本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の様々な実施の形態が含まれる。
図1に、本発明における透過潜像印刷物(1)を示す。本発明の透過潜像印刷物(1)は、基材(2)の上に、基材(2)と異なる色を有する印刷画像(3)が形成されて成り、印刷画像(3)は、複数の色の画像要素によって構成される。図1に示す印刷画像(3)は、反射光下で一様な濃度の四角形の模様が形成された例を示しているが円形や多角形等でもよい。また、印刷画像(3)の色については、基材(2)と異なる色を有していれば、透明以外の如何なる色であってもよい。本発明の透過潜像印刷物(1)を図2(a)に示すように、反射光下で観察すると、一様な濃度の四角形の印刷画像(3)が視認されるが、図2(b)に示すように、透過光下で観察すると、複数の色彩を有する「流水と紅葉」の印刷画像(3)が視認される。以下、本発明の透過潜像印刷物(1)の詳細について説明する。
(基材)
本発明における透過潜像印刷物(1)を構成する基材(2)は、上質紙やコート紙、フィルムやプラスティックのように、光を透過する特性、いわゆる光透過性を有する必要がある。ただし、不透明なプラスティックや金属では透過光下での効果は得られない。
(印刷画像)
本発明の透過潜像印刷物(1)において印刷画像(3)は、前述のように、複数の色の画像要素を有する構成であるが、本実施の形態では、一例として、三つの色の画像要素を有する印刷画像(3)が形成され、三つの色は、プロセスカラーインキとして用いられるシアン、マゼンタ、イエローを用いた例について説明する。なお、これらのインキは、着色顔料とは別に光遮断性を有する材料を含まないインキを使用する。
(第1の実施の形態)
図3(a)は、三つの色の画像要素で形成された印刷画像(3)の構成を示す図であり、図3(b)、図3(c)、図3(d)は、印刷画像(3)を構成する各色の画像要素で構成された画像を示す図である。なお、図3(b)は、シアン色で構成された画像(以下「第1の画像(3A)」という。)を示す図であり、図3(c)は、マゼンタ色で構成された画像(以下「第2の画像(3B)」という。)を示す図であり、図3(d)は、イエロー色で構成された画像(以下「第3の画像(3C)」という。)を示す図である。これらは、印刷画像(3)を色分解した(ここではシアン、マゼンタ、イエローの三色に色分解)各色版に相当する。印刷画像(3)は、複数の色、ここでは、三つの色に応じて第1の画像(3A)から第3の画像(3C)が形成される領域が異なり、図3(a)の拡大図は、第1の画像(3A)が形成される第1の領域(10A)、第2の画像(3B)が形成される第2の領域(10B)及び第3の画像(3C)が形成される第3の領域(10C)の各々が、万線状に一定のピッチ(P)で複数設けられた構成を示している。
本発明の透過潜像印刷物(1)において、図3(a)の拡大図に示す第1の領域の幅(W1)、第2の領域の幅(W2)及び第3の領域の幅(W3)は、特に制約がないが、印刷画像(3)の視認性(解像度)を考慮すると、第1の領域(10A)から第3の領域(10C)を目視で観察した際に、領域がはっきりとは捉えられず各領域が混色した色味として感じられる大きさとすることが好ましい。仮に、本発明の透過潜像印刷物(1)の形態が、銀行券、パスポートのような貴重印刷物の場合の一般的な観察距離(約40cm)において、目視で捉えられず混色して視認されるための各領域(10A、10B、10C)の大きさ(W1、W2、W3)として、1mm以下とすることが好ましい。また、本発明の透過潜像印刷物(1)の形態が、銀行券、パスポートのような貴重印刷物の場合の印刷画像(3)の視認性(解像度)を考慮すると、各領域(10A、10B、10C)が配置される1周期分の大きさの和、図3の場合、第1の領域の幅(W1)、第2の領域の幅(W2)及び第3の領域の幅(W3)の和を、3mm以下とすることが好ましい。
図3では、シアン色の第1の画像(3A)、マゼンタ色の第2の画像(3B)及びイエロー色の第3の画像(3C)の順に、画像を形成する領域(10A、10B、10C)が配置されているが、これに限定されるものではなく、各領域(10A、10B、10C)が一定の周期で配置されればよい。続いて、第1の画像(3A)から第3の画像(3C)の詳細な構成について説明する。
(第1の画像)
はじめに、印刷画像(3)を形成する三つの画像のうちの一つであるシアン色で形成する第1の画像(3A)について説明する。図4(a)は、第1の画像(3A)の構成を示す図であり、第1の画像(3A)は、第1の画像(3A)のうち、透過光下で観察される「流水と紅葉」の図柄を構成する図4(b)に示す第1の潜像部(3A1)と、それらの背景を構成する図4(c)に示す第1の背景部(3A2)から成る。図4(a)に示す第1の画像(3A)は、図4(a)の拡大図に示すように、規則的に複数配置された第1の領域(10A)から成り、第1の領域(10A)には、シアンインキを印刷することで、第1の画像要素(11A)が形成され、第1の潜像部(3A1)と第1の背景部(3A2)は、シアンインキによって形成される第1の画像要素(11A)の面積率が異なる。また、第1の潜像部(3A1)は、後述する光遮断性の白色のインキから成る潜像要素(12A)が、第1の画像要素(11A)の上に重なる。なお、本発明において「面積率」とは、基材(2)の一定の面積の中に配置される要素の面積の割合のことである。
(第1の背景部)
図5は、第1の背景部(3A2)の構成を示す図である。第1の背景部(3A2)は、前述のとおり、シアンインキを印刷することで形成された第1の画像要素(11A)が複数配置されて成る。図5の例では、第1の画像要素(11A)が円形の画素で形成された例であり、この場合、図5の拡大図に示すように、円形の画素で形成された第1の画像要素(11A)が、第1Aの方向(V1A)に第1Aのピッチ(P1A)、第1Bの方向(V1B)に第1Bのピッチ(P1B)で複数配置される。なお、第1の画像要素(11A)が配置される第1Aの方向(V1A)と第1Bの方向(V1B)は、異なる方向であれば、図5に示す方向に限定されるものではない。
図5において、第1の画像要素(11A)は、円形の画素で構成された例を示しているが、本発明において、第1の画像要素(11A)は、画線の構成であってもよいし、画線と画素を組み合わせて構成してもよい。なお、本発明において、「画素」とは、印刷画像を形成する最小単位である印刷網点自体か、あるいは、印刷網点を複数集合させて形成した一塊の画像要素であって、円や三角形、四角形を含む多角形、星型等の各種図形、あるいは文字や記号、数字等も含まれる。一方、「画線」とは、印刷画像を形成する最小単位である印刷網点を特定の方向に連続して配置して形成した画像要素であって、点線や破線の分断線、直線、曲線及び波線等が含まれる。後述する潜像要素(12A)及び第1の潜像部(3A1)に配置される第1の画像要素(11A)についても同様である。なお、以降の説明では、各要素が円形の画素で構成された例について説明する。
本発明の透過潜像印刷物(1)において、第1の画像要素(11A)は、第1の領域(10A)に配置できる大きさで形成されればよい。ただし、印刷画像(3)の視認性(解像度)を考慮すると第1の画像要素(11A)自体の形状や色が目視で視認できない大きさであることが好ましい。仮に、本発明の透過潜像印刷物(1)の形態が、銀行券、パスポートのような貴重印刷物の場合の一般的な観察距離(約40cm)において、高精細な印刷画像(3)を形成する場合には、第1の画像要素(11A)の第1Aの方向(V1A)への大きさ(W1A)及び第1Bの方向(V1B)への大きさ(W1B)は、10μmから500μmとすることが好ましい。また、本発明の透過潜像印刷物(1)の形態が、銀行券、パスポートのような貴重印刷物の場合の一般的な観察距離(約40cm)において、第1の画像要素(11A)同士の間が大きくなり過ぎると、印刷画像(3)の視認性が低下することから、第1の画像要素(11A)同士の間の距離が500μm以下となる第1Aのピッチ(P1A)及び第1Bのピッチ(P1B)として、第1の画像要素(11A)を配置することが好ましい。
