JP5960178B2 - 熱電変換素子の製造方法および熱電変換層用分散物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、熱電変換素子の製造方法および熱電変換層用分散物の製造方法に関する。
近年、熱電変換素子等のエレクトロニクス分野において、高い電気伝導性を有するカーボンナノチューブ等が、ITO(インジウムスズオキサイド)等の従来の無機材料に変わる新たな導電性材料として、注目されている。
しかし、これらのナノメートルサイズの導電性材料(以下、ナノ導電性材料という)、特にカーボンナノチューブは、凝集しやすいため分散媒への分散性が悪く、導電性材料として利用するに際して分散性を改善することが望まれている。
例えば、カーボンナノチューブの分散媒への分散性を改善する方法として、特定の炭素繊維用分散剤を用いる方法(例えば、特許文献1参照。)、分散手段としてジェットミルまたは超音波処理を採用する方法(例えば、特許文献2参照。)、好ましい分散方法としてメカニカルホモジナイザー法と超音波分散法とを順次実施する方法(例えば、特許文献3参照。)などが挙げられる。
特開2008−248412号公報 特開2010−97794号公報 国際公開第2012/133314号パンフレット
ところで、熱電変換素子は、その熱電変換層内で熱を電気に変換するものであるから、熱電変換層をある程度厚くすると優れた熱電変換性能を発揮する。このような熱電変換層は、熱電変換層を形成するための分散物(本発明において、熱電変換層用分散物という)として、高固形分濃度かつ高粘度の導電性材料の塗布液、例えば導電性材料のペーストを用いて、印刷法で形成するのが、生産性、生産コスト等の観点から望ましい。
しかし、上述したように、カーボンナノチューブ等のナノ導電性材料には低分散性という大きな技術的問題があり、特許文献1および特許文献2に記載の方法では、いずれも、カーボンナノチューブの分散性が不十分である。加えて、熱電変換層用分散物の成膜性、および印刷性もいまだ十分ではなかった。したがって、導電性が高く、熱電変換性能に優れた熱電変換層を形成するには、熱電変換層用分散物の成膜性および印刷性とともに、ナノ導電性材料、特にカーボンナノチューブの分散性をさらに改善する必要がある。
また、特許文献3に記載の方法によれば、ある程度の固形分濃度および粘度を有する熱電変換層用分散物を調製可能で熱電変換性能に優れた熱電変換層を形成しうる。
ところが、年々、熱電変換素子に求められる熱電変換性能が高くなっており、今後求められるより高い熱電変換性能を実現するには、カーボンナノチューブの分散性をさらに高めた、成膜性および印刷性に優れる熱電変換層用分散物の開発が望まれている。
したがって、本発明は、ナノ導電性材料の分散性に優れ、成膜性および印刷性の高い熱電変換層用分散物の製造方法、ならびに、この熱電変換層用分散物を用いた、導電性および熱電変換性能に優れた熱電変換素子の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を達成するため、熱電変換層用分散物におけるカーボンナノチューブの分散方法を種々検討した。その結果、分散処理対象物を遠心力により装置内壁面に薄膜円筒状に押し付けた状態で高速回転させて、遠心力および装置内壁面との速度差により発生するずり応力を分散処理対象物に作用させる高速旋回薄膜分散法に、分散処理対象物としてのカーボンナノチューブおよび分散媒を適用すると、カーボンナノチューブを分散媒に高度に分散させることができ、成膜性および印刷性をも改善できることを見出した。
上記のように、熱電変換性能の高い熱電変換層を印刷法で作製するには高固形分濃度で高粘度の熱電変換層用分散物が求められる。高速旋回薄膜分散法によれば、高固形分濃度で高粘度であるほど作用するずり応力が大きくなって、カーボンナノチューブの分散性をより一層高めることができる。その結果、熱電変換性能の高い熱電変換層を形成可能な熱電変換層用分散物を調製できることもわかった。
本発明は、これらの知見に基づいて完成された。
本発明において、「成膜性」とは、熱電変換層用分散物を基板に塗布して形成した熱電変換層(膜)の膜質に関する性質を指し、例えば、凝集物がなく均一である、破断・脆弱でないといった熱電変換層の層質の良化と、例えば、5μm以上の厚みに熱電変換層を形成できる厚肉化可能性とを評価した。したがって「成膜性に優れる」とは均質な膜の作製が可能であり、また、熱電変換層用分散物の液ダレをなくして、熱電変換層の形成が可能なことをいう。
また、「印刷性」とは、熱電変換層用分散物を基板に印刷して熱電変換層を形成させる際の材料特性に関するものである。「印刷性に優れる」とは、例えば熱電変換層用分散物のチキソトロピー性が適度に大きく、均一に印刷が可能であり、かつ成形性に優れる状態であることをいう。
上記の課題は以下の手段により達成された。
<1>基材上に、第1の電極、熱電変換層および第2の電極を有する熱電変換素子の製造方法であって
少なくともナノ導電性材料および分散媒を予備混合して予備混合物を調製し、予備混合物を高速旋回薄膜分散法に供して、ナノ導電性材料を含有する熱電変換層用分散物を調製する工程と、
調製した熱電変換層用分散物を前記基材上に塗布し、乾燥する工程とを有し、
熱電変換層用分散物の固形分濃度が、0.5〜20w/v%である熱電変換素子の製造方法。
<2>予備混合物の固形分濃度が、15〜100質量%である<1>に記載の熱電変換素子の製造方法。
<3>熱電変換層用分散物の固形分中のナノ導電性材料の含有率が、10質量%以上である<1>または<2>に記載の熱電変換素子の製造方法。
<4>熱電変換層用分散物の粘度が、10mPa・s以上である<1>〜<3>のいずれかに記載の熱電変換素子の製造方法。
<5>高速旋回薄膜分散法が、10〜40m/secの周速で行われる<1>〜<4>のいずれかに記載の熱電変換素子の製造方法。
<6>さらに分散剤を高速旋回薄膜分散法に供する<1>〜<5>のいずれかに記載の熱電変換素子の製造方法。
<7>分散剤が、共役高分子である<6>に記載の熱電変換素子の製造方法。
<8>さらに非共役高分子を高速旋回薄膜分散法に供する<1>〜<7>のいずれかに記載の熱電変換素子の製造方法。
<9>ナノ導電性材料が、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、フラーレン、グラファイト、グラフェン、カーボンナノ粒子および金属ナノワイヤーからなる群より選択される少なくとも1種である<1>〜<8>のいずれかに記載の熱電変換素子の製造方法。
<10>ナノ導電性材料が、カーボンナノチューブである<1>〜<9>のいずれかに記載の熱電変換素子の製造方法。
<11>ナノ導電性材料が、単層カーボンナノチューブであり、単層カーボンナノチューブの直径が1.5〜2.0nmであり、その長さが1μm以上であり、かつG/D比が30以上である<1>〜<10>のいずれかに記載の熱電変換素子の製造方法。
<12>熱電変換層用分散物を印刷法によって基材上に塗布する<1>〜<11>のいずれかに記載の熱電変換素子の製造方法。
<13>動的光散乱法で測定した、熱電変換層用分散物中のナノ導電性材料の平均粒径Dが、1000nm以下である<1>〜<12>のいずれかに記載の熱電変換素子の製造方法。
<14>動的光散乱法で測定した、熱電変換層用分散物中のナノ導電性材料の粒径分布の半値幅dDと平均粒径Dとの比[dD/D]が、5以下である<1>〜<13>のいずれかに記載の熱電変換素子の製造方法。
<15>熱電変換素子の熱電変換層を形成するための熱電変換層用分散物の製造方法であって
少なくともナノ導電性材料および分散媒を予備混合して予備混合物を調製し、予備混合物を高速旋回薄膜分散法に供して、ナノ導電性材料を分散媒に分散させ、
熱電変換層用分散物の固形分濃度が、0.5〜20w/v%である熱電変換層用分散物の製造方法。
本発明において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本発明において、置換基に関してxxx基というときには、そのxxx基に任意の置換基を有していてもよい。また、同一の符号で示された基が複数ある場合は、互いに同じであっても異なっていてもよい。
各式で示される繰り返し構造(繰り返し単位ともいう)は、まったく同じ繰り返し構造でなくとも、式に示される範囲であれば、異なった繰り返し構造をも含む。例えば、繰り返し構造がアルキル基を有する場合、各式で示される繰り返し構造は、メチル基を有する繰り返し構造のみでもよく、メチル基を有する繰り返し構造に加えて、他のアルキル基、例えばエチル基を有する繰り返し構造を含んでいてもよい。
本発明の熱電変換層用分散物の製造方法によれば、ナノ導電性材料の分散性に優れ、成膜性および印刷性の高い熱電変換層用分散物を製造できる。また、本発明の熱電変換素子の製造方法によれば、導電性および熱電変換性能に優れた熱電変換素子を製造できる。
本発明の熱電変換素子の製造方法によって製造される熱電変換素子の一例の断面を模式的に示す図である。 本発明の熱電変換素子の製造方法によって製造される熱電変換素子の別の一例の断面を模式的に示す図である。 インクジェット法に用いる基材を示した断面図である。
本発明の熱電変換素子の製造方法によって製造される熱電変換素子(本発明の熱電変換素子ということがある)について、説明する。
本発明の熱電変換素子は、基材上に、第1の電極、熱電変換層および第2の電極を有し、熱電変換層の少なくとも一方の面が第1の電極および第2の電極に接するように配置されていれば、第1の電極および第2の電極と熱電変換層との位置関係等、その他の構成については特に限定されない。例えば、熱電変換層が第1の電極および第2の電極で挟まれる態様、すなわち、本発明の熱電変換素子が基材上に第1の電極、熱電変換層および第2の電極をこの順に有している態様であってもよい。また、熱電変換層がその一方の面に第1の電極および第2の電極に接するように配置される態様、すなわち、本発明の熱電変換素子が、基材上に互いに離間して形成された両電極上に成膜された熱電変換層を有している態様であってもよい。
熱電変換層は、本発明の熱電変換層用分散物の製造方法によって製造された熱電変換層用分散物(以下、本発明に用いる熱電変換層用分散物または単に熱電変換層用分散物ということがある)で成膜される。
本発明の熱電変換素子の構造の一例として、図1および図2に示す素子の構造が挙げられる。図1および図2中、矢印は、熱電変換素子の使用時における温度差の向きを示す。
図1に示す熱電変換素子1は、第1の基材12上に、第1の電極13および第2の電極15を含む一対の電極と、該電極13および15間に熱電変換層14を備えている。第2の電極15の他方の表面には第2の基材16が配設されており、第1の基材12および第2の基材16の外側には互いに対向して金属板11および17が配設されている。金属板11および17は、特に限定されず、熱電変換素子に通常用いられる金属材料で形成されている。
熱電変換素子1は、基材12、第1の電極13、熱電変換層14および第2の電極15の順に構成されている。この熱電変換素子1は、2枚の基材12および16それぞれの表面(熱電変換層14の形成面)に、第1の電極13または第2の電極15を設け、これら電極の間に熱電変換層14を有する構造であることが好ましい。
図2に示す熱電変換素子2は、第1の基材22上に、第1の電極23および第2の電極25が配設され、第1の電極23および第2の電極25を共に覆うように熱電変換層24が設けられている。また、熱電変換層24上に第2の基材26が設けられている。熱電変換素子2は、第1の電極23および第2の電極25の配設位置、金属板の有無以外は熱電変換素子1と同様である。
熱電変換素子2は、基材22、第1の電極23および第2の電極25、熱電変換層24の順に構成されている。
熱電変換層保護の観点から、熱電変換層の表面は電極または基材により覆われることが好ましい。例えば、図1に示すように、熱電変換層14の一方の表面が第1の電極13を介して第1の基材12で覆われ、他方の表面が第2の電極15を介して第2の基材16で覆われていることが好ましい。この場合、第2の電極15の外側に第2の基材16を設けることなく第2の電極15が最表面として空気に晒されていてもよい。
また、図2に示すように、熱電変換層24の一方の表面が第1の電極23及び第2の電極25並びに第1の基材22で覆われ、他方の表面も第2の基材26により覆われることが好ましい。この場合、熱電変換層24の外側に第2の基材26を設けることなく熱電変換層24が最表面として空気に晒されていてもよい。
本発明の熱電変換素子において、基材は、熱電変換層を膜(フィルム)状に設けたものが好ましい。
本発明の熱電変換素子の熱電変換性能は、下記式(A)で示される性能指数ZTにより表すことができる。
性能指数ZT=S・σ・T/κ (A)
式(A)において、 S(V/K):絶対温度1K当りの熱起電力(ゼーベック係数)
σ(S/m):導電率
κ(W/mK):熱伝導率
T(K):絶対温度
本発明の熱電変換素子は、熱電変換層の厚さ方向または面方向に温度差が生じている状態で、厚さ方向または面方向に温度差を伝達するように機能する。したがって、本発明の熱電変換層用分散物をある程度の厚みを持った形状に成形して熱電変換層を形成するのが好ましい。そのため、熱電変換層を、印刷法等、塗布により成膜するのが好ましく、この場合、熱電変換層用分散物には、高固形分濃度および高粘度であること、また良好な成膜性および印刷性等が要求される。基材密着性等が要求されることもある。
ここで、熱電変換層用分散物が高固形分濃度であるとは、その固形分濃度が少なくとも0.1w/v%であり、好ましくは0.5w/v%以上であることを意味し、また高粘度であるとは、その25℃での粘度が少なくとも4mPa・sであり、好ましくは10mPa・s以上であり、より好ましくは50mPa・s以上であることを意味する。
成膜性および印刷性は上述した通りである。
「基材密着性」とは、熱電変換層用分散物を基板に印刷・塗布する際の熱電変換層用分散物の基板に対する密着の度合いを表し、「基材密着性に優れる」とは熱電変換層用分散物の塗布層が剥れることがなく基板に密着している状態になることをいう。
本発明により、熱電変換層用分散物の分散性に加えて、このような成膜性および印刷性に関する要求に応えることができる。すなわち、本発明に用いる熱電変換層用分散物は、ナノ導電性材料の分散性が良好で、成膜性および印刷性に優れた、高固形分濃度および高粘度の分散物となる。したがって、熱電変換層の成膜、特に印刷法等の塗布法による成膜にも適する。
以下、本発明の熱電変換層用分散物の製造方法、および、本発明の熱電変換素子の製造方法等について、説明する。
本発明の熱電変換素子の製造方法は、少なくともナノ導電性材料と分散媒とを高速旋回薄膜分散法に供して、ナノ導電性材料を含有する熱電変換層用分散物を調製する工程と、調製した熱電変換層用分散物を基材上に塗布し、乾燥する工程とを有している。
このように、本発明の熱電変換素子の製造方法においては、本発明の熱電変換層用分散物の製造方法でもある分散物調製工程を実施して、本発明に用いる熱電変換層用分散物を調製する。
本発明の熱電変換層用分散物の製造方法および本発明の熱電変換素子の製造方法に用いる各成分について説明する。
これらの製造方法に用いる成分は、ナノ導電性材料および分散媒、所望により、分散剤、非共役高分子、ドーパント、励起アシスト剤、金属元素、他の成分などである。
<ナノ導電性材料>
本発明に用いるナノ導電性材料は、少なくとも一辺の長さがナノメートルサイズの大きさで、導電性を有する材料であればよい。このようなナノ導電性材料として、少なくとも一辺の長さがナノメートルサイズの大きさの導電性を有する炭素材料(以下、ナノ炭素材料ということがある)、少なくとも一辺の長さがナノメートルサイズの大きさの金属材料(以下、ナノ金属材料ということがある)等が挙げられる。
ここで、上記一辺の長さは、ナノ導電性材料のどの辺の長さでもよく、特に限定されないが、ナノ導電性材料の非凝集体(例えば一次粒子または分子1個等の凝集していない状態をいう)の長軸方向の長さまたは短軸方向の長さ(直径ともいう)が好ましい。
一辺の長さは、透過型電子顕微鏡(TEM)等の画像解析、または、動的光散乱法(特に粒子の場合)により、測定できる。
本発明に用いるナノ導電性材料は、ナノ炭素材料およびナノ金属材料の中でも、それぞれ後述する、カーボンナノチューブ(以下、CNTともいう)、カーボンナノファイバー、フラーレン、グラファイト、グラフェンおよびカーボンナノ粒子のナノ炭素材料、ならびに、金属ナノワイヤーが好ましく、導電性向上および分散媒中での分散性向上の観点で、カーボンナノチューブが特に好ましい。
ナノ導電性材料は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。ナノ導電性材料として2種以上を併用する場合には、少なくとも1種ずつのナノ炭素材料およびナノ金属材料を併用してもよく、ナノ炭素材料またはナノ金属材料それぞれを2種併用してもよい。
1.ナノ炭素材料
ナノ炭素材料は、炭素原子のsp混成軌道で構成される炭素−炭素結合によって炭素原子同士が化学結合してなる上記ナノメートルサイズの導電性材料等が挙げられる。具体的には、フラーレン(金属内包フラーレンおよび玉葱状フラーレンを含む。)、カーボンナノチューブ(ピーポッドを含む。)、カーボンナノチューブの片側が閉じた形をしたカーボンナノホーン、カーボンナノファイバー、カーボンナノウォール、カーボンナノフィラメント、カーボンナノコイル、気相成長カーボン(VGCF)、グラファイト、グラフェン、カーボンナノ粒子、カーボンナノチューブの頭部に穴があいたコップ型のナノカーボン物質等が挙げられる。また、ナノ炭素材料として、グラファイト型の結晶構造を持ち導電性を示す各種カーボンブラックも用いることができ、例えば、ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック等が挙げられ、具体的には、バルカン(登録商標)等のカーボンブラックが挙げられる。
これらのナノ炭素材料は、従来の製造方法によって製造できる。具体的には、二酸化炭素の接触水素還元、アーク放電法、レーザー蒸発法(レーザー・アブレーション法)、化学気相成長法(以下、CVD法という)などの気相成長法、気相流動法、一酸化炭素を高温高圧化で鉄触媒と共に反応させて気相で成長させるHiPco法、オイルファーネス法等が挙げられる。このようにして製造されたナノ炭素材料は、そのまま用いることもでき、また、洗浄、遠心分離、ろ過、酸化、クロマトグラフ等によって精製されたものを用いることもできる。さらに、ナノ炭素材料は、必要に応じて、ボールミル、振動ミル、サンドミル、ロールミル等のボール型混練装置等を用いて粉砕したもの、化学的、物理的処理によって短く切断されたもの等を用いることもできる。
ナノ炭素材料は、上述の中でも、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラファイト、グラフェンおよびカーボンナノ粒子が好ましく、カーボンナノチューブが特に好ましい。
以下、CNTについて説明する。CNTは、1枚の炭素膜(グラフェン・シート)が円筒状に巻かれた単層CNT、2枚のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた2層CNT、および複数のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた多層CNTがある。本発明においては、単層CNT、2層CNT、多層CNTを各々単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特に、導電性および半導体特性において優れた性質を持つ単層CNTおよび2層CNTが好ましく、単層CNTがより好ましい。
単層CNTの場合、グラフェン・シートのグラフェンの六角形の向きに基づく螺旋構造の対称性を軸性カイラルといい、グラフェン上にある6員環の基準点からの2次元格子ベクトルのことをカイラルベクトルという。このカイラルベクトルを指数化した(n,m)をカイラル指数といい、このカイラル指数によって金属性と半導体性に分類できる。具体的には、n−mが3の倍数であるものが金属性を示し、3の倍数でないものが半導体性を示す。
単層CNTは、半導体性のものであっても、金属性のものであってもよく、両者を併せて用いてもよい。
また、CNTには金属などが内包されていてもよく、フラーレン等の分子が内包されたものを用いてもよい。
CNTはアーク放電法、CVD法、レーザー・アブレーション法等によって製造することができる。本発明に用いられるCNTは、いずれの方法によって得られたものであってもよいが、好ましくはアーク放電法およびCVD法により得られたものである。
CNTを製造する際には、同時にフラーレンやグラファイト、非晶性炭素が副生成物として生じることがある。これら副生成物を除去するために精製してもよい。CNTの精製方法は特に限定されないが、上述の精製法の他に、硝酸、硫酸等による酸処理、超音波処理が不純物の除去には有効である。併せて、フィルターによる分離除去を行うことも、純度を向上させる観点からより好ましい。
精製の後、得られたCNTをそのまま用いることもできる。また、CNTは一般に紐状で生成されるため、用途に応じて所望の長さにカットして用いてもよい。CNTは、硝酸、硫酸等による酸処理、超音波処理、凍結粉砕法等により短繊維状にカットすることができる。また、併せてフィルターによる分離を行うことも、純度を向上させる観点から好ましい。
本発明においては、カットしたCNTだけではなく、あらかじめ短繊維状に作製したCNTも同様に使用できる。このような短繊維状CNTは、例えば、基板上に鉄、コバルト等の触媒金属を形成し、その表面にCVD法を用いて700〜900℃で炭素化合物を熱分解してCNTを気相成長させることによって、基板表面に垂直方向に配向した形状で得られる。このようにして作製された短繊維状CNTは基板から剥ぎ取る等の方法で取り出すことができる。また、短繊維状CNTは、ポーラスシリコンのようなポーラスな支持体や、アルミナの陽極酸化膜上に触媒金属を担持させ、その表面にCNTをCVD法にて成長させることもできる。触媒金属を分子内に含む鉄フタロシアニンのような分子を原料とし、アルゴン/水素のガス流中でCVD法を行うことによって基板上にCNTを作製する方法でも、配向した短繊維状CNTを作製することができる。さらには、エピタキシャル成長法によってSiC単結晶表面に配向した短繊維状CNTを得ることもできる。
本発明で用いるCNTの長軸方向の平均長さ(単に長さともいう。)は、特に限定されないが、耐久性、透明性、成膜性、導電性等の観点から、0.01μm以上2000μm以下が好ましく、0.01μm以上1000μm以下がより好ましい。さらには1μm以上が好ましく、1μm以上1000μm以下が特に好ましい。
本発明で用いるCNTの直径は、特に限定されないが、耐久性、透明性、成膜性、導電性等の観点から、0.4nm以上100nm以下が好ましく、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは15nm以下である。特に、単層CNTを用いる場合には、0.5nm以上3nm以下が好ましく、より好ましくは1.0nm以上3nm以下、さらに好ましくは1.5nm以上2.5nmであり、特に好ましくは1.5nm以上2.0nmである。直径は後述する方法で測定できる。
本発明で用いるCNTには、欠陥のあるCNTが含まれていることがある。このようなCNTの欠陥は、熱電変換層用分散物などの導電性を低下させるため、低減することが好ましい。CNTの欠陥の量は、ラマンスペクトルのG−バンドとD−バンドの強度比G/D(以下、G/D比という。)で見積もることができる。G/D比が高いほど欠陥の量が少ないCNT材料であると推定できる。特に、単層CNTを用いる場合には、G/D比が10以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましい。
ナノ炭素材料が、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバー、カーボンナノフィラメント、カーボンナノコイル、気相成長カーボン(VGCF)、コップ型のナノカーボン物質等である場合、長軸方向の長さは、特に限定されないが、上記CNTと同様である。
