JP5990754B2 - 透過模様印刷物 - Google Patents

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本発明は、偽造防止効果を必要とするセキュリティ印刷物である銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード、通行券等の貴重印刷物の分野において、透過光下で視認性に優れた透過模様が出現する印刷物に関わるものである。
近年のスキャナ、プリンター、カラーコピー機等のデジタル機器の進展により、貴重印刷物の精巧な複製物を容易に作製することが可能となっている。そのため、前述したような複製や偽造を防止するため、プリンターやコピー機では再現不可能な様々な偽造防止技術が必要とされている。
この偽造防止技術の一つとして、用紙の粗密や薄厚によって模様を形成して透過光下で視認させる、いわゆる透かしが存在する。この透かしは、一定量以上の光さえ存在すれば、あらゆる環境下で真偽判別が可能な技術であり、また、知名度も抜群に高いことから、古くから存在する古典的な技術であるにも関わらず、今なお世界中の銀行券で用いられている。
しかし、この技術は、用紙の製造段階で形成する必要があることから用紙メーカでなければ製造不可能であり、加えて用紙メーカが製造した場合でも製造コストが高くなるという問題があることから、これを擬似的に再現する方法として、印刷工程で特殊な浸透型インキ(例えば、特許文献1参照)を用いて、基材よりも明るい階調によって表現された透過模様を形成する偽造防止技術が存在する(例えば、特許文献2参照)。
また、油性インキによる透かし模様層の周縁に沿って遮光インキにより印刷された縁取り模様層から成る透かし標章部を備えた透かし入り帳票部が開示されている(例えば、特許文献3参照)。この技術は、油性インキによる透かし模様が、滲みが生じるためにぼやけてしまうという問題を解決するために、油性インキによる透かし模様の周縁に沿って遮光インキにより印刷することで、透過量の差により油性インキの滲みを視認させない効果を有している。
特許第2585816号公報 特開平6−228900号公報 特開2000−326620号公報
しかしながら、特許文献1の技術のような浸透型インキを単純に用いて、特許文献2に記載のような基材よりも明るい階調によって表現された透過模様を形成する偽造防止技術に関しては、すでに浸透型インキ自体が多くのメーカから市販されており、一般人であっても容易に入手可能であることから、偽造者にとっても製造が容易であるという問題があった。
また、特許文献2に記載の技術のように、浸透型インキを用いて基材よりも明るい階調によって表現された透過模様を印刷で形成した場合、必ずにじみが生じて、輪郭がぼやけた画像となり、シャープな画像を形成することができないという問題があった。
また、特許文献2に記載の技術のように、浸透型インキを用いて透過光下で視認できる透過模様を印刷する場合、にじみをできる限り少なくして、かつ、透過模様の視認性を上げた最適な透過模様印刷物を作製するには、製版作業及び印刷作業においてそれぞれ一定以上の経験と技量を要求するため、最適な品質の透過模様印刷物を安定して製造することが困難であるという問題があった。
さらに、特許文献3に記載の技術は、第1の手段において基材の同一表面上で油性インキと遮光インキで形成したそれぞれ模様が重なり合わないように調整して印刷する必要があり、また第2の手段においては、基材の表裏両面に印刷する必要があるという製造上の制約があった。また、油性インキで印刷した領域すべてにおいて、油性インキが原紙に滲み込む構成であるため、油性インキと遮光インキが重なり合った領域においては、二つのインキの効果が相殺される構造となり、透過光で視認される濃淡は二つのインキの混じり合った中間の濃淡となってしまい、結果として階調表現域が損なわれるという問題があった。
