本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
(第一の実施の形態)
第一の実施の形態では、印刷模様(4)が情報画像(5)と背景画像(6)のみから成り、かつ背景画像(6)を第二のインキによって形成した本発明の透過潜像印刷物の最も基本的な形態について説明する。
図1に、本発明における透過潜像印刷物(1)を示す。透過潜像印刷物(1)は、基材(2)の印刷模様領域(3)に、基材(2)と異なる複数の色彩を有する印刷模様(4)が形成されて成る。印刷模様領域(3)は、基材上の少なくとも一部の表裏同じ位置にあり、光透過性を有する。第一の実施の形態における印刷模様(4)が表す画像は、五つの花びらを有した桜の花の画像である。なお、図1において、桜の五つの花びらが視認される状態で示しているが、実際には塗りつぶした三つの桜の花びらのみが視認され、点線で示した二つの桜の花びらは不可視である。
本発明における透過潜像印刷物(1)を構成する基材(2)は、上質紙やコート紙、透明フィルムやプラスティックのように、光を透過する特性、いわゆる光透過性を有する必要がある。不透明なプラスティックや金属では透過光下での効果は得られない。基材(2)の色彩については特に制約はない。
図2に、印刷模様(4)の構成の概要を示す。印刷模様(4)は、少なくとも二つの画像によって構成されて成る。二つの画像のうち、一つは三つの花びらを表した情報画像(5)であり、もう一つは二つの花びらを表した背景画像(6)である。それぞれの画像は異なるインキによって形成される。具体的には情報画像(5)は第一のインキによって形成され、背景画像(6)は第二のインキによって形成される。
情報画像(5)と背景画像(6)とは反射光下において色相は同じだが、明度が異なるために色彩が異なる。なお、本明細書中においては、白や灰、黒等の無彩色も色相として捉え、白、灰、黒は、同じ一つの色相であるが、明度のみが異なる別の色彩として扱う。
より具体的には、第二のインキで形成される背景画像(6)は、基材(2)と等色であり、そのため反射光下で不可視である。一方、第一のインキで形成される情報画像(5)は、基材(2)と同じ色相で、かつ明度が低い色彩である必要があり、そのため情報画像(5)は基材(2)よりも暗い色彩として可視の状態にある。例えば、基材(2)が白色である場合、背景画像(6)は白色である必要があり、一方の情報画像(5)は白色よりも明度が低い、灰色から黒色の色彩である必要がある。
ここで、「情報画像(5)は、基材(2)よりも明度が低い」とは、まず、それぞれの相対的な関係を満たすことが絶対条件であるが、その具体的な数値としては、基材(2)と情報画像(5)の明度差は、L*a*b*表色系の明度L*の値において、情報画像(5)の明度L*が基材(2)の明度L*よりも5以上低い必要があり、情報画像(5)の反射光下での視認性を高める観点から、10以上異なっていることが望ましい。
加えて、第二のインキで形成される背景画像(6)と第一のインキで形成される情報画像(5)とは、それぞれ光透過性が異なる。具体的には情報画像(5)は背景画像(6)よりも光透過性が高い必要がある。これは本発明の透過潜像印刷物(1)の効果を実現する上で不可欠な要件である。情報画像(5)と背景画像(6)の光透過性の差が大きければ大きいほど、本発明の透過潜像印刷物の効果は高まる。
二つの画像の光透過性の差を大きくする方法としては、大別して情報画像(5)の光透過性を高める方法と、背景画像(6)の光透過性を低くする方法とがある。情報画像(5)の光透過性を高める方法として、第一のインキに従来技術同様に透かしインキ(浸透型インキ)に着色染料や着色顔料を混合したインキ、いわゆる「有色浸透インキ」を用いる方法があり、背景画像(6)の光透過性を低くする方法として、第二のインキに光遮断性に優れた金属顔料を配合する方法がある。これらの具体的な方法については後記する。
以上のように、第二のインキで形成される背景画像(6)は、基材(2)と等色であり、第一のインキで形成される情報画像(5)は、基材(2)と同じ色相であって、基材(2)の色彩よりも明度が低く、かつ情報画像(5)は背景画像(6)よりも高い光透過性を有することが、それぞれの画像を構成する上での必須要件である。
第一の実施の形態は、網点で形成してもよく、画線や画素で形成しても良い。本発明でいう網点とは印刷の最小単位を表現する画像要素を指す。また、画線とは印刷の最小単位である網点を一定の距離隙間無く連続して配置した画像要素であって、点線や破線や分断線、分岐線等が含まれる。最後に、画素とは印刷の最小単位である網点を一定の大きさで一塊にした画像要素であって、円や楕円、多角形等の他に、画素を有意化した微小文字やマーク、記号等も含まれる。
続いて、本発明の透過潜像印刷物(1)におけるそれぞれの画像と基材(2)との位置関係を図3に示す。透過潜像印刷物(1)におけるそれぞれの画像と基材(2)との位置関係は、大きく2種類に分類される。一つは、図3(a)に示すような、基材(2)の一方の面に情報画像(5)及び背景画像(6)の両画像を形成する片面構成であり、もう一つは、図3(b)に示すような情報画像(5)を基材(2)の一方の面に、背景画像(6)を基材(2)の他方の面に形成する両面構成である。