(第1の潜像部)
図6は、第1の潜像部(3A1)の構成を示す図であり、図6(b)及び図6(c)は、図6(a)に示す第1の潜像部(3A1)の一部拡大図である。第1の潜像部(3A1)は、前述のとおり、シアンインキを印刷することで形成された図6(b)に示す第1の画像要素(11A)の上に、光遮断性の白色のインキを印刷することで形成された図6(c)に示す潜像要素(12A)が重なって成る。図6の例では、第1の画像要素(11A)が円形の画素で形成された例であり、この場合、図6の拡大図に示すように、円形の画素で形成された第1の画像要素(11A)が、第2Aの方向(V2A)に第2Aのピッチ(P2A)、第2Bの方向(V2B)に第2Bのピッチ(P2B)で複数配置される。なお、第1の画像要素(11A)が配置される第2Aの方向(V2A)と第2Bの方向(V2B)は、異なる方向であれば、図6に示す方向に限定されるものではない。また、第1の潜像部(3A1)の第1の画像要素(11A)が配置される第2Aの方向(V2A)と第2Bの方向(V2B)は、第1の背景部(3A2)の第1の画像要素(11A)が配置される第1Aの方向(V1A)と第1Bの方向(V1B)と同じ方向であってもよいし、異なる方向でもよい。
第1の潜像部(3A1)に配置される第1の画像要素(11A)の面積率は、第1の背景部(3A2)に配置される第1の画像要素(11A)の面積率とは異なり、第1の潜像部(3A1)に配置される第1の画像要素(11A)の面積率は、第1の背景部(3A2)に配置される第1の画像要素(11A)の面積率よりも高い。この理由としては、後述する光遮断性を有する白色のインキによる潜像要素(12A)を積層することで、反射光下で、第1の潜像部(3A1)の画像濃度を淡く(明るく)して、第1の背景部(3A2)と等色になるためであり、下層の第1の潜像部(3A1)の第1の画像要素(11A)は、あらかじめ、第1の背景部(3A2)より面積率を高く設計しておく必要があるからである。
第1の潜像部(3A1)に配置される第1の画像要素(11A)の面積率を第1の背景部(3A2)に配置される第1の画像要素(11A)の面積率より大きくするための具体的な例としては、第1の潜像部(3A1)の第1の画像要素(11A)の円形の画素の大きさを、第1の背景部(3A2)の第1の画像要素(11A)より大きくし、第1の潜像部(3A1)と第1の背景部(3A2)に配置する第1の画像要素(11A)を同じピッチで配置する構成がある。この場合、第1の潜像部(3A1)の第1の画像要素(11A)の大きさ(W2A、W2B)を第1の背景部(3A2)の第1の画像要素(11A)の大きさ(W1A、W1B)より大きくすることで、第1の潜像部(3A1)の面積率を第1の背景部(3A2)の面積率より大きくすることができる。
また、別の例としては、第1の潜像部(3A1)と第1の背景部(3A2)の第1の画像要素(11A)を同じ大きさの円形の画素とし、第1の潜像部(3A1)の第1の画像要素(11A)を配置するピッチ(P2A、P2B)を第1の背景部(3A2)の第1の画像要素(11A)を配置するピッチ(P1A、P1B)より小さくする構成がある。以上の構成で成る第1の潜像部(3A1)は、第1の背景部(3A2)より面積率が高いことで、第1の背景部(3A2)より濃い色の画像として形成される。
図6(c)は、第1の潜像部(3A1)に形成される潜像要素(12A)の構成の一例を示す図である。第1の潜像部(3A1)の第1の画像要素(11A)の上に積層する潜像要素(12A)は、白色であって、光遮断性を有するインキによって形成され、第1の画像要素(11A)と同じピッチ(P2A、P2B)で第1の画像要素(11A)が配置される方向(V2A、V2B)に配置されることにより、第1の画像要素(11A)の上に、重なって形成される。
なお、潜像要素(12A)の第2Aの方向(V2A)への大きさ(W3A)、第2Bの方向(V2B)への大きさ(W3B)とすると、潜像要素(12A)の大きさ(W3A、W3B)は、第1の画像要素(11A)の大きさ(W2A、W2B)と同じ大きさであってもよいし、異なる大きさであってもよいが、第1の領域(10A)に配置できる大きさとする。第1の画像要素(11A)と潜像要素(12A)が異なる大きさの場合、潜像要素(12A)は、第1の画像要素(11A)より大きくてもよいし、小さくてもよい。ただし、後述する第1の潜像部(3A1)と第1の背景部(3A2)が反射光下で等色に形成されるように、潜像要素(12A)の大きさを調整する必要がある。
潜像要素(12A)を形成するインキは、光遮断性を有するために、金属顔料を含むインキを用いる。また、第1の実施の形態において、潜像要素(12A)を形成する光遮断性を有するインキは、白色であり、光遮断性がある白色のインキの例としては、酸化チタンの金属顔料を配合したインキがある。
第1の潜像部(3A1)において、第1の画像要素(11A)と潜像要素(12A)が重なる配置は、同じ大きさの第1の画像要素(11A)と潜像要素(12A)が完全に一致して重なってもよく、図7(a)は、横線で示す第1の画像要素(11A)と縦線で示す潜像要素(12A)が同じ位置で一致して重なった状態を示している。また、図7(b)に示すように、同じ大きさの第1の画像要素(11A)と潜像要素(12A)の一部が重なる配置でもよい。また、異なる大きさの第1の画像要素(11A)と潜像要素(12A)を配置してもよく、図7(c)は、第1の画像要素(11A)が潜像要素(12A)より小さく、第1の画像要素(11A)の全体が潜像要素(12A)に覆われて配置された状態を示している。また、図7(d)は、潜像要素(12A)が第1の画像要素(11A)より小さく、第1の画像要素(11A)の上の一部に、潜像要素(12A)の全体が重なって配置された状態を示している。また、図7(e)に示すように、異なる大きさの第1の画像要素(11A)と潜像要素(12A)の一部が重なる配置でもよい。ただし、後述する第1の潜像部(3A1)と第1の背景部(3A2)が等色に形成されるように、第1の画像要素(11A)と潜像要素(12A)が重なる配置を調整する必要がある。
(等色関係の説明)
続いて、本発明の第1の潜像部(3A1)と第1の背景部(3A2)が、反射光下では等色に形成される構成及び理由について説明する。シアンインキを用い、第1の潜像部(3A1)の第1の画像要素(11A)を面積率40%、第1の背景部(3A2)の第1の画像要素(11A)を面積率30%で形成したとすると、第1の潜像部(3A1)は、第1の背景部(3A2)よりも面積率が高いことから、第1の背景部(3A2)より濃い青色の状態で形成される。続いて、白色で光遮断性を有するインキから成る潜像要素(12A)が、第1の潜像部(3A1)の第1の画像要素(11A)の上に積層されると、反射光下で第1の潜像部(3A1)は、第1の画像要素(11A)の濃い青色と潜像要素(12A)の白色が混色した色として視認される。このように、濃い青の色と白色が混色して、濃い青の色が淡くなることにより、反射光下で第1の潜像部(3A1)の色を第1の背景部(3A2)の青色と等色にすることができる。なお、本発明でいう等色とは、観察者が注意を払わずに画像を一瞥した場合に、同じ色彩であると感じられる程度に二つの色彩が近い状態を指すこととする。具体的には色差ΔE(本発明ではCIE1976L*a*b*色差式によるものとする)が7以下の数値までを本発明上の等色と定義する。