ナノ炭素材料が、カーボンナノウォール、グラファイトおよびグラフェンである場合、特に限定はされないが、膜厚は1〜100nm、一辺の長さ(平均値)は、1〜100μmが好ましい。
ナノ炭素材料が、カーボンナノ粒子である場合、直径(平均粒径)は、特に限定されないが、1〜1000nmが好ましい。
2.ナノ金属材料
ナノ金属材料は、繊維状または粒子状の金属材料等であり、具体的には、繊維状の金属材料(金属繊維ともいう)、粒子状の金属材料(金属ナノ粒子ともいう)等が挙げられる。ナノ金属材料は、後述する金属ナノワイヤーが好ましい。
金属繊維は、中実構造または中空構造が好ましい。平均短軸長さが1〜1,000nmであって平均長軸長さが1〜100μmの中実構造を持つ金属繊維を金属ナノワイヤーといい、平均短軸長さが1〜1,000nm、平均長軸長さが0.1〜1,000μmであって中空構造を持つ金属繊維を金属ナノチューブという。
金属繊維の材料としては、導電性を有する金属であればよく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、長周期律表(国際純正および応用化学連合(IUPAC)、1991改訂)の第4周期、第5周期および第6周期の各金属元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素からなる金属が好ましい。第2族〜第14族から選ばれる少なくとも1種の金属元素からなる金属がより好ましく、第2族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族および第14族から選ばれる少なくとも1種の金属元素からなる金属が更に好ましい。
このような金属として、例えば、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンテル、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛、またはこれらの合金等が挙げられる。これらの中でも、導電性に優れる点で、銀、および銀の合金が好ましい。銀の合金で使用する金属としては、白金、オスミウム、パラジウム、イリジウム等が挙げられる。金属は、主成分として含むことが特に好ましく、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
金属ナノワイヤーは、上述の金属で中実構造に形成されていれば、その形状は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、円柱状、直方体状、断面が多角形となる柱状など任意の形状をとることができ、熱電変換層の透明性が高くなる点で、円柱状、断面の多角形の角が丸まっている断面形状が好ましい。金属ナノワイヤーの断面形状は、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより調べることができる。
金属ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均短軸径または平均直径と称することがある)は、上述のナノ導電性材料と同じ観点から、50nm以下が好ましく、1〜50nmがより好ましく、10〜40nmがさらに好ましく、15〜35nmが特に好ましい。平均短軸長さは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子社製、JEM−2000FX)を用い、300個の金属ナノワイヤーの短軸長さを求め、これらの平均値として算出できる。なお、金属ナノワイヤーの短軸が円形でない場合の短軸長さは、最も長いものを短軸長さとする。
金属ナノワイヤーの平均長軸長さ(平均長さと称することがある)は、同様に、1μm以上が好ましく、1〜40μmがより好ましく、3〜35μmがさらに好ましく、5〜30μmが特に好ましい。平均長軸長さは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子社製、JEM−2000FX)を用い、300個の金属ナノワイヤーの長軸長さを求め、これらの平均値として算出できる。なお、金属ナノワイヤーが曲がっている場合、それを弧とする円を考慮し、その半径および曲率から算出される値を長軸長さとする。
金属ナノワイヤーは、いかなる製造方法で製造してもよいが、特開2012−230881号公報に記載されている、ハロゲン化合物と分散添加剤とを溶解した溶媒中で加熱しながら金属イオンを還元する製造方法で製造するのが好ましい。ハロゲン化合物、分散添加剤および溶媒ならびに加熱条件等の詳細は特開2012−230881号公報に記載されている。
また、この製造方法以外にも、例えば、特開2009−215594号公報、特開2009−242880号公報、特開2009−299162号公報、特開2010−84173号公報、特開2010−86714号公報等にそれぞれ記載の製造方法によって、金属ナノワイヤーを製造することもできる。
金属ナノチューブは、上述の金属で中空構造に形成されていれば、その形状は特に限定されず、単層であっても多層であってもよい。導電性および熱伝導性に優れる点で、金属ナノチューブは単層が好ましい。
金属ナノチューブの厚み(外径と内径との差)は、耐久性、透明性、成膜性、導電性等の観点から、3〜80nmが好ましく、3〜30nmがより好ましい。金属ナノチューブの平均長軸長さは、上述のナノ導電性材料と同じ観点から、1〜40μmが好ましく、3〜35μmがより好ましく、5〜30μmがさらに好ましい。金属ナノチューブの平均短軸長さは金属ナノワイヤーの平均短軸長さと同様であるのが好ましい。
金属ナノチューブは、いかなる製造方法で製造してもよく、例えば、米国特許出願公開第2005/0056118号明細書に記載の製造方法等で製造することができる。
金属ナノ粒子は、上述の金属形成された、粒子状(粉末状を含む)の金属微粒子であればよく、金属微粒子、金属微粒子の表面を保護剤で被覆したものでもよく、さらに、表面を被覆したものを分散媒体中に分散させたものでもよい。
金属ナノ粒子に使用される金属としては、上述した中でも、銀、銅、金、パラジウム、ニッケル、ロジウムなどが好ましく挙げられる。また、これらの少なくとも2種からなる合金、これらの少なくとも1種と鉄との合金等も使用できる。2種からなる合金としては、例えば、白金−金合金、白金−パラジウム合金、金−銀合金、銀−パラジウム合金、パラジウム−金合金、白金−金合金、ロジウム−パラジウム合金、銀−ロジウム合金、銅−パラジウム合金、ニッケル−パラジウム合金等が挙げられる。また、鉄の合金としては、例えば、鉄−白金合金、鉄−白金−銅合金、鉄−白金−スズ合金、鉄−白金−ビスマス合金および鉄−白金−鉛合金等が挙げられる。
これらの金属または合金は、単独でまたは2種以上を併用することができる。
金属ナノ粒子の平均粒径(動的光散乱法)は、導電性に優れる点で、1〜150nmが好ましい。
金属微粒子の保護剤は、例えば、特開2012−222055号公報に記載の保護剤が好適に挙げられ、炭素数10〜20の直鎖状または分枝状のアルキル鎖を有する保護剤、特に脂肪酸類または脂肪族アミン類、脂肪族チオール類もしくは脂肪族アルコール類等がさらに好適に挙げられる。ここで、炭素数が10〜20であると、金属ナノ粒子の保存安定性が高く、かつ導電性にも優れる。脂肪酸類、脂肪族アミン類、脂肪族チオール類および脂肪族アルコール類は特開2012−222055号公報に記載のものが好適である。
金属ナノ粒子は、いかなる製造方法で製造されてもよく、製造方法として、例えば、ガス中蒸着法、スパッタリング法、金属蒸気合成法、コロイド法、アルコキシド法、共沈法、均一沈殿法、熱分解法、化学還元法、アミン還元法および溶媒蒸発法等が挙げられる。これら製造方法は、それぞれ特有の特徴を備えるが、特に大量生産を目的とする場合には化学還元法、アミン還元法を用いるのが好ましい。これらの製造方法を実施するに当たっては、必要に応じて上述の保護剤を選択して使用するほか、公知の還元剤等を適宜用いることができる。
<分散剤>
本発明の熱電変換層用分散物の製造方法において、分散剤を用いるのが、ナノ導電性材料を高度に分散できる点で、好ましい。すなわち、本発明に用いる熱電変換層用分散物は分散剤を含有しているのが好ましい。
本発明に用いる分散剤は、ナノ導電性材料の凝集を阻害して分散媒に分散させるのを補助するものであれば特に制限されない。分散剤は、ナノ導電性材料の分散性の点で低分子分散剤および共役高分子が好ましく、熱電変換素子の熱電変換性能を高めることができる点で共役高分子がさらに好ましい。
1.低分子分散剤
低分子分散剤は、後述する共役高分子よりも分子量の小さいものであればよく、例えば、アミン化合物、ポルフィリン化合物、ピレン化合物が挙げられる。例えば、オクタデシルアミン、5,10,15,20−テトラキス(ヘキサデシロキシフェニル)−21H,23H−ポルファイン、亜鉛ポルフィリン、亜鉛プロトポルフィリンなどが挙げられる。
また、界面活性剤も挙げられる。界面活性剤は、イオン性(アニオン性、カチオン性、双性(両性))のものと非イオン性(ノニオン性)のものがあり、本発明ではいずれも用いることができる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、カルボン酸系として脂肪酸塩やコール酸塩、スルホン酸系として直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムやラウリル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、ジアルキルイミダゾリウム塩が挙げられる。双性界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタインなどが挙げられる。また、非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテルなどが挙げられる。
本発明に用いる熱電変換層用分散物には低分子分散剤を1種単独でまたは2種以上を併用することができる。
2.共役高分子
共役高分子は、主鎖がπ電子または孤立電子対で共役する構造を有する化合物であれば特に限定されない。このような共役構造として、例えば、主鎖上の炭素−炭素結合において、一重結合と二重結合とが交互に連なる構造が挙げられる。
このような共役高分子としては、チオフェン化合物、ピロール化合物、アニリン化合物、アセチレン化合物、p−フェニレン化合物、p−フェニレンビニレン化合物、p−フェニレンエチニレン化合物、p−フルオレニレンビニレン化合物、フルオレン化合物、芳香族ポリアミン化合物(アリールアミン化合物ともいう)、ポリアセン化合物、ポリフェナントレン化合物、金属フタロシアニン化合物、p−キシリレン化合物、ビニレンスルフィド化合物、m−フェニレン化合物、ナフタレンビニレン化合物、p−フェニレンオキシド化合物、フェニレンスルフィド化合物、フラン化合物、セレノフェン化合物、アゾ化合物および金属錯体化合物、ならびに、これらの化合物の水素原子等を置換基で置換(以下、化合物に置換基を導入という)した誘導体等をモノマーとし、該モノマーを重合または共重合してなる、該モノマーの繰り返し構造を有する共役高分子が挙げられる。なお、上記化合物はいずれも置換基を有しないものをいい、置換基を有するものを誘導体という。
これらの中でも、チオフェン化合物、ピロール化合物、アニリン化合物、アセチレン化合物、p−フェニレン化合物、p−フェニレンビニレン化合物、p−フェニレンエチニレン化合物、フルオレン化合物およびアリールアミン化合物、ならびに、これらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物または誘導体を重合または共重合してなる共役高分子が、ナノ導電性材料の分散性および熱電変換性能の点で、好ましい。
上記の化合物に導入される置換基としては、特に制限はないが、他の成分との相溶性、用いる分散媒の種類等を考慮して、分散媒への共役高分子の分散性を高めるものが好ましい。
このような置換基は、特に限定されず、例えば、下記構造式(1)〜(5)のR〜R13がとり得る置換基が好ましく挙げられる。
例えば、置換基の一例として、分散媒として有機溶媒を用いる場合、直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルコキシ基、チオアルキル(アルキルチオ)基のほか、アルコキシアルキレンオキシ基、アルコキシアルキレンオキシアルキル基、クラウンエーテル環基、アリール基等を好ましく用いることができる。これらの基は、さらに置換基を有してもよい。
また、置換基の炭素数に特に制限はないが、好ましくは1〜12、より好ましくは4〜12であり、特に炭素数6〜12の長鎖のアルキル基、アルコキシ基、チオアルキル基、アルコキシアルキレンオキシ基、アルコキシアルキレンオキシアルキル基が好ましい。
一方、分散媒として水系媒体を用いる場合は、各モノマーまたは上記置換基が、さらに、カルボン酸基、スルホン酸基、水酸基、リン酸基等の親水性基を有することが好ましい。他にも、ジアルキルアミノ基、モノアルキルアミノ基、アルキル基が置換していないアミノ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アミド基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、イソシアネート基、イソシアノ基、ハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基などを置換基として導入することができ、好ましい。
置換基の数も特に制限されず、共役高分子の分散性や相溶性、導電性等を考慮して、1個または複数個の置換基を適宜導入することができる。
チオフェン化合物およびその誘導体を重合または共重合してなるチオフェン系共役高分子としては、チオフェン化合物およびその誘導体を繰り返し構造として有するものであればよく、例えば、チオフェンに由来する繰り返し構造を含むポリチオフェン、チオフェン環に置換基が導入されたチオフェン化合物の誘導体に由来する繰り返し構造を含む共役高分子、および、チオフェン環を含む縮合多環構造を有するチオフェン化合物に由来する繰り返し構造を含む共役高分子が挙げられる。
チオフェン系共役高分子は、誘導体に由来する繰り返し構造を含む共役高分子、および、上記縮合多環構造を有するチオフェン化合物に由来する繰り返し構造を含む共役高分子が好ましい。
チオフェン環に置換基が導入されたチオフェン系化合物の誘導体に由来する繰り返し構造を含む共役高分子としては、下記構造式(1)で表される繰り返し構造を含む共役高分子が挙げられる。共役高分子の一例として、例えば、ポリ−3−メチルチオフェン、ポリ−3−ブチルチオフェン、ポリ−3−ヘキシルチオフェン、ポリ−3−シクロヘキシルチオフェン、ポリ−3−(2’−エチルヘキシル)チオフェン、ポリ−3−オクチルチオフェン、ポリ−3−ドデシルチオフェン、ポリ−3−(2’−メトキシエトキシ)メチルチオフェン、ポリ−3−(メトキシエトキシエトキシ)メチルチオフェンなどのポリ(アルキル置換チオフェン)系共役高分子、ポリ−3−メトキシチオフェン、ポリ−3−エトキシチオフェン、ポリ−3−ヘキシルオキシチオフェン、ポリ−3−シクロヘキシルオキシチオフェン、ポリ−3−(2’−エチルヘキシルオキシ)チオフェン、ポリ−3−ドデシルオキシチオフェン、ポリ−3−メトキシ(ジエチレンオキシ)チオフェン、ポリ−3−メトキシ(トリエチレンオキシ)チオフェン、ポリ−(3,4−エチレンジオキシチオフェン)などのポリ(アルコキシ置換チオフェン)系共役高分子、ポリ−3−メトキシ−4−メチルチオフェン、ポリ−3−ヘキシルオキシ−4−メチルチオフェン、ポリ−3−ドデシルオキシ−4−メチルチオフェンなどのポリ(3−アルコキシ置換−4−アルキル置換チオフェン)系共役高分子、ポリ−3−チオヘキシルチオフェン、ポリ−3−チオオクチルチオフェン、ポリ−3−チオドデシルチオフェンなどのポリ(3−チオアルキルチオフェン)系共役高分子が挙げられる。
チオフェン系共役高分子としては、下記構造式(1)で表される繰り返し構造を含む共役高分子が好ましく、上記例のなかでも、ポリ(3−アルキル置換チオフェン)系共役高分子、ポリ(3−アルコキシ置換チオフェン)系共役高分子が好ましい。
3位に置換基を有するポリチオフェン系共役高分子に関しては、チオフェン環の2,5位での結合の向きにより異方性が生じる。3−置換チオフェンの重合において、チオフェン環の2位同士が結合したもの(HH結合体:head−to−head)、2位と5位が結合したもの(HT結合体:head−to−tail)、5位同士が結合したもの(TT結合体:tail−to−tail)の混合物になるが、2位と5位が結合したものの割合が多いほど、重合体主鎖の平面性が向上し、ポリマー間のπ−πスタッキング構造を形成しやすく、電荷の移動を容易にする上で好ましい。これら結合様式の割合は、核磁気共鳴分光法(H−NMR)により測定することができる。HT結合体のチオフェン系共役高分子中における割合は50質量%以上が好ましく、さらに好ましくは70質量%以上、特に90質量%以上のものが好ましい。
より具体的に、チオフェン環に置換基が導入されたチオフェン系化合物の誘導体に由来する繰り返し構造を含む共役高分子、および、上記縮合多環構造を有するチオフェン化合物に由来する繰り返し構造を含む共役高分子として、下記A−1〜A−17が例示できる。また、後述するA−18〜A−26の繰り返し構造を含む共役高分子も挙げられる。なお、下記式中、nは10以上の整数を示し、Buはt−ブチル基を表す。
Figure 0005960178
ピロール化合物およびその誘導体を重合または共重合してなるピロール系共役高分子としては、ピロール化合物およびその誘導体の繰り返し構造を有するものであればよく、例えば、ピロールに由来する繰り返し構造を含むポリピロール、ピロール環に置換基が導入されたピロール化合物の誘導体に由来する繰り返し構造を含む共役高分子、および、ピロール環を含む縮合多環構造を有するピロール化合物に由来する繰り返し構造を含む共役高分子が挙げられる。
ピロール系共役高分子として、例えば、下記B−1〜B−8が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
Figure 0005960178
アニリン化合物およびその誘導体を重合または共重合してなるアニリン系共役高分子としては、アニリン化合物またはその誘導体の繰り返し構造を有するものであればよく、例えば、アニリンに由来する繰り返し構造を含むポリアニリン、アニリンのベンゼン環に置換基が導入されたアニリン化合物の誘導体に由来する繰り返し構造を含む共役高分子、および、アニリンのベンゼン環を含む縮合多環構造を有するアニリン化合物に由来する繰り返し構造を含む共役高分子が挙げられる。
アニリン系共役高分子としては、下記C−1〜C−8が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示し、yは共重合成分の全モル数を1としたときのモル比を示し、0を超え1未満である。
なお、下記C−1は、共重合体成分およびそのモル比を示すものであり、共重合成分の結合様式は下記ものに限定されない。
Figure 0005960178
アセチレン化合物およびその誘導体を重合または共重合してなるアセチレン系共役高分子としては、アセチレン化合物またはその誘導体の繰り返し構造を有するものであればよく、例えば、下記D−1〜D−3が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
Figure 0005960178
p−フェニレン化合物およびその誘導体を重合または共重合してなるp−フェニレン系共役高分子としては、p−フェニレン化合物またはその誘導体の繰り返し構造を有するものであればよく、例えば、下記E−1〜E−9が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。また、下記E−2において、Acはアセチル基を表す。
Figure 0005960178
p−フェニレンビニレン化合物およびその誘導体を重合または共重合してなるp−フェニレンビニレン系共役高分子としては、p−フェニレンビニレン化合物またはその誘導体の繰り返し構造を有するものであればよく、下記F−1〜F−3が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
Figure 0005960178
p−フェニレンエチニレン化合物およびその誘導体を重合または共重合してなるp−フェニレンエチニレン系共役高分子としては、p−フェニレンエチニレン化合物またはその誘導体の繰り返し構造を有するものであればよく、下記G−1およびG−2が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
Figure 0005960178
上記以外の化合物およびその誘導体を重合または共重合してなる共役高分子としては、上記以外の化合物またはその誘導体の繰り返し構造を有するものであればよく、下記H−1〜H−13が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
Figure 0005960178
上記共役高分子のなかでも、直鎖状の共役高分子を用いることが好ましい。このような直鎖状の共役高分子は、例えば、ポリチオフェン系共役高分子、ポリピロール系共役高分子の場合、各モノマーのチオフェン環またはピロール環が、それぞれ2,5位で結合することにより得られる。ポリ−p−フェニレン系共役高分子、ポリ−p−フェニレンビニレン系共役高分子、ポリ−p−フェニレンエチニレン系共役高分子では、各モノマーのフェニレン基がパラ位(1,4位)で結合することにより得られる。
本発明で用いる共役高分子は、上述の繰り返し構造(以下、この繰り返し構造を与えるモノマーを「第1のモノマー(群)」とも称する)を1種単独で有しても、2種以上を有していてもよい。また、第1のモノマーに加えて、他の構造を有するモノマー(以下、「第2のモノマー」と称する)から誘導される繰り返し構造を有していてもよい。複数種の繰り返し構造からなる共役高分子の場合、ブロック共重合体であっても、ランダム共重合体であっても、グラフト重合体であってもよい。
上記第1のモノマーと併用される、他の構造を有する第2のモノマーの繰り返し構造としては、カルバゾール化合物に由来するもの、また、ジベンゾ[b,d]シロール基、シクロペンタ[2,1−b;3,4−b’]ジチオフェン基、ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4(2H,5H)−ジオン基、ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール−4,8−ジイル基、アゾ基、5H−ジベンゾ[b、d]シロール基、チアゾール基、イミダゾール基、オキサジアゾール基、チアジアゾール基、トリアゾール基等を有する化合物およびこれらの化合物に置換基を導入した誘導体に由来するものが挙げられる。導入する置換基としては、上述した置換基と同様のものが挙げられる。
本発明で用いる共役高分子は、第1のモノマー群から選択された1種または複数種のモノマーから誘導される繰り返し構造を共役高分子中、合計で50質量%以上有していることが好ましく、70質量%以上有していることがより好ましく、第1のモノマー群から選択された1種または複数種のモノマーから誘導される繰り返し構造のみからなることが更に好ましい。特に好ましくは、第1のモノマー群から選択された単一の繰り返し構造のみからなる共役高分子である。
第1のモノマー群のなかでも、チオフェン化合物およびその誘導体の少なくとも1つから誘導される繰り返し構造を含むポリチオフェン系共役高分子がより好ましく用いられる。特に、下記の構造式(1)〜(5)で表される化合物、誘導体または縮合多環構造を有するチオフェン化合物(チオフェン環含有縮合芳香環構造)に由来する繰り返し構造を有するポリチオフェン系共役高分子が好ましい。
Figure 0005960178