本発明は、前述した課題の解決を目的とするものであり、浸透型インキと、浸透型インキを基材に浸透させない浸透を抑制する特性を有するインキとの二つのインキを用いて形成する透過模様印刷物であって、二つのインキで形成する画像を単に重ね合わせて形成するだけで、透過光下においてコントラストが高く、かつ、シャープな画像を観察できる透過模様印刷物に関わる。
本発明は、光透過性及び浸透性を有する基材上の表面の少なくとも一部に、基材に向かって第一の模様及び第二の模様が積層された印刷模様を有し、第一の模様は、浸透成分を有する透明の第一のインキにより形成され、第二の模様は、第一のインキの基材への浸透を抑制する特性を有し、透明又は基材と等色の第二のインキにより形成され、透過光下において第二の模様が視認できることを特徴とする透過模様印刷物である。
また、本発明の透過模様印刷物は、第二の模様が基材よりも光透過性の低い特性を有することを特徴とする。
また、本発明の透過模様印刷物は、第二のインキが光遮断性の高い金属顔料を含んでいることを特徴とする。
さらに本発明の透過模様印刷物は、第二の模様が階調を有する模様であることを特徴とする。
本発明の透過模様印刷物において、反射光下では画像が不可視であって、透過光下では容易に目視可能なコントラストを有し、浸透型インキを用いて印刷した、基材よりも明るい階調を有する透過模様であるにも関わらず、にじみがなくシャープな画像を作製できる。
本発明の透過模様印刷物を構成するために必要となる二つの画像は、精度良く刷り合わせを合わせる必要がなく、単に重ね合わせればよいことから、製造が極めて容易である。
本発明の透過模様印刷物は、従来の白透かしにあたる画像を印刷で形成するにも関わらず、転移させる浸透型インキの適正量を見極める必要も、意図的に微調整する必要もなく、単に可能な限り浸透型インキを転移させれば最も良好な品質の透過模様印刷物を製造できる。よって、従来の透過模様印刷物のように製版作業者や印刷作業者の経験や技量に左右されず、安定した品質の透過模様印刷物を容易に製造できる。
また、本発明の透過模様印刷物は、第二のインキが光遮断性の高い金属顔料を含んでいることを特徴とする。本発明の透過模様印刷物においては、先刷りインキが浸透型インキの基材内部への浸透自体を抑制する構造を有するため、特許文献3の技術のように二つのインキが重なり合った領域でも二つのインキの効果が相殺されることがなく、二つの画像を単に重ね合わせるだけで、二つのインキを用いて表現し得る最大の階調が自動的に再現される効果を有する。
以上の手法で形成した透過模様印刷物は、生産性の高い印刷方式であるオフセット印刷で製造可能であることからコストパフォーマンスに優れ、また最新のデジタル機器を用いたとしても効果の再現は不可能であることから、偽造防止効果に優れる。
本発明の透過模様印刷物を示す。 本発明の透過模様印刷物の構成の概要を示す。 本発明の透過模様印刷物における二つの画像の重ね合わせ順を示す。 本発明の透過模様印刷物の効果を示す。 本発明の透過模様印刷物を示す。 本発明の透過模様印刷物の構成の概要を示す。 本発明の透過模様印刷物における二つの画像の重ね合わせ順を示す。 本発明の透過模様印刷物の効果を示す。 本発明の透過模様印刷物の階調表現域を示す。 本発明の透過模様印刷物の第二の模様の構成の一例を示す。 比較例の階調表現域を示す。 比較例の階調表現域を示す。
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
(第一の実施の形態)
図1に、本発明における透過模様印刷物(1)を示す。透過模様印刷物(1)は、浸透性を有する基材(2)の一表面上に拡散反射光下では不可視の印刷模様(3)が形成されて成る。印刷模様(3)の大きさに特に制約はない。図1の透過模様印刷物(1)においては、印刷模様(3)が表す有意情報が見えているが、実際には不可視か、ほぼ不可視である。なお、第一の実施の形態の説明において、印刷模様(3)が表す有意情報とは富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」(以下:富士山)である。
