JP5957529B2 - 積層位相差フィルムおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、画像表示分野等において用いられる位相差フィルム、特に視野角補償性に優れた位相差フィルムおよびその製造方法に関する。
従来から、画像表示分野等においては、高分子の配向により生じる複屈折を利用した光学フィルムが幅広く使用されている。その一つとして画像表示装置に組み込まれる位相差フィルムがあり、その中でも、様々な光学設計に対応可能な積層位相差フィルムが種々検討されている。
このような位相差フィルムとして、例えば、正の複屈折性を有し、かつ−NH−CO−で表される基を備える構造単位(a)を含む樹脂層(A)と、負の複屈折性を有する構造単位(b)を含む樹脂層(B)とを含む光学異方性積層体(特許文献1)や、主鎖に環構造を有する重合体(A)を含む第1の樹脂層と、複素芳香族基等の特定の基を有するα,β−不飽和単量体単位を有する重合体(B)を含む第2の樹脂層との積層体からなる位相差フィルムが提案されている(特許文献2)。
ところで、画像表示装置においては、光学的な特性上、斜め方向から画面をみたときに光漏れが発生し、いわゆる「黒浮き」による表示画像のコントラストの低下が生じることがある。この問題を回避して画像表示装置の視野角を拡大するためには、本来必要な面内位相差を有した上で厚さ方向の位相差を抑えた位相差フィルムが望まれている。
しかしながら、特許文献1の積層位相差フィルムは、厚さ方向の位相差について全く考慮されていない。一方、特許文献2では、正の厚さ方向の位相差を有する位相差フィルムを作製し、その上に、負の厚さ方向の位相差を発現する塗布層を形成することによって、厚さ方向の位相差を抑えた積層位相差フィルムとする技術が開示されているが、該文献では第2の樹脂層は、塗布、乾燥により負の厚さ方向位相差を発現させることのみに寄与するものである。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、広視野角を可能にする新規な積層位相差フィルムおよびその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成し得た本発明の積層位相差フィルムは、正の複屈折性を有する層と負の複屈折性を有する層とを含む積層体であり、前記正の複屈折性を有する層として少なくともウレタン樹脂を含有し、前記積層体の下記式
NZ係数=(Rth/Re)+0.5
(ここで、Reは波長589nmにおける面内位相差(nm)であり、Rthは波長589nmにおける厚み方向位相差(nm)である。)
から求められるNZ係数が0.1以上0.9以下である点に要旨を有するものである。
NZ係数=(Rth/Re)+0.5
(ここで、Reは波長589nmにおける面内位相差(nm)であり、Rthは波長589nmにおける厚み方向位相差(nm)である。)
から求められるNZ係数が0.1以上0.9以下である点に要旨を有するものである。
なお本明細書において、面内位相差Reは、層またはフィルムの面内方向における波長589nmの光に対する遅相軸の屈折率をnx、進相軸の屈折率をny、層またはフィルムの厚さ(nm)をdとして、
Re=(nx−ny)×d
で示されるものであり、厚み方向位相差Rthは、層またはフィルムの面内方向における波長589nmの光に対する遅相軸の屈折率をnx、進相軸の屈折率をny、層の厚さ方向の屈折率をnz、層またはフィルムの厚さ(nm)をdとして、
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
で示されるものである。
Re=(nx−ny)×d
で示されるものであり、厚み方向位相差Rthは、層またはフィルムの面内方向における波長589nmの光に対する遅相軸の屈折率をnx、進相軸の屈折率をny、層の厚さ方向の屈折率をnz、層またはフィルムの厚さ(nm)をdとして、
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
で示されるものである。
本発明の積層位相差フィルムの好ましい態様では、前記正の複屈折性を有する層と前記負の複屈折性を有する層は、各層の面内最大屈折率方向が揃うように配されている(以下この態様を「第一の態様」と称する)。本発明の積層位相差フィルムの別の態様では、前記正の複屈折性を有する層と前記負の複屈折性を有する層は、各層の面内最大屈折率方向が直交するように配されている(以下この態様を「第二の態様」と称する)。
なお、本明細書において「面内最大屈折率方向」とは、各層の面内の屈折率が最大になる方向を意味し、厚み方向を光軸としたときの遅相軸方向に相当する。
なお、本明細書において「面内最大屈折率方向」とは、各層の面内の屈折率が最大になる方向を意味し、厚み方向を光軸としたときの遅相軸方向に相当する。
本発明の積層位相差フィルムにおいて、前記負の複屈折性を有する層は、二軸延伸されたものであることが好ましい。またこのとき前記正の複屈折性を有する層は、一軸延伸されたものであることが好ましい。
本発明の積層位相差フィルムにおいて、前記正の複屈折性を有する層のNZ係数は1以上1.5以下であることが好ましい。また、前記正の複屈折性を有する層の厚みは3μm以上であることが好ましい。また、前記正の複屈折性を有する層はウレタン樹脂を架橋するための架橋剤を含むことが好ましい。また、前記正の複屈折性を有する層はウレタン樹脂の水系分散体から製造されることが好ましい。
本発明の積層位相差フィルムにおいて、前記負の複屈折性を有する層は、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体を含むことが好ましい。前記負の複屈折性を有する層の面内位相差Reは10nm以上であることが好ましい。
本発明の積層位相差フィルムにおいて、前記積層体の面内位相差Reは70nm以上300nm以下であることが好ましい。
本発明の積層位相差フィルムにおいては、前記負の複屈折性を有する層を基材フィルムとし、この基材フィルムに前記正の複屈折性を有する層が積層されていることが好ましい。また、前記負の複屈折性を有する層の両面に前記正の複屈折性を有する層が積層されていることが好ましい。
本発明の積層位相差フィルムの製造方法は、負の複屈折性を発現しうるフィルムを一軸延伸する第一延伸工程と、
前記第一延伸工程で延伸したフィルムの上にウレタン樹脂を含む組成物を塗布し、乾燥することによりウレタン樹脂層を形成する積層工程と、
前記積層工程で得られた積層体を前記第一延伸工程で一軸延伸した方向と略直交する方向に一軸延伸する第二延伸工程と、を含む点に要旨を有するものである。
前記第一延伸工程で延伸したフィルムの上にウレタン樹脂を含む組成物を塗布し、乾燥することによりウレタン樹脂層を形成する積層工程と、
前記積層工程で得られた積層体を前記第一延伸工程で一軸延伸した方向と略直交する方向に一軸延伸する第二延伸工程と、を含む点に要旨を有するものである。
本発明の積層位相差フィルムの製造方法においては、前記積層工程における乾燥時の加熱と前記第二延伸工程の加熱は一方が他方を兼ねることが好ましい。
本発明の積層位相差フィルムは、位相差フィルムとして求められる十分に大きい面内位相差Reを有しながら、厚み方向位相差Rthの大きさ(絶対値)は小さく抑えられて、場合によってはゼロになる(このときNZ係数は0.5である)。かかる積層位相差フィルムは、画像表示装置への色調補償、視野角補償に好適に使用できる。
(積層位相差フィルム)
本発明の積層位相差フィルムは、正複屈折性を有する層(正複屈折性層)と負複屈折性を有する層(負複屈折性層)との積層体であり、この正複屈折性層として少なくともウレタン樹脂を含有し、下記式
NZ係数=(Rth/Re)+0.5
(ここで、Reは波長589nmにおける面内位相差(nm)であり、Rthは波長589nmにおける厚み方向位相差(nm)である。)
から求められるNZ係数が0.1以上0.9以下、好ましくは0.3以上0.8以下である。
本発明の積層位相差フィルムは、正複屈折性を有する層(正複屈折性層)と負複屈折性を有する層(負複屈折性層)との積層体であり、この正複屈折性層として少なくともウレタン樹脂を含有し、下記式
NZ係数=(Rth/Re)+0.5
(ここで、Reは波長589nmにおける面内位相差(nm)であり、Rthは波長589nmにおける厚み方向位相差(nm)である。)
から求められるNZ係数が0.1以上0.9以下、好ましくは0.3以上0.8以下である。
本発明は、フィルムに視野角補償性を付与することを目的とするものである。フィルムに視野角補償性を付与するうえでは、厚み方向位相差(Rth)の大きさ(絶対値)は小さく抑えられているのがよく、他方、位相差フィルムとして機能させるうえでは、面内位相差(Re)はある程度の大きさを有していることが望まれるところ、本発明ではNZ係数によって、Rthが0に近づき、Reは大きくなるという光学特性を規定したものである。積層体のNZ係数が前記範囲であると、積層体の厚み方向位相差Rthは0に近づき、積層体の面内位相差Reは大きくなる。
そして本発明では、前記NZ係数を前記範囲に制御するべく、正の複屈折性を有する層(以下「正複屈折性層」と称することもある)と負の複屈折性を有する層(以下「負複屈折性層」と称することもある)とを積層することとし、Rthについては正複屈折性層と負複屈折性層との打ち消し合いにより0に近づけ、Reについては例えば両層の積層方向や延伸条件等を上手く組合わせることにより、正複屈折性層と負複屈折性層の一方を他方よりも大きく発現させて一方の面内位相差の影響が少なくとも残るようにするか、あるいは、両層の面内位相差を活用し強め合うことができるようにした。そして一方の面内位相差をより大きく発現させるために、複屈折(位相差)の発現性が高いウレタン樹脂を正複屈折性層に用いることにした。
積層体の面内位相差Reは、70nm以上、300nm以下であることが好ましく、より好ましくは80nm以上、200nm以下、さらに好ましくは90nm以上、180nm以下である。積層体の面内位相差Reが前記範囲であると、λ/2板やλ/4板など各種位相差フィルムに求められる十分な位相差を発現できる。
積層体の厚み方向位相差Rthは、その絶対値が70nm以下であることが好ましく、より好ましくは60nm以下、さらに好ましくは50nm以下であり、特に好ましくは20nm以下である。積層体の厚み方向位相差Rthが前記範囲であると、優れた視野角補償性を発揮できる。
本発明の積層位相差フィルムの好ましい態様(第一の態様)では、前記正複屈折性層と前記負複屈折性層は、各層の面内最大屈折率方向が揃うように配されている。このように正負2つの層の面内最大屈折率方向が揃っている場合、各層の面内位相差の正負方向が直交することとなり、負複屈折性層に起因して発現する面内位相差は正複屈折性層に起因して発現する面内位相差に上乗せされて、両層は互いに面内位相差を強め合う関係となる。そうすると、積層体の面内位相差はより大きく発現し易くなるので、十分な位相差を確保しつつ薄膜化することが可能になる。しかも厚さ方向の位相差(Rth)については、正負二層の面内最大屈折率方向によらず、層間で打ち消し合う関係を維持できるので、厚さ方向の位相差(Rth)は小さく抑制される(換言すれば0に近づく)。
本発明の積層位相差フィルムの別の態様(第二の態様)では、前記正複屈折性層と前記負複屈折性層は、各層の面内最大屈折率方向が直交するように配されている。このように正負2つの層の面内最大屈折率方向が直交していると、各層における面内位相差の正負方向が揃うこととなる。そして、例えば、正複屈折性層の面内位相差が負複屈折性層の面内位相差よりも大きく、負の複屈折性層の面内位相差が順波長分散性を示し、正の複屈折性層がこれよりも弱い順波長分散性を示す時、各層の面内位相差の打ち消しあいにより、波長分散性をフラットに近づけることが可能になり、ひいては、いわゆる「逆波長分散性」の位相差フィルムを得ることが可能になる。しかも厚さ方向の位相差(Rth)については、正負二層の面内最大屈折率方向によらず、層間で打ち消し合う関係を維持でき、厚さ方向の位相差(Rth)は小さく抑制される(換言すれば0に近づく)。
なお「逆波長分散性」とは、波長が短くなるほど位相差が小さくなる波長分散性を意味し、かかる逆波長分散性の位相差フィルムは色調補償性の点で有利である。
なお「逆波長分散性」とは、波長が短くなるほど位相差が小さくなる波長分散性を意味し、かかる逆波長分散性の位相差フィルムは色調補償性の点で有利である。
本発明の積層位相差フィルムにおいては、負複屈折性層が二軸延伸されたものであることが、十分な機械的強度(可とう性など)を発現させる上で、好ましい。負複屈折性層が未延伸の層であると、強度が弱くなる傾向があり、負複屈折性層が一軸延伸されたものであると、延伸していない方向における強度が弱くなる傾向がある。
そして、さらに本発明の積層位相差フィルムは、負複屈折性層が二軸延伸されたものであり、かつ正複屈折性層は一軸延伸されたものであることが好ましい。このように正複屈折性層(ウレタン樹脂層)が一軸延伸されたものであり、負複屈折性層が二軸延伸されたものである場合、延伸の違いにより、正複屈折性層の面内位相差は負複屈折性層の面内位相差よりも、より大きく発現することとなる。よって、正複屈折性層の面内位相差に負複屈折性層の面内位相差が上乗せされることになる上述した第一の態様では、より大きく発現する正複屈折性層が、位相差発現性が高いウレタン樹脂からなることにより、積層体の面内位相差Reを大きくすることができる。また、両層の面内位相差が打ち消しあうことになる上述した第二の態様においても、正複屈折性層と負複屈折性層の位相差発現性の差がより顕著になるので、やはり積層体の面内位相差Reを大きくすることができ、しかも第二の態様において逆波長分散性を示す積層位相差フィルムを設計しやすくなる。
本発明の積層位相差フィルムにおいては、前記負の複屈折性を有する層を基材フィルムとし、この基材フィルムに前記正の複屈折性を有する層が積層されていることが、生産性に優れる点で、好ましい。このような積層位相差フィルムは、後述する本発明の製造方法により得られる。
本発明の積層位相差フィルムにおいては、前記負の複屈折性を有する層の両面に前記正の複屈折性を有する層が積層されていてもよい。この場合、表層両面の樹脂が同等になることにより、物理的特性を改良するうえで有利となる。
本発明の積層位相差フィルムにおいては、前記負の複屈折性を有する層の両面に前記正の複屈折性を有する層が積層されていてもよい。この場合、表層両面の樹脂が同等になることにより、物理的特性を改良するうえで有利となる。
以下、各層について説明する。
