JP5950793B2 - ワイヤハーネス - Google Patents

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Description

本発明は、ワイヤハーネスの構成に関する。
ワイヤハーネスは、複数の電線を束ねて所定の形状としたものである。ワイヤハーネスは、例えば自動車の車体に配索され、当該自動車が備える各種電気機器への電力供給、電気機器間の制御信号の通信などに利用される。近年の自動車においては、様々な電気機器が車体の各部に搭載されているため、自動車用ワイヤハーネスは、複雑な屈曲形状、分岐形状となっている。
このようなワイヤハーネスの製造方法は、例えば特許文献1に記載されている。従来から、ワイヤハーネスの製造方法では、ASSY盤と呼ばれる作業台(特許文献1の場合は組立図板)が用いられている。この作業台の上には、電線を保持するための治具(保持具)が適宜設けられている。
この種の製造方法において、作業者は、まず、作業台の上に、複数の電線を、所定の屈曲形状、及び分岐形状となるように布線する。続いて、作業者は、作業台上の電線の所定箇所に、テープを巻き付けていく。このようにテープを巻き付けることにより、電線の屈曲形状及び分岐形状が固定され、所定形状のワイヤハーネスとなる。
特開平8−249952号公報
このような従来の製造方法では、作業者は、電線の各部にテープを巻き付けるために、作業台の周囲を動き回らなければならない。作業台上の電線は様々な方向に屈曲して布線されているため、作業者は、テープを巻き付ける作業を毎回異なる姿勢で行わなければならず、作業の習熟度が向上しにくい。また、電線の向きによっては、テープを巻き付ける作業が困難な場合も有る。更に、テープを巻き付けるという作業自体が複雑であり、作業時間が長い。このように、従来の製造方法では、作業効率が悪く生産性が低いという課題があった。
また上記のように、従来の製造方法では作業の習熟度が向上しにくいため、品質が不安定になり易いという問題がある。特に、テープの巻き付き具体によってワイヤハーネスの各部の寸法がバラつくため、製造されたワイヤハーネスの各部の寸法を検査する必要があり、検査工程が増大していた。
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、製造作業が容易で、寸法精度を向上させたワイヤハーネスを提供することにある。
課題を解決するための手段及び効果
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
本発明の観点によれば、以下のワイヤハーネスが提供される。即ち、このワイヤハーネスは、複数の電線と、プロテクタと、固定部材と、を備える。前記プロテクタは、前記複数の電線の屈曲形状又は分岐形状の少なくとも何れか一方を規定する。前記固定部材は、前記プロテクタに取り付けられるプロテクタ取付部を有するとともに、前記電線に取り付けられる。前記プロテクタには、前記プロテクタ取付部に係合する係合部が形成されている。前記電線に取り付けられた前記固定部材の前記プロテクタ取付部を前記係合部に係合させることにより、前記電線と前記プロテクタが位置決めされている。前記プロテクタは、前記電線の長手方向に直交する平面において、断面略U字状に形成されている。前記係合部は、前記プロテクタの前記U字状の底面に形成されている。当該プロテクタには、前記U字状の両側壁の少なくとも何れか一方に、前記係合部の近傍において切り欠きが形成されている。
このように、プロテクタによって電線の屈曲形状又は分岐形状を規定することで、テープによって電線の形状を固定していた従来のワイヤハーネスに比べて、寸法精度を向上させることができる。また、電線にテープを巻き付ける作業が不要となるので、ワイヤハーネスの製造にかかる時間を短縮できる。プロテクタを電線に取り付ける作業は、固定部材をプロテクタに係合させるだけで容易に行うことができる。また、プロテクタの内部に電線を収容することができるとともに、係合部の周囲において、作業者の指がプロテクタに干渉しにくくなる。従って、プロテクタの係合部に対して固定部材を係合させる作業の作業性が向上する。
上記のワイヤハーネスは、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記固定部材は、前記複数の電線の外周を周回するバンド部を備える。前記バンド部によって前記複数の電線を束ねることにより、当該電線に対して固定部材が取り付けられている。
