JP5984870B2 - 熱電変換素子、熱電変換層形成用組成物 - Google Patents

熱電変換素子、熱電変換層形成用組成物 Download PDF

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Description

本発明は、熱電変換素子、および、熱電変換層形成用組成物に関する。
熱エネルギーと電気エネルギーを相互に変換することができる熱電変換材料は、熱電発電素子やペルチェ素子のような熱電変換素子に用いられている。
このような熱電変換材料や熱電変換素子を応用した熱電発電は、熱エネルギーを直接電力に変換することができ、可動部を必要とせず、体温で作動する腕時計や僻地用電源、宇宙用電源等に用いられている。
例えば、特許文献1には、熱電変換材料としてカーボンナノチューブを使用する旨が開示されている。
特開2008−305831号公報
一方、近年、熱電変換素子が使用される機器の性能向上のために、熱電変換素子の熱電変換性能のより一層の向上が求められている。
本発明者らは、特許文献1に記載されるようなカーボンナノチューブを含む熱電変換層を備える熱電変換素子の熱電変換性能(性能指数ZT)について検討を行ったところ、昨今要求されるレベルを満たしておらず、更なる改良が必要であることを知見した。
本発明は、上記実情に鑑みて、熱電変換性能に優れた熱電変換素子を提供することを目的とする。
また、本発明は、熱電変換性能に優れた熱電変換層を形成することができる熱電変換層形成用組成物を提供することも目的とする。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、以下の構成により上記目的を達成することができることを見出した。
(1) 中空粒子と、
カーボンナノチューブおよび導電性高分子からなる群から選択される少なくとも1つと、を少なくとも含有する熱電変換層を備える熱電変換素子。
(2) 熱電変換層がカーボンナノチューブを含有する、(1)に記載の熱電変換素子。
(3) 中空粒子が非導電性有機材料で構成される、(1)または(2)に記載の熱電変換素子。
(4) 中空粒子の平均粒子径が1.0μm以下である、(1)〜(3)のいずれかに記載の熱電変換素子。
(5) 中空粒子の含有量が、熱電変換層の全質量に対して、10〜30質量%である、(1)〜(4)のいずれかに記載の熱電変換素子。
(6) 中空粒子と、カーボンナノチューブおよび導電性高分子からなる群から選択される少なくとも1つと、を少なくとも含有する熱電変換層形成用組成物。
(7) 少なくともカーボンナノチューブを含有する、(6)に記載の熱電変換層形成用組成物。
(8) 中空粒子が非導電性有機材料で構成される、(6)または(7)に記載の熱電変換層形成用組成物。
(9) 中空粒子の平均粒子径が1.0μm以下である、(6)〜(8)のいずれかに記載の熱電変換層形成用組成物。
本発明によれば、熱電変換性能に優れた熱電変換素子を提供することができる。
また、本発明によれば、熱電変換性能に優れた熱電変換層を形成することができる熱電変換層形成用組成物を提供することもできる。
本発明の熱電変換素子の一例を模式的に示す断面図である。図1中の矢印は素子の使用時に付与される温度差の方向を示す。 本発明の熱電変換素子の一例を模式的に示す断面図である。図2中の矢印は素子の使用時に付与される温度差の方向を示す。 本発明の熱電変換素子の一例(モジュール)を模式的に示す断面図である。
以下に、本発明の熱電変換素子および熱電変換層形成用組成物の好適態様について説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本発明の熱電変換素子および熱電変換層形成用組成物の特徴点の一つとしては、中空粒子と、カーボンナノチューブおよび導電性高分子からなる群から選択される少なくとも1つ(以後、これらの総称として「熱電変換有機材料」とも称する)とを併用している点が挙げられる。熱電変換層中に中空粒子が存在することにより、層中に中空粒子の中空部に由来する空隙(ボイド)が形成され、熱伝導率が低くなり、結果として熱電効率が向上する。さらに、熱電変換層中に中空粒子が含まれることに伴い、熱電変換層中での中空部分の占める体積が増加すると共に熱電変換有機材料の存在領域が限定され、熱電変換有機材料同士が高密度で凝集しやすくなる。結果として、少量の熱電変換有機材料で優れた導電性を確保することができ、かつ、熱伝導率の低下も促され、熱電効率が向上する。以下では、まず、熱電変換層形成用組成物に含まれる各成分について詳述し、その後、熱電変換素子について詳述する。
<熱電変換層形成用組成物(以後、単に「組成物」とも称する)>
熱電変換層形成用組成物には、中空粒子、および、熱電変換有機材料が少なくとも含有される。以下、それぞれの成分について詳述する。
(中空粒子)
中空粒子は、内部に空洞を有する粒子(中空部およびシェル部を有する粒子)であり、粒子内部に1個の空洞を有していてもよく、粒子内に複数の空洞を有していてもよい。また、中空粒子は、多孔性中空粒子であってもよい。
中空粒子の平均粒子径は特に制限されないが、熱電変換素子の熱電変換性能がより優れる点で、3.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることがより好ましく、0.1〜0.8μmであることがさらに好ましく、0.1〜0.5μmであることが特に好ましい。
なお、中空粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡(例えば、透過型電子顕微鏡)により、少なくとも10個の中空粒子を観察し、その粒子径(外径)を測定して、それらを算術平均して求める。なお、観察した粒子が真円状でない場合、その長径を粒子径(外径)とする。
中空粒子を構成する材料は特に制限されないが、熱電変換素子の熱電変換性能がより優れる点で、非導電性有機材料であることが好ましい。なお、非導電性有機材料とは、導電性を示さない有機材料(いわゆる、絶縁性有機材料)であり、例えば、非導電性樹脂(絶縁性樹脂)などが挙げられる。