なお層の複屈折の正負は、当該層の主面に垂直に入射した光のうち、当該層における分子鎖が配向する方向(配向軸)に平行な振動成分に対する層の屈折率n1から、配向軸に垂直な振動成分に対する層の屈折率n2を引いた値(n1−n2)に基づいて判断できる。層の複屈折の正負は、当該層に含まれる各重合体の固有複屈折の兼ね合いにより決まり、各々の重合体について、その分子構造に基づく計算により求められる。実際には、例えば実施例で後述する方法により決定することができる。
なお層の複屈折の正負は、当該層の主面に垂直に入射した光のうち、当該層における分子鎖が配向する方向(配向軸)に平行な振動成分に対する層の屈折率n1から、配向軸に垂直な振動成分に対する層の屈折率n2を引いた値(n1−n2)に基づいて判断できる。層の複屈折の正負は、当該層に含まれる各重合体の固有複屈折の兼ね合いにより決まり、各々の重合体について、その分子構造に基づく計算により求められる。実際には、例えば実施例で後述する方法により決定することができる。
(正複屈折性層)
本発明において、正複屈折性層は、少なくともウレタン樹脂を含有する。ウレタン樹脂は、正の固有複屈折を示すものであり、複屈折(位相差)の発現性が高い。よって、該ウレタン樹脂を含むことにより、正複屈折性層の面内位相差をより大きく発現させることができ、ひいては十分に大きい面内位相差を発現させることができ、正複屈折性層を薄膜化するうえでも有利となる。また機械的強度の向上も図ることができる。
本発明において、正複屈折性層は、少なくともウレタン樹脂を含有する。ウレタン樹脂は、正の固有複屈折を示すものであり、複屈折(位相差)の発現性が高い。よって、該ウレタン樹脂を含むことにより、正複屈折性層の面内位相差をより大きく発現させることができ、ひいては十分に大きい面内位相差を発現させることができ、正複屈折性層を薄膜化するうえでも有利となる。また機械的強度の向上も図ることができる。
ウレタン樹脂としては、特に限定されないが、典型的には、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得た樹脂である。ここでポリオールおよびポリイソシアネートはそれぞれ1種のみであってもよいし2種以上であってもよく、ウレタン樹脂自体も1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
前記ポリオールとしては、分子中に水酸基(ヒドロキシ基)を2個以上有するものであれば、特に制限されず、例えば、ポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールが挙げられる。
前記ポリアクリルポリオールとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル単量体と水酸基を有する単量体との共重合体が挙げられる。ここで(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等であることが挙げられる。水酸基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシペンチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;グリセリン、トリメチロールプロパンなどの多価アルコールの(メタ)アクリル酸モノエステル;N−メチロール(メタ)アクリルアミド;等が挙げられる。またポリアクリルポリオールは、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体および前記水酸基を有する単量体のほかに、さらに他の単量体が共重合されたものであってもよく、例えば、(メタ)アクリル酸などの不飽和モノカルボン酸;マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸ならびにその無水物およびモノまたはジエステル類;(メタ)アクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどの不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;メチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化α,β−不飽和脂肪族単量体;スチレン、α−メチルスチレンなどのα,β−不飽和芳香族単量体等を共重合させることができる。
前記ポリアクリルポリオールとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル単量体と水酸基を有する単量体との共重合体が挙げられる。ここで(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等であることが挙げられる。水酸基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシペンチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;グリセリン、トリメチロールプロパンなどの多価アルコールの(メタ)アクリル酸モノエステル;N−メチロール(メタ)アクリルアミド;等が挙げられる。またポリアクリルポリオールは、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体および前記水酸基を有する単量体のほかに、さらに他の単量体が共重合されたものであってもよく、例えば、(メタ)アクリル酸などの不飽和モノカルボン酸;マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸ならびにその無水物およびモノまたはジエステル類;(メタ)アクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどの不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;メチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化α,β−不飽和脂肪族単量体;スチレン、α−メチルスチレンなどのα,β−不飽和芳香族単量体等を共重合させることができる。
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、多塩基酸成分とポリオール成分との反応により得られるものが挙げられる。ここで多塩基酸成分としては、例えば、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、酒石酸、アルキルコハク酸、マレイン酸、フマール酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの脂肪族ジカルボン酸;オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸などの不飽和カルボン酸のダイマー酸;ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;あるいは、これらの酸無水物、アルキルエステル、酸ハライドなどの反応性誘導体;を用いることができる。ポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1−メチル−1,3−ブチレングリコール、2−メチル−1,3−ブチレングリコール、1−メチル−1,4−ペンチレングリコール、2−メチル−1,4−ペンチレングリコール、1,2−ジメチル−ネオペンチルグリコール、2,3−ジメチル−ネオペンチルグリコール、1−メチル−1,5−ペンチレングリコール、2−メチル−1,5−ペンチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンチレングリコール、1,2−ジメチルブチレングリコール、1,3−ジメチルブチレングリコール、2,3−ジメチルブチレングリコール、1,4−ジメチルブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等を用いることができる。
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、多価アルコールにアルキレンオキシドを開環重合して付加させることにより得られる。ここで多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’−シクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ジイソシアネート;等が挙げられる。
さらにウレタン樹脂は、ポリオールおよびポリイソシアネートとともに、さらに他のポリオールあるいは鎖延長剤を反応させたものであってもよい。他のポリオールとしては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトラオール、1,4−ソルビタン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど、3個以上の水酸基を有するポリオールが挙げられる。鎖延長剤としては、例えば、ジアルキロールアルカン酸(例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロールペンタン酸など)などのジヒドロキシカルボン酸;ジヒドロキシスクシン酸;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコールなどのグリコール類;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、アミノエチルエタノールアミンなどの脂肪族ジアミン;イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミンなどの脂環族ジアミン;キシリレンジアミン、トリレンジアミンなどの芳香族ジアミン;等が挙げられる。
ウレタン樹脂を得る際の反応については、公知の方法を適宜採用すればよく、例えば、各成分を一度に反応させるワンショット法、段階的に反応させる多段法を採用することができる。またウレタン樹脂を得る際の各成分の使用量比等についても適宜設定すればよい。
ウレタン樹脂の分子量は、特に制限されないが、例えば数平均分子量で5千〜60万が好ましく、より好ましくは1万〜40万である。
ウレタン樹脂の分子量は、特に制限されないが、例えば数平均分子量で5千〜60万が好ましく、より好ましくは1万〜40万である。
ウレタン樹脂を含有する正複屈折性層は、ウレタン樹脂の水系分散体から製造されることが好ましい。例えば正複屈折性層を塗布して形成する場合であれば、ウレタン樹脂の水系分散体を塗膜形成材料として用いることが好ましい。これにより、有機溶剤の使用による爆発の危険性や環境および人体への負荷を回避できる。
ウレタン樹脂の水系分散体は、典型的にはウレタン樹脂の粒子のエマルジョンである。分散媒体とする水系溶媒としては、水もしくは水と親水性の有機溶剤(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤;アセトン等のケトン系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒;など)との混合溶媒を用いることができるが、特に水が好ましい。水と親水性の有機溶剤との混合溶媒を用いる場合には、親水性の有機溶剤の含有割合は、混合溶媒中50質量%以下が好ましく、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。なお混合溶媒に含有させる親水性の有機溶剤は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
ウレタン樹脂の水系分散体は、中和剤を含んでいてもよく、この場合、水系の分散媒におけるウレタン樹脂の安定性が向上する。中和剤としては、例えば、アンモニア、N−メチルモルホリン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。
またウレタン樹脂の水系分散体は、フィルムの耐ブロッキング特性を改善する目的で、微粒子を含んでいてもよい。微粒子としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニアなどの無機酸化物、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、燐酸カルシウムなどの無機系微粒子;シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂などの有機系微粒子;が挙げられる。中でもシリカが好ましく、さらにはコロイダルシリカを用いることがより好ましい。
さらにウレタン樹脂の水系分散体は、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、分散安定剤、揺変剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、分散剤、界面活性剤、触媒、帯電防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
さらにウレタン樹脂の水系分散体は、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、分散安定剤、揺変剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、分散剤、界面活性剤、触媒、帯電防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
ウレタン樹脂の水系分散体におけるウレタン樹脂の含有率は、これを用いて正複屈折性層を形成する際の作業性(塗工性)等に応じて適宜設定すればよいが、2.5〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、10〜30質量%がさらに好ましい。