異なる面積率で形成される第1の潜像部(3A1)と第1の背景部(3A2)を反射光下で等色に形成するための条件は、用いるインキの色、第1の画像要素(11A)と潜像要素(12A)の面積率、第1の画像要素(11A)と潜像要素(12A)同士が重なる面積の割合及び潜像要素(12A)を形成するインキの混色具合(インキの濃度)により異なるため、予め等色になる条件を確認しておき、第1の潜像部(3A1)と第1の背景部(3A2)の印刷条件として適用すればよい。
例えば、第1の背景部(3A2)の第1の画像要素(11A)を面積率45%、第1の潜像部(3A1)の第1の画像要素(11A)を面積率60%で形成し、第1の潜像部(3A1)の潜像要素(12A)が、図7(a)に示す状態で形成したときに、第1の潜像部(3A1)と第1の背景部(3A2)が等色になる条件に対して、図7(b)に示すように、第1の画像要素(11A)と潜像要素(12A)の一部が重なると、潜像要素(12A)が重なる面積が小さくなることから、第1の画像要素(11A)を淡くする効果が低くなる。このような場合、第1の背景部(3A2)の第1の画像要素(11A)の面積率を45%より大きくするか又は潜像要素(12A)の濃度を上げる、具体的には、光遮断性を有する白色のインキの転移量を増やすことで、第1の潜像部(3A1)と第1の背景部(3A2)の等色関係を構成することができる。また、第1の背景部(3A2)の第1の画像要素(11A)を面積率45%、第1の潜像部(3A1)の第1の画像要素(11A)を面積率60%で形成し、潜像要素(12A)が、図7(a)に示す状態で形成したときに、第1の潜像部(3A1)と第1の背景部(3A2)が等色になる条件に対して、第1の背景部(3A2)の第1の画像要素(11A)の面積率を大きくした場合、図7(d)に示すように、第1の潜像部(3A1)の潜像要素(12A)を小さくするか又は潜像要素(12A)の濃度を下げる、具体的には、光遮断性を有する白色のインキの転移量を減らして、第1の画像要素(11A)が淡くなる度合いを低くすることで、第1の潜像部(3A1)と第1の背景部(3A2)の等色関係を構成することができる。また、第1の背景部(3A2)の第1の画像要素(11A)を面積率45%、第1の潜像部(3A1)の第1の画像要素(11A)を面積率60%で形成し、第1の潜像部(3A1)の潜像要素(12A)が、図7(a)に示す状態で形成したときに、第1の潜像部(3A1)と第1の背景部(3A2)が等色になる条件に対して、第1の背景部(3A2)の第1の画像要素(11A)の面積率を小さくした場合、図7(c)に示すように、第1の潜像部(3A1)の第1の画像要素(11A)の面積率を小さくするか又は第1の潜像部(3A1)の潜像要素(12A)の濃度を上げる、具体的には、光遮断性を有する白色のインキの転移量を増やすことで、第1の潜像部(3A1)と第1の背景部(3A2)の等色関係を構成することができる。
また、基材(2)の色が、光遮断性のインキの色である「白色」で同じ場合、第1の潜像部(3A1)に潜像要素(12A)を隙間なく配置した、いわゆる、ベタ模様の構成としてもよい。これは、光遮断性のインキが基材(2)と同じ色であるため、第1の潜像部(3A1)の第1の画像要素(11A)に重なっていない部分の潜像要素(12A)は反射光下で観察される印刷画像(3)に影響することなく、透過光下で第1の潜像部(3A1)を暗くする作用しか生じないためである。
(断面構造)
以上のとおり形成した印刷画像(3)についての積層状態を図8に示す。第1の背景部(3A2)には、第1の画像要素(11A)が基材(2)上に形成され、第1の潜像部(3A1)には、第1の画像要素(11A)の上に積層して潜像要素(12A)が形成されている。なお、本発明において、各画像要素(11A、12A)を形成する方法としては、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の印刷機や、レーザプリンタなどを用いることができる。
(第2の画像)
続いて、マゼンタ色で構成された第2の画像(3B)の構成について、図9を用いて説明する。なお、第2の画像(3B)が第1の画像(3A)に対して異なる点は、第2の画像(3B)を形成するインキの色と、第2の画像(3B)が現す図柄であって、その他の構成は第1の画像(3A)と同じであることから説明を一部省略する。
図9(a)は、第2の画像(3B)の構成を示す図であり、第2の画像(3B)は、第2の画像(3B)のうち、「紅葉」の図柄を構成する図9(b)に示す第2の潜像部(3B1)と、それらの背景を構成する図9(c)に示す第2の背景部(3B2)から成る。なお、印刷画像(3)をシアン、マゼンタ、イエローの三色に色分解したうちのマゼンタ色で構成される「紅葉」の図柄は、シアン色で構成される「流水と紅葉」の図柄と異なることから、第2の潜像部(3B1)は、第1の潜像部(3A1)の図柄と異なる。
第2の画像(3B)は、図9(a)の拡大図に示すように、規則的に複数配置された第2の領域(10B)から成り、第2の領域(10B)には、マゼンタインキを印刷することで第2の画像要素(11B)が形成され、第2の潜像部(3B1)と第2の背景部(3B2)は、マゼンタインキによって形成される第2の画像要素(11B)の面積率が異なる。詳細には、第2の潜像部(3B1)に形成される第2の画像要素(11B)の面積率は、第2の背景部(3B2)に形成される第2の画像要素(11B)の面積率より高い。また、第2の潜像部(3B1)の第2の画像要素(11B)の上には、光遮断性の白色のインキから成る潜像要素(12B)が重なる。
第2の潜像部(3B1)と第2の背景部(3B2)に形成される第2の画像要素(11B)と潜像要素(12B)は、第1の画像要素(11A)及び潜像要素(12A)と同様に、「画素」や「画線」の構成であり、大きさやピッチの範囲については、第1の画像要素(11A)と同様である。
以上の構成で成る第2の画像(3B)においても、マゼンタインキによって形成された第2の潜像部(3B1)と第2の背景部(3B2)の関係は、面積率の高い第2の潜像部(3B1)が反射光下で濃い紅色で形成されるが、更に、白色の潜像要素(12B)が重なることで、淡くなり、反射光下での第2の背景部(3B2)と等色に形成される。また、透過光下で第2の潜像部(3B1)は、光遮断性の白色のインキで形成された潜像要素(12B)が光を遮断することで、第2の画像要素(11B)を濃く(暗く)する作用が生じることで、第2の背景部(3B2)と濃淡差が生じ、紅色の濃淡で表現された「紅葉」の図柄を視認することができる。
(第3の画像)
続いて、イエロー色で構成された第3の画像(3C)の構成について、図10を用いて説明する。なお、第3の画像(3C)が第1の画像(3A)及び第2の画像(3B)に対して異なる点は、第3の画像(3C)を形成するインキの色と、第3の画像(3C)が現す図柄であって、その他の構成は第1の画像(3A)及び第2の画像(3B)と同じであることから説明を一部省略する。
図10(a)は、第3の画像(3C)の構成を示す図であり、第3の画像(3C)は、第3の画像(3C)のうち、「紅葉」の図柄を構成する図10(b)に示す第3の潜像部(3C1)と、それらの背景を構成する図10(c)に示す第3の背景部(3C2)から成る。なお、印刷画像(3)をシアン、マゼンタ、イエローの三色に色分解したうちのイエロー色で構成される「紅葉」の図柄は、シアン色で構成される「流水と紅葉」の図柄及びマゼンタ色で構成される「紅葉」の図柄と異なることから、第3の潜像部(3C1)は、第1の潜像部(3A1)及び第2の潜像部(3B1)の図柄と異なる。