本発明における透過模様印刷物(1)を構成する基材(2)は、上質紙やコート紙のように、浸透型インキを印刷した場合に、インキ成分が基材(2)の内部に浸透する浸透性を有するとともに、基材(2)自体も光を透過する特性を持つ光透過性を有する必要がある。不透明なプラスティックや金属では、本発明の意図する効果は得られない。
図2を用いて印刷模様(3)の構成について説明する。印刷模様(3)は、第二の模様(5)の上に、第一の模様(4)を重畳して形成する。第二の模様(5)は、印刷模様(3)の表す有意情報の情報をポジの状態で表した画像である。一方の第一の模様(4)は印刷模様(3)全体を被覆するベタ画像である。
まず、第一の模様(4)について説明する。第一の模様(4)は、図3にその印刷順を示すとおり、第二の模様(5)に重畳して形成される画像である。第一の模様(4)は、第二の模様(5)の少なくとも一部を被覆する構成を有し、網点や画線、画素のいかなる構成でも形成できることに加え、網点や画線、画素等の組合せの構成でも形成できる。第一の実施の形態においては、第二の模様(5)全体を被覆する網点面積率100%のベタ画像を用いた。
第一の模様(4)は、拡散反射光下で不可視である必要があり、また下に存在する第二の模様(5)を隠蔽してはならないため、透明である必要がある。本明細書中でいう透明とは、完全な透明である必要はなく、完全に下層にある色や画像を隠蔽してしまわない程度の透過性を有する状態、すなわち半透明であっても良い。第一の模様(4)は、透過光下の観察において、印刷した場合に印刷していない領域よりも光を多く透過して明るく視認される特性、いわゆる高い光透過性を有するインキ、すなわち、浸透成分を有する浸透型インキで印刷する。
本発明における浸透成分とは、印刷時に用紙内部へと浸透して印刷領域の透過率を上昇させる働きを成す成分のことを指し、具体的には、セルロースの屈折率(1.49)に近い樹脂やワックス、動植物油等を指す。これらの成分は、印刷した場合に用紙の中に存在するセルロース繊維間の空隙を埋め、主として用紙内部における光の散乱を抑制することで光の透過率を上げる働きを成す。このため、浸透型インキで印刷された透過模様は、基材(2)よりも明るい階調によって表現された画像となる。
また、本発明における浸透型インキとは、前述した浸透成分を含み、一般に透かしインキとして販売されているインキを含む。このようなインキとしては、T&K TOKA製ベストワン透かしインキ、帝国インキ製ユニマーク、東洋インキ製SMXすかしインキ、合同インキ製E2ニス等があり。また、UV硬化型の透かしインキであるT&K TOKA製UV透かしインキも存在する。また、一般にOPニスとして販売されているグロスニス等の低粘度のインキを用いた場合でも、低粘度の樹脂成分が浸透する効果得られるため、透明な低粘度インキを浸透型インキとすることができる。
浸透型インキの印刷方式は、オフセット印刷で十分な効果を発揮するが、製造者のシーズに応じてフレキソ印刷やグラビア印刷、凹版印刷やスクリーン印刷等で形成しても良い。インキ転移量が多い場合には、透過模様のコントラストは高まるため、ユーザの希望する透過模様の視認性に応じて印刷方式を使い分けても良い。以上が第一の模様(4)の説明である。
続いて、第二の模様(5)について説明する。第二の模様(5)は印刷模様(3)が表す有意情報をポジで表現した画像であり、網点や画線、画素のいかなる構成でも形成できることに加え、網点や画線、画素等の組合せの構成でも形成できる。第二の模様(5)は、第一の模様(4)が重ねて印刷された場合に、第二の模様(5)上に重なった浸透型インキの基材(2)へ浸透を抑制する特性を有する。このような特性は、第一のインキの浸透を防ぐ効果の高い顔料や樹脂を配合する等、第二のインキの配合のみを制御することで実現することができる。また、第二の模様(5)を形成する第二のインキが、第一のインキをはじくように二つのインキの一方を油性インキとし、他方を水性インキとして撥水及び/又は撥油効果を利用したり、印刷直後の第二のインキを濡れの高い状態として第一のインキがトラッピングしない状態としたり、また、第二及び第一のインキが重なった場合でも基材(2)まで達しないように印刷皮膜を厚く形成する方法等の様々な方法によって実現することができる。
