JP5968264B2 - 線引き装置 - Google Patents

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Description

本発明は、線材を伸線加工する伸線装置である線引き装置に関し、特にアーク溶接用ワイヤを伸線加工する線引き装置に関する。
溶接ロボットなどで用いられるアーク溶接用ワイヤとしては、中実なソリッドワイヤに加えて、幅の狭い鋼帯が管状に成形された外皮鋼帯内にフラックスが充填されたフラックスコアードワイヤなどがある。
これらのアーク溶接用ワイヤは、鋼線材や鋼帯などを、孔ダイスやローラダイスなどの線引き装置に通過させて伸線することで製造される。この鋼線材や鋼帯などを伸線する伸線加工は、孔ダイスやローラダイスなどの線引き装置が複数台組み合わされたダイス群を構成し、このダイス群を複数群直列に配置した伸線ラインに鋼線材や鋼帯などを通過させることで実現される。
線材の伸線加工においては、複数台の孔ダイスやローラダイスが用いられることが多く、このようなローラダイスとして、特許文献1及び2に開示される線引き装置がある。
特許文献1に開示の線引き装置は、ローラダイスによって線材を線引きする装置であって、ローラダイスを構成する一対のローラを各々回転自在に軸支するベアリングと、このベアリングを保持するベアリングボックスと、このベアリングボックスを支持する一体型の枠体とを有し、前記各ベアリングボックスが各々ベアリングボックス固定用梁を介して前記枠体に固定され、前記ベアリングボックス固定用梁が、前記ローラの間隔調整用のボルトによって、前記枠体に固定されているとともに、前記ベアリングが、前記ローラの回転軸方向の位置調整用のボルトに支持されたキャップによって、前記ベアリングボックス内で移動可能なように保持されていることを特徴とするものである。
特許文献2に開示の線引き装置は、外周に型溝を有する一対のローラダイスによって形成される型孔に線材を通して、該線材を伸線加工する線引き装置であって、枠体と、一端側軸部、この一端側軸部と互いに軸線の延長線が一致する他端側軸部、及びこれら軸部の間に形成され該一端側及び他端側軸部の軸心に対して偏心させた偏心軸部を有するとともに、軸内部に冷却媒体流路を有する第1、第2の偏心軸部付き支持軸と、前記第1の偏心軸部付き支持軸の前記偏心軸部に固定され、かつ、前記一対のローラダイスうちの一方のローラダイスが外嵌装着され、該一方のローラダイスを回転自在に支持する第1の軸受と、前記第2の偏心軸部付き支持軸の前記偏心軸部に固定され、かつ、前記一対のローラダイスうちの他方のローラダイスが外嵌装着され、該他方のローラダイスを回転自在に支持する第2の軸受と、前記枠体に前記第1、第2の偏心軸部付き支持軸を、それぞれ、その軸方向にスライド変位可能に保持するための第1、第2のローラダイス軸線方向位置調整機構と、前記枠体に前記第1、第2の偏心軸部付き支持軸を、それぞれ、その前記一端側及び他端側軸部の軸線を中心に回転変位可能に保持するための第1、第2のローラダイス径方向位置調整機構と、を備えたことを特徴とするものである。
特開2005−34873号公報 特開2007−283314号公報
特許文献1に開示の線引き装置は、ローラダイスを保持する枠体内に冷却媒体の流路を設けた間接冷却方式を採用している。そのため、ローラダイスが発した熱は、ローラダイスの軸受け及びローラ軸を介して枠体に伝わらなくては冷却媒体によって吸熱されない。従って、特許文献1の線引き装置は、ローラダイス及び軸受けを冷却するのに十分な構成を有しているとは言えず、ローラダイスの熱膨張を抑制できず線径に変動を及ぼし、軸受けへの負荷も高いという問題がある。
また、特許文献2に開示の線引き装置は、冷却媒体の流路を有する偏心軸にローラダイスを組付ける構成を有している。ローラダイスの軸受けが取り付けられる偏心の支持軸が冷却されることで、ローラダイス及び軸受けの冷却効果が向上するので、ローラダイスの熱膨張を抑制して線径の安定性が向上させることができ、軸受けへの負荷を低減して軸受けの長寿命化を実現することもできる。
しかし、一方で、特許文献2の線引き装置は、組立及び調整に熟練した技能が要求される。例えば、ローラダイスを組み付けるには、ローラダイスの軸受けの位置が枠体の軸通孔の位置に対応するように、枠体内の所定の位置でローラダイスを保持しながら、支持軸を軸通孔及び軸受けに嵌め入れなくてはならない。支持軸を軸通孔嵌め入れつつ軸受けにも嵌め入れるには、ハンマーなどで力を加減しながら支持軸を叩かなくてはならないが、力の加減を誤ると、部品を破損してしまうおそれがある。
また、ローラダイスを組み付けた後に、ローラダイスの位置を調整する必要があるが、特に、ローラダイスの径方向位置の調整には偏心の支持軸を調整しなくてはならず、作業者に熟練した技能を要求する。これら例示がしめすように、特許文献2の線引き装置は、組立及び調整に熟練した技能を要求するので、一部の熟練作業者にしか扱うことのできないものであった。
そこで本発明は、簡易かつ短時間に組立及び調整を行うことができる線引き装置を提供することを目的とする。
