近年の自動車においては、高機能化に伴って車内電装部品が増加し、配線に必要な電線の本数が増えて、かつ、分岐部を多数有するなど配線が複雑になっている。また、車種の多様化に伴い、上記の分岐部の位置などが様々に異なる多数の仕様のワイヤハーネスに対応することが必要になっている。
このように電線の本数が増加する中で、自動車の軽量化と環境負荷の軽減を実現するために、特に、電装部品が多数集中して配置されるインストルメントパネル用のワイヤハーネス(インパネワイヤハーネス)について、電線を細くすることが提案されている。しかし、電線の小径化によって軽量化を図るといっても限界がある一方で、電線が細くなることによってワイヤハーネスの剛性が低下して形状を維持しにくくなり、自重でだらりと垂れ下がり易くなるので、装着作業が更に難しくなるという側面も否定できない。
この点、上記特許文献1の構成は、凹部を有する特別な断面形状のリインフォースが必要になって、コストが大幅に増加してしまう。また、リインフォースの凹部に装着した後であればワイヤハーネスの形状を確かに保持できるが、凹部に取り付ける前の段階ではワイヤハーネスは容易に曲がってしまうため、配線の作業性を改善するという課題を満足に解決できたとはいえない。
また、特許文献2の構成は、分割形状のプロテクタを結合するために舌片や被係止孔等を設ける必要があるので、それぞれのプロテクタが複雑な形状となってコストが増加してしまう。
更に、特許文献2の構成では、リインフォースに形成した取付け穴に、プロテクタの所定の位置に一体形成されたクリップ部を挿入して係止することで、プロテクタをリインフォースに固定している。従って、リインフォースの取付穴の位置や大きさが異なっていたり、取付穴がない場合は適用することができない。このように、特許文献2の発明は、リインフォースの形状が異なるとプロテクタも変更しなければならない場合が多くなってしまうため汎用性に限界があり、この点で改善の余地が残されていた。
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、ワイヤハーネスの装着作業を容易にし、かつ、様々なリインフォースメントへの固定に柔軟に対応できるワイヤハーネス形状保持体を提供することにある。
課題を解決するための手段及び効果
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
本発明の第1の観点によれば、以下の構成のワイヤハーネス形状保持体が提供される。即ち、このワイヤハーネス形状保持体は、外殻部材と、取付部材と、を備える。前記外殻部材は、ワイヤハーネスを通過させる収容空間を有するように細長く形成される。前記取付部材は、前記外殻部材に取り付けられる。前記外殻部材において外側の面には、当該外殻部材の長手方向と平行に配置された溝が形成される。前記外殻部材において外側の面には、それぞれが当該外殻部材の長手方向と平行に配置された複数本の凸状体が形成される。前記取付部材は、差込部と、固定部と、挟み部と、を備える。前記差込部は、前記溝に差込可能である。前記固定部は、リインフォースに固定可能である。前記挟み部は、前記差込部との間で前記凸状体を前記溝の外部から挟み込んで保持する。前記溝に対して前記差込部を、当該溝の長手方向で互いに異なる位置に取付可能に構成されている。
これにより、曲がり易いワイヤハーネスの形状を外殻部材によって保持しながら、当該ワイヤハーネスをリインフォースに取り付けることができるので、組付作業性が良好である。また、外殻部材に対する取付部材の取付位置を容易に変更できるので、外殻部材は共通としつつ、当該外殻部材を固定すべき位置が異なるリインフォースに対しても柔軟に対応することができる。この結果、コストの削減が容易でかつ汎用性の高いワイヤハーネス形状保持体を提供することができる。また、取付部材を外殻部材に対して一層強固に取り付けることができる。
前記のワイヤハーネス形状保持体においては、前記取付部材は、前記差込部の形状が共通で前記固定部の形状が異なる他の取付部材と交換可能であることが好ましい。
これにより、外殻部材を変更することなく、取付部材を変更するだけで、外殻部材のリインフォースに対する固定方法を変更することができる。従って、外殻部材を固定する形態を変更しなければならない場合でも問題なく対応できるので、ワイヤハーネス形状保持体の汎用性を更に大幅に向上させることができる。