上記構造式(1)〜(5)中、R〜R13は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、フッ素原子置換アルキル基、フッ素原子置換アルコキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、ポリアルキレンオキシ基、アシルオキシ基またはアルキルオキシカルボニル基を表し、Yは炭素原子、窒素原子またはケイ素原子を表す。nは、Yが窒素原子のとき1を表し、Yが炭素原子またはケイ素原子のとき2を表す。また*は、各繰り返し構造の結合位置を表す。
〜R13において、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素の各原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子が好ましい。
アルキル基には直鎖、分岐、環状のアルキル基が含まれ、炭素数1〜14のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、s−ブチル、n−ペンチル、t−アミル、n−ヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル等が挙げられる。
アルコキシ基としては、炭素数1〜14のアルコキシ基が好ましく、具体的にはメトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、i−プロピルオキシ、n−ブトキシ、t−ブトキシ、s−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、t−アミルオキシ、n−ヘキシルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ、テトラデシルオキシ等が挙げられる。
フッ素原子置換アルキル基としては、フッ素原子が置換した炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。具体的には、CF−、CFCF−、n−C−、i−C−、n−C−、t−C−、s−C−、n−C11−、CFCFC(CF−、n−C13−、C17−、C19−、C1021−等のパーフルオロアルキル基が挙げられる。また、CF(CFCH−、CF(CFCH−、CF(CFCHCH−等の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたアルキル基が挙げられる。
フッ素原子置換アルコキシ基としては、フッ素原子が置換した炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましい。具体的には、CFO−、CFCFO−、n−CO−、i−CO−、n−CO−、t−CO−、s−CO−、n−C11O−、CFCFC(CFO−、n−C13O−、C17O−、C19O−、C1021O−等のパーフルオロアルコキシ基が挙げられる。また、CF(CFCHO−、CF(CFCHO−、CF(CFCHCHO−等の、水素原子の一部がフッ素原子で置換されたアルコキシ基が挙げられる。
アミノ基は、アルキルアミノ基およびアリールアミノ基を含み、炭素数0〜16のアミノ基が好ましく、具体的には、アミノ、モノエチルアミノ、ジエチルアミノ、モノヘキシルアミノ、ジヘキシルアミノ、ジオクチルアミノ、モノドデシルアミノ、ジフェニルアミノ、ジキシリルアミノ、ジトリルアミノ、モノフェニルアミノ等が挙げられる。
アルキルチオ基としては、炭素数1〜14のアルキルチオ基が好ましく、具体的にはCHS−、CHCHS−、n−CS−、i−CS−、n−CS−、t−CS−、s−CS−、n−C11S−、CHCHC(CHS−、n−C13S−、cyclo−C11S−、CH(CHCHCHS−、C13S−、C17S−、C19S−、C1021S−、2−エチルヘキシルチオ等が挙げられる。
ポリアルキレンオキシ基としては、炭素数3〜20のポリアルキレンオキシ基が好ましく、具体的には、ポリエチレンオキシ、ポリプロピレンオキシが挙げられる。
アシルオキシ基としては、炭素数1〜14のアシルオキシ基が好ましく、具体的には、例えば、アセチルオキシ、エチルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、オクチルカルボニルオキシ、ドデシルカルボニルオキシ、フェニルカルボニルオキシ等が挙げられる。
アルキルオキシカルボニル基としては、炭素数1〜14のアルキルオキシカルボニル基が好ましく、具体的にはメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロピルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−ヘキシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル等が挙げられる。
これらの基は、さらに置換されていてもよい。
〜R13として好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、ポリアルキレンオキシ基、水素原子であり、より好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ポリアルキレンオキシ基であり、特に好ましくはアルキル基、アルコキシ基、ポリアルキレンオキシ基である。
Yは、炭素原子または窒素原子が好ましく、炭素原子がより好ましい。
上記構造式(1)〜(5)で表される繰り返し構造として、具体的には下記化合物A−18〜A−26が例示できるが、これらに限定されるものではない。
Figure 0005960178
上述した各共役高分子の分子量は特に限定されず、高分子量のものはもちろん、それ未満の分子量のオリゴマー(例えば重量平均分子量1000〜10000程度)であってもよい。
高い導電性を実現する観点から、共役高分子は、酸、光、熱に対して分解されにくいものが好ましい。高い導電性を得るためには、共役高分子の長い共役鎖を介した分子内のキャリア伝達、および分子間のキャリアホッピングを生じるのが好ましい。そのためには、共役高分子の分子量がある程度大きいことが好ましく、この観点から、本発明で用いる共役高分子の分子量は、重量平均分子量で5000以上が好ましく、7000〜300,000がより好ましく、8000〜100,000がさらに好ましい。該重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定できる。
これらの共役高分子は、上記モノマーを通常の酸化重合法に準じた方法より重合させて製造できる。
また、市販品を用いることもでき、例えば、アルドリッチ社製のポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5ージイル) レジオレギュラー品が挙げられる。
本発明で用いる共役高分子としては、上述の各共役高分子の他に、下記一般式(1A)または(1B)で表されるフルオレン構造を繰り返し構造として少なくとも含む共役高分子も挙げられる。
Figure 0005960178
式中、R1AおよびR2Aは各々独立に置換基を表す。R3AおよびR4Aは各々独立に、芳香族炭化水素環基、芳香族ヘテロ環基、アルキル基またはアルコキシ基を表す。ここで、R3AとR4Aが互いに結合して環を形成してもよい。n11およびn12bは各々独立に0〜3の整数を表し、n12は0〜2の整数を表す。Lは、単結合、−N(Ra1)−、または、2価の芳香族炭化水素環基、2価の芳香族ヘテロ環基および−N(Ra1)−からなる群より選択される基を組み合わせた連結基を表す。Lは、単結合、2価の芳香族炭化水素環基、2価の芳香族ヘテロ環基、−N(Ra1)−、またはこれらの基を組み合わせた連結基を表す。ここで、Ra1は置換基を表す。Xは、3価の芳香族炭化水素環基、3価の芳香族ヘテロ環基または>N−を表す。*は結合位置を表す。
1A、R2Aにおける置換基としては、下記置換基W1が挙げられる。
(置換基W1)
置換基W1としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基(芳香族炭化水素環基ともいう)、ジアリールボリル基、ジヒドロボリル基、ジアルコキシボリル基、ヘテロ環基(ヘテロアリール基(芳香族ヘテロ環基ともいう)を含み、環構成原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子、ホウ素原子が好ましい)、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルもしくはアリールのスルホニル基、アルキルもしくはアリールのスフィニル基、アミノ基(アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含む)、アシルアミノ基、アルキルもしくはアリールのスルホンアミド基、アルキルもしくはアリールのカルバモイル基、アルキルもしくはアリールのスルファモイル基、アルキルもしくはアリールのスルホンアミド基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、ウレイド基、ウレタン基、イミド基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
これらのうち、芳香族炭化水素環基、ヘテロ環基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、ヒドロキシ基が好ましく、芳香族炭化水素環基、ヘテロ環基、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基がより好ましく、芳香族炭化水素環基、芳香族ヘテロ環基、アルキル基、アルコキシ基がさらに好ましく、アルキル基が特に好ましい。
1A、R2Aがアルキチオ基の場合、炭素数は1〜24が好ましく、1〜20がより好ましく、6〜16がさらに好ましい。アルキルチオ基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、上記置換基W1が挙げられる。
アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、t−ブチルチオ、n−ヘキシルチオ、n−オクチルオチオ、2−エチルヘキシルチオ、n−オクタデシルチオが挙げられる。
1A、R2Aがアミノ基の場合、該アミノ基は、炭素数は0〜24が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜16がさらに好ましい。アミノ基としては、例えば、アミノ、メチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、フェニルアミノ、N−メチル−N−フェニルアミノが挙げられ、アルキルアミノ基、アリールアミノ基が好ましい。
アルキル、アリールもしくはヘテロ環アミノ基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、上記置換基W1が挙げられる。
1A、R2Aが芳香族炭化水素環基、芳香族ヘテロ環基、アルキル基、アルコキシ基の場合、後述のR3A、R4Aにおける芳香族炭化水素環基、芳香族ヘテロ環基、アルキル基、アルコキシ基が挙げられる。
なお、アルキル基、アルコキシ基の好ましい炭素数は、いずれも1〜18であり、1〜12がより好ましく、1〜8がさらに好ましい。
芳香族炭化水素環基、芳香族ヘテロ環基の好ましい範囲は、R3A、R4Aと同じである。
n11、n12は0または1が好ましい。
3A、R4Aにおける芳香族炭化水素環基の芳香族炭化水素環は、炭素数は6〜24が好ましく、6〜20がより好ましく、6〜18がさらに好ましい。芳香族炭化水素環はベンゼン環、ナフタレン環が挙げられ、該環は芳香族炭化水素環、脂肪族炭化水素環、ヘテロ環などの環で縮環していてもよい。また、芳香族炭化水素環基は置換基を有してもよく、該置換基としては上記置換基W1が挙げられる。該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、ヒドロキシ基が好ましく、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基がより好ましく、アルキル基、アルコキシ基がさらに好ましい。
3A、R4Aにおける芳香族ヘテロ環基の芳香族ヘテロ環は、炭素数は2〜24が好ましく、3〜20がより好ましく、3〜18がさらに好ましい。芳香族ヘテロ環は、環構成ヘテロ原子が、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましく、5または6員環が好ましい。該環は芳香族炭化水素環、脂肪族炭化水素環、ヘテロ環などの環で縮環していてもよい。また、芳香族炭化水素環基は置換基を有してもよく、該置換基としては上記置換基W1が挙げられる。該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基が好ましく、アルキル基、アルコキシ基がより好ましく、アルキル基がさらに好ましい。
芳香族ヘテロ環としては、ピロール環、チオフェン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、インドール環、イソインドール環、キノリン環、イソキノリン環、キナゾリン環、フタラジン環、プテリジン環、クマリン環、クロモン環、1,4−ゼンゾジアゼピン環、ベンズイミダゾール環、ベンゾフラン環、プリン環、アクリジン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フラン環、セレノフェン環、テルロフェン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ピリドン−2−オン環、セレノピラン環、テルロピラン環等が挙げられ、チオフェン環、ピロール環、フラン環、イミダゾール環、ピリジン環、キノリン環、インドール環が好ましい。
3A、R4Aにおけるアルキル基は、炭素数は1〜24が好ましく、1〜20がより好ましく、6〜16がさらに好ましい。アルキル基は直鎖状、分岐状または環状でも、さらに置換基を有していてもよく、該置換基としては、上記置換基W1が挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−オクタデシルが挙げられる。
3A、R4Aにおけるアルコキシ基は、炭素数は1〜24が好ましく、1〜20がより好ましく、6〜16がさらに好ましい。アルコキシ基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、上記置換基W1が挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−ヘキシルオキシ、n−オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、n−オクタデシルオキシが挙げられる。
3AおよびR4Aの少なくとも一方は、芳香族炭化水素環基または芳香族ヘテロ環基が好ましい。
3AおよびR4Aは、互いに結合して環を形成してもよく、該環としては、3〜7員環が好ましく、飽和炭化水素環、不飽和炭化水素環、芳香族炭化水素環、ヘテロ環(芳香族ヘテロ環を含む)であっても、形成された環が単環であっても、縮環されて多環であっても構わない。また形成された環が置換基を有していてもよく、該置換基としては置換基W1が挙げられる。
本発明では、これらの形成された環は、フルオレン環が好ましく、9位でスピロ構造、すなわち、下記構造のものが好ましい。
Figure 0005960178
ここで、R1A、R2A、n11およびn12は上記一般式(1A)または(1B)におけるR1A、R2A、n11およびn12と同義であり、好ましい範囲も同じである。
1A’、R2A’およびn12’は、R1A、R2A、n12と同義であり、好ましい範囲も同じである。n11’は0〜4の整数を表す。
Rxは、一般式(1A)の場合(すなわち、フルオレン環の2個のベンゼン環でポリマー主鎖に組み込まれる場合)は、結合手を表し、一般式(1B)の場合(すなわち、1個のベンゼン環がポリマー主鎖に結合する場合)は、水素原子または置換基を表す。Rxにおける置換基としては上記置換基W1が挙げられ、なかでも、芳香族炭化水素環基、芳香族ヘテロ環基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、ヒドロキシ基が好ましく、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基がより好ましく、アルキル基がさらに好ましい。
Rx’は、水素原子または置換基を表す。Rx’における置換基としては上記置換基W1が挙げられ、なかでも、芳香族炭化水素環基、芳香族ヘテロ環基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、ヒドロキシ基が好ましく、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基がより好ましく、アルコキシ基がさらに好ましい。
*は結合位置を表す。
およびLにおける2価の芳香族炭化水素環基の芳香族炭化水素環は、炭素数は6〜24が好ましく、6〜20がより好ましく、6〜18がさらに好ましい。芳香族炭化水素環はベンゼン環、ナフタレン環が挙げられ、該環は芳香族炭化水素環、脂肪族炭化水素環、ヘテロ環などの環で縮環していてもよい。また、芳香族炭化水素環基は置換基を有してもよく、該置換基としては上記置換基W1が挙げられる。該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、ヒドロキシ基が好ましく、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基がより好ましく、アルキル基、アルコキシ基がさらに好ましい。
上記芳香族炭化水素環は、好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環である。
およびLにおける2価の芳香族ヘテロ環基の芳香族ヘテロ環は、炭素数は2〜24が好ましく、3〜20がより好ましく、3〜18がさらに好ましい。芳香族ヘテロ環は、環構成ヘテロ原子が、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましく、5または6員環が好ましい。該環は芳香族炭化水素環、脂肪族炭化水素環、ヘテロ環などの環で縮環していてもよい。また、芳香族炭化水素環基は置換基を有してもよく、該置換基としては上記置換基W1が挙げられる。該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基が好ましく、アルキル基、アルコキシ基がより好ましく、アルキル基がさらに好ましい。
上記芳香族ヘテロ環は、例えば、チアゾール環、ピロール環、フラン環、ピラゾール環、イミダゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、ベンゾチアゾール環、インドール環、ベンゾチアジアゾール環、キノキサリン環、フェノキサジン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチアゾール環、ジベンゾシラノシクロペンタジエン環、カルバゾール環、フェノチアジン環、チオフェン環、イソチアゾール環、インドール環、イソインドール環、キノリン環、イソキノリン環、キナゾリン環、フタラジン環、プテリジン環、クマリン環、クロモン環、1,4−ゼンゾジアゼピン環、ベンズイミダゾール環、ベンゾフラン環、プリン環、アクリジン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フラン環、セレノフェン環、テルロフェン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ピリドン−2−オン環、セレノピラン環、テルロピラン環等が挙げられる。
およびLにおける−N(Ra1)−のRa1は、置換基を表すが、該置換基としては上記置換基W1が挙げられる。
Ra1は、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基が好ましく、これらの各基はさらに置換基を有していてもよい。該基に置換してもよい置換基は、上記置換基W1が挙げられる。
Ra1におけるアルキル基は、炭素数は1〜18が好ましい。Ra1におけるアリール基は、炭素数は6〜24が好ましく、6〜20がより好ましく、6〜12がさらに好ましい。
Ra1におけるヘテロ環基は、芳香族ヘテロ環基が好ましく、R3A、R4Aにおける芳香族ヘテロ環基が好ましい。
およびLにおける、2価の芳香族炭化水素環基、2価の芳香族ヘテロ環基または−N(Ra)−を組み合わせた連結基は、これらを2個以上組み合わせた基であれば、どのように組み合わされてもよい。
例えば、−2価の芳香族炭化水素環基−2価の芳香族炭化水素環基−、−2価の芳香族ヘテロ環基−2価の芳香族ヘテロ環基−、−2価の芳香族炭化水素環基−2価の芳香族ヘテロ環基−、−2価の芳香族炭化水素環基−N(Ra1)−、−2価の芳香族炭化水素環基−N(Ra1)−2価の芳香族炭化水素環基−、−2価の芳香族ヘテロ環基−N(Ra1)−2価の芳香族炭化水素環基−、−2価の芳香族ヘテロ環基−2価の芳香族ヘテロ環基−2価の芳香族ヘテロ環基−、−2価の芳香族炭化水素環基−N(Ra1)−2価の芳香族炭化水素環基−N(Ra1)−2価の芳香族炭化水素環基−、−2価の芳香族炭化水素環基−N(Ra1)−2価の芳香族炭化水素環基−2価の芳香族炭化水素環基−N(Ra1)−2価の芳香族炭化水素環基−、が挙げられる。
は、2価の芳香族炭化水素環基、2価の芳香族ヘテロ環基、および上記−N(Ra1)−からなる群より選択される基が2個以上組み合わさった連結基が好ましい。
は、2価の芳香族炭化水素環基、2価の芳香族ヘテロ環基または−N(Ra1)−もしくはこれらの基を組み合わせた連結基が好ましい。
は、好ましくは下記式(a)または(b)で表される連結基である。
Figure 0005960178
式中、Xa0は単結合、2価の芳香族炭化水素環基または2価の芳香族ヘテロ環基を表し、Xa1およびXa2は各々独立に2価の芳香族炭化水素環基または2価の芳香族ヘテロ環基を表す。Ra0は置換基を表し、na0は0〜5の整数を表す。
a0、Xa1、Xa2における2価の芳香族炭化水素環基、2価の芳香族ヘテロ環基は、Lにおける、2価の芳香族炭化水素環基、2価の芳香族ヘテロ環基と同義であり、好ましい範囲も同じである。
a0における上記置換基は置換基W1が挙げられ、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子であり、アルコキシカルボニル基が特に好ましい。
a0は0または1が好ましい。
における3価の芳香族炭化水素環基における芳香族炭化水素環は、LおよびLにおける芳香族炭化水素環が挙げられ、好ましい範囲も同じである。
なかでも、ベンゼン環が好ましく、1,3−フェニレン基でポリマー主鎖を構成しているフェニレン基の5位に、フルオレン環のベンゼン環が結合するものが好ましい。
における3価の芳香族ヘテロ環基における芳香族ヘテロ環は、LおよびLにおける芳香族ヘテロ環が挙げられ、好ましい範囲も同じである。
なかでも、フェノキサジン環の10位、フェノチアジン環の10位、カルバゾール環の9位、ピロールの1位に、フルオレン環のベンゼン環が結合するものが好ましい。
は、Xの原子が、芳香族炭化水素環を形成する炭素原子または芳香族ヘテロ環を形成する炭素原子もしくは窒素原子であるか、またはXが>N−であるものが好ましく、>N−が特に好ましい。
一般式(1A)または(1B)で表されるフルオレン構造を繰り返し構造として少なくとも含む共役高分子の重量平均分子量(ポリスチレン換算GPC測定値)は、特に限定されるものではないが、4000〜100000が好ましく、6000〜80000がより好ましく、8000〜50000が特に好ましい。
一般式(1A)または(1B)で表されるフルオレン構造を繰り返し構造として少なくとも含む共役高分子の末端基は、例えば、上記一般式(1A)または(1B)で表される繰り返し構造の括弧の外に位置し、繰り返し構造に結合した置換基である。該末端基となる置換基は、高分子の合成方法により変わるが、合成原料由来のハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原子)、含ホウ素置換基、さらに重合反応の副反応等による水素原子、触媒配位子に由来する含リン置換基となりうる。重合後、還元反応、置換反応によって、末端基を水素原子またはアリール基とすることも好ましい。