第3の画像(3C)は、図10(a)の拡大図に示すように、規則的に複数配置された第3の領域(10C)から成り、第3の領域(10C)には、イエローインキを印刷することで第3の画像要素(11C)が形成され、第3の潜像部(3C1)と第3の背景部(3C2)は、イエローインキによって形成される第3の画像要素(11C)の面積率が異なる。詳細には、第3の潜像部(3C1)に形成される第3の画像要素(11C)の面積率は、第3の背景部(3C2)に形成される第3の画像要素(11C)の面積率より高い。また、第3の潜像部(3C1)の第3の画像要素(11C)の上には、光遮断性の白色のインキから成る潜像要素(12C)が重なる。
第3の潜像部(3C1)と第3の背景部(3C2)に形成される第3の画像要素(11C)と潜像要素(12C)は、第1の画像要素(11A)、第2の画像要素(11B)及び潜像要素(12A、12B)と同様に、「画素」や「画線」の構成であり、大きさやピッチの範囲については、第1の画像要素(11A)と同様である。
以上の構成で成る第3の画像(3C)においても、イエローインキによって形成された第3の潜像部(3C1)と第3の背景部(3C2)の関係は、面積率の高い第3の潜像部(3C1)が反射光下で濃い黄色で形成されるが、更に、白色の潜像要素(12C)が重なることで、淡くなり、反射光下での第3の背景部(3C2)と等色に形成される。また、透過光下で第3の潜像部(3C1)は、光遮断性の白色のインキで形成された潜像要素(12C)が光を遮断することで、第3の画像要素(11C)を濃く(暗く)する作用が生じることで、第3の背景部(3C2)と濃淡差が生じ、黄色の濃淡で表現された「紅葉」の図柄を視認することができる。
(反射光下の観察)
以上の構成で形成された透過潜像印刷物(1)を、図2(a)に示すように、反射光下で観察すると、各画像(3A、3B、3C)の潜像部(3A1、3B1、3C1)と背景部(3A2、3B2、3C2)は、等色に形成されていることから、「流水と紅葉」の図柄は視認されることなく、シアンインキ、マゼンタインキ及びイエローインキの色が混色した灰色の無彩色となり、一様な濃度の印刷画像(3)が視認される。
(透過光下の観察)
また、図2(b)に示すように、観察者(E2)と光源(L2)の間に透過潜像印刷物(1)を配置して透過光下で観察すると、各潜像部(3A1、3B1、3C1)と各背景部(3A2、3B2、3C2)の間に濃淡差が生じる。この際、シアン色の第1の潜像部(3A1)、マゼンタ色の第2の潜像部(3B1)及びイエロー色の第3の潜像部(3C1)が合成されてカラーの「流水と紅葉」の図柄を視認することができる。
本実施の形態の透過潜像印刷物(1)おいて、印刷画像(3)はシアン色、マゼンタ色、イエロー色の三つの色で構成された例について説明したが、本発明の印刷画像(3)を構成する色彩は、これに限定されるものではなく、二色の色で構成されてもよいし、更に多くの色彩で構成されてもよい。また、シアン色、マゼンタ色、イエロー色に限定されるものではなく、緑色、桃色、橙色、黒色等であってもよいが、反射光下で観察される画像が無彩色となる組合せ、すなわち減法混色によって無彩色となる組合せ、例えば補色関係の色やプロセスカラーなどを用いるのが好ましい。このような組合せによると、反射光下で無彩色の印刷画像が透過光下で有彩色の印刷画像となるため、変化が感じられやすく透過光下での潜像部の視認性が向上する。なお、シアン色、マゼンタ色、イエロー色のプロセスカラーを用いる構成は、各色の合成によって表現できる色の範囲が広いことから好ましい。
(画像要素が画線で構成された例)
以上の説明では、第1の画像要素(11A)、第2の画像要素(11B)、第3の画像要素(11C)及び潜像要素(12A、12B、12C)が円形の画素で構成された例であるが、続いて、これらの要素が画線で構成された例について説明する。なお、第1の画像(3A)を例に説明する。
図11は、第1の潜像部(3A1)の第1の画像要素(11A)が画線で構成された例を示す図であり、この場合、図11の拡大図に示すように、線幅(WL1)の第1の画像要素(11A)が、第1Aの方向(V1A)に第1Aのピッチ(P1A)で複数配置される。
図12は、第1の背景部(3A2)の第1の画像要素(11A)が画線で構成された例を示す図であり、この場合、図12の拡大図に示すように、線幅(WL2)の第1の画像要素(11A)が、第2Aの方向(V2A)に第2Aのピッチ(P2A)で複数配置される。なお、第1の潜像部(3A1)と第1の背景部(3A2)の第1の画像要素(11A)が配置される方向は、同じ方向であってよいし、異なる方向であってもよい。
各画像要素が円形の画素で構成される場合と同様に、第1の潜像部(3A1)に形成する第1の画像要素(11A)の面積率を、第1の背景部(3A2)に形成する第1の画像要素(11A)の面積率よりも高くするため、第1の潜像部(3A1)に形成する第1の画像要素(11A)の線幅(WL1)を、第1の背景部(3A2)に形成する第1の画像要素(11A)の線幅(WL2)より大きくし、同じピッチで配置するか、又は、第1の潜像部(3A1)に形成する第1の画像要素(11A)と第1の背景部(3A2)に形成する第1の画像要素(11A)を同じ線幅とし、第1Aのピッチ(P1A)を第2Aのピッチ(P2A)より小さくして配置する。
潜像要素(12A)が画線で構成される場合は、図11に示す第1の画像要素(11A)の構成と同様であり、線幅(WL3)の潜像要素(12A)が、第1の画像要素(11A)と同じ第1Aの方向(V1A)に第1Aのピッチ(P1A)で複数配置される。また、潜像要素(12A)は、第1の画像要素(11A)の上に重なって形成される。
第1の画像要素(11A)及び潜像要素(12A)を画線で形成する場合においても、印刷画像(3)の視認性(解像度)を考慮すると第1の画像要素(11A)及び潜像要素(12A)自体の形状や色が目視で視認できない大きさであることが好ましい。仮に、本発明の透過潜像印刷物(1)の形態が、銀行券、パスポートのような貴重印刷物の場合の一般的な観察距離(約40cm)においては、第1の画像要素(11A)及び潜像要素(12A)の線幅(WL1、WL2、WL3)は、10μmから500μm程度で形成する必要がある。また、第1の画像要素(11A)同士の間が大きくなり過ぎると、印刷画像(3)の視認性が低下することから、第1の画像要素(11A)同士の間の距離が500μm以下となる第1Aのピッチ(P1A)及び第2Aのピッチ(P2A)として、第1の画像要素(11A)を配置することが好ましい。なお、各要素が画素で構成される場合で説明したように、第1の潜像部(3A1)と第1の背景部(3A2)を等色にするために、画線で構成される第1の潜像部(3A1)の第1の画像要素(11A)と、第1の背景部(3A2)の第1の画像要素(11A)の面積率、第1の潜像部(3A1)の第1の画像要素(11A)と潜像要素(12A)同士が重なる面積の割合等を調整する必要がある。以上が、第1の画像要素(11A)及び潜像要素(12A)が画線で構成された例の説明である。
(階調のカラー画像の構成)
本発明の透過潜像印刷物(1)は、透過光下の観察でカラーの印刷画像(3)が視認されるだけでなく、印刷画像(3)を構成する各色を階調表現することもでき、以下、その構成について説明する。
