本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
(潜像模様発現構造)
図3は、潜像模様発現構造(10)の構成を示す図であり、潜像模様発現構造(10)は、図3(b)に示す位相変調模様(20)と、図3(c)に示す万線模様(30)から成る。位相変調模様(20)の詳細な構成については、後述するが、図3(b)に示す位相変調模様(20)は、万線の位相差を設けることで、「1」の数字を現した例である。本発明の潜像模様発現構造(10)において、位相変調模様(20)と万線模様(30)を重ねて観察することで、図3(a)に示す「1」の数字の潜像模様(11)を視認することができるが、位相変調模様(20)のみを観察した際に潜像模様(11)の図柄の隠蔽性が高いことが特徴である。以下、本発明の潜像模様発現構造(10)を構成する位相変調模様(20)及び万線模様(30)の詳細な構成について説明する。
(位相変調模様)
図4は、位相変調模様(20)の構成を示す図である。位相変調模様(20)は、有色の画線(21)が第1の方向(V1)に一定のピッチ(P)で配置された万線において、図4の拡大図に示すように、一部の位相が異なることで、潜像模様(11)の図柄(ここでは、「1」の数字の例)を現す潜像部(20A)とその背景を現す背景部(20B)に区分けされる。以降、「潜像模様(11)の図柄」を「潜像の図柄」と記載する場合があるが、同じ意味であり、図面を用いて説明する場合に、「潜像模様(11)の図柄」として説明する。なお、本発明において、「画線の位相が異なる」とは、潜像部(20A)を構成する画線と背景部(20B)を構成する画線が、互いに画線の方向と直行する方向にずれて配置されることである。図4に示す位相変調模様(20)は、潜像部(20A)を構成する画線が、第1の方向(V1)にずれて配置された例を示しているが、第1の方向(V1)と逆の方向にずれて配置されてもよい。本実施の形態では、潜像部(20A)を構成する画線が第1の方向(V1)にずれて配置された例について説明する。また、背景部(20B)を構成する画線を、以降、「背景画線(21B)」として説明する。
本発明において潜像部(20A)が現す図柄は、「1」の数字に限定されるものではなく、他の数字や、文字、記号、マーク等でもよいが、本実施の形態では、図1に示す従来の位相変調万線模様(110)に対する構成の差を分かり易く説明するため、同じ図柄とした例で説明する。
図5は、図1に示す従来の位相変調万線模様(110)において隣同士の画線の間隔が所定のピッチ(周期)より短い場合に、潜像の図柄が推測されてしまう課題を解決した本発明の潜像部(20A)の構成を示す図である。図5に示すように、潜像部(20A)は、背景部(20B)と隣接する境界部分に、一例として、一つの第1の潜像画線(21A1)を備え、第1の潜像画線(21A1)は、図5の拡大図に示すように、背景画線(21B)と異なる位相に配置された潜像構成画線(21a1)と、背景画線(21B)の少なくとも一部と同じ位相に配置された濃度緩和画線(21b1)が隣接して成る。ここで、潜像構成画線(21a1)が、背景画線(21B)と異なる位相に配置されるとは、図5の拡大図に示すように、背景画線(21B)の延長線上に、潜像構成画線(21a)が重ならず、隣の背景画線(21B)との間の位相に配置されることである。また、濃度緩和画線(21b1)が背景画線(21B)と同じ位相に配置されるとは、図5の拡大図に示すように、背景画線(21B)の延長線上の少なくとも一部に濃度緩和画線(21b1)が重なって配置されることであり、図5の拡大図は、背景画線(21B)の一部と同じ位相に、濃度緩和画線(21b1)が配置された例を示している。
図6は、第1の潜像画線(21A1)のより詳細な構成を示す図である。背景部(20B)には、従来の位相変調万線模様(110)と同様に、一定の画線幅(WB)の背景画線(21B)が、一定のピッチ(P1)で複数配置される。また、潜像部(20A)において、上から2番目以降の画線もまた、従来の位相変調万線模様(110)と同様に、背景画線(21B)から1/2ピッチ異なる位相に潜像画線(21A0)が配置され、潜像画線(21A0)は、背景画線(21B)の画線幅(WB)と同じ画線幅(WA)で構成され、かつ、背景画線(21B)と同じピッチ(P1)で配置される。
一方、第1の潜像画線(21A1)の画線幅(WA1)は、背景画線の画線幅(WB)及び潜像画線(21A0)の画線幅(WA)より小さく、潜像構成画線(21a1)の画線幅(Wa1)及び濃度緩和画線(21b1)の画線幅(Wb1)もまた、背景画線の画線幅(WB)よりも小さい。また、第1の方向(V1)に隣り合う第1の潜像画線(21A1)と背景画線(21B)の中心線間の距離(LA1-B)及び第1の潜像画線(21A1)と潜像画線(21A0)の中心線間の距離(LA1-A0)が、潜像画線(21A0)及び背景画線(21B)が配置されるピッチ(P1)より小さい。
図6に示す構成によれば、従来の位相変調万線模様(110)よりも、潜像部(20A)と背景部(20B)の間の非画線部が大きくなり、従来の位相変調万線模様(110)において、隣り合う画線の距離が所定のピッチよりも短く濃い色で視認されるという問題を解決することができる。
続いて、図2に示す従来の位相変調万線模様(110’)において、隣同士の画線の間隔が所定のピッチより短い場合に、潜像の図柄が推測されてしまう課題を解決した本発明の潜像部(20A)の構成について、図7を用いて説明する。なお、図7においても潜像部(20A)が現す図柄は、「1」の数字の例であり、図7は、「1」の数字を現す潜像部(20A)の図柄のうち、図6に示す潜像部(20A)と同じ領域の構成を示したものである。また、図7において、背景画線(21B)の構成は前述のとおりである。また、潜像部(20A)において、上から2番目以降の画線もまた、従来の位相変調万線模様(110’)と同様であり、背景画線(21B)の画線幅(WB)と同じ画線幅(WA)の潜像画線(21A0)が、背景画線(21B)から1/4ピッチ位相がずれて配置された例である。また、図7において潜像部(20A)は、背景部(20B)と隣接する境界部分に、一つの第1の潜像画線(21A1)を備えた例である。
図7に示す潜像部(20A)においても、第1の潜像画線(21A1)の基本的な構成は、図6に示す構成と同様であって、第1の潜像画線(21A1)の画線幅(WA1)は、背景画線の画線幅(WB)及び潜像画線(21A0)の画線幅(WA)より小さく、潜像構成画線(21a1)の画線幅(Wa1)及び濃度緩和画線(21b1)の画線幅(Wb1)もまた、背景画線の画線幅(WB)よりも小さい。また、第1の方向(V1)に隣り合う第1の潜像画線(21A1)と背景画線(21B)の中心線間の距離(LA1-B)及び第1の潜像画線(21A1)と潜像画線(21A0)の中心線間の距離(LA1-A0)が、潜像画線(21A0)及び背景画線(21B)が配置されるピッチ(P1)より小さい。
図7に示す構成によれば、従来の位相変調万線模様(110’)よりも、潜像部(20A)と背景部(20B)の間の非画線部が大きくなり、濃い色で視認されるという問題を解決することができる。
図6及び図7では、第1の潜像画線(21A1)の画線幅(WA1)、第1の潜像画線(21A1)と隣り合う背景画線(21B)の間の非画線部の距離(MA1-B)及び第1の潜像画線(21A1)と隣り合う潜像画線(21A0)の間の非画線部の距離(MA1-A0)が異なる例を示しているが、これらを同じ構成とすると、潜像部(20A)と背景部(20B)の境界部分において、単位面積当たりの画線面積率が一定で濃淡差がなくなり潜像の図柄の隠蔽性が高まることから好ましい。また、第1の潜像画線(21A1)と隣り合う背景画線(21B)の間の非画線部の距離(MA1-B)と、第1の潜像画線(21A1)と隣り合う潜像画線(21A0)の間の非画線部の距離(MA1-A0)を同じにすることも潜像の図柄の隠蔽性が高まるために好ましい形態であるが、前者の方が効果が高い。
本発明において、第1の潜像画線(21A1)は、複数設けてもよく、一例として二つの第1の潜像画線(21A1)を備えた潜像部(20A)の構成について、図8を用いて説明する。
図8は、二つの第1の潜像画線(21A1)を備えた潜像部(20A)の構成を示す図であり、図6に示す潜像部(20A)が現す図柄である「1」の一部に対応した領域を拡大した図である。図8において、潜像部(20A)が備える第1の潜像画線を符号(21A1-1、21A1-2)として説明する。背景画線(21B)については、前述した構成と同様であり、潜像画線(21A0)は、潜像部(20A)の上から3番目以降の画線である。
図8に示す構成において、第1の潜像画線(21A1-1)の画線幅(WA1-1)及び第1の潜像画線(21A1-2)の画線幅(WA1-2)は、背景画線の画線幅(WB)及び潜像画線(21A0)の画線幅(WA)より小さい。また、第1の潜像画線(21A1-2)の画線幅(WA1-2)は、第1の潜像画線(21A1-1)の画線幅(WA1-1)と同じか又は第1の潜像画線(21A1-1)の画線幅(WA1-1)より大きい。また、第1の潜像画線(21A1-2)を構成する潜像構成画線(21a1)の画線幅(Wa1)は、第1の潜像画線(21A1-1)を構成する潜像構成画線(21a1)の画線幅(Wa1)より大きい。また、第1の潜像画線(21A1-2)を構成する濃度緩和画線(21b1)の画線幅(Wb1)は、第1の潜像画線(21A1-1)を構成する濃度緩和画線(21b1)の画線幅(Wb1)より小さい。すなわち、図8に示す潜像部(20A)は、第1の潜像画線(21A1-1)から潜像画線(21A0)にかけて、潜像構成画線(21a1)及び濃度緩和画線(21b1)の割合が異なり、徐々に潜像画線(21A0)の構成に近づく構成となっている。
また、第1の方向(V1)に隣り合う第1の潜像画線(21A1-1)と背景画線(21B)の中心線間の距離(LA1-B)、第1の潜像画線(21A1-1)と第1の潜像画線(21A1-2)の中心線間の距離(LA1-A1)及び第1の潜像画線(21A1-2)と潜像画線(21A0)の中心線間の距離(LA1-A0)が、潜像画線(21A0)及び背景画線(21B)が配置されるピッチ(P1)より小さい。
以上に説明した、二つの第1の潜像画線(21A1-1、21A1-2)を備えた図8に示す構成の潜像部(20A)は、図6に示す構成に対して、画線の幅の変化の度合いが緩やかであることから、潜像の図柄の隠蔽効果が高い構成であり好ましい。また、本実施の形態では、二つの第1の潜像画線(21A1-1、21A1-2)を備えた潜像部(20A)の例について説明したが、更に、多くの第1の潜像画線を設けてもよい。ここでは、図6に示す構成に対して、二つの第1の潜像画線(21A1-1、21A1-2)を備えた潜像部(20A)について説明したが、図7に示す構成においても、同様にして、二つの第1の潜像画線を設けてもよい。