また、第二の模様(5)は拡散反射光下で不可視であるため、第二のインキは透明又は基材(2)と等色である必要がある。なお、図2における第一の模様(4)は説明の都合上黒色の濃淡のある着色した画像としているが、実際には透明又は基材(2)と等色な色彩である。
第二の模様(5)上に重なった浸透型インキの基材(2)へ浸透を抑制する特性を付与する最も容易な方法は、第二のインキに金属インキを用いることである。金属インキは、一般的な着色インキよりも基材(2)を被覆する効果が高いため、このインキで形成された浸透型インキが基材(2)に達して浸透する効果を抑制することができる。金属顔料であって、透明又は白色、若しくは淡い色彩の顔料を選択して配合すればよい。このような顔料としては、例えば、酸化チタンや酸化アルミ等の金属酸化物の顔料が最も適している。また、上記の顔料には劣るが、炭酸カルシウムやシリカ等の白色インキでも一定の浸透抑制効果を得ることができる。また、フレキソ印刷やグラビア印刷、スクリーン印刷や凹版印刷等の一定以上の印刷膜厚を形成できる印刷方式を用いる場合、金属顔料を含まない透明な樹脂を印刷しただけでも浸透型インキの浸透を抑制する効果を得ることができる。
また、撥水及び/又は撥油機能を付与する場合には、第二のインキ中にシリコーン系添加剤又はフッ素系添加剤を加えたり、シロキサン又はフルオロ基を有する樹脂をワニスとして用いたりすることで、第一のインキをはじく効果を実現することができる。
第二の実施の形態で説明するが、第二のインキに透過する光を遮断する光遮断性を付与した場合には、透過光下で出現する透過模様により高い階調表現性を付与することができる。
続いて、本発明の透過模様印刷物(1)の形成方法について図3に示す。まず、基材(2)に対して第二の模様(5)を第二のインキを用いて印刷し、その上に重なるように第一の模様(4)に浸透型インキを用いて重ね合わせて印刷する。
図4に作製した本発明の透過模様印刷物(1)の効果を示す。図4(a)に示すように、反射光下で透過模様印刷物(1)を観察した場合、印刷模様(3)中には何の情報も視認できない。一方、図4(b)に示すように、透過光下で透過模様印刷物(1)を観察した場合、印刷模様(3)の中に階調豊かな富士山が視認できる。この出現する富士山は、基材(2)を透過する光以上に多くの光を透過し、基材(2)よりも明るい色彩で表現されるが、浸透型インキを用いて形成した形態の透過模様として不可避であるはずのにじみは全く生じない、シャープな階調画像であることを特徴とする。
前述した特許文献1のような浸透型インキで印刷する場合、図9に示すように見せたい画像を濃淡反転したネガ画像として印刷する。印刷して基材(2)に転移した浸透型インキは、基材(2)深度方向に浸透するだけでなく、平面方向にも同様に浸透する。このため、浸透型インキで印刷した透過模様には結果として必ずにじみが生じてしまい、透過模様としてシャープな画像を表現することが不可能であった。にじみを防止するためには、浸透型インキの転移量を抑える必要があり、この場合には光の透過効果が充分得られず、透過模様としての全体の視認性が低下してしまうという問題が生じていた。透過模様の視認性を保ちながら、にじみを可能な限り小さく留めるにはネガ画像を形成する製版段階でのノウハウや適正なインキ転移量に調整する印刷作業の技量も必要であり、このような熟練したオペレータ達が試行錯誤を繰り返してテストを重ねる必要があった。しかし、熟練したオペレータがテストの末に完成させた透過模様印刷物であっても、一見して印刷で形成したとわかるにじみが生じているのが常であった。