図3(a)に示した片面構成の場合でも、図3(b)に示した両面構成の場合でも本発明の効果は同じく発揮される。なお、反射光下における印刷模様(4)の観察面は、いずれの構成においても情報画像(5)が印刷された面が観察面となる。片面構成は、背景画像(6)が完全に基材(2)と等色でなければ容易に構成が見破られてしまうため、背景画像(6)の色彩調整に注意が必要なものの、表裏別々に印刷する必要がなく、一方の両面構成は背景画像(6)が完全に基材(2)と等色でなくとも観察面側から構成を見破ることは困難であるものの、表裏別々に印刷する手間か、表裏印刷機構が必要となる。いずれもユーザの求める効果や使用する機械仕様等に応じて自由に選択すれば良い。
図4に、本発明の透過潜像印刷物(1)の効果について示す。図4(a)に示すように、反射光下で本発明の透過潜像印刷物(1)の印刷模様(4)を情報画像(5)の存在する観察面側から観察した場合、背景画像(6)は反射光下で基材(2)と等色であることから、情報画像(5)のみが基材(2)よりも暗い(明度の低い)色彩で視認される。また、図4(b)に示すように、透過光下で本発明の透過潜像印刷物(1)の印刷模様(4)を観察した場合、情報画像(5)と背景画像(6)とが等色となって、それぞれの画像を区分けして視認不可能となり、結果として印刷模様(4)全体が一つの色彩で視認可能となる。
以上のように、本発明の透過潜像印刷物(1)において、反射光下では情報画像(5)のみが視認され、透過光下ではそれまで不可視だった背景画像(6)が出現する。このとき、背景画像(6)は単に出現するだけでなく、透過光下で情報画像(5)と等色となることで、印刷模様(4)がそれぞれの画像に区分けされることなく一つの色彩として視認できることを本発明の効果の最大の特徴とする。
ここで、情報画像(5)と、背景画像(6)とが、反射光下では異色であるにも関わらず、透過光下で等色に変化する原理について説明する。反射光下でのそれぞれの画像の色彩は、基本的にはそれを構成しているインキの色彩と基材(2)の色彩の減法混色によって決まる。すなわち、白い基材(2)の上に青いインキで印刷すればそのまま青色の画像となり、赤いインキで印刷すれば赤い画像となる。一方、透過光下観察時のそれぞれの画像の色彩は、それぞれの画像の光透過性に依存して、反射光下の色彩から変化する。光透過性が低い領域は、反射光下で見えていた色彩から主に明度が低下して暗い色彩に変化し、光透過性が高い領域は、主に明度が増加して明るい色彩へと変化する。すなわち、反射光下では青色だった画像が、画像の光透過性に応じて水色に変化したり、逆に藍色に変化したりする。
以上のことから、反射光下の色彩の明度が低く、光透過性が相対的に高い情報画像(5)の透過光下の色彩は明度が上昇し、一方の反射光下の色彩の明度が高く、光透過性が低い背景画像(6)の色彩は明度が低下する。そのため、反射光下において存在していたそれぞれの画像間の大きな色差は、透過光下において小さくなる。この現象を積極的に利用し、それぞれの反射光下の色彩とそれぞれの光透過性を適切に調整することで、反射光下で異色に観察される二つの画像において、その反射光下の色彩と光透過性をバランスさせることで透過光下において等色とすることができる。以上が本発明の効果が生じる原理である。
情報画像(5)の光透過性を高める方法である、有色浸透インキを第一のインキとする方法について具体的に以下に説明する。有色浸透インキとは、印刷した画像が透過光下で透けて見える(非印刷部よりも明るく観察される)効果を有する浸透成分を含む浸透型インキに、色材を混合することで形成したインキである。
有色浸透インキとは、基材に印刷した場合に、反射光下では、はっきりと視認できる色彩を有した画像を形成できる一方、透過光下では、その画像を極端に淡く変化させる効果を有する。言い換えると、通常の着色インキと比較して、「透かすと画像がより淡く見える」効果を有したインキである。有色浸透インキは、浸透成分と色材とを含んで構成され、浸透成分が基材内部の光の散乱を抑制することで生じさせる透過率の上昇によって、画像が淡く見える効果を実現している。
浸透成分が透かしインキとして一般に販売されているインキに相当する程度の性能を備えていれば、一定量の色材を混合して「透かすと画像が淡く見える」効果を有する有色浸透インキとすることは可能である。有色浸透インキに混合する色材は、着色顔料や着色染料として販売されている印刷色材を用いれば良い。印刷物として市場に流通させることを目的とすると、長期にわたる堅牢性が得られやすい着色顔料を用いることが望ましい。
なお、本発明における浸透成分とは、印刷時に用紙内部へと浸透して印刷領域の透過率を上昇させる働きを成す成分のことを指し、具体的には、セルロースの屈折率(1.49)に近い樹脂やワックス、動植物油等を指す。これらの成分は、印刷した場合に用紙の中に存在するセルロース繊維間の空隙を埋め、主として用紙内部における光の散乱を抑制することで光の透過率を上げる働きを成す。
また、本発明における「浸透型インキ」とは、前述した浸透成分を含み、一般に透かしインキとして販売されているインキを指す。このようなインキとしては、T&K TOKA製ベストワン透かしインキ、帝国インキ製ユニマーク、東洋インキ製SMXすかしインキ、合同インキ製E2ニス等が存在する。本発明の有色浸透インキは、これらのインキを用いても作製可能である。以上の方法で作製した有色浸透インキを第一のインキとし、情報画像(5)を印刷すれば、情報画像(5)の光透過性はより高くできる。