なお、中空粒子としては、例えば、中空セラミック粒子、中空樹脂粒子などが挙げられる。中空セラミック粒子を構成するセラミック成分としては、例えば、珪酸ソーダガラス、アルミ珪酸ガラス、硼珪酸ソーダガラス、フライアッシュ、アルミナ、シラス、黒曜石などが挙げられる。中空樹脂粒子を構成する樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル−スチレン共重合樹脂、アクリル−アクリロニトリル共重合樹脂、アクリル−スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂、アクリロニトリル−メタアクリロニトリル共重合樹脂、アクリル−アクリロニトリル−メタアクリロニトリル共重合樹脂、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合樹脂などが挙げられる。
なお、組成物中に含まれる中空粒子としては、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(熱電変換有機材料)
熱電変換有機材料は、熱電変換能を示す有機材料であり、本発明においては、カーボンナノチューブおよび導電性高分子からなる群から選択される少なくとも1つを含む。熱電変換層には、カーボンナノチューブおよび導電性高分子のいずれか一方のみが含まれていても、両方が含まれていてもよい。なかでも、熱電変換素子の熱電変換性能がより優れる点で、熱電変換層は少なくともカーボンナノチューブを含むことが好ましい。
以後、カーボンナノナノチューブおよび導電性高分子に関してそれぞれ詳述する。
(カーボンナノチューブ(以後、CNTとも称する))
CNTは、主に本発明においては熱電変換材料として機能する。
CNTには、1枚の炭素膜(グラフェン・シート)が円筒状に巻かれた単層CNT、2枚のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた2層CNT、および複数のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた多層CNTがある。本発明においては、単層CNT、2層CNT、多層CNTを各々単独で用いてもよく、2種以上を併せて用いてもよい。特に、導電性および半導体性において優れた性質を持つ単層CNTおよび2層CNTを用いることが好ましく、単層CNTを用いることがより好ましい。
単層CNTは、半導体性のものであっても、金属性のものであってもよく、両者を併せて用いてもよい。半導体性CNTと金属性CNTとを両方を用いる場合、組成物中の両者の含有比率は、組成物の用途に応じて適宜調整することができる。また、CNTには金属などが内包されていてもよく、フラーレン等の分子が内包されたものを用いてもよい。なお、本発明の組成物には、CNTの他に、カーボンナノホーン、カーボンナノコイル、カーボンナノビーズなどのナノカーボンが含まれてもよい。
CNTはアーク放電法、化学気相成長法(以下、CVD法という)、レーザー・アブレーション法等によって製造することができる。本発明に用いられるCNTは、いずれの方法によって得られたものであってもよいが、好ましくはアーク放電法またはCVD法により得られたものである。
CNTを製造する際には、同時にフラーレンやグラファイト、非晶性炭素が副生成物として生じ、また、ニッケル、鉄、コバルト、イットリウムなどの触媒金属も残存する。これらの不純物を除去するために、精製を行うことが好ましい。CNTの精製方法は特に限定されないが、硝酸、硫酸等による酸処理、超音波処理が不純物の除去には有効である。併せて、フィルターによる分離除去を行うことも、純度を向上させる観点からより好ましい。
精製の後、得られたCNTをそのまま用いることもできる。また、CNTは一般に紐状で生成されるため、用途に応じて所望の長さにカットして用いてもよい。
CNTの平均長さは特に限定されないが、取扱い性に優れ、熱電変換素子の熱電変換性能がより優れる点で、0.01〜1000μmであることが好ましく、0.1〜100μmであることがより好ましい。
CNTの直径は特に限定されないが、耐久性、透明性、成膜性、導電性などの観点から、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることがさらに好ましい。なお、下限は特に制限されないが、通常、0.4nm以上の場合が多い。
(導電性高分子)
導電性高分子として、具体的には、共役系の分子構造を有する高分子化合物を用いることができる。ここで、共役系の分子構造を有する高分子(共役系高分子)とは、高分子の主鎖上の炭素−炭素結合において、一重結合と二重結合とが交互に連なる構造を有している高分子である。
このような共役系高分子としては、チオフェン系化合物、ピロール系化合物、アニリン系化合物、アセチレン系化合物、p−フェニレン系化合物、p−フェニレンビニレン系化合物、p−フェニレンエチニレン系化合物、p−フルオレニレンビニレン系化合物、ポリアセン系化合物、ポリフェナントレン系化合物、金属フタロシアニン系化合物、p−キシリレン系化合物、ビニレンスルフィド系化合物、m−フェニレン系化合物、ナフタレンビニレン系化合物、p−フェニレンオキシド系化合物、フェニレンスルフィド系化合物、フラン系化合物、セレノフェン系化合物、アゾ系化合物、金属錯体系化合物、およびこれらの化合物に置換基を導入した誘導体などをモノマーとし、当該モノマーから誘導される繰り返し単位を有する共役系高分子が挙げられる。
上記の誘導体に導入される置換基としては特に制限はないが、他の成分との相溶性、溶媒の種類などを考慮して、組成物中での導電性高分子の分散性や溶解性を高めうる基を適宜選択して導入することが好ましい。
一例として、組成物に溶媒が含まれ、溶媒として有機溶媒を用いる場合、直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基のほか、アルコキシアルキレンオキシ基、アルコキシアルキレンオキシアルキル基、クラウンエーテル基、アリール基などを好ましく用いることができる。これらの基は、さらに置換基を有してもよい。また、置換基の炭素数に特に制限はないが、好ましくは1〜12個、より好ましくは4〜12個であり、特に炭素数6〜12個の長鎖のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシアルキレンオキシ基、アルコキシアルキレンオキシアルキル基が好ましい。
組成物に溶媒が含まれ、溶媒として水系の媒体を用いる場合は、各モノマーの末端または上記置換基にさらに、カルボン酸基、スルホン酸基、水酸基、リン酸基などの親水性基を導入することが好ましい。