一方、本技術は浸透型インキによって直接透過模様を形成するのではなく、まず第二のインキによって第二の模様(5)を形成したのち、浸透型インキを大量に転移させる方法によって形成する。第二のインキで基材(2)上に第二の模様(5)を印刷したのち、第一の模様(4)が重ねられるため、第二の模様(5)の上に、第一のインキが重なることとなる。第一の模様(4)は浸透型インキの浸透を抑制する特性を有するため、第二の模様(5)の網点がある領域は第一のインキが浸透せず、第二の模様(5)の網点がない領域は第一のインキが浸透する。また、単なる網点の有り無しではなく、例えば第二の模様(5)の網点面積率が80%の領域と網点面積率が40%の領域では、第一のインキの浸透効果にも差異が生じ、網点面積率が40%の領域は、網点面積率が80%の領域と比べて第一のインキが約2倍浸透するため、結果として明るさにも網点面積率の差異が反映される。このため、透過光下における透過模様のそれぞれの領域の明るさはそれぞれの領域における第二の模様(5)の網点面積率に反比例した構成となる。結果として、透過光下で観察すると第二の模様がポジの状態で出現する効果を得る。
また、第二のインキが、まず第二の模様(5)の網点がある領域における浸透型インキの基材(2)深度方向への浸透を抑制することに加え、浸透型インキの平面方向への浸透も同時に抑制するため、透過模様ににじみが生じない、又は仮ににじみが生じたとしても従来の方法で作製した透過模様と比較すると極めて狭い範囲に留まる。また、従来の作製方法ではインキの転移量を多くしすぎるとにじみが大きくなることから、良好な品質の透過模様印刷物を製造するために、印刷作業にあたるオペレータには浸透型インキのインキ転移量を適正に見極める経験と技量が必要であったが、本発明の透過模様印刷物の作製にあたってはインキ転移量の大小に関わらずにじみが生じないことから、インキの転移量を可能な限り多くすれば、最も良好な透過模様印刷物が必ず作製できる。以上のように、本発明の構成と作製方法に従えば、にじみの無い良好な品質の透過模様印刷物を、透過模様印刷物を作製した経験のないオペレータであって容易に製造することができる。
以上のように、本発明の透過模様印刷物は浸透型インキを用いて透過模様を印刷で形成するにも関わらず、にじみがないシャープな画像を形成可能であって、製版作業者や印刷作業者の経験や技量に左右されず、安定した品質の透過模様印刷物を容易に製造できる。
続いて、第二の実施の形態として、透過模様ににじみが生じないだけでなく、従来の透過模様と比較して階調表現域を格段に拡大させた、階調表現に特に優れる透過模様印刷物を作製できる形態について説明する。
(第二の実施の形態)
図5に、本発明における透過模様印刷物(1´)を示す。透過模様印刷物(1´)は、浸透性を有する基材(2´)の一表面上に拡散反射光下では不可視の印刷模様(3´)が形成されて成る。印刷模様(3´)の大きさに特に制約はない。図5の透過模様印刷物(1´)においては、印刷模様(3´)が表す有意情報が見えているが、実際には不可視か、ほぼ不可視である。なお、第二の実施の形態の説明において、印刷模様(3´)が表す有意情報とは第一の実施の形態と同様に富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」(以下:富士山)である。
本発明における透過模様印刷物(1´)を構成する基材(2´)については、第一の実施の形態と同様であるため説明を省略する。図6に印刷模様(3´)の構成の概要を示す。印刷模様の構成も第一の実施の形態と同様であり、また、第一の模様(4´)についても第一の実施の形態と同様であることから説明を省略する。
第二の模様(5´)について説明する。第一の実施の形態と第二の実施の形態の透過模様印刷物の構成の違いは、この第二の模様(5´)のみである。第二の模様(5´)は印刷模様(3´)が表す有意情報をポジで表現した画像であり、第二の模様(5)は、第一の実施の形態同様に、第一の模様(4´)が重ねて印刷された場合に、第二の模様(5´)上に重なった浸透型インキの基材(2´)へ浸透を抑制する特性を有する。第二の実施の形態において、この第二の模様(5´)が、浸透型インキの基材(2´)へ浸透を抑制する特性に加えて、基材(2)と比較して光の透過性が相対的に低い特性、すなわち光遮断性を備える。