バンド部によって電線を束ねる作業は、電線にテープを巻き付ける作業に比べて容易であるから、作業時間を短縮できる。また、バンド部によって電線を束ねることにより固定部材を電線に取り付けるので、例えばテープのように粘着力が低下して固定力が劣化する心配がない。これにより、ワイヤハーネスの耐久性も向上させることができる。
上記のワイヤハーネスにおいて、前記電線の長手方向で見たときに、前記プロテクタ取付部は、前記電線から見て一側にのみ設けられていることが好ましい。
これにより、電線に力が加わった場合には、固定部材が電線に対して斜めに傾く。この結果、固定部材が電線の外周に食い込むので、固定部材と電線の固着力を増大させることができる。
上記のワイヤハーネスは、複数のプロテクタと、前記複数のプロテクタの間に配置され、電線を収容するコルゲート管と、を備えることが好ましい。
これにより、プロテクタの間の部分の電線を、コルゲート管によって保護できる。また、仮に電線全体を1つのプロテクタで覆ってしまうと、ワイヤハーネスに柔軟性が無くなってしまう。上記のように、複数のプロテクタでワイヤハーネスを構成することにより、プロテクタ同士の間の部分(コルゲート管の部分)に柔軟性を持たせることができるので、ワイヤハーネスの車両等への組み付け性が向上する。
上記のワイヤハーネスにおいて、前記プロテクタは、前記コルゲート管の外周の凹凸に係合するコルゲート管係合部を有することが好ましい。
コルゲート管係合部にコルゲート管を係合させることにより、コルゲート管がプロテクタに対して相対移動しないように固定できる。
上記のワイヤハーネスにおいて、前記プロテクタ取付部及び前記係合部は、両者の配置が異常な場合には係合できないように形成されていることが好ましい。
これにより、間違った取り付け位置に固定部材を取り付けようとしても、取り付けることがでないので、組み立てミスを防止できる。
本発明の一実施形態に係る製造方法で製造されるワイヤハーネスの一例を示す模式的な平面図。 プロテクタの内部を示す平面図。 図2のA−A断面矢視図。 プロテクタの平面図。 プロテクタに対して結束バンドを取り付ける様子を示す断面図。 プロテクタに対して結束バンドを取り付ける様子を示す斜視図。 プロテクタに対するコルゲート管の取り付け構造を示す平面図。 従来のワイヤハーネスにおける、プロテクタに対する電線の取り付け構造を示す断面図。 本実施形態における、プロテクタに対する電線の取り付け構造を示す断面図。 電線を引っぱる力が加わった場合の結束バンドの変形を説明する図。 ワイヤハーネスの製造作業に用いる作業台の模式図。 プロテクタに対して結束バンドを取り付けることができない場合を示す断面図。 2体成形の結束バンドによって電線を束ねた様子を示す断面図。 第1の変形例を示す斜視図。 第2の変形例を示す斜視図。 第3の変形例を示す斜視図。 第4の変形例を示す斜視図。 第5の変形例を示す斜視図。 第6の変形例を示す斜視図。 第7の変形例を示す斜視図。 更に別の変形例を示す斜視図。
次に、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。図1に示すのは、本実施形態のワイヤハーネス1の一例を示す概略的な平面図である。本実施形態のワイヤハーネス1は、自動車用ワイヤハーネスであり、当該自動車の車体に配索される。ワイヤハーネス1は、自動車が備える各種電気機器への電力供給や、電気機器間の通信などに利用される。
このワイヤハーネス1は、複数の電線2を束ねたものである。各電線2の末端には、各種電気機器に接続されるコネクタ3が配置されている。各電線2は所定の屈曲形状を有するように配索されており、ワイヤハーネス1の全体としては複雑な枝分かれ構造(分岐形状)となっている。
ワイヤハーネス1の各部には、プロテクタ4が配置されている。プロテクタ4の構成の一例を、図2から図4に示す。
図2に示すように、プロテクタ4は、その内部に複数本の電線2を収容できるように構成されている。具体的には、図3に示すように、プロテクタ4は、当該プロテクタ4の内部に収容される電線2の長手方向に直交する断面において、断面形状が略U字状となるように形成されている。つまり、プロテクタ4は、前記断面において、底面と、当該底面から略直交する方向に延伸して設けられた一対の側壁と、を有している。プロテクタ4は、前記U字の内側に、複数本の電線2を収容できる。