図8では、第1の潜像画線(21A1-1)の画線幅(WA1-1)、第1の潜像画線(21A1-2)の画線幅(WA1-2)、第1の潜像画線(21A1-1)と隣り合う背景画線(21B)の間の非画線部の距離(MA1-B)、第1の潜像画線(21A1-1)と第1の潜像画線(21A1-2)の間の非画線部の距離(MA1-A1)及び第1の潜像画線(21A1-2)と潜像画線(21A0)の間の非画線部の距離(MA1-A0)が、異なる例を示しているが、これらを同じ構成にすると潜像部(20A)と背景部(20B)の境界部分において、単位面積当たりの画線面積率が一定で濃淡差がなくなり潜像の図柄の隠蔽性が高まることから好ましい。また、第1の潜像画線(21A1-2)の画線幅(WA1-2)が第1の潜像画線(21A1-1)の画線幅(WA1-1)より大きい場合、第1の潜像画線(21A1-1)と隣り合う背景画線(21B)の間の非画線部の距離(MA1-B)、第1の潜像画線(21A1-1)と第1の潜像画線(21A1-2)の間の非画線部の距離(MA1-A1)、第1の潜像画線(21A1-2)と潜像画線(21A0)の間の非画線部の距離(MA1-A0)の順に、非画線部が小さい構成(距離(MA1-B)が最も小さく、距離(MA1-A0)が最も大きい)とすることも、潜像の図柄の隠蔽性が高まることから好ましい。
図9は、図4に示す位相変調模様(20)において、破線で囲む領域の構成を示す図であり、「1」の数字の輪郭の傾斜部分の構成を示す図である。図9に示す「1」の数字の輪郭の傾斜部分は、図1(b)に示す従来の位相変調万線模様(110)において、隣り合う画線のピッチが狭くなる部位(破線で囲った部位)に対応しており、本発明の位相変調模様(20)は、当該領域にも第1の潜像画線(21A1)を備える。図9に示す位相変調模様(20)は、画線の位置に応じて段階的に位相が異なることから、位相が段階的に異なるそれぞれの領域を符号(S1、S2、S3、S4)として説明する。なお、図9に示す背景画線(21B)、潜像画線(21A0)及び領域(S1)に配置される第1の潜像画線(21A1-1、21A1-2)の構成は、図8に示す構成と同じであるため、説明を省略する。
領域(S2)に配置される第1の潜像画線(21A1-1’、21A1-2’)もまた、背景画線(21B)と異なる位相に配置された潜像構成画線(21a1)と、背景画線(21B)の少なくとも一部と同じ位相に配置された濃度緩和画部線(21b1)が隣接して成り、第1の潜像画線(21A1-1’)の画線幅(WA1-1’)と第1の潜像画線(21A1-2’)の画線幅(WA1-2’)は、背景画線の画線幅(WB)よりも小さい。また、第1の方向(V1)に隣り合う第1の潜像画線(21A1-1’)と背景画線(21B)の中心線間の距離、第1の潜像画線(21A1-1’)と第1の潜像画線(21A1-2’)の中心線間の距離及び第1の潜像画線(21A1-2’)と潜像画線(21A0)の中心線間の距離は、潜像画線(21A0)及び背景画線(21B)が配置されるピッチ(P1)より小さい。
以上の構成により、領域(S2)においても、従来の位相変調万線模様(110’)よりも、潜像部(20A)と背景部(20B)の間の非画線部が大きくなり、濃い色で視認されるという問題を解決することができる。
図9に示す構成おいて、領域(S2)に設けた第1の潜像画線(21A1-1’、21A1-2’)は、領域(S1)に設けた第1の潜像画線(21A1-1、21A1-2)と同じ画線幅であって、かつ、配置する間隔が同じであると潜像の図柄の隠蔽する効果が高いことから好ましい。具体的には、第1の潜像画線(21A1-1’)の画線幅(WA1-1’)と第1の潜像画線(21A1-1)の画線幅(WA1-1)が同じであって、潜像構成画線(21a1)と濃度緩和画線(21b1)の割合も同じ構成であること、更に、第1の潜像画線(21A1-2’)の画線幅(WA1-2’)と第1の潜像画線(21A1-2)の画線幅(WA1-2)が同じであって、潜像構成画線(21a1)と濃度緩和画線(21b1)の割合が同じ構成であること、更に、領域(S2)に配置される背景画線(21B)、第1の潜像画線(21A1-1’)、第1の潜像画線(21A1-2’)及び潜像画線(21A0)の間隔が、領域(S1)に配置される背景画線(21B)、第1の潜像画線(21A1-1)、第1の潜像画線(21A1-2)及び潜像画線(21A0)の間隔と同じ構成である。
領域(S3)においても、図9に示すように、領域(S2)に設ける二つの第1の潜像画線(21A1-1’、21A1-2’)と同様にして、第1の潜像画線(21A1-1’’、21A1-2’’)を設ければよく、領域(S4)においても、領域(S2)に設ける二つの第1の潜像画線(21A1-1’、21A1-2’)と同様にして、第1の潜像画線(21A1-1’’’、21A1-2’’’)を設ければよい。
図9に示す位相変調模様(20)は、図8に示す構成に対応して、「1」の数字の輪郭の傾斜部分に二つの第1の潜像画線(21A1)を設けた例について説明したが、図6に示すように、一つの第1の潜像画線(21A1)を設ける場合は、「1」の数字の輪郭の傾斜部分にも、一つの第1の潜像画線を設ければよい。
続いて、図1に示す従来の位相変調万線模様(110)において隣同士の画線の間隔が所定のピッチ(周期)より長い場合に、潜像の図柄が推測されてしまう課題を解決した本発明の潜像部(20A)の構成について、図10を用いて説明する。
図10は、図1に示す従来の位相変調万線模様(110)において、隣同士の画線の間隔が所定のピッチより長い場合に、潜像の図柄が推測されてしまう課題を解決した本発明の潜像部(20A)の構成を示す図である。図10(a)の拡大図に示すように、潜像部(20A)は、背景部(20B)と隣接する境界部分に、一例として、一つの第2の潜像画線(21A2)を備え、第2の潜像画線(21A2)は、図10(b)の拡大図に示すように、背景画線(21B)と異なる位相に配置された潜像構成画線(21a2)と、背景画線(21B)の少なくとも一部と同じ位相に配置された濃度緩和画線(21b2)が隣接して成る。
図11は、第2の潜像画線(21A2)のより詳細な構成を示す図である。背景部(20B)には、従来の位相変調万線模様(110)と同様に、一定の画線幅(WB)の背景画線(21B)が、一定のピッチ(P1)で複数配置され、潜像部(20A)において、下から2番目より上の画線もまた、従来の位相変調万線模様(110)と同様に、背景画線(21B)から1/2ピッチ異なる位相に配置された潜像画線(21A0)であり、潜像画線(21A0)は、背景画線(21B)の画線幅(WB)と同じ画線幅(WA)で構成され、かつ、背景画線(21B)と同じピッチ(P1)で配置される。
一方、第2の潜像画線(21A2)の画線幅(WA2)は、背景画線の画線幅(WB)及び潜像画線(21A0)の画線幅(WA)より大きい。図11に示す第2の潜像画線(21A2)において、濃度緩和画線(21b2)の画線幅(Wb2)は、背景画線(21B)の画線幅(WB)と同じ構成とした例を示しているが、第2の潜像画線(21A2)の画線幅(WA2)が、背景画線の画線幅(WB)及び潜像画線(21A0)の画線幅(WA)より大きければ、濃度緩和画線(21b2)の画線幅(Wb2)が、背景画線(21B)の画線幅(WB)より小さくてもよい。また、第1の方向(V1)に隣り合う第2の潜像画線(21A2)と背景画線(21B)の中心線間の距離(LA2-B)及び第2の潜像画線(21A2)と潜像画線(21A0)の中心線間の距離(LA0-A2)が、潜像画線(21A0)及び背景画線(21B)が配置されるピッチ(P1)より大きい。
図11に示す構成によれば、従来の位相変調万線模様(110)よりも、潜像部(20A)と背景部(20B)の間の非画線部が小さいことで、潜像の図柄の一部が空白となり目立って視認されるという問題を解決することができる。
続いて、図2に示す従来の位相変調万線模様(110’)において、隣同士の画線の間隔が所定のピッチより長い場合に、潜像の図柄が推測されてしまう課題を解決した本発明の潜像部(20A)の構成について、図12を用いて説明する。なお、図12においても潜像部(20A)が現す図柄は、「1」の数字の例であり、図12は、「1」の数字を現す潜像部(20A)の図柄のうち、図11に示す潜像部(20A)と同じ領域の構成を示したものである。また、図12において、背景画線(21B)の構成は前述のとおりであり、潜像部(20A)において、下から2番目より上の画線もまた、従来の位相変調万線模様(110’)と同様であり、背景画線(21B)の画線幅(WB)と同じ画線幅(WA)の潜像画線(21A0)が、背景画線(21B)から1/4ピッチ位相がずれて配置された例である。また、図12において潜像部(20A)は、背景部(20B)と隣接する境界部分に、一つの第2の潜像画線(21A2)を備えた例である。
図12に示す潜像部(20A)においても、第2の潜像画線(21A2)の基本的な構成は、図11に示す構成と同様であって、第2の潜像画線(21A2)の画線幅(WA2)は、背景画線の画線幅(WB)及び潜像画線(21A0)の画線幅(WA)より大きい。また、第1の方向(V1)に隣り合う第2の潜像画線(21A2)と背景画線(21B)の中心線間の距離(LA2-B)及び第2の潜像画線(21A2)と潜像画線(21A0)の中心線間の距離(LA0-A2)が、潜像画線(21A0)及び背景画線(21B)が配置されるピッチ(P1)より大きい。
図12に示す構成においても、従来の位相変調万線模様(110’)よりも、潜像部(20A)と背景部(20B)の間の非画線部が小さいことで、潜像の図柄の一部が空白となり目立って視認されるという問題を解決することができる。
図11及び図12では、第2の潜像画線(21A2)の画線幅(WA2)、第2の潜像画線(21A2)と隣り合う背景画線(21B)の間の非画線部の距離(MA2-B)及び第2の潜像画線(21A2)と隣り合う潜像画線(21A0)の間の非画線部の距離(MA0-A2)が異なる例を示しているが、これらを同じ構成とすると、潜像部(20A)と背景部(20B)の境界部分において、単位面積当たりの画線面積率が一定で濃淡差がなくなり潜像の図柄の隠蔽性が高まることから好ましい。また、第2の潜像画線(21A2)と隣り合う背景画線(21B)の間の非画線部の距離(MA2-B)と、第2の潜像画線(21A2)と隣り合う潜像画線(21A0)の間の非画線部の距離(MA0-A2)を同じにすることも潜像の図柄の隠蔽性が高まるために好ましい形態であるが、前者の方が効果が高い。