正複屈折性層は、ウレタン樹脂を架橋するための架橋剤を含むことが好ましい。これにより、フィルムの位相差発現性、機械的強度、耐水性、耐久性を高めることができる。架橋剤としては、水溶性タイプのものが好ましく、例えば、エチレンジアミン、トリエチレンアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレン基とアミノ基を2個有するアルキレンジアミン類;トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタン)トリイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびこれらのケトオキシムブロック物またはフェノールブロック物等のイソシアネート類;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジまたはトリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等のエポキシ類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等のモノアルデヒド類;グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルジアルデヒド等のジアルデヒド類;メチロール尿素、メチロールメラミン、アルキル化メチロール尿素、アルキル化メチロール化メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの縮合物等のアミノ−ホルムアルデヒド樹脂;オキサゾリン類;カルボジイミド類を用いることができる。例えば、ウレタン樹脂がカルボキシル基を有する場合、架橋剤としてはカルボキシル基と反応し得る基を有するポリマー(例えば(メタ)アクリル系ポリマー、スチレン・アクリル系ポリマーなど)を用いることができる。カルボキシル基と反応し得る基には、有機アミノ基、オキサゾリン基、エポキシ基、カルボジイミド基等があり、オキサゾリン基が好ましい。
正複屈折性層は、前記ウレタン樹脂のみから形成されるものであってもよいが、ウレタン樹脂以外の他の樹脂を含有して形成されたものであってもよい。他の樹脂としては、正の固有複屈折を有する樹脂を用いてもよいし、層として正の複屈折を示しうる限り負の固有複屈折を有する樹脂を用いることもできる。正の固有複屈折を有する樹脂、負の固有複屈折を有する樹脂の具体例については、(負複屈折性層)の項で後述する。
正複屈折性層がウレタン樹脂以外の他の樹脂をも含有して形成される場合、正複屈折性層(固形分)中のウレタン樹脂の含有割合は、50質量%以上であるのが好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。正複屈折性層中のウレタン樹脂の含有割合が少なくなると、他の樹脂の種類によっては、正の複屈折の発現性が不充分になり、ひいては積層体の面内位相差Reが小さくなる場合がある。
正複屈折性層の厚みは、好ましくは3μm以上、80μm以下であり、より好ましくは5μm以上、40μm以下である。正複屈折性層の厚みが前記範囲よりも薄いと、十分に延伸されていないことが考えられ、ひいては十分な複屈折を発現させることができない虞がある。一方、正複屈折性層の厚みが前記範囲よりも厚いと、乾燥時の必要熱量が大きくなり、負複屈折性層の位相差が低下しやすくなる傾向がある。
正複屈折性層単独のNZ係数は、1以上、1.5以下であることが好ましく、より好ましくは1.1以上、1.4以下である。正複屈折性層単独のNZ係数がこの範囲であれば、相対的に積層体の面内位相差Reが大きいわりに厚み方向位相差Rthが小さくなるので、正負両層を薄膜化するうえで有利となり、積層体の面内位相差Reおよび厚み方向位相差Rthを所望の範囲に制御しやすくなる。
(負複屈折性層)
負複屈折性を有する層は、少なくとも負の固有複屈折性を示すポリマーを含んで形成されていればよいが、正の固有複屈折性を示すポリマーと負の固有複屈折性を示すポリマーとの共重合体又はポリマーアロイで形成されていることが好ましい。正の固有複屈折性を示すポリマーと負の固有複屈折性を示すポリマーの両方を含む場合、正の固有複屈折性を示すポリマーにより当該層における負の複屈折の発現性が小さく抑えられるので、結果として積層体の面内位相差Reが大きくしやすくなったり、逆波長分散性のフィルムを設計しやすくなる。
負複屈折性を有する層は、少なくとも負の固有複屈折性を示すポリマーを含んで形成されていればよいが、正の固有複屈折性を示すポリマーと負の固有複屈折性を示すポリマーとの共重合体又はポリマーアロイで形成されていることが好ましい。正の固有複屈折性を示すポリマーと負の固有複屈折性を示すポリマーの両方を含む場合、正の固有複屈折性を示すポリマーにより当該層における負の複屈折の発現性が小さく抑えられるので、結果として積層体の面内位相差Reが大きくしやすくなったり、逆波長分散性のフィルムを設計しやすくなる。
ポリマーの固有複屈折の正負は、ポリマーの分子鎖が一軸配向した層(例えばフィルム)において、当該層の主面に垂直に入射した光のうち、当該層における分子鎖が配向する方向(配向軸)に平行な振動成分に対する層の屈折率n1から、配向軸に垂直な振動成分に対する層の屈折率n2を引いた値(n1−n2)に基づいて判断できる。ポリマーの固有複屈折の正負は、当該ポリマーに含まれる各構成単位によって生じる複屈折の兼ね合いにより決まる。ポリマーに負(あるいは正)の固有複屈折を与える作用を有する構成単位とは、当該単位のホモポリマーを形成したときに、形成したホモポリマーの固有複屈折が負(あるいは正)となる構成単位をいう。ポリマー(共重合体またはポリマーアロイを含む)の固有複屈折の正負は、例えば実施例で後述する方法により測定することができる。
本発明において負複屈折性層を構成する負の固有複屈折性を示すポリマーおよび正の固有複屈折性を示すポリマーは、所望の光学特性(層としての負の複屈折性)が得られるよう選択されればよく、公知の種々の負(または正)の固有複屈折性を示すポリマーを用いることができる。
負の固有複屈折性を示すポリマーとしては、典型的には、側鎖に環構造を備えた構造単位を有するポリマーが挙げられる。例えば、芳香族基(フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基など)または複素芳香族基(例えばカルバゾール基、ピリジン基、イミダゾール基、チオフェン基など)を有するα,β−不飽和単量体単位、N−ビニルラクタム単位等の負の固有複屈折性に寄与する構造単位を有するポリマーが挙げられる。具体的には、芳香族基を有するα,β−不飽和単量体単位としては、例えばスチレン単位が挙げられ、複素芳香族基を有するα,β−不飽和単量体単位としては、例えばN−ビニルカルバゾール単位、ビニルピリジン単位、ビニルイミダゾール単位およびビニルチオフェン単位が挙げられ、N−ビニルラクタム単位としては、例えば、N−ビニル−2−ピロリドン単位、N−ビニル−ε−カプロラクタム単位、N−ビニル−2−ピペリドン単位、N−ビニル−4−メチル−2−ピロリドン単位、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン単位、N−ビニル−ω−ヘプタラクタム単位が挙げられる。これら構造単位は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。なお、これら負の固有複屈折性に寄与する構造単位の含有率は、所望の光学特性(層としての負の複屈折性)が得られるよう適宜設定すればよい。
負の固有複屈折性を示すポリマーは、上述した負の固有複屈折性に寄与する構造単位のほかに、負の複屈折性を損なわない範囲において、他の構造単位を有していてもよい。他の構造単位としては、例えば、以下の単量体の重合により形成される構成単位が挙げられる。すなわち;アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル)、メタクリル酸アルキルエステル(例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸シクロヘキシル)、アクリル酸アミノアルキルエステル(例えばアクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル)、メタクリル酸アミノアルキルエステル、アクリル酸とグリコールとのモノエステル、メタクリル酸とグリコールとのモノエステル(例えばメタクリル酸2−ヒドロキシエチル)、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、酢酸ビニル、ビニルステアレート、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド、グリコールジアクリレート、グリコールジメタクリレート、グリコールジアリルエーテル、アクリロニトリル。
負の固有複屈折性を示すポリマーは、上述した構造単位を導入しうる単量体成分を公知の重合方法および条件で重合することにより得ることができる。
正の固有複屈折性を示すポリマーとしては、例えば、シクロオレフィン重合体、セルロース誘導体、または主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体等が挙げられる。これらの中でも特に、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体が、フィルムの耐熱性を高めるうえで、好ましい。耐熱性が向上すれば、画像表示装置における光源などの発熱部近傍への配置が容易になるなど適用範囲が広がる。
以下、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体について説明する。
(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単位および/または(メタ)アクリル酸単位を必須の構成単位として有し、(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリル酸の誘導体に由来する構成単位を有していてもよい。なお「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および/または「メタクリル」を意味するものとする。
(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単位および/または(メタ)アクリル酸単位を必須の構成単位として有し、(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリル酸の誘導体に由来する構成単位を有していてもよい。なお「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および/または「メタクリル」を意味するものとする。
(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリル酸エステル誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルなどの(メタ)アクリル酸とヒドロキシ炭化水素とのエステル類((メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸アリール、(メタ)アクリル酸アラルキルなど)、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチルなどのエーテル結合導入誘導体;(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチルなどのハロゲン導入誘導体;及びヒドロキシ基導入誘導体が挙げられる。前記ヒドロキシ基導入誘導体には、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル類;2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキル(例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸n−ブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸t−ブチルなど)、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸アルキル(例えば、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなど)の2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキルが含まれる。
(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸類;クロトン酸などのアルキル化(メタ)アクリル酸類;2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸などのヒドロキシアルキル化(メタ)アクリル酸類などが挙げられる。これらの中でも特に、フィルムの耐熱性、および透明性の観点からは、メタクリル酸メチルが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル(単位)、(メタ)アクリル酸(単位)およびこれらの誘導体(単位)は、それぞれ1種のみ有していてもよいし2種以上有していてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル(単位)、(メタ)アクリル酸(単位)およびこれらの誘導体(単位)は、それぞれ1種のみ有していてもよいし2種以上有していてもよい。
(メタ)アクリル系樹脂(A)は、上述した(メタ)アクリル酸系モノマーを他のモノマーと共重合することによって導入される他の構成単位を有していてもよい。このような他のモノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタリルアルコール、アリルアルコール、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、酢酸ビニル、2−ヒドロキシメチル−1−ブテン、メチルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾールなどの重合性二重結合を有する単量体が挙げられる。これら他のモノマー(構成単位)は1種のみを有していてもよいし2種以上有していてもよい。
(メタ)アクリル系重合体の全構成単位における、(メタ)アクリル酸系モノマーに由来する構成単位(すなわち、(メタ)アクリル酸エステル単位、(メタ)アクリル酸単位およびこれら誘導体に由来する構成単位)の合計割合は、フィルムの耐熱性の観点から、50質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。上限は特になく、最も好ましくは100質量%である。