図3に示すように、プロテクタ4は、前記U字の開放側端部を塞ぐ蓋部19を有している。これにより、プロテクタ4の内部に収容された電線2が、前記U字の開放側端部から外側にハミ出すことを防止できる。ただし、蓋部19はプロテクタ4の必須の構成要素ではなく、省略しても良い。以下の説明及び図面では、蓋部19についての記載を省略する場合がある。
ところで、従来のワイヤハーネスでは、電線の周囲にテープを巻き付けることで、当該電線の屈曲形状及び分岐形状を固定し、所定形状のワイヤハーネスとしていた。これに対し、本実施形態のワイヤハーネス1は、プロテクタ4の内部に電線2を収容することにより、当該電線2の屈曲形状及び分岐形状を固定している。
例えば図2及び図4に例示するプロテクタ4は、電線引出口5を3つ有している。図2に示すように、このプロテクタ4に収容された複数本の電線2は、プロテクタ4の内部で2つに分岐して、それぞれ別々の電線引出口5からプロテクタ4の外部に引き出されている。分岐させられた電線群の一方(第1電線群6)は、プロテクタ4内で約90度屈曲させられて、当該プロテクタ4から引き出されている。一方、他方の電線群(第2電線群7)は、プロテクタ4内を略直線状に通過して、当該プロテクタ4の外部に引き出されている。
このように、本実施形態のプロテクタ4は、電線2の屈曲形状、及び分岐形状を規定する機能を有している。つまり、プロテクタ4内に電線2を収容することで、所定の屈曲形状で、所定の分岐形状を有するワイヤハーネス1を形成できる。プロテクタ4の形状は、図2から図4に図示したものに限らない。図1に示すように、ワイヤハーネス1の各部の屈曲形状及び分岐形状に応じて、様々な形状のプロテクタ4を用いることができる。プロテクタ4の素材は特に限定されないが、ある程度の剛性を備え、軽量かつ成形が容易な素材が好ましい。なお、本実施形態のプロテクタ4はプラスチック製である。
図2及び図3に示すように、プロテクタ4の内部に収容された複数の電線2には、当該電線2を束ねる結束バンド(固定部材)10が取り付けられている。結束バンド10は、バンド部(結束部)11と、バックル部12とを備えた公知の構成である。また、図3に示す結束バンド10は、バンド部11とバックル部12が一体形成されたタイプとなっている。図3に示すように、バンド部11を複数の電線2の周囲に周回させ、当該バンド部11の先端部11aをバックル部12に挿入することで、前記複数の電線2を束ねることができる。バックル部12内には図略のロック機構が設けられており、バンド部11による電線2の締め付けが緩まないように構成されている。
図4から図6に示すように、プロテクタ4の適宜の箇所には、結束バンド10を係合させることが可能な係合部13が形成されている。具体的には、係合部13は、結束バンド10のバンド部11を挿入可能な孔として構成されており、当該孔の内部には、前記バンド部11に係合するロック爪14が設けられている。なお、本実施形態の係合部13は、断面U字状のプロテクタ4の底面に形成されている。
図5に示すように、複数の電線2を束ねたバンド部11をバックル部12に挿通させ、当該バックル部からバンド部11の先端部11aが突出した状態とする。この状態で、図5及び図6に示すように、バンド部11の先端部11aを係合部13に挿入し、当該先端部11aにロック爪14を係合させる(図3の状態)。これにより、結束バンド10をプロテクタ4に固定できるので、当該結束バンド10で束ねられた電線2とプロテクタ4を位置決めできる。なお、バンド部11の先端部11aを係合部13に係合させることにより当該結束バンド10がプロテクタ4に取り付けられるので、バンド部11の先端部11aは、プロテクタ取付部であると言うことができる。
本実施形態の係合部13は、図3及び図5に示すように、プロテクタ4の底面を貫通する貫通孔として構成されている。このため、当該係合部13に挿入されたバンド部11の先端部11a(プロテクタ取付部)は、プロテクタ4の底面を貫通して外側に向けて突出することになる。そこで本実施形態のプロテクタ4は、貫通孔状の係合部13の縁部を囲むように設けられた保護壁16を有している。保護壁16は、電線2が収容される側とは反対側に向けて突出するリブ状に形成されている。この保護壁16により、係合部13に挿入されたバンド部11の先端部11a(プロテクタ取付部)が他の部材に接触しないように保護できるので、当該先端部11aに力が加わって係合部13から外れてしまうことを防止できる。