図13は、第1の領域(10A)において、第1の潜像部(3A1)の面積率が異なる構成を示す図であり、図13(a)は、第1の潜像部(3A1)の左側から右側にかけて徐々に面積率が小さくなる構成を示している。この場合、図13(a)に示す第1の潜像部(3A1)において、透過光下で視認できる色は、左側から右側にかけて淡くなり、第1の領域(10A)を形成するインキの色の階調表現をすることができる。第1の潜像部(3A1)において、透過光下で視認できる色が、左側から右側にかけて淡くなる別の構成の例として、図13(a)に示す第1の潜像部(3A1)に対して、図13(b)に示すように、段階的に面積率を異ならせてもよい。また、図13(b)示す第1の潜像部(3A1)の位置を、図13(c)に示すように異ならせてもよい。また、図13(a)に示す第1の潜像部(3A1)を分割して、図13(d)に示すように、第1の領域(10A)の中に、複数の第1の潜像部(3A1)を設けてもよい。なお、図13(a)から図13(d)は、第1の潜像部(3A1)の領域を示す図であって、第1の潜像部(3A1)には、第1の画像要素(11A)が複数配置されている。
図13では、第1の領域(10A)において、第1の領域(10A)を形成するインキの色が左側から右側にかけて淡くなる構成について説明したが、印刷画像(3)が現す図柄に応じて、第1の領域(10A)内の第1の潜像部(3A1)の面積率を異ならせればよい。なお、第1の領域(10A)とは異なる色で構成される領域、例えば、第2の領域(10B)及び第3の領域(10C)についても、同様にして、階調表現することができる。
第1の実施の形態の透過潜像印刷物(1)の印刷画像(3)について、図3に示すように、万線状に分割された領域(10A、10B、10C)から成る構成について説明したが、印刷画像(3)を構成する領域(10A、10B、10C)は、図14(a)に示す方向に、万線状に分割された構成でもよい。また、図14(b)に示すように、斜め方向に、万線状に分割された構成でもよい。また、万線状に分割された領域(10A、10B、10C)は、直線に限定されるものではなく、図14(c)に示す鋸状や図14(d)に示す波線状でもよい。なお、図14(c)及び図14(d)は、印刷画像(3)を構成する領域(10A、10B、10C)の例を示したもので、「流水と紅葉」の図柄は説明の便宜上、省略している。
また、印刷画像(3)を構成する領域は、図15に示すように、格子状に分割された構成でもよく、図15(a)は、印刷画像(3)を構成する領域(10A、10B、10C)が、正方形であり、正方形の領域(10A、10B、10C)が一定の間隔で配置された状態を示している。印刷画像(3)を構成する領域を格子状に配置する場合、図15(a)に示す構成に限定されるものではなく、例えば、図15(b)のように三角形であってもよいし、図15(c)のように円形であってもよいし、更に、領域同士は接していても、近接していてもよい。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態の透過潜像印刷物(1)は、印刷画像(3)が反射光下と透過光下の観察で、異なる画像が視認できる透過潜像印刷物(1)である。透過光下で視認できる画像の構成は、第1の実施の形態で説明した印刷画像(3)の構成と同じであるため、説明の一部を省略する。
図16は、第2の実施の形態の印刷画像(3)の構成を示す図であり、第2の実施の形態の印刷画像(3)は、図16(b)に示す透過光下で視認できる「流水と紅葉」の図柄を有する画像(以下「透過画像(3−1)」という。)と、図16(c)に示す反射光下で視認できる「蝶」の図柄を有する画像(以下「反射画像(3−2)」という。)から成る。本実施の形態において、反射画像(3−2)は、「蝶」の図柄を有する画像の例について説明するが、反射光下で視認できる図柄は、他の図柄であってもよいし、文字、記号等、特に限定されるものではない。第2の実施の形態において、透過画像(3−1)は、第1の実施の形態で説明した印刷画像(3)の構成と同様であり、透過光下で観察した際に、透過画像(3−1)が有するカラーで表現された「流水と紅葉」の図柄を視認することができる。
図16(c)は、反射画像(3−2)の構成を示す図であり、第2の実施の形態において、反射画像(3−2)は、基材(2)と異なる色のインキで形成されるが、ここでは、ブラックインキを用いて形成する例について説明する。図16(c)に示す反射画像(3−2)は、ブラックインキで形成される反射画像(3−2)を構成する領域(20)が、万線状に一定のピッチ(P)で複数設けられた例を示しており、図16(a)の拡大図に示すように、透過画像(3−1)を構成する領域(10A、10B、10C)と交互に一定のピッチ(P)で配置される。
第2の実施の形態において、反射画像(3−2)を構成する領域(20)の幅(X1)は、特に制約がないが、印刷画像(3)の視認性(解像度)を考慮すると、領域(20)を目視で観察した際に、捉えられない大きさとすることが好ましい。仮に、本発明の透過潜像印刷物(1)の形態が、銀行券、パスポートのような貴重印刷物の場合の一般的な観察距離(約40cm)において、目視で捉えられないための領域(20)の大きさ(X1)として、1mm以下とすることが好ましい。また、本発明の透過潜像印刷物(1)の形態が、銀行券、パスポートのような貴重印刷物の場合の印刷画像(3)の視認性(解像度)を考慮すると、各領域(10A、10B、10C、20)が配置される1周期分の大きさの和、図16の場合、第1の領域の幅(W1)、第2の領域の幅(W2)、第3の領域の幅(W3)及び反射画像(3−2)を構成する領域(20)の和を、3mm以下とすることが好ましい。
図17(a)は、反射画像(3−2)の構成を示す図であり、反射画像(3−2)は、反射画像(3−2)のうち、「蝶」の図柄を構成する図17(b)に示す反射画像部(3−2a1)と、透過光下で反射画像部(3−2a1)をカモフラージュする図17(c)に示すカモフラージュ部(3−2a2)から成る。図17(a)に示す反射画像(3−2)は、図17(a)の拡大図に示すように、規則的に複数配置された領域(20)から成り、反射画像(3−2)を構成する領域(20)には、ブラックインキを印刷することで反射画像要素(21A)が形成され、反射画像部(3−2a1)とカモフラージュ部(3−2a2)は、ブラックインキによって形成される反射画像要素(21A)の面積率が異なる。また、カモフラージュ部(3−2a2)は、光遮断性の白色のインキから成るカモフラージュ要素(22A)が、反射画像要素(21A)の上に重なる。
(反射画像部)
図18は、反射画像部(3−2a1)の構成を示す図である。図18の例では、反射画像要素(21A)が円形の画素で構成された例であり、この場合、図18の拡大図に示すように、円形の画素で構成された反射画像要素(21A)が、第1aの方向(V1a)に第1aのピッチ(P1a)、第1bの方向(V1b)に第1bのピッチ(P1b)で複数配置される。なお、反射画像要素(21A)が配置される第1aの方向(V1a)と第1bの方向(V1b)は、異なる方向であれば、図18に示す方向に限定されるものではない。反射画像要素(21A)は、領域(20)に配置できる大きさで形成されればよいが、透過画像(3−1)を構成する画像要素と同様に、印刷画像(3)の視認性(解像度)を考慮すると反射画像要素(21A)自体の形状や色が目視で視認できない大きさであることが好ましい。仮に、本発明の透過潜像印刷物(1)の形態が、銀行券、パスポートのような貴重印刷物の場合の一般的な観察距離(約40cm)においては、反射画像要素(21A)の第1aの方向(V1a)への大きさ(Wa1)及び第1bの方向(V1b)への大きさ(Wb1)は、10μmから500μmとすることが好ましい。また、本発明の透過潜像印刷物(1)の形態が、銀行券、パスポートのような貴重印刷物の場合の一般的な観察距離(約40cm)において、反射画像要素(21A)同士の間が大きくなり過ぎると、印刷画像(3)の視認性が低下することから、反射画像要素(21A)同士の間の距離が500μm以下となる第1aのピッチ(P1a)及び第1bのピッチ(P1b)として、反射画像要素(21A)を配置することが好ましい。