(メタ)アクリル系重合体における主鎖環構造は、特に限定されないが、例えば、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造、無水マレイン酸構造、N−置換マレイミド構造などが挙げられる。より好ましくは、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造のいずれかであり、特に好ましくはラクトン環構造である。
前記ラクトン環構造は、特に限定されず、例えば、4員環から8員環のいずれであってもよいが、環構造の安定性に優れることから5員環または6員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。6員環であるラクトン環構造としては、例えば、特開2004−168882号公報に開示されている構造が挙げられるが、ラクトン環構造の導入が容易であること、具体的には、前駆体(ラクトン環化前の重合体)の重合収率が高いこと、前駆体の環化縮合反応におけるラクトン環含有率を高めることができること、メタクリル酸メチル単位を構成単位として有する重合体を前駆体にできること、などの理由から下記一般式(1)に示される構造が特に好ましい。
上記一般式(1)において、R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素原子または炭素数1から20の有機残基であり、当該有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
一般式(1)における有機残基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数1から20の飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基等)、エテニル基、プロペニル基などの炭素数2から20の不飽和脂肪族炭化水素基(アルケニル基等)、フェニル基、ナフチル基などの炭素数6から20の芳香族炭化水素基(アリール基等)のほか、これら飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基における水素原子の一つ以上が、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エーテル基およびエステル基から選ばれる少なくとも1種類の基により置換された基などが挙げられる。
一般式(1)における有機残基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数1から20の飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基等)、エテニル基、プロペニル基などの炭素数2から20の不飽和脂肪族炭化水素基(アルケニル基等)、フェニル基、ナフチル基などの炭素数6から20の芳香族炭化水素基(アリール基等)のほか、これら飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基における水素原子の一つ以上が、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エーテル基およびエステル基から選ばれる少なくとも1種類の基により置換された基などが挙げられる。
ラクトン環構造は、例えば、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸系モノマーAと、(メタ)アクリル酸系モノマーBとを重合(好ましくは共重合)して分子鎖にヒドロキシ基とエステル基またはカルボキシル基とを導入した後、これらヒドロキシ基とエステル基またはカルボキシル基との間で脱アルコールまたは脱水環化縮合を生じさせることにより形成できる。重合成分として、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸系モノマーAは必須であり、(メタ)アクリル酸系モノマーBは前記モノマーAを包含する。モノマーBはモノマーAと一致していてもよいし、一致しなくてもよい。モノマーBがモノマーAと一致する時には、モノマーAの単独重合となる。
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸系モノマーAとしては、上述の(メタ)アクリル酸エステルのヒドロキシ基導入誘導体、ヒドロキシアルキル化(メタ)アクリル酸類などが挙げられ、好ましくはヒドロキシアリル部位を有するモノマーが含まれる。ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸系モノマーAの具体例としては、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキル(例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸n−ブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸t−ブチル)、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸アルキル(例えば、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸エチル)等が挙げられ、好ましくは、ヒドロキシアリル部位を有するモノマーである2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸や2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキルが挙げられる。特に好ましくは2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが例示できる。(メタ)アクリル酸系モノマーBとしては、ビニル基とエステル基またはカルボキシル基とを有するモノマーが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等、好ましくはメタクリル酸メチル)、(メタ)アクリル酸アリール(例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等)、2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキル(例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸n−ブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸t−ブチルなどの2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキル、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなどの2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸アルキル等)などが挙げられる。
さらに詳しくは、主鎖にラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系重合体は、例えば、特開2006−96960号公報、特開2006−171464号公報、特開2007−63541号公報に記載の方法により製造できる。
さらに詳しくは、主鎖にラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系重合体は、例えば、特開2006−96960号公報、特開2006−171464号公報、特開2007−63541号公報に記載の方法により製造できる。
(メタ)アクリル系樹脂が主鎖にラクトン環構造を有する場合、当該樹脂におけるラクトン環構造の含有率は、特に限定はされないが、例えば5〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜80質量%、さらに好ましくは10〜70質量%、特に好ましくは20〜60質量%である。
なお、(メタ)アクリル系樹脂におけるラクトン環構造の含有率は、ラクトン環化に関与する単量体(ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸系モノマーAおよび(メタ)アクリル酸系モノマーB)の共重合量と、ラクトン環化率とから求めることができる。すなわち、ラクトン環化率の分だけラクトン環化反応が行われたものと仮定して、下記式
ラクトン環構造の含有率(質量%)=Z1×Z2×MR/Mm
(式中、Z1は、ラクトン環化前の重合体における、ラクトン環化に関与する原料単量体(ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸系モノマーAおよび(メタ)アクリル酸系モノマーB)由来の構造単位の質量含有割合であり、MRは生成するラクトン環構造単位の式量(具体的には、ラクトン環形成元素と、ラクトン環に結合する主鎖以外の基の合計式量)であり、Mmはラクトン環化に関与する原料単量体(ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸系モノマーAおよび(メタ)アクリル酸系モノマーB)の分子量(合計)であり、Z2はラクトン環化率である)
により、算出することができる。
ラクトン環構造の含有率(質量%)=Z1×Z2×MR/Mm
(式中、Z1は、ラクトン環化前の重合体における、ラクトン環化に関与する原料単量体(ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸系モノマーAおよび(メタ)アクリル酸系モノマーB)由来の構造単位の質量含有割合であり、MRは生成するラクトン環構造単位の式量(具体的には、ラクトン環形成元素と、ラクトン環に結合する主鎖以外の基の合計式量)であり、Mmはラクトン環化に関与する原料単量体(ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸系モノマーAおよび(メタ)アクリル酸系モノマーB)の分子量(合計)であり、Z2はラクトン環化率である)
により、算出することができる。
前記ラクトン環化率は、例えば、重合で得られた重合体組成からすべてのヒドロキシ基がアルコールまたは水として脱アルコールまたは脱水した際に起こる質量減少量を基準にし、ダイナミックTG測定において質量減少が始まる前の150℃から重合体の分解が始まる前の300℃までの脱アルコール反応による質量減少から求めることができる。すなわち、ラクトン環構造を有した重合体のダイナミックTG測定において150℃から300℃までの間の質量減少率の測定を行い、得られた実測質量減少率を(X)とする。他方、当該重合体の組成から、その重合体組成に含まれる全ての水酸基がラクトン環の形成に関与するため脱アルコールまたは脱水すると仮定した時の理論質量減少率(すなわち、その組成上において100%脱アルコールまたは脱水反応が起きたと仮定して算出した質量減少率)を(Y)とする。なお、理論質量減少率(Y)は、より具体的には、重合体中の脱アルコールまたは脱水反応に関与する構造(ヒドロキシ基)を有する原料単量体のモル比、すなわち当該重合体組成における前記原料単量体の含有率から算出することができる。これらの値(X、Y)を式:1−(実測質量減少率(X)/理論質量減少率(Y))に代入してその値を求め、「%」で表記すると、ラクトン環化率(脱アルコールまたは脱水反応率)が得られる。
前記無水グルタル酸構造または前記グルタルイミド構造としては、例えば、下記一般式(2)に示される構造(下記一般式(2)において、X1が酸素原子である場合には無水グルタル酸構造となり、X1が窒素原子である場合にはグルタルイミド構造となる)が好ましく挙げられる。
上記一般式(2)におけるR4、R5は、互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、X1は酸素原子または窒素原子である。X1が酸素原子であるとき、R6は存在せず、X1が窒素原子のとき、R6は、水素原子、炭素数1から6の直鎖アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基またはフェニル基である。
上記一般式(2)におけるX1が酸素原子である無水グルタル酸構造は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体を分子内で脱アルコール環化縮合させることにより形成できる。
上記一般式(2)におけるX1が窒素原子であるグルタルイミド構造は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル重合体をメチルアミンなどのイミド化剤によりイミド化することにより形成できる。
さらに詳しくは、主鎖に無水グルタル酸構造あるいはグルタルイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、WO2007/26659号公報、WO2005/108438号公報に記載の方法により製造できる。
上記一般式(2)におけるX1が窒素原子であるグルタルイミド構造は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル重合体をメチルアミンなどのイミド化剤によりイミド化することにより形成できる。
さらに詳しくは、主鎖に無水グルタル酸構造あるいはグルタルイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、WO2007/26659号公報、WO2005/108438号公報に記載の方法により製造できる。
(メタ)アクリル系樹脂が主鎖に無水グルタル酸構造あるいはグルタルイミド構造を有する場合、当該重合体における無水グルタル酸構造あるいはグルタルイミド構造の含有率は、特に限定はされないが、例えば5〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは10〜60質量%、特に好ましくは20〜50質量%である。
なお、(メタ)アクリル系樹脂における無水グルタル酸構造およびグルタルイミド構造の含有率は、例えば、特開2006−131689号公報に記載の手法により求めることができる。
前記無水マレイン酸構造または前記N−置換マレイミド構造としては、例えば、下記一般式(3)に示される構造(下記一般式(3)において、X2が酸素原子である場合には無水マレイン酸構造となり、X2が窒素原子である場合にはN−置換マレイミド構造となる)が好ましく挙げられる。