図11に示す構成に対して、第2の潜像画線(21A2)は、複数設けてもよく、一例として二つの第2の潜像画線(21A2)を備えた潜像部(20A)の構成について、図13を用いて説明する。
図13は、二つの第2の潜像画線(21A2)を備えた潜像部(20A)の構成を示す図であり、図10に示す潜像部(20A)が現す図柄である「1」の一部に対応した領域の拡大図である。図13において、潜像部(20A)が備える第2の潜像画線を符号(21A2-1、21A2-2)として説明する。背景画線(21B)については、前述した構成と同様であり、図13において潜像画線(21A0)は、潜像部(20A)の下から3番目より上の画線である。
図13に示す構成において、第2の潜像画線(21A2-1)の画線幅(WA2-1)及び第2の潜像画線(21A2-2)の画線幅(WA2-2)は、背景画線の画線幅(WB)及び潜像画線(21A0)の画線幅(WA)より大きい。また、第2の潜像画線(21A2-2)の画線幅(WA2-2)は、第2の潜像画線(21A2-1)の画線幅(WA2-1)と同じか又は第2の潜像画線(21A2-1)の画線幅(WA2-1)より小さい。また、第2の潜像画線(21A2-2)を構成する潜像構成画線(21a2)の画線幅(Wa2)は、第2の潜像画線(21A2-1)を構成する潜像構成画線(21a2)の画線幅(Wa2)より大きい。また、第2の潜像画線(21A2-2)を構成する濃度緩和画線(21b2)の画線幅(Wb2)は、第2の潜像画線(21A2-1)を構成する濃度緩和画線(21b2)の画線幅(Wb2)より小さい。すなわち、図13に示す潜像部(20A)は、第2の潜像画線(21A2-1)から潜像画線(21A0)にかけて、潜像構成画線(21a2)及び濃度緩和画線(21b2)の割合が異なり、徐々に潜像画線(21A0)の構成に近づく構成となっている。なお、図13に示す第2の潜像画線(21A2-2)において、潜像構成画線(21a2)の画線幅(Wa2)は、背景画線(21B)の画線幅(WB)と同じ構成とした例を示しているが、第2の潜像画線(21A2-2)の画線幅(WA2-2)が、背景画線の画線幅(WB)及び潜像画線(21A0)の画線幅(WA)より大きければ、潜像構成画線(21a2)の画線幅(Wa2)が、背景画線(21B)の画線幅(WB)より小さくてもよい。
また、第1の方向(V1)に隣り合う第2の潜像画線(21A2-1)と背景画線(21B)の中心線間の距離(LA2-B)、第2の潜像画線(21A2-1)と第2の潜像画線(21A2-2)の中心線間の距離(LA2-A2)及び第2の潜像画線(21A2-2)と潜像画線(21A0)の中心線間の距離(LA0-A2)が、潜像画線(21A0)及び背景画線(21B)が配置されるピッチ(P1)より大きい。
以上に説明した、二つの第2の潜像画線(21A2-1、21A2-2)を備えた図13に示す構成の潜像部(20A)は、図11に示す構成に対して、画線の幅の変化の度合いが緩やかであることから、潜像の図柄の隠蔽効果が高い構成であり好ましい。また、図13では、二つの第2の潜像画線(21A2-1、21A2-2)を備えた潜像部(20A)の例について説明したが、更に、多くの第2の潜像画線を設けてもよい。ここでは、図11に示す構成に対して、二つの第2の潜像画線(21A2-1、21A2-2)を備えた潜像部(20A)について説明したが、図12に示す構成においても、同様にして、二つの第2の潜像画線を設けてもよい。
図13では、第2の潜像画線(21A2-1)の画線幅(WA2-1)、第2の潜像画線(21A2-2)の画線幅(WA2-2)、第2の潜像画線(21A2-1)と隣り合う背景画線(21B)の間の非画線部の距離(MA2-B)、第2の潜像画線(21A2-1)と第2の潜像画線(21A2-2)の間の非画線部の距離(MA2-A2)及び第2の潜像画線(21A2-2)と潜像画線(21A0)の間の非画線部の距離(MA0-A2)が、異なる例を示しているが、これらを同じ構成にすると、潜像部(20A)と背景部(20B)の境界部分において、単位面積当たりの画線面積率が一定で濃淡差がなくなり潜像の図柄の隠蔽性が高まることから好ましい。また、第2の潜像画線(21A2-2)の画線幅(WA2-2)が第2の潜像画線(21A2-1)の画線幅(WA2-1)より小さい場合、第2の潜像画線(21A2-1)と隣り合う背景画線(21B)の間の非画線部の距離(MA2-B)、第2の潜像画線(21A2-1)と第2の潜像画線(21A2-2)の間の非画線部の距離(MA2-A2)、第2の潜像画線(21A2-2)と潜像画線(21A0)の間の非画線部の距離(MA0-A2)の順に、非画線部が大きい構成(距離(MA2-B)が最も大きく、距離(MA0-A2)が最も小さい)とすることも、潜像の図柄の隠蔽性が高まることから好ましい。
図11及び図13では、図10に示す本発明の位相変調模様(20)の一部の構成を拡大して説明したが、図10に示す破線で囲む領域もまた、図1(b)に示す従来の位相変調万線模様(110)において、隣り合う画線のピッチが長くなる部位に対応しており、当該領域にも第2の潜像画線を備える。この場合、「1」の数字の輪郭の傾斜部分に対応して、図11又は図13に示す第2の潜像画線(21A2)を設ければよい(図示せず)。図2(a)に示す位相変調万線模様(110’)においても、同様にして、「1」の数字の輪郭の傾斜部分に対応して、図12に示す第2の潜像画線(21A2)を設ければよい(図示せず)。
以上の構成で成る本発明の位相変調模様(20)は、一例として、図14(a)に示す紙、フィルム、プラスチック等から成るシート状の基材(2)の少なくとも一部に、基材(2)と異なる色の有色のインキを印刷して形成される。位相変調模様(20)を印刷する手段としては、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の印刷機、更にはインクジェットプリンタやレーザプリンタを用いることができる。また、基材(2)に位相変調模様(20)を形成する方法は、レーザー照射によって印字する方法でもよく、基材(2)に色を付与できる方法であれば、特に限定されるものではない。以降、位相変調模様(20)を備えた基材(2)を「潜像模様形成体(1)」という。
また、万線模様(30)は、一例として、図14(b)に示す光透過性の基材(3)に、有色のインキを印刷して形成される。なお、万線模様(30)の色は、位相変調模様(20)と同じ色でもよいし、異なる色でもよい。万線模様(30)は、図14(b)の拡大図に示すように、位相変調模様(20)を構成する背景画線(21B)及び潜像画線(21A0)と同じ画線幅(W)の画線(31)が、背景画線(21B)及び潜像画線(21A0)が配置されるピッチ(P1)と同じピッチで複数配置される。万線模様(30)を形成する基材(3)が備える光透過性とは、位相変調模様(20)が形成された基材(2)に重ねて観察した際に、位相変調模様(20)が透けて見えることであり、位相変調模様(20)が透けて見えれば着色されていてもよいが、万線模様(30)を形成する基材(3)は、好ましくは、透明なフィルムやポリマー基材がよい。なお、図14(b)に示す光透過性の基材(3)に万線模様(30)が形成されたものを一般には、万線フィルタと呼ばれている。
(効果)
本発明の位相変調模様(20)の効果について、図15を用いて説明する。図15(a)は、本発明の位相変調模様(20)を示し、図15(b)は、比較のため従来の位相変調万線模様(110)を示している。図15(a)に示すように、本発明の位相変調模様(20)は、潜像部(20A)と背景部(20B)の境界に第1の潜像画線(21A1)及び第2の潜像画線(21A2)を備えることで、潜像の図柄の隠蔽性を向上させることができる。また、位相変調模様(20)が形成された基材(2)に万線模様(30)が形成された基材(3)を重ねて観察すると、図15(c)に示すように、潜像模様(11)の図柄である「1」の数字を視認することができる。
本発明の位相変調模様(20)において、潜像模様(11)の図柄は、図3に示す「1」の数字とした例について説明したが、潜像の図柄(輪郭)に応じて、隣り合う画線の間隔が狭くなる領域(位置)と、広くなる領域(位置)が異なるので、潜像の図柄に応じて、適宜、第1の潜像画線(21A1)と第2の潜像画線(21A2)を設ければよい。例えば、図16に示すように、潜像模様(11)の図柄が、「ドーナツ形状」であって、潜像部(20A)を構成する画線が、第1の方向(V1)にずれて配置される場合、破線で囲む領域の潜像部(20A)は、隣同士の画線の間隔が所定のピッチより短くなる領域のため、図6から図9に示す第1の潜像画線(21A1)を、適宜、設ければよい。また、図16に示す点線で囲む領域は、隣同士の画線の間隔が所定のピッチより長くなる領域のため、図11から図13に示す第2の潜像画線(21A2)を、適宜、設ければよい。
本実施の形態では、潜像部(20A)を構成する画線が第1の方向(V1)にずれて配置された例について説明したが、第1の方向(V1)と逆の方向にずれて配置された場合、位相変調模様において、濃く視認される領域と空白となる領域が入れ替わるため、背景画線(21B)の画線幅(WB)より小さい画線幅の第1の潜像画線(21A1)と、背景画線(21B)の画線幅(WB)より大きい画線幅の第2の潜像画線(21A2)を設ける位置を入れ替えて配置すればよい。
また、本実施の形態では、位相変調模様(20)が潜像部(20A)と背景部(20B)の境界部分に第1の潜像画線(21A1)及び第2の潜像画線(21A2)を設ける構成について説明したが、第1の潜像画線(21A1)と第2の潜像画線(21A2)のうち、一方の潜像画線を設ける構成でもよい。
以上の説明では、潜像部(20A)と背景部(20B)の境界部分に第1の潜像画線(21A1)及び第2の潜像画線(21A2)を設ける構成について説明したが、特許文献1の技術のように、潜像が複数の階調を伴って視認できる位相変調万線模様の潜像部に、本発明の第1の潜像画線(21A1)と第2の潜像画線(21A2)を設けることで、潜像の図柄の隠蔽性を向上させることができ、以下、潜像模様が複数の階調を伴って視認される位相変調模様(20)の構成について説明する。
(潜像模様が階調の例)
位相変調模様(20)の構成について、簡易に説明するため、潜像模様が、図17(a)に示す「四角形の図柄」とそれを囲む「ロの字の図柄」であり、「四角形の図柄」が淡く、「ロの字の図柄」が濃く視認される構成について説明する。
図17(b)は、万線の位相差を設けることで、「四角形の図柄」と「ロの字の図柄」を現した位相変調模様(20)の構成を示す図であり、以降、「四角形の図柄」を現す潜像部を符号(20A1)、「ロの字の図柄」を現す潜像部を符号(20A2)として説明する。なお、図17(c)は、図17(b)に示す本発明の位相変調模様(20)と比較のため、従来の位相変調万線模様(110’’)の構成を示す図である。