他にも、ジアルキルアミノ基、モノアルキルアミノ基、アミノ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、カルバメート基、ニトロ基、シアノ基、イソシアネート基、イソシアノ基、ハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基などを置換基として導入することができ、好ましい。
導入されうる置換基の数も特に制限されず、導電性高分子の分散性や相溶性、導電性などを考慮して、1個または複数個の置換基を適宜導入することができる。
チオフェン系化合物およびその誘導体から誘導される繰り返し単位を有する共役系高分子としては、ポリチオフェン、チオフェン環に置換基が導入されたモノマーから誘導される繰り返し単位を含む共役系高分子、および、チオフェン環を含む縮合多環構造を有するモノマーから誘導される繰り返し単位を含む共役系高分子が挙げられる。
チオフェン環に置換基が導入されたモノマーから誘導される繰り返し単位を含む共役系高分子としては、ポリ−3−メチルチオフェン、ポリ−3−ブチルチオフェン、ポリ−3−ヘキシルチオフェン、ポリ−3−シクロヘキシルチオフェン、ポリ−3−(2’−エチルヘキシル)チオフェン、ポリ−3−オクチルチオフェン、ポリ−3−ドデシルチオフェン、ポリ−3−(2’−メトキシエトキシ)メチルチオフェン、ポリ−3−(メトキシエトキシエトキシ)メチルチオフェンなどのポリ−アルキル置換チオフェン類、ポリ−3−メトキシチオフェン、ポリ−3−エトキシチオフェン、ポリ−3−ヘキシルオキシチオフェン、ポリ−3−シクロヘキシルオキシチオフェン、ポリ−3−(2’−エチルヘキシルオキシ)チオフェン、ポリ−3−ドデシルオキシチオフェン、ポリ−3−メトキシ(ジエチレンオキシ)チオフェン、ポリ−3−メトキシ(トリエチレンオキシ)チオフェン、ポリ−(3,4−エチレンジオキシチオフェン)などのポリ−アルコキシ置換チオフェン類、ポリ−3−メトキシ−4−メチルチオフェン、ポリ−3−ヘキシルオキシ−4−メチルチオフェン、ポリ−3−ドデシルオキシ−4−メチルチオフェンなどのポリ−3−アルコキシ置換−4−アルキル置換チオフェン類、ポリ−3−チオヘキシルチオフェン、ポリ−3−チオオクチルチオフェン、ポリ−3−チオドデシルチオフェンなどのポリ−3−チオアルキルチオチオフェン類などが挙げられる。
なかでも、ポリ−3−アルキルチオフェン類、ポリ−3−アルコキシチオフェン類が好ましい。3位に置換基を有するポリチオフェンに関しては、チオフェン環の2,5位での結合の向きにより異方性が生じる。3−置換チオフェンの重合において、チオフェン環の2位同士が結合したもの(HH結合体:head−to−head)、2位と5位が結合したもの(HT結合体:head−to−tail)、5位同士が結合したもの(TT結合体:tail−to−tail)の混合物になるが、2位と5位が結合したもの(HT結合体)の割合が多いほど、重合体主鎖の平面性が向上し、ポリマー間のπ−πスタッキング構造を形成しやすく、電荷の移動を容易にする上で好ましい。これら結合様式の割合は、H−NMRにより測定することができる。チオフェン環の2位と5位が結合したHT結合体の重合体中における割合は50質量%以上が好ましく、さらに好ましくは70質量%以上、特に90質量%以上のものが好ましい。
より具体的に、チオフェン環に置換基が導入されたモノマーから誘導される繰り返し単位を含む共役系高分子、および、チオフェン環を含む縮合多環構造を有するモノマーから誘導される繰り返し単位を含む共役系高分子として、下記の化合物が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
ピロール系化合物およびその誘導体から誘導される繰り返し単位を有する共役系高分子、アニリン系化合物およびその誘導体から誘導される繰り返し単位を有する共役系高分子、アセチレン系化合物およびその誘導体から誘導される繰り返し単位を有する共役系高分子、p−フェニレン系化合物およびその誘導体から誘導される繰り返し単位を有する共役系高分子、p−フェニレンビニレン系化合物およびその誘導体から誘導される繰り返し単位を有する共役系高分子、p−フェニレンエチニレン系化合物およびその誘導体から誘導される繰り返し単位を有する共役系高分子、並びに、上記以外の化合物およびその誘導体から誘導される繰り返し単位を有する共役系高分子としては、特開2012−251132の段落0021〜段落0034に記載の高分子が挙げられる。
上記共役系高分子のなかでも、直鎖状の共役系高分子を用いることが好ましい。このような直鎖状の共役系高分子は、例えば、ポリチオフェン系高分子、ポリピロール系高分子の場合、各モノマーのチオフェン環またはピロール環が、それぞれ2,5位で結合することにより得られる。ポリ−p−フェニレン系高分子、ポリ−p−フェニレンビニレン系高分子、ポリ−p−フェニレンエチニレン系高分子では、各モノマーのフェニレン基がパラ位(1,4位)で結合することにより得られる。
本発明で用いる導電性高分子は、上述の繰り返し単位(以下、この繰り返し単位を与えるモノマーを「第1のモノマー(群)」とも称する)を1種単独で有しても、2種以上を組み合わせて有していてもよい。また、第1のモノマーに加えて、他の構造を有するモノマー(以下、「第2のモノマー」と称する)から誘導される繰り返し単位を、併せて有していてもよい。複数種の繰り返し単位からなる高分子の場合、ブロック共重合体であっても、ランダム共重合体であっても、グラフト重合体であってもよい。
上記第1のモノマーと併用される、他の構造を有する第2のモノマーとしては、フルオレニレン基、カルバゾール基、ジベンゾ[b,d]シロール基、チエノ[3,2−b]チオフェン基、チエノ[2,3−c]チオフェン基、ベンゾ[1,2−b;4,5−b’]ジチオフェン基、シクロペンタ[2,1−b;3,4−b’]ジチオフェン基、ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4(2H,5H)−ジオン基、ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール−4,8−ジイル基、アゾ基、1,4−フェニレン基、5H−ジベンゾ[b、d]シロール基、チアゾール基、イミダゾール基、ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4(2H、5H)−ジオン基、オキサジアゾール基、チアジアゾール基、トリアゾール基等を有する化合物、およびこれらの化合物にさらに置換基を導入した誘導体などが挙げられる。導入する置換基としては、上述した置換基と同様のものが挙げられる。