なお、従来のワイヤハーネスにおいても、電線2の外装部品としてプロテクタ104を用いる場合はあった。この従来のワイヤハーネスにおいては、図8に示すように、電線2とプロテクタ104にテープ101を巻き付けて、両者を固定していた。
この従来の固定方法の場合、図8に示すように、電線2の長手方向に直交する断面において、電線2とテープ101は角度αで接触する。図8(a)のように電線2の径が太い場合は、十分に大きな接触角αで電線2とテープ101が接触できるので、プロテクタ104に対して電線2を十分な固着力で固定できる。ところが、図8(b)のように電線2の外形が細い場合には、テープ101と電線2の接触角αが小さくなる結果、プロテクタ104に対する電線2の固着力が不足する。このように、プロテクタ104と電線2をテープ101で固定する従来のワイヤハーネスでは、電線2の径によって固着力が不安定であるという問題があった。
これに対し、本実施形態では、電線2の周囲に結束バンド10を周回させる構成としたので、当該結束バンド10は電線2の外周に対してほぼ全周で接触する。従って、図9(a)のように電線2の径が太い場合であっても、図9(b)のように電線が細い場合であっても、結束バンド10は、電線2の外周に対して広い面積で密着できる。従って、本実施形態の構成によれば、電線2の径にかかわらず、プロテクタ4に対する電線2の固着力を安定させることができる。
また、図10(a)に示すように、電線2の長手方向で結束バンド10を見たときに、プロテクタ取付部(バンド部11の先端部11a)は、電線2からみて一側に設けられている。つまり、電線2の長手方向で見たときに、2つ以上のプロテクタ取付部が電線2を挟んで配置されていない構成である。また、結束バンド10は、ある程度の可撓性を有している。このため、電線2を長手方向に引っぱる力がワイヤハーネス1に加わった場合、当該電線2によって結束バンド10が引っぱられる。この結果、図10(b)に示すように、電線2の長手方向に対してバンド部11が斜めになり、電線2の外周にバンド部11が食い込むので、電線2と結束バンド10との間の固着力が増大する。これにより、電線2を引っぱる力がワイヤハーネス1に加わった場合であっても、プロテクタ4に対して電線2の位置がズレにくくなっている。
以上のように、本実施形態の構成によれば、プロテクタと電線をテープで固定していた従来の構成に比べて、プロテクタ4に対して電線2を確実に固定することができる。
図1に示すように、本実施形態のワイヤハーネス1において、プロテクタ4同士の間には、コルゲート管8が適宜配置されている。プロテクタ4同士の間にコルゲート管8を配置することで、プロテクタ4の間の電線2を保護できる。また、コルゲート管8の部分では、ワイヤハーネス1をあるていど柔軟に変形させることができるので、当該ワイヤハーネス1を自動車の車体に組み付け易くなっている。
コルゲート管8が配置されるプロテクタ4には、図7(a)に示すようにコルゲート管係合部15を設ける。コルゲート管係合部15は、プロテクタ4の内側に向けて凸となるようにリブ状に形成されており、図7(b)に示すように、コルゲート管8の外周の凹部に係合する。これにより、プロテクタ4に対してコルゲート管8が相対移動しないように固定できる。また、例えば図7(b)のように2つのプロテクタ4の間にコルゲート管8を配置することで、右側のプロテクタ4と、左側のプロテクタ4と、がそれぞれコルゲート管8に対して相対移動しないように固定できる。従って、図7(b)の左右のプロテクタ4同士の距離を一定に保つことができる。
続いて、本実施形態のワイヤハーネス1の製造方法について簡単に説明する。
図11に示すのは、本実施形態の製造方法で用いる作業台(ASSY盤)20の模式的な図である。図11には、作業台20上に電線2が布線された状態が示されている。図11に示すように、本実施形態の作業台20は、複数のコネクタ保持治具21と、複数の結束位置指示治具22と、を備えている。
各コネクタ保持治具21は、電線2の末端に配置されているコネクタ3をそれぞれ保持できるように構成されている。結束位置指示治具22は、各コネクタ保持治具21に対応して設けられている。結束位置指示治具22は、電線2に結束バンド10を取り付ける位置を、作業者に対して示すように設けられている。作業者は、図11に示すように、結束位置指示治具22に沿わせて結束バンド10を配置し、当該結束バンド10によって電線2を束ねる。これにより、作業者は、電線2の所定の位置に結束バンド10を取り付けることができる。