前記のワイヤハーネス形状保持体においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記凸状体の間に形成される相対的な凹部が前記溝とされている。
これにより、凸状体を複数設けるという簡単な構成で、差込部を差し込むための溝を外殻部材に形成することができる。従って、製造コストを低減でき、かつ、ワイヤハーネスの重量の増加を抑制できる。また、凸状体によって、外殻部材の剛性も効果的に向上させることができる。
前記のワイヤハーネス形状保持体においては、前記凸状体を長手方向に垂直な平面で切った断面が、折れ曲がった形状に構成されていることが好ましい。
これにより、外殻部材の剛性を更に増大させることができる。
前記のワイヤハーネス形状保持体においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記差込部は細長い形状に構成されている。前記差込部を長手方向に垂直な平面で切った断面の輪郭が、前記溝を長手方向に垂直な平面で切った断面の輪郭と対応する部分を有している。
これにより、差込部が溝に嵌まることによって、差込部(取付部材)が溝の幅方向に移動せず、かつ、向きが変わらないように規制することができる。従って、取付部材の位置や向きのズレを効果的に防止することができる。
前記のワイヤハーネス形状保持体においては、前記溝を長手方向に垂直な平面で切った断面の開口部分の幅が、前記差込部の幅より狭くなっていることが好ましい。
これにより、差込部を溝にいったん取り付けた後は、容易に溝から外れなくなる。従って、作業時に取付部材を手で持って保持しておく必要がなくなるので、組付作業性を一層向上させることができる。
前記のワイヤハーネス形状保持体においては、前記溝は、前記差込部を、その厚み方向の両側から挟むようにして保持することが好ましい。
これにより、外殻部材に取り付けた状態での取付部材のガタツキを防止することができる。
前記のワイヤハーネス形状保持体においては、前記差込部は、一定の厚みを有する矩形板状に形成されていることが好ましい。
これにより、差込部の簡素な構成を提供できる。
前記のワイヤハーネス形状保持体が備える少なくとも1つの前記取付部材においては、前記固定部において、前記リインフォースを外側から掴むための弾性変形可能なアームが対で備えられていることが好ましい。
これにより、固定部のアームがリインフォースを外側から掴むことでワイヤハーネス形状保持体が固定されるので、リインフォースに特別な加工をすることなく、ワイヤハーネス形状保持体を簡単にリインフォースに取り付けることができる。また、固定の際にアームの弾性変形を利用しているので、ワイヤハーネスの取付け後に例えば修理のために取り外す必要が生じた場合でも、アームを再び弾性変形させることで容易に取り外すことができる。
前記のワイヤハーネス形状保持体においては、前記取付部材には、前記リインフォースの位置決め穴に差込可能な突起が形成されていることが好ましい。
これにより、取付部材をリインフォースの正確な位置に取り付けることができる。また、位置決め穴の位置が異なるリインフォースに対しても、外殻部材の溝に対して差込部を取り付ける位置を変更するだけで、ワイヤハーネス形状保持体を柔軟に取り付けることができる。
前記のワイヤハーネス形状保持体においては、前記アームにはリブが形成されていることが好ましい。
これにより、簡単な構成で、アームに適度な強度及び弾性を付与することができる。
前記のワイヤハーネス形状保持体においては、前記取付部材を複数備え、複数の前記取付部材の差込部が前記溝に差し込まれることが好ましい。
これにより、複数の取付部材を、直線状に並べて、かつ向きを揃えて取り付けることが容易になる。
前記のワイヤハーネス形状保持体においては、前記溝は、前記外殻部材の長手方向全体にわたって形成されていることが好ましい。
これにより、取付部材を取り付ける位置を、外殻部材の全長にわたる広い範囲で変更あるいは選択できることになる。従って、より幅広い種類のリインフォースに適用することができる。