上記一般式(3)におけるR7、R8は、互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、X2は酸素原子または窒素原子である。X2が酸素原子であるとき、R9は存在せず、X2が窒素原子のとき、R9は、水素原子、炭素数1から6の直鎖アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基またはフェニル基である。
上記一般式(3)におけるX2が酸素原子である無水マレイン酸構造は、例えば、無水マレイン酸を(メタ)アクリル酸エステル等とともに重合に供することにより形成できる。
上記一般式(3)におけるX2が窒素原子であるN−置換マレイミド構造は、例えば、フェニルマレイミドなどのN−置換マレイミドを(メタ)アクリル酸エステル等とともに重合に供することにより形成できる。
さらに詳しくは、主鎖に無水マレイン酸構造あるいはN−置換マレイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、特開昭57−153008号公報、特開2007−31537号公報に記載の方法により製造できる。
上記一般式(3)におけるX2が窒素原子であるN−置換マレイミド構造は、例えば、フェニルマレイミドなどのN−置換マレイミドを(メタ)アクリル酸エステル等とともに重合に供することにより形成できる。
さらに詳しくは、主鎖に無水マレイン酸構造あるいはN−置換マレイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、特開昭57−153008号公報、特開2007−31537号公報に記載の方法により製造できる。
(メタ)アクリル系樹脂が主鎖に無水マレイン酸構造あるいはN−置換マレイミド構造を有する場合、当該樹脂における無水マレイン酸構造あるいはN−置換マレイミド構造の含有率は、特に限定はされないが、例えば5〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは10〜60質量%、特に好ましくは20〜50質量%である。
なお、(メタ)アクリル系樹脂における無水マレイン酸構造あるいはN−置換マレイミド構造の含有率は、無水マレイン酸あるいはN−置換マレイミドの共重合量から求めることができる。
負複屈折性層は、上述した負の固有複屈折性を示すポリマーと、必要に応じて正の固有複屈折性を示すポリマーとを(共)重合体またはポリマーアロイとして組合せた樹脂で形成される。この負複屈折性層を形成する樹脂のガラス転移温度(Tg)は、110℃以上であることが好ましく、より好ましくは115℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。また該樹脂の重量平均分子量は、例えば、1,000〜300,000が好ましく、より好ましくは5,000〜250,000、さらに好ましくは10,000〜200,000である。
負複屈折性層の厚みは、好ましくは20μm以上、200μm以下であり、より好ましくは30μm以上、150μm以下であり、さらに好ましくは40μm以上、100μm以下である。
負複屈折性層のガラス転移温度(Tg)は、耐熱性の観点から、110℃以上であることが好ましく、より好ましくは115℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。
負複屈折性層の面内位相差Reは10nm以上であることが好ましく、より好ましくは20nm以上である。負複屈折性層の面内位相差Reが前記範囲であると、積層位相差フィルムの位相差を所望のレベルに設計し易くなり、積層フィルムを薄膜化したり、波長分散性を改善する(波長分散性をフラットに近づけ、さらには逆波長分散性にする)うえで、有利となる。
本発明の積層位相差フィルムの厚さ(総膜厚)は、特に制限されないが、通常、10μm以上、200μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以上、150μm以下、さらに好ましくは40μm以上、120μm以下である。本発明では、積層体の面内位相差Reを大きく発現させることが可能であるので、用途等に応じて薄膜化することができる。
本発明の積層位相差フィルムの表面には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、各種の機能性コーティング層が形成されていてもよい。機能性コーティング層としては、例えば、帯電防止層、粘接着剤層、接着層、易接着層、防眩(ノングレア)層、光触媒層などの防汚層、反射防止層、ハードコート層、紫外線遮蔽層、熱線遮蔽層、電磁波遮蔽層、ガスバリヤー層などが挙げられる。
(積層位相差フィルムの製造方法)
本発明の積層位相差フィルムの製造方法は、負の複屈折性を発現しうるフィルムを一軸延伸する第一延伸工程と、前記第一延伸工程で延伸したフィルムの上にウレタン樹脂を含む組成物を塗布し、乾燥することによりウレタン樹脂層を形成する積層工程と、前記積層工程で得られた積層体を前記第一延伸工程で一軸延伸した方向と略直交する方向に一軸延伸する第二延伸工程とを含む。以下、工程ごとに説明する。
本発明の積層位相差フィルムの製造方法は、負の複屈折性を発現しうるフィルムを一軸延伸する第一延伸工程と、前記第一延伸工程で延伸したフィルムの上にウレタン樹脂を含む組成物を塗布し、乾燥することによりウレタン樹脂層を形成する積層工程と、前記積層工程で得られた積層体を前記第一延伸工程で一軸延伸した方向と略直交する方向に一軸延伸する第二延伸工程とを含む。以下、工程ごとに説明する。
(第一延伸工程)
第一延伸工程では、負の複屈折性を発現しうるフィルム(基材フィルム)を一軸延伸する。
第一延伸工程において延伸に供する基材フィルムは、延伸されたときに負の複屈折性を発現しうるフィルムであり、負複屈折性層を構成する上述した材料を公知の方法(例えばTダイ法、インフレーション法等の溶融押出法など)でフィルム状に製膜することにより作製できる。例えばTダイ法を用いる場合、押出機の先端部にTダイを取り付け、このTダイから押し出したフィルムを巻き取ることで、ロール状に巻回させた未延伸フィルムを得ることができる。このとき、巻き取りの温度および速度を制御して、フィルムの押し出し方向に延伸を加えることも可能であり、これを利用して、フィルム化と、第一延伸工程における一軸延伸とを同時に行うこともできる。
第一延伸工程において延伸に供する基材フィルムの延伸前の膜厚は、例えば50μm以上、400μm以下が好ましく、より好ましくは100μm以上、300μm以下である。
第一延伸工程では、負の複屈折性を発現しうるフィルム(基材フィルム)を一軸延伸する。
第一延伸工程において延伸に供する基材フィルムは、延伸されたときに負の複屈折性を発現しうるフィルムであり、負複屈折性層を構成する上述した材料を公知の方法(例えばTダイ法、インフレーション法等の溶融押出法など)でフィルム状に製膜することにより作製できる。例えばTダイ法を用いる場合、押出機の先端部にTダイを取り付け、このTダイから押し出したフィルムを巻き取ることで、ロール状に巻回させた未延伸フィルムを得ることができる。このとき、巻き取りの温度および速度を制御して、フィルムの押し出し方向に延伸を加えることも可能であり、これを利用して、フィルム化と、第一延伸工程における一軸延伸とを同時に行うこともできる。
第一延伸工程において延伸に供する基材フィルムの延伸前の膜厚は、例えば50μm以上、400μm以下が好ましく、より好ましくは100μm以上、300μm以下である。
第一延伸工程における延伸は、一軸延伸で行う。この一軸延伸は、縦延伸(フィルム巻取り方向の延伸)であってもよいし、横延伸(フィルム幅方向の延伸)であってもよいが、好ましくは縦延伸とするのがよい。縦延伸の場合、フィルムの幅方向の変化を自由とする自由端一軸延伸でもよいし、フィルムの幅方向の変化を固定とする固定端一軸延伸でもよいが、位相差(複屈折)を大きく発現させるうえでは自由端一軸延伸が好ましい。延伸は、通常、加熱雰囲気下で行われる。
フィルムに対する加熱雰囲気下の延伸には、特に制限なく公知の延伸機が使用できる。縦延伸機としては、例えばオーブン延伸機が好ましい。オーブン縦延伸機は、一般に、オーブンと、当該オーブンの入口側および出口側に各々設けられた搬送ロールとから構成される。オーブンの入口側の搬送ロールと、出口側の搬送ロールとの間に周速差を与えることによって、フィルムがその搬送方向に延伸される。横延伸機としては、例えばテンター延伸機が好ましい。テンター延伸機は、グリップ式でもピン式でも構わないが、フィルムの引き裂けが生じ難いことから、グリップ式が好ましい。グリップ式のテンター延伸機は、一般に、横延伸用のクリップ走行装置とオーブンとから構成される。クリップ走行装置では、フィルムの横端部がクリップで挟まれた状態で当該フィルムが搬送される。このとき、クリップ走行装置のガイドレールを開き、左右2列のクリップ間の距離を広げることによって、フィルムが横延伸される。
第一延伸工程において一軸延伸を行う際の延伸倍率は、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.5倍以上である。延伸倍率が低すぎると、位相差(複屈折)の発現が不充分になる虞がある。一方、延伸倍率が高くなるにつれ、位相差(複屈折)の発現性やフィルムの機械的強度は向上するが、ある程度高くなりすぎると、それらの向上効果は小さくなるので、前記延伸倍率は、好ましくは10倍以下、より好ましくは4倍以下である。
第一延伸工程において一軸延伸を行う際の延伸温度は、基材フィルムのガラス転移温度近傍であることが好ましく、具体的には、(ガラス転移温度−30℃)〜(ガラス転移温度+100℃)の範囲内が好ましく、(ガラス転移温度−20℃)〜(ガラス転移温度+80℃)の範囲内がより好ましく、(ガラス転移温度−10℃)〜(ガラス転移温度+40℃)の範囲内がさらに好ましい。延伸温度が低すぎると、十分な延伸倍率が得られない虞があり、一方、高すぎると、樹脂組成物の流動(フロー)が起こり、安定な延伸が行えない虞がある。
(積層工程)
積層工程においては、前記第一延伸工程で延伸したフィルムの上にウレタン樹脂を含む組成物(好ましくはウレタン樹脂の水系分散体を含む組成物)を塗布、乾燥して、正の複屈折性を発現しうるウレタン樹脂層を形成する。
ウレタン樹脂を含む組成物の塗布には、例えば、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、スロットオリフィスコート法、カーテンコート法、ファウンテンコート法など、公知の塗布方法を適用すればよい。
積層工程においては、前記第一延伸工程で延伸したフィルムの上にウレタン樹脂を含む組成物(好ましくはウレタン樹脂の水系分散体を含む組成物)を塗布、乾燥して、正の複屈折性を発現しうるウレタン樹脂層を形成する。
ウレタン樹脂を含む組成物の塗布には、例えば、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、スロットオリフィスコート法、カーテンコート法、ファウンテンコート法など、公知の塗布方法を適用すればよい。
ウレタン樹脂を含む組成物の塗布量は、乾燥膜厚が、例えば5μm以上、100μm以下となるようにするのが好ましく、より好ましくは10μm以上、60μm以下である。
ウレタン樹脂を含む組成物を塗布した後には、該組成物中の溶媒を除去するために乾燥を行う。加熱は、例えば、乾燥機、オーブンなど加熱手段を備えた公知の装置を用いて行うことができる。乾燥時間(加熱時間)は30秒〜10分程度である。乾燥温度(加熱温度)は、特に制限されないが、例えば70℃〜200℃が好ましく、より好ましくは80℃〜150℃である。乾燥の初期段階ではウレタン樹脂を含む組成物中の溶媒の沸点以下の温度とし、その後昇温して最終的に基材フィルム(負の複屈折性を発現しうるフィルム)のガラス転移温度(Tg)未満とすることが好ましい。さらに、上記ウレタン樹脂を含む組成物がウレタン樹脂の水系分散体を含むものである場合、水を除去するには乾燥温度を100℃以上にすることが好ましく、これに鑑みると、ウレタン樹脂の水系分散体を用いる際には基材フィルム(負の複屈折性を発現しうるフィルム)としてガラス転移温度(Tg)が100℃以上(好ましくは110℃以上)であるフィルムを用いることが好ましい。
ウレタン樹脂を含む組成物を塗布した後には、該組成物中の溶媒を除去するために乾燥を行う。加熱は、例えば、乾燥機、オーブンなど加熱手段を備えた公知の装置を用いて行うことができる。乾燥時間(加熱時間)は30秒〜10分程度である。乾燥温度(加熱温度)は、特に制限されないが、例えば70℃〜200℃が好ましく、より好ましくは80℃〜150℃である。乾燥の初期段階ではウレタン樹脂を含む組成物中の溶媒の沸点以下の温度とし、その後昇温して最終的に基材フィルム(負の複屈折性を発現しうるフィルム)のガラス転移温度(Tg)未満とすることが好ましい。さらに、上記ウレタン樹脂を含む組成物がウレタン樹脂の水系分散体を含むものである場合、水を除去するには乾燥温度を100℃以上にすることが好ましく、これに鑑みると、ウレタン樹脂の水系分散体を用いる際には基材フィルム(負の複屈折性を発現しうるフィルム)としてガラス転移温度(Tg)が100℃以上(好ましくは110℃以上)であるフィルムを用いることが好ましい。
(第二延伸工程)
第二延伸工程では、積層工程で得られた積層体を第一延伸工程で一軸延伸した方向と略直交する方向に一軸延伸する。これにより、正複屈折性層となるウレタン樹脂層は、一軸延伸され、負複屈折性層となる基材フィルムは、二軸延伸されることになる。
第二延伸工程では、積層工程で得られた積層体を第一延伸工程で一軸延伸した方向と略直交する方向に一軸延伸する。これにより、正複屈折性層となるウレタン樹脂層は、一軸延伸され、負複屈折性層となる基材フィルムは、二軸延伸されることになる。
第二延伸工程における延伸は、一軸延伸で行う。この一軸延伸は、第一延伸工程で一軸延伸した方向と略直交する方向に行うものであり、第一延伸工程で縦延伸した場合には横延伸で行う。第二延伸工程における延伸は、第一延伸工程における延伸と同様、通常、加熱雰囲気下で行われ、また第一延伸工程における延伸と同様、特に制限なく上述した公知の延伸機が使用できる。
第二延伸工程において一軸延伸を行う際の延伸倍率は、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.5倍以上である。延伸倍率が低すぎると、位相差(複屈折)の発現が不充分になる虞がある。一方、延伸倍率が高くなるにつれ、位相差(複屈折)の発現性やフィルムの機械的強度は向上するが、ある程度高くなりすぎると、それらの向上効果は小さくなるので、前記延伸倍率は、好ましくは10倍以下、より好ましくは4倍以下である。