本発明で用いる導電性高分子は、第1のモノマー群から選択された1種または複数種のモノマーから誘導される繰り返し単位を導電性高分子中、合計で50質量%以上有していることが好ましく、70質量%以上有していることがより好ましく、第1のモノマー群から選択された1種または複数種のモノマーから誘導される繰り返し単位のみからなることが更に好ましい。特に好ましくは、第1のモノマー群から選択された単一の繰り返し単位のみからなる共役系高分子である。
第1のモノマー群のなかでも、チオフェン系化合物および/またはその誘導体から誘導される繰り返し単位を含むポリチオフェン系高分子がより好ましく用いられる。特に、下記の構造式(1)〜(5)で表されるチオフェン環、または、チオフェン環含有縮合芳香環構造を繰り返し単位として有するポリチオフェン系高分子が好ましい。
上記構造式(1)〜(5)中、R〜R13はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、ポリアルキレンオキシ基、アシルオキシ基またはアルキルオキシカルボニル基を表し、Yは炭素原子、窒素原子またはケイ素原子を表し、nは1または2の整数を表す。また*は、各繰り返し単位の連結部位を表す。
〜R13において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子が好ましい。
アルキル基には直鎖、分岐、環状のアルキル基が含まれ、炭素数1〜14のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ペンチル基、t−アミル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシルなどが挙げられる。
アルコキシ基としては、炭素数1〜14のアルコキシ基が好ましく、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、s−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、t−アミルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、テトラデシルオキシなどが挙げられる。
フルオロアルキル基としては、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基が好ましく、具体的には、CF基、CFCF基、n−C基、i−C基、n−C基、t−C基、s−C基、n−C11基、CFCFC(CF基、n−C13基、C17基、C19基、C1021基、CF(CFCH基、CF(CFCH基、CF(CFCHCH基などが挙げられる。
フルオロアルコキシ基としては、炭素数1〜10のパーフルオロアルコキシ基が好ましく、具体的には、CFO基、CFCFO基、n−CO基、i−CO基、n−CO基、t−CO基、s−CO基、n−C11O基、CFCFC(CFO基、n−C13O基、C17O基、C19O基、C1021O基、CF(CFCHO基、CF(CFCHO基、CF(CFCHCHO基などが挙げられる。
アミノ基はアルキルアミノ基およびアリールアミノ基を含み、炭素数0〜16のアミノ基が好ましく、具体的には、アミノ基、モノエチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モノヘキシルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジオクチルアミノ基、モノドデシルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジキシリルアミノ基、ジトリルアミノ基、モノフェニルアミノ基などが挙げられる。
アルキルチオ基としては、炭素数1〜14のアルキルチオ基が好ましく、具体的には、CHS基、CHCHS基、n−CS基、i−CS基、n−CS基、t−CS基、s−CS基、n−C11S基、CHCHC(CHS基、n−C13S基、c−C11S基、CH(CHCHCHS基、C13S基、C17S基、C19S基、C1021S基、2−エチルヘキシルチオ基などが挙げられる。
ポリアルキレンオキシ基としては、炭素数3〜20のポリアルキレンオキシ基が好ましく、具体的にはポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基などが挙げられる。
アシルオキシ基としては、炭素数1〜14のアシルオキシ基が好ましく、具体的には、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基などが挙げられる。
アルキルオキシカルボニル基としては、炭素数1〜14のアルキルオキシカルボニル基が好ましく、具体的にはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基などが挙げられる。
これらの基は、さらに置換されていてもよい。
〜R13として好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、ポリアルキレンオキシ基、または水素原子であり、より好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ポリアルキレンオキシ基であり、特に好ましくはアルキル基、アルコキシ基、ポリアルキレンオキシ基である。
Yは、炭素原子または窒素原子であることが好ましく、炭素原子であることがより好ましい。
一般式(1)〜(5)で表される繰り返し単位として、具体的には上記で示したものの他に下記が例示できるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
導電性高分子の分子量は特に限定されず、高分子量(例えば、重量平均分子量10000超)のものはもちろん、オリゴマー(例えば、重量平均分子量1000〜10000程度)であってもよい。
高い導電性を実現する観点から、導電性高分子は、酸、光、熱に対して分解されにくいものが好ましい。高い導電性を得るためには、導電性高分子の長い共役鎖を介した分子内のキャリア伝達、および分子間のキャリアホッピングが必要となる。そのためには、導電性高分子の分子量がある程度大きいことが好ましく、この観点から、本発明で用いる導電性高分子の分子量は、重量平均分子量で1500以上であることが好ましく、5000以上であることがより好ましく、7000〜300,000であることがさらに好ましく、8000〜100,000であることが特に好ましい。当該重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定できる。