図18は、図17(b)の位相変調模様(20)において、実線で囲む領域の一部拡大図である。「四角形の図柄」を現す潜像部(20A1)は、図18に示すように、背景画線(21B)に対して、第1の方向(V1)に1/4ピッチ位相がずれて潜像画線(21A0’)が一定のピッチ(P1)で複数配置される。また、「ロの字の図柄」を現す潜像部(20A2)は、図18に示すように、背景画線(21B)に対して、第1の方向(V1)に1/2ピッチ位相がずれて潜像画線(21A0’’)が一定のピッチ(P1)で複数配置される。また、潜像画線(21A0’、21A0’’)と背景画線(21B)の画線幅は同じである。なお、これらの構成については、特許文献1と同じ、すなわち、図17(c)に示す位相変調万線模様(110’’)と同じであり、潜像模様の階調に応じて位相が異なったものである。
図17(b)に示す位相変調模様(20)において、潜像部(20A2)が第1の方向(V1)に隣接する背景部(20B)との境界部に第1の潜像画線(21A1)を備えるが、当該構成については、図6及び図8で説明した構成と同じであるため、説明を省略する。また、図17(b)に示す位相変調模様(20)において、潜像部(20A2)が第1の方向(V1)と反対側の方向に隣接する背景部(20B)との境界部に第2の潜像画線(21A2)を備えるが、当該構成については、図11及び図13で説明した構成と同じであるため、説明を省略する。ここでは、第1の方向(V1)に隣接する潜像部(20A1)と潜像部(20A2)の境界部分の構成について詳細に説明する。
図19は、図17(b)の破線で囲む潜像部(20A1)と潜像部(20A2)の境界部分を示す拡大図である。図17(c)に示すように、従来の位相変調万線模様(110’’)において、背景部の画線に対して1/2ピッチずれて配置された潜像部の画線と、背景部の画線に対して1/4ピッチずれて配置された潜像部の画線の境界部分は、図1(b)の2重線で囲む領域と同様に、空白の目立つ領域となることから、本発明の位相変調模様(20)は、当該領域に、第2の潜像画線(21A2)を備える。第2の潜像画線(21A2)は、背景画線(21B)と異なる位相に配置された潜像構成画線(21a2)と背景画線(21B)と同じ位相に配置された濃度緩和画線(21b2)が隣接して成り、第2の潜像画線(21A2)の画線幅(WA2)は、背景画線(21B)の画線幅(WB)より大きい。また、第2の潜像画線(21A2)と潜像画線(21A0’)の中心線間の距離(LA2-A0)及び第2の潜像画線(21A2)と潜像画線(21A0’’)の中心線間の距離(LA0-A2)が、潜像画線(21A0’、21A0’’)及び背景画線(21B)が配置されるピッチ(P1)より大きい。また、図19に示す第2の潜像画線(21A2)を構成する潜像構成画線(21a2)の画線幅(Wa2)は、背景画線(21B)と異なる位相に配置された潜像画線(21A0’’)の画線幅、この場合、画線幅(WA)より小さく、かつ、背景画線(21B)と異なる位相に配置された潜像画線(21A0’)の画線幅(WA)、この場合、画線幅(WA)の1/2より大きい。なお、図19に示す第2の潜像画線(21A2)において、潜像構成画線(21a2)の画線幅(Wa2)は、背景画線(21B)の画線幅(WB)より小さい構成とした例を示しているが、第2の潜像画線(21A2)の画線幅(WA2)が、背景画線の画線幅(WB)及び潜像画線(21A0’、21A0’’)の画線幅(WA)より大きければ、潜像構成画線(21a2)の画線幅(Wa2)が、背景画線(21B)の画線幅(WB)及び潜像画線(21A0’、21A0’’)の画線幅(WA)と同じ大きさでもよい。
図19に示す構成によれば、従来の位相変調万線模様(110’’)よりも、潜像部(20A1)と潜像部(20A2)の間の非画線部が小さくなり、潜像の図柄の一部が空白となり目立って視認されるという問題を解決することができる。
図19に示す位相変調模様(20)は、一つの第2の潜像画線(21A2)を備える例について説明したが、複数の第2の潜像画線(21A2)を設けてもよい。図20は、三つの第2の潜像画線を設けた例であり、図19に示す構成の第2の潜像画線(21A2)から、更に、潜像画線(21A0’)との間及び潜像画線(21A0’’)との間に、第2の潜像画線(21A2-1、21A2-2)を設けている。
図20に示す構成において、第2の潜像画線(21A2-1)の画線幅(WA2-1)は、背景画線(21B)の画線幅(WB)より大きく、第2の潜像画線(21A2)の画線幅(WA2)と同じか又は第2の潜像画線(21A2)の画線幅(WA2)より小さい構成である。また、第2の潜像画線(21A2-1)を構成する潜像構成画線(21a2)の画線幅(Wa2)は、第2の潜像画線(21A2)を構成する潜像構成画線(21a2)の画線幅(Wa2)より大きく、第2の潜像画線(21A2-1)を構成する濃度緩和画線(21b2)の画線幅(Wb2)は、第2の潜像画線(21A2)を構成する濃度緩和画線(21b2)の画線幅(Wb2)より小さい。すなわち、図20に示す潜像部(20A)は、第2の潜像画線(21A2)から潜像画線(21A0’’)にかけて、潜像構成画線(21a2)及び濃度緩和画線(21b2)の割合が異なり、徐々に潜像画線(21A0’’)の構成に近づく構成となっている。
また、図20に示す構成において、第2の潜像画線(21A2-2)の画線幅(WA2-2)は、背景画線(21B)の画線幅(WB)より大きく、第2の潜像画線(21A2)の画線幅(WA2)と同じか又は第2の潜像画線(21A2)の画線幅(WA2)より小さい構成である。また、第2の潜像画線(21A2-2)を構成する潜像構成画線(21a2)の画線幅(Wa2)は、第2の潜像画線(21A2)を構成する潜像構成画線(21a2)の画線幅(Wa2)より小さく、第2の潜像画線(21A2-2)を構成する濃度緩和画線(21b2)の画線幅(Wb2)は、第2の潜像画線(21A2)を構成する濃度緩和画線(21b2)の画線幅(Wb2)より大きい。すなわち、図20に示す潜像部(20A)は、第2の潜像画線(21A2)から潜像画線(21A0’)にかけて、潜像構成画線(21a2)及び濃度緩和画線(21b2)の割合が異なり、徐々に潜像画線(21A0’)の構成に近づく構成となっている。
また、図20に示す構成において、第1の方向(V1)に隣り合う第2の潜像画線(21A2-1)と潜像画線(21A0’’)の中心線間の距離(LA0-LA2)、第2の潜像画線(21A2)と第2の潜像画線(21A2-1)の中心線間の距離(LA2-A2)、第2の潜像画線(21A2-2)と第2の潜像画線(21A2)の中心線間の距離(LA2-A2)及び潜像画線(21A0’)と第2の潜像画線(21A2-2)の中心線間の距離(LA2-A0)が、潜像画線(21A0’、21A0’’)及び背景画線(21B)が配置されるピッチ(P1)より大きい。
以上に説明した、三つの第2の潜像画線(21A2、21A2-1、21A2-2)を備えた図20に示す構成の潜像部(20A)は、図19に示す構成に対して、画線の幅の変化の度合いが緩やかであることから、潜像の図柄の隠蔽効果が高い構成であり好ましい。また、図20では、三つの第2の潜像画線(21A2、21A2-1、21A2-2)を備えた潜像部(20A)の例について説明したが、更に、多くの第2の潜像画線を設けてもよい。
図21は、図17(b)の二重線で囲む潜像部(20A1)と潜像部(20A2)の境界部分を示す拡大図である。図17(c)に示すように、従来の位相変調万線模様(110’’)において、背景部の画線に対して1/2ピッチずれて配置された潜像部(「ロの字」に相当する領域)の画線と、背景部の画線に対して1/4ピッチずれて配置された潜像部(「四角」に相当する領域)の画線の境界部分は、図1(b)の破線で囲む領域と同様に、濃い色となって視認されてしまう領域であることから、本発明の位相変調模様(20)は、当該領域に、第1の潜像画線(21A1)を備える。
第1の潜像画線(21A1)は、背景画線(21B)と異なる位相に配置された潜像構成画線(21a1)と背景画線(21B)と同じ位相に配置された濃度緩和画線(21b1)が隣接して成り、第1の潜像画線(21A1)の画線幅(WA1)は、背景画線(21B)の画線幅(WB)より小さい。また、第1の潜像画線(21A1)と潜像画線(21A0’)の中心線間の距離(LA0-A1)及び第1の潜像画線(21A1)と潜像画線(21A0’’)の中心線間の距離(LA1-A0)が、潜像画線(21A0’、21A0’’)及び背景画線(21B)が配置されるピッチ(P1)より小さい。
図21に示す構成によれば、従来の位相変調万線模様(110’’)よりも、潜像部(20A1)と潜像部(20A2)の間の非画線部が大きくなり、濃い色で視認されるという問題を解決することができる。
図21に示す位相変調模様(20)は、一つの第1の潜像画線(21A1)を備える例について説明したが、複数の第1の潜像画線(21A1)を設けてもよい。図22は、三つの第1の潜像画線を設けた例であり、図21に示す構成の第1の潜像画線(21A1)から、更に、潜像画線(21A0’)との間及び潜像画線(21A0’’)との間に、第1の潜像画線(21A1-1、21A1-2)を設けている。
図22に示す構成において、第1の潜像画線(21A1-1)の画線幅(WA1-1)は、背景画線(21B)の画線幅(WB)より小さく、第1の潜像画線(21A1)の画線幅(WA1)と同じ又は第1の潜像画線(21A1)の画線幅(WA1)より大きい。また、第1の潜像画線(21A1-1)を構成する潜像構成画線(21a1)の画線幅(Wa1)は、第1の潜像画線(21A1)を構成する潜像構成画線(21a1)の画線幅(Wa1)より小さく、第1の潜像画線(21A1-1)を構成する濃度緩和画線(21b1)の画線幅(Wb1)は、第1の潜像画線(21A1)を構成する濃度緩和画線(21b1)の画線幅(Wb1)より大きい。すなわち、図22に示す潜像部(20A)は、第1の潜像画線(21A1)から潜像画線(21A0’)にかけて、潜像構成画線(21a1)及び濃度緩和画線(21b1)の割合が異なり、徐々に潜像画線(21A0’)の構成に近づく構成となっている。