上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明に係る線引き装置は、一対のローラダイスによって形成される型孔に線材を通して、該線材を伸線加工する線引き装置であって、枠体と、前記ローラダイスを回転自在に支持する回転軸と、前記枠体とは別体であって、前記ローラダイスを支持する回転軸が載置されると共に、前記載置された回転軸を支持する支持体と、前記支持体を、該支持体に支持された前記回転軸の軸心方向に沿って移動させることで、前記枠体に対して位置決めする第1の位置決め手段と、前記支持体を、該支持体に支持された前記回転軸の軸心方向に垂直な垂直方向に沿って移動させることで、前記枠体に対して位置決めする第2の位置決め手段と、を備えることを特徴とする。
好ましくは、前記第1の位置決め手段が、前記ローラダイスを支持する回転軸の軸心方向における前記支持体の両端部を押圧して前記支持体を前記枠体に対して位置決めする押圧手段と、前記押圧手段を前記枠体に対して固定する固定手段と、を有するとよい。
好ましくは、前記押圧手段が、前記枠体を貫通するように設けられ且つ前記支持体に押圧力を付与するボルトを有するとよい。
好ましくは、前記第2の位置決め手段が、前記支持体において前記回転軸が載置される面とは反対に位置する面である非支持面に対して、前記枠体側から前記非支持面を押す力を加える押し手段と、前記枠体側へ前記非支持面を引く力を加える引き手段と、を有するとよい。
好ましくは、前記押し手段が、枠体を貫通するように設けられ且つ前記枠体側から前記非支持面を押す力を加える押しボルトを有し、前記引き手段が、前記枠体を貫通するように設けられ且つ枠体側へ前記非支持面を引く力を加える引きボルトを有するとよい。
好ましくは、前記ローラダイスの回転軸が、軸心に沿って内部に設けられた冷却手段を有し、前記冷却手段へ冷却媒体を供給する供給口を前記ローラダイスの回転軸の一方の端部に有し、前記冷却手段から前記冷却媒体を排出する排出口を前記回転軸の他方の端部に有するとよい。
好ましくは、前記枠体が、前記供給口及び排出口に対応する位置において切欠き部を有し、前記回転軸に形成された供給口及び排出口が、前記支持体が枠体に対して位置決めされる際に前記切欠き部内を前記枠体に対して干渉することなく移動するように構成されているとよい。
本発明による線引き装置によれば、簡易かつ短時間に組立及び調整を行うことができる。
本発明の実施形態による線引き装置が用いられるアーク溶接用ワイヤの伸線工程を示す模式図である。 本実施形態による線引き装置の構成を示す図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は上側面図である。 本実施形態による線引き装置のハウジングの構成を示す図である。 本実施形態による線引き装置のハウジングにローラダイスを支持する回転軸を載置する手順と、回転軸を載置したハウジングを枠体に配置する手順を順に示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の構成をその具体例のみに限定するものではない。従って、本発明の技術的範囲は、本実施形態の開示内容のみに限定されるものではない。
本発明の実施形態による線引き装置1を説明する前に、図1を参照して、線材を伸線加工する伸線工程について概略を説明する。図1は、アーク溶接用ワイヤWであるソリッドワイヤやフラックスコアードワイヤ等を、製品として要求される径となるように伸線する伸線工程を示す図である。
図1に示す「ローラダイス伸線」は、いわゆる二次伸線とよばれる伸線工程であり、二次伸線に先立つ一次伸線において素材である鋼線材や鋼帯から成形されたソリッドワイヤやフラックスコアードワイヤなどを、製品として要求される径となるように伸線する。「ローラダイス伸線」に続いては、伸線された溶接ワイヤWを最終的な製品の径に仕上げる「仕上げ伸線」を行い、製品径となった溶接ワイヤWを洗浄して表面に油を塗布した後に製品として巻き取る。
本実施形態による線引き装置1は、溶接ワイヤWを伸線するローラダイス2を備えている。この線引き装置1を複数台直列に組み合わせてダイス群100を構成し、このダイス群100を複数群直列に配置すると共に、溶接ワイヤWに一定の張力を付加する引取キャプスタン101をダイス群100の間に配置することで、「ローラダイス伸線」及び「仕上げ伸線」を行う伸線ラインが構成される。
図2を参照しながら、本実施形態による線引き装置1の構成を説明する。図2は、線引き装置1の構成を示す図であり、(a)は線引き装置1の前面を示す正面図、(b)は線引き装置1の右側面図、(c)は線引き装置1の上側面図(平面図)である。
なお、本実施形態においては、図2(a)における正面図に向かっての上下方向を線引き装置1の上下方向に対応付けると共に、同じく正面図に向かっての左右方向を線引き装置1の左右方向に対応付けた位置関係を用いて、線引き装置1の構成を説明する。従って、図2(a)の線引き装置1を右側から見たときの側面を右側面図として図2(b)に示し、線引き装置1を上側から見たときの側面を上側面図(平面図)として図2(c)に示す。また、図2(a)及び図2(b)において、対称軸S1から上半分は線引き装置1の外観を実線で示し、下半分は線引き装置1の内部を破線で示す。
図2(a)を参照して、線引き装置1は、略四角形の空間を内側に取り囲むように形成された枠体3を有する。枠体3が取り囲む略四角形の空間には、ローラダイス2を支持する回転軸4が載置された支持体(ハウジング)5が2つ設けられている。2つのハウジング5,5は、互いのローラダイス2,2が対向して型孔を形成するように枠体3に対して位置決めされている。このハウジング5の位置決めのために、線引き装置1は、ローラダイス2を支持する回転軸4の軸心方向における位置決めをする第1の位置決め手段と共に、対向するローラダイス2に向かう方向(ローラダイス2の径方向)における位置決めをする第2の位置決め手段を有する。