このような光遮断性を付与する方法としては、第二のインキ中に光遮断性の高い金属顔料を配合することが最も容易である。このような光遮断性の高い金属顔料としては、酸化チタンや酸化アルミ等の金属酸化物が最も適している。また、このような金属酸化物を顔料として混合しなくとも第二の模様(5´)の印刷皮膜を厚くして光遮断性を高めても良い。また、第二の模様(5´)は拡散反射光下で不可視であるため、第一の実施の形態と同様に、第二のインキは透明又は基材(2´)と等色である必要がある。その他の第二の模様(5´)の構成については第一の実施の形態と同じであるため、説明を省略する。
本発明の透過模様印刷物(1´)の形成方法について図7に示す通りであり、第一の実施の形態と同様あって、まず、基材(2´)に対して第二の模様(5´)を第二のインキを用いて印刷し、その上に重なるように第一の模様(4´)に浸透型インキを用いて重ね合わせて印刷する。
図8に作製した本発明の透過模様印刷物(1´)の効果を示す。図8(a)に示すように、反射光下で透過模様印刷物(1´)を観察した場合、印刷模様(3´)中には何の情報も視認できない。一方、図8(b)に示すように、透過光下で透過模様印刷物(1´)を観察した場合、印刷模様(3´)の中に階調豊かな富士山が視認できる。この出現する富士山は、基材(2´)を透過する光以上に多くの光を透過する領域、すなわち、基材(2´)よりも明るい階調で表現された領域と、基材(2´)を透過する光以下の少ない光しか透過しない領域、すなわち、基材(2´)よりも暗い階調で表現された領域の二つの領域が混在する。このため、第二の実施の形態における透過模様印刷物は、第一の実施の形態で示した透過模様印刷物(1´)同様ににじみがなく、容易に製造できるだけでなく、第一の実施の形態で示した、基材(2´)よりも明るい階調のみで表現された富士山と比較して、基材(2´)よりも明るい階調と暗い階調の両方が存在しているため、階調表現域が格段に広い、より階調表現性豊かな階調画像であることを特徴とする。
この効果は、第一の実施の形態では第二の模様(5´)には単に浸透型インキの浸透を抑制する効果しかなく、最も暗い階調(第二の模様(5´)が網点面積率100%で構成された領域)でも基材(2´)の明るさと同じ明るさ(暗さ)にしかならなかったのに対し、第二の実施の形態においては、第二の模様(5´)に光遮断性を付与することで透過光を減衰させ、基材(2´)よりも格段に暗い階調を形成することが可能になったために得られたものである。
第二の実施の形態における透過模様印刷物(3´)は、浸透型インキである第一のインキ及び光遮断性に優れた第二のインキを一つの印刷模様(3´)の中に同時に用い、それぞれのインキは一部に重なり合うにも関わらず、階調の最大値(8max)及び階調の最小値(8min)は、第一のインキと第二のインキを単独で用いた場合の階調と比較して全く遜色ない。これは、第二のインキの上では第一のインキが浸透しないために生じる効果であって、本発明の構成を持ってはじめて得られる効果である。なお、この具体的な階調表現域については、実施例と比較例で例示して後述する。この方法を用いることで、極めて単純な構造の画像を単に重ね合わせるだけで、階調表現性に極めて優れた透過模様印刷物を容易に作製することができる。
なお、本発明の第一の模様(4)は、第一の実施の形態及び第二の実施の形態の二つの形態でもベタの構成の画像を用いて説明したが、これに限定されるものではない。階調が単一階調で構成されたベタの場合、面積率は必ずしも100%である必要はないが、インキ転移量を高めるために、少なくとも50%以上の面積率とすることが望ましい。また、例えば、インキ自体に乾燥作用のないタイプの浸透型インキを用いる場合、第二の模様(5)の上に重なった浸透型インキは、基材(2)に浸透しないため、第一の模様(4)の上に未乾燥状態で存在し続けることになる。このような状態では汚れの原因となり、印刷物としての適当な流通適性や堅牢性を担保できないため、図10に示すように第一の模様(4)を濃淡反転させたネガ画像として、第二の模様の網点面積率の高い領域に重なるインキ量を減らした構成としても、第一の実施の形態及び第二の実施の形態で説明したのと全く同じ効果を得ることができる。