また、図22に示す構成において、第1の潜像画線(21A1-2)の画線幅(WA1-2)は、背景画線(21B)の画線幅(WB)より小さく、第1の潜像画線(21A1)の画線幅(WA1)と同じ又は第1の潜像画線(21A1)の画線幅(WA1)より大きい。また、第1の潜像画線(21A1-2)を構成する潜像構成画線(21a1)の画線幅(Wa1)は、第1の潜像画線(21A1)を構成する潜像構成画線(21a1)の画線幅(Wa1)より大きく、第1の潜像画線(21A1-2)を構成する濃度緩和画線(21b1)の画線幅(Wb1)は、第1の潜像画線(21A1)を構成する濃度緩和画線(21b1)の画線幅(Wb1)より小さい。すなわち、図22に示す潜像部(20A)は、第1の潜像画線(21A1)から潜像画線(21A0’’)にかけて、潜像構成画線(21a1)及び濃度緩和画線(21b1)の割合が異なり、徐々に潜像画線(21A0’’)の構成に近づく構成となっている。
また、図22に示す構成において、第1の方向(V1)に隣り合う第1の潜像画線(21A1-1)と潜像画線(21A0’)の中心線間の距離(LA0-A1)、第1の潜像画線(21A1)と第1の潜像画線(21A1-1)の中心線間の距離(LA1-A1)、第1の潜像画線(21A1-2)と第1の潜像画線(21A1)の中心線間の距離(LA1-A1)及び潜像画線(21A0’’)と第1の潜像画線(21A1-2)の中心線間の距離(LA1-LA0)が、潜像画線(21A0’、21A0’’)及び背景画線(21B)が配置されるピッチ(P1)より小さい。
以上に説明した、三つの第1の潜像画線(21A1、21A1-1、21A1-2)を備えた図22に示す構成の潜像部(20A)は、図21に示す構成に対して、画線の幅の変化の度合いが緩やかであることから、潜像の図柄の隠蔽効果が高い構成であり好ましい。また、図22では、三つの第1の潜像画線(21A1、21A1-1、21A1-2)を備えた潜像部(20A)の例について説明したが、更に、多くの第1の潜像画線を設けてもよい。
ここでは、図17に示す二つの濃淡を伴って視認できる潜像模様の構成として、図18から図22に示す位相変調模様(20)について説明したが、更に複数の濃淡を有する潜像模様を形成することも可能である。潜像部(20A)において、隣り合う画線の背景画線(21B)に対する位相が異なり、仮に空白が目立つ場合には、図19及び図20に示す第2の潜像画線(21A2)を用いればよい。また、潜像部(20A)において、隣り合う画線の背景画線(21B)に対する位相が異なり、仮に非画線部が小さくなり、濃い色が目立つ場合には、図21及び図22に示す第1の潜像画線(21A1)を用いればよい。また、第1の潜像画線(21A1)の画線幅(WA1)、第1の潜像画線(21A1)を構成する潜像構成画線(21a1)の画線幅(Wa1)及び濃度緩和画線(21b1)の画線幅(Wb1)と、第2の潜像画線(21A2)の画線幅(WA2)、第2の潜像画線(21A2)を構成する潜像構成画線(21a2)の画線幅(Wa2)及び濃度緩和画線(21b2)の画線幅(Wb2)は、潜像部(20A)に配置された画線の位相差に応じて適宜調整すればよい。
第1の実施の形態の効果について、位相変調模様(20)が基材(2)に形成され、万線模様(30)が光透過性の基材(3)に形成され、これらを重ねることで潜像模様が視認できる例について説明したが、位相変調模様(20)と万線模様(30)が形成される他の形態について説明する。
(表裏合成)
図23は、基材(2)の一方の面に位相変調模様(20)が形成され、他方の面に万線模様(30)が形成された潜像模様形成体(1)であり、特許文献1と同様に、透過光下で基材(2)の表裏に形成された位相変調模様(20)と万線模様(30)が合成される。万線模様(30)は、図14(b)に示す構成の複数の画線(31)から成り、基材(2)に位相変調模様(20)が形成される面とは反対側の面に形成される。基材(2)の表裏に形成する位相変調模様(20)と万線模様(30)の位置関係は、万線模様(30)を構成する画線(31)が、位相変調模様(20)を構成する背景画線(21B)と重なる配置で形成すると、最も潜像模様の視認性が高いが、わずかにずれていても、潜像模様を視認することは可能である。この形態において基材(2)は、反射光下で位相変調模様(20)側から観察した際に、万線模様(30)が視認できない程度に不透明であって、透過光で観察した際に、二つの模様が合成される程度の光透過性を有する紙材や樹脂材を用いればよい。
図24は、本発明における万線模様(30)の変形例であり、画線(31)と異なる色の画線(32)が、画線(31)の間に画線(31)と同じピッチ(P1)で配置されて成る万線模様(30)とした例である。この場合、透過光下で観察すると、位相変調模様(20)と万線模様(30)が合成されて、「1」の数字を現す潜像部とその周りの背景部が、それぞれの画線(31、32)の色で視認することができる。なお、図24では、万線模様(30)が基材(2)に形成された構成を示しているが、図14に示す光透過性の基材(3)に形成された、所謂、万線フィルタの構成であってもよい。
また、本発明の万線模様(30)の別の形態として、特開2018-199323号公報に記載の有色万線模様とすることで、潜像模様の色彩表現を豊かにすることができる。特開2018-199323号公報に記載の有色万線模様(30’)は、位相変調模様(20)の潜像部(20A)の図柄に対応して有色万線模様(30’)を構成する画線の色が異なる。具体的には、図25(a)に示すように、有色万線模様(30’)を反射光下で観察すると、無彩色の画線が一定の間隔(P1)で配置されているように見えるが、図25(a)の拡大図に示すように、「1」の数字に対応した部分では、補色関係の画線(31)と画線(32)が隣接して成り、「1」の数字の背景に対応した部分では、無彩色の画線から成る。図25(a)に示す有色万線模様(30’)と位相変調模様(20)が形成された潜像模様形成体(1)を透過光下で観察すると、位相変調模様(20)と有色万線模様(30’)の配置により、「1」の数字が、画線(31)の色又は画線(32)の色で視認され、「1」の数字の背景は、無彩色として視認される。
なお、特開2018-199323号公報に記載の有色万線模様において、図25(a)に示す画線(31)は、補色関係の色の組合せのうちの一色で構成され、画線(32)は、補色関係の色の組合せのうちの残りの一色とする構成の他に、図25(b)の拡大図に示すように、画線(31)の中で、部分的に色が異なってもよい。その場合、異なる色で構成される画線(31)の各部毎に、隣接する画線(32)の色が異なる。なお、図25(b)の拡大図において、異なる色で構成された画線(31、32)は、異なるパターンで図示しているが、実際には、潜像の図柄に応じて、「青色と黄色」や「緑色と赤色」等の補色関係にある画線が隣接した構成となる。図25(b)に示す有色万線模様(30’)においては、位相変調模様(20)の重なる配置により、画線(31)又は画線(32)の色が潜像模様として視認することができ、色彩が豊かな潜像模様を視認することができる。
図26(a)は、基材(2)の上に、万線模様(30)、隠蔽層(40)、位相変調模様(20)が順に積層された潜像模様形成体(1)を示す図であり、万線模様(30)と位相変調模様(20)の構成及び各模様を構成する画線が重なる配置については、前述したとおりであるため、説明を省略する。図26(a)に示す潜像模様形成体(1)において隠蔽層(40)は、位相変調模様(20)側から反射光下で観察した際に、その下の万線模様(30)を隠蔽し、透過光下で万線模様(30)が視認できるための光透過性を有する。隠蔽層(40)は、印刷用の黒以外の色の色材、例えば、一般的なプロセスCMYインキや白インキによって形成され、万線模様(30)を覆い隠すように設けられる。万線模様(30)を隠蔽する作用は、隠蔽層(40)の印刷濃度が濃い程、隠蔽効果が高く、用いる色材に含まれる顔料の粒径や、色材の厚さによっても調整可能であり、万線模様(30)が反射光下で隠蔽されるように、適宜、調整すればよい。なお、前述した隠蔽層(40)を形成する色材であれば、透過光下で万線模様(30)が透けて見え、位相変調模様(20)と合成される作用が生じるが、黒色の色材は、光が透過しないため、隠蔽層(40)を形成する材料として用いることができない。また、隠蔽層(40)を形成する色材は、透過光下の観察で視認される潜像模様の色に影響しないため、白インキを用いることが好ましい。
図26(b)は、図26(a)に示す万線模様(30)、隠蔽層(40)、位相変調模様(20)とは積層順が異なる潜像模様形成体(1)を示す図であり、基材(2)の上に、位相変調模様(20)、隠蔽層(40)、万線模様(30)が順に積層された構成である。なお、万線模様(30)と位相変調模様(20)の構成や隠蔽層(40)の構成については、前述したとおりであるが、図26(b)に示す構成において隠蔽層(40)は、万線模様(30)側から反射光下で観察した際に、その下の位相変調模様(20)を隠蔽し、透過光下で位相変調模様(20)が視認できるための光透過性を有する。
図26(a)及び図26(b)に示す潜像模様形成体(1)は、隠蔽層(40)を備えることによって、反射光下で観察した際に位相変調模様(20)と万線模様(30)のうちの一方のみが視認され、透過光下で観察した際に位相変調模様(20)と万線模様(30)が合成されて潜像模様を視認することができる。
(レンチキュラー)
図27は、万線模様(30)を構成する画線(31)がレンズで構成された、一般的にレンチキュラーと呼ばれているものであり、図27(a)は、万線模様(30)の平面図、図27(b)は、図27(a)のX-X’線における断面図を示している。万線模様(30)を構成する画線(31)は、第2の方向(V2)に、位相変調模様(20)を構成する背景画線(21B)及び潜像画線(21A0)が配置されるピッチと同じピッチ(P1)で、万線状に配置される。また、画線幅(W)は、一つの画線(31)が、1ピッチ(P1)分の領域に配置された位相変調模様(20)をサンプリングできる大きさとする。具体的に、図11に示す位相変調模様(20)においては、背景画線(21B)の画線幅(WB)と潜像画線(21A0)の画線幅(WA)の和となる。また、画線の高さ(H)は、位相変調模様(20)の上に重ねて観察する際の、焦点距離に応じて適宜調整される。なお、図27に示す万線模様(30)は、画線(31)が離れて配置された状態を示しているが、画線(31)同士が隣接して一体型となっている構成であってもよいし、ベース層の上に画線(31)が離れて複数配置されて一体型となっている構成でもよい。図27に示す万線模様(30)は、基材(2)に形成された位相変調模様(20)の上に形成した一体型の構成としてもよいし、図14に示す構成と同様に、位相変調模様(20)が形成された基材(2)の上に、万線模様(30)を備えた基材(3)を重ねて潜像模様を視認する分離型でもよいが、位相変調模様(20)の上に万線模様(30)を重ねる際に、第2の方向(V2)と第1の方向(V1)を同じ方向にして、重ねることで潜像模様を視認することができる。