線引き装置1は、この対向する一対のローラダイス2,2によって形成される型孔に線材である溶接ワイヤWを通すことで、この溶接ワイヤWを伸線加工する。
以下、線引き装置1の構成について詳しく説明する。
図2(a)の正面図に示すように、枠体3は、ほぼ同じ寸法を有する略直方体形状の4本の鋼材が略正方形又は略長方形の上下及び左右の各辺を構成するように一体となることで構成された部材である。
つまり枠体3は、上辺に対応する上梁部6、下辺に対応する下梁部7、右辺に対応する右梁部8、及び左辺に対応する左梁部9の4本の鋼材が一体となることで形成される。従って、上梁部6、下梁部7、右梁部8及び左梁部9で構成された略正方形又は略長方形の枠体3は、その内側に図2(a)の正面図において枠体3とほぼ相似形状の空間を取り囲んでいる。このとき、図2(a)に正面が示される枠体3について、該正面の裏側の面を背面という。さらに、枠体3の内側の空間を取り囲む面を内周面といい、枠体3の外側を取り囲む面を外周面という。
図2(a)及び図2(b)に示すように、枠体3の左右の辺を構成する右梁部8及び左梁部9のそれぞれは、長手方向に沿った中央部分及び近傍に窪みが形成されており、その窪み部分の肉厚が、窪みに隣接する部位の肉厚の1/2〜1/3(2分の1〜3分の1)程度に減少している。特に図2(b)に示すように、この肉厚が減少した部分は、枠体3の右梁部8及び左梁部9が正面から背面に向かって切り欠かれたような凹部を形成しており、この凹部を切欠き部10a,10bとよぶと共に、右梁部8及び左梁部9において切欠き部10a,10bを構成する面を切欠き面とよぶ。従って、切欠き部10a,10bの枠体3の正面からの深さは、切欠き部10a,10bに隣接する部位の肉厚の1/2〜2/3(2分の1〜3分の2)程度である。
また、切欠き部10a,10bは、右梁部8及び左梁部9の左右方向の全幅にわたって形成されると共に、右梁部8及び左梁部9の長手方向に沿って右梁部8及び左梁部9の全長の1/2〜2/3(2分の1〜3分の2)程度を占めるように形成されている。
図2(a)に示すように、上述の切欠き部10a,10bを有する(つまり、切欠き面を有する)枠体3は、上梁部6及び下梁部7を上下方向に向けると共に右梁部8及び左梁部9を左右方向に向けると、上下方向及び左右方向に対称な構成を有している。後に詳しく説明するが、図2(a)に示す枠体3に他の構成部材を設けることで構成される線引き装置1も、枠体3の下半分に設けられる構成部材と同じ構成部材が上半分にも設けられるので、対称軸S1に関して上下方向に対称な構成を有している。従って、以下の説明では、枠体3の下半分の構成を詳述した後に、枠体3の下半分に設けられる構成部材を詳述することで、線引き装置1の全体の説明とする。
図2(a)に示す枠体3の下半分を参照して、枠体3の右梁部8の切欠き部10aの下側には、右梁部8の正面から背面側に向けて窪んだ右凹部が形成されている。この右凹部は、切欠き部10aよりも浅い窪みであり、枠体3の正面からの深さが、切欠き部10aの深さの1/3〜1/2(3分の1〜2分の1)程度である。
右凹部は、右梁部8の左側、つまり枠体3の内周面が取り囲む空間側に形成されており、上方が開放されて切欠き部10aと連続し、左方が開放されて枠体3が取り囲む空間と連続している。つまり、右凹部は、右梁部8の正面から背面側に後退した略四角形の右段差面11a、右段差面11aの右縁を枠体3の正面に接続する右縁面12a、及び右段差面11aの下縁を枠体3の正面に接続する下縁面13aによって形成されている。この右段差面11aは、左縁において枠体3の内周面と連続すると共に、上縁において切欠き部10aの切欠き面と連続する。また、右段差面12aには、内部にネジ山が切られた2つのネジ穴が、右梁部8の長手方向に沿って上下方向に並ぶように形成されている。
さらに、図2(a)及び図2(b)に示すように、右梁部8には、枠体3の外周面から右凹部の右縁面12aへ枠体3を貫通する貫通孔14aが形成されている。この貫通孔14aは、右凹部の右縁面12aのほぼ中央に開口を有し、貫通孔14aの内面には、その一部又は全体にわたってねじ山が切られている。
また、貫通孔14aよりも枠体3の背面側には、枠体3の外周面から内周面へ枠体3を貫通するもう一つの貫通孔15aが形成されている。この貫通孔15aは、外周面及び内周面において枠体3の正面と背面のほぼ中間に開口を有し、貫通孔15aの内面には、その一部又は全体にわたってねじ山が切られている。
図2(a)に示すように、右凹部の下方であって右梁部8と下梁部7の接続部分には、枠体3の正面から背面にかけて枠体を貫通する貫通孔16aが形成されている。この貫通孔16aは、例えば、上述の枠体3の外周面から内周面に向かって形成された貫通孔15aよりも大きな径を有しており、連結用の棒材などを挿通させることで複数の線引き装置1を直列に接続することができる。