(カモフラージュ部)
図19は、カモフラージュ部(3−2a2)の構成を示す図であり、図19(b)及び図19(c)は、図19(a)に示すカモフラージュ部(3−2a2)の一部拡大図である。カモフラージュ部(3−2a2)は、前述のとおり、ブラックインキを印刷することで形成された図19(b)に示す反射画像要素(21A)の上に、光遮断性の白色のインキを印刷することで形成された図19(c)に示すカモフラージュ要素(22A)が重なって成る。図19(b)及び図19(c)の例もまた、反射画像要素(21A)とカモフラージュ要素(22A)が、円形の画素で構成された例であり、この場合、図19(b)及び図19(c)に示すように、円形の画素で構成された反射画像要素(21A)とカモフラージュ要素(22A)が、第2aの方向(V2a)に第2aのピッチ(P2a)、第2bの方向(V2b)に第2bのピッチ(P2b)で複数配置される。なお、反射画像要素(21A)が配置される第2aの方向(V2a)と第2bの方向(V2b)は、異なる方向であれば、図19に示す方向に限定されるものではない。
前述のとおり、カモフラージュ部(3−2a2)に配置される反射画像要素(21A)の面積率は、反射画像部(3−2a1)に配置される反射画像要素(21A)の面積率とは異なり、カモフラージュ部(3−2a2)に配置される反射画像要素(21A)の面積率は、反射画像部(3−2a1)に配置される反射画像要素(21A)の面積率よりも低い。この理由としては、後述する光遮断性を有する白色のインキによるカモフラージュ要素(22A)が積層されることで、透過光下で、カモフラージュ部(3−2a2)の画像濃度が濃く(暗く)なり、反射画像部(3−2a1)と等色になることで「蝶」の図柄を消失させるためであり、下層のカモフラージュ部(3−2a2)に形成する反射画像要素(21A)は、あらかじめ、反射画像部(3−2a1)の反射画像要素(21A)より面積率を低く設計しておく必要があるからである。
カモフラージュ部(3−2a2)の面積率を反射画像部(3−2a1)の面積率より小さくするための具体的な例としては、カモフラージュ部(3−2a2)の反射画像要素(21A)の円形の画素の大きさを、反射画像部(3−2a1)の反射画像要素(21A)より小さくし、同じピッチで配置する構成がある。この場合、カモフラージュ部(3−2a2)の反射画像要素(21A)の大きさ(Wa2、Wb2)を反射画像部(3−2a1)の反射画像要素(21A)の大きさ(Wa1、Wb1)より小さくすることで、カモフラージュ部(3−2a2)の面積率を反射画像部(3−2a1)の面積率より小さくすることができる。また、別の例としては、反射画像部(3−2a1)とカモフラージュ部(3−2a2)の反射画像要素(21A)を同じ大きさの円形の画素とし、カモフラージュ部(3−2a2)の反射画像要素(21A)を配置するピッチ(P2a、P2b)を反射画像部(3−2a1)の反射画像要素(21A)を配置するピッチ(P1a、P1b)より大きくする構成がある。以上の構成で成るカモフラージュ部(3−2a2)は、反射画像部(3−2a1)より面積率が小さいことで、反射画像部(3−2a1)より淡い色の画像として形成される。
カモフラージュ要素(22A)の第2aの方向(V2a)への大きさ(Wa3)、第2bの方向(V2b)への大きさ(Wb3)とすると、カモフラージュ要素(22A)の大きさ(Wa3、Wb3)は、反射画像要素(21A)の大きさ(Wa2、Wb2)と同じ大きさであってもよいし、異なる大きさであってもよく、反射画像要素(21A)とカモフラージュ要素(22A)が異なる大きさの場合、カモフラージュ要素(22A)は、反射画像要素(21A)より大きくてもよいし、小さくてもよいが、後述する反射画像部(3−2a1)とカモフラージュ部(3−2a2)が透過光下で等色に形成されるように、カモフラージュ要素(22A)の大きさを調整する必要がある。
(反射光下と透過光下での作用効果)
続いて、以上の構成で成る反射画像部(3−2a1)とカモフラージュ部(3−2a2)による、反射光下と透過光下での作用効果について説明する。ブラックインキにより形成した反射画像部(3−2a1)を面積率40%、カモフラージュ部(3−2a2)を面積率30%で形成したとすると、カモフラージュ部(3−2a2)は、反射画像部(3−2a1)よりも面積率が低いことから、反射画像部(3−2a1)より淡い灰色の状態で形成される。続いて、光遮断性を有する白色のインキから成るカモフラージュ要素(22A)が、反射画像要素(21A)の上に積層されると、反射光下でカモフラージュ部(3−2a2)は、反射画像要素(21A)の淡い灰色とカモフラージュ要素(22A)の白色が混色した色として、より淡い灰色として視認され、反射光下での反射画像部(3−2a1)との濃淡差(コントラスト)が大きくなる。また、透過光下でカモフラージュ部(3−2a2)は、光遮断性のインキで形成されたカモフラージュ要素(22A)が光を遮断することで、淡い灰色のカモフラージュ部(3−2a2)を濃く(暗く)する作用が生じることで、反射画像部(3−2a1)と等色になり、「蝶」の図柄が消失する効果が得られる。
本発明において、反射画像要素(21A)が異なる面積率で形成される反射画像部(3−2a1)とカモフラージュ部(3−2a2)を透過光下で等色に形成するための条件は、用いるインキの色、反射画像部(3−2a1)とカモフラージュ部(3−2a2)の反射画像要素(21A)の面積率、反射画像要素(21A)とカモフラージュ要素(22A)同士が重なる面積の割合及びカモフラージュ要素(22A)を形成するインキの混色具合により異なるため、あらかじめ、等色になる条件を確認しておき、反射画像部(3−2a1)とカモフラージュ部(3−2a2)の印刷条件として適用すればよい。
例えば、反射画像部(3−2a1)の反射画像要素(21A)を面積率45%、カモフラージュ部(3−2a2)の反射画像要素(21A)を面積率35%で形成し、カモフラージュ要素(22A)が、図20(a)に示す状態で形成したときに、反射画像部(3−2a1)とカモフラージュ部(3−2a2)が透過光下で等色になる条件に対して、反射画像部(3−2a1)の面積率を小さくすると、透過光下で等色にするためにカモフラージュ部(3−2a2)の濃く(暗く)する度合いを低くする必要がある。この場合、図20(b)に示すように、カモフラージュ要素(22A)の面積率を小さくし、カモフラージュ部(3−2a2)を濃く(暗く)する度合いを低くすることで、反射画像部(3−2a1)とカモフラージュ部(3−2a2)の透過光下での等色関係を構成することができる。また、図20(a)に示す反射画像要素(21A)とカモフラージュ要素(22A)の配置において、カモフラージュ要素(22A)を形成するインキの膜厚を減らして、カモフラージュ部(3−2a2)を濃く(暗く)する度合いを低くすることで、反射画像部(3−2a1)とカモフラージュ部(3−2a2)の透過光下での等色関係を構成することもできる。