これらの導電性高分子は、構成単位である上記モノマーを通常の酸化重合法により重合させて製造できる。
また、市販品を用いることもでき、例えば、アルドリッチ社製のポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)レジオレギュラー品が挙げられる。
組成物中における熱電変換有機材料の含有量(カーボンナノチューブおよび導電性高分子の合計含有量)は特に制限されないが、熱電変換素子の熱電変換性能がより優れる点で、中空粒子100質量部に対して、50〜1000質量部が好ましく、50〜600質量部がより好ましく、100〜400質量部がさらに好ましい。
なお、熱電変換有機材料としてカーボンナノチューブを使用して、導電性高分子を使用しない場合は、カーボンナノチューブの含有量が上記範囲であるのが好ましい。また、熱電変換有機材料として導電性高分子を使用して、カーボンナノチューブを使用しない場合は、導電性高分子の含有量が上記範囲であるのが好ましい。
(その他成分(任意成分))
本発明の組成物は、上記中空粒子および熱電変換有機材料以外の他の成分を含んでいてもよい。
例えば、本発明の組成物は、溶媒を含有していてもよい。
溶媒は各成分を良好に分散または溶解できればよく、水、有機溶媒、およびこれらの混合溶媒を用いることができる。好ましくは有機溶媒であり、例えば、アルコール;クロロホルムなどのハロゲン系溶媒;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性の極性溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、テトラメチルベンゼン、ピリジンなどの芳香族系溶媒;シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケントンなどのケトン系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、t−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライムなどのエーテル系溶媒などが挙げられる。
本発明の組成物中における溶媒の含有量は特に制限されないが、取扱い性に優れる点で、組成物全質量に対して、90〜99.9質量%が好ましく、95〜99.9質量%がより好ましい。
また、本発明の組成物は、バインダーを含有していてもよい。熱電変換層にバインダーが含まれることにより、熱電変換層中における中空粒子および熱電変換有機材料の分散性がより一層向上する、および/または、組成物を塗布乾燥して得られる膜の性質がより丈夫となる。
バインダーの形状は特に制限されず、粒状(好ましくは樹脂粒子)であってもよい。例えば、ラテックスとして組成物中に含まれていてもよい。
使用されるバインダーの種類は特に制限されず、例えば、公知の樹脂バインダー(いわゆる高分子材料)が挙げられる。なお、高分子材料としては、例えば、従来公知の絶縁性高分子材料を用いることができる。
また、絶縁性高分子材料は、導電性を示さない高分子材料である。より具体的には、(メタ)アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シロキサン変性ポリイミド樹脂、ポリブタジエン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、ポリアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ナイロンなどが挙げられる。
本発明の組成物中におけるバインダーの含有量は特に制限されないが、塗布乾燥時の膜性により優れる点で、中空粒子100質量部に対して、50〜600質量部が好ましく、100〜400質量部がより好ましい。
また、組成物には、Pt、Au、Ag、Siなどのナノ粒子またはナノワイヤーなどの金属材料、BiTe、Bi0.3Sb1.7Te、MnSi、CoSb、ビスマス(Bi)、TiO、ZnOなどの無機の熱電変換材料が含まれていてもよい。それ以外にも、酸化防止剤、対光安定剤、耐熱安定剤、可塑剤、またはドーパントが含まれていてもよい。
また、組成物には、必要に応じて、カーボンナノチューブを分散するための分散剤が含まれていてもよい。使用できる分散剤としては、公知の分散剤を使用でき、具体的には、文献等で知られる、コール酸のような長鎖アルキルカルボン酸や、ビックケミー社の分散剤として、BYK140, 142, 145のようなアルキルアンモニウム塩構造を有している分散剤、BYK9076, 9077, 182, 161, 162, 163, 2163,2164のようなポリウレタン類、BYK190,191, 192, 193, 194などのように水系溶媒で使用して疎水性−疎水性相互作用で分散する分散剤、その他にBYK2000,2001,2020,2025を使用することができる。
なお、上述した導電性高分子も、カーボンナノチューブの分散剤として、使用することができる。
本発明の組成物は、上記の各成分を混合して調製することができる。調製方法は特に制限はなく、通常の混合装置を用いて常温常圧下で行うことができる。例えば、中空粒子および熱電変換有機材料を溶媒中で撹拌、振とう、または混練して、溶解または分散させて調製すればよい。溶解や分散を促進するため超音波処理を行ってもよい。
<熱電変換素子>
本発明の熱電変換素子は、上述した中空粒子と熱電変換有機材料とを含む熱電変換層を備えていれば、その構成は特に制限されない。なお、後述するように、熱電変換層は、上述した組成物を用いて形成することができる。
熱電変換素子の好ましい態様としては、基材(基板)と当該基材上に設けられた上記熱電変換層とを備えた素子であり、より好ましくは、これらを電気的に接続する電極をさらに有する素子であり、さらに好ましくは基材上に設けられた1対の電極と、該電極間に上記熱電変換層とを有する素子である。
本発明の熱電変換素子において、熱電変換層は1層であっても2層以上であってもよい。
以下では、本発明の熱電変換素子の好適態様の全体の構成について、本発明の熱電変換素子の一例を模式的に示す断面図である図1〜図3を用いて説明する。