前記のワイヤハーネス形状保持体においては、前記外殻部材には、前記外殻部材の長手方向全体にわたって、前記収容空間を開放させる開放部が形成されていることが好ましい。
これにより、ワイヤハーネスの幹線部を外殻部材に容易に収容することができる。また、開放部の任意の位置から支線部を引き出すことができるので、多様な形状のワイヤハーネスに対応することができる。
前記のワイヤハーネス形状保持体においては、前記外殻部材には、前記開放部の一部を閉鎖するカバー部材を固定するための引掛けリブが、前記外殻部材の長手方向と平行に形成されていることが好ましい。
これにより、各種のカバー部材を外殻部材に簡単に取り付けて、ワイヤハーネスの配索作業に役立てることができる。
前記のワイヤハーネス形状保持体においては、前記外殻部材は、その長手方向全体にわたって、当該長手方向に垂直な平面で切った断面が一様であることが好ましい。
これにより、外殻部材の構成が簡素化されるので、コストを低減できる。
前記のワイヤハーネス形状保持体においては、前記外殻部材は合成樹脂を押出成形することにより構成されていることが好ましい。
これにより、外殻部材の製造コストを低減できる。また、任意の長さで切断することにより所望の長さの外殻部材を容易に得ることができるので、コストを抑制しつつ、様々な構成のワイヤハーネスやリインフォースに対応することができる。
前記のワイヤハーネス形状保持体においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記溝と前記取付部材の少なくとも何れか一方に規制部が設けられる。この規制部が、前記外殻部材の長手方向に前記取付部材が移動するのを規制する。
これにより、取付部材が外殻部材の長手方向に沿って移動しないように位置決め(仮止め)できるので、外殻部材の正確な位置に取付部材を固定することが容易になる。
前記のワイヤハーネス形状保持体においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ワイヤハーネスは、インパネワイヤハーネスである。前記リインフォースは、インパネリインフォースである。
即ち、インパネワイヤハーネスでは細い電線を使用する場合があり、ワイヤハーネスが特にだらりとし易い。この点、上記の構成によれば、ワイヤハーネスを外殻部材に収容することによって剛性を増大させて形状を保持し、組付作業性を向上できるため、本発明はインパネワイヤハーネスをインパネリインフォースに取り付ける場合に特に好適である。
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の形状保持体付きワイヤハーネスが提供される。即ち、この形状保持体付きワイヤハーネスは、前記のワイヤハーネス形状保持体と、ワイヤハーネスと、を備える。前記ワイヤハーネスは、前記外殻部材の収容空間に収容される。
これにより、曲がり易いワイヤハーネスの形状を外殻部材によって保持しながら、当該ワイヤハーネスをリインフォースに取り付けることができるので、組付作業性が良好である。また、外殻部材に対する取付部材の取付位置を容易に変更できるので、外殻部材は共通としつつ、当該外殻部材を固定すべき位置が異なるリインフォースに対しても柔軟に対応することができる。
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、第1実施形態のワイヤハーネス形状保持体1を示す概略的な斜視図である。図2は、ワイヤハーネス3及びリインフォース2を示す斜視図である。図3は、外殻部材4及び取付部材5の拡大図である。
図1に示す第1実施形態のワイヤハーネス形状保持体1は、図2に示すリインフォース2に沿ってワイヤハーネス3を配索するために用いられる。図1に示すように、このワイヤハーネス形状保持体1は、細長い外殻部材4と、2つ(複数)の取付部材5と、を備える。
図3(a)に示すように、外殻部材4は、平板状の第1板部41と、第1板部41の一端に垂直に接続する平板状の第2板部42と、第1板部41の他端に垂直に接続する平板状の第3板部43と、を備えている。従って、外殻部材4を長手方向に垂直に切った断面は、第1板部41を下側にして見ると、図3(a)に示すように門を逆さにしたような形状となっている。