一般式(1A)または(1B)で表されるフルオレン構造の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記具体例において、*は結合位置を表す。
以下に示す、Meはメチル基、Prはプロピル基を表す。
Figure 0005960178
Figure 0005960178
一般式(1A)または(1B)で表されるフルオレン構造を繰り返し構造として少なくとも含む共役高分子は、例えば、Chem. Rev.,2011年,111巻,pp.1417等に記載の公知の方法に準じた方法により、または、通常のカップリング重合法に準じた方法により、上記フルオレン構造を有する化合物を重合させて、製造できる。
本発明で用いる共役高分子としては、上述の各共役高分子の他に、下記一般式(1)で表される構造を繰り返し構造として少なくとも含む共役高分子も挙げられる。
Figure 0005960178
一般式(1)中、Ar11およびAr12は各々独立にアリーレン基またはヘテロアリーレン基を表す。Ar13はアリーレン基またはヘテロアリーレン基を表す。R1B、R2BおよびR3Bは各々独立に置換基を表す。ここで、R1BとR2B、R1BとR3B、R2BとR3Bが互いに結合して環を形成してもよい。Lは単結合または下記式(l−1)〜(l−5)のいずれかで表される連結基を表す。n1B、n2Bおよびn3Bは各々独立に0〜4の整数を表し、nは5以上の整数を表す。
Figure 0005960178
式中、Ar14およびAr16は各々独立にアリーレン基またはヘテロアリーレン基を表し、Ar15はアリール基またはヘテロアリール基を表す。R4B〜R6Bは各々独立に置換基を表す。ここで、R4BとR2B、R5BとR2B、R6BとR2B、R5BとR6Bが互いに結合して環を形成してもよい。n4B〜n6Bは各々独立に0〜4の整数を表す。Xはアリーレンカルボニルアリーレン基またはアリーレンスルホニルアリーレン基を表し、Xはアリーレン基、ヘテロアリーレン基もしくはこれらを組み合わせた連結基を表す。
Ar11およびAr12は各々独立にアリーレン基またはヘテロアリーレン基を表し、Ar13はアリール基またはヘテロアリール基を表すが、これらの基の芳香族炭化水素環(芳香環)、芳香族ヘテロ環は好ましくは、以下の環である。
芳香環の炭素数は、6〜50が好ましく、6〜40がより好ましく、6〜20がさらに好ましい。芳香環は例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、インダセン環、フルオレン環が挙げられ、該環は単環でも他の環で縮環していてもよい。縮環してもよい環としては、芳香環、脂環、芳香族ヘテロ環、非芳香族のヘテロ環が挙げられる。
芳香族ヘテロ環の炭素数は、2〜50が好ましく、2〜40がより好ましく、2〜20がさらに好ましく、3〜20が特に好ましい。芳香族ヘテロ環における環構成ヘテロ原子は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子が好ましい。芳香族ヘテロ環は他の環で縮環していてもよい。縮環してもよい環としては、芳香環、脂環、芳香族ヘテロ環、非芳香族のヘテロ環が挙げられる。芳香族ヘテロ環としては、例えば、チオフェン環、フラン環、ピロール環、イミダゾール環、ピリジン環、オキサゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、およびこれらのベンゾ縮環体(例えば、ベンゾチオフェン)またはジベンゾ縮環体(例えば、ジベンゾチオフェン、カルバゾール)が挙げられる。
1B、R2BおよびR3Bは置換基を表すが、該置換基W2としては、ジアリールボリル基、および、ジヒドロボリル基、ジアルコキシボリル基を除く上述の置換基W1が挙げられる。
1B、R2BおよびR3Bはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、アシル基、アシルアミノ基、アルキルもしくはアリールのスルホンアミド基、アルコキシカルボニル基、アルキルもしくはアリールのカルバモイル基、アルキルもしくはアリールのスルファモイル基が好ましい。
ここで、アリール基における芳香環は、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環が好ましく、ヘテロ環基におけるヘテロ環は、カルバゾール環、ジベンゾチオフェン環、9−シラフルオレン環が好ましい。
Lは単結合または上記式(l−1)〜(l−5)のいずれかで表される連結基を表すが、好ましくは、上記式(l−1)〜(l−4)のいずれかで表される連結基である。
Ar14およびAr16は、Ar11、Ar12と同義であり、好ましい範囲も同じである。Ar15はAr13と同義であり、好ましい範囲も同じである。R4B〜R6BはR1B〜R3Bと同義であり、好ましい範囲も同じである。
はアリーレンカルボニルアリーレン基またはアリーレンスルホニルアリーレン基を表し、−Ar−C(=O)−Ar−、−Ar−SO−Ar−として表される。ここでAr、Arは各々独立にアリーレン基を表し、該アリーレン基は置換基を有してもよい。該置換基としては置換基W2が挙げられる。アリーレン基における芳香環は上記Ar11における芳香環が挙げられる。Ar、Arはフェニレン基が好ましく、1,4−フェニレン基がより好ましい。
はアリーレン基、ヘテロアリーレン基もしくはこれらを組み合わせた連結基を表すが、これらの基の環は、上記Ar11で挙げた環が挙げられ、好ましい範囲もAr11と同じである。
1BとR2B、R1BとR3B、R2BとR3B、R4BとR2B、R5BとR2B、R6BとR2B、R5BとR6Bは互いに結合して環を形成してもよい。これらにより形成される環としては、芳香環でも芳香族ヘテロ環でもよく、例えば、ナフタレン環、フルオレン環、カルバゾール環、ジベンゾチオフェン環、9−シラフルオレン環が挙げられる。
ここで、R1BとR3B、R2BとR4BもしくはR5Bが互いに結合して環を形成するものが好ましく、形成された環はカルバゾール環が好ましい。
形成されたカルバゾール環の基は、なかでも下記の基が好ましい。
Figure 0005960178
ここで、Raは、R2B〜R3Bと同義であり好ましい範囲も同じである。naは、n1B〜n3Bと同義であり、好ましい範囲も同じである。
naは0または1が好ましく、1がより好ましく、Raはアルキル基が好ましい。
n1B、n2B、n3Bは0〜4の整数であり、0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。n1B、n2B、n3Bは同一であっても異なってもよく、異なることが好ましい。
ここで、Ar11、Xは、基本骨格が下記の基の場合が特に好ましい。なお、これらの環は、置換基を有してもよい。
Figure 0005960178
ここで、Zは−C(Rb)−、−Si(Rb)−を表し、Rbはアルキル基を表す。
上記一般式(1)で表される繰り返し構造のうち、下記一般式(2)〜(6)のいずれかで表される構造が好ましい。
Figure 0005960178
一般式(2)〜(6)中、Ar11〜Ar16、R1B〜R6B、n1B〜n6B、XおよびXは、上記一般式(1)におけるAr11〜Ar16、R1B〜R6B、n1B〜n6B、XおよびXと同義である。
上記一般式(2)〜(6)で表される繰り返し構造のうち、上記一般式(3)、(4)または(5)で表される構造が好ましく、上記一般式(4)で表される構造がなかでも好ましい。
は5以上の整数であり、その好ましい範囲は繰り返し構造の分子量によって変わるが、該繰り返し構造を有する共役高分子が重量平均分子量(ポリスチレン換算GPC測定値)で5000〜100000が好ましく、8000〜50000がより好ましく、10000〜20000が特に好ましい。
共役高分子の末端基は、一般式(1)〜(6)で表される繰り返し構造の括弧の外に位置し、繰り返し構造に結合した置換基である。該末端基となる置換基は上記の通りである。
一般式(1)で表される共役高分子を構成する繰り返し構造の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記具体例において、*は結合位置を表す。
以下に示す、Etはエチル基、Bu(n)はn−ブチル基、Phはフェニル基(−C)を表す。
Figure 0005960178
Figure 0005960178
Figure 0005960178
Figure 0005960178
Figure 0005960178
Figure 0005960178
上述の一般式(1)で表される構造を繰り返し構造とする共役高分子は、一般式(1)で表される構造の一部または全部を有する1種または複数種の原料化合物を、通常の酸化重合法またはカップリング重合法に準じた方法により、重合させて製造できる。
原料化合物の合成は通常の方法にしたがって行うことができる。本発明の原料のうち入手できないものはアリール化合物のアミネーションによって合成することができ、古典的にはウルマン反応およびその周辺の反応技術によって合成できる。近年ではパラジウム錯体触媒を用いたアリールアミネーションが非常に発達しており、ブッフバルト・ハートウィッグ反応およびその周辺の反応技術によって合成できる。ブッフバルト・ハートウィッグ反応の代表例は、Organic Synthesis, 78巻, 23頁、Journal of American Chemical Society, 1994年, 116巻, 7901頁を挙げることができる。
本発明に用いる熱電変換層用分散物には上記共役高分子を1種単独でまたは2種以上を併用することができる。
<非共役高分子>
本発明の熱電変換層用分散物の製造方法において、非共役高分子を用いるのが、熱電変換層用分散物の成膜性をさらに向上できる点で、好ましい。すなわち、熱電変換層用分散物は好適には非共役高分子を含有している。
非共役高分子は、共役する分子構造を有しない高分子化合物、すなわち、ポリマー主鎖がπ電子または孤立電子対で共役しない高分子であれば特に限定されない。このような非共役高分子は、必ずしも高分子量化合物である必要はなく、オリゴマー化合物をも含む。
このような非共役高分子としては、特に限定されず、通常知られている非共役高分子を用いることができる。好ましくは、ビニル化合物を重合してなるポリビニル高分子、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、フッ素化合物に由来する構成成分を繰り返し構造として含むフッ素高分子、および、ポリシロキサンからなる群より選ばれる高分子を用いる。
本発明において、「(メタ)アクリレート」はアクリレートおよびメタクリレートの双方またはいずれかを表すものであり、これらの混合物をも包含するものである。
ポリビニル高分子を形成するビニル化合物として、具体的には、スチレン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、ビニルピリジン、ビニルナフタレン、ビニルフェノール、酢酸ビニル、スチレンスルホン酸、ビニルトリフェニルアミン等のビニルアリールアミン、ビニルトリブチルアミン等のビニルトリアルキルアミン等が挙げられる。
ポリ(メタ)アクリレートを形成する(メタ)アクリレート化合物として、具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート等の無置換アクリル酸アルキル基含有疎水性アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、1−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、1−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、1−ヒドロキシブチルアクリレート等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等のアクリレートモノマー、これらのモノマーのアクリロイル基をメタクリロイル基に換えたメタクリレートモノマー等が挙げられる。
ポリカーボネートの具体例として、ビスフェノールAとホスゲンからなる汎用ポリカーボネート、ユピゼータ(商品名、三菱ガス化学社製)、パンライト(商品名、帝人化成社製)等が挙げられる。
ポリエステルを形成する化合物として、ポリアルコールおよびポリカルボン酸、乳酸等のヒドロキシ酸が挙げられる。ポリエステルの具体例として、バイロン(商品名、東洋紡績社製)等が挙げられる。
ポリアミドの具体例として、PA−100(商品名、T&K TOKA社製)等が挙げられる。
ポリイミドの具体例として、ソルピー6,6−PI(商品名、ソルピー工業社製)等が挙げられる。
フッ素化合物として、具体的には、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル等が挙げられる。
ポリシロキサンとして、具体的には、ポリジフェニルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサン等が挙げられる。
非共役高分子は、可能であれば、単独重合体でも、上述の各化合物等との共重合体であってもよい。
本発明では、非共役高分子として、ビニル化合物を重合してなるポリビニル高分子を用いることがより好ましい。
非共役高分子は、疎水性であることが好ましく、スルホン酸や水酸基等の親水性基を分子内に有しないことがより好ましい。また、溶解度パラメータ(SP値)が11以下の非共役高分子が好ましい。本発明において、溶解度パラメータはヒルデブランドのSP値を示し、Fedorsの推算法による値を採用する。
熱電変換層用分散物の調製に、共役高分子と共に非共役高分子を用いると、熱電変素子の熱電変換性能を向上させることができる。そのメカニズムについては、まだ定かではないが、(1)非共役高分子は最高被占軌道(HOMO;Highest Occupied Molecular Orbital)準位と最低空軌道(LUMO;Lowest Unoccupied Molecular Orbital)準位の間のギャップ(バンドギャップ)が広いため、共役高分子中のキャリア濃度を適度に低く保てる点で、非共役高分子を含まない系よりもゼーベック係数を高いレベルで保持でき、(2)一方で、共役高分子とナノ導電性材料との共存によりキャリアの輸送経路が形成され、高い導電率を保持できるため、と推定される。すなわち、材料中に、ナノ導電性材料、非共役高分子および共役高分子の3成分を共存させることで、ゼーベック係数と導電率の双方を向上させることが可能となり、結果として熱電変換性能(ZT値)が大きく向上する。
熱電変換層用分散物には上記非共役高分子を1種単独でまたは2種以上を併用することができる。
<分散媒>
本発明の熱電変換層用分散物の製造方法において、分散媒を用いる。すなわち、熱電変換層用分散物は分散媒を含有し、この分散媒にナノ導電性材料が分散されている。
分散媒は、ナノ導電性材料を分散できればよく、水、有機溶媒およびこれらの混合溶媒を用いることができる。好ましくは有機溶媒であり、1−メトキシ−2−プロパノール(PGME)等のアルコール、クロロホルム等の脂肪族ハロゲン溶媒、DMF、NMP、DMSO等の非プロトン性の極性溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、テトラメチルベンゼン、ピリジン等の芳香族溶媒、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケントン等のケトン溶媒、ジエチルエーテル、THF、t−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライム、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセタート(PGMEA)等のエーテル溶媒等が好ましく、クロロホルム等の脂肪族ハロゲン溶媒、DMF、NMP等の非プロトン性の極性溶媒、ジクロロベンゼン、キシレン、テトラリン、メシチレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族溶媒、THF等のエーテル溶媒等がより好ましい。また、後述するインクジェット印刷法に用いる有機溶媒も好ましい。
熱電変換層用分散物には分散媒を1種単独でまたは2種以上を併用することができる。
また、分散媒は、あらかじめ脱気しておくことが好ましい。分散媒中における溶存酸素濃度を、10ppm以下とすることが好ましい。脱気の方法としては、減圧下超音波を照射する方法、アルゴン等の不活性ガスをバブリングする方法等が挙げられる。
さらに、分散媒は、あらかじめ脱水しておくことが好ましい。分散媒中における水分量を、1000ppm以下とすることが好ましく、100ppm以下とすることがより好ましい。分散媒の脱水方法としては、モレキュラーシーブを用いる方法、蒸留等、公知の方法を用いることができる。
<ドーパント>
本発明の熱電変換層用分散物の製造方法において、ドーパントを用いることも好ましい。
A.上述の共役高分子を用いる場合
本発明の熱電変換層用分散物の製造方法において、上述の共役高分子を用いる場合は、さらにドーパントを用いるのが、キャリア濃度の増加によって熱電変換層の導電性をさらに向上させることができる点で、好ましい。すなわち、本発明の分散物は、好ましくは共役高分子とドーパントとを含有している。
ドーパントは、上述の共役高分子にドープされる化合物で、この共役高分子をプロトン化するまたは共役高分子のπ共役系から電子を取り除くことで、該共役高分子を正の電荷でドーピング(p型ドーピング)することができるものが挙げられる。具体的には、下記のオニウム塩化合物、酸化剤、酸性化合物、電子受容体化合物等を用いることができる。
1.オニウム塩化合物
ドーパントとして用いるオニウム塩化合物は、活性エネルギー線(放射線や電磁波等)の照射、熱の付与等のエネルギー付与によって酸を発生する化合物(酸発生剤、酸前駆体)であることが好ましい。このようなオニウム塩化合物として、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩、カルボニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられる。なかでも、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩、カルボニウム塩が好ましく、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、カルボニウム塩がより好ましく、スルホニウム塩、ヨードニウム塩が特に好ましい。該塩を構成するアニオン部分としては、強酸の対アニオンが挙げられる。
具体的には、スルホニウム塩としては下記一般式(I)または(II)で表される化合物が、ヨードニウム塩としては下記一般式(III)で表される化合物が、アンモニウム塩としては下記一般式(IV)で表される化合物が、カルボニウム塩としては下記一般式(V)で表される化合物がそれぞれ挙げられ、本発明において好ましく用いられる。
Figure 0005960178
上記一般式(I)〜(V)中、R21〜R23、R25〜R26およびR31〜R33は、それぞれ独立にアルキル基、アラルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基を表す。R27〜R30は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基を表す。R24は、アルキレン基、アリーレン基を示す。R21〜R33の置換基は、さらに置換基で置換されていてもよい。Xは、強酸のアニオンを表す。
一般式(I)においてR21〜R23のいずれか2つの基、一般式(II)においてR21およびR23、一般式(III)においてR25およびR26、一般式(IV)においてR27〜R30のいずれか2つの基、および、一般式(V)においてR31〜R33のいずれか2つの基が、各一般式中において互いに結合して脂肪族炭化水素環、芳香環、ヘテロ環を形成してもよい。
21〜R23、R25〜R33において、アルキル基には直鎖、分岐、環状のアルキル基が含まれ、直鎖または分岐のアルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル等が挙げられる。
環状アルキル基としては、炭素数3〜20のアルキル基が好ましく、具体的には、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ビシクロオクチル、ノルボルニル、アダマンチル等が挙げられる。
アラルキル基としては、炭素数7〜15のアラルキル基が好ましく、具体的には、ベンジル、フェネチル等が挙げられる。
アリール基としては、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、具体的には、フェニル、ナフチル、アントラニル、フェナンシル、ピレニル等が挙げられる。
芳香族へテロ環基としては、ピリジン環基、ピラゾール環基、イミダゾール環基、ベンゾイミダゾール環基、インドール環基、キノリン環基、イソキノリン環基、プリン環基、ピリミジン環基、オキサゾール環基、チアゾール環基、チアジン環基等が挙げられる。
27〜R30において、アルコキシ基としては、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコキシ基が好ましく、具体的には、メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシ等が挙げられる。
アリールオキシ基としては、炭素数6〜20のアリールオキシ基が好ましく、具体的には、フェノキシ、ナフチルオキシ等が挙げられる。
24において、アルキレン基には直鎖、分岐、環状のアルキレン基が含まれ、炭素数2〜20のアルキレン基が好ましい。直鎖または分岐のアルキレン基としては、具体的には、エチレン、プロピレン、ブチレン、へキシレン等が挙げられる。環状のアルキレン基としては、炭素数3〜20の環状のアルキレン基が好ましく、具体的には、シクロペンチレン、シクロへキシレン、ビシクロオクチレン、ノルボニレン、アダマンチレン等が挙げられる。
アリーレン基としては、炭素数6〜20のアリーレン基が好ましく、具体的には、フェニレン、ナフチレン、アントラニレン等が挙げられる。
21〜R33の置換基が更に置換基を有する場合、置換基として好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子)、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数2〜6のアルケニル基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルアルキル基、アリールカルボニル基、アリールカルボニルアルキル基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、トリフルオロメチル基、−S−R41等が挙げられる。なお、R41の置換基は上述のR21と同義である。
としては、アリールスルホン酸のアニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸のアニオン、過ハロゲン化ルイス酸のアニオン、パーフルオロアルキルスルホンイミドのアニオン、過ハロゲン酸アニオン、または、アルキルもしくはアリールボレートアニオンが好ましい。これらは、さらに置換基を有してもよく、置換基としてはフッ素原子が挙げられる。
アリールスルホン酸のアニオンとして具体的には、p−CHSO 、CSO 、ナフタレンスルホン酸のアニオン、ナフトキノンスルホン酸のアニオン、ナフタレンジスルホン酸のアニオン、アントラキノンスルホン酸のアニオンが挙げられる。
パーフルオロアルキルスルホン酸のアニオンとして具体的には、CFSO 、CSO 、C17SO が挙げられる。