図1に示す熱電変換素子10は、第1の基材11と、第1の電極12と、熱電変換層14と、第2の電極13と、第2の基材15とをこの順に有する素子である。
ここで、図1に示す熱電変換素子10は、矢印で示される方向の温度差を利用して起電力(電圧)を得る態様である。
また、図2に示す熱電変換素子20は、第1の基材21上の一部に第1の電極22および第2の電極23を有し、第1の基材21、第1の電極22および第2の電極23の上に、熱電変換層24と第2の基材25とをこの順に有する素子である。
ここで、図2に示す熱電変換素子20は、矢印で示される方向の温度差を利用して起電力(電圧)を得る態様である。
本発明においては、図3に示すように、互いに隣接する熱電変換素子30と共通の基材31を用い、一の熱電変換素子30における第2の電極33と、それと隣接する他の熱電変換素子30の第1の電極32とを電気的に接続することにより、各熱電変換素子30を直列で接続させたモジュール300としてもよい。
次に、本発明熱電変換素子が有する基材、電極および熱電変換層について詳述する。
(基材)
基材の種類は特に限定されないが、電極の形成や熱電変換層の形成時に影響を受けにくい基材を選択することが好ましい。
このような基材としては、例えば、ガラス、透明セラミックス、金属、プラスチックフィルム等が挙げられ、中でも、コストや柔軟性の観点から、プラスチックフィルムが好ましい。
プラスチックフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−フタレンジカルボキシレート、ビスフェノールAとイソおよびテレフタル酸とのポリエステルフィルムなどのポリエステルフィルム;ゼオノアフィルム(日本ゼオン社製)、アートンフィルム(JSR社製)、スミライトFS1700(住友ベークライト社製)などのポリシクロオレフィンフィルム;カプトン(東レ・デュポン社製)、アピカル(カネカ社製)、ユービレックス(宇部興産社製)、ポミラン(荒川化学社製)などのポリイミドフィルム;ピュアエース(帝人化成社製)、エルメック(カネカ社製)などのポリカーボネートフィルム;スミライトFS1100(住友ベークライト社製)などのポリエーテルエーテルケトンフィルム;トレリナ(東レ社製)などのポリフェニルスルフィドフィルムなどが挙げられる。
これらのうち、入手の容易性、100℃以上の耐熱性、経済性および効果の観点から、市販のポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、各種ポリイミドやポリカーボネートフィルムが好ましい。
本発明においては、基材の厚さは使用目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、プラスチックフィルムを用いた場合には、一般的には、5〜500μmのものを用いることが好ましい。また、ガラス基板を用いた場合には、一般的には、5mm〜100μmのものを用いることが好ましく、1.5mm〜200μmのものを用いることがより好ましい。
(電極)
電極の材料は特に限定されないが、その材料としては、例えば、酸化インジウムスズ、ZnOなどの透明電極材料;銀、銅、金、アルミニウムなどの金属電極材料;CNT、グラフェンなどの炭素材料;ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸などの有機材料が挙げられる。また、銀、カーボンブラックなどの導電性微粒子を分散した導電性ペースト;銀、銅、アルミニウムなどの金属ナノワイヤーを含有する導電性ペーストなどを用いて電極を形成してもよい。
(熱電変換層)
本発明の熱電変換素子が有する熱電変換層は、中空粒子と熱電変換有機材料(カーボンナノチューブおよび導電性高分子からなる群から選択される少なくとも1つ)とを含む。中空粒子が含まれることにより、中空粒子の中空部に由来するボイド(空隙)が熱電変換層に含まれる。つまり、多孔性の熱電変換層が構成される。
中空粒子および熱電変換有機材料の定義については、上述の通りである。
熱電変換層中における中空粒子の含有量は特に制限されないが、熱電変換層の全質量に対して、10〜39質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。含有量が10質量%以上であれば、熱電変換層の熱電変換特性がより優れる。また、含有量が39質量%以下であれば、熱電変換層が硬くなり、取扱い性に優れる。
熱電変換層中における熱電変換有機材料の中空粒子に対する含有量は特に制限されないが、熱電変換層の熱電変換性能がより優れる点で、上述した組成物中における熱電変換有機材料の中空粒子100質量部に対する質量割合が挙げられる。
また、熱電変換層には、中空粒子および熱電変換有機材料以外の材料が含まれていてもよく、例えば、上述した組成物に含まれていてもよい任意成分(例えば、バインダー)などが挙げられる。
熱電変換層にバインダーが含まれる場合、熱電変換層中におけるバインダーの含有量は特に制限されないが、熱電変換層の熱電変換効率がより優れる点で、中空粒子100質量部に対して、50〜600質量部が好ましく、100〜400質量部がより好ましい。
熱電変換層の形成方法は特に制限されないが、工業的な生産性に優れる点で、上記組成物を用いて形成することが好ましい。より具体的には、基材上に本発明の組成物を塗布し、成膜することにより、熱電変換層を形成することができる。
成膜方法は特に限定されず、例えば、スピンコート法、エクストルージョンダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、スクリーン印刷法、ステンシル印刷法、ロールコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、インクジェット法など、公知の塗布方法を用いることができる。
また、塗布後は、必要に応じて乾燥工程を行う。例えば、熱風を吹き付けることにより溶媒を揮発、乾燥させることができる。
本発明においては、熱電変換層の平均厚さは、温度差を付与する観点等から、0.1〜1000μmであることが好ましく、1〜100μmであることがより好ましい。
なお、熱電変換層の平均厚さは、任意の10点における熱電変換層の厚みを測定し、それらを算術平均して求める。
<熱電発電用物品>
本発明の熱電発電物品は、本発明の熱電変換素子を用いた熱電発電物品である。
ここで、熱電発電物品としては、具体的には、温泉熱発電機、太陽熱発電機、廃熱発電機等の発電機や、腕時計用電源、半導体駆動電源、小型センサー用電源などが挙げられる。