続いて、背景画像(6)の光透過性を低くする方法について以下に説明する。背景画像(6)の光透過性を低くするには、第二のインキに高い光遮断性を付与すれば良い。具体的には、二酸化チタンや酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミ等のような光反射性の高い金属顔料を含んだインキを用いることで容易に実現できる。あるいは、特殊な金属顔料を含まない一般的なインキを用いたとしても、背景画像(6)を情報画像(5)よりも厚い膜厚で印刷することで光透過性を低くすることも可能である。以上が背景画像(6)の光透過性を低くする方法である。
以上のように、第一のインキに有色浸透インキを用い、一方の第二のインキには光遮断性に優れる金属顔料を多く含んだインキを用いた場合、第一のインキで形成される情報画像(5)の光透過性はより高く、第二のインキで形成される背景画像(6)の光透過性はより低く成るため、それぞれの画像間の明度差を大きくすることができる。すなわち情報画像(5)と基材(2)の色差を大きくすることができる。この場合、反射光下における情報画像(5)の視認性が向上するとともに、透過光下における印刷模様(4)の視認性も向上することから、本発明の効果を最も高めることができる。
以上のように、二つの画像の色彩設計が適切であった場合、例えば第二のインキを酸化チタン含有のインキとし、第一のインキを通常の着色インキとした場合、二つのインキの間に反射光下の色差ΔEに10前後の差があった場合でも、透過光下においてこの差異をほぼゼロすることができる。加えて、例えば第一のインキに後述する有色浸透インキを用いた場合には、反射光下の色差ΔEに20前後の差があった場合でも、透過光下においてこの差異をほぼゼロとすることができる。
なお、本明細書でいう「基材の色彩」とは、用紙やプラスティック、フィルム等の被印刷基材自体の色彩に限定されるのではなく、本発明の印刷模様(4)が接する背景の色彩を指す。すなわち、基材自体と本発明の印刷模様(4)との間に、基材とは異なる色彩の色材を用いた印刷層やスプレー層等が形成されて成る場合、本明細書でいう基材の色彩とは基材自体の色彩ではなく、印刷層やスプレー層によって形成された色彩をさすこととする。
また、第一のインキ及び第二のインキに脱刷や印刷不良等の発生の有無を見極めることを目的又は真偽判別性の向上を目的として、蛍光顔料や蛍光染料、燐光顔料、蓄光顔料等の発光顔料や発光染料、赤外線吸収材料や赤外反射材料等の機能性材料を添加しても何ら問題ない。
本発明の透過潜像印刷物(1)の印刷方式は、オフセット印刷で十分な効果を発揮するが、製造者のシーズに応じてフレキソ印刷やグラビア印刷、凹版印刷やスクリーン印刷等で形成しても良い。また、IJPやレーザプリンタ等のデジタル出力機で形成しても良い。
なお、本明細書中でいう明度とは色の明るさを指し、高い場合には明るく、低い場合には暗い。また、彩度とは、色の鮮やかさの度合いを指す。加えて、本発明における「色彩」とは、色相、彩度及び明度の概念を含んで色を表したものであり、また、「色相」とは、赤、青、黄といった色の様相のことであり、具体的には、可視光領域(400〜700nm)の特定の波長の強弱の分布を示すものである。また、本発明における「色相が同じ」とは、二つの色において赤、青、黄といった色の様相が一致し、可視光領域の波長の強弱の分布が二つの色において相関を有することである。
また、本発明における「反射光下での観察」とは、観察者の視点が、正反射光がほとんど存在しない領域中にあって透過潜像印刷物(1)を可視光下で観察している状況を示しており、本発明における「透過光下での観察」とは、観察者の視点が、透過光下の領域中にあって、透過潜像印刷物(1)を観察している状況を示している。
なお、第一の実施の形態では、背景画像(6)を第二のインキによって形成したが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、基材(2)と等色であって、情報画像よりも光透過性が低い構成を満たすのであれば、他の手段を用いて形成しても問題ない。具体的には光透過性の低い着色フィルムや透明フィルム等で背景画像を形成しても良く、また基材(2)の光の透過率を低下させる黒透かしを用いて形成してもなんら問題ない。
第一の実施の形態では、印刷模様(4)が情報画像(5)と背景画像(6)のみから成り、かつ反射光下と透過光下の画像の変化も一部の画像の色彩が変化するという形態について説明したが、第二の実施の形態から第四の実施の形態においては、情報画像(5)と背景画像(6)に加えて、新たに潜像画像という画像を追加し、それぞれの要素を複雑に組み合わせることによって、反射光下と透過光下とで全く相関のない、異なる画像へと変化する、いわゆる画像のチェンジ効果を実現した形態について説明する。
(第二の実施の形態)
以後の説明において、説明を省略する事項については、基本的に第一の実施の形態での説明と同じである。
図5に、本発明の第二の実施の形態における透過潜像印刷物(1’)を示す。透過潜像印刷物(1’)は、基材(2’)の印刷模様領域(3’)に、基材(2’)と異なる複数の色彩を有する印刷模様(4’)が形成されて成る。
図6に、印刷模様(4’)の構成の概要を示す。印刷模様(4’)は、第一の実施の形態同様に、情報画像(5’)とカモフラージュ画像(8’)とに区分けされる。カモフラージュ画像(8’)は、背景画像(6’)と潜像画像(7’)から形成される。潜像画像(7’)と背景画像(6’)とは、面積率の差異により区分けされる。