一方、反射画像部(3−2a1)の反射画像要素(21A)を面積率45%、カモフラージュ部(3−2a2)の反射画像要素(21A)を面積率35%で形成し、カモフラージュ要素(22A)が、図20(a)に示す状態で形成したときに、反射画像部(3−2a1)とカモフラージュ部(3−2a2)が透過光下で等色になる条件に対して、反射画像部(3−2a1)の面積率を大きくすると、透過光下で等色にするためにカモフラージュ部(3−2a2)の濃く(暗く)する度合いを高くする必要がある。この場合、図20(a)に示す反射画像要素(21A)とカモフラージュ要素(22A)の配置において、カモフラージュ要素(22A)を形成するインキの膜厚を増やして、カモフラージュ部(3−2a2)を濃く(暗く)する度合いを高くすることで、反射画像部(3−2a1)とカモフラージュ部(3−2a2)の透過光下での等色関係を構成することができる。また、カモフラージュ部(3−2a2)の反射画像要素(21A)の面積率を大きくしてもよいし、それと同時にカモフラージュ要素(22A)の面積率を大きくしてもよい。
また、基材(2)の色が、カモフラージュ要素(22A)を形成する光遮断性のインキの色である「白色」で同じ場合、カモフラージュ部(3−2a2)にカモフラージュ要素(22A)を隙間なく配置した、いわゆる、ベタ模様の構成としてもよい。これは、光遮断性のインキが基材(2)と同じ色であるため、カモフラージュ要素(22A)が反射光下で視認される「蝶」の図柄の色彩に影響することなく、透過光下でカモフラージュ部(3−2a2)を暗くする作用しか生じないためである。また、基材(2)の色が白色とは異なり有色の場合でも、基材(2)の色と基材(2)に白色を印刷した部分の色との色差ΔEが7以下の場合には、反射光下での基材(2)の色による印刷画像(3)の色への影響が少ないため、カモフラージュ要素(22A)を隙間なく配置したベタ模様としても、透過光下で反射画像部(3−2a1)とカモフラージュ部(3−2a2)を等色に形成することができる。なお、基材(2)の色による印刷画像(3)の色への影響が少ない場合、図20(c)に示すように、カモフラージュ要素(22A)の一部が反射画像要素(21A)の全体を覆って重なる配置又は図20(d)に示すように、反射画像要素(21A)とカモフラージュ要素(22A)の一部が重なる配置でもよい。
以上の構成で成る反射画像(3−2)を反射光下で観察すると、反射画像部(3−2a1)とカモフラージュ部(3−2a2)の反射画像要素(21A)の面積率差による濃淡に加え、光遮断性の白色のインキから成るカモフラージュ要素(22A)が形成されることで、図21(a)に示すブラックインキの色の濃淡が強調された「蝶」の図柄を視認することができる。この際、透過画像(3−1)は、前述のとおり、各潜像部(3A1、3B1、3C1)と各背景部(3A2、3B2、3C2)は、反射光下で等色に形成されていることから、「流水と紅葉」の図柄は視認することができない。なお、透過画像(3−1)は、シアンインキ、マゼンタインキ、イエローインキによって形成されることから、混色した無彩色の灰色又は黒色として視認される中で、反射画像(3−2)のブラックインキの濃淡差で表現された「蝶」の図柄を視認することができる。
また、透過光下で反射画像(3−2)のカモフラージュ部(3−2a2)は、カモフラージュ要素(22A)が光を遮断することで、濃く(暗く)する作用が生じて、反射光下で濃く視認される反射画像部(3−2a1)と等色になり、「蝶」の図柄が消失する。これに対して、透過画像(3−1)は、前述のとおり、各潜像部(3A1、3B1、3C1)と各背景部(3A2、3B2、3C2)において濃淡差が生じ、図21(b)に示すカラーの「流水と紅葉」の図柄を視認することができる。
第2の実施の形態の透過潜像印刷物(1)について、反射画像(3−2)を構成する反射画像要素(21A)及びカモフラージュ要素(22A)は、円形の画素で構成された例について説明したが、第1の実施の形態で説明した透過画像(3−1)を構成する画像要素と同様に、他の形状の画素でもよいし、画線で構成されてもよい。また、図13に示す透過光下で視認される画像を階調表現する構成と同様に、反射画像(3−2)を構成する領域(20)において、反射画像部(3−2a1)の面積率を異ならせることで、反射光下で視認される「蝶」の図柄を階調表現することもできる。
第1の実施の形態及び第2の実施の形態において、各画像要素(11A、11B、11C、21A)が単一のインキを用いて形成する例を示したが、異なる色のインキから成る画像要素を積層して形成してもよい。具体例として、第1の実施の形態においてシアンインキで形成した第1の画像要素(11A)によって青色の第1の画像(3A)を形成する構成に対して、第1の画像(3A)を紫色の画像とする場合について説明する。
図22(a)は、第1の画像(3A)の第1の背景部(3A2)の構成を示す図であり、図22(b)に示すシアンインキを印刷することで形成された第1aの画像要素(11A´)が複数配置されて成る。なお、第1aの画像要素(11A´)の色(シアンインキ)は、紫色を色分解した青と赤のうちの一方の色に相当する。図22(b)の例では、第1aの画像要素(11A´)が円形の画素で構成された例であり、円形の画素で構成された第1aの画像要素(11A´)が、第1Aの方向(V1A)に第1Aのピッチ(P1A)、第1Bの方向(V1B)に第1Bのピッチ(P1B)で複数配置される。なお、第1aの画像要素(11A´)が配置される第1Aの方向(V1A)と第1Bの方向(V1B)は、異なる方向であれば、図22(b)に示す方向に限定されるものではない。
図22(c)は、第1の背景部(3A2)に配置されるマゼンタインキを印刷することで形成される第1bの画像要素(11A´´)の構成の一例を示す図である。なお、第1bの画像要素(11A´´)の色(マゼンタインキ)は、紫色を色分解した青と赤のうちの他方の色に相当する。第1bの画像要素(11A´´)は第1の背景部(3A2)に配置される第1aの画像要素(11A´)と同じピッチ(P1A、P1B)で第1aの画像要素(11A´)が配置される方向(V1A、V1B)に配置されることにより、第1aの画像要素(11A´)の上に、重なって形成される。このように、シアンインキによる第1aの画像要素(11A´)の上にマゼンタインキによる第1bの画像要素(11A´´)が重なることで混色し紫色として視認される。
図23(a)は、第1の画像(3A)の第1の潜像部(3A1)の構成を示す図であり、第1の潜像部(3A1)は、図23(b)に示すように、シアンインキを印刷することで形成された第1aの画像要素(11A´)が複数配置されて成る。図23(b)の例では、第1aの画像要素(11A´)が円形の画素で構成された例であり、円形の画素で構成された第1aの画像要素(11A´)が、第2Aの方向(V2A)に第2Aのピッチ(P2A)、第2Bの方向(V2B)に第2Bのピッチ(P2B)で複数配置される。なお、第1aの画像要素(11A´)が配置される第2Aの方向(V2A)と第2Bの方向(V2B)は、異なる方向であれば、図23(b)に示す方向に限定されるものではない。また、第1の潜像部(3A1)の第1aの画像要素(11A´)が配置される第2Aの方向(V2A)と第2Bの方向(V2B)は、第1の背景部(3A2)の第1aの画像要素(11A´)及び第1bの画像要素(11A´´)が配置される第1Aの方向(V1A)と第1Bの方向(V1B)と同じ方向であってもよいし、異なる方向でもよい。
図23(c)は、第1の潜像部(3A1)に配置されるマゼンタインキを印刷することで形成される第1bの画像要素(11A´´)の構成の一例を示す図である。第1bの画像要素(11A´´)は第1の潜像部(3A1)に配置される第1aの画像要素(11A´)と同じピッチ(P2A、P2B)で第1aの画像要素(11A´)が配置される方向(V2A、V2B)に配置されることにより、第1aの画像要素(11A´)の上に、重なって形成される。