以上、枠体3の下半分について、右梁部8の構成を説明したが、左梁部9は、対称軸S2に関して左右対称となる構成を有している。従って、左梁部9には、右凹部に対応する左凹部、右段差面11aに対応する左段差面11b、右縁面12aに対応する左縁面12b、下縁面13aに対応する下縁面13b、貫通孔14aに対応する貫通孔14b、貫通孔15aに対応する貫通孔15b、及び貫通孔16aに対応する貫通孔16bが形成されている。
ここで、図2(a)及び図2(c)を参照して、右梁部8と左梁部9を接続する下梁部7の構成を説明する。
下梁部7の長手方向に沿ったほぼ中央の位置には、外周面から内周面へ下梁部7(枠体3)を貫通する円形の貫通孔である下中央貫通孔17が形成されている。この中央貫通孔17は、枠体3の正面と背面のほぼ中央において、ほぼ対称軸S1に沿って形成されている。
下中央貫通孔17の右側には、外周面から内周面へ下梁部7(枠体3)を貫通する円形の貫通孔である下右貫通孔18aが形成されている。この下右貫通孔18aは、下梁部7の内周面において下中央貫通孔17と右梁部8のほぼ中央に開口を形成する貫通孔であり、枠体3の正面と背面のほぼ中間で下中央貫通孔17とほぼ平行となるように形成されている。下右貫通孔18aの内面には、その一部又は全体にわたってねじ山が切られている。
さらに、下右貫通孔18aの右側にも、外周面から内周面へ下梁部7(枠体3)を貫通する円形の貫通孔19aが形成されている。この貫通孔19aには、後述する支持体(ハウジング5)の枠体3に対する位置決めを案内するためのガイドピン20aが挿入されて固定されている。ガイドピン20aは、貫通孔19aとほぼ同径の円柱状の部材であって、下梁部7の内周面から枠体3が取り囲む空間内に突出している。
図2(a)に示すように、下梁部7の内周面からのガイドピン20aの突出長は、上方に向かって切欠き部10aの下端に達しない程度であり、ガイドピン20aの先端は、図2(b)の右側面図において、切欠き部10aよりも下方に位置する。
下梁部7は、下中央貫通孔17に関して、下右貫通孔18aとほぼ左右対称となる位置に下左貫通孔18bを形成していると共に、ガイドピン20aとほぼ左右対称となる位置にもうひとつのガイドピン20bを有している。
次に、図3及び図4を参照して、枠体3の内周面で取り囲まれる空間に配置されるローラダイス2、及びローラダイス2を支持する支持体(ハウジング5)について説明する。図3は、本実施形態による線引き装置1のハウジング5の構成を示す図であり、(a)はハウジング5の上面を示す上側面図(平面図)、(b)はハウジング5の正面図、(c)はハウジング5の右側面図である。図4(a)〜図4(c)は、ハウジング5にローラダイス2を支持する回転軸4を載置し、回転軸4を載置したハウジング5を枠体3に配置する手順を順に示す図である。
ローラダイス2は、円筒形状又は円板形状を有する部材であって、円筒又は円板形状の軸心位置に軸受けが設けられて、軸心周りに回転可能な車輪状の部材である。ローラダイス2は、車輪の踏面に相当する外周面上に、線材を伸線するための型溝(カリバ)が周方向に沿って形成されている。
回転軸4は、ローラダイス2の軸受けとほぼ同径の円筒形状の部材であって、軸心に沿って内部に空洞を有する円筒状の部材であり、ローラダイス2の軸受けに挿入されると共に該軸受けに固定される。これによって、回転軸4は、ローラダイス2を、回転軸4を中心に回転自在となるように支持する。
回転軸4の内部の空洞は、冷却媒体が供給されることでローラダイス2及び軸受けを冷却する冷却手段であり、回転軸4の一方の端部の開口には、冷却手段である内部の空洞に外部から冷却媒体を供給するための供給口21が設けられ、他方の端部の開口には、冷却手段から冷却媒体を排出するための排出口22が設けられる。供給口21及び排出口22は、冷却媒体の流通管を回転軸4の開口に接続するための接続器(コネクタ)であり。コネクタの一端は回転軸4の開口と同径であり、他端は冷却媒体の流通管と同径である。
次に、図3を参照して、ハウジング5は、枠体3とは別体であって、ローラダイス2を支持する回転軸4が載置されると共に、載置された回転軸4を支持するものである。ハウジング5は、直方体の中央部分が切り欠かれた部材であって、長手方向における寸法が枠体3によって取り囲まれる空間の左右方向の幅よりも若干短い。つまり、ハウジング5は、図3(b)に示すように、中央部分に上側面側から下側面(底面)側に肉厚が減少することで凹部が形成されたU字形状の部材である。この中央の凹部は、ローラダイス2が配置される部位であり、その深さは、配置されるローラダイス2の径よりも十分に大きい。
図3(a)及び図3(b)に示すように、ハウジング5の上側面には、正面側と背面側の中間に長手方向に沿って半円筒形状の溝が形成されている。この溝は、ローラダイス2を支持する回転軸4を載置するための溝であり、半円筒面の曲率は載置される回転軸4の表面の曲率とほぼ同じである。このとき、ハウジング5の底面は、回転軸4が載置される面である上側面とは反対に位置する面であるので、ハウジング5の底面を非支持面とよぶこともある。
また、ハウジング5の上側面には、回転軸4を載置する溝を挟んでハウジング5の正面側と背面側のそれぞれに、内部にネジ山が切られたネジ穴が形成されている。具体的には、図3(a)に示すように、凹部の右側に溝を挟んで2つのネジ穴23a,24aが形成されており、凹部の左側にも溝を挟んで2つのネジ穴23b,24bが形成されている。これらネジ穴は、回転軸4をハウジング5に固定するための固定具25a,25bを取り付けるネジが螺合するためのものである。