第二延伸工程における一軸延伸は、通常、加熱雰囲気下で行われる。第二延伸工程において一軸延伸を行う際の延伸温度は、基材フィルム(負の複屈折性を発現しうるフィルム)のガラス転移温度を(Tg)℃とすると、(Tg−30)℃〜(Tg+100)℃の範囲が好ましく、(Tg−20)℃〜(Tg+80)℃の範囲がより好ましく、(Tg−10)℃〜(Tg+40)℃の範囲がさらに好ましい。
本発明の製造方法においては、上述した第一延伸工程、積層工程、および第二延伸工程を、一貫工程で行ってもよい。
本発明の製造方法においては、前記積層工程における乾燥時の加熱と、第二延伸工程の加熱は、一方が他方を兼ねることが好ましい。これにより、より生産性を高めることが可能になる。積層工程における乾燥時の加熱と第二延伸工程の加熱の一方が他方を兼ねるようにするには、所謂インライン塗工方式で、積層工程における乾燥時の加熱と第二延伸工程とを連続して行い、1)積層工程で組成物を塗布した後、そのままの状態で(乾燥のための加熱を行うことなく)第二延伸工程に供するか、2)積層工程で加熱された乾燥体をそのまま直ちに第二延伸に供すればよい。前記1)の場合、第二延伸に供する積層体を所定の延伸温度に昇温するために設けられた延伸工程用の加熱ゾーンで、積層工程で塗布された組成物の乾燥(溶媒除去)を行うことができるので、通常、延伸工程用の加熱ゾーンとは別に設けられていた積層工程における溶媒除去のための加熱ゾーン(加熱装置)が不要となり、工程が簡略化できる。一方、前記2)の場合、乾燥体(積層体)は積層工程における溶媒除去のための加熱ゾーンで既に昇温されているので、そのまま延伸工程用の加熱ゾーンを経ることなく、第二延伸に供することができ、工程が簡略化できる。好ましくは、前記1)の手法により、第二延伸工程の加熱に積層工程における乾燥時の加熱を兼ねさせるのがよい。
また本来、積層工程と第二延伸工程でそれぞれ加熱するところを、上述のようにいずれか一方が他方を兼ねるようにすれば、加熱が1回ですむので、第一延伸工程で発現させた負複屈折性層(基材フィルム)の位相差にかかる熱履歴が抑えられ、熱履歴に起因する位相差の低下を抑制できるという効果も得られる。
さらに、通常、積層工程において塗布後、乾燥する際の加熱は、基材フィルムのガラス転移温度(Tg)未満で、且つ除去する溶媒の沸点以上の温度で行うことが望まれるが、積層工程における乾燥時の加熱と第二延伸工程とを連続して行うインライン塗工方式においては、基材フィルム(負の複屈折性を発現しうるフィルム)のガラス転移温度に制約されることなく温度を上げて乾燥することができるため乾燥時間も短縮できる。
さらに、通常、積層工程において塗布後、乾燥する際の加熱は、基材フィルムのガラス転移温度(Tg)未満で、且つ除去する溶媒の沸点以上の温度で行うことが望まれるが、積層工程における乾燥時の加熱と第二延伸工程とを連続して行うインライン塗工方式においては、基材フィルム(負の複屈折性を発現しうるフィルム)のガラス転移温度に制約されることなく温度を上げて乾燥することができるため乾燥時間も短縮できる。
以上のような本発明の製造方法によれば、上述した本発明の積層位相差フィルムのうち、正複屈折性層が一軸延伸され、負複屈折性層が二軸延伸されてなる、第一の好ましい態様の積層位相差フィルムを、良好な生産性で簡便に得ることができる。
本発明にかかる積層位相差フィルムの用途は特に限定されないが、例えば、VAモードやIPSモードの液晶表示装置(LCD)をはじめ、各種モードのLCDの光学補償(色調補償、視野角補償)に使用できる。また、LCD以外にも、様々な画像表示装置、光学装置に好適に使用できる。
複数の位相差フィルムを作製後に貼合して積層位相差フィルムとする場合、貼合時のフィルム貼り合わせ角度がずれたり、接着剤が必要になるのでフィルム厚みが増し工程も煩雑になるといった問題が生じるが、本発明の積層位相差フィルムによれば、貼合工程が不要であるので工程が簡略化でき、また延伸時に配向角が決定されるため層間の角度精度も高くなる。
本発明の積層位相差フィルムを用いて偏光板を作製する場合、両面に偏光子保護フィルムを有する偏光板と貼合してもよいし、本発明の積層位相差フィルムを偏光子保護フィルムとして片面に用いてもよい。
複数の位相差フィルムを作製後に貼合して積層位相差フィルムとする場合、貼合時のフィルム貼り合わせ角度がずれたり、接着剤が必要になるのでフィルム厚みが増し工程も煩雑になるといった問題が生じるが、本発明の積層位相差フィルムによれば、貼合工程が不要であるので工程が簡略化でき、また延伸時に配向角が決定されるため層間の角度精度も高くなる。
本発明の積層位相差フィルムを用いて偏光板を作製する場合、両面に偏光子保護フィルムを有する偏光板と貼合してもよいし、本発明の積層位相差フィルムを偏光子保護フィルムとして片面に用いてもよい。
本願は、2012年8月30日に出願された日本国特許出願第2012−190674号に基づく優先権の利益を主張するものである。2012年8月30日に出願された日本国特許出願第2012−190674号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
以下に、実施例および比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下では特にことわりのない場合、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ示す。
以下の実施例における各種物性の測定および評価は、以下の方法で行った。
<重量平均分子量>
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下の測定条件で求めた。
測定システム:東ソー社製「GPCシステムHLC−8220」
展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業製、特級)
溶媒流量:0.6mL/分
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー社製「PS−オリゴマーキット」)
測定側カラム構成:ガードカラム(東ソー社製「TSK guardcolumn SuperHZ−L」)、分離カラム(東ソー社製「TSK Gel Super HZM−M」)、2本直列接続
リファレンス側カラム構成:リファレンスカラム(東ソー社製「TSK gel SuperH−RC」)
<重量平均分子量>
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下の測定条件で求めた。
測定システム:東ソー社製「GPCシステムHLC−8220」
展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業製、特級)
溶媒流量:0.6mL/分
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー社製「PS−オリゴマーキット」)
測定側カラム構成:ガードカラム(東ソー社製「TSK guardcolumn SuperHZ−L」)、分離カラム(東ソー社製「TSK Gel Super HZM−M」)、2本直列接続
リファレンス側カラム構成:リファレンスカラム(東ソー社製「TSK gel SuperH−RC」)
<ガラス転移温度>
樹脂およびフィルムのガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121の規定に準拠して測定した。具体的には、示差走査熱量計(リガク社製「Thermo plus EVO DSC−8230」)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により求めた。リファレンスには、α−アルミナを用いた。
樹脂およびフィルムのガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121の規定に準拠して測定した。具体的には、示差走査熱量計(リガク社製「Thermo plus EVO DSC−8230」)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により求めた。リファレンスには、α−アルミナを用いた。
<フィルムの膜厚>
フィルムまたは層の膜厚は、デジマチックマイクロメーター(ミツトヨ社製)を用いて測定した。
フィルムまたは層の膜厚は、デジマチックマイクロメーター(ミツトヨ社製)を用いて測定した。
<積層位相差フィルムの位相差>
まず、屈折率計(アタゴ社製「デジタルアッベ屈折計DR−M2」)を用いて、負の屈折性を有する層(基材フィルム)の測定波長589nmに対する平均屈折率を、23℃で、JIS K7142に準拠して測定した。
次に、積層位相差フィルムの波長589nmの光に対するフィルムの面内位相差値Re、厚み方向位相差値RthおよびNZ係数を、全自動複屈折計(王子計測機器社製「KOBRA−WR」)を用いて測定した。具体的には、上記で得た負の屈折性を有する層の平均屈折率を入力し、積層フィルムの膜厚d(nm)、三次元屈折率nx、ny、nzの値を測定し、下記式より求めた。ここで、「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸に垂直な方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率であり、dは位相差フィルムの厚み(nm)である。なお厚さ方向位相差値Rthは、遅相軸を傾斜軸として40°傾斜させて測定した。
面内位相差Re=(nx−ny)×d
厚み方向位相差Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
NZ係数=(Rth/Re)+0.5
まず、屈折率計(アタゴ社製「デジタルアッベ屈折計DR−M2」)を用いて、負の屈折性を有する層(基材フィルム)の測定波長589nmに対する平均屈折率を、23℃で、JIS K7142に準拠して測定した。
次に、積層位相差フィルムの波長589nmの光に対するフィルムの面内位相差値Re、厚み方向位相差値RthおよびNZ係数を、全自動複屈折計(王子計測機器社製「KOBRA−WR」)を用いて測定した。具体的には、上記で得た負の屈折性を有する層の平均屈折率を入力し、積層フィルムの膜厚d(nm)、三次元屈折率nx、ny、nzの値を測定し、下記式より求めた。ここで、「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸に垂直な方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率であり、dは位相差フィルムの厚み(nm)である。なお厚さ方向位相差値Rthは、遅相軸を傾斜軸として40°傾斜させて測定した。
面内位相差Re=(nx−ny)×d
厚み方向位相差Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
NZ係数=(Rth/Re)+0.5
<固有複屈折>
樹脂の固有複屈折の正負は、測定対象とする樹脂で形成した一軸延伸フィルムについて、上記位相差測定を行い、遅相軸方向がフィルムの延伸方向と平行の場合(略平行の場合を含む)、樹脂の固有複屈折を正とし、遅相軸方向がフィルムの延伸方向と垂直の場合(略垂直の場合を含む)、樹脂の固有複屈折を負とした。
樹脂の固有複屈折の正負は、測定対象とする樹脂で形成した一軸延伸フィルムについて、上記位相差測定を行い、遅相軸方向がフィルムの延伸方向と平行の場合(略平行の場合を含む)、樹脂の固有複屈折を正とし、遅相軸方向がフィルムの延伸方向と垂直の場合(略垂直の場合を含む)、樹脂の固有複屈折を負とした。
(製造例1:アクリル樹脂(P1)の調製)
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応釜に、メタクリル酸メチル(MMA)40部、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)10部、重合溶媒としてトルエン50部および酸化防止剤(ADEKA社製「アデカスタブ(登録商標)2112」)0.025部を仕込み、この反応釜に窒素を通じつつ、105℃まで昇温した。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製「ルペロックス(登録商標)570」)0.05部を添加するとともに、前記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.10部を3時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させ、さらに4時間の熟成を行った。
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応釜に、メタクリル酸メチル(MMA)40部、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)10部、重合溶媒としてトルエン50部および酸化防止剤(ADEKA社製「アデカスタブ(登録商標)2112」)0.025部を仕込み、この反応釜に窒素を通じつつ、105℃まで昇温した。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製「ルペロックス(登録商標)570」)0.05部を添加するとともに、前記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.10部を3時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させ、さらに4時間の熟成を行った。
次に、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)として、リン酸2−エチルヘキシル(堺化学工業社製「Phoslex A−8」)0.05部を加え、約90〜110℃の還流下において2時間ラクトン環構造を形成するための環化縮合反応を進行させた。次に、得られた重合溶液を熱交換器に通して240℃まで昇温し、当該温度において環化縮合反応をさらに進行させた。