背景画像(6’)と潜像画像(7’)は基材(2’)と等色であるため、反射光下で不可視であって、情報画像(5’)は、第一の実施の形態と同様に基材(2’)と同じ色相で、かつ明度が低い色彩であるため、情報画像(5’)は反射光下において基材(2’)よりも暗い色彩を有して可視の状態である。例えば、基材(2’)が白色である場合、背景画像(6’)及び潜像画像(7’)は白色である必要があり、情報画像(5’)は灰色から黒色である必要がある。
第二のインキで形成される背景画像(6’)及び潜像画像(7’)と、第一のインキで形成される情報画像(5’)とは、それぞれ光透過性が異なる。具体的には情報画像(5’)は背景画像(6’)及び潜像画像(7’)よりも光透過性が高い必要がある。これは本発明の透過潜像印刷物(1’)の効果を実現する上で不可欠な要件である。第一の実施の形態と異なり、潜像画像(7’)が新たに加わったが、潜像画像(7’)の色彩と要求される光透過性は背景画像(6’)と同様である。情報画像(5)と、背景画像(6’)及び潜像画像(7’)の光透過性の差が大きければ大きいほど、本発明の透過潜像印刷物(1’)の効果は高まるのも、第一の実施の形態と同様である。
情報画像(5’)は、反射光下で視認される第一の有意情報を表す。第二の実施の形態における第一の有意情報とは「鳳凰」の画像である。カモフラージュ画像(8’)を形成する一方の背景画像(6’)は、透過光下で情報画像(5’)をカモフラージュする働きを成す画像であって、第二の実施の形態においては、情報画像(5’)を濃淡反転させた構成の画像である。カモフラージュ画像(8’)を形成する他方の潜像画像(7’)は、第一の有意情報とは異なる第二の有意情報を表した画像であり、透過光下でのみ視認される画像となる。第二の実施の形態における第二の有意情報とはアルファベットの「OK」の文字である。以上のように、第二の実施の形態における印刷模様(4’)とは、情報画像(5’)及び背景画像(6’)並びに潜像画像(7’)の三つの画像を備える。
図7に印刷模様(4’)の一部の画線構成を拡大して示す。印刷模様(4’)は、情報画像(5’)を構成する要素である情報要素(9’)と、背景画像(6’)を構成する要素である背景要素(10’)と、潜像画像(7’)を構成する要素である潜像要素(11’)の三つの要素を備える。第二の実施の形態においては、それぞれ三つの要素は互いに重なり合うことなく特定のピッチ(P1)で特定の方向(図中S1方向)に連続して配置されて印刷模様(4’)を構成している。
情報画像(5’)は、特定の画線幅(W1)の情報要素(9’)が特定のピッチ(P1)で特定の方向(図中S1方向)に連続して配置されて成る。また、図8に示すように、カモフラージュ画像(8’)は、背景画像(6’)と潜像画像(7’)を備え、背景画像(6’)は、それぞれ特定の画線幅(W2)の背景要素(10’)が特定のピッチ(P1)で特定の方向(図中S1方向)に連続して配置されて成り、一方の潜像画像(7’)は、それぞれ特定の画線幅(W3)の潜像要素(11’)が背景要素(10’)の上下端に接するように二つずつペアとなって、特定のピッチ(P1)で特定の方向(図中S1方向)に連続して配置されて成る。
また、第二の実施の形態においては、背景要素(10’)の中に、情報要素(9’)と同じ大きさで構成された情報反転要素(12’)が配されて成る。それぞれの情報反転要素(12’)と情報要素(9’)の輪郭は完全に一致する構造を有し、背景要素(10’)中の情報反転要素(12’)に情報要素(6’)が毛抜き合わせで配置され、嵌め合わさる構造を有する。情報要素(9’)と情報反転要素(12’)はそれぞれの面積率を足し合わせると100%と成る構成であり、例えば情報要素(9’)が100%のベタで構成されている場合、情報反転要素(12’)は0%のヌキとなり、情報要素が50%の面積率で構成されている場合、情報反転要素(12’)の面積率は50%となる。情報反転要素(12’)は、白抜き部(15’)を構成する要素である。
なお、毛抜き合わせとは、高い刷り合わせを指し、情報要素(9’)と情報反転要素(12’)が、基材(2’)の一方の面に配置される場合、または基材(2’)を挟んで配置される場合にいう。また、後述する重畳とは、重なることを指し、情報要素(9’’)と背景要素(10’’)が、基材(2’’)の一方の面に配置される場合、または基材(2’’)を挟んで配置される場合にいう。
背景要素(10’)の画線幅(W2)は、情報要素(9’)の画線幅(W1)以上である必要がある。これは、背景要素(10’)の画線幅(W2)が、情報要素(9’)の画線幅(W1)より小さい場合、透過光下で情報要素(9’)を背景要素(10’)で隠蔽することが不可能となり、本発明の特徴である画像のチェンジ効果が損なわれるためである。
潜像要素(11’)は、第二の実施の形態では二つの要素をペアとして背景要素(10’)の上下に挟み込んで配置した形態で説明したが、必ずしも二つの要素をペアとする必要も、背景要素(10’)に接している必要もなく、情報要素(9’)及び背景要素(10’)と重ならない位置に一定の面積を有する潜像要素(11’)を配置すれば良い。また、第二の実施の形態では情報要素(9’)、背景要素(10’)及び潜像要素(11’)のいずれも画線で構成したが、それぞれの要素は画線である必要はなく、画素で形成しても良く、画線と画素の組合せで構成しても良い。画素で形成する形態については第四の実施の形態で後述する。