図3(b)に示すように、ハウジング5の非支持面の中央には、上述の枠体3における下梁部7の下中央貫通孔17に対応する貫通孔として引き貫通孔26が形成されており、左右方向の両端側には、下梁部7のガイドピン20a,20bが挿入されるガイド孔27a,27bが、ハウジング5の非支持面から上側面に向かって形成されている。このとき、ガイド孔27a,27bの径は、ガイドピン20a,20bの径よりも大きい。また、ガイド孔27a,27bの深さが、ガイドピン20a,20bの長さよりも大きいと好ましい。このようなハウジング5のガイド孔27a,27bに枠体3のガイドピン20a,20bが挿入されるようにハウジング5を配置すると、ハウジング5の非支持面中央に形成された貫通孔26は、下梁部7の下中央貫通孔17とほぼ対向し、ハウジング5は、ガイドピン20a,20bに沿って上下方向に移動可能になると共に、ガイド孔27a,27bとガイドピン20a,20bの間に形成される隙間の分だけ左右方向に移動可能になる。
次に、図4を参照して、ハウジング5が、ローラダイス2を支持する回転軸4を支持するための構成について説明する。
図4(a)に示すように、まず、ローラダイス2がハウジング5の凹部内に配置されるように、ローラダイス2を支持する回転軸4をハウジング5の上側面に形成された溝に載置する。
図4(b)に示すように、回転軸4をハウジング5の上面の溝に載置した後、ハウジング5の上側面に溝を挟んで形成された2つのネジ穴23a,24aを掛け渡す固定具25aを回転軸4の上方に設け、ネジ穴23b,24bを掛け渡す固定具25bを回転軸4の上方に設ける。その上で、固定用のネジを、固定具25a,25bの上方から貫通させつつハウジング5の上側面のネジ穴23a,24a及びネジ穴23b,24bに螺合させることで、固定具25a,25bをハウジング5に固定する。このように固定具25a,25bをハウジング5に固定することで、固定具25a,25bとハウジング5の間に挟まれた回転軸4は、ハウジング5に支持されて該ハウジング5と一体化する。このとき、回転軸4は、ハウジング5の長手方向に沿って形成された溝に載置されるので、回転軸4の軸心方向とハウジング5の長手方向(つまり、図4における左右方向)が一致する。
続いて、図4(c)に示すように、ローラダイス2及び回転軸4と一体化したハウジング5は、枠体3の内周面で取り囲まれた空間内において、枠体3のガイドピン20a,20bがガイド孔27a,27bに挿入されるように配置される。その上でハウジング5は、第1の位置決め手段及び第2の位置決め手段によって、枠体3に対して位置決めされ固定される。以下、第1の位置決め手段及び第2の位置決め手段の構成について説明する。
再び図2を参照しながら、第1の位置決め手段の構成について説明する。以下の説明は、ローラダイス2及び回転軸4と一体化したハウジング5が、自身のガイド孔27a,27bに下梁部7のガイドピン20a,20bが挿入されるように枠体3に対して配置された状態を前提とする。
上述の枠体3には、ハウジング5を、ハウジング5に支持された回転軸4の軸心方向(ハウジング5の長手方向)に沿って移動させることで、枠体3に対して位置決めする第1の位置決め手段が設けられる。
第1の位置決め手段は、ハウジング5を押圧するための押圧手段と、押圧手段を枠体3に対して固定する固定手段とを有する。押圧手段は、右凹部に配置される右押圧片28aと、右縁面12aに開口を有する貫通孔14aに螺合して右押圧片28aに押圧力を付与する右押圧ネジ29a(図示せず)とを有し、固定手段は、右段差面11aに形成されたネジ穴に螺合して右押圧片28aを右段差面11aに押さえつける右固定ネジ30a,31aからなる。
右押圧片28aは、右凹部とほぼ同じ形状及び大きさの直方体の部材であり、略四角形の右段差面11aとほぼ同じ形状及び大きさの平面を対向する2面に有する。右押圧片28aは、これら2平面のうち一方の平面から他方の平面に右押圧片28aを貫通する貫通孔を2つ有している。これら2つの貫通孔は、それぞれの中心間の距離が、右段差面11aに形成された2つのネジ穴の中心間の距離と同じとなるように、右押圧片28aの長手方向に沿って形成されており、右段差面11aのネジ穴よりも若干大きな径の貫通孔である。
図2(a)及び図2(b)に示すように、上述の構成の右押圧片28aは、貫通孔の位置を右段差面11aのネジ穴の位置に対応させて右段差面11a上に配置され、枠体3の正面及び切欠き部10aにはほとんど突出することはない。
右押圧ネジ29aは、枠体3の外周面に形成された開口から貫通孔14aに螺合して右縁面12aの開口から突出することで、右段差面上11aに配置された右押圧片28aを、枠体3が取り囲む空間側に押圧するものである。
固定手段である右固定ネジ30a,31aは、右段差面11aに形成されたネジ穴の径と同じで且つ右押圧片28aの貫通孔の径よりも小さい径を有するネジである。右固定ネジ30a,31aは、右段差面11a上に配置された右押圧片28aの貫通孔に挿通されると共に、右段差面11aに形成されたネジ穴に螺合して締め付けられることで、右押圧片28aを右固定ネジ30a,31aの頭で右段差面11aに押さえつけて固定する。
このとき、右押圧片28aの貫通孔の径は右固定ネジ30a,31aの径よりも若干大きいので、右固定ネジ30a,31aの径に対する右押圧片28aの貫通孔の径のゆとりの分だけ、右凹部で右押圧片28aを移動させることができる。そこで、右押圧ネジ29aの右縁面12aの開口からの突出量を調整することで、右凹部での左右方向における右押圧片28aの位置を、右固定ネジ29aの径に対する右押圧片28aの貫通孔の径のゆとりの分だけ調整することができる。