すなわち、上述した本発明の熱電変換素子は、これらの用途に好適に用いることができる。
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
単層カーボンナノチューブとしてASP−100F(Hanwha nanotech社製、純度95%)10mgを用意し、分散剤(Disper BYK 192)0.5mgを用いて水分散物(10g)を作製した。得られた水分散物にスチレンブタジエンラテックスの水分散物(旭化成ラテックス製L−1638:固形分48質量%)20mg、JSR製の中空樹脂粒子の水分散物(SX866:固形分20質量%、平均粒子径0.3μm)25mg(全固形分の20質量%)を加えて、組成物1を得た。なお、(全固形分の20質量%)とは、組成物1の全固形分中における中空樹脂粒子の含有量(質量%)を示す。全固形分とは、熱電変換層を構成する固形分の合計を意図し、溶媒は含まれない。
次に、ガラス基板(厚み:1.1mm、幅:40mm、長さ:50mm)をアセトン中で超音波洗浄した後、10分間UV−オゾン処理を行った。得られたガラス基板上に組成物1を流し込む枠をつくり、その後組成物1を枠に流し込んだ後、真空条件下で室温にて3時間乾燥することで、熱電変換層(平均厚さ:1.1μm)を製造した。
(実施例2)
実施例1の「JSR製の中空樹脂粒子の水分散物(SX866:固形分20質量%、平均粒子径0.3μm)25mg」を「JSR製の中空樹脂粒子の水分散物(SX8782:固形分28質量%、平均粒子径1.0μm)18mg」に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、熱電変換層(平均厚さ:1.3μm)を製造した。
(実施例3)
実施例1の「JSR製の中空粒子の水分散物(SX866:固形分20質量%、平均粒子径0.3μm)」を「日鉄鉱業製の中空ナノシリカ(シリナックス:固形分20質量%、平均粒子径0.13μm)の水分散物」に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、熱電変換層(平均厚さ:1.2μm)を製造した。
(実施例4)
実施例1の「JSR製の中空粒子の水分散物(SX866:固形分20質量%、平均粒子径0.3μm)」を「積水化成品工業(株)製のテクポリマー(単中空微粒子):固形分20質量%、平均粒子径3μm」に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、熱電変換層(平均厚さ:1.3μm)を製造した。
なお、実施例1〜3で得られた熱電変換層の表面のほうが、実施例4で得られた熱電変換層の表面よりも、粒子起因の凹凸ムラが少なく、より耐傷性に優れていた。
(比較例1)
実施例1の「JSR製の中空粒子の水分散物(SX866:固形分20質量%、平均粒子径0.3μm)」を使用しなかった以外は、実施例1と同様の手順に従って、熱電変換層(平均厚さ:1.2μm)を製造した。
[性能指数ZTの測定]
熱電変換性能測定装置 MODEL RZ2001i(製品名、オザワ科学社製)を用いて、温度100度の大気雰囲気で測定を行い、各実施例および比較例にて製造した熱電変換層の熱起電力(ゼーベック係数:μV/k)を測定した。
各実施例および比較例にて製造した熱電変換層の導電率は、「低抵抗率計:ロレスタGP」(機器名、(株)三菱化学アナリテック製)を用い表面抵抗率(単位:Ω/□)を測定し、熱電変換層の平均厚さ(単位:cm)を用いて、下記式より導電率(S/cm)を算出した。
(導電率)=1/((表面抵抗率)×(平均厚さ))
各実施例および比較例にて製造した熱電変換層の熱伝導率(単位:W/mK)は、熱伝導率測定装置(アルバック理工(株)製:TCN−2ω)を用いて測定した。
得られた熱起電力Sと導電率σと熱伝導率κを用いて、以下の式(A)に従って、100℃におけるZT値を算出し、この値を熱電変換性能値とした。結果を表1にまとめて示す。
性能指数ZT=S2・σ・T/κ 式(A)
S(V/K):熱起電力(ゼーベック係数)
σ(S/m):導電率
κ(W/mK):熱伝導率
T(K):絶対温度
以下、表1中、「種類」は中空粒子が有機材料で形成されている場合を「有機」、無機材料で形成されている場合を「無機」と表示する。
表1から分かるように、中空粒子を使用した実施例1〜4においてはより大きなZT値を示し、熱電変換層の熱電変換性能が優れることが確認された。
特に、実施例3と他の実施例との比較から分かるように、中空粒子が有機材料(特に、非導電性の有機材料)で構成されている場合、ZT値がより大きく、熱電変換層の熱電変換性能がより優れることが確認された。
また、実施例1,2および4の比較から分かるように、中空粒子の平均粒子径が1μm以下の場合、ZT値がより大きく、熱電変換層の熱電変換性能がより優れることが確認された。
一方、中空粒子を含まない比較例1においては、実施例と比較して、ZT値が低く、熱電変換層の熱電変換性能に劣ることが確認された。
(実施例5)
実施例1の「JSR製の中空樹脂粒子の水分散物(SX866:固形分20質量%、平均粒子径0.3μm)」の使用量を25mg(全固形分の20質量%)から5.1mg(全固形分の4.8質量%)」に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、熱電変換層(平均厚さ:0.8μm)を製造した。
(実施例6)
実施例1の「JSR製の中空樹脂粒子の水分散物(SX866:固形分20質量%、平均粒子径0.3μm)」の使用量を25mg(全固形分の20質量%)から11.2mg(全固形分の10質量%)」に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、熱電変換層(平均厚さ:0.8μm)を製造した。
(実施例7)
実施例1の「JSR製の中空樹脂粒子の水分散物(SX866:固形分20質量%、平均粒子径0.3μm)」の使用量を25mg(全固形分の20質量%)から43.1mg(全固形分の30質量%)」に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、熱電変換層(平均厚さ:0.9μm)を製造した。
(実施例8)
実施例1の「JSR製の中空樹脂粒子の水分散物(SX866:固形分20質量%、平均粒子径0.3μm)」の使用量を25mg(全固形分の20質量%)から64.3mg(全固形分の39質量%)」に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、熱電変換層(平均厚さ:1.0μm)を製造した。