各結束位置指示治具22は、それぞれが対応するコネクタ3からの距離が所定の寸法となるように配置されている。これにより、結束バンド10を、電線2に対して、コネクタ3から所定の位置に取り付けることができる。例えば図11の左の例では、コネクタ3からL1の距離の位置に結束バンド10を取り付けることができる。同様に、図11の中央の例では、コネクタ3からL2の距離の位置に、右の例ではコネクタ3からL3の距離の位置に、それぞれ結束バンド10を取り付けることができる。
なお、本実施形態の結束バンド10は、バンド部11とバックル部12が一体成形されたタイプであるため、電線2に対してバンド部11を巻き付ける方向によって、結束バンド10の取り付け方向が2通りある。本実施形態の結束位置指示治具22は、図11に示すように、結束バンド10を取り付ける方向を指示する形状となっている。これにより、作業者は、電線2に対して結束バンド10を正しい取り付け方向で取り付けることができる。
続いて、本実施形態におけるワイヤハーネス1の製造方法の実際の流れについて説明する。
まず、作業者は、作業台20の各コネクタ保持治具21に対して、所定のコネクタ3を取り付けるとともに、結束位置指示治具22で示されている位置、及び取り付け方向で、電線2に対して結束バンド10を取り付けていく(結束工程)。
続いて、作業者は、結束バンド10を取り付けた電線2(及びこれが接続されているコネクタ3)を作業台20から取り外し、当該結束バンド10のバンド部11を、所定のプロテクタ4の係合部13に係合させる。これにより、プロテクタ4に対して結束バンド10が固定される(プロテクタ取付工程)。また、作業者は必要に応じて、電線2にコルゲート管8を配置するとともに、当該コルゲート管8を、プロテクタ4のコルゲート管係合部15に係合させる。
なお、図3及び図12に示すように、本実施形態の係合部13は、プロテクタ4に形成された方向が異なる2通りのパターンが用意されている。各プロテクタ4の係合部13は、それぞれ規定の方向に形成されている。一方、前述のように、電線2に対してバンド部11を巻き付ける方向によって、結束バンド10の取り付け方向が2通りある。従って、係合部13の形成方向と、結束バンド10の取り付け方向と、の組み合わせによって、結束バンド10と係合部13が正しい位置関係になる場合と、異常な(誤った)位置関係になる場合と、がある。
図3のように、係合部13と結束バンド10が正しい位置関係にある場合は、両者を正常に係合させることができる。また、この場合は、プロテクタ4内に電線を完全に収容できるので、蓋部19を閉めることができる。一方、図12に示すように、係合部13と結束バンド10が逆向き(異常な位置関係)になっている場合、当該係合部13に対してバンド部11の先端部11aを挿入できない。また、仮に、係合部13に対して先端部11aをむりやり挿入したとしても、プロテクタ4内に電線2を完全に収容できず、蓋部19を閉めることができないように構成されている。
このように、本実施形態では、プロテクタ4に対して結束バンド10が異常な位置関係になっている場合は、両者を係合させることができず、結果として電線2をプロテクタ4に収容できないように構成されている。これにより、作業者がワイヤハーネス1を組み立てる際に、結束バンド10を、誤ったプロテクタ4に係合させてしまうというミスを防ぐことができる。
以上のように、プロテクタ4に対して電線2を取り付けていくことにより、所定形状のワイヤハーネス1を製造することができる。
続いて、本実施形態の製造方法と、従来の製造方法との違いについて簡単に説明する。
従来の製造方法では、電線を作業台の上に所定の屈曲形状及び分岐形状となるように布線しておき、当該電線に対してテープを巻き付けることにより、所定の屈曲形状及び分岐形状のワイヤハーネスを製造していた。このため、作業台が大型化するとともに、テープを巻き付ける作業も行いにくかったのである。
この点、本実施形態の製造方法では、電線2を作業台20から取り外した後で、プロテクタ4を取り付けることにより、当該電線2の屈曲形状及び分岐形状が固定される。つまり、本実施形態の作業台20は、電線2に対して結束バンド10を取り付ける作業のみ行うことができれば良く、電線2を所定の屈曲形状及び分岐形状で布線する機能は必要ない。このように、本実施形態では、作業台20に要求される機能が少ないため、当該作業台20を小型化できる。