以上のような構成の情報画像(5’)を第一のインキで、背景画像(6’)及び潜像画像(7’)を第二のインキで形成するが、本発明の透過潜像印刷物(1’)の効果を高める上で、第一のインキ及び第二のインキとしてより好ましい構成については、第一の実施の形態で説明した構成と同じであることから省略する。
続いて、第二の実施の形態の透過潜像印刷物(1’)におけるそれぞれの画像と基材(2’)との位置関係を図9に示す。透過潜像印刷物(1’)におけるそれぞれの画像と基材(2’)との位置関係は、第一の実施の形態と同様に、図9(a)に示す基材(2’)の一方の面に情報画像(5’)及びカモフラージュ画像(8’)の両画像を形成する片面構成、または図9(b)に示す情報画像(5’)を基材(2’)の一方の面に、カモフラージュ画像(8’)を基材(2’)の他方の面に形成する両面構成とが存在する。それぞれの構成の特徴は第一の実施の形態と同じであるが、両面構成において情報要素(9’)と情報反転要素(12’)は基材(2’)を挟んで同じ領域に毛抜き合わせで配置される必要があり、第一の実施の形態と比較しても、表裏構成の場合には表裏印刷における特に高い刷り合わせ精度が要求される。
以上の構成で形成した透過潜像印刷物(1’)の効果を図10に説明する。図10(a)に示すように、透過潜像印刷物(1’)を反射光下で観察した場合、印刷模様(4’)を構成する情報画像(5’)、背景画像(6’)及び潜像画像(7’)の三つの画像のうち、背景画像(6’)及び潜像画像(7’)は基材(2’)と等色であることから、色彩の違いにより情報画像(5’)が表す第一の有意情報(「鳳凰」)のみが視認される。
また、図10(b)に示すように、透過潜像印刷物(1’)を透過光下で観察した場合、情報画像(4’)と背景画像(6’)及び潜像画像(7’)が前述した原理により等色に変化するため、情報画像(4’)が表す第一の有意情報は不可視となり、代わって面積率の差異によって潜像画像(7’)が表す第二の有意情報(「OK」)が視認される。
以上のように本発明の透過潜像印刷物(1’)は、印刷模様(4’)の表す情報が反射光下では第一の有意情報であり、透過光下では第二の有意情報として視認できる、観察条件を変えることで、全く相関のない異なる画像にチェンジすることを特徴とする。
第二の実施の形態における透過潜像印刷物(1’)の最大の特徴は、基材(2’)と等色の背景画像(6’)及び潜像画像(7’)と、基材(2’)と色相は同じで明度が低い情報画像(5’)とから形成され、反射光下で異色だった二つの画像が、透過光下で等色に変化する構造と効果を有することにある。反射光下と透過光下で視認される画像が変化することを基準として判別ができるという真偽判別機能自体は、等色ペアインキを用いて形成する従来の技術と基本的には変わらないが、背景画像(6’)及び潜像画像(7’)と基材(2’)とを等色にできたことで、反射光下で視認できる情報画像(5’)及び透過光下で視認できる潜像画像(7’)の視認性が飛躍的に向上した。
情報画像(5’)と、背景画像(6’)及び潜像画像(7’)とが、反射光下では異色であるにも関わらず、透過光下で等色に変化する原理と、その効果を実現するための構成については第一の実施の形態と同様であり、それぞれの画像の反射光下の色彩とそれぞれの光透過性を適切に調整することで、反射光下で異色に観察される二つの画像において、その色彩と光透過性をバランスさせることで透過光下において等色とすることができる。
続いて、第二の実施の形態で説明したような、画像のチェンジ効果を実現する形態の透過潜像印刷物において、そのチェンジ効果を高めるために必要な、情報画像(5’)、背景画像(6’)及び潜像画像(7’)の適切な面積率の範囲について説明する。1ピッチ(P1)に占める情報要素(6)の画線幅(W1)の大きさ、すなわち情報画像(5’)を構成する面積率によって反射時の情報画像(5’)の視認性が決まり、また、1ピッチ(P1)に占める潜像要素(11’)の画線幅(W3)の大きさ、すなわち潜像画像(7’)を構成する面積率によって透過時の潜像画像(7’)の視認性が決まる。例えば、情報画像(5’)の面積率が大きければ反射光下で視認される情報画像(5’)は鮮明に視認でき、逆に面積率が低ければ情報画像(5’)は不鮮明に見える。ただし、二つの画像の面積率の合計は、100%を超えられないため、情報画像(5’)に割り当てる面積率を大きくすると、潜像画像(7’)に割り当てられる面積率は必然的に低くなる。潜像画像(7’)に割り当てる面積率が低くなると、透過光下で視認される潜像画像(7’)の視認性が低下するため、それぞれの画像は適切な面積率の範囲で構成する必要がある。
情報画像(5’)の適切な面積率の範囲は、用いる第一のインキの色彩によって異なる。例えば、基材(2’)が白色である場合、第一のインキは灰色から黒色である必要があるが、第一のインキの色彩が暗ければ暗いほど、同じ面積率で構成した画像であっても、情報画像(5’)の視認性は高くなる。ただし、透過時に情報画像(5’)は背景画像(6’)と等色になる必要があり、仮に黒色で情報画像(5’)を構成した場合にはこの特性を充たすことは難しい。そのため、情報画像(5’)の色彩は、多くの場合やや濃い灰色程度の色彩で構成され、このことを考慮すると、情報画像(5’)の面積率は25%〜75%程度の範囲で構成することが望ましい。情報画像(5’)の面積率が25%未満の場合、情報画像(5’)の視認性が低下し、反射光下で視認される画像が不明瞭となるためであり、一方で情報画像(5’)の面積率が75%を超えると、潜像画像(7’)に割り当てられる面積率が25%未満となって潜像画像(7’)の視認性が低下し、透過光下で視認される画像が不明瞭となるためである。情報画像(5’)の濃淡(明度の高低)に応じて、面積率25%〜75%の範囲の中から適切な面積率とする必要がある。なお、背景画像(6’)の面積率については、透過光下において情報画像(5’)をカモフラージュする働きを成す必要があるため、情報画像(5’)と同じ値か、わずかに大きな値が最適値となる。