過ハロゲン化ルイス酸のアニオンとして具体的には、PF 、SbF 、BF 、AsF 、FeCl が挙げられる。
パーフルオロアルキルスルホンイミドのアニオンとして具体的には、CFSO−N−SOCF、CSO−N−SOが挙げられる。
過ハロゲン酸アニオンとして具体的には、ClO 、BrO 、IO が挙げられる。
アルキルもしくはアリールボレートアニオンとして具体的には、(C、(C、(p−CH、(CF)が挙げられる。
オニウム塩の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 0005960178
Figure 0005960178
Figure 0005960178
Figure 0005960178
Figure 0005960178
Figure 0005960178
なお、上記具体例中のXは、PF 、SbF 、CFSO 、p−CHSO 、BF 、(C、RfSO 、(C、または下記式で表されるアニオンを表し、Rfはパーフルオロアルキル基を表す。
Figure 0005960178
Figure 0005960178
本発明においては、特に下記一般式(VI)または(VII)で表されるオニウム塩化合物が好ましい。
Figure 0005960178
一般式(VI)中、Yは炭素原子または硫黄原子を表し、Arはアリール基を表し、Ar〜Arは、それぞれ独立にアリール基、芳香族へテロ環基を表す。Ar〜Arは、さらに置換基で置換されていてもよい。
Arとしては、好ましくはフルオロ置換アリール基または少なくとも1つのパーフルオロアルキル基で置換されたアリール基であり、より好ましくはペンタフルオロフェニル基、または少なくとも1つのパーフルオロアルキル基で置換されたフェニル基であり、特に好ましくはペンタフルオロフェニル基である。
Ar〜Arのアリール基、芳香族へテロ環基は、上述のR21〜R23、R25〜R33のアリール基、芳香族へテロ環基と同義であり、好ましくはアリール基であり、より好ましくはフェニル基である。これらの基は、さらに置換基で置換されていてもよく、置換基としては上述のR21〜R33の置換基が挙げられる。
Figure 0005960178
一般式(VII)中、Arはアリール基を表し、ArおよびArは、それぞれ独立にアリール基、芳香族へテロ環基を表す。Ar、ArおよびArは、さらに置換基で置換されていてもよい。
Arは、上記一般式(VI)のArと同義であり、好ましい範囲も同様である。
ArおよびArは、上記一般式(VI)のAr〜Arと同義であり、好ましい範囲も同様である。
上記オニウム塩化合物は、通常の合成方法により合成することができる。また、市販の試薬等を用いることもできる。
オニウム塩化合物の合成方法の一実施態様として、トリフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの合成方法を下記に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。他のオニウム塩に関しても、下記合成方法に準じた合成方法等により合成することができる。
トリフェニルスルホニウムブロミド(東京化成製)2.68g、リチウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート−エチルエーテルコンプレックス(東京化成製)5.00gおよびエタノール146mlを500ml三口フラスコに入れ、25℃(本願明細書では、25℃を室温ともいう)にて2時間撹拌した後、純水200mlを添加し、析出した白色固形物を濾過により分取する。この白色固体を純水およびエタノールにて洗浄および真空乾燥することにより、オニウム塩としてトリフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを6.18g得ることができる。
2.酸化剤、酸性化合物、電子受容体化合物
本発明でドーパントとして用いる酸化剤としては、ハロゲン(Cl、Br、I、ICl、ICl、IBr、IF)、ルイス酸(PF、AsF、SbF、BF、BCl、BBr、SO)、遷移金属化合物(FeCl、FeOCl、TiCl、ZrCl、HfCl、NbF、NbCl、TaCl、MoF、MoCl、WF、WCl、UF、LnCl(Ln=La、Ce、Pr、Nd、Sm等のランタノイド)、その他、O、O、XeOF、(NO )(SbF )、(NO )(SbCl )、(NO )(BF )、FSOOOSOF、AgClO、HIrCl、La(NO・6HO等が挙げられる。
酸性化合物としては、下記に示すポリリン酸、ヒドロキシ化合物、カルボキシ化合物、またはスルホン酸化合物、プロトン酸(HF、HCl、HNO、HSO、HClO、FSOH、CISOH、CFSOH、各種有機酸、アミノ酸等)が挙げられる。
電子受容体化合物としては、TCNQ(テトラシアノキノジメタン)、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、ハロゲン化テトラシアノキノジメタン、1,1−ジシアノビニレン、1,1,2−トリシアノビニレン、ベンゾキノン、ペンタフルオロフェノール、ジシアノフルオレノン、シアノ−フルオロアルキルスルホニル−フルオレノン、ピリジン、ピラジン、トリアジン、テトラジン、ピリドピラジン、ベンゾチアジアゾール、ヘテロサイクリックチアジアゾール、ポルフィリン、フタロシアニン、ボロンキノレート化合物、ボロンジケトネート化合物、ボロンジイソインドメテン化合物、カルボラン化合物、その他ホウ素原子含有化合物、または、Chemistry Letters,1991,p.1707−1710に記載の電子受容性化合物等が挙げられる。
−ポリリン酸−
ポリリン酸には、二リン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸、メタリン酸及ポリリン酸、およびこれらの塩が含まれる。これらの混合物であってもよい。本発明ではポリリン酸は、二リン酸、ピロリン酸、三リン酸、ポリリン酸であることが好ましく、ポリリン酸であることがより好ましい。ポリリン酸は、HPOを充分なP10(無水リン酸)とともに加熱することにより、またはHPOを加熱して水を除去することにより、合成できる。
−ヒドロキシ化合物−
ヒドロキシ化合物は水酸基を少なくとも1つ有する化合物であればよく、フェノール性水酸基を有することが好ましい。ヒドロキシ化合物としては、下記一般式(VIII)で表される化合物が好ましい。
Figure 0005960178
一般式(VIII)中、Rはスルホ基、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基を表し、nは1〜6を示し、mは0〜5を示す。
Rとしては、スルホ基、アルキル基、アリール基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基が好ましく、スルホ基がより好ましい。
nは、1〜5が好ましく、1〜4がより好ましく、1〜3が更に好ましい。
mは、0〜5であり、0〜4が好ましく、0〜3が更に好ましい。
−カルボキシ化合物−
カルボキシ化合物としてはカルボキシ基を少なくとも1つ有する化合物であればよく、下記一般式(IX)または(X)で表される化合物が好ましい。
Figure 0005960178
一般式(IX)中、Aは二価の連結基を表す。該二価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基またはアルケニレン基と、酸素原子、硫黄原子または窒素原子との組み合わせが好ましく、アルキレン基またはアリーレン基と、酸素原子または硫黄原子との組み合わせがより好ましい。なお、二価の連結基がアルキレン基と硫黄原子との組み合わせの場合、該化合物はチオエーテル化合物にも該当する。このようなチオエーテル化合物の使用も好適である。
Aで表される二価の連結基がアルキレン基を含むとき、該アルキレン基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、アルキル基が好ましく、カルボキシ基を置換基として有することがより好ましい。
Figure 0005960178
一般式(X)中、Rはスルホ基、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基を表し、nは1〜6を示し、mは0〜5を示す。
Rとしては、スルホ基、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基が好ましく、スルホ基、アルコキシカルボニル基がより好ましい。
nは、1〜5が好ましく、1〜4がより好ましく、1〜3が更に好ましい。
mは、0〜5であり、0〜4が好ましく、0〜3が更に好ましい。
−スルホン酸化合物−
スルホン酸化合物は、スルホ基を少なくとも1つ有する化合物であり、スルホ基を2つ以上有する化合物が好ましい。スルホン酸化合物として好ましくは、アリール基、アルキル基に置換されたものであり、より好ましくは、アリール基に置換されたものである。
なお、上記で説明したヒドロキシ化合物およびカルボキシ化合物において、置換基としてスルホ基を有する化合物は、上述のように、ヒドロキシ化合物およびカルボキシ化合物に分類する。したがって、スルホン酸化合物は、スルホ基を有するヒドロキシ化合物およびカルボキシ化合物を包含しない。
本発明において、これらのドーパントを用いることは必須ではないが、ドーパントを使用すると導電率向上により熱電変換特性の更なる向上が期待でき、好ましい。ドーパントを使用する場合、1種類単独でまたは2種以上を併用することができる。
熱電変換層用分散物の分散性や成膜性向上の観点から、上記ドーパントの中でも、オニウム塩化合物を用いることが好ましい。オニウム塩化合物は、酸放出前の状態では中性で、光や熱等のエネルギー付与により分解して酸を発生し、この酸によりドーピング効果が発現する。そのため、熱電変換層用分散物を熱電変換層に所望の形状に成膜した後に、光照射等によりドーピングを行って、ドーピング効果を発現させることができる。さらに、酸放出前は中性であるため、上述の共役高分子を凝集・析出等させることなく、該共役高分子やナノ導電性材料等の各成分が熱電変換層用分散物中に均一に溶解または分散する。この熱電変換層用分散物の均一溶解性または分散性により、ドーピング後には優れた導電性を発揮でき、さらに、良好な塗布性や成膜性が得られるため、熱電変換層等の成膜にも優れる。
B.共役高分子を用いない場合
共役高分子を用いない場合においても、用いるナノ導電性物質、特にCNTの導電性向上やpn極性などの電気的性質を調整する上でドーパントを用いることができる。ドーパントの種類や量を適宜選択することで、ナノ導電性物質、特にCNTの導電性やpn極性を調整することができる。
p型ドーパントとしては、上述のオニウム塩化合物、酸化剤、酸性化合物、電子受容体化合物等を好適に用いることができる。
n型ドーパントとしては、公知のものを用いることができる。例えば、アンモニア、テトラメチルフェニレンジアミンなどのアミン化合物、ポリエチレンイミンなどのイミン化合物、カリウム等のアルカリ金属、トリフェニルホスフィン、トリオクチルホスフィンなどのホスフィン化合物、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウムなどの金属水素化物、ヒドラジンなど、還元性物質や電子供与体化合物等を用いることができる。具体的には、Scientific Reports 3,3344に記載されるような公知の化合物を用いることができる。
また、上記のドーパントを併用するほか、ナノチューブ合成時に炭素以外の微量元素をチューブに導入してドーピングを行い、CNTの電気的性質を調整してもよい。具体的には、米国特許出願11/488,387に記載されるような公知の方法を用いることができる。
<熱励起アシスト剤>
本発明の熱電変換層用分散物の製造方法において、上述の共役高分子を用いる場合は、さらに熱励起アシスト剤を用いるのが、熱電変換特性がさらに向上する点で、好ましい。すなわち、熱電変換層用分散物は、好ましくは共役高分子と熱励起アシスト剤とを含有している。
熱励起アシスト剤は、上述の共役高分子の分子軌道のエネルギー準位に対して特定のエネルギー準位差の分子軌道を持った物質であり、該共役高分子とともに用いることで、熱励起効率を高め、熱電変換層の熱起電力を向上させることができる。
本発明で用いる熱励起アシスト剤とは、上述の共役高分子のLUMOよりもエネルギー準位の低いLUMOを有する化合物であって、共役高分子にドープ準位を形成しない化合物をいう。前述のドーパントは共役高分子にドープ準位を形成する化合物であり、熱励起アシスト剤の有無にかかわらずドープ準位を形成するものである。
共役高分子にドープ準位が形成されるか否かは吸収スペクトルの測定により評価でき、ドープ準位を形成する化合物およびドープ準位を形成しない化合物とは、下記の方法によって評価されたものをいう。
−ドープ準位形成の有無の評価法−
ドーピング前の共役高分子Aと別成分Bとを質量比1:1で混合し、薄膜化したサンプルの吸収スペクトルを観測する。その結果、共役高分子A単独または成分B単独の吸収ピークとは異なる新たな吸収ピークが発生し、かつこの新たな吸収ピーク波長が共役高分子Aの吸収極大波長よりも長波長側である場合にドープ準位が発生したと判断する。この場合、成分Bをドーパントと定義する。一方、サンプルの吸収スペクトルに新たな吸収ピークが存在しない場合、成分Bを熱励起アシスト剤と定義する。
熱励起アシスト剤のLUMOは、上述の共役高分子のLUMOよりもエネルギー準位が低く、該共役高分子のHOMOから発生した熱励起電子のアクセプター準位として機能する。
さらに、該共役高分子のHOMOのエネルギー準位の絶対値と熱励起アシスト剤のLUMOのエネルギー準位の絶対値とが下記数式(I)を満たす関係にあるとき、熱電変換層用分散物は優れた熱起電力を備えた熱電変換層を形成できるものとなる。
数式(I)
0.1eV≦|共役高分子のHOMO|−|熱励起アシスト剤のLUMO|≦1.9eV
上記数式(I)は、熱励起アシスト剤のLUMOの絶対値と共役高分子のHOMOの絶対値とのエネルギー差を表す。両軌道のエネルギー差は、熱電変換素子の熱起電力の向上の点で、上記数式(I)の範囲内であることが好ましい。すなわち、このエネルギー差が0.1eV以上である場合(熱励起アシスト剤のLUMOのエネルギー準位が共役高分子のHOMOのエネルギー準位よりも高い場合を含む)、共役高分子のHOMO(ドナー)と熱励起アシスト剤のLUMO(アクセプター)との間の電子移動の活性化エネルギーが大きくなるため、共役高分子と熱励起アシスト剤との間で酸化還元反応による凝集が起こりにくくなる。その結果、熱電変換層用分散剤の成膜性や熱電変換層の導電率が優れる。また、両軌道のエネルギー差が1.9eV以下である場合、該エネルギー差が熱励起エネルギーよりも小さくなるため、熱励起キャリアが発生し、熱励起アシスト剤の添加効果が発揮される。
このように、本発明において、熱励起アシスト剤と共役高分子とはLUMOのエネルギー準位の絶対値で区別し、具体的には、熱励起アシスト剤はエネルギー準位の絶対値が併用する共役高分子よりも低いLUMO、好ましくは上記数式を満たすLUMOを有する化合物である。
なお、共役高分子および熱励起アシスト剤のHOMOおよびLUMOのエネルギー準位は、HOMOエネルギーレベルに関しては、単一の各成分の塗布膜(ガラス基板)をそれぞれ作製し、光電子分光法により測定できる。LUMO準位に関しては、紫外可視分光光度計を用いてバンドギャップを測定した後、上記で測定したHOMOエネルギーに加えることにより、算出できる。本発明において共役高分子および熱励起アシスト剤のHOMOおよびLUMOのエネルギー準位は、該方法により測定または算出された値を用いる。
熱励起アシスト剤を用いると、熱励起効率が向上し、熱励起キャリア数が増加するため、熱電変換素子の熱起電力が向上する。このような熱励起アシスト剤による熱起電力向上効果は、共役高分子のドーピング効果によって熱電変換性能を向上させる手法とは異なるものである。
上述の式(A)からわかるように、熱電変換素子の熱電変換性能を高めるためには、熱電変換層のゼーベック係数Sの絶対値および導電率σを大きくし、熱伝導率κを小さくすればよい。
熱励起アシスト剤はゼーベック係数Sを高めることで、熱電変換性能を向上させるものである。熱励起アシスト剤を用いた場合には、熱励起によって発生した電子がアクセプター準位である熱励起アシスト剤のLUMOに存在するため、共役高分子上の正孔と熱励起アシスト剤上の電子とが物理的に離れて存在している。そのため、共役高分子のドープ準位が熱励起によって発生した電子によって飽和されにくくなり、ゼーベック係数Sを高めることができる。
熱励起アシスト剤としては、ベンゾチアジアゾール骨格、ベンゾチアゾール骨格、ジチエノシロール骨格、シクロペンタジチオフェン骨格、チエノチオフェン骨格、チオフェン骨格、フルオレン骨格、およびフェニレンビニレン骨格から選ばれる少なくとも1種の骨格を含む高分子化合物、フラーレン化合物、フタロシアニン化合物、ペリレンジカルボキシイミド化合物、またはテトラシアノキノジメタン化合物が好ましく、ベンゾチアジアゾール骨格、ベンゾチアゾール骨格、ジチエノシロール骨格、シクロペンタジチオフェン骨格、およびチエノチオフェン骨格から選ばれる少なくとも1種の骨格を含む高分子化合物、フラーレン化合物、フタロシアニン化合物、ペリレンジカルボキシイミド化合物、またはテトラシアノキノジメタン化合物がより好ましい。
なお、上記熱励起アシスト剤として好ましい化合物としては、「共役高分子」と同様に用いることができる化合物も含まれる。2種類の共役高分子A、Bを併用する場合、下記の数式(II)が成立つ共役高分子の組合せの場合、共役高分子Bを熱励起アシスト剤として定義し、これを用いることができる。
数式(II)
0.1eV≦|共役高分子AのHOMO|−|共役高分子BのLUMO|≦1.9eV
上記数式(II)は、共役高分子BのLUMOの絶対値と共役高分子AのHOMOの絶対値とのエネルギー差を表す。
上述の特徴を満たす熱励起アシスト剤の具体例として下記のものが例示できるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記の例示化合物中、nは整数(好ましくは10以上の整数)を、Meはメチル基を表す。
Figure 0005960178
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本発明に用いる熱電変換層用分散物には上記熱励起アシスト剤を1種単独でまたは2種以上を併用することができる。
<金属元素>
本発明の熱電変換層用分散物の製造方法において、金属元素を、単体、イオン等として、用いるのが、熱電変換特性がさらに向上する点で、好ましい。すなわち、熱電変換層用分散物は好ましくは金属元素を含有している。金属元素は1種単独でまたは2種以上を併用することができる。
ここで、金属元素を単体として用いる場合、機械的処理等で金属をナノサイズ化したものは上記金属ナノ粒子として用いられ、これとは別に、例えば、サブミクロンサイズ化した金属粒子として用いることができる。
熱電変換層用分散物に金属元素を添加すると、形成される熱電変換層中において、金属元素により電子の輸送が促進されるため、熱電変換特性が向上すると考えられる。金属元素は、特に限定されないが、熱電変換特性の点で、原子量45〜200の金属元素が好ましく、遷移金属元素が更に好ましく、亜鉛、鉄、パラジウム、ニッケル、コバルト、モリブデン、白金、錫であることが特に好ましい。
<他の成分>
本発明の熱電変換層用分散物の製造方法において、上記成分の他に、酸化防止剤、耐光安定剤、耐熱安定剤、可塑剤等を用いることができる。すなわち、熱電変換層用分散物は、酸化防止剤、耐光安定剤、耐熱安定剤、可塑剤等を含有していてもよい。
酸化防止剤としては、イルガノックス1010(日本チガバイギー社製)、スミライザーGA−80(住友化学工業(株)製)、スミライザーGS(住友化学工業(株)製)、スミライザーGM(住友化学工業(株)製)等が挙げられる。耐光安定剤としては、TINUVIN 234(BASF社製)、CHIMASSORB 81(BASF社製)、サイアソーブUV−3853(サンケミカル社製)等が挙げられる。耐熱安定剤としては、IRGANOX 1726(BASF社製)が挙げられる。可塑剤としては、アデカサイザーRS(アデカ社製)等が挙げられる。
<熱電変換層用分散物の調製>
本発明に用いる熱電変換層用分散物は、少なくともナノ導電性材料と分散媒とを高速旋回薄膜分散法に供することにより、調製される。
熱電変換層用分散物は、少なくともナノ導電性材料と分散媒とを直接高速旋回薄膜分散法に供してもよいが、高速旋回薄膜分散法に供するに先立って少なくともナノ導電性材料と分散媒とを予備混合して予備混合物を調製しておき、この予備混合物を高速旋回薄膜分散法に供するのが好ましい。少なくともナノ導電性材料と分散媒とを予備混合することにより、高速旋回薄膜分散法による分散性を向上させることができる。
従って、本発明では、少なくともナノ導電性材料および分散媒を予備混合して予備混合物を調製し、予備混合物を高速旋回薄膜分散法に供して、ナノ導電性材料を分散媒に分散させる。
この予備混合は、ナノ導電性材料と、所望により分散剤、非共役高分子、ドーパント、熱励起アシスト剤およびその他の成分等と、分散媒とを、通常の混合装置等を用いて常圧下で行うことができる。例えば、各成分を分散媒中で撹拌、振とう、混練する。溶解や分散を促進するために超音波処理を行ってもよい。予備混合には、例えば、メカニカルホモジナイザー法、ジョークラッシャ法、超遠心粉砕法、カッティングミル法、自動乳鉢法、ディスクミル法、ボールミル法、超音波分散法等を採用することができる。また、必要に応じ、これらの方法を2つ以上組み合わせてもよい。
この予備混合は、例えば0℃以上の温度で行うことができる。予備混合は、好ましくは室温以上、分散媒の沸点以下の温度、より好ましくは50℃以下の温度で加熱する、混合時間を延ばす、または撹拌、浸とう、混練、超音波等の印加強度を上げる等によって、ナノ導電性材料の分散性をある程度高めることができる。なお、オニウム塩を用いる場合は、オニウム塩が酸を生成しない温度下、放射線や電磁波等を遮った状態で、予備混合するのがよい。
予備混合は、大気下で行うこともできるが、不活性雰囲気において行うことが好ましい。不活性雰囲気とは、酸素濃度が大気中濃度よりも少ない状態のことをいう。好ましくは、酸素濃度が10%以下の雰囲気である。不活性雰囲気にする方法としては、窒素、アルゴンなどの気体で大気を置換させる方法が挙げられ、好ましく用いられる。
予備混合物は、後述する高速旋回薄膜分散法による強大なずり応力が発生する点で、固形分濃度が0.2〜20w/v%が好ましく、0.5〜20w/v%がより好ましい。
ナノ導電性材料の混合率は、成膜性、導電性および熱電変換性能の点で、予備混合物の全固形分中、10質量%以上が好ましく、15〜100質量%がより好ましく、20〜100質量%がさらに好ましい。
分散剤のうち共役高分子の混合率は、ナノ導電性材料の分散性、熱電変換素子の導電性および熱電変換性能の点で、予備混合物の全固形分中、0〜80質量%が好ましく、3〜80質量%が好ましく、5〜70質量%がより好ましく、10〜60質量%がさらに好ましく、10〜50質量%が特に好ましい。なお、非共役高分子を含む場合も共役高分子の混合量は上述の範囲内が好ましい。
分散剤として低分子分散剤を用いる場合、低分子分散剤の混合率は、ナノ導電性材料の分散性の点で、予備混合物の全固形分中、3〜80質量%が好ましく、5〜70質量%がより好ましく、10〜60質量%がさらに好ましい。
非共役高分子を用いる場合、非共役高分子の混合率は、熱電変換層用分散物の成膜性の点で、予備混合物の全固形分中、3〜80質量%が好ましく、5〜70質量%がより好ましく、10〜60質量%がさらに好ましい。
ドーパントを用いる場合、ドーパントの混合率は、熱電変換層の導電性の点で、予備混合物の全固形分中、1〜80質量%が好ましく、5〜70質量%がより好ましく、5〜60質量%がさらに好ましい。
熱励起アシスト剤の混合率は、熱電変換層の熱電変換特性の点で、予備混合物の全固形分中、0〜35質量%が好ましく、3〜25質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。