このように、シアンインキによる第1aの画像要素(11A´)の上にマゼンタインキによる第1bの画像要素(11A´´)が重なることで混色し紫色として視認される。なお、第1の潜像部(3A1)に配置される第1aの画像要素(11A´)は、第1の実施の形態と同様に、第1の背景部(3A2)に配置される第1aの画像要素(11A´)の面積率より高く、第1の潜像部(3A1)に配置される第1bの画像要素(11A´´)もまた、第1の背景部(3A2)に配置される第1bの画像要素(11A´´)の面積率より高い。この構成によって、第1の潜像部(3A1)は、第1の背景部(3A2)より、濃い紫色の画像として形成される。
第1の潜像部(3A1)は、更に、シアンインキによる第1aの画像要素(11A´)の上に、マゼンタインキによる第1bの画像要素(11A´´)が重なり、更にその上に、光遮断性の白色のインキを印刷することで形成された潜像要素(12A)が重なって成る。図23(d)は、第1の背景部(3A2)に配置される潜像要素(12A)の構成の一例を示す図である。潜像要素(12A)は、白色であって、光遮断性を有するインキによって形成され、所定のピッチで複数配置される。より詳細には、潜像要素(12A)は、第1の潜像部(3A1)に配置される第1aの画像要素(11A´)と同じピッチ(P2A、P2B)で第1aの画像要素(11A´)が配置される方向(V2A、V2B)に配置されることにより、第1aの画像要素(11A´)の上に、重なって形成される。
なお、潜像要素(12A)の第2Aの方向(V2A)への大きさ(WA3)、第2Bの方向(V2B)への大きさ(WB3)とすると、潜像要素(12A)の大きさ(WA3、WB3)は、前述の実施の形態で説明したとおり、第1aの画像要素(11A´)の大きさ(WA2´、WB2´)と同じ大きさであってもよいし、異なる大きさであってもよいが、第1の領域(10A)に配置できる大きさとする。第1aの画像要素(11A´)と潜像要素(12A)が異なる大きさの場合、潜像要素(12A)は、第1aの画像要素(11A´)より大きくてもよいし、小さくてもよいが、前述のとおり、第1の潜像部(3A1)と第1の背景部(3A2)が透過光下で等色に形成されるように、潜像要素(12A)の大きさを調整する必要がある。
以上、説明した第1aの画像要素(11A´)と第1bの画像要素(11A´´)の構成以外の、第1aの画像要素(11A´)と第1bの画像要素(11A´´)の面積率の関係、等色関係の調整などは、前述の実施の形態で説明したとおりである。第1の潜像部(3A1)と第1の背景部(3A2)が透過光下で等色関係となる構成であれば、第1aの画像要素(11A´)と第1bの画像要素(11A´´)の配置は、完全に重なる必要はなく、一部が重なる構成でもよいし、更には、第1aの画像要素(11A´)と第1bの画像要素(11A´´)の大きさが異なる構成でもよい。
また、第2の実施の形態における反射画像(3−2)を紫色の画像とする場合も、同様にして、シアンインキで形成された画像要素(図示せず)とマゼンタインキで形成された画像要素(図示せず)を積層して紫色の画像とすればよい。ここでは、第1の画像(3A)及び反射画像(3−2)を二つの画像要素の混色で構成する例ついて説明したが、第2の画像(3B)、第3の画像(3C)もまた、異なる色の画像要素を積層する構成としてもよい。
以下、前述の発明を実施するための形態にしたがって、具体的に作製した透過潜像印刷物(1)の実施例について詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1は、第1の実施の形態の構成で成る透過潜像印刷物(1)であり、具体的には、 図1から図7に示す構成の透過潜像印刷物(1)を作製した。基材(2)には、白色のカラーコピー用上質紙(坪量79g/m2、白色度90%、紙厚95μm)を用い、印刷画像(3)は、PC用のグラフィック用ソフトウェアを用いて、以下に説明する画像データを作成し、レーサープリンタにより、色材を付与した。
図3に示す第1の領域(10A)の幅(W1)、第2の領域(10B)の幅(W2)及び第3の領域(10C)の幅(W3)は、いずれも500μmとし、各領域を配置するピッチ(P)は、1500μmとした。
第1の背景部(3A2)の第1の画像要素(11A)は、図5に示すような円形の画素で、面積率19%とし、シアンインキを用いて形成した。なお、第1の画像要素の大きさ(W1A、W1B)の設計値は、65μmであり、第1の画像要素のピッチ(P1A、P1B)の設計値は、125μmである。第1の潜像部(3A1)の第1の画像要素(11A)は、図6に示すような円形の画素で、面積率40%とし、シアンインキを用いて形成した。なお、第1の画像要素の大きさ(W2A、W2B)の設計値は、90μmであり、第1の画像要素のピッチ(P1A、P1B)の設計値は、125μmである。また、第1の潜像部(3A1)の潜像要素(12A)は、第1の潜像部(3A1)のすべてを覆うベタ模様の構成(画線面積率100%)で、酸化チタンを含む白色インキを用いて形成した。なお、基材(2)の色味と基材(2)へ白色ベタを印刷した部分の色味との色差ΔEは1.69(分光測色計による測定値)であった。
第2の背景部(3B2)の第2の画像要素(11B)は、円形の画素で、面積率19%とし、マゼンタインキを用いて形成した。なお、第2の画像要素の大きさの設計値は、65μmであり、第2の画像要素のピッチの設計値は、125μmである。また、第2の潜像部(3B1)の第2の画像要素(11B)は、円形の画素で、面積率30%とし、マゼンタインキを用いて形成した。なお、第2の画像要素の大きさの設計値は、75μmであり、第2の画像要素のピッチの設計値は、125μmである。第2の潜像部(3B1)の潜像要素(12B)は、第2の潜像部(3B1)のすべてを覆うベタ模様の構成(画線面積率100%)で、酸化チタンを含む白色インキを用いて形成した。
第3の背景部(3C2)の第3の画像要素(11C)は、円形の画素で、面積率30%とし、イエローインキを用いて形成した。なお、第3の画像要素の大きさの設計値は、75μmであり、第3の画像要素のピッチの設計値は、125μmである。また、第3の潜像部(3C1)の第3の画像要素(11C)は、円形の画素で、面積率50%とし、イエローインキを用いて形成した。なお、第3の画像要素の大きさの設計値は、105μmであり、第3の画像要素のピッチの設計値は、125μmである。第3の潜像部(3C1)の潜像要素(12C)は、第3の潜像部(3C1)のすべてを覆うベタ模様の構成(画線面積率100%)で、酸化チタンを含む白色インキを用いて形成した。
以上のように作製した透過潜像印刷物(1)を、図2(a)に示す反射光下で観察すると、第1の画像(3A)を構成する第1の潜像部(3A1)と第1の背景部(3A2)は、等色であり、「流水と紅葉」の図柄を視認することはできなかった。同様に、第2の画像(3B)を構成する第2の潜像部(3B1)と第2の背景部(3B2)及び第3の画像(3C)を構成する第3の潜像部(3C1)と第3の背景部(3C2)も等色であり、反射光下で「流水と紅葉」の図柄を視認することはできなかった。一方、透過潜像印刷物(1)を、図2(b)に示す透過光下で観察すると、各潜像部(3A1、3B1、3C1)と各背景部(3A2、3B2、3B2)の濃度差が生じるとともに、各潜像部(3A1、3B1、3C1)が合成されてカラーの「流水と紅葉」の図柄を視認することができた。