外殻部材4において、これらの3つの板部41〜43に囲まれた部分は収容空間44とされている。また、第1板部41と反対側(板部がない側、上側)は、前記収容空間44を開放させる開放部45とされている。
図1や図3(a)に示すように、第1板部41において収容空間44と反対側を向く面(外殻部材4の外側の面、下側の面)には、互いに平行な2本の凸状リブ(凸状体)46が形成される。この2本の凸状リブ46の間は相対的に凹となっており、この部分に直線状の溝47が形成されている。溝47は、外殻部材4の長手方向と平行に向けられながら、外殻部材4の長手方向全体にわたって形成されている。また、溝47の断面輪郭は矩形状となっており、その深さ及び幅は、外殻部材4の全長にわたって一様となるように形成されている。
この溝47には、取付部材5が有する差込部51を取り付けることができる。なお、取付部材5の詳細な構成については後述する。
外殻部材4は、上記で説明した断面を一様に有しながら直線状に細長く形成されており、これにより、図1に示すように、外殻部材4の長手方向全体にわたって直線状の収容空間44が細長く形成されている。また、収容空間44を開放させる開放部45も、外殻部材4の長手方向全体にわたって直線状に設けられている。従って、前記開放部45からワイヤハーネス3の幹線部31を入れて収容空間44の内部に配置することで、外殻部材4は当該幹線部31をある程度の長さにわたって覆うことができる。
上記のとおり、外殻部材4は3つの板部41〜43を垂直に接続した形状となっているので、前記板部41〜43の厚みを適宜確保すること等とあいまって、良好な剛性を得ることができる。また、上記の2本の凸状リブ46も、外殻部材4の高剛性化に寄与している。従って、ワイヤハーネス3を外殻部材4の収容空間44に配置することによって、ワイヤハーネス3が自重などで容易に変形しないようにその形状を保持することができる。
本実施形態において、ワイヤハーネス3は図2に示すように、メインハーネスとなる前記幹線部31から、2本(複数)の支線部32,32が、それぞれ分岐部33,33を形成しながら分岐した構成となっている。幹線部31を収容空間44に収容したとき、支線部32は、開放部45から引き出されるように配置される。このように、開放部45は、幹線部31の差込口としてだけでなく、支線部32の引出し場所としての機能を有している。
なお、開放部45は(上記収容空間44と同様に)外殻部材4の長手方向全体にわたって設けられているので、開放部45の任意の部位から支線部32を引き出すことができる。従って、支線部32の本数や分岐部33の位置等が様々に異なる多様なワイヤハーネス3を柔軟に収容することができる。
また、外殻部材4をその長手方向に垂直に切った断面は上記したとおり一様であるので、外殻部材4のどの部分においても、開放部45が収容空間44を開放させる向きは一定(本実施形態では、上側)になっている。この結果、2本の支線部32,32を揃った向きで引き出すように案内できるので、支線部32の配索作業性を向上させることができる。
本実施形態の外殻部材4は、適宜の合成樹脂を用いて押出成形により構成されている。これにより、上記のように断面が一様な外殻部材4を低コストで製造することができる。また、押出成形品を任意の長さで切断することで所望の長さの外殻部材4を得ることができるため、コストを大幅に増加させることなく、長さの異なる多様なワイヤハーネス3(あるいは、リインフォース2)に柔軟に対応することができる。
次に、取付部材5を説明する。複数の取付部材5は何れも同一形状となっており、それぞれの取付部材5は、差込部51と、把持部(固定部)52と、連結部53と、を合成樹脂により一体に形成した構成となっている。
差込部51は、図1に示すように所定の長さ及び厚みを有する細長い矩形の板状に形成されている。また、差込部51の断面は矩形状となっており、その幅は図3に示すように、外殻部材4における前記溝47の幅に対応している。差込部51の厚みは、前記溝47の深さとほぼ一致している。
言い換えれば、差込部51を長手方向に垂直な平面で切った断面を考えたときに、この断面輪郭が、前記溝47を長手方向に垂直な平面で切った断面の輪郭と対応する部分を有している。これにより、差込部51を、外殻部材4の溝47に嵌まるように取り付けることができる。この結果、差込部51(取付部材5)が溝47の幅方向に移動せず、また、向きが変化しないように規制することができる。