金属元素を用いる場合、金属元素の混合率は、熱電変換層の物理強度低下によるクラックの発生防止等による、熱電変換特性の向上の点で、予備混合物の全固形分中、50〜30000ppmが好ましく、100〜10000ppmがより好ましく、200〜5000ppmがさらに好ましい。予備混合物の中の金属元素濃度(混合率)は、例えば、ICP質量分析装置(例えば、株式会社島津製作所製「ICPM−8500」(商品名))、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(例えば、株式会社島津製作所製「EDX−720」(商品名))等の公知の分析法により定量することができる。
他の成分の混合率は、予備混合物の全固形分中、5質量%以下が好ましく、0〜2質量%がさらに好ましい。
予備混合において、各成分を混合する順は、特に限定されないが、分散媒に溶解する成分を先に分散媒に混合、溶解し、次いで、分散媒に溶解しない成分を混合するのが好ましい。例えば、分散剤、非共役高分子等を分散媒に混合して溶解させた後に、ナノ導電性材料を混合するのが好ましい。
予備混合物の粘度(25℃)は、高速旋回薄膜分散法に供することができる粘度であれば特に限定されないが、取扱性、高速旋回薄膜分散法による分散効率向上の点で、例えば、10〜100000mPa・sが好ましく、15〜5000mPa・sがさらに好ましい。
本発明の熱電変換素子の製造方法においては、このようにして予備混合された予備混合物、または、予備混合を経ないナノ導電性材料および分散媒を、高速旋回薄膜分散法に供して、ナノ導電性材料を分散媒に分散させる。
ここで、高速旋回薄膜分散法とは、上述のように、分散処理対象物を遠心力により装置内面(内壁面)に薄膜円筒状に押し付けた状態で高速回転させて、遠心力および装置内面との速度差により発生するずり応力を予備混合物等に作用させることにより、薄膜円筒状の分散処理対象物内で分散対象物を分散させる分散方法である。
高速旋回薄膜分散法による分散処理は、例えば、断面が円形の管状外套と、管状外套内に管状外套と同心に回転可能に配置された管状の撹拌羽根と、撹拌羽根の下方に開口する注入管とを備え、撹拌羽根が、管状外套の内周面にわずかな間隔を開けて面する外周面と、撹拌羽根の管状壁に厚さ方向に貫通する多数の貫通孔を有する装置を用いて、実施できる。管状外套の内周面と撹拌羽根の外周面との間隔は、分散処理対象物の処理量、目的とする分散度等に応じて適宜に調整され、特に限定されないが、例えば、5〜0.1mmが好ましく、2.5〜0.1mmがより好ましい。このように撹拌羽根は上述の外周面を有する管状構造になっている。
このような装置としては、例えば、薄膜旋回型高速ミキサー「フィルミックス」(登録商標)シリーズ(プライミックス社製)を好適に用いることができる。
本発明の熱電変換素子の製造方法においては、高速旋回薄膜分散法の分散処理対象物として、上述の予備混合物、または、ナノ導電性材料および分散媒(以下、予備混合物等という)を用いる。この分散方法は遠心力とずり応力とで予備混合物等を分散させるものであり、分散処理時にナノ導電性材料の分断、切断も欠陥の発生も抑えることができる。
高速旋回薄膜分散法による分散処理は、予備混合物等、すなわち撹拌羽根を、例えば、周速5〜60m/sec、好ましくは10〜50m/sec、より好ましくは10〜45m/sec、さらに好ましくは10〜40m/sec、特に好ましくは20〜40m/sec、最も好ましくは25〜40m/secで回転させて行うことができる。
処理時間は、ナノ導電性材料の分散度等に応じて適宜に決定でき、例えば、1〜20分が好ましく、2〜10分がより好ましい。
高速旋回薄膜分散法による分散処理は、0℃〜室温、もしくは加温状態、常圧下で行うことができる。分散する温度は用いる分散媒の種類にもよるが、安全上の観点および粘性維持の観点から、10℃〜55℃の範囲が好ましく、15℃〜45℃の温度で行うことがより好ましい。また、この分散処理は、大気下で行うこともでき、また上述の不活性雰囲気で行うこともできる。
ナノ導電性材料および分散媒等を直接高速旋回薄膜分散法に供する場合の各成分の処理量(混合率)は、予備混合における各成分の混合率と同じである。
このようにして、好ましくは薄膜旋回型高速ミキサー「フィルミックス」を用いて、予備混合物等を高速旋回薄膜分散法に供することにより、ナノ導電性材料が分散媒に分散した熱電変換層用分散物を調製できる。
調製される熱電変換層用分散物は、印刷性に優れ、印刷法で塗布でき、しかも、熱電変換層を厚くできる点で、固形分濃度が0.2〜20w/v%が好ましく、0.5〜20w/v%がより好ましく、本発明では、0.5〜20w/v%である
この固形分中、ナノ導電性材料の含有率は、上記予備分散物と同じであり、導電性および熱電変換性能の点で、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、25質量%以上が特に好ましい。なお、上限は100質量%である。
熱電変換層用分散物の粘度は、印刷法で塗布しても印刷性および成膜性に優れる点で、25℃において、10mPa・s以上が好ましく、10〜100000mPa・sがより好ましく、10〜5000mPa・sがさらに好ましく、10〜1000mPa・sが特に好ましい。
熱電変換層用分散物に分散されているナノ導電性材料は、上述のように、分断、切断も欠陥もほとんど抑えられている。例えば、ナノ導電性材料が上記ナノ炭素材料である場合、欠陥の量は、ラマン分光分析におけるDバンドの強度(Id)とGバンドの強度(Ig)との強度比[Id/Ig]で見積もることができる。この強度比[Id/Ig]が小さいほど欠陥の量が少ないと推定できる。
本発明においては、分散物中のナノ導電性材料の強度比[Id/Ig]は、0.01〜1.5が好ましく、0.015〜1.3がより好ましく、0.02〜1.2がさらに好ましい。
ナノ導電性材料が単層カーボンナノチューブである場合には、強度比[Id/Ig]は、0.01〜0.4が好ましく、0.015〜0.3がより好ましく、0.02〜0.2がさらに好ましい。また、多層カーボンナノチューブである場合には、強度比[Id/Ig]は、0.2〜1.5が好ましく、0.5〜1.5がより好ましい。
この熱電変換層用分散物に分散されているナノ導電性材料は、動的光散乱法で測定した平均粒径Dが、1000nm以下であるのが好ましく、1000〜5nmであるのがより好ましく、800〜5nmであるのがさらに好ましい。熱電変換層用分散物中のナノ導電性材料の平均粒径Dが上述の範囲にあると、熱電変換素子の導電性、熱電変換材料の成膜性に優れる。なお、平均粒径Dは体積換算径の算術平均値として求める。
また、熱電変換層用分散物中のナノ導電性材料の粒径分布の半値幅dDと平均粒径Dとの比(dD/D)は、5以下が好ましく、4.5以下がより好ましく、4以下がさらに好ましい。熱電変換層用分散物中のナノ導電性材料の比(dD/D)が上述の範囲にあると熱電変換材料の印刷性に優れる。
本発明の熱電変換素子の製造方法においては、次いで、熱電変換層用分散物を調製する工程で調製した熱電変換層用分散物を、基材上に塗布し、乾燥する工程を実施して、熱電変換層を形成する。
本発明の熱電変換素子の基材、例えば、上述の熱電変換素子1における第1の基材12および第2の基材16は、ガラス、透明セラミックス、金属、プラスチックフィルム等の基材を用いることができる。本発明において、フレキシビリティー(可撓性)を有する基材を用いることもできる。具体的には、ASTM D2176に規定の測定法による耐屈曲回数MITが1万サイクル以上であるフレキシビリティーを有する基材が好ましい。このようなフレキシビリティーを有する基材は、プラスチックフィルムが好ましく、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−フタレンジカルボキシレート等のポリエステル樹脂、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエーテルスルホン、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、トリアセチルセルロース(TAC)、シクロオレフィン、等のプラスチックフィルム(樹脂フィルム)、ガラスエポキシ、液晶性ポリエステル等が好ましい。
このうち、入手の容易性、経済性の観点および分散媒による溶解が無く、印刷が可能な基材として、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ガラスエポキシ、液晶性ポリエステルが好ましく、特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ガラスエポキシ、液晶性ポリエステルが好ましい。
また、基材としての効果を損なわない限りにおいて、上記樹脂の共重合体、またはこれらの樹脂と他の種類の樹脂とのブレンド物なども用いることができる。
さらに、上記樹脂フィルムの中には、滑り性を良くするために少量の無機または有機の微粒子、例えば、酸化チタン、炭酸カルシュウム、シリカ、硫酸バリウム、シリコーン等のような無機フィラー、アクリル、ベンゾグアナミン、テフロン(登録商標)、エポキシ等のような有機フィラー、ポリエチレングリコール(PEG)、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ等の接着性向上剤や帯電防止剤を含有させることができる。
各樹脂フィルムの製造方法は、公知の方法や条件を適宜選択して用いることができる。例えば、ポリエステルフィルムは、前記のポリエステル樹脂を溶融押出しでフィルム状にし、縦および横二軸延伸による配向結晶化および熱処理による結晶化させることにより形成し得る。
基材の厚さは、熱伝導率、取り扱い性、耐久性、外部衝撃による熱電変換層の破損防止等の点から、好ましくは30〜3000μm、より好ましくは50〜1000μm、さらに好ましくは100〜1000μm、特に好ましくは200〜800μmである。
特に、この工程においては、熱電変換層との圧着面に電極を設けた基材を用いることが好ましい。
第1の電極および第2の電極は、銅、銀、金、白金、ニッケル、クロム、銅合金などの金属電極、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)等の透明電極などの公知の金属のいずれかを用いて、形成されるのが好ましい。例えば、好ましくは、銅、金、白金、ニッケル、銅合金等のいずれかを用いて形成され、より好ましくは、金、白金、ニッケルのいずれかを用いて、形成される。または上記金属を微粒子化し、バインダーと溶剤を添加した金属ペーストを固化したものを用いても良い。
電極2の形成は、めっき法、エッチングによるパターニンング法、リフトオフ法を用いたスパッタ法やイオンプレーティング法、メタルマスクを用いたスパッタ法やイオンプレーティング法により、行うことができる。または、前述した金属を微粒子化し、バインダーと溶剤を添加した金属ペーストを用いても良い。金属ペーストを用いる場合には、スクリーン印刷法、ディスペンサー法による印刷法を用いることができる。印刷後、乾燥のための加熱や、バインダーの分解や金属の焼結のための加熱処理を行ってもよい。
この基材上に熱電変換層用分散物を塗布する方法は、特に限定されず、例えば、スピンコート、エクストルージョンダイコート、ブレードコート、バーコート、スクリーン印刷、熱電変換層用分散物をインクジェット法により打滴して印刷するインクジェット印刷法、ステンシル印刷、ロールコート、カーテンコート、スプレーコート、ディップコート等、公知の塗布方法を用いることができる。これらの中でも、熱電変換層用分散物は、高固形分濃度で高粘度であっても印刷性に優れる点で、スクリーン印刷、インクジェット印刷法、ステンシル印刷等の印刷法が好ましい。特に、スクリーン印刷の1種である、メタルマスクを用いて熱電変換層用分散物を印刷するメタルマスク印刷法が1回の塗布で厚い塗布膜に分散物を印刷できるうえ、熱電変換層の電極への密着性に優れる点で特に好ましい。
なお、スクリーン印刷法は、通常のステンレス、ナイロン、ポリエステル製のメッシュ上に感光性樹脂をパターニング露光し、現像して版を作製して印刷する方法のほか、エッチングされたメタルマスクから版を作製し、印刷する方法などがある。
基材上に熱電変換層用分散物を塗布するに際して、所望の位置および大きさに熱電変換層用分散物を塗布するために、各種のマスク等を用いることができる。
メタルマスク印刷法については、後に実施例にて詳述する。
インクジェット印刷法は下記のように行う。
インクジェットの塗布液としての熱電変換層用分散物中の全固形分濃度は、一般的には0.05〜30w/v%、より好ましくは0.1〜20w/v%、更に好ましくは0.5〜10w/v%である。
この熱電変換層用分散物の粘度は、吐出安定性の観点から、吐出時の温度において適宜決定される。
この熱電変換層用分散物は、フィルター濾過した後、次のように基材または電極上に塗布して用いる。フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは2.0μm以下、より好ましくは0.5μm以下のポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製またはナイロン製のものが好ましい。
インクジェット印刷の熱電変換層用分散物において、分散媒として用いる有機溶媒としては、上記有機物やナノ導電性材料に応じて適宜従来公知の有機溶媒を適宜使用可能である。
有機溶媒としては、上述の分散媒などが挙げられ、例えば、芳香族溶媒、アルコール、ケトン溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、アミド溶媒、脂肪族ハロゲン溶媒等の公知の有機溶媒を挙げることができる。これら有機溶媒として上記したもの以外に下記のものが挙げられる。
芳香族溶媒としては、トリメチルベンゼン、クメン、エチルベンゼン、メチルプロピルベンゼン、メチルイソプロピルベンゼン、テトラヒドロナフタレン等が挙げられる。なかでも、キシレン、クメン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、テトラヒドロナフタレンがより好ましい。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、ブタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等が挙げられ、ベンジルアルコール、シクロヘキサノールがより好ましい。
ケトン溶媒としては、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、2−ブタノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート等が挙げられ、メチルイソブチルケトン、プロピレンカーボネートが好ましい。
脂肪族炭化水素溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン等が挙げられ、オクタン、デカンが好ましい。
アミド溶媒としては、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられ、N−メチル−2−ピロリドン、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが好ましい。
上記溶媒は単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
図3に示すように、インクジェット印刷法に用いる基材31には、熱電変換層が形成される領域32の外周を囲うようにバンク33が形成されたものを用いることが好ましい。すなわち、熱電変換層を形成する領域32は、バンク33により全て仕切られている。このため、バンク33によってインクジェット法で打滴した熱電変換層用分散物をバンク33内の留めることができ、高さを有する熱電変換層(図示せず)を形成することが可能になる。
バンク33の断面形状としては、円弧形状(半円形、半楕円形)、三角形、放物線形状、台形等が挙げられる、バンク33の上部は平坦部を有しないことが好ましい。したがって、バンク33の断面形状は、半円形、半楕円形、三角形、放物線形状等の凸曲面形状が好ましい。バンク33の上面に平坦部を有しないことにより、バンク33に付着した液滴はバンク33上面に留まり難くなり、バンク33の凸曲面からなる側面を伝わってより効率的に熱電変換層を形成する領域32へと移動することができる。バンク33は、より好ましくは円弧形状、三角形であり、さらに好ましくは円弧形状である。
バンク33の材質としては、ポリイミド、ノボラック樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等が挙げられ、撥液性や耐熱性の観点から、好ましくはポリイミドが挙げられる。
なお、バンクは必要に応じて撥液処理を施してもよい。具体的な方法としては、四フッ化炭素(CF)を原料ガスに用いてCVD法によりフルオロカーボン膜をバンク33に成膜し、または、長鎖のフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤やフッ素ポリマーをバンクに混合してもよい。
バンク33の形成方法としては、ドライレジストを含む感光性レジストやポリイミド、感光性ガラスを用いたUV光によるパターニングと現像を用いる方法、アルカリ現像が可能なポリイミド上にレジストを積層塗布し、UV光によるパターニングと現像を用いる方法、エポキシ樹脂を用いたスクリーン印刷によるパターニングとUV架橋を用いる方法などが挙げられる。
熱電変換層を形成する領域32はバンク33により囲まれてなる領域であり、この領域に熱電変換層用分散物が塗布される。なお必要に応じ、熱電変換層を形成する領域32への熱電変換層用分散物の塗布の前後に、熱電変換層用分散物に含まれる成分以外の成分を含む液を塗布することにより層を形成してもよい。
このようにして熱電変換層用分散物を塗布した後に、所望によりマスク等を取り外す。
次いで、熱電変換層用分散物を乾燥する。乾燥は、分散媒を揮発させることができれば、その方法および条件は特に限定されず、例えば、基材ごと乾燥してもよく、熱電変換層用分散物の塗膜のみを局所的に乾燥してもよい。乾燥方法としては、例えば、加熱乾燥、熱風の吹き付け等の乾燥方法を採用できる。
例えば、塗布後の加熱温度及び時間は、熱電変換層用分散物が乾燥する限り特に限定されないが、加熱温度は一般的に100〜200℃が好ましく、120〜160℃がより好ましい。加熱時間は一般的に1〜120分が好ましく、1〜60分がより好ましく、1〜25分がさらに好ましい。
さらに、真空ポンプ等を用いて、低圧雰囲気で乾燥させる方法、ファンを用いて、送風しながら乾燥させる方法、または不活性ガス(窒素、アルゴン)を供給しながら乾燥させる方法など、任意の方法を用いることができる。
なお、インクジェット印刷等による塗布および加熱乾燥を複数回繰り返すことで熱電変換層を厚く成膜してもよい。なお、加熱乾燥については完全に溶媒成分が揮発しても、しなくてもどちらでもよい。
このようにして基材上に熱電変換層が形成される。このとき、熱電変換層用分散物は高固形分濃度かつ高粘度であって印刷性に優れるから、形成される熱電変換層は、成形性に優れ、加えて1回の塗布によって従来よりも厚い熱電変換層を形成することができる。
熱電変換層の層厚は、0.1〜1000μmが好ましく、1〜100μmがより好ましい。層厚を上記範囲にすることで、温度差を付与しやすく、熱電変換層内の抵抗の増大を防ぐことができる。本発明においては、上述の範囲の中でも、特に厚くすることができる。
一般に、熱電変換素子では、有機薄膜太陽電池用素子等の光電変換素子と比べて、簡便に素子を製造できる。特に、熱電変換層用分散物を用いると有機薄膜太陽電池用素子と比較して光吸収効率を考慮する必要がないため100〜1000倍程度の厚膜化が可能であり、空気中の酸素や水分に対する化学的な安定性が向上する。
本発明の熱電変換素子の製造方法において、熱電変換層用分散物がドーパントとして上述のオニウム塩化合物を含有する場合は、成膜後に、該膜に活性エネルギー線を照射または加熱してドーピング処理を行い、導電性を向上させることが好ましい。この処理によって、オニウム塩化合物から酸が発生し、この酸が上述の共役高分子をプロトン化することにより該共役高分子が正の電荷でドーピング(p型ドーピング)される。
活性エネルギー線には、放射線や電磁波が包含され、放射線には粒子線(高速粒子線)と電磁放射線が包含される。粒子線としては、アルファ線(α線)、ベータ線(β線)、陽子線、電子線(原子核崩壊によらず加速器で電子を加速するものを指す)、重陽子線等の荷電粒子線、非荷電粒子線である中性子線、宇宙線等が挙げられ、電磁放射線としては、ガンマ線(γ線)、エックス線(X線、軟X線)が挙げられる。電磁波としては、電波、赤外線、可視光線、紫外線(近紫外線、遠紫外線、極紫外線)、X線、ガンマ線等が挙げられる。本発明において用いる線種は特に限定されず、例えば、使用するオニウム塩化合物(酸発生剤)の極大吸収波長付近の波長を有する電磁波を適宜選べばよい。
これらの活性エネルギー線のうち、ドーピング効果および安全性の観点から好ましいのは紫外線、可視光線、赤外線であり、具体的には240〜1100nm、好ましくは240〜850nm、より好ましくは240〜670nmに極大発光波長を有する光線である。
活性エネルギー線の照射には、放射線または電磁波照射装置が用いられる。照射する放射線または電磁波の波長は特に限定されず、使用するオニウム塩化合物の感応波長に対応する波長領域の放射線または電磁波を照射できるものを選べばよい。
放射線または電磁波を照射できる装置としては、LEDランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、DeepUVランプ、低圧UVランプ等の水銀ランプ、ハライドランプ、キセノンフラッシュランプ、メタルハライドランプ、ArFエキシマランプ、KrFエキシマランプ等のエキシマランプ、極端紫外光ランプ、電子ビーム、X線ランプを光源とする露光装置がある。紫外線照射は、通常の紫外線照射装置、例えば、市販の硬化/接着/露光用の紫外線照射装置(ウシオ電機社SP9−250UB等)を用いて行うことができる。
露光時間および光量は、用いるオニウム塩化合物の種類およびドーピング効果を考慮して適宜選択すればよい。具体的には、光量10mJ/cm〜10J/cm、好ましくは50mJ/cm〜5J/cmで行うことが挙げられる。
加熱によってドーピングを行う場合は、成膜した膜を、オニウム塩化合物が酸を発生する温度以上で加熱すればよい。加熱温度として、好ましくは50〜200℃、より好ましくは70〜150℃である。加熱時間は、好ましくは1〜60分、より好ましくは3〜30分である。
ドーピング処理の時期は特に限定されないが、熱電変換層用分散物を成膜等、加工処理した後に行うことが好ましい。
本発明の熱電変換素子の製造方法においては、所望により、形成した熱電変換層上に第2の電極を形成し、第2の基材を積層する工程を実施する。または、形成した熱電変換層上に、第2の電極を有する第2の基材を積層する工程を実施する。第2の電極は上述した電極材料を用いて形成される。第2の電極と熱電変換層との圧着は、密着性向上の観点から100〜200℃程度に加熱して行うことが好ましい。
このようにして、本発明の熱電変換素子の製造方法によって、基材上に、第1の電極、熱電変換層および第2の電極を有する熱電変換素子が製造される。そして、分散性が高く印刷性に優れた熱電変換層用分散物で形成される熱電変換層は成膜性および基材との密着性に優れる。したがって、この熱電変換層を備えた本発明の熱電変換素子は高い導電性と優れた熱電変換性とを両立する。
したがって、本発明の熱電変換素子は、熱電発電用物品の発電素子として好適に用いることができる。このような発電素子として、具体的には、温泉熱発電機、太陽熱発電機、廃熱発電機等の発電機、腕時計用電源、半導体駆動電源、(小型)センサー用電源等が挙げられる。
また、熱電変換層用分散物で形成される熱電変換層は、本発明の熱電変換素子の熱電変換層、熱電発電用膜もしくは各種導電性膜として好適に用いられ、また、熱電変換層用分散物は、これらの材料、例えば、熱電変換材料、熱電発電素子用材料として好適に用いられる。