(凸画線)
図28(a)は、万線模様(30)を構成する画線(31)が、凸形状の画線で構成された例であり、図28(b)は、図28(a)のX-X’線における断面図である。図28に示す万線模様(30)は、凸形状の画線(31)が、第1の方向(V1)に、位相変調模様(20)を構成する背景画線(21B)及び潜像画線(21A0)が配置されるピッチと同じピッチ(P1)で、万線状に配置されて成る。なお、凸形状の画線(31)は、紙を製造する工程で、円網やダンディロールによる公知の抄き入れ加工を施す方法や、紙又はポリマーの基材(2)にレーザ加工により、基材(2)の一部を除去することでも形成することができる。また、基材(2)に凹版印刷やスクリーン印刷等の盛りのある印刷を行うことで、凸形状の画線(31)を形成することができる。
図28(b)の断面図において、凸形状の画線(31)の頂点(T)を境として、一方の側面に潜像画線(21A0)と潜像構成画線(21a1)を形成し、他方の側面に背景画線(21B)と濃度緩和画線(21b1)を形成した基材(2)に対して、一方の側面側の斜めから観察すると、背景画線(21B)と濃度緩和画線(21b1)は、凸形状の画線(31)の死角となって視認できず、潜像画線(21A0)と潜像構成画線(21a1)のみ視認できることで潜像模様を視認することができる。この形態においては、図28に示す凸形状の画線(31)の一方の側面に潜像画線(21A0)全体が重なり、他方の側面に背景画線(21B)全体が重なる構成が潜像模様の視認性が高いことから、凸形状の画線(31)の画線の幅(W)は、1ピッチ(P1)分の領域に配置された位相変調模様(20)が重なる大きさであることが好ましい。ただし、凸形状の画線(31)の側面に、潜像画線(21A0)と背景画線(21B)の全体が重ならなくても、凸形状の画線(31)によって一方の画線が死角となる作用は生じることから、潜像模様は視認することができる。また、凸形状の画線(31)と位相変調模様(20)を構成する画線(21)が、わずかに交差して重なる場合、具体的には、交差する凸形状の画線(31)と位相変調模様(20)を構成する画線(21)との間の角度が3°以下でも、潜像模様を視認することができる。
(画像)
本発明において、位相変調模様(20)は、前述した基材(2)に印刷して形成される構成の他に、PCやスマートフォン、携帯電話等の液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイによって画面上に表示される構成でもよい。この場合、位相変調模様(20)は、光の3原色であるRGBの光によって構成され、RGBの光とそれらの光の強弱により、任意の色で表現することができる。また、万線模様(30)は、段落(0066)で説明した万線フィルタの構成でもよいし、位相変調模様(20)と同様に、RGBの光とそれらの光の強弱により、任意の色で表現された構成でもよい。仮に、万線模様(30)が万線フィルタの構成の場合、位相変調模様(20)を表示する画面上に万線フィルタを重ねることで、潜像模様を視認することができる。
また、RGBの光によって位相変調模様(20)が構成されディスプレイに表示される場合、画像処理ソフトウェアである例えば、Photoshop(登録商標)において、位相変調模様(20)のRGB画像を表示させ、万線模様(30)に相当するRGB画像を重ねることで、潜像模様を視認することができる。また、位相変調模様(20)が現す潜像模様を表示させる方法については、位相変調模様(20)の画像を部分的に加算又は減算処理を行うことでも可能であり、Photoshop(登録商標)の画像処理機能を用いて行ってもよいし、潜像模様を表示させる処理のみを行う専用のソフトを用いてもよい。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態は、特願2018-220872号公報に記載の潜像模様において、本発明の第1の潜像画線(21A1)と第2の潜像画線(21A2)の構成を備えた、位相変調模様(20)である。ここで、特願2018-220872号公報に記載の潜像模様について、図29を用いて説明する。
図29(a)は、特願2018-220872号公報に記載の位相変調万線模様(120)の構成を示す図であり、位相変調万線模様(120)は、図29(a)の拡大図に示すように、有色の画線が第1の方向(V1)に一定のピッチ(P)で配置された万線において、部分的に位相が異なることで、「1」の数字を現す潜像部(120A)と背景部(120B)に区分けされている。位相変調万線模様(120)の特徴は、図29(a)の拡大図に示すように、潜像部(120A)を構成する画線の中心線を境として、画線の色が異なり、異なる色の画線(121A1、121A2)は、補色関係となっている。また、背景部(120B)を構成する画線(121B)は、補色関係の画線(121A1、121A2)の色の混合色である無彩色となっている。したがって、潜像部(120A)と背景部(120B)は、同じ無彩色の色であることから、反射光下で観察すると、潜像部(120A)と背景部(120B)を構成する画線の色の差を視認することができない。
図29(a)に示す位相変調万線模様(120)と位相変調万線模様(120)に対応した万線模様(図示せず)が形成された特殊潜像模様形成体を透過光下で観察すると、位相変調万線模様(120)と万線模様の配置により、「1」の数字が、画線(121A1)の色又は画線(121A2)の色で視認される。なお、特願2018-220872号公報に記載の位相変調万線模様(120)は、図29(b)の拡大図に示すように、画線(121A1)の中で、部分的に色が異なってもよい。その場合、異なる色で構成される画線(121A1)の各部毎に、隣接する画線(121A2)の色が異なり、かつ、隣接する画線の各部の色は、補色関係となっている。図29(b)に示す位相変調万線模様(120)においては、万線模様の重なる配置により、画線(121A1)又は画線(121A2)の色が潜像模様として視認することができ、色彩が豊かな潜像模様を視認することができる。
続いて、本発明の位相変調模様(20)において、特願2018-220872号公報の位相変調万線模様(120)の構成を組み合わせた構成について説明する。なお、一例として、図6に示す第1の潜像画線(21A1)を備えた構成を基に、図30を用いて説明する。
図30は、従来の位相変調万線模様(110)において、隣同士の画線の間隔が所定のピッチ(周期)より短い場合に、潜像の図柄が推測されてしまう課題を解決するため、一つの第1の潜像画線(21A1)を備えた位相変調模様(20)の一部拡大図である。なお、図30に示す位相変調模様(20)は、図6に示す構成の位相変調模様(20)を基に、特願2018-220872号公報の位相変調万線模様(120)の構成を組み合わせたものである。第2の実施の形態において、第1の潜像画線(21A1)、潜像画線(21A0)、背景画線(21B)の画線幅とピッチ及び第1の潜像画線(21A1)と隣り合う画線との中心線間の距離と非画線部の距離については、前述したとおりであるため説明を省略する。
第2の実施の形態の位相変調模様(20)は、図30に示すように、第1の潜像画線(21A1)及び潜像画線(21A0)において、中心線を境に画線の色が異なり、かつ、異なる色の画線は、補色関係となっている。なお、図30において、第1の潜像画線(21A1)及び潜像画線(21A0)の異なる色で構成される領域を、異なるパターンで図示しているが、実際には、潜像の図柄に応じて、「青色と黄色」や「緑色と赤色」等の補色関係にある画線が隣接した構成となっている。また、図30に示す構成において、背景画線(21B)は無彩色であって、第1の潜像画線(21A1)及び潜像画線(21A0)を構成する二つの色の混合色(無彩色)となっている。図30に示す構成によれば、特願2018-220872号公報の位相変調万線模様(120)と同様に、反射光下で観察すると、潜像部(20A)と背景部(20B)は、同じ無彩色の色として視認され、潜像部(20A)と背景部(20B)を構成する画線の色の差を視認することができない。一方、万線模様(30)が重なる配置により、第1の潜像画線(21A1)及び潜像画線(21A0)の補色関係の色を構成する一方の色が、潜像模様の色として視認される。
図31は、従来の位相変調万線模様(110)において、隣同士の画線の間隔が所定のピッチ(周期)より長い場合に、潜像の図柄が推測されてしまう課題を解決するため、一つの第2の潜像画線(21A2)を備えた位相変調模様(20)の一部拡大図である。なお、図31に示す位相変調模様(20)は、図11に示す構成の位相変調模様(20)を基に、特願2018-220872号公報の位相変調万線模様(120)の構成を組み合わせたものである。第2の実施の形態において、第2の潜像画線(21A2)、潜像画線(21A0)、背景画線(21B)の画線幅とピッチ及び第2の潜像画線(21A2)と隣り合う画線との中心線間の距離と非画線部の距離については、前述したとおりであるため説明を省略する。
第2の潜像画線(21A2)においても、中心線を境に画線の色が異なり、かつ、異なる色の画線は、補色関係となっている。なお、図31において、第2の潜像画線(21A2)及び潜像画線(21A0)の異なる色で構成される領域を、異なるパターンで図示しているが、実際には、潜像の図柄に応じて、「青色と黄色」や「緑色と赤色」等の補色関係にある画線が隣接した構成となる。また、図31に示す構成において、背景画線(21B)は無彩色であって、第2の潜像画線(21A2)及び潜像画線(21A0)を構成する二つの色の混合色(無彩色)となっている。図31に示す位相変調模様(20)においても、潜像部(20A)と背景部(20B)は、反射光下で観察すると、同じ無彩色の色として視認され、潜像部(20A)と背景部(20B)を構成する画線の色の差を視認することができないが、万線模様(30)が重なることで、第2の潜像画線(21A2)及び潜像画線(21A0)の補色関係の色を構成する一方の色が潜像模様の色として視認される。
図30及び図31は、一つの第1の潜像画像(21A1)と一つの第2の潜像画像(21A2)を設ける構成について説明したが、第1の潜像画線(21A1)と第2の潜像画線(21A2)を複数設ける構成や、図17に示す二つの濃淡を現す構成の位相変調模様(20)においても、同様にして、潜像部(20A)を構成する画線の中心線を境に、補色関係の色で構成すればよい。