次に、得られた重合溶液を、バレル温度240℃、回転速度100rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)で、リアベント数1個およびフォアベント数4個(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)を有し、第3ベントと第4ベントとの間にサイドフィーダーが設けられ、先端部にリーフディスク型のポリマーフィルタ(濾過精度5μm)がギアポンプを介して配置されたベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に、樹脂量換算で70部/時間(hour)の処理速度で導入し、脱揮を行った。脱揮に際しては、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂:スチレン単位/アクリロニトリル単位(質量比)=73/27、重量平均分子量22万)のペレットをサイドフィーダーから、30部/時間(hour)の投入速度で投入した。さらに脱揮の際には、別途準備しておいた酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液を1.06部/時間(hour)の投入速度で第1ベントの後ろから投入し、イオン交換水を0.34部/時間(hour)の投入速度で第2および第3ベントの後ろから投入した。ここで酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液には、フェノール系酸化防止剤として50部のペンタエリスリトールテトラキス−[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASFジャパン社製「イルガノックス(登録商標)1010」)と、環化触媒失活剤として35部のオクチル酸亜鉛(日本化学産業社製「ニッカオクチクス亜鉛3.6%」)とを、トルエン200部に溶解させた溶液を用いた。
脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態にある樹脂を当該押出機の先端からポリマーフィルタで濾過しながら排出し、ペレタイザーによりペレット化することにより、透明なペレット状のアクリル樹脂(P1)を得た。
得られたアクリル樹脂(P1)は、ラクトン環構造を主鎖に有する(メタ)アクリル重合体(ラクトン環構造の含有率:28.3質量%)を70質量%、スチレン−アクリロニトリル共重合体を30質量%含有するものであり、重量平均分子量(Mw)は14.8万、ガラス転移温度(Tg)は122℃であり、その固有複屈折は負であった。
得られたアクリル樹脂(P1)は、ラクトン環構造を主鎖に有する(メタ)アクリル重合体(ラクトン環構造の含有率:28.3質量%)を70質量%、スチレン−アクリロニトリル共重合体を30質量%含有するものであり、重量平均分子量(Mw)は14.8万、ガラス転移温度(Tg)は122℃であり、その固有複屈折は負であった。
(製造例2:アクリル樹脂(P2)の調製)
脱揮に際し、サイドフィーダーから投入するスチレン−アクリロニトリル共重合体の投入速度を46.7部/時間(hour)に変更したこと以外は、製造例1と同様にして、透明なペレット状のアクリル樹脂(P2)を得た。
得られたアクリル樹脂(P2)は、ラクトン環構造を主鎖に有する(メタ)アクリル重合体(ラクトン環構造の含有率:28.3質量%)を60質量%、スチレン−アクリロニトリル共重合体を40質量%含有するものであり、重量平均分子量(Mw)は16.0万、ガラス転移温度(Tg)は120℃であり、その固有複屈折は負であった。
脱揮に際し、サイドフィーダーから投入するスチレン−アクリロニトリル共重合体の投入速度を46.7部/時間(hour)に変更したこと以外は、製造例1と同様にして、透明なペレット状のアクリル樹脂(P2)を得た。
得られたアクリル樹脂(P2)は、ラクトン環構造を主鎖に有する(メタ)アクリル重合体(ラクトン環構造の含有率:28.3質量%)を60質量%、スチレン−アクリロニトリル共重合体を40質量%含有するものであり、重量平均分子量(Mw)は16.0万、ガラス転移温度(Tg)は120℃であり、その固有複屈折は負であった。
(製造例3:ウレタン樹脂組成物(D1)の調製)
市販のウレタン樹脂分散体(三井化学ポリウレタン社製「タケラック(登録商標)WS−4000」;固形分30質量%)をウレタン樹脂組成物(D1)とした。このウレタン樹脂組成物(D1)に含まれるウレタン樹脂の固有複屈折は正であった。
市販のウレタン樹脂分散体(三井化学ポリウレタン社製「タケラック(登録商標)WS−4000」;固形分30質量%)をウレタン樹脂組成物(D1)とした。このウレタン樹脂組成物(D1)に含まれるウレタン樹脂の固有複屈折は正であった。
(製造例4:ウレタン樹脂組成物(D2)の調製)
市販のウレタン樹脂分散体(ADEKA社製「アデカボンタイター(登録商標)HUX550」;固形分28質量%)90部と、架橋剤(日本触媒社製「エポクロス(登録商標)WS−700」;固形分25質量%)10部とを混合して、ウレタン樹脂組成物(D2)とした。このウレタン樹脂組成物(D2)に含まれるウレタン樹脂の固有複屈折は正であった。
市販のウレタン樹脂分散体(ADEKA社製「アデカボンタイター(登録商標)HUX550」;固形分28質量%)90部と、架橋剤(日本触媒社製「エポクロス(登録商標)WS−700」;固形分25質量%)10部とを混合して、ウレタン樹脂組成物(D2)とした。このウレタン樹脂組成物(D2)に含まれるウレタン樹脂の固有複屈折は正であった。
(製造例5:アクリル樹脂組成物(D3)の調製)
市販のアクリル樹脂分散体(BASF社製「JONCRYL631」;固形分50質量%)60部と、純水40部とを混合して、アクリル樹脂組成物(D3)とした。このアクリル樹脂組成物(D3)に含まれるアクリル樹脂組成物の固有複屈折は正であった。
市販のアクリル樹脂分散体(BASF社製「JONCRYL631」;固形分50質量%)60部と、純水40部とを混合して、アクリル樹脂組成物(D3)とした。このアクリル樹脂組成物(D3)に含まれるアクリル樹脂組成物の固有複屈折は正であった。
(実施例1)
製造例1で得られたアクリル樹脂(P1)を、先端部にポリマーフィルタ(濾過精度5μm)およびTダイを備えた単軸押出機を用いて270℃で溶融押出し、厚さ220μmの帯状のアクリル系フィルムを得た。次いで、得られたアクリル系フィルムを、二軸延伸機(東洋精機社製「X6−S」)を用いて、当該アクリル系フィルムの縦方向(溶融押出時の流れ方向)に、延伸温度126℃、延伸倍率2.0倍で自由端一軸延伸した(第一延伸工程;縦延伸)。この縦延伸後のフィルムの膜厚は148μmであり、ガラス転移温度(Tg)は122℃であった。
次に、縦延伸後のアクリル系フィルムの一方の面(表面)に、ウレタン樹脂組成物(D1)を乾燥後の樹脂塗膜の膜厚が55μmとなるように塗工試験機を用いて塗布した後、フィルム全体を100℃で3分間乾燥した。次いで、乾燥後の積層フィルムを、前記二軸延伸機を用いて、フィルムの横方向(溶融押出時の幅方向)に、延伸温度130℃、延伸倍率1.6倍で固定端一軸延伸した(第二延伸工程;横延伸)。この横延伸後のウレタン樹脂塗膜の膜厚は34μmであった。
このようにして、アクリル樹脂(P1)からなる負の複屈折性を有する層と、ウレタン樹脂組成物(D1)からなる正の複屈折性を有する層との積層体である総膜厚116μmの積層位相差フィルムを得た。
得られた積層位相差フィルムの面内位相差値Re、厚み方向位相差値RthおよびNZ係数は、それぞれ表1に示す通りであった。
また得られた積層位相差フィルムにおける正複屈折性層は、後述する比較例2との対比より、面内位相差値Reが126nm、厚み方向位相差値Rthが120nmであるので、正複屈折性層のNZ係数は1.45であった。
製造例1で得られたアクリル樹脂(P1)を、先端部にポリマーフィルタ(濾過精度5μm)およびTダイを備えた単軸押出機を用いて270℃で溶融押出し、厚さ220μmの帯状のアクリル系フィルムを得た。次いで、得られたアクリル系フィルムを、二軸延伸機(東洋精機社製「X6−S」)を用いて、当該アクリル系フィルムの縦方向(溶融押出時の流れ方向)に、延伸温度126℃、延伸倍率2.0倍で自由端一軸延伸した(第一延伸工程;縦延伸)。この縦延伸後のフィルムの膜厚は148μmであり、ガラス転移温度(Tg)は122℃であった。
次に、縦延伸後のアクリル系フィルムの一方の面(表面)に、ウレタン樹脂組成物(D1)を乾燥後の樹脂塗膜の膜厚が55μmとなるように塗工試験機を用いて塗布した後、フィルム全体を100℃で3分間乾燥した。次いで、乾燥後の積層フィルムを、前記二軸延伸機を用いて、フィルムの横方向(溶融押出時の幅方向)に、延伸温度130℃、延伸倍率1.6倍で固定端一軸延伸した(第二延伸工程;横延伸)。この横延伸後のウレタン樹脂塗膜の膜厚は34μmであった。
このようにして、アクリル樹脂(P1)からなる負の複屈折性を有する層と、ウレタン樹脂組成物(D1)からなる正の複屈折性を有する層との積層体である総膜厚116μmの積層位相差フィルムを得た。
得られた積層位相差フィルムの面内位相差値Re、厚み方向位相差値RthおよびNZ係数は、それぞれ表1に示す通りであった。
また得られた積層位相差フィルムにおける正複屈折性層は、後述する比較例2との対比より、面内位相差値Reが126nm、厚み方向位相差値Rthが120nmであるので、正複屈折性層のNZ係数は1.45であった。
(実施例2)
製造例2で得られたアクリル樹脂(P2)を、先端部にポリマーフィルタ(濾過精度5μm)およびTダイを備えた単軸押出機を用いて270℃で溶融押出し、厚さ145μmの帯状のアクリル系フィルムを得た。次いで、得られたアクリル系フィルムを、溶融押出に続いて連続的にオーブン縦延伸機に供給し、当該延伸機にて当該アクリル系フィルムの縦方向(溶融押出時の流れ方向)に、延伸温度126℃、延伸倍率2.7倍で自由端一軸延伸した(第一延伸工程;縦延伸)。この縦延伸後のフィルムの膜厚は89μmであり、ガラス転移温度(Tg)は120℃であった。
製造例2で得られたアクリル樹脂(P2)を、先端部にポリマーフィルタ(濾過精度5μm)およびTダイを備えた単軸押出機を用いて270℃で溶融押出し、厚さ145μmの帯状のアクリル系フィルムを得た。次いで、得られたアクリル系フィルムを、溶融押出に続いて連続的にオーブン縦延伸機に供給し、当該延伸機にて当該アクリル系フィルムの縦方向(溶融押出時の流れ方向)に、延伸温度126℃、延伸倍率2.7倍で自由端一軸延伸した(第一延伸工程;縦延伸)。この縦延伸後のフィルムの膜厚は89μmであり、ガラス転移温度(Tg)は120℃であった。
次いで、縦延伸後のアクリル系フィルムの一方の面(表面)に、製造例3で得たウレタン樹脂組成物(D2)を乾燥後の樹脂塗膜の膜厚が12μmとなるように塗工試験機を用いて塗布した後、フィルム全体を100℃で3分間乾燥した。次いで、乾燥後の積層フィルムを、二軸延伸機(東洋精機社製「X6−S」)を用いて、フィルムの横方向(溶融押出時の幅方向)に、延伸温度128℃、延伸倍率2.0倍で固定端一軸延伸した(第二延伸工程;横延伸)。この横延伸後のウレタン樹脂塗膜の膜厚は6μmであった。
このようにして、アクリル樹脂(P2)からなる負の複屈折性を有する層と、ウレタン樹脂組成物(D2)からなる正の複屈折性を有する層との積層体である総膜厚51μmの積層位相差フィルムを得た。
得られた積層位相差フィルムの面内位相差値Re、厚み方向位相差値RthおよびNZ係数は、それぞれ表1に示す通りであった。
このようにして、アクリル樹脂(P2)からなる負の複屈折性を有する層と、ウレタン樹脂組成物(D2)からなる正の複屈折性を有する層との積層体である総膜厚51μmの積層位相差フィルムを得た。
得られた積層位相差フィルムの面内位相差値Re、厚み方向位相差値RthおよびNZ係数は、それぞれ表1に示す通りであった。
(実施例3)
製造例1で得られたアクリル樹脂(P1)を、先端部にポリマーフィルタ(濾過精度5μm)およびTダイを備えた単軸押出機を用いて270℃で溶融押出し、厚さ220μmの帯状のアクリル系フィルムを得た。次いで、得られたアクリル系フィルムを、二軸延伸機(東洋精機社製「X6−S」)を用いて、当該アクリル系フィルムの縦方向(溶融押出時の流れ方向)に、延伸温度126℃、延伸倍率2.0倍で自由端一軸延伸した(第一延伸工程;縦延伸)。この縦延伸後のフィルムの膜厚は148μmであり、ガラス転移温度(Tg)は122℃であった。
製造例1で得られたアクリル樹脂(P1)を、先端部にポリマーフィルタ(濾過精度5μm)およびTダイを備えた単軸押出機を用いて270℃で溶融押出し、厚さ220μmの帯状のアクリル系フィルムを得た。次いで、得られたアクリル系フィルムを、二軸延伸機(東洋精機社製「X6−S」)を用いて、当該アクリル系フィルムの縦方向(溶融押出時の流れ方向)に、延伸温度126℃、延伸倍率2.0倍で自由端一軸延伸した(第一延伸工程;縦延伸)。この縦延伸後のフィルムの膜厚は148μmであり、ガラス転移温度(Tg)は122℃であった。
次いで、縦延伸後のアクリル系フィルムの一方の面(表面)に、ウレタン樹脂組成物(D1)を乾燥後の樹脂塗膜の膜厚が27μmとなるように塗工試験機を用いて塗布した後、フィルム全体を100℃で3分間乾燥した。次いで、縦延伸後のアクリル系フィルムのもう一方の面(裏面)にも、ウレタン樹脂組成物(D1)を乾燥後の樹脂塗膜の膜厚が27μmとなるように塗工試験機を用いて塗布した後、フィルム全体を100℃で3分間乾燥した。次いで、乾燥後の積層フィルムを、前記二軸延伸機を用いて、フィルムの横方向(溶融押出時の幅方向)に、延伸温度130℃、延伸倍率2.0倍で固定端一軸延伸した(第二延伸工程;横延伸)。この横延伸後のウレタン樹脂塗膜の膜厚(表面と裏面の合計)は27μmであった。
このようにして、アクリル樹脂(P1)からなる負の複屈折性を有する層の両面に、ウレタン樹脂組成物(D1)からなる正の複屈折性を有する層が積層された積層体である総膜厚99μmの積層位相差フィルムを得た。
得られた積層位相差フィルムの面内位相差値Re、厚み方向位相差値RthおよびNZ係数は、それぞれ表1に示す通りであった。
このようにして、アクリル樹脂(P1)からなる負の複屈折性を有する層の両面に、ウレタン樹脂組成物(D1)からなる正の複屈折性を有する層が積層された積層体である総膜厚99μmの積層位相差フィルムを得た。
得られた積層位相差フィルムの面内位相差値Re、厚み方向位相差値RthおよびNZ係数は、それぞれ表1に示す通りであった。
(実施例4)