また、結束バンド10で電線2を結束する作業は、電線にテープを巻き付ける作業に比べて簡単であるため、結束バンド10の取り付け位置がバラつきにくく、作業時間も短い。特に本実施形態では、結束バンド10を取り付ける位置を示す結束位置指示治具22を作業台20に設けたことにより、電線2に対して結束バンド10を所定位置に精度良く取り付けることができる。
従来の製造方法では、電線にテープを巻き付けることでワイヤハーネスの屈曲形状及び分岐形状が固定されていたため、テープの巻き付け方によってワイヤハーネスの寸法・形状にバラつきがあった。この点、本実施形態の製造方法によれば、電線2の屈曲形状及び分岐形状はプロテクタ4によって固定され、かつプロテクタ4同士の間隔はコルゲート管8によって固定されるので、ワイヤハーネス1の形状にバラつきが生じにくい。従って、製造されたワイヤハーネス1の寸法検査を簡略化、ないし省略できる。これにより、高品質のワイヤハーネス1を、低コストで製造できる。
そして、プロテクタ4に対する電線2の取り付け作業は、結束バンド10の先端部11aをプロテクタ4に係合させるだけで行うことができる。これにより、プロテクタ4に対する電線2の取り付けを簡単かつ素早く行うことができ、かつプロテクタ4と電線2を精度良く位置決めすることができる。
以上で説明したように、本実施形態のワイヤハーネス1は、複数の電線2と、プロテクタ4と、結束バンド10と、を備えている。プロテクタ4は、複数の電線2の屈曲形状又は分岐形状の少なくとも何れか一方を規定する。結束バンド10は、プロテクタ4に取り付けられる先端部11aを有するとともに、電線2に取り付けられる。プロテクタ4には、先端部11aに係合する係合部13が形成されている。電線2に取り付けられた結束バンド10の先端部11aを係合部13に係合させることにより、電線2とプロテクタ4が位置決めされている。
このように、プロテクタ4によって電線2の屈曲形状又は分岐形状を規定することで、テープによって電線2の形状を固定していた従来のワイヤハーネスに比べて、寸法精度を向上させることができる。また、電線2にテープを巻き付ける作業が不要となるので、ワイヤハーネス1の製造にかかる時間を短縮できる。プロテクタ4を電線2に取り付ける作業は、結束バンド10をプロテクタ4に係合させるだけで容易に行うことができる。
本実施形態の結束バンド10は、複数の電線2の外周を周回するバンド部11を備える。バンド部11によって複数の電線2を束ねることにより、当該電線2に対して結束バンド10が取り付けられている。
バンド部11によって電線2を束ねる作業は、電線2にテープを巻き付ける作業に比べて容易であるから、作業時間を短縮できる。また、バンド部11によって電線2を束ねることにより結束バンド10を電線2に取り付けるので、例えばテープのように粘着力が低下して固定力が劣化する心配がない。これにより、ワイヤハーネス1の耐久性も向上させることができる。
本実施形態のワイヤハーネス1において、電線2の長手方向で見たときに、バンド部11の先端部11aは、前記電線2から見て一側にのみ設けられている。
これにより、電線2に力が加わった場合には、結束バンド10が電線2に対して斜めに傾く。この結果、結束バンド10が電線2の外周に食い込むので、結束バンド10と電線2の固着力を増大させることができる。
上記実施形態のワイヤハーネス1において、プロテクタ4は、電線2の長手方向に直交する平面において、断面略U字状に形成されている。
これにより、プロテクタ4の内部に電線2を収容することができる。
上記実施形態のワイヤハーネス1は、複数のプロテクタ4と、前記複数のプロテクタ4の間に配置され、電線2を収容するコルゲート管8と、を備えている。
これにより、プロテクタ4の間の部分の電線2を、コルゲート管8によって保護できる。また、仮に電線2全体を1つのプロテクタ4で覆ってしまうと、ワイヤハーネス1に柔軟性が無くなってしまう。本実施形態のように、複数のプロテクタ4でワイヤハーネス1を構成することにより、プロテクタ4同士の間の部分(コルゲート管8の部分)に柔軟性を持たせることができるので、ワイヤハーネス1の車両等への組み付け性が向上する。
上記実施形態のプロテクタ4は、コルゲート管8の外周の凹凸に係合するコルゲート管係合部15を有している。
コルゲート管係合部15にコルゲート管8を係合させることにより、コルゲート管8がプロテクタ4に対して相対移動しないように固定できる。
上記実施形態のワイヤハーネス1において、結束バンド10の先端部11a及び係合部13は、両者の配置が異常な場合には係合できないように形成されている。