また、図30に示す第2の実施の形態の位相変調模様(20)について、第1の潜像画線(21A1)は、中心線を境に二つの異なる色とした例であるが、図29(b)に示す構成と同様にして、隣接する画線が補色関係を満たしていれば、部分的に異なる色で形成されてもよい(図示せず)。潜像画線(21A0)、第2の潜像画線(21A2)においても、これと同様である。
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では、第1の実施の形態の位相変調模様(20)を作製するためのデータを作成する装置(M)と作成方法について説明する。
(位相変調模様用のデータの作成装置)
図32は、位相変調模様用のデータの作成装置(M)の構成を示すブロック図であり、図32に示す位相変調模様用のデータの作成装置(M)は、入力手段(M1)、編集手段(M2)、出力手段(M3)、表示手段(M4)、通信インターフェース(M5)及びデータベース(M6)を備えている。なお、出力手段(M3)及び表示手段(M4)は、位相変調模様用のデータの作成に必須の構成とするものではない。
入力手段(M1)は、画像入力手段(M1a)と情報入力手段(M1b)とで構成され、画像入力手段(M1a)における任意画像の入力は、デジタルカメラ、スキャナ等、特に限定されるものではない。また、データベース(M6)又は通信インターフェース(M5)によってあらかじめ登録されたデータベースサーバから画像、テキスト等を得ることもできる。
一方、情報入力手段(M1b)は、キーボード等からの入力、また、データベース(M6)と同じパソコン内に登録されている数値情報又は画像、通信インターフェース(M5)によってあらかじめ入力された外部のデータベースサーバから数値情報又は画像を得ることができる。
編集手段(M2)は、グレースケール変換手段(M2a)と、縦方向平均化処理手段(M2b)と、位相変調模様生成手段(M2c)とで構成されている。入力手段(M1)、通信インターフェース(M5)又はデータベース(M6)から得られた画像、数値情報、臨界値配列画像等により、縦方向平均化処理手段(M2b)では画像の縦方向平均化処理が行われ、位相変調模様生成手段(M2c)では位相変調模様を有する画像が生成される。なお、グレースケール変換手段(M2a)と、縦方向平均化処理手段(M2b)と、位相変調模様生成手段(M2c)とは、Adobe(登録商標)社製の画像処理ソフトウェアであるPhotoshop(登録商標)の機能自体や、個別の機能を組み合わせることで、以下に説明する処理を行うプログラムのことである。
出力手段(M3)は、レーザープリンタ、インクジェットプリンタ等のコンピュータからの画像を印刷可能な印刷装置等であり、特に限定されるものではない。表示手段(M4)は、パソコンのモニタ、専用のモニタ等、特に限定されるものではない。また、通信インターフェース(M5)は、USB、RS-232C、IEEE1394等、特に限定されるものではない。
(位相変調模様用のデータの作成方法)
次に、位相変調模様用のデータの作成装置(M)により位相変調模様用のデータを作成する方法について、図33を用いて説明する。なお、第3の実施の形態については、「円形」の図柄の潜像を埋め込んだ位相変調模様(20)を作成する方法について説明する。
(基画像設定工程)
図33に示す符号(f1)は、位相変調模様(20)に埋め込む潜像の図柄の基画像をグレースケール画像の形式で設定する工程(以降、「基画像設定工程(f1)」という。)であり、画像入力手段(M1a)としてデジタルカメラによる撮像した画像や、あらかじめデータベース(M6)に登録された画像を用いる。なお、画像入力手段(M1a)又はデータベース(M6)から用いる画像がグレースケール画像の場合、そのまま基画像(51)として設定し、仮にRGB画像、モノクロの2値画像の場合、グレースケール変換手段(M2a)によりグレースケール画像(8bit)に変換して基画像(51)とする。
図34は、基画像設定工程(f1)として、データベース(M6)にあらかじめ登録されたモノクロの2値画像(50)を用いた例を示しており、図34のモノクロの2値画像(50)において、「円形」の図柄は「1」の濃度データを備え、その周りは「0」の濃度データを備えた構成となっている。図35は、グレースケール変換手段(M2a)によりグレースケール画像に変換した基画像(51)を示す図であり、この場合、「円形」の図柄は「255」の濃度データを備え、その周りは「0」の濃度データを備えた構成に変換される。
(縦方向平均化処理工程)
図33に示す符号(f2)は、図35に示すグレースケール画像(51)を、縦方向平均化処理手段(M2b)によって、位相変調模様(20)を構成する画線(潜像画線と背景画線)のピッチ(P1)の2倍数で、画素のグレーレベル(濃度)を縦方向に平均化する工程(以降、「縦方向平均化処理工程(f2)」という。)である。この平均化については空間フィルタリング等の公知の画像処理技術を用いればよい。例えば、位相変調模様(20)を構成する画線のピッチ(P1)が16ピクセルであった場合、縦方向平均化処理工程(f2)で平均化される画素は32ピクセルとなり、図35に示すグレースケール画像(51)を縦方向32ピクセル毎に平均化処理を行うことで、図36に示す平均化画像(52)が得られる。なお、縦方向平均化処理工程(f2)において、横方向の大きさは、任意であり、1ピクセルでもよいし、複数のピクセルでもよい。
(階調反転処理工程)
図33に示す符号(f3)は、縦方向平均化処理工程(f2)によって濃度が平均化された平均化画像(52)の濃淡を反転して反転画像(52’)を作成する工程(以降、「階調反転処理工程(f3)」という。)であり、位相変調模様生成手段(M2c)によって処理される。その結果、図37に示す反転画像(52’)が生成される。なお、濃淡を反転する処理は、例えば、モノクロの2値画像において、黒の画像が白の画像に変換され、白の画像が黒の画像に変換されることであり、更に、グレースケール画像においては、濃い黒の画像は、淡い黒の画像に変換され、淡い黒の画像は、濃い黒の画像に変換される。
(第1の臨界値配列画像変換処理工程、第2の臨界値配列画像変換処理工程)
図33に示す符号(f4)は、平均化画像(52)に第1の臨界値配列画像を適用して2値画像に変換する工程(以降、「第1の臨界値配列画像変換処理工程(f4)」という。)であり、図33に示す符号(f5)は、反転画像(52’)に第2の臨界値配列画像を適用して画像を2値画像に変換する工程(以降、「第2の臨界値配列画像変換処理工程(f5)」という。)であり、位相変調模様生成手段(M2c)によって処理される。ここで、第1の臨界値配列画像変換処理工程(f4)と第2の臨界値配列画像変換処理工程(f5)について、詳細に説明するため、図36に示す平均化画像(52)の破線で囲む領域(16a)と、図37に示す反転画像(52’)の破線で囲む領域(17a)を変換する処理について説明する。
図38(a)は、図36に示す平均化画像(52)の破線で囲む領域(16a)の拡大図であり、平均化画像(52)の所定の領域の濃度情報を基に、第1の臨界値配列画像を適用して、図38(b)に示す2値画像に変換する。なお、平均化画像(52)の所定の領域とは、図38(a)に示す画像において、位相変調模様(20)を構成する画線のピッチ(P1)に相当する16ピクセル分の領域(h)のことであり、図38(a)に示す画像において、横方向は任意であるが、ここでは、8ピクセル分の領域(i)とした例で説明する。
本発明において、第1の臨界値配列画像とは、2値画像に変換前の画像である平均化画像(52)の所定の領域の濃度情報に応じて、2値画像に変換するためのパターン画像であり、あらかじめ、データベース(M6)に登録されている。また、第1の臨界値配列画像は、潜像画線及び潜像構成画線の位相に2値画像を変換するもので、図38(b)において、潜像画線及び潜像構成画線の位相に相当する領域を符号「A」で示し、背景画線及び濃度緩和画線の位相に相当する領域を符号「B」で示している。また、第1の臨界値配列画像の大きさは、濃度情報を参照する平均化画像(52)の所定の領域の大きさと同じ大きさであり、ここでは、縦方向に16ピクセル、横方向に8ピクセルのパターン画像である。
図38(a)に示す平均化画像(52)に対して、第1の臨界値配列画像と同じ大きさの領域毎に2値画像に変換することで、図38(b)に示す第1の2値画像(18A)が得られる。第1の臨界値配列画像を適用して2値画像に変換する処理により、図38(b)に示す第1の2値画像(18A)のそれぞれは、図38(a)に示す平均化画像(52)の所定の領域の濃度が高い程、変換された2値画像の面積が大きく変換される。また、第1の臨界値配列画像を適用して2値画像に変換する処理により、図38(a)に示す平均化画像(52)の所定の領域の濃度が高い程、潜像画線及び潜像構成画線の位相に相当する領域(A)と背景画線及び濃度緩和画線の位相に相当する領域(B)の境界から、順次、面積が大きく変換される。なお、臨界値配列画像を適用する処理については、例えば、Adobe(登録商標)社製の画像処理ソフトウェアであるPhotoshop(登録商標)の、モード変換処理機能において、予め作成したカスタムパターンを用いて行うことができる。
図38(c)は、平均化画像(52)全体に第1の臨界値配列画像を適用して2値画像に変換された第1の2値画像(18A)を示したものであり、図38(b)示す第1の2値画像(18A)は、図38(c)の破線で囲む領域(18a1)に配置される。
図39(a)は、図37に示す反転画像(52’)の破線で囲む領域(17a)の拡大図であり、反転画像(52’)の所定の領域の濃度情報を基に、第2の臨界値配列画像を適用して、図39(b)に示す2値画像に変換する。なお、反転画像(52’)の所定の領域とは、図39(a)に示す画像において、位相変調模様(20)を構成する画線のピッチ(P1)に相当する16ピクセル分の領域(h)のことであり、図39(a)に示す画像において、横方向は任意であるが、ここでは、8ピクセル分の領域(i)とした例で説明する。
本発明において、第2の臨界値配列画像とは、2値画像に変換前の画像である反転画像(52’)の所定の領域の濃度情報に応じて、2値画像に変換するためのパターン画像であり、あらかじめ、データベース(M6)に登録されている。また、第2の臨界値配列画像は、背景画線及び濃度緩和画線の位相に2値画像を変換するもので、図39(b)において、潜像画線及び潜像構成画線の位相に相当する領域を符号「A」で示し、背景画線及び濃度緩和画線の位相に相当する領域を符号「B」で示している。また、第2の臨界値配列画像の大きさは、濃度情報を参照する反転画像(52’)の所定の領域の大きさと同じ大きさであり、ここでは、縦方向に16ピクセル、横方向に8ピクセルのパターン画像である。
