画像(9)が形成される。図15においても、第2の画像要素(7)と第2Aの画像要素(7’)とが互いに重ならない配置としているが、第1のインキと第1Aのインキが混色して、観察者が一様な色と感じられる構成であれば、第2の画像要素(7)と第2Aの画像要素(7’)の配置に制約はなく、各要素同士が重なっていてもよい。また、プロセス印刷における網点角度が色ごとに異なるような配置としてもよい。
第三の画像(11)は前述のように、白色であり光遮断性を有するインキによる第3の画像要素(10)が所定のピッチで複数配置される構成であり、第3の実施の形態において第3の画像要素(10)は、詳細には、第二の画像(9)を構成する第2の画像要素(7)と、第2Aの画像要素(7’)に対応して重なる構成である。図16は、図15に示す第2の画像要素(7)と、第2Aの画像要素(7’)に対応して重なる第3の画像要素の構成を示す図であり、図16の拡大図では、第2の画像要素(7)に対応して重なる第3の画像要素を符号「10」で示し、第2Aの画像要素(7’)に対応して重なる第3Aの画像要素を符号「10’」にて示している。
実施例1は、第1の実施の形態の構成で成る透過潜像印刷物(1)であり、具体的には、図1から図7までに示す構成の透過潜像印刷物(1)を作製した。基材(2)には白色のカラーコピー用上質紙(坪量79g/m2、白色度90%、紙厚95μm)を用い、印刷画像(3)はPC用のグラフィックソフトウェアを使用して、次に説明する画像データを作成し、レーザプリンタにより、色材を付与した。
実施例2は、第3の実施の形態の構成で成る透過潜像印刷物(1)であり、第一の画像(8)及び第二の画像(9)を色相の異なるマゼンタ色とシアン色のインキを使用して、図1に示すような透過潜像印刷物(1)を作製した。基材(2)の構成及び作製方法は実施例1と同様とした。
実施例3は、第2の実施の形態の構成で成る透過潜像印刷物(1)であり、第一の画像(8)を淡いブラックのインキ、第二の画像(9)を濃いブラックのインキを使用して、図1に示すような透過潜像印刷物(1)を作製した。基材(2)の構成及び作製方法は実施例1と同様とした。
実施例4は、実施例1の白色の基材(2)を使用して作製した透過潜像印刷物(1)に対して、基材(2)の色が異なる例であり、3種類の色の基材(2)を使用して作製した透過潜像印刷物(1)である。実施例4において、使用した基材(2)の構成を表1に、使用した基材(2)に応じて作製した透過潜像印刷物(1)の結果を表2にそれぞれ示す。加えて、比較例として、実施例4とは別に使用した基材(2)の構成を表1に、作製した印刷物の結果を表2にそれぞれ示す。
2 基材
3 印刷画像
4 第一の領域
5 第二の領域
6 第1の画像要素
6’ 第1Aの画像要素
7 第2の画像要素
7’ 第2Aの画像要素
8 第一の画像
9 第二の画像
10 第3の画像要素
10’ 第3Aの画像要素
11 第三の画像
E1 反射画像の観察者
E2 透過画像の観察者
L1 反射光源
L2 透過光源
VA1 第1Aの方向
VA2 第2Aの方向
VA3 第3Aの方向
VB1 第1Bの方向
VB2 第2Bの方向
VB3 第3Bの方向
P1a、P2a、P3a、P1b、P2b、P3b 画像要素のピッチ
WL1、WL2、WL3 線幅
WA1、WA2、WA3、WB1、WB2、WB3 画像要素の大きさ
Claims (4)
- 透過性を有する基材に、第一の領域と第二の領域から成る印刷画像を備え、前記第一の領域に、前記基材と異なる色の第1の色材によって形成された第1の画像要素が複数配置された第一の画像が形成され、前記第二の領域に、前記基材と異なる色の第2の画像要素が複数配置された第二の画像が形成され、前記第二の画像は、i)前記第1の色材によって形成された前記第2の画像要素が、前記第1の画像要素の面積率より高く配置され、かつ、前記第一の画像より濃い色であり、又はii)前記第1の色材と同じ色であって、濃度が異なる第2Aの色材によって形成された前記第2の画像要素が、前記第1の画像要素の面積率より高く配置され、かつ、前記第一の画像より濃い色であり、又はiii)前記第1の色材と異なる色相の第2Bの色材によって形成された前記第2の画像要素が複数配置され、かつ、前記第一の画像と異なる色であり、前記第2の画像要素の少なくとも一部に光遮断性の材料を含む第3の色材によって形成された第3の画像要素が積層されることで、前記第一の領域と前記第二の領域が反射光下で等色に形成され、透過光下で観察すると、前記第一の領域と前記第二の領域が透過光量の差により区分けして視認されることを特徴とする透過潜像印刷物。
- 前記i)又は前記ii)の場合、前記第3の画像要素は、白色の前記第3の色材によって形成されたことを特徴とする請求項1記載の透過潜像印刷物。
- 前記iii)の場合、前記第3の画像要素は、前記第1の色材、前記第2Aの色材及び前記第2Bの色材とは異なる色の前記第3の色材によって形成され、前記第2の画像要素の上方に前記第3の画像要素を積層した前記第二の領域の色が、前記第一の領域の色と反射光下で等色であることを特徴とする請求項1記載の透過潜像印刷物。
- 前記第一の画像は、更に前記基材及び前記第1の色材と異なる色相の第1Aの色材によって形成された第1Aの画像要素を複数有し、前記第二の画像は、更に前記第1Aの色材によって形成され、前記第1Aの画像要素の面積率より高く配置された第2Aの画像要素を複数有し、かつ、前記第2Aの画像要素の少なくとも一部に、白色の前記第3の色材によって形成された前記第3の画像要素が積層されることで、前記第一の領域と前記第二の領域が反射光下で等色に形成されたことを特徴とする請求項2記載の透過潜像印刷物。
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