本発明でいう網点とは印刷の最小単位を表現する画像要素を指す。また、画線とは印刷の最小単位である網点を一定の距離隙間無く連続して配置した画像要素であって、点線や破線や分断線、分岐線等が含まれる。最後に、画素とは印刷の最小単位である網点を一定の大きさで一塊にした画像要素であって、円や楕円、多角形等の他に、画素を有意化した微小文字やマーク、記号等も含まれる。
以下、前述の発明を実施するための形態にしたがって、具体的に作製した透過模様印刷物(1)の実施例について詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
本実施例では第二の実施の形態で用いた図で説明する。図5に、本実施例における透過模様印刷物(1´)を示す。透過模様印刷物(1´)は、浸透性を有する基材(2´)の一表面上に拡散反射光下では不可視の印刷模様(3´)を有する。図5の透過模様印刷物(1´)においては、印刷模様(3´)の表す有意情報が見えているが、実際には不可視か、ほぼ不可視である。なお、印刷模様(3´)が表す有意情報とは富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」(以下:富士山)である。基材には一般的な白色上質紙(しらおい 日本製紙製)を用いた。
図6を用いて印刷模様(3´)の構成について説明する。印刷模様(3´)は、第二の模様(5´)の上に、第一の模様(4´)を重畳して形成する。第二の模様(5´)は、印刷模様(3´)の表す有意情報の情報をポジの状態で表した画像でとし、一方の第一の模様(4´)は、印刷模様(3´)全体を被覆するベタ画像とした。
まず、第一の模様(4´)について説明する。第一の模様(4´)は、図7にその印刷順を示すとおり、第二の模様(5´)に重畳して形成される画像である。第一の模様(4´)は、第二の模様(5´)の少なくとも一部を被覆する。実施例1においては、第二の模様(5)全体を被覆するベタ画像を用いた。
図7に示すように、第二のインキとして、金属酸化物である酸化チタンを顔料とした白インキ(GIGA 白 T&K TOKA製)を用いて第二の模様(5´)をオフセット印刷で印刷したのち、第一の模様(4´)を第一のインキとして、浸透型インキ(ベストワン 透かしインキ T&K TOKA製)を用いて網点面積率85%の単一階調のベタ模様で重ね合わせてオフセット印刷で印刷した。第二の模様(5´)は、基材と等色な白色であり、第一の模様(4´)は透明であった。
以上の構成で作製した透過模様印刷物(1´)の効果について、図8を用いて説明する。図8(a)に示すように、反射光下で透過模様印刷物(1´)を観察した場合、印刷模様(3´)中には何の情報も視認できなかった。一方、図8(b)に示すように、透過光下で透過模様印刷物(1´)を観察した場合、印刷模様(3´)の中に階調豊かな富士山が視認できた。この出現する富士山は、基材(2´)を透過する光以上に多くの光を透過する明るい領域と、基材(2´)を透過する光以下の少ない光しか透過しない暗い領域、二つの領域が同時に混在する、階調表現豊かな画像となった。以上のように、にじみがなく、シャープで、階調表現に優れた透過模様印刷物(1´)を作製することができた。
(比較例1)