製造例1で得られたアクリル樹脂(P1)を、先端部にポリマーフィルタ(濾過精度5μm)およびTダイを備えた単軸押出機を用いて270℃で溶融押出し、厚さ145μmの帯状のアクリル系フィルムを得た。次いで、得られたアクリル系フィルムを、溶融押出に続いて連続的にオーブン縦延伸機に供給し、当該延伸機にて当該アクリル系フィルムの縦方向(溶融押出時の流れ方向)に、延伸温度129℃、延伸倍率2.5倍で自由端一軸延伸した(第一延伸工程;縦延伸)。この縦延伸後のフィルムの膜厚は93μmであり、ガラス転移温度(Tg)は122℃であった。
製造例1で得られたアクリル樹脂(P1)を、先端部にポリマーフィルタ(濾過精度5μm)およびTダイを備えた単軸押出機を用いて270℃で溶融押出し、厚さ145μmの帯状のアクリル系フィルムを得た。次いで、得られたアクリル系フィルムを、溶融押出に続いて連続的にオーブン縦延伸機に供給し、当該延伸機にて当該アクリル系フィルムの縦方向(溶融押出時の流れ方向)に、延伸温度129℃、延伸倍率2.5倍で自由端一軸延伸した(第一延伸工程;縦延伸)。この縦延伸後のフィルムの膜厚は93μmであり、ガラス転移温度(Tg)は122℃であった。
次いで、さらに連続して、縦延伸後のアクリル系フィルムの一方の面(表面)に、ウレタン樹脂組成物(D1)を乾燥後の樹脂塗膜の膜厚が30μmとなるように塗布(インライン塗工)した後、塗布後の積層フィルムをそのままテンター横延伸機に供給し、フィルムの横方向(溶融押出時の幅方向)に、延伸温度128℃、延伸倍率2.1倍で固定端一軸延伸した(第二延伸工程;横延伸)。この横延伸後のウレタン樹脂塗膜の膜厚は14μmであった。
このようにして、アクリル樹脂(P1)からなる負の複屈折性を有する層と、ウレタン樹脂組成物(D1)からなる正の複屈折性を有する層との積層体である総膜厚56μmの積層位相差フィルムを得た。
得られた積層位相差フィルムの面内位相差値Re、厚み方向位相差値RthおよびNZ係数は、それぞれ表1に示す通りであった。
また得られた積層位相差フィルムにおける正複屈折性層は、後述する比較例3との対比より、面内位相差値Reが81nm、厚み方向位相差値Rthが65nmであるので、正複屈折性層のNZ係数は1.30であった。
このようにして、アクリル樹脂(P1)からなる負の複屈折性を有する層と、ウレタン樹脂組成物(D1)からなる正の複屈折性を有する層との積層体である総膜厚56μmの積層位相差フィルムを得た。
得られた積層位相差フィルムの面内位相差値Re、厚み方向位相差値RthおよびNZ係数は、それぞれ表1に示す通りであった。
また得られた積層位相差フィルムにおける正複屈折性層は、後述する比較例3との対比より、面内位相差値Reが81nm、厚み方向位相差値Rthが65nmであるので、正複屈折性層のNZ係数は1.30であった。
(実施例5)
製造例2で得られたアクリル樹脂(P2)を、先端部にポリマーフィルタ(濾過精度5μm)およびTダイを備えた単軸押出機を用いて270℃で溶融押出し、厚さ116μmの帯状のアクリル系フィルムを得た。次いで、得られたアクリル系フィルムを、溶融押出に続いて連続的にオーブン縦延伸機に供給し、当該延伸機にて当該アクリル系フィルムの縦方向(溶融押出時の流れ方向)に、延伸温度128℃、延伸倍率2.4倍で自由端一軸延伸した(第一延伸工程;縦延伸)。この縦延伸後のフィルムの膜厚は75μmであり、ガラス転移温度(Tg)は120℃であった。
製造例2で得られたアクリル樹脂(P2)を、先端部にポリマーフィルタ(濾過精度5μm)およびTダイを備えた単軸押出機を用いて270℃で溶融押出し、厚さ116μmの帯状のアクリル系フィルムを得た。次いで、得られたアクリル系フィルムを、溶融押出に続いて連続的にオーブン縦延伸機に供給し、当該延伸機にて当該アクリル系フィルムの縦方向(溶融押出時の流れ方向)に、延伸温度128℃、延伸倍率2.4倍で自由端一軸延伸した(第一延伸工程;縦延伸)。この縦延伸後のフィルムの膜厚は75μmであり、ガラス転移温度(Tg)は120℃であった。
次いで、縦延伸後のアクリル系フィルムの一方の面(表面)に、ウレタン樹脂組成物(D2)を乾燥後の樹脂塗膜の膜厚が6μmとなるように塗工試験機を用いて塗布した後、フィルム全体を100℃で3分間乾燥した。次いで、縦延伸後のアクリル系フィルムのもう一方の面(裏面)にも、ウレタン樹脂組成物(D2)を乾燥後の樹脂塗膜の膜厚が6μmとなるように塗工試験機を用いて塗布した後、フィルム全体を100℃で3分間乾燥した。次いで、乾燥後の積層フィルムを、テンター横延伸機に供給し、フィルムの横方向(溶融押出時の幅方向)に、延伸温度124℃、延伸倍率2.3倍で固定端一軸延伸した(第二延伸工程;横延伸)。この横延伸後のウレタン樹脂塗膜の膜厚(表面と裏面の合計)は5μmであった。
このようにして、アクリル樹脂(P2)からなる負の複屈折性を有する層の両面に、ウレタン樹脂組成物(D2)からなる正の複屈折性を有する層が積層された積層体である総膜厚37μmの積層位相差フィルムを得た。
得られた積層位相差フィルムの面内位相差値Re、厚み方向位相差値RthおよびNZ係数は、それぞれ表1に示す通りであった。
このようにして、アクリル樹脂(P2)からなる負の複屈折性を有する層の両面に、ウレタン樹脂組成物(D2)からなる正の複屈折性を有する層が積層された積層体である総膜厚37μmの積層位相差フィルムを得た。
得られた積層位相差フィルムの面内位相差値Re、厚み方向位相差値RthおよびNZ係数は、それぞれ表1に示す通りであった。
(比較例1)
実施例1においてウレタン樹脂組成物(D1)に代えて、製造例5で得たアクリル樹脂組成物(D3)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、アクリル樹脂(P1)からなる負の複屈折性を有する層と、アクリル樹脂組成物(D3)からなる正の複屈折性を有する層との積層体である総膜厚116μmの比較用の積層位相差フィルムを得た。
得られた積層位相差フィルムの面内位相差値Re、厚み方向位相差値RthおよびNZ係数は、それぞれ表1に示す通りであった。
実施例1においてウレタン樹脂組成物(D1)に代えて、製造例5で得たアクリル樹脂組成物(D3)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、アクリル樹脂(P1)からなる負の複屈折性を有する層と、アクリル樹脂組成物(D3)からなる正の複屈折性を有する層との積層体である総膜厚116μmの比較用の積層位相差フィルムを得た。
得られた積層位相差フィルムの面内位相差値Re、厚み方向位相差値RthおよびNZ係数は、それぞれ表1に示す通りであった。
(比較例2)
実施例1においてウレタン樹脂組成物(D1)を塗布しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、アクリル樹脂(P1)からなる負の複屈折性を有する層のみからなる総膜厚82μmの比較用の位相差フィルムを得た。
得られた位相差フィルムの面内位相差値Re、厚み方向位相差値RthおよびNZ係数は、それぞれ表1に示す通りであった。
実施例1においてウレタン樹脂組成物(D1)を塗布しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、アクリル樹脂(P1)からなる負の複屈折性を有する層のみからなる総膜厚82μmの比較用の位相差フィルムを得た。
得られた位相差フィルムの面内位相差値Re、厚み方向位相差値RthおよびNZ係数は、それぞれ表1に示す通りであった。
(比較例3)
実施例4においてウレタン樹脂組成物(D1)を塗布しなかったこと以外は、実施例4と同様にして、アクリル樹脂(P1)からなる負の複屈折性を有する層のみからなる総膜厚42μmの比較用の位相差フィルムを得た。
得られた位相差フィルムの面内位相差値Re、厚み方向位相差値RthおよびNZ係数は、それぞれ表1に示す通りであった。
実施例4においてウレタン樹脂組成物(D1)を塗布しなかったこと以外は、実施例4と同様にして、アクリル樹脂(P1)からなる負の複屈折性を有する層のみからなる総膜厚42μmの比較用の位相差フィルムを得た。
得られた位相差フィルムの面内位相差値Re、厚み方向位相差値RthおよびNZ係数は、それぞれ表1に示す通りであった。
(比較例4)
実施例1において第一延伸工程(縦延伸)を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、アクリル樹脂(P1)からなる負の複屈折性を有する層と、ウレタン樹脂組成物(D1)からなる正の複屈折性を有する層との積層体である総膜厚172μmの比較用の積層位相差フィルムを得た。
得られた積層位相差フィルムの面内位相差値Re、厚み方向位相差値RthおよびNZ係数は、それぞれ表1に示す通りであった。
実施例1において第一延伸工程(縦延伸)を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、アクリル樹脂(P1)からなる負の複屈折性を有する層と、ウレタン樹脂組成物(D1)からなる正の複屈折性を有する層との積層体である総膜厚172μmの比較用の積層位相差フィルムを得た。
得られた積層位相差フィルムの面内位相差値Re、厚み方向位相差値RthおよびNZ係数は、それぞれ表1に示す通りであった。
以上の実施例、比較例で得られた積層位相差フィルム(位相差フィルム)において、正複屈折性層の面内最大屈折率方向は、いずれの例でも第二延伸方向と略平行方向であり、一方、負複屈折性層の面内最大屈折率方向は、実施例1〜5および比較例1〜3では第二延伸方向と略平行方向であり、比較例4では第二延伸方向と略垂直方向であった。
本発明の積層位相差フィルムは、従来の位相差フィルムと同様に、液晶表示装置(LCD)、有機ELディスプレイをはじめとする画像表示装置に幅広く使用できる。例えばこの積層位相差フィルムを楕円偏光板用のλ/4板として用いれば、画像表示装置における表示特性を改善できる。特に、本発明の積層位相差フィルムは、視野角補償性に優れているので、視野角補償フィルムとして有用である。
Claims (19)
- 正の複屈折性を有する一軸延伸フィルムの層と負の複屈折性を有する二軸延伸フィルムの層とを含む積層体であり、前記正の複屈折性を有する層として少なくともウレタン樹脂を含有し、前記積層体の下記式
NZ係数=(Rth/Re)+0.5
(ここで、Reは波長589nmにおける面内位相差(nm)であり、Rthは波長589nmにおける厚み方向位相差(nm)である。)
から求められるNZ係数が0.1以上0.9以下であり、かつ前記正の複屈折性を有する層と前記負の複屈折性を有する層は、各層の面内最大屈折率方向が揃うように配されており、互いに面内位相差を強め合っていることを特徴とする積層位相差フィルム。 - 前記積層体の面内位相差Reが70nm以上300nm以下である請求項1に記載の積層位相差フィルム。
- 前記正の複屈折性を有する層のNZ係数が1以上1.5以下である請求項1または2に記載の積層位相差フィルム。
- 前記正の複屈折性を有する層の厚みが3μm以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層位相差フィルム。
- 前記負の複屈折性を有する層が、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層位相差フィルム。
- 前記負の複屈折性を有する層の面内位相差Reが10nm以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層位相差フィルム。
- 前記正の複屈折性を有する層はウレタン樹脂を架橋するための架橋剤を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層位相差フィルム。
- 前記負の複屈折性を有する層を基材フィルムとし、この基材フィルムに前記正の複屈折性を有する層が積層されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層位相差フィルム。
- 前記負の複屈折性を有する層の両面に前記正の複屈折性を有する層が積層されている請求項1〜8のいずれか1項に記載の積層位相差フィルム。
- 正の複屈折性を有する層と負の複屈折性を有する層とを含む積層体であり、前記正の複屈折性を有する層として少なくともウレタン樹脂を含有し、前記積層体の下記式
NZ係数=(Rth/Re)+0.5
(ここで、Reは波長589nmにおける面内位相差(nm)であり、Rthは波長589nmにおける厚み方向位相差(nm)である。)
から求められるNZ係数が0.1以上0.9以下であり、かつ前記正の複屈折性を有する層と前記負の複屈折性を有する層が、各層の面内最大屈折率方向が揃うように配されており、互いに面内位相差を強め合っている積層位相差フィルムを製造する方法であって、
負の複屈折性を発現しうるフィルムを一軸延伸する第一延伸工程と、
前記第一延伸工程で延伸したフィルムの上にウレタン樹脂を含む組成物を塗布し、乾燥することによりウレタン樹脂層を形成する積層工程と、
前記積層工程で得られた積層体を前記第一延伸工程で一軸延伸した方向と略直交する方向に一軸延伸する第二延伸工程と、
を含むことを特徴とする積層位相差フィルムの製造方法。 - 前記積層工程における乾燥時の加熱と前記第二延伸工程の加熱は一方が他方を兼ねる請求項10に記載の積層位相差フィルムの製造方法。
- 前記積層体の面内位相差Reが70nm以上300nm以下である請求項10または11に記載の積層位相差フィルムの製造方法。
- 前記正の複屈折性を有する層のNZ係数が1以上1.5以下である請求項10〜12のいずれか1項に記載の積層位相差フィルムの製造方法。
- 前記正の複屈折性を有する層の厚みが3μm以上である請求項10〜13のいずれか1項に記載の積層位相差フィルムの製造方法。
- 前記負の複屈折性を有する層が、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体を含む請求項10〜14のいずれか1項に記載の積層位相差フィルムの製造方法。
- 前記負の複屈折性を有する層の面内位相差Reが10nm以上である請求項10〜15のいずれか1項に記載の積層位相差フィルムの製造方法。
- 前記ウレタン樹脂を含む組成物が、ウレタン樹脂と架橋剤を含む組成物である請求項10〜16のいずれか1項に記載の積層位相差フィルムの製造方法。
- 前記ウレタン樹脂を含む組成物が、ウレタン樹脂の水分散体を含む組成物である請求項10〜17のいずれか1項に記載の積層位相差フィルムの製造方法。
- 前記負の複屈折性を有する層の両面に前記正の複屈折性を有する層が積層されている請求項10〜18のいずれか1項に記載の積層位相差フィルムの製造方法。
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