なお、実施例1、5〜7で得られた熱電変換層の表面のほうが、実施例8で得られた熱電変換層の表面よりも、より耐傷性に優れていた。
実施例5〜8で得られた熱電変換層に対して、上述した[性能指数ZTの測定]にてZT値を求めた。結果を表2にまとめて示す。
なお、表2中の「中空粒子含有量」は、熱電変換層全質量に対する、中空粒子の含有量(質量%)を示す。
表2に示すように、中空粒子の含有量を変更した場合にも、熱電変換層は優れた熱電変換性能を示すことが確認された。
特に、実施例5と6との比較から分かるように、中空粒子の含有量が10質量%以上であればZT値がより優れることが確認された。また、実施例8と他の実施例との比較から分かるように、中空粒子の含有量が30質量%以下であれば熱電変換層の取扱い性に優れることが確認された。
(実施例9)
実施例1の「JSR製の中空樹脂粒子の水分散物(SX866:固形分20質量%、平均粒子径0.3μm)25mg」から「ライオン社製の中空状カーボンブラック粒子「ケッチェンブラック」の水分散物25mg(固形分20質量%)」に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、熱電変換層(平均厚さ:1.1μm)を製造した。
得られた熱電変換層に対して、上述した[性能指数ZTの測定]にてZT値を求めた。ZT値は0.21であった。
実施例9では導電性の中空粒子が使用されていた。非導電性の中空粒子を使用している実施例1と比較すると、非導電性の中空粒子を使用したほうがより優れた効果が得られることが確認された。
(実施例10)
導電性高分子(PEDOT/PSS:重量平均分子量2000)の水分散物(アルドリッチ製 固形分1.3質量%)1gを用意し、水/エチレングリコール=9/1で10倍に希釈した。得られた水溶液に、JSR製の中空樹脂粒子の水分散物(SX866:固形分20質量%、平均粒子径0.3μm)25mgを加えて、組成物10を得た。
次に、ガラス基板(厚み:1.1mm、幅:40mm、長さ:50mm)をアセトン中で超音波洗浄した後、10分間UV−オゾン処理を行った。得られたガラス基板上に組成物10を流し込む枠をつくり、その後組成物10を枠に流し込んだ後、真空条件下で室温にて3時間乾燥することで、熱電変換層(平均厚さ:0.6μm)を製造した。
(比較例2)
中空樹脂粒子の水分散物を使用せず、スチレンブタジエンラテックスの水分散物(旭化成ラテックス製L−1638:固形分48質量%)を10mg用いた以外は、実施例10と同様の手順に従って、熱電変換層(平均厚さ:0.6μm)を製造した。
実施例10および比較例2で得られた熱電変換層に対して、上述した[性能指数ZTの測定]にてZT値を求めた。実施例10ではZT値は0.18であり、比較例2ではZT値は0.10であった。
実施例10の結果より、導電性高分子を使用した場合も所望の効果が得られることが確認された。
また、実施例10と比較例2との比較より、中空粒子が含まれない場合、効果が劣ることが確認された。
(実施例11)
特開2011−168437号公報の実施例1の方法に従って平均粒子径0.08μmの無機中空粒子を作製し、次に、この無機中空粒子を含む20質量%の水分散物を作製した。
実施例1の「JSR製の中空粒子の水分散物(SX866:固形分20質量%、平均粒子径0.3μm)」を上記水分散物に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、熱電変換層(平均厚さ:1.1μm)を製造した。
実施例11で得られた熱電変換層に対して、上述した[性能指数ZTの測定]にてZT値を求めた。実施例11ではZT値は0.18であり、所望の効果が得られることが確認された。
(実施例12)
金電極が形成されたガラス基板上に、実施例1で調製した組成物1を塗布・乾燥して、熱電変換層を製造した。得られた熱電変換層上に導電性ペースト(藤倉化成製 ドータイト)を用いて対極を形成し、熱電変換素子を製造した。なお、製造された熱電変換素子においても、優れた熱電変換性能を示すことが確認された。
(実施例13)
実施例1で作製した組成物1を、小型シャーレに流し込み、180℃、10時間乾燥させて、シャーレから乾燥後の膜をとりだし、90μm厚のサンプル(熱電変換層に該当)を作製した。ポリイミド基板(200μm)上に配置された幅6mm、長さ30mmの電極上に、銀ペーストを用いて上記サンプルを固定化し、さらに固定化されたサンプル上部に金スパッタをすることで電極(金電極部)を形成し、熱電変換素子を作製した。
得られた熱電変換素子の上端(上部の金電極部)と、下端(ポリイミド基板の裏部)に温度差10度かけて、I−V測定したところ0.05mVの電圧を確認でき、優れた熱電変換性能を示すことが確認された。この結果より、熱電変換層の厚みが厚い場合でも、所望の効果が得られることが確認された。
10、20、30 熱電変換素子
11、21 第1の基材
12、22、32 第1の電極
13、23、33 第2の電極
14、24、34、熱電変換層
15、25 第2の基材
31 基材
300 モジュール

Claims (7)

  1. 中空粒子と、
    カーボンナノチューブおよび導電性高分子からなる群から選択される少なくとも1つと、を少なくとも含有する熱電変換層を備え
    前記中空粒子が非導電性有機材料で構成される、熱電変換素子。
  2. 前記熱電変換層が前記カーボンナノチューブを含有する、請求項1に記載の熱電変換素子。
  3. 前記中空粒子の平均粒子径が1.0μm以下である、請求項1または2に記載の熱電変換素子。
  4. 前記中空粒子の含有量が、前記熱電変換層の全質量に対して、10〜30質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
  5. 中空粒子と、カーボンナノチューブおよび導電性高分子からなる群から選択される少なくとも1つと、を少なくとも含有し、
    前記中空粒子が非導電性有機材料で構成される、熱電変換層形成用組成物。
  6. 少なくとも前記カーボンナノチューブを含有する、請求項に記載の熱電変換層形成用組成物。
  7. 前記中空粒子の平均粒子径が1.0μm以下である、請求項5または6に記載の熱電変換層形成用組成物。
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