押圧手段は、左凹部においても、対称軸S2に関して右凹部における構成と左右対称となる構成を有しており、右押圧片28aに対応する左押圧片28b、及び右押圧ネジ29aに対応する左押圧ネジ29bを有する。また、固定手段も、対称軸S2に関して右凹部における構成と左右対称となる構成を有しており、左凹部において右固定ネジ30a,31aに対応する左固定ネジ30b,31bを有する。言うまでもなく、左段差面11bにも、右段差面11aに形成された2つのネジ穴と同様のネジ穴が形成される。
このように第1の位置決め手段は、左右対称の構成を有し、ハウジング5の長手方向における両端面(両端部)に右押圧片28a及び左押圧片28bを押圧させることで、枠体3に対してハウジング5を左右方向(回転軸4の軸心方向)において位置決めすることができる。枠体3に対してハウジング5を位置決めした後は、右押圧片28aを右固定ネジ30a,31aで固定すると共に、左押圧片28bを左固定ネジ30b,31bで固定することで、ハウジング5を枠体3に対して回転軸4の軸心方向において固定することができる。
第1の位置決め手段によってハウジング5を位置決めした後に、枠体3の外周面から内周面へ枠体3を貫通するもう一つの貫通孔15aに固定ネジを螺合させることで、該固定ネジによってハウジング5を直接押圧することができる。第1の位置決め手段による位置決めに加えて、ハウジング5を直接押圧する固定ネジを用いることで、ハウジング5を枠体3に対してより確実に固定することができる。
さらに、枠体3には、ハウジング5を、ハウジング5に支持されたローラダイス2の回転軸4の軸心方向に垂直な垂直方向に沿って移動させることで、枠体3に対して位置決めする第2の位置決め手段が設けられる。
第2の位置決め手段は、枠体3側からハウジング5を押す力を加える押し手段と、枠体3側へハウジング5を引く力を加える引き手段とを有する。
押し手段は、下梁部7に形成された下右貫通孔18aに螺合するネジ山が切られた右押しボルト32aと、下左貫通孔18bに螺合するネジ山が切られた左押しボルト32bとを有する。例えば、右押しボルト32aは、下右貫通孔18aの全長に対して十分に長いボルトであって、下梁部7の外周面に形成された開口から下右貫通孔18aに螺合することで枠体3を貫通するように設けられる。右押しボルト32aは、下梁部7の内周面に形成された開口から突出してハウジング5の底面(非支持面)を、枠体3側から上方に向けて押す力を加える。
左押しボルト32bも、右押しボルト32aと同様に、下左貫通孔18bに螺合することで枠体3を貫通し、ハウジング5の底面(非支持面)を、枠体3側から上方に押す力を加える。
このように、右押しボルト32aと左押しボルト32bを有する押し手段は、略直方体形状のハウジング5に対して、ハウジング5の底面である非支持面を、ハウジング5の上側面に向かって押すことで、ハウジング5を上方に移動させることができ、ハウジング5の上側面に支持された回転軸4を、回転軸4の軸心方向に垂直な垂直方向に沿って移動させることができる。
また、引き手段は、枠体3の下梁部7に形成された下中央貫通孔17の長さよりも長いボルトである引きボルト33で構成される。引きボルト33は、ハウジング5の非支持面に形成された引き貫通孔26と同じ径を有し、且つ下梁部7の外周面に形成された下中央貫通孔17の径よりも若干小さな径を有するボルトであり、下梁部7の外周面に形成された下中央貫通孔17の開口から挿入されて下中央貫通孔17を貫通し、非支持面に形成された引き貫通孔26に螺合する。
引き貫通孔26に螺合した引きボルトを締めれば、非支持面を枠体3側に引く力を加えることができる。ハウジング5の底面である非支持面を、ハウジング5の下方に向かって引くことで、ハウジング5を下方に移動させることができ、ハウジング5の上側面に支持された回転軸4を、回転軸4の軸心方向に垂直な垂直方向に沿って移動させることができる。
このような、押し手段及び引き手段を協働して用いることで、枠体3に対してハウジング5を上下方向(回転軸4の軸心方向に垂直な垂直方向)において位置決めし、固定することができる。
以上の説明は、枠体3の下半分の構成及び枠体3の下半分に設けられる構成部材についての説明であり、本実施形態による線引き装置1の下半分の構成の説明である。上述のとおり、本実施形態による線引き装置1は、上下対称の構成を有しているので、枠体3には、ローラダイス2を支持する回転軸4と一体となって該回転軸4を支持するハウジング5が2組、ローラダイス2の型溝を対向させて一対となって設けられている。
このような構成の線引き装置1では、枠体3が、右梁部8及び左梁部9の全長に対する十分な大きさの切欠き部10a,10bを有しているので、枠体3は、回転軸4の両端に設けられた供給口21及び排出口22に対応する位置に切欠き部10a,10bを有することになる。これによって、ハウジング5が枠体3に対して位置決めされる際に、供給口21及び排出口22が切欠き部10a,10b内を枠体3に対して干渉することなく移動する。これによって、供給口21及び排出口22に接続される冷却媒体の流通管が、枠体3に対して干渉することもない。