以下、実施例によって本発明をより詳しく説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
実施例および比較例において、共役高分子として下記ポリチオフェン重合体もしくは共役高分子101〜103、または、低分子分散剤として下記イミダゾリウム塩を用いた。
<共役高分子>
ポリ(3−オクチルチオフェン−2,5−イル)(レジオランダム、Aldrich社製、重量平均分子量:98,000、P3OTとも表記する)
Figure 0005960178
共役高分子101(Lumtec社製、分子量=7,000〜20,000)
Figure 0005960178
共役高分子102(重量平均分子量=72000)
Figure 0005960178
共役高分子103(重量平均分子量=29000)
Figure 0005960178
共役高分子102の合成
非特許文献(Y.Kawagoeら、New J.Chem., 2010,34,637.)に記載の方法に準じて、合成した。
共役高分子103の合成
非特許文献(L.EUNHEEYら、Mol. Cryst. Liq. Cryst., 551,130.)に記載の方法に準じて、チオフェン原料として2,5−ジブロモチオフェンを用いて、合成した。
<低分子分散剤>
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート(Aldrich社製)
Figure 0005960178
実施例
1.熱電変換層用分散物101の調製
ポリ(3−オクチルチオフェン−2,5−イル)100mgと、単層カーボンナノチューブ「ASP−100F」(商品名、Hanwha−chemical社製)100mg(単層カーボンナノチューブの質量に換算、以下同じ。)とに、o−ジクロロベンゼン20mLを加えて、メカニカルホモジナイザー「T10basic」(IKA社製)を用いて、20℃で15分間、予備混合して、予備混合物101を得た。この予備混合物101の固形分濃度は1.0w/v%(固形分中のCNT含有率(以下、同じ)は50質量%)であった。
次いで、この予備混合物101を、薄膜旋回型高速ミキサー「フィルミックス40−40型」(プライミクス社製、管状外套の内周面と撹拌羽根の外周面との間隔を2mmに調整した(以下、同じ)。)を用いて、10℃の恒温層中、周速40m/secにて5分間高速旋回薄膜分散法にて分散処理し、本発明の熱電変換層用分散物101を調製した。この熱電変換層用分散物101の固形分濃度は1.0w/v%(CNT含有率は50質量%)であった。
2.熱電変換層101の作製
上記で調製した熱電変換層用分散物101を基材上に成膜して熱電変換層を形成した。具体的には、イソプロピルアルコール中で超音波洗浄した後、10分間UV−オゾン処理を行った厚み1.1mmのガラス基材上に、レーザー加工で形成した開口部13×13mmを有し、かつ厚み2mmのメタルマスクを用いて、この開口部内に熱電変換層用分散物101を注入しスキージで平坦化した。このようにして熱電変換層用分散物101をメタルマスク印刷法にて印刷した。その後、メタルマスクを取り外して、ガラス基材を80℃のホットプレート上で45分間加熱して乾燥させた。このようにしてガラス基材上に熱電変換層101を作製した。
3.熱電変換素子101の作製
熱電変換層用分散物101を用いて、基材上に第1の電極、熱電変換層および第2の電極をこの順に有する、図1の熱電変換素子1に対応する熱電変換素子を製造した。以下、図1の熱電変換素子1の構成部材に相当するものには図1の熱電変換素子1と同じ符号を付す。
具体的には、イソプロピルアルコール中で超音波洗浄した後、大きさ40×50mm、厚み1.1mのガラス基材12上に、エッチングにより形成した開口部20×20mmのメタルマスクを用いて、イオンプレーティング法によりクロムを100nm、次に金を200nm積層成膜することにより、第1の電極13を形成した。
次に、レーザー加工で形成した開口部13×13mmを有し、かつ厚み2mmのメタルマスクを、その開口部が第1の電極13上になるように、基材12上に配置した。このメタルマスクの開口部内に熱電変換層用分散物101を上述のようにしてメタルマスク印刷法にて印刷法にて印刷した後に、ガラス基材12を80℃のホットプレート上で45分間加熱して乾燥させて、第1の電極13上に熱電変換層14を形成した。
次に、導電性ペースト「ドータイトD−550」(製品名、藤倉化成製、銀ペースト)をスクリーン印刷法により熱電変換層14上に印刷して第2の電極15を成膜し、熱電変換素子101を製造した。
4.熱電変換層用分散物102および熱電変換層102の調製ならびに熱電変換素子102の製造
熱電変換層用分散物101の調製において、ポリ(3−オクチルチオフェン−2,5−イル)および単層カーボンナノチューブを、ぞれぞれ、200mg用いたこと以外は熱電変換層用分散物101と同様にして予備混合物102(固形分濃度は2.0w/v%(CNT含有率は50質量%))および電変換層用分散物102(固形分濃度は2.0w/v%(CNT含有率は50質量%))を調製した。
また、熱電変換層101の調製および熱電変換素子101の製造において、熱電変換層用分散物101に代えて熱電変換層用分散物102を用いて、熱電変換層101および熱電変換素子101と同様にして熱電変換層102を調製し、熱電変換素子102を製造した。
5.熱電変換層用分散物103および熱電変換層103の調製ならびに熱電変換素子103の製造
熱電変換層用分散物101の調製において、ポリ(3−オクチルチオフェン−2,5−イル)および単層カーボンナノチューブを、ぞれぞれ、50mg用いたこと以外は熱電変換層用分散物101と同様にして予備混合物103(固形分濃度は0.5w/v%(CNT含有率は50質量%))および熱電変換層用分散物103(固形分濃度は0.5w/v%(CNT含有率は50質量%))を調製した。
また、熱電変換層101の調製および熱電変換素子101の製造において、熱電変換層用分散物101に代えて熱電変換層用分散物103を用いて、熱電変換層101および熱電変換素子101と同様にして熱電変換層103を調製し、熱電変換素子103を製造した。
6.熱電変換層用分散物104および熱電変換層104の調製ならびに熱電変換素子104の製造
熱電変換層用分散物101の調製において、ポリ(3−オクチルチオフェン−2,5−イル)および単層カーボンナノチューブを、ぞれぞれ、2g用いたこと以外は熱電変換層用分散物101と同様にして予備混合物104(固形分濃度は20w/v%(CNT含有率は50質量%))および熱電変換層用分散物104(固形分濃度は20w/v%(CNT含有率は50質量%))を調製した。
また、熱電変換層101の調製および熱電変換素子101の製造において、熱電変換層用分散物101に代えて熱電変換層用分散物104を用いて、熱電変換層101および熱電変換素子101と同様にして熱電変換層104を調製し、熱電変換素子104を製造した。
7.熱電変換層用分散物105および熱電変換層105の調製ならびに熱電変換素子105の製造
熱電変換層用分散物101の調製において、ポリ(3−オクチルチオフェン−2,5−イル)および単層カーボンナノチューブを、ぞれぞれ、10mg用いたこと以外は熱電変換層用分散物101と同様にして予備混合物105(固形分濃度は0.1w/v%(CNT含有率は50質量%))および熱電変換層用分散物105(固形分濃度は0.1w/v%(CNT含有率は50質量%))を調製した。
また、熱電変換層101の調製および熱電変換素子101の製造において、熱電変換層用分散物101に代えて熱電変換層用分散物105を用いて、熱電変換層101および熱電変換素子101と同様にして熱電変換層105を調製し、熱電変換素子105を製造した。
8.熱電変換層用分散物106および熱電変換層106の調製ならびに熱電変換素子106の製造
熱電変換層用分散物101の調製において、ポリ(3−オクチルチオフェン−2,5−イル)および単層カーボンナノチューブを、ぞれぞれ、20mg用いたこと以外は熱電変換層用分散物101と同様にして予備混合物106(固形分濃度は0.2w/v%(CNT含有率は50質量%))および熱電変換層用分散物106(固形分濃度は0.2w/v%(CNT含有率は50質量%))を調製した。
また、熱電変換層101の調製および熱電変換素子101の製造において、熱電変換層用分散物101に代えて熱電変換層用分散物106を用いて、熱電変換層101および熱電変換素子101と同様にして熱電変換層106を調製し、熱電変換素子106を製造した。
9.熱電変換層用分散物107および熱電変換層107の調製ならびに熱電変換素子107の製造
熱電変換層用分散物101の調製において、ポリ(3−オクチルチオフェン−2,5−イル)および単層カーボンナノチューブを、ぞれぞれ、500mg用いたこと以外は熱電変換層用分散物101と同様にして予備混合物107(固形分濃度は5.0w/v%(CNT含有率は50質量%))および熱電変換層用分散物107(固形分濃度は5.0w/v%(CNT含有率は50質量%))を調製した。
また、熱電変換層101の調製および熱電変換素子101の製造において、熱電変換層用分散物101に代えて熱電変換層用分散物107を用いて、熱電変換層101および熱電変換素子101と同様にして熱電変換層107を調製し、熱電変換素子107を製造した。
10.熱電変換層用分散物108および熱電変換層108の調製ならびに熱電変換素子108の製造
熱電変換層用分散物101の調製において、ポリ(3−オクチルチオフェン−2,5−イル)および単層カーボンナノチューブを、ぞれぞれ、1g用いたこと以外は熱電変換層用分散物101と同様にして予備混合物108(固形分濃度は10w/v%(CNT含有率は50質量%))および熱電変換層用分散物108(固形分濃度は10w/v%(CNT含有率は50質量%))を調製した。
また、熱電変換層101の調製および熱電変換素子101の製造において、熱電変換層用分散物101に代えて熱電変換層用分散物108を用いて、熱電変換層101および熱電変換素子101と同様にして熱電変換層108を調製し、熱電変換素子108を製造した。
11.熱電変換層用分散物109および熱電変換層109の調製ならびに熱電変換素子109の製造
熱電変換層用分散物101の調製において、単層カーボンナノチューブとして「ASP−100F」(商品名、Hanwha−chemical社製)の代わりに「MC」(商品名、名城ナノカーボン社製)を用いたこと用いたこと以外は熱電変換層用分散物101と同様にして予備混合物109(固形分濃度は1.0w/v%(CNT含有率は50質量%))および熱電変換層用分散物109(固形分濃度は1.0w/v%(CNT含有率は50質量%))を調製した。
また、熱電変換層101の調製および熱電変換素子101の製造において、熱電変換層用分散物101に代えて熱電変換層用分散物109を用いて、熱電変換層101および熱電変換素子101と同様にして熱電変換層109を調製し、熱電変換素子109を製造した。
12.熱電変換層用分散物110および熱電変換層110の調製ならびに熱電変換素子110の製造
熱電変換層用分散物109の調製において、ポリ(3−オクチルチオフェン−2,5−イル)および単層カーボンナノチューブ「MC」(商品名、名城ナノカーボン社製)を、ぞれぞれ、200mg用いたこと以外は熱電変換層用分散物109と同様にして予備混合物110(固形分濃度は2.0w/v%(CNT含有率は50質量%))および熱電変換層用分散物110(固形分濃度は2.0w/v%(CNT含有率は50質量%))を調製した。
また、熱電変換層101の調製および熱電変換素子101の製造において、熱電変換層用分散物101に代えて熱電変換層用分散物110を用いて、熱電変換層101および熱電変換素子101と同様にして熱電変換層110を調製し、熱電変換素子110を製造した。
13.熱電変換層用分散物111および熱電変換層111の調製ならびに熱電変換素子111の製造
熱電変換層用分散物101の調整において、ポリ(3−オクチルチオフェン−2,5−イル)の代わりに共役高分子101を用いたこと以外は熱電変換層用分散物101と同様にして予備混合物111(固形分濃度は1.0w/v%(CNT含有率は50質量%))および電変換層用分散物111(固形分濃度は1.0w/v%(CNT含有率は50質量%))を調製した。
また、熱電変換層101の調製および熱電変換素子101の製造において、熱電変換層用分散物101に代えて熱電変換層用分散物111を用いて、熱電変換層101および熱電変換素子101と同様にして熱電変換層111を調製し、熱電変換素子111を製造した。
14.熱電変換層用分散物112および熱電変換層112の調製ならびに熱電変換素子112の製造
熱電変換層用分散物101の調整において、ポリ(3−オクチルチオフェン−2,5−イル)の代わりに共役高分子102を用いたこと以外は熱電変換層用分散物101と同様にして予備混合物112(固形分濃度は1.0w/v%(CNT含有率は50質量%))および電変換層用分散物112(固形分濃度は1.0w/v%(CNT含有率は50質量%))を調製した。
また、熱電変換層101の調製および熱電変換素子101の製造において、熱電変換層用分散物101に代えて熱電変換層用分散物112を用いて、熱電変換層101および熱電変換素子101と同様にして熱電変換層112を調製し、熱電変換素子112を製造した。
15.熱電変換層用分散物113および熱電変換層113の調製ならびに熱電変換素子113の製造
熱電変換層用分散物101の調整において、ポリ(3−オクチルチオフェン−2,5−イル)の代わりに共役高分子103を用いたこと以外は熱電変換層用分散物101と同様にして予備混合物113(固形分濃度は1.0w/v%(CNT含有率は50質量%))および電変換層用分散物113(固形分濃度は1.0w/v%(CNT含有率は50質量%))を調製した。
また、熱電変換層101の調製および熱電変換素子101の製造において、熱電変換層用分散物101に代えて熱電変換層用分散物113を用いて、熱電変換層101および熱電変換素子101と同様にして熱電変換層113を調製し、熱電変換素子113を製造した。
16.熱電変換層用分散物114および熱電変換層114の調製ならびに熱電変換素子114の製造
熱電変換層用分散物101の調整において、単層カーボンナノチューブとして「ASP−100F」(商品名、Hanwha−chemical社製)の代わりに「HP」(商品名、KH Chemicals社製)を用いたこと用いたこと以外は熱電変換層用分散物101と同様にして予備混合物114(固形分濃度は1.0w/v%(CNT含有率は50質量%))および熱電変換層用分散物114(固形分濃度は1.0w/v%(CNT含有率は50質量%))を調製した。
また、熱電変換層101の調製および熱電変換素子101の製造において、熱電変換層用分散物101に代えて熱電変換層用分散物114を用いて、熱電変換層101および熱電変換素子101と同様にして熱電変換層114を調製し、熱電変換素子114を製造した。
17.熱電変換層用分散物115および熱電変換層115の調製ならびに熱電変換素子115の製造
熱電変換層用分散物114の調整において、ポリ(3−オクチルチオフェン−2,5−イル)および単層カーボンナノチューブ「HP」(商品名、KH Chemicals社製)を、ぞれぞれ、200mg用いたこと以外は熱電変換層用分散物114と同様にして予備混合物115(固形分濃度は2.0w/v%(CNT含有率は50質量%))および熱電変換層用分散物115(固形分濃度は2.0w/v%(CNT含有率は50質量%))を調製した。
また、熱電変換層101の調製および熱電変換素子101の製造において、熱電変換層用分散物101に代えて熱電変換層用分散物115を用いて、熱電変換層101および熱電変換素子101と同様にして熱電変換層115を調製し、熱電変換素子115を製造した。
18.熱電変換層用分散物c101および熱電変換層c101の調製ならびに熱電変換素子c101の製造
熱電変換層用分散物101の調製において、ポリ(3−オクチルチオフェン−2,5−イル)および単層カーボンナノチューブを、ぞれぞれ、2g用いたこと以外は熱電変換層用分散物101の調製と同様にして、予備混合物c101(固形分濃度は20w/v%(CNT含有率は50質量%))を調製した。
さらに、予備混合物c101を、超音波ホモジナイザー「VC−750」(商品名、SONICS&MATERIALS.Inc製、テーパーマイクロチップ(プローブ径6.5mm)を使用、出力40W、直接照射、Duty比50%)を用いて、30℃で30分間超音波分散して、比較のための熱電変換層用分散物c101(固形分濃度は20w/v%(CNT含有率は50質量%))を調製した。
また、熱電変換層101の調製および熱電変換素子101の製造において、熱電変換層用分散物101に代えて熱電変換層用分散物c101を用いて、熱電変換層101および熱電変換素子101と同様にして熱電変換層c101および熱電変換素子c101の製造を試みたが、熱電変換層c101および熱電変換素子c101を製造できなかった。
このようにして調製した熱電変換層用分散物101〜115およびc101の粘度、平均粒径D、分散性およびチキソトロピー性を次のようにして評価した。結果を表1に示す。
[粘度、平均粒径D]
粘度は、各熱電変換層用分散物を25℃で一定にした後に、振動式粘度計「VM−10A」(商品名、セニコック社製)もしくはレオメーター「MARS」(商品名、粘度・粘弾性測定装置、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いて測定した。レオメーターによる粘弾性測定においてはフローカーブ測定におけるせん断速度1Hzのときの粘度を採用した。
各熱電変換層用分散物中の単層カーボンナノチューブの平均粒径Dは、濃厚系粒径アナライザー「FPAR−1000」(商品名、大塚電子製)を用い、動的光散乱法にて測定を行った。
[分散性評価]
単層カーボンナノチューブの分散性は、各熱電変換層用分散物をスライドガラスに滴下し、カバーガラスをのせた後、光学顕微鏡により観察した。評価は、優れる方から順に、1、2、3、4、および5の5段階で行った。評価が1〜3のいずれかであると、カーボンナノチューブの分散性に優れるといえる。
1:黒色の凝集物が確認できなかった。
2:大きさ500μm未満の黒色の凝集物を確認できた。
3:大きさ500μm以上1mm未満の黒色の凝集物を確認できた。
4:大きさ500μm以上1mm未満の黒色の凝集物を多数(10個以上)確認できた。
5:大きさ1mm以上の凝集物を多数(10個以上)確認できた。
[チキソトロピー性の評価]
チキソトロピー性の評価は、レオメーター「MARS」(商品名、製粘度・粘弾性測定装置、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いて、30℃、6rpmでの粘度と30℃、60rpmでの粘度とを測定し、回転数と粘度との積の比率(TI値、チキソトロピーインデックス値)を算出して行った。各熱電変換層用分散物のTI値を、熱電変換層101のTI値に対する相対値として、表1に示す。TI値が大きいほどチキソトロピー性が大きい。
本発明においては、上記相対値が0.1あれば許容できる最低限の印刷性を有し、相対値が0.1よりも大きく1.1未満であると望ましい印刷性を有し、相対値が1.1以上であると特に印刷性に優れるといえる。
また、各熱電変換層101〜115の成膜性、導電率および熱電性能、ならびに、各熱電変換素子101〜115の熱起電力を下記のようにして評価した。なお、試料c101は熱電変換層用分散物の塗布層の成膜性のみ評価した。
[成膜性]
成膜性は、熱電変換層用分散物の液ダレによる塗布層の広がり具合に着目し、メタルマスクの開口部に対する各熱電変換層の大きさを基準にして目視により評価した。評価は、優れる方から順に、1、2、3および4の4段階で行った。評価が1または2であると、分散物の液ダレの度合いが小さく、より成形性が大きいため、膜質が良化で、厚膜化することができ、成膜性により優れるといえる。評価が3であると、許容できる最低限の成膜性を有する。
1:メタルマスクの開口部にくらべ、熱電変換層の大きさが1.5倍以下
2:メタルマスクの開口部にくらべ、熱電変換層の大きさが1.5倍を超え2.0倍以下
3:メタルマスクの開口部にくらべ、熱電変換層の大きさが2.0倍を超え、2.5倍以下
4:メタルマスクの開口部にくらべ、熱電変換層の大きさが2.5倍より大きい
[導電率測定]
各熱電変換層の導電率は、低抵抗率計「ロレスタGP」(商品名、(株)三菱化学アナリテック製)を用いて各熱電変換層の表面抵抗率(単位:Ω/□)を測定し、また触針式段差表面形状測定装置「XP−200」(商品名、Ambios Technology社製)を用いて各熱電変換層の膜厚(単位:cm)を測定し、下記式より導電率(S/cm)を算出した。
式:(導電率)=1/((表面抵抗率(Ω/□))×(膜厚(cm))
[熱電性能:PF]
各熱電変換層の熱電性能は、熱電特性測定装置「MODEL RZ2001i」(商品名、オザワ科学社製)を用いて、温度100℃の大気雰囲気で、ゼーベック係数S(μV/k)と導電率σ(S/m)を測定した。得られたゼーベック係数Sと導電率σから、熱電性能としてPower Factor(PF)を下記式より算出した。各熱電変換層のPFを、熱電変換層101のPFに対する相対値として、表1に示す。
式:PF(μW/(m・K))=(ゼーベック係数S)×(導電率σ)
[熱起電力]
各熱電変換素子の熱起電力を下記のようにして評価した。すなわち、各熱電変換素子の熱起電力は、各熱電変換素子のガラス基材12を表面温度80℃のホットプレートで加熱した際に、第1の電極13と第2の電極15との間で生じる電圧差を、デジタルマルチメーターR6581(商品名、アドバンテスト社製)で測定した。各熱電変換素子の熱起電力を、熱電変換素子101の熱起電力に対する相対値として、表1に示す。
[単層カーボンナノチューブの長さの測定]
各例に用いた単層カーボンナノチューブ「ASP−100F」、「HP」および「MC」それぞれの長さを下記のようにして評価した。すなわち、各単層カーボンナノチューブをコール酸ナトリウムを分散剤として超音波ホモジナイザーにて孤立分散させた希薄分散液を、ガラス基板上にドロップキャストし、原子間力顕微鏡(AFM)で観察して、50個の単層カーボンナノチューブの長さを測定し、平均を求めた。結果を表2に示す。
[単層カーボンナノチューブの直径の算出]
各例に用いた単層カーボンナノチューブそれぞれの直径を下記のようにして評価した。すなわち、単層カーボンナノチューブそれぞれの532nm励起光でのラマンスペクトルを測定し(励起波長532nm)、ラジアルブリージング(RBM)モードのシフト ω(RBM)(cm−1)より、下記算出式を用いて、直径を算出した。結果を表2に示す。
算出式:直径(nm)=248/ω(RBM)
[単層カーボンナノチューブのG/D比の算出]
532nmの励起光にてラマンスペクトルを測定し、各単層カーボンナノチューブのGバンド(1590cm−1付近、グラフェン面内振動)とDバンド(1350cm−1付近、sp炭素ネットワークの欠陥由来)の強度比G/D比を算出した。この強度比G/D比が大きいと、カーボンナノチューブの欠陥が少ないことを、示す。結果を表2に示す。
Figure 0005960178
Figure 0005960178
表1に示されるように、高速旋回薄膜分散法により調製した試料No.101〜104、107〜115の熱電変換層用分散物は、CNTが分断等せずに、粘度が高く、分散性も良好であり、チキソトロピー性にも優れていた。そのため、成膜性および印刷性が良好であった。したがって、試料No.101〜104、107〜115の熱電変換素子は導電性および熱電性能が優れていた。
熱電変換層用分散物の固形分濃度が濃くなると、粘度およびチキソトロピー性などが次第に高くなって、成膜性、好ましくは成形性、熱電変換性能が向上した。
具体的には、試料No.101よりも固形分濃度が濃い試料No.102、104、107および108は、粘度が高くかつ分散性のよいペーストであったため、成膜性がさらに良好であった。特に、固形分濃度が最も濃い試料No.104は、チキソトロピー性がさらに高く印刷時の成形性に優れるため成膜性が良化し、また、熱電変換性能もさらに優れていた。