本発明の透過模様印刷物(1´)の特徴を明確にするため、比較例1として従来の技術によって実施例1と同じ図柄で透過模様印刷物(1−1)を形成した。まず、従来タイプの浸透型インキを用いて作製する、基材よりも明るい階調によって透過模様を表現するタイプの透過模様印刷物(1−1)として、図10に示す富士山を濃淡反転させたネガの構成の図柄で、実施例1と同じ浸透型インキ(ベストワン 透かしインキ T&K TOKA製)を用いてオフセット印刷で作製した。図11に透過光下で透過模様印刷物(1−1)を観察した場合の画像を示す。図11に示すように、画像全体ににじみが生じてぼやけた状態となった。また、画像の最小の階調(8−1min)は基材の階調(8−1Base)に対してより明るい状態とすることができたが、一方の最大の階調(8−1max)は、基材の階調(8−1Base)を超えることはなくため、基材の階調よりも暗い階調が存在せず、階調表現に乏しい画像となった。
(比較例2)
比較例2として従来の技術によって実施例1と同じ図柄で透過模様印刷物(1−2)を形成した。本比較例2では従来タイプの光遮断性の高いインキを用いて作製する、基材よりも暗い階調によって透過模様を表現するタイプの透過模様印刷物(1−2)として、図6に示した構成の画像を、実施例1と同じ浸透型インキの浸透を抑制する作用を有し、かつ、光遮断性を有する白インキ(GIGA 白 T&K TOKA製)を用いてオフセット印刷で作製した。図12に透過光下で透過模様印刷物(1−2)を観察した場合の画像を示す。図12に示すように、本比較例2では透過模様印刷物ににじみは生じなかったが、画像の最大の階調(8−2max)は基材の階調(8−2Base)に対してより暗い階調となった一方、最小の階調(8−2min)は、基材の階調(8−2Base)未満になることはなく、基材の階調よりもよりも明るい階調が存在せず、階調表現に乏しい画像となった。
なお、実施例1の透過模様印刷物(1)と比較例1の透過模様印刷物(1−1)及び比較例2の透過模様印刷物(1−2)の階調表現域を比較したところ、実施例1の透過模様印刷物(1)における最小階調(8min)と、比較例1の透過模様印刷物(1−1)の最小階調(8−1min)は同じ値であり、実施例1の透過模様印刷物(1)における最大の階調(8max)と、比較例2の透過模様印刷物(1−2)の最大階調(8−2max)は同じ値であることが確認できた。すなわち、本発明の印刷模様(3)を形成するにあたって、第二のインキで形成した第二の模様(5)の上に、第一のインキを重ねる、インキ同士が重畳した形態であるにも関わらず、それぞれのインキで単独で得られる最大あるいは最小の階調を損なうことなく、極めて広い階調表現域を有する画像を表現できていることが確認できた。
1、1´ 透過模様印刷物
1−1、1−2 従来型の透過模様印刷物
2、2´ 基材
3、3´ 印刷模様
4、4´、4n 第一の模様
5、5´ 第二の模様
6、6´ 光源
7、7´ 観察者
8min、8−1min、8−2min 透過模様印刷物の最小の階調
8max、8−1max、8−2max 透過模様印刷物の最大の階調
8Base、8−1Base、8−2Base 透過模様印刷物の基材の階調

Claims (4)

  1. 光透過性及び浸透性を有する基材上の少なくとも一部に、前記基材に向かって第一の模様及び第二の模様が積層された印刷模様を有し、
    前記第一の模様は、浸透成分を有する透明の第一のインキにより形成され、
    前記第二の模様は、前記第一のインキの浸透を抑制する特性を有し、透明又は前記基材と等色の第二のインキにより形成され、
    透過光下において前記第二の模様が視認できることを特徴とする透過模様印刷物。
  2. 前記第二のインキは、前記基材よりも光透過性が低い特性を更に有することを特徴とする請求項1記載の透過模様印刷物。
  3. 前記第二のインキが、光遮断性の高い金属顔料を含んでいることを特徴とする請求項2記載の透過模様印刷物。
  4. 前記第二の模様が階調を有する模様であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の透過模様印刷物。
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