図39(a)に示す反転画像(52’)に対して、第2の臨界値配列画像と同じ大きさの領域毎に2値画像に変換することで、図39(b)に示す第2の2値画像(18B)が得られる。第2の臨界値配列画像を適用して2値画像に変換する処理により、図39(b)に示す第2の2値画像(18B)のそれぞれは、図39(a)に示す反転画像(52’)の所定の領域の濃度が高い程、変換された2値画像の面積が大きく変換される。また、第2の臨界値配列画像を適用して2値画像に変換する処理により、図39(a)に示す反転画像(52’)の所定の領域の濃度が高い程、潜像画線及び潜像構成画線の位相に相当する領域(A)と背景画線及び濃度緩和画線の位相に相当する領域(B)の境界から、順次、面積が大きく変換される。
図39(c)は、反転画像(52’)全体に第2の臨界値配列画像を適用して2値画像に変換された第2の2値画像(18B)を示したものであり、図39(b)示す第2の2値画像(18B)は、図39(c)の破線で囲む領域(18b1)に配置される。
(合成処理)
図33に示す符号(f6)は、臨界値配列画像変換処理工程(f4、f5)によって得られた第1の2値画像(18A)と第2の2値画像(18B)を合成する工程(以降、「合成処理工程(f6)」という。)であり、図40(a)に示すように、第1の2値画像(18A)と第2の2値画像(18B)を合成して、図40(b)に示す位相変調模様の画像を作成する。なお、図40(a)は、図36に示す平均化画像(52)の破線で囲む領域(16a)と、図37に示す反転画像(52’)の破線で囲む領域(17a)を、臨界値配列画像変換処理工程(f4、f5)により変換した第1の2値画像(18A)と第2の2値画像(18B)を合成する処理を示したものである。第1の2値画像(18A)は、潜像画線と潜像構成画線の位相に相当する画素であり、第2の2値画像(18B)は、背景画線と濃度緩和画線の位相に相当する画素であり、両方の画素が合成されると、図40(b)に示すように、背景画線に相当する画素(B21)、第1の潜像画線に相当する画素(AB21)、潜像画線に相当する画素(A21)が生成される。
図41(a)は、図36に示す平均化画像(52)の点線で囲む領域(16b)と、図37に示す反転画像(52’)の点線で囲む領域(17b)を、臨界値配列画像変換処理工程(f4、f5)により変換した第1の2値画像(18A)と第2の2値画像(18B)を合成する処理を示したものである。図41(a)に示すように、第1の2値画像(18A)と第2の2値画像(18B)を合成処理工程(f6)によって合成すると、図41(b)に示すように、潜像画線に相当する画素(A21)、第2の潜像画線に相当する画素(ab21)、背景画線に相当する画素(B21)が生成される。
図42は、図38(c)に示す第1の2値画像(18A)と図39(c)に示す第2の2値画像(18B)を合成した位相変調模様の画像(19)を示す図であり、図40(b)に示す背景画線、第1の潜像画線、潜像画線に相当する画素は、図42に示す破線で囲まれた領域(19a)に配置されている。また、図41(b)に示す背景画線、第2の潜像画線、潜像画線に相当する画素は、図42に示す点線で囲まれた領域(19b)に配置されている。
第1の2値画像(18A)と第2の2値画像(18B)を合成する合成処理工程(f6)により、作成されたデータは、データベース(M6)に保存してもよいし、表示手段(M4)に表示してもよいし、出力手段(M3)によって、基材(2)に印刷してもよい。
以上が、本発明の位相変調模様用のデータの作成方法において、必須の工程であるが、グレースケール画像(51)を横方向に平均化する処理を行ってもよく、以降の処理を同様に行うと、画線(21)の方向に接する潜像部(20A)と背景部(20B)の境界の差、詳細には、潜像部(20A)と背景部(20B)で位相が異なる画線(21)の境界の差を緩和することができる。なお、グレースケール画像(51)を横方向に平均化する処理は、階調反転処理工程(f3)の前に行う必要があり、縦方向平均化処理工程(f2)の前に行ってもよいし、縦方向平均化処理工程(f2)の後に行ってもよく、平均化する横方向の大きさのピクセルは、任意の複数のピクセルで行えばよい。
以下、前述の発明を実施するための形態にしたがって、具体的に作製した潜像模様発現構造の実施例について詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1は、第3の実施の形態で説明した位相変調模様用のデータの作成方法により、図42に示す「円形」の図柄の潜像を埋め込んだ位相変調模様(20)を作製した潜像模様形成体(1)について説明する。また、実施例1の潜像模様形成体(1)は、図23に示すように、基材(2)の一方の面に位相変調模様(20)が形成され、基材(2)の他方の面に万線模様(30)が形成された構成について説明する。
はじめに、基画像設定工程(f1)として、図35に示す「円形」の図柄を現すグレースケール画像を、データベース(M6)から読み込んで基画像(51)として設定した。なお、基画像(51)の画像サイズは、760ピクセル×760ピクセルの画像であり、「円形」の図柄の濃度は「255」であり、その周りの濃度は、「0」である。
次に、縦方向平均化処理工程(f2)として、図35に示す基画像(51)の縦方向152ピクセル、横方向152ピクセル毎に濃度を平均化して、図36に示す平均化画像(52)を生成した。なお、縦方向平均化処理工程(f2)は、Adobe(登録商標)社製の画像処理ソフトウェアであるPhotoshop(登録商標)のぼかし機能を用いて行った。
次に、階調反転処理工程(f3)として、図36に示す平均化画像(52)の濃淡を反転して図37に示す反転画像(52’)を生成した。なお、階調反転処理工程(f3)は、Adobe(登録商標)社製の画像処理ソフトウェアであるPhotoshop(登録商標)の階調反転機能を用いて行った。
次に、第1の臨界値配列画像変換処理工程(f4)として、平均化画像(52)の所定の領域(縦方向76ピクセル×横方向38ピクセル)毎に、第1の臨界値配列画像を適用して、図38(c)に示す第1の2値画像(18A)を生成した。なお、第1の臨界値配列画像を適用する処理は、Adobe(登録商標)社製の画像処理ソフトウェアであるPhotoshop(登録商標)のモード変換処理機能において、予め作成した第1の臨界値配列画像であるカスタムパターンを用いて2値画像に変換した。
次に、第2の臨界値配列画像変換処理工程(f5)として、反転画像(52’)の所定の領域(縦方向76ピクセル×横方向38ピクセル)毎に、第2の臨界値配列画像を適用して、図39(c)に示す第2の2値画像(18B)を生成した。なお、第2の臨界値配列画像を適用する処理は、第1の臨界値配列画像変換処理工程(f4)と同様の処理機能において、予め作成した第2の臨界値配列画像であるカスタムパターンを用いて2値画像に変換した。
次に、合成処理工程(f6)として、図38(c)に示す第1の2値画像(18A)と図39(c)に示す第2の2値画像(18B)を合成して、位相変調模様用のデータ(19)を生成した。
潜像模様形成体(1)を作製するため、レーザプリンタ(SPC740 株式会社リコー社製)により、データ(19)を解像度4000dpiとして基材(2)に印刷して位相変調模様(20)を形成した。また、基材(2)の位相変調模様(20)が形成された面とは反対側の面に、万線模様(30)をレーザプリンタ(SPC740 株式会社リコー社製)によって形成した。なお、万線模様(30)は、位相変調模様(20)に対応しており、画線幅(W)を241.5μm、ピッチ(P1)を483mmとして形成した。
作製した潜像模様形成体(1)を位相変調模様(20)が形成された面から観察すると、位相変調模様(20)がそのまま視認でき、「円形」の図柄の隠蔽性が向上していることが確認できた。また、透過光下で観察すると、万線模様(30)と合成されることで、「円形」の潜像模様を視認することができた。
(実施例2)
実施例2は、濃淡のある潜像模様が視認できる潜像模様形成体(1)であり、位相変調模様用のデータ(19)の基本的な作成方法は、実施例1と同じであるため説明の一部を省略する。また、実施例2の潜像模様形成体(1)は、図28に示す凸形状の画線(31)から成る万線模様(30)の上に、位相変調模様(20)が形成された構成について説明する。
はじめに、基画像設定工程(f1)として、画像入力手段(M1a)としてデジタルカメラで撮像した「人の顔」のRGB画像を用い、グレースケール画像の形式に変換して、図43に示す基画像(51)を設定した。なお、グレースケール変換手段(M2a)は、Adobe(登録商標)社製の画像処理ソフトウェアであるPhotoshop(登録商標)のモード変換処理機能を用いて行った。また、基画像(51)の画像サイズは、768ピクセル×768ピクセルの画像であり、「人の顔」の濃淡に応じて「0」から「255」の濃度を有する画像である。
次に、縦方向平均化処理工程(f2)として、図43に示す基画像(51)の縦方向32ピクセル、横方向に1ピクセル毎に濃度を平均化して、図44に示す平均化画像(52)を生成した。また、階調反転処理工程(f3)として、図44に示す平均化画像(52)の濃淡を反転して図45に示す反転画像(52’)を生成した。
次に、第1の臨界値配列画像変換処理工程(f4)として、平均化画像(52)の所定の領域(縦方向16ピクセル×横方向1ピクセル)毎に、第1の臨界値配列画像を適用して、図46(a)に示す第1の2値画像(18A)を生成した。また、第2の臨界値配列画像変換処理工程(f5)として、反転画像(52’)の所定の領域(縦方向16ピクセル×横方向1ピクセル)毎に、第2の臨界値配列画像を適用して、図46(b)に示す第2の2値画像(18B)を生成した。
次に、合成処理工程(f6)として、図46(a)に示す第1の2値画像(18A)と図46(b)に示す第2の2値画像(18B)を合成して、図47に示す位相変調模様用のデータ(19)を生成した。
実施例2の万線模様(30)を形成するため、インクジェット・プリンタ(Patternig JET トライテック社製)により、基材(2)に画線幅(W)が254μm、ピッチ(P1)が508μmの凸形状の画線(31)を複数形成し、凸形状の画線(31)の上に、生成した位相変調模様用のデータ(19)をレーザプリンタ(SPC740 株式会社リコー社製)によって、印刷して位相変調模様(20)を形成した。
作製した潜像模様形成体(1)を位相変調模様(20)が形成された面から観察すると、位相変調模様(20)がそのまま視認でき、「人の顔」の図柄の隠蔽性が向上していることが確認できた。また、潜像模様形成体(1)を位相変調模様(20)が形成された側から傾けて観察すると、図48に示す「人の顔」の潜像模様(11)を視認することができた。