また、表1および表2より、長さが1μmより大きく、直径が1.7〜2.0nmで、G/D比が33である単層カーボンナノチューブ「MC」を用いた試料No.109および110は、それぞれ、単層カーボンナノチューブ「ASP−100F」を用いた試料No.101および102、ならびに、「HP」を用いた試料No.114および115よりも、成膜性が同等以上であった。そのため、導電率およびPFが優れ、熱起電力も同等以上であった。
一方、超音波ホモジナイザーにより調製した、固形分濃度が濃い試料No.c101は、超音波ホモジナイザーでは満足な分散が不可能であったため成膜できず、熱電変換性能などの評価ができなかった。

実施例
1.熱電変換用分散物201および熱電変換層201の調製ならびに熱電変換素子201の製造
熱電変換層用分散物101の調製において、ナノ導電性物質として単層カーボンナノチューブの代わりに多層カーボンナノチューブ「VGCF−X」(商品名、平均直径150nm、平均長さ10〜20μm、昭和電工社製)を用いたこと以外は熱電変換層用分散物101と同様にして予備混合物201(固形分濃度は1.0w/v%(CNT含有率は50質量%))および熱電変換層用分散物201(固形分濃度は1.0w/v%(CNT含有率は50質量%))を調製した。
また、熱電変換層101の調製および熱電変換素子101の製造において、熱電変換層用分散物101に代えて熱電変換層用分散物201を用いて、熱電変換層101および熱電変換素子101と同様にして熱電変換層201を調製し、熱電変換素子201を製造した。
2.熱電変換用分散物202および熱電変換層202の調製ならびに熱電変換素子202の製造
熱電変換層用分散物101の調製において、ナノ導電性物質として単層カーボンナノチューブの代わりにカーボンブラック「#3400B」(銘柄名、直径23nm、三菱化学社製)を用いたこと以外は熱電変換層用分散物101と同様にして予備混合物202(固形分濃度は1.0w/v%(CNT含有率は50質量%))および熱電変換層用分散物202(固形分濃度は1.0w/v%(CNT含有率は50質量%))を調製した。
また、熱電変換層101の調製および熱電変換素子101の製造において、熱電変換層用分散物101に代えて熱電変換層用分散物202を用いて、熱電変換層101および熱電変換素子101と同様にして熱電変換層202を調製し、熱電変換素子202を製造した。
3.熱電変換用分散物c201および熱電変換層c201の調製ならびに熱電変換素子c201の製造
熱電変換層用分散物c101の調製において、ポリ(3−オクチルチオフェン−2,5−イル)を100mg用い、ナノ導電性物質として単層カーボンナノチューブの代わりに多層カーボンナノチューブ「VGCF−X」(商品名、昭和電工社製)を100mg用いたこと以外は熱電変換層用分散物c101と同様にして、予備混合物c201(固形分濃度は1.0w/v%(CNT含有率は50質量%))および熱電変換層用分散物c201(固形分濃度は1.0w/v%(CNT含有率は50質量%))を調製した。
また、熱電変換層101の調製および熱電変換素子101の製造において、熱電変換層用分散物101に代えて熱電変換層用分散物c201を用いて、熱電変換層101および熱電変換素子101と同様にして熱電変換層c201を調製し、熱電変換素子c201を製造した。
4.熱電変換用分散物c202および熱電変換層c202の調製ならびに熱電変換素子c202の製造
熱電変換層用分散物c201の調製において、ナノ導電性物質として多層カーボンナノチューブの代わりにカーボンブラック「#3400B」(銘柄名、直径23nm、三菱化学社製)を用いたこと以外は熱電変換層用分散物c201と同様にして、予備混合物c202(固形分濃度は1.0w/v%(CNT含有率は50質量%))および熱電変換層用分散物c202(固形分濃度は1.0w/v%(CNT含有率は50質量%))を調製した。
また、熱電変換層c201の調製および熱電変換素子c201の製造において、熱電変換層用分散物c201に代えて熱電変換層用分散物c202を用いて、熱電変換層c201および熱電変換素子c201と同様にして熱電変換層c202を調製し、熱電変換素子c202を製造した。
このようにして調製した熱電変換層用分散物201、202、c201およびc202の粘度、分散性およびチキソトロピー性を実施例1と同様にして評価した。
また、各熱電変換層201および202の成膜性、導電率および熱電性能、ならびに、各熱電変換素子201および202の熱起電力を実施例1と同様にして評価した。
結果を表3に示す。
Figure 0005960178
表3に示されるように、高速旋回薄膜分散法により調製した試料No.201および202は、製膜が可能であった。
一方、メカニカルホモジナイザーおよび超音波ホモジナイザーにより調製した試料No.c201およびc202は、試料No.201および202と比較して分散性が悪く、成膜性に劣り、均質な膜が得られなかった。そのため、表面抵抗率と熱電性能の測定ができず、導電率、PFおよび熱起電力を評価できなかった。
実施例3
1.熱電変換層用分散物301および熱電変換層301の調製ならびに熱電変換素子301の製造
分散剤としてポリ(3−オクチルチオフェン−2,5−イル)の代りに1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート100mgを用いたこと以外は試料No.101と同様にして熱電変換層用分散物301および熱電変換層301を調製し、熱電変換素子301を製造した。
このようにして調製した、本発明の熱電変換層用分散物301の分散性を実施例1と同様にして評価した。
また、各熱電変換層301の成膜性、強度比[Id/Ig]、導電率および熱電性能、ならびに、各熱電変換素子301の熱起電力を、実施例1と同様にして、または下記方法により、評価した。
なお、熱電変換層301のPFおよび熱電変換素子301の熱起電力を、熱電変換層101のPFおよび熱電変換素子101の熱起電力に対する相対値として、求めた。
結果を表4に示す。
[強度比[Id/Ig]]
熱電変換層用分散物の強度比[Id/Ig]として、上述のG/D比の算出と同様にしてラマンスペクトルを測定し、熱電変換層中の単層カーボンナノチューブのGバンドとDバンドの強度比[Id/Ig]を算出した。この強度比[Id/Ig]が小さいと、カーボンナノチューブの欠陥が少なく、分散時のダメージが小さいことを、示す。
Figure 0005960178
表4に示されるように、高速旋回薄膜分散法により調製した試料No.301は、分散性も良好であり、そのため成膜性が良好であった。また、強度比[Id/Ig]が小さく分散物へのダメージが小さく、そのため導電率が大きく、熱電性能が良好であった。
実施例4
1.熱電変換層用分散物401〜406の調製
熱電変換層用分散物101の調製において、ポリ(3−オクチルチオフェン−2,5−イル)と、単層カーボンナノチューブ「ASP−100F」(商品名、Hanwha−chemical社製)の質量比を表5に記載のとおりに変更したこと以外は熱電変換層用分散物101と同様にして熱電変換層用分散物401〜406を調製した。
2.熱電変換層401〜406の調製および熱電変換素子401〜406の製造
熱電変換層101の調製および熱電変換素子101の製造において、熱電変換層用分散物101に代えて熱電変換層用分散物401〜406を用いて、それぞれ、熱電変換層101および熱電変換素子101と同様にして、熱電変換層401〜406を調製し、熱電変換素子401〜406を製造した。
なお、試料No.403は試料No.101と同じである。
調製した熱電変換層用分散物401〜406の粘度、平均粒径D、分散性およびチキソトロピー性を実施例1と同様にして評価した。
また、熱電変換層401〜406の成膜性、導電率および熱電性能、ならびに、熱電変換素子401〜406の熱起電力を実施例1と同様にして評価した。なお、各試料のチキソトロピー性、熱電性能および熱起電力を試料No.101のそれに対する相対値として、求めた。
結果を表5に示す。
Figure 0005960178
表5に示されるように、試料No.401〜406は、いずれも、CNTが分断等しにくく、分散性および成膜性が優れていた。熱電変換層用分散物の固形分中のCNTの質量比が10以上(含有率10質量%以上)である試料No.401〜405、特に50以上(含有率50質量%以上)である試料No.403〜405は、粘度が高く成膜性に優れ、そのため、導電率および熱電性能にも優れていた。
実施例5
1.熱電変換層用分散物501の調製
ポリ(3−オクチルチオフェン−2,5−イル)90mg、非共役高分子としてポリスチレン(表6において「PPS」と表記する)20mg(重合度2000、和光純薬製)、o−ジクロロベンゼン20mLを加え、超音波洗浄機「US−2」(商品名、井内盛栄堂(株)製、出力120W、間接照射)を用いて完溶させた。次いで、単層カーボンナノチューブ「ASP−100F」(商品名、Hanwha−chemical社製)90mg加えて、メカニカルホモジナイザー「T10basic」(IKA社製)を用いて予備混合して、予備混合物501を得た。この予備混合物501の固形分濃度は1.0w/v%(CNT含有率は45質量%)であった。
次に、この予備混合物501を、薄膜旋回型高速ミキサー「フィルミックス40−40型」(商品名、プライミクス社製)を用いて、10℃の恒温層中にて周速40m/secにて5分間分散し、熱電変換層用分散物501を調製した。
2.熱電変換層用分散物502の調製
熱電変換層用分散物501の調製において、ポリ(3−オクチルチオフェン−2,5−イル)と、単層カーボンナノチューブ「HP」と、ポリスチレンとの質量比を表6の記載のとおりに変更したこと以外は熱電変換層用分散物501と同様にして熱電変換層用分散物502(CNT含有率は25質量%)を調製した。
3.熱電変換層501および502の調製ならびに熱電変換素子501および502の製造
熱電変換層101の調製および熱電変換素子101の製造において、熱電変換層用分散物101に代えて熱電変換層用分散物501および502を用いて、それぞれ、熱電変換層101および熱電変換素子101と同様にして熱電変換層501および502を調製し、熱電変換素子501および502を製造した。
調製した熱電変換層用分散物501および502の粘度、平均粒径D、分散性およびチキソトロピー性を実施例1と同様にして評価した。
また、熱電変換層501および502の成膜性、導電率および熱電性能、ならびに、熱電変換素子501および502の熱起電力を実施例1と同様にして評価した。なお、各試料のチキソトロピー性、熱電性能および熱起電力を試料101のそれに対する相対値として、求めた。
結果を表6に示す。
Figure 0005960178
表6に示されるように、非共役高分子を用いた試料No.501および502は、CNTが分断等しにくく、分散性および成膜性に優れていた。特に、熱電変換層用分散物の固形分中の非共役高分子の質量比が10(含有率10質量%)である試料No.501は、導電率も良好であり、熱電性能にも優れていた。
実施例6
1.熱電変換層用分散物601の調製
ポリ(3−オクチルチオフェン−2,5−イル)100mgと、単層カーボンナノチューブ「ASP−100F」(商品名、Hanwha−chemical社製)100mgと、o−ジクロロベンゼン20mLを加えて、メカニカルホモジナイザー「T10basic」(商品名、IKA社製)を用いて予備混合して、予備混合物601を得た。この予備混合物601の固形分濃度は1.0w/v%(CNT含有率は50質量%)であった。次に、予備混合物601を、薄膜旋回型高速ミキサー「フィルミックス40−40型」(商品名、プライミクス社製)を用いて、10℃の恒温層中にて周速25m/secにて5分間超音波分散し、熱電変換層用分散物601を調製した。
2.熱電変換層用分散物602の調製
熱電変換層用分散物601の調製において、薄膜旋回型高速ミキサー「フィルミックス40−40型」の周速を10m/secに変更したこと以外は熱電変換層用分散物601と同様にして熱電変換層用分散物602を調製した。
3.熱電変換層601および602の調製ならびに熱電変換素子601および602の製造
熱電変換層101の調製および熱電変換素子101の製造において、熱電変換層用分散物101に代えて熱電変換層用分散物601および602を用いて、それぞれ、熱電変換層101および熱電変換素子101と同様にして、熱電変換層601および602を調製し、熱電変換素子601および602を製造した。
調製した熱電変換層用分散物601および602の粘度、平均粒径D、分散性およびチキソトロピー性を実施例1と同様にして評価した。
また、熱電変換層601および602の成膜性、導電率および熱電性能、ならびに、熱電変換素子601および602の熱起電力を実施例1と同様にして評価した。なお、各試料のチキソトロピー性、熱電性能および熱起電力を試料101のそれに対する相対値として、求めた。結果を表7に示す。
Figure 0005960178
表7に示されるように、試料No.101、601および602は、いずれも、CNTが分断等しにくく、分散性および成膜性が優れていた。特に、高速旋回薄膜分散法における周速が大きい試料No.101および試料No.601は、成膜性に優れており、結果として導電率および熱電性能も高かった。
実施例7
1.熱電変換層用分散物701の調製
単層カーボンナノチューブ「MC」(商品名、名城ナノカーボン社製)10mgと、TCNQ(東京化成社製)4mgと、o−ジクロロベンゼン20mLを加え、メカニカルホモジナイザー「T10basic」(IKA社製)を用いて、20℃で15分間、予備混合して、1μmのメンブレンフィルタでろ過し、カーボンナノチューブ−TCNQ混合物を得た。この操作を5回繰り返し集約することで、約50mgの組成物701を得た。
次いで、組成物701 50mgと、ポリ(3−オクチルチオフェン−2,5−イル)50mgとに、o−ジクロロベンゼン20mLを加えて、さらにメカニカルホモジナイザー「T10basic」(IKA社製)を用いて、20℃で15分間、予備混合して、予備混合物701を得た。この予備混合物701の固形分濃度は0.5w/v%であった。
次いで、この予備混合物701を、薄膜旋回型高速ミキサー「フィルミックス40−40型」を用いて、10℃の恒温層中、周速40m/secにて5分間高速旋回薄膜分散法にて分散処理し、本発明の熱電変換層用分散物701を調製した。この熱電変換層用分散物701の固形分濃度は0.5w/v%であった。
2.熱電変換層用分散物702の調製
単層カーボンナノチューブ「MC」(商品名、名城ナノカーボン社製)10mgとトリフェニルホスフィン(和光純薬製、以下、TPPとも表記)50mgと、シクロヘキサノン20mLを加え、メカニカルホモジナイザー「T10basic」(IKA社製)を用いて、20℃で15分間、予備混合して、1μmのメンブレンフィルタでろ過し、カーボンナノチューブ−TPP混合物を得た。この操作を5回繰り返し集約することで、約50mgの組成物702を得た。
ついで、組成物702 50mgと、ポリスチレン50mgとに、シクロヘキサノン20mLを加えて、さらにメカニカルホモジナイザー「T10basic」(IKA社製)を用いて、20℃で15分間、予備混合して、予備混合物702を得た。この予備混合物702の固形分濃度は0.5w/v%であった。
次いで、この予備混合物702を、薄膜旋回型高速ミキサー「フィルミックス40−40型」を用いて、10℃の恒温層中、周速40m/secにて5分間高速旋回薄膜分散法にて分散処理し、本発明の熱電変換層用分散物702を調製した。この熱電変換層用分散物702の固形分濃度は0.5w/v%であった。
3.熱電変換層701および702の調製ならびに熱電変換素子701および702の製造
熱電変換層101の調製および熱電変換素子101の製造において、熱電変換層用分散物101に代えて熱電変換層用分散物701および702を用いて、それぞれ、熱電変換層101および熱電変換素子101と同様にして、熱電変換層701および702を調製し、熱電変換素子701および702を製造した。
調製した熱電変換層用分散物701および702の分散性を実施例1と同様にして評価し、極性を確認した。
また、熱電変換層701および702の成膜性、導電率および熱電性能、ならびに、熱電変換素子701および702の熱起電力を実施例1と同様にして評価した。なお、各試料の熱電性能および熱起電力を試料109のそれに対する相対値として、求めた。
結果を表8に示す。
Figure 0005960178
表8から明らかなように、高速旋回薄膜分散法により調製し、かつドーパントを用いた試料No.701および702は、CNTが分断等しにくく、分散性、成膜性に優れ、かつ導電率にも優れていた。また、非共役高分子とn型ドーパントを用いた試料No.702においては、用いない場合と比較して、極性がp型からn型に変換された。
実施例8
1.熱電変換層用分散物801および熱電変換層801の調製ならびに熱電変換素子801の製造
熱電変換層用分散物101の調製において、ポリ(3−オクチルチオフェン−2,5−イル)の代わりにポリスチレン(和光純薬製、重合度2000)、および、単層カーボンナノチューブ「ASP−100F」の代わりに「HP」を、ぞれぞれ、100mg用いたこと以外は熱電変換層用分散物101と同様にして予備混合物801(固形分濃度は1.0w/v%(CNT含有率は50質量%))および熱電変換層用分散物801(固形分濃度は1.0w/v%(CNT含有率は50質量%))を調製した。
また、熱電変換層101の調製および熱電変換素子101の製造において、熱電変換層用分散物101に代えて熱電変換層用分散物801を用いて、熱電変換層101および熱電変換素子101と同様にして熱電変換層801を調製し、熱電変換素子801を製造した。
2.熱電変換層用分散物802および熱電変換層802の調製ならびに熱電変換素子802の製造
熱電変換層用分散物801の調製において、ポリスチレン(和光純薬製、重合度2000)の代わりに2−ビニルナフタレン(Aldrich製、分子量175,000)を100mg用いたこと以外は熱電変換層用分散物801と同様にして予備混合物802(固形分濃度は1.0w/v%(CNT含有率は50質量%))および熱電変換層用分散物802(固形分濃度は1.0w/v%(CNT含有率は50質量%))を調製した。
また、熱電変換層101の調製および熱電変換素子101の製造において、熱電変換層用分散物101に代えて熱電変換層用分散物802を用いて、熱電変換層101および熱電変換素子101と同様にして熱電変換層802を調製し、熱電変換素子802を製造した。
3.熱電変換層用分散物803および熱電変換層803の調製ならびに熱電変換素子803の製造
熱電変換層用分散物801の調製において、ポリスチレン(和光純薬製、重合度2000)の代わりにPC−Z型ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、パンライトTS−2020)を100mg用いたこと以外は熱電変換層用分散物801と同様にして予備混合物802(固形分濃度は1.0w/v%(CNT含有率は50質量%))および熱電変換層用分散物802(固形分濃度は1.0w/v%(CNT含有率は50質量%))を調製した。
また、熱電変換層101の調製および熱電変換素子101の製造において、熱電変換層用分散物101に代えて熱電変換層用分散物803を用いて、熱電変換層101および熱電変換素子101と同様にして熱電変換層803を調製し、熱電変換素子803を製造した。
調製した各熱電変換層用分散物801〜803の粘度、平均粒径D、分散性およびチキソトロピー性を実施例1と同様にして評価した。
また、各熱電変換層801〜803の成膜性、導電率および熱電性能、ならびに、各熱電変換素子801〜803の熱起電力を実施例1と同様にして評価した。なお、各試料のチキソトロピー性、熱電性能および熱起電力を試料114のそれに対する相対値として、求めた。結果を表9に示す。
Figure 0005960178
表9から明らかなように、高速旋回薄膜分散法により調製した試料No.801、802、803は、いずれも、CNTが分断等しにくく、分散性、成膜性に優れ、そのため導電率および熱電性能も高かった。
1、2 熱電変換素子
11、17 金属板
12、22 第1の基材
13、23 第1の電極
14、24 熱電変換層
15、25 第2の電極
16、26 第2の基材
31 基材
32 熱電変換層が形成される領域
33 バンク

Claims (15)

  1. 基材上に、第1の電極、熱電変換層および第2の電極を有する熱電変換素子の製造方法であって、
    少なくともナノ導電性材料および分散媒を予備混合して予備混合物を調製し、該予備混合物を高速旋回薄膜分散法に供して、ナノ導電性材料を含有する熱電変換層用分散物を調製する工程と、
    調製した熱電変換層用分散物を前記基材上に塗布し、乾燥する工程とを有し、
    前記熱電変換層用分散物の固形分濃度が、0.5〜20w/v%である熱電変換素子の製造方法。
  2. 前記予備混合物の固形分濃度が、15〜100質量%である請求項1に記載の熱電変換素子の製造方法。
  3. 前記熱電変換層用分散物の固形分中の前記ナノ導電性材料の含有率が、10質量%以上である請求項1または2に記載の熱電変換素子の製造方法。
  4. 前記熱電変換層用分散物の粘度が、10mPa・s以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱電変換素子の製造方法。
  5. 前記高速旋回薄膜分散法が、10〜40m/secの周速で行われる請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱電変換素子の製造方法。
  6. さらに分散剤を高速旋回薄膜分散法に供する請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱電変換素子の製造方法。
  7. 前記分散剤が、共役高分子である請求項6に記載の熱電変換素子の製造方法。
  8. さらに非共役高分子を高速旋回薄膜分散法に供する請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱電変換素子の製造方法。
  9. 前記ナノ導電性材料が、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、フラーレン、グラファイト、グラフェン、カーボンナノ粒子および金属ナノワイヤーからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱電変換素子の製造方法。
  10. 前記ナノ導電性材料が、カーボンナノチューブである請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱電変換素子の製造方法。
  11. 前記ナノ導電性材料が、単層カーボンナノチューブであり、該単層カーボンナノチューブの直径が1.5〜2.0nmであり、その長さが1μm以上であり、かつG/D比が30以上である請求項1〜10のいずれか1項に記載の熱電変換素子の製造方法。
  12. 前記熱電変換層用分散物を印刷法によって前記基材上に塗布する請求項1〜11のいずれか1項に記載の熱電変換素子の製造方法。
  13. 動的光散乱法で測定した、前記熱電変換層用分散物中の前記ナノ導電性材料の平均粒径Dが、1000nm以下である請求項1〜12のいずれか1項に記載の熱電変換素子の製造方法。
  14. 動的光散乱法で測定した、前記熱電変換層用分散物中の前記ナノ導電性材料の粒径分布の半値幅dDと平均粒径Dとの比[dD/D]が、5以下である請求項1〜13のいずれか1項に記載の熱電変換素子の製造方法。
  15. 熱電変換素子の熱電変換層を形成するための熱電変換層用分散物の製造方法であって
    少なくともナノ導電性材料および分散媒を予備混合して予備混合物を調製し、該予備混合物を高速旋回薄膜分散法に供して、ナノ導電性材料を分散媒に分散させ、
    前記熱電変換層用分散物の固形分濃度が、0.5〜20w/v%である熱電変換層用分散物の製造方法。
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