一方、潜像画像(7’)を構成する適切な面積率の範囲は、潜像画像(7’)の光透過性によって異なる。例えば第二のインキが白色で、第二のインキに炭酸カルシウムを主成分とするような通常の白インキを用いた場合、潜像画像(7’)の光透過性は特別低くならないために、その面積率は高くする必要があり、例えば、光遮断性の高い金属顔料である酸化チタンを多く含んだ白インキを用いた場合、潜像画像(7’)の面積率はある程度低く設計しても、一定の視認性を確保できる。いずれにしても、透過光下での一定の視認性を確保するためには、潜像画像(7’)の面積率も、情報画像(5’)同様に面積率25%〜75%の範囲で形成する必要があり、またその光透過性に応じて適切な面積率を選択する必要がある。以上が、情報画像(5’)、背景画像(6’)及び潜像画像(7’)の適切な面積率の範囲の説明である。
以上のように、第二の実施の形態では、情報要素(9’)と背景要素(10’)とが重なり合わないように配置した構成について説明したが、第三の実施の形態では背景要素(10’)の上に情報要素(9’)が重なる形態について説明する。
(第三の実施の形態)
第三の実施の形態の透過潜像印刷物(1’’)の概観については、図5において第二の実施の形態で示したものと同じであることから省略する。第三の実施の形態における透過潜像印刷物(1’’)も、第二の実施の形態の透過潜像印刷物(1’)同様に、基材(2’’)の印刷模様領域(3’’)に、基材(2’’)と異なる複数の色彩を有する印刷模様(4’’)が形成されて成るが、これ以後特に説明しない部分については第二の実施の形態と同じものとする。
図11に第三の実施の形態における印刷模様(4’’)の構成の概要を示す。第三の実施の形態の透過潜像印刷物(1’’)は、第二の実施の形態の透過潜像印刷物(1’)同様にそれぞれ二つの色彩の異なるインキによって構成され、情報画像(5’’)とカモフラージュ画像(8’’)とに区分けされる。カモフラージュ画像(8’’)とは、背景画像(6’’)と潜像画像(7’’)である。第三の実施の形態の透過潜像印刷物(1’’)における背景画像(6’’)とは面積率の一様なフラットな画像であり、第二の実施の形態のように情報画像(5’’)が表す第一の有意情報が濃淡反転した画像ではない。これが第二の実施の形態と第三の実施の形態の最大の違いである。以下に具体的に説明する。
図12にカモフラージュ画像(8’’)の一部の画線構成を拡大して示す。カモフラージュ画像(8’’)は、背景画像(6’’)を構成する要素である背景要素(10’’)を備える。ここで、第二の実施の形態においては、それぞれ三つの要素は互いに重なり合うことなく特定のピッチ(P1)で特定の方向(図中S1方向)に連続して配置されて印刷模様(4’)を構成していたが、第三の実施の形態においてはその構成が大きく異なる。すなわち、第二の実施の形態において背景要素(10’)の中に存在していた、情報要素(9’)と同じ大きさで構成された情報反転要素(12’)が第三の実施の形態においては存在せず、背景要素(10’’)は内部が塗りつぶされた一様な要素から成る。
なお、情報画像(5’’)は、第二の実施の形態同様に特定の画線幅(W1)の情報要素(9’’)が特定のピッチ(P1)で特定の方向(図中S1方向)に連続して配置されて成る(図示せず)。また、背景画像(6’’)は、それぞれ特定の画線幅(W2)の背景要素(10’’)が特定のピッチ(P1)で特定の方向(図中S1方向)に連続して配置されて成り、一方の潜像画像(7’’)は、それぞれ特定の画線幅(W3)の潜像要素(11’’)が背景要素(10’’)の上下端に接するように二つずつペアとなって、特定のピッチ(P1)で特定の方向(図中S1方向)に連続して配置されて成る。
ここで情報画像(5’’)、背景画像(6’’)及び潜像画像(7’’)の重なり合いの位置関係について図13を用いて説明する。第二の実施の形態において、それぞれの画像を構成する要素は互いに重なり合うことはなかったが、第三の実施の形態においては、情報要素(9’’)は、背景要素(10’’)の上に完全に重畳して成る。潜像要素(11’’)に関しては、第二の実施の形態同様に、他の要素と重ならずに配されて成る。
また、第三の実施の形態の透過潜像印刷物(1’’)においても、第二の実施の形態と同様に、基材(2’’)の一方の面に情報画像(5’’)及びカモフラージュ画像(8’’)の両画像を形成する片面構成、または情報画像(5’’)を基材(2’’)の一方の面に、カモフラージュ画像(8’’)を基材(2’’)の他方の面に形成する両面構成とが存在する。それぞれの構成の特徴は第二の実施の形態と同じであるが、両面構成において情報要素(9’’)と背景要素(10’’)は基材(2’’)を挟んで同じ領域に重畳する位置関係で配置される必要がある。
このような重なり合いの関係によって構成された透過潜像印刷物(1’’)は、第二の実施の形態の印刷物同様に、図10に示したような効果を発揮する。以上のように、第三の実施の形態と、第二の実施の形態との差異は、背景要素(10’’)の中に情報反転要素が存在せず、情報要素(9’’)が背景要素(10’’)と重なり合うことである。