また、溝47の長さは差込部51の長さに比べて大きくなっている。従って、差込部51を、溝47に対し、当該溝47の長手方向で互いに異なる位置に取り付けることができる。この結果、取付部材5の取付位置を変更あるいは選択できるので、例えば車種が変わることによるリインフォース2の形状の変化に柔軟に対応することができる。
把持部52は、図1や図3(b)に示すように、短い円筒の一部を切り欠いたようなC字状に形成することで、2本の円弧状のアーム54,54を有する形状に構成されている。2本のアーム54,54の先端部の間には開口55が形成されている。2本のアーム54,54はある程度の弾性変形が可能に構成されており、開口55を広げる向きの外力が加わることで変形する一方、その外力が解除されると元の形状に戻るようになっている。
一側のアーム54の内側の面には、突起56が形成されている。この突起56は、リインフォース2に予め形成された位置決め穴2a(図2を参照)に対して嵌まることにより、当該リインフォース2に対する取付部材5の位置合わせを行うことができる。ただし、この突起56は、両側のアーム54,54に形成されていても良い。
それぞれのアーム54,54の外側には、当該アーム54の形状に沿うリブ59が一体的に形成されている。これにより、アーム54に適度な弾性を付与しつつ、把持部52の剛性がある程度高められている。
連結部53は短い直線状に構成されており、差込部51の中央部分と、把持部52の中央部分と、を一体的に連結している。差込部51は、連結部53との連結箇所から両側に細長く突出するように延びている。また、把持部52の2本のアーム54,54は、連結部53との連結箇所から円弧状にそれぞれ突出している。
図1等に示すように、複数の取付部材5は何れも、細長い板状の差込部51の長手方向と、一部を切り欠いた短い円筒状の把持部52の軸方向(以下、単に「把持部52の軸方向」と呼ぶことがある)と、が平行になるように配置された状態で、差込部51と把持部52とが連結部53によって連結された構成となっている。また、複数の取付部材5の差込部51を取り付けるための溝47は、直線状に形成されている。
従って、外殻部材4の全長にわたって設けられた直線状の溝47に、それぞれの取付部材5の差込部51が嵌まるように取り付けられることで、複数の取付部材5が直線状に並べて配置されることになる。また、溝47の向きと差込部51の向きを一致させて取り付けることによって、複数の取付部材5の取付角度は何れも、前記把持部52の軸方向が溝47(ひいては、外殻部材4)の長手方向と平行になるように規定される。従って、複数の取付部材5の把持部52の向きが揃えられるので、長尺状のリインフォース2に対し、複数の把持部52を利用してワイヤハーネス形状保持体1(ワイヤハーネス3)を容易に取り付けることができる。
次に、本実施形態のワイヤハーネス形状保持体1を利用したワイヤハーネス3のリインフォース2への配索作業について、図4から図6を参照して説明する。図4は、ワイヤハーネス3を外殻部材4に収容する様子を示す斜視図である。図5は、外殻部材4に取付部材5を取り付ける様子を示す斜視図である。図6は、ワイヤハーネス形状保持体1付きのワイヤハーネス3をリインフォース2に固定する様子を示す斜視図である。
最初に作業者は、図4に示すように、外殻部材4の開放部45からワイヤハーネス3の幹線部31を差し込み、収容空間44に配置する。これにより、ワイヤハーネス3の形状が外殻部材4によって直線状に保持されるので、以後のワイヤハーネス3の取回しが簡単になる。
次に、図5に示すように、作業者は2つの取付部材5の差込部51を、外殻部材4の溝47に差し込んで取り付ける。なお、差込部51は、溝47の内部に差し込まれた状態で、当該溝47の長手方向にスライド移動させることができる。これにより、作業者はそれぞれの取付部材5を動かして、意図した位置になるように調整することができる。
今回の例では、取付部材5の位置は、リインフォース2に形成された位置決め穴2aの位置に合うように調整される。なお、位置決め穴2aの位置が異なる他のリインフォースに取り付ける場合は、それに応じて取付部材5の位置を溝47に沿って変更するだけで良い。