これにより、間違った取り付け位置に結束バンド10を取り付けようとしても、取り付けることがでないので、組み立てミスを防止できる。
続いて、上記実施形態の変形例について説明する。
上記実施形態では、結束バンド10を、バンド部11とバックル部12が一体成形されたものとしたが、これに限らず、例えば図13のように、バンド部11とバックル部12の二体成形タイプであっても良い。
また、上記実施形態では、バンド部11の先端部11aがプロテクタ固定部であるとしたが、これに限定されない。例えば図13に示すように、電線2の長手方向に直交する方向に突出する係合爪(プロテクタ取付部)23を、バックル部12に形成しても良い。この場合、プロテクタ4側には、図14に示すように、係合爪23に係合できるように係合部13を形成する。そして、係合爪23を係合部13に係合させることで、プロテクタ4に対して電線2が位置決めされる。
なお、図14の構成は、種々の変形例を考えることができる。例えば、図15の例では、電線2の長手方向と平行な方向に突出する係合爪23を、バックル部12に形成している。また、例えば図16のように、バックル部12の四方それぞれ(電線2の長手方向に平行な方向と、長手方向に直交する方向それぞれ)に向けて突出するように係合爪23を設けても良い。これによれば、バックル部12をプロテクタ4に対してより安定して固定できる。
図17に示す変形例では、プロテクタ4には、その底面から上方に向けて突出するプラグ状の係合部13が形成されている。一方、結束バンド10のバックル部12には、プラグ状の係合部13を挿入可能なソケット部25が形成されている。ソケット部25に係合部13を挿入(係合)させることで、結束バンド10をプロテクタ4に取り付ける。なお、プラグ状の係合部13は、電線2を挟んで対で設けられている。これにより、プロテクタ4に対して電線2を安定して位置決めできる。
図18に示す変形例では、バックル部12に一対の係合爪28が形成されている。プロテクタ4側の係合部13は、一方の係合爪28を挿入可能な挿入部29と、他方の係合爪28に係合可能なロック爪30を備えている。バックル部12の一方の係合爪28を挿入部29に挿入した状態で、バックル部12をプロテクタ4に押し付けることにより、ロック爪30を変形させて、当該ロック爪30を他方の係合爪28に係合させることができる。
なお、図14から図18の変形例の図面では、何れも、バンド部11とバックル部12が2体成形となった結束バンド10について、バックル部12にプロテクタ取付部を形成したものである。これに限らず、バンド部11とバックル部12が一体成形された結束バンド10であっても、バックル部12にプロテクタ取付部を形成した構成とすることができる。例えば、図19に示す変形例は、一体成形の結束バンド10のバックル部12に、電線2の長手方向と平行な溝部26を形成したものである。一方、プロテクタ4の底面には、溝部26に係合可能な断面L字形の係合部13が、電線の長手方向に沿ってレール状に形成されている。レール状の係合部13に溝部26を係合させ、結束バンド10をプロテクタ4に対して電線2の長手方向に沿ってスライドさせることにより、プロテクタ4に結束バンド10を取り付けることができる。
上記実施形態及び変形例において、係合部13は、プロテクタ4の底面に形成されている。しかし、係合部13の形成位置は、プロテクタ4の底面に限定されない。例えば図20に示す変形例は、断面U字状のプロテクタ4の両側壁に、結束バンド10のバックル部12を引っかけることができる係合部13を設けたものである。
なお、プロテクタ4の係合部13と、結束バンド10のプロテクタ取付部の構成は、上記実施形態及び変形例で示したものに限らず、適宜変形することができる。
次に、上記実施形態の別の変形例について、図21を参照して説明する。
前述のように、上記実施形態のワイヤハーネス1において、係合部13は、断面U字状のプロテクタ4の底面に形成されている。このため、当該係合部13に対して結束バンド10を係合させる作業を行う際に、作業者の指が、断面U字状のプロテクタ4の両側壁に干渉し易い。
そこで、この変形例では、図21に示すように、係合部13の近傍において、断面U字状のプロテクタ4の両側壁に切り欠き32を形成したものである。これにより、結束バンド10を係合部13に係合される作業を行う際に、断面U字状のプロテクタ4の両側壁に作業者の指が干渉しにくくなっている。従って、結束バンド10をプロテクタ4に取り付ける作業の作業性が更に向上している。なお、図21では、断面U字状のプロテクタ4の両側壁にそれぞれ切り欠き32を形成しているが、何れか一方の側壁にのみ切り欠き32を形成しても良い。