第三の実施の形態の透過潜像印刷物(1’’)は、 第二の実施の形態の透過潜像印刷物(1’)と比較すると、情報要素(9’’)と背景要素(10’’)とが重なり合うため、透過光下で情報要素(9’’)の明度が高く変化する効果が低くなる。そのため、情報要素(9’’)の色彩設計には制約が生じる。具体的には、第二の実施の形態の情報要素(9’)の色彩と比較して、情報要素(9’’)の色彩はより淡く設計する必要があり、結果として、反射光下の情報画像(5’’)の視認性や、透過光下の潜像画像(7’’)の視認性が低くなり、本発明の効果が低下する傾向にある。
しかしながら、背景要素(10’)の中の情報反転要素(12’)の中に毛抜き合わせで情報要素(6’)を嵌めあわせる必要があった第二の実施の形態の透過潜像印刷物(1’)と比較すると、第三の実施の形態の透過潜像印刷物(1’’)を製造するにあたっては第一の方向(図中S1方向)に対して情報要素(9’’)の画線幅(W1)と背景要素(10’’)の画線幅(W2)の大きさの差だけの刷り合わせ誤差を許容でき、また第一の方向(図中S1方向)と直交する第二の方向(図中S2方向)に対しては高い刷り合わせ精度が不要であるため、刷り合わせズレに対して許容のある構成となる。
以上のように、第二の実施の形態の透過潜像印刷物(1’)と第三の実施の形態の透過潜像印刷物(1’’)はその特徴が異なる。反射光下および透過光下のそれぞれの画像の視認性に関しては、第二の実施の形態の透過潜像印刷物(1’)が優れており、一方、印刷時の刷り合わせを含めた製造の容易さに関しては、第三の実施の形態の透過潜像印刷物(1’’)が優れていると言える。この二つの形態については、ユーザが重視する効果や使用する印刷機の制約等に応じて使い分ければ良い。例えば、ユーザが刷り合わせ精度の高い印刷機、例えば枚葉方式の印刷機を使用できる場合には、より視認性の高い第二の実施の形態の透過潜像印刷物(1’)を選択すれば良く、例えば刷り合わせ精度のやや低いウェブ方式の印刷機を使用する場合には、視認性はやや落ちるものの、刷り合わせズレに対して許容のある構成である第三の形態の透過潜像印刷物(1’’)を選択することができる。
(第四の実施の形態)
続いて、第四の実施の形態について説明する。第二の実施の形態及び第三の実施の形態では、すべての要素を画線で構成したが、要素を画素で表現しても良い。以下に第四の実施の形態としてその具体的な方法を示す。
(第四の実施の形態)
図14に第四の実施の形態の透過潜像印刷物(1’’’)を示す。透過潜像印刷物(1’’’)は、基材(2’’’)の印刷模様領域(3’’’)に、基材(2’’’)と異なる複数の色彩を有する印刷模様(4’’’)が形成されて成る。また、これ以後特に説明しない部分については第二の実施の形態と同じとする。
図15に印刷模様(4’’’)の構成の概要を示す。第四の実施の形態の透過潜像印刷物(1’’’)の印刷模様(4’’’)は、すべて画素で構成されて成る。印刷模様(4’’’)は、情報画像(5’’’)及びカモフラージュ画像(8’’’)を有し、カモフラージュ画像(8’’’)の中には背景画像(6’’’)及び潜像画像(7’’’)がある。
図16に印刷模様(4’’’)の一部の画線構成を拡大して示す。印刷模様(4’’’)は、情報画像(5’’’)を構成する要素である情報要素(9’’’)と、背景画像(6’’’)を構成する要素である背景要素(10’’’)と、潜像画像(7’’’)を構成する要素である潜像要素(11’’’)の三つの要素を備える。それぞれ三つの要素は画素形状であるが、第二の実施の形態及び第三の実施の形態で説明した、要素が画線形状の形態と同じように、互いに重なり合うことなく特定のピッチ(P1)で特定の方向(図中S1方向及びS2方向)に連続して配置されて印刷模様(4’’’)を構成している。
情報画像(5’’’)は、第一の方向(図中S1方向)に特定の高さ(W1)、第二の方向(図中S2方向)に特定の幅(W2)の画素形状の情報要素(9’’’)が第一の方向に特定のピッチ(P1)で第二の方向に特定のピッチ(P2)で連続して配置されて成る。また、図17に示すように、カモフラージュ画像(8’’’)を形成する背景画像(6’’’)と潜像画像(7’’’)は、第一の方向(図中S1方向)に特定の高さ(W3)、第二の方向(図中S2方向)に特定の幅(W4)の画素形状の背景要素(10’’’)が第一の方向(図中S1方向)に特定のピッチ(P1)で第二の方向(図中S2方向)に特定のピッチ(P2)で連続して配置されて成り、第一の方向(図中S1方向)に特定の高さ(W5)、第二の方向(図中S2方向)に特定の幅(W6)の画素形状の潜像要素(11’’’)が第一の方向に特定のピッチ(P1)で第二の方向に特定のピッチ(P2)で連続して配置されて成る。
また、背景要素(10’’’)の中には、情報要素(9’’’)と同じ大きさで構成された情報反転要素(12’’’)が配されて成る。情報要素(9’’’)と情報反転要素(12’’’)はそれぞれの面積率を足し合わせると100%と成る構成であり、例えば情報要素(9’’’)が100%のベタで構成されている場合、情報反転要素(12’’’)は0%のヌキとなり、情報要素が50%の面積率で構成されている場合、情報反転要素(12’’’)の面積率は50%となる。情報反転要素(12’’’)は、白抜き部(15’’’)を構成する要素である。