これら対向するハウジング5,5について、第2の位置決め手段によって対向するローラダイス5,5の位置及び間隔を容易に調整することができ、第1の位置決め手段によって対向するローラダイス5,5の型溝の左右方向におけるズレなどを容易に調整することができる。
また、本実施形態による線引き装置1は、ハウジング5及びローラダイス2の位置決め以前に、ローラダイス2及び回転軸4を枠体3とは別体のハウジング5と一体化し、その一体化された別体のハウジング5を枠体3に設ける構成となっている。つまり、線引き装置1の組立てにおいて、回転軸4を枠体3に直に組み付ける必要が無いので、線引き装置1の組立てが非常に容易になる。さらに、ローラダイス2の位置決めに際して、ローラダイス2に対する回転軸4の位置を変更する必要が無いので、第1の位置決め手段及び第2の位置決め手段によって、ローラダイス2の位置を非常に容易且つ正確に調整することができる。
以下に、上述の実施形態で説明した線引き装置1(以下、本線引き装置という)と、特許文献2に開示される従来の線引き装置について、それらの組立に要する時間、調整に要する時間、及び分解に要する時間を比較して、下の表1にまとめた。
Figure 0005968264
本線引き装置と従来の線引き装置、いずれの線引き装置にも熟練していない作業者が、各線引き装置の組立、調整及び分解に要する時間を計測した。
その結果、組立に要する時間については、従来の線引き装置が25分〜30分程度要するのに対して、本線引き装置は約15分程度であった。本線引き装置は、従来の線引き装置に要する時間の半分程度で組み立てが完了するだけでなく、約15分という短時間で組立てられるので、作業者の熟練をほとんど必要としない線引き装置であるといえる。
これは、本線引き装置が、ローラダイス2の回転軸4をハウジング5の表面に形成された溝に載置する構成を採用しているためであり、この構成によって、従来の線引き装置で要求される回転軸を枠体に直にはめ込むという、慎重に行う必要があり時間を要する作業を省略することができる。
次に、調整時間については、本線引き装置と従来の線引き装置、いずれの線引き装置においても1分であり、少なくとも調整に要する時間において差は見られなかった。
しかし、本線引き装置は、ローラダイス2を支持する回転軸4の軸心方向における位置出しを、枠体3に設けた第1の位置決め手段である、右押圧片28aと右押圧ネジ29a、及び左押圧片28bと左押圧ネジ29bを用いてハウジング5の両端を回転軸4の軸心方向(左右方向)に押圧することでハウジング5の位置出しを行う。
このように、回転軸4の位置を直接調整するのではなく、回転軸4を支持するハウジング5の位置を調整することでローラダイス2の位置出しを行うので、回転軸4のたわみや保持不足を回避しながら、容易にローラダイス2の位置出しができる。
また、本線引き装置は、ローラダイス2の径方向(回転軸4の軸心方向に垂直な垂直方向)における位置出しを、第2の位置決め手段である押しボルト32a,32b及び引きボルト33によってハウジング5を押し引きすることで行う。このように、本線引き装置は、ハウジング5を押し引きすることでローラダイス2の径方向の位置出しができるので、回転軸4の締め付けトルクに左右されずに径方向の位置出しを簡便に行うことができる。
最後に、分解に要する時間については、従来の線引き装置が5分〜7分程度要するのに対して、本線引き装置は3分〜5分程度であった。
本線引き装置は、分解に要する時間においても2分間ほどの短縮を実現した。これは、以下の理由による。本線引き装置の第1の位置決め手段及び第2の位置決め手段による位置出し方法(位置調整方法)では、ローラダイス2の径方向におけるハウジング5の稼動範囲を、回転軸4の直径以上に確保することができる。このように、ハウジング5の稼動範囲を回転軸4の直径以上に確保することにより、枠体3からハウジング5を取り外すことなくローラダイス2を装着した回転軸4をハウジング5から取り外すことができるからである。また、同様に、ハウジング5も枠体3を分解することなく枠体3から取り外すことができるからである。
最後に、本線引き装置及び従来の線引き装置において、調整に要する時間自体に差異は表れなかった。しかし、本線引き装置は、従来の線引き装置に比べて調整方法が容易になっているので、作業者の技能差によって生じうる締め付けトルクの強弱等による回転軸のたわみや保持不足、それに伴う回転軸の移動といった品質の低下を招く問題も解消することができる。
つまり、本線引き装置は、回転軸4を枠体3とは別体のハウジング5で保持する構成を採用したので、従来の線引き装置に比べて、組立、調整及び分解に熟練を要する部分を格段に少なくすることに成功した。これとともに、第1の位置決め手段及び第2の位置決め手段により、本線引き装置は、特に熟練した技能を必要とすることなく、簡易かつ短時間に組立及び調整できる構造を実現することができた。
また、枠体3は、回転軸4の両端に設けられた供給口21及び排出口22に対応する位置に切欠き部10a,10bを有しているので、ハウジング5を枠体3に対して位置決めする際に、供給口21及び排出口22を切欠き部10a,10b内で枠体3に干渉することなく移動させることができた。