以上で説明したように、この変形例において、係合部13は、プロテクタ4の前記U字状の底面に形成されている。当該プロテクタ4において、前記U字状の両側壁の少なくとも何れか一方に、係合部13の近傍において切り欠き32が形成されている。
これにより、係合部13の周囲において、作業者の指がプロテクタ4に干渉しにくくなる。従って、プロテクタ4の係合部13に対して結束バンド10を係合させる作業の作業性が向上する。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
本発明は、自動車用のワイヤハーネスに限らず、他の用途のワイヤハーネスにも適用できる。
上記実施形態では、固定部材を結束バンド10としたが、これに限定されない。固定部材は、複数の電線を束ねることができ、かつプロテクタ4に固定できる構成であれば良い。
上記実施形態では、プロテクタ4は断面U字状としたが、これに限定されるわけではなく、電線2の屈曲形状又は分岐形状を規制し得る形状であれば良い。
上記実施形態及び変形例では、断面U字状のプロテクタ4の底面又は側面に係合部13が形成されているが、これに限らず、例えばプロテクタ4が有する蓋部19に係合部13が形成されていても良い。
上記実施形態において、あるプロテクタ4に対してコルゲート管8を介して繋っている他のプロテクタ4は、(いわば芋蔓式に)前記電線2に対して位置決めされる。従って、コルゲート管8を介して他のプロテクタと繋っているプロテクタ4は、当該プロテクタ4と電線2を位置決めする構成(結束バンド10や係合部13など)を省略できる場合がある。
コルゲート管8は省略することもできる。
1 ワイヤハーネス
2 電線
3 コネクタ
4 プロテクタ
10 結束バンド(固定部材)
11 バンド部(プロテクタ取付部)
13 係合部

Claims (6)

  1. 複数の電線と、
    前記複数の電線の屈曲形状又は分岐形状の少なくとも何れか一方を規定するプロテクタと、
    前記プロテクタに取り付けられるプロテクタ取付部を有するとともに、前記電線に取り付けられる固定部材と、
    を備え、
    前記プロテクタには、前記プロテクタ取付部に係合する係合部が形成されており、
    前記電線に取り付けられた前記固定部材の前記プロテクタ取付部を前記係合部に係合させることにより、前記電線と前記プロテクタが位置決めされており、
    前記プロテクタは、前記電線の長手方向に直交する平面において、断面略U字状に形成されており、
    前記係合部は、前記プロテクタの前記U字状の底面に形成されており、
    当該プロテクタには、前記U字状の両側壁の少なくとも何れか一方に、前記係合部の近傍において切り欠きが形成されていることを特徴とするワイヤハーネス。
  2. 請求項1に記載のワイヤハーネスであって、
    前記固定部材は、
    前記複数の電線の外周を周回するバンド部と、
    前記バンド部が挿入されるバックル部と、
    を備え、
    前記バンド部及びバックル部によって前記複数の電線を束ねることにより、当該電線に対して固定部材が取り付けられていることを特徴とするワイヤハーネス。
  3. 請求項2に記載のワイヤハーネスであって、
    前記電線の長手方向で見たときに、前記プロテクタ取付部は、前記電線から見て一側にのみ設けられていることを特徴とするワイヤハーネス。
  4. 請求項1からまでの何れか一項に記載のワイヤハーネスであって、
    複数のプロテクタと、
    前記複数のプロテクタの間に配置され、電線を収容するコルゲート管と、
    を備えることを特徴とするワイヤハーネス。
  5. 請求項に記載のワイヤハーネスであって、
    前記プロテクタは、前記コルゲート管の外周の凹凸に係合するコルゲート管係合部を有することを特徴とするワイヤハーネス。
  6. 請求項1からまでの何れか一項に記載のワイヤハーネスであって、
    前記プロテクタ取付部及び前記係合部は、両者の配置が異常な場合には係合できないように形成されていることを特徴とするワイヤハーネス。
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