背景要素(10’’’)の第一の方向の高さ(W3)は、情報要素(9’’’)の第一の方向の幅(W1)以上である必要があり、また、背景要素(10’’’)の第二の方向の幅(W4)は、情報要素(9’’’)の第二の方向の幅(W2)以上である必要がある。これは、背景要素(10’’’)が情報要素(9’’’)よりも小さい場合、透過光下で情報要素(9’’’)を背景要素(10’’’)で隠蔽することが不可能となり、本発明の特徴である画像のチェンジ効果が損なわれるためである。
図18に透過潜像印刷物(1’’’)の効果を示す。図18(a)に示すように反射光下では印刷模様(4’’’)の中に情報画像(5’’’)が表す第一の有意情報のみが視認でき、透過光下ではそれぞれの画像を形成する要素が等色に変化することによって、潜像画像(7’’)が表す第二の有意情報が視認できる。
以上のように、第二の実施の形態及び第三の実施の形態では各要素が画線である構成について説明し、第四の実施の形態では各要素が画素である構成について説明したが、一部の要素が画線で、一部の要素が画素であるといった画線と画素の組合せの構成を用いても良い。また、要素を画素で構成した第四の実施の形態の説明では、背景要素(10’’’)内に情報反転要素(12’’’)が存在し、背景要素(10’’’)と情報要素(9’’’)が毛抜き合わせで嵌め合わさる第二の実施の形態の構成を用いて説明したが、第三の実施の形態のように背景要素(10’’’)内に情報反転要素(12’’’)が存在せず、背景要素(10’’’)と情報要素(9’’’)が重なり合う形態の構成を用いても問題ない。
以上のように、本発明の透過潜像印刷物の形態は第一の実施の形態乃至第四の実施の形態まで様々な形態を取りうる。以下、前述の発明を実施するための形態にしたがって、具体的に作製した透過潜像印刷物の実施例について詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
本実施例は、第二の実施の形態で説明したチェンジ効果を有する形態について、図19から図23までを用いて説明する。図19に実施例における透過潜像印刷物(1−1)を示す。透過潜像印刷物(1−1)は、基材(2−1)の印刷模様領域(3−1)に、灰色の色彩を有した印刷模様(4−1)が形成されて成る。基材(2−1)には、一般的な白色上質紙(しらおい 日本製紙製)を使用した。
印刷模様(4−1)は、図20に示す情報画像(5−1)とカモフラージュ画像(8−1)から構成した。カモフラージュ画像(8−1)は、背景画像(6−1)及び潜像画像(7−1)から形成される。第二のインキの色彩は基材と同じ白色とし、第一のインキの色彩は灰色としたため、反射光下において印刷模様(4−1)の中には灰色の情報画像(5−1)のみが視認される。
図21に、印刷模様(4−1)の具体的な画線構成を示す。それぞれの画線は第一の方向(S1方向)にピッチ0.4mmで連続して配置して構成した。また、情報画像(5−1)は、画線幅0.20mmの情報要素(9−1)を第一の方向(S1方向)にピッチ0.4mmで連続して配置して構成した。情報画像(5−1)の面積率は50%である。
図22にカモフラージュ画像(8−1)を示す。カモフラージュ画像(8−1)は、背景画像(6−1)及び潜像画像(7−1)を有する。背景画像(6−1)は、画線幅0.23mmの背景要素(10−1)を第一の方向(S1方向)に、ピッチ0.4mmで連続して配置して構成し、潜像画像(7−1)は、画線幅0.15mmの潜像要素(11−1)を第一の方向(S1方向)に、ピッチ0.4mmで連続して配置して構成した。また、それぞれの背景要素(10−1)の中にはそれぞれの情報要素(9−1)と同じ大きさを有する情報反転要素(12−1)をヌキで配置した。情報反転要素(12−1)を含めた背景画像(6−1)の面積率は58%であり、潜像画像(7−1)の面積率は、約38%である。情報反転要素(12−1)は、白抜き部(15−1)を構成する要素である。
以上のような構成とし、第一のインキは淡い灰色の色彩の通常の着色インキを用いた。一方の第二のインキには、チタンを大量に含有する白インキ(ベストワン GIGA白 T&K TOKA製)を用いた。この第二のインキは高い光遮断性を有する。以上の第一のインキ及び第二のインキを用いて前述の構成で印刷模様(4−1)をオフセット印刷で印刷した。
以上の構成で作製した透過潜像印刷物(1−1)の効果について、図23を用いて以下に説明する。図23(a)に示すように、透過潜像印刷物(1−1)を反射光下で観察した場合、観察者(14−1)には、情報画像(5−1)が灰色で視認され、一方で背景画像(6−1)及び潜像画像(7−1)は基材(2−1)と等色であるため視認されず、結果として、基材(2−1)と異なる色彩で表現された第一の有意情報である「鳳凰」の画像のみが視認された。
また、図23(b)に示すように、透過潜像印刷物(1−1)を透過光下で観察した場合、観察者(14−1)には、情報画像(5−1)と背景画像(6−1)と潜像画像(7−1)の色彩が同じ淡い灰色に見え、その結果、印刷模様(4−1)の中に面積率の差によって表現された潜像画像(7−1)が現す第二の有意情報であるアルファベットの「OK」の文字が灰色で視認された。
以上のように本発明の透過潜像印刷物(1−1)において、印刷模様(4−1)の中の情報が反射光下では第一の有意情報に、透過光下では第二の有意情報にチェンジする効果を有することが確認できた。