例えば、図2(a)に示す構成の線引き装置1において、上側のハウジング5に載置された回転軸4の右端に供給口(コネクタ)21を設けると共に、左端に排出口(コネクタ)22を設け、また下側のハウジング5に載置された回転軸4の右端に排出口(コネクタ)22を設けると共に、左端に供給口(コネクタ)21を設けた。その上で、下側の回転軸4の排出口22と上側の回転軸4の供給口21とを、枠体3の右側の切欠き部10aを通る冷却媒体の流通管で直接に接続した。このように上下の回転軸4,4を流通管で接続することで、左側の切欠き部10bを通して下側の回転軸4の供給口21に冷却媒体を供給しつつ、右側の切欠き部10aの流通管を通って下側の回転軸4から上側の回転軸4に流れた冷却媒体を、上側の回転軸4の排出口22から左側の切欠き部10bを通して冷却媒体を排出することができた。
このように、枠体3が切欠き部10a,10bを有することで、供給口21及び排出口22の移動が容易になるだけでなく、供給口21及び排出口22に接続される冷却媒体の流通管が枠体3に対して干渉することがないので、ローラダイス2を保持する回転軸4を直接冷却する高い冷却効率を実現しつつ、本線引き装置を簡易かつ短時間に組立及び調整できる構造を実現することができた。
ところで、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、動作条件や測定条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
例えば、第1の位置決め手段及び第2の位置決め手段において、ハウジング5を押す力や引く力を枠体3を貫通するボルトを用いて加えた。しかし、同様の力を加えることができる部材や機構であれば、第1の位置決め手段及び第2の位置決め手段を、ボルト以外の部材を用いて構成してもよい。
1 線引き装置
2 ローラダイス
3 枠体
4 回転軸
5 ハウジング
6 上梁部
7 下梁部
8 右梁部
9 左梁部
10a,10b 切欠き部
11a,11b 右段差面
12a,12b 右縁面
13a,13b 下縁面
14a,14b 貫通孔
15a,15b 貫通孔
16a,16b 貫通孔
17 下中央貫通孔
18a,18b 下右貫通孔
19a,19b 貫通孔
20a,10b ガイドピン
21 供給口
22 排出口
23a,24a ネジ穴
25a,25b 固定具
26 貫通孔
27a,27b ガイド孔
28a,28b 右押圧片
29a,29b 右押圧ネジ
30a,31a 右固定ネジ
32a,32b 右押しボルト
33 引きボルト
100 ダイス群
101 引取キャプスタン
S1,S2 対称線
W 溶接ワイヤ

Claims (7)

  1. 一対のローラダイスによって形成される型孔に線材を通して、該線材を伸線加工する線引き装置であって、
    枠体と、
    前記ローラダイスを回転自在に支持する回転軸と、
    前記枠体とは別体であって、前記ローラダイスを支持する回転軸が載置されると共に、前記載置された回転軸を支持する支持体と、
    前記支持体を、該支持体に支持された前記回転軸の軸心方向に沿って移動させることで、前記枠体に対して位置決めする第1の位置決め手段と、
    前記支持体を、該支持体に支持された前記回転軸の軸心方向に垂直な垂直方向に沿って移動させることで、前記枠体に対して位置決めする第2の位置決め手段と、を備えることを特徴とする線引き装置。
  2. 前記第1の位置決め手段が、
    前記ローラダイスを支持する回転軸の軸心方向における前記支持体の両端部を押圧して前記支持体を前記枠体に対して位置決めする押圧手段と、
    前記押圧手段を前記枠体に対して固定する固定手段と、を有することを特徴とする請求項1に記載の線引き装置。
  3. 前記押圧手段が、前記枠体を貫通するように設けられ且つ前記支持体に押圧力を付与するボルトを有することを特徴とする請求項2に記載の線引き装置。
  4. 前記第2の位置決め手段が、
    前記支持体において前記回転軸が載置される面とは反対に位置する面である非支持面に対して、前記枠体側から前記非支持面を押す力を加える押し手段と、
    前記枠体側へ前記非支持面を引く力を加える引き手段と、を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の線引き装置。
  5. 前記押し手段が、枠体を貫通するように設けられ且つ前記枠体側から前記非支持面を押す力を加える押しボルトを有し、
    前記引き手段が、前記枠体を貫通するように設けられ且つ枠体側へ前記非支持面を引く力を加える引きボルトを有することを特徴とする請求項4に記載の線引き装置。
  6. 前記ローラダイスの回転軸が、軸心に沿って内部に設けられた冷却手段を有し、前記冷却手段へ冷却媒体を供給する供給口を前記ローラダイスの回転軸の一方の端部に有し、前記冷却手段から前記冷却媒体を排出する排出口を前記回転軸の他方の端部に有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の線引き装置。
  7. 前記枠体が、前記供給口及び排出口に対応する位置において切欠き部を有し、
    前記回転軸に形成された供給口及び排出口が、前記支持体が枠体に対して位置決めされる際に前記切欠き部内を前記枠体に対して干渉することなく移動するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の線引き装置。
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