続いて、作業者は、取付部材5の差込部51(連結部53から突出した部分)と、外殻部材4と、ワイヤハーネス3と、の周りに、図6に示すように粘着テープ12を巻き付ける。これにより、外殻部材4から取付部材5が外れないように固定することができる。
なお、粘着テープ12は、取付部材5が取り付けられた場所だけでなく、他の部分において外殻部材4やワイヤハーネス3の周りに巻き付けられても良い。以上により、ワイヤハーネス3、外殻部材4、及び取付部材5の3者を一体化(モジュール化)させることができる。
なお、図4、図5等で説明した上記の作業はワイヤハーネスのメーカー側で予め行った上で、外殻部材4付き(あるいは、外殻部材4及び取付部材5付き)のワイヤハーネス3を自動車メーカーに納入しても良い。
その後、作業者は、開放部45が上、取付部材5(把持部52)が下となるようにワイヤハーネス形状保持体1を向けた状態で、図6の矢印で示すように、2つの取付部材5の把持部52に形成されている開口55をリインフォース2に当て、力を加えて押し込む。すると、開口55を広げるように2本のアーム54,54が弾性変形し、リインフォース2が把持部52の内部に差し込まれていく。リインフォース2の全体が把持部52の内部に入ると、アーム54,54の弾性変形が解除されてリインフォース2を掴むように挟み込む。また、アーム54に形成されている突起56が位置決め穴2aに入ることで、把持部52がリインフォース2の長手方向に動かないように、かつ、リインフォース2を軸として回転しないように規制される。これにより、ワイヤハーネス3をワイヤハーネス形状保持体1とともにリインフォース2に固定することができる。
なお、上記では、リインフォース2を外側から掴む把持部52を有する取付部材5を用いた例を示したが、図7に示す他の取付部材5x,5yを用いることもできる。以下、それぞれの取付部材5x,5yについて説明する。
符号5xで示す取付部材は、固定部として、前述した把持部52の代わりにブラケット固定部57を備えている。このブラケット固定部57は図示しない係止片を有しており、リインフォース2に溶接等で固定された図略のブラケットに対して固定することができる。
符号5yで示す取付部材は、固定部として、把持部52の代わりにアンカー部58を備えている。このアンカー部58は、リインフォース2に加工された小さい取付穴に差し込んで固定することができるようになっている。
以上に示したように、3種類の取付部材5,5x,5yは、リインフォース2に対する固定の方法が異なっている。その一方で、取付部材5yの差込部51は、取付部材5の差込部51と全く同じ形状となっている。また、取付部材5xの差込部51は、他の取付部材5,5yの差込部51と形状が若干異なるものの、溝47の幅と同じ幅の板状部分を備える点で共通する。見方を変えて言えば、3種類の取付部材5,5x,5yの差込部51は何れも、その差込部51を長手方向に垂直な平面で切った断面の輪郭が、溝47を長手方向に垂直な平面で切った断面の輪郭と対応する部分を有している。
従って、1つの外殻部材4に対し、図7に示す3種類の取付部材5,5x,5yから任意のものを選択して、溝47に取り付けることができる。また、その取付位置も溝47の長手方向に沿って変更できることは上述したとおりである。これにより、外殻部材4は共通としながら、形状が様々に異なる多様なリインフォース2を対象とすることができるので、コストの増加を抑制しながら車種の変更等に容易に対応することができる。
また、把持部52を有する取付部材5においても、差込部51の形状は同一である一方、C字状の把持部52の径が様々に異なる複数種類を用意することで、外径の異なる複数種類のリインフォース2に対応することができる。
以上に説明したように、本実施形態のワイヤハーネス形状保持体1は、外殻部材4と、取付部材5と、を備える。外殻部材4は、ワイヤハーネス形状保持体1を通過させる収容空間44を有するように細長く形成される。取付部材5は、外殻部材4に取り付けられる。外殻部材4において外側の面には、当該外殻部材4の長手方向と平行に配置された溝47が形成される。取付部材5は、差込部51と、把持部52と、を備える。差込部51は、溝47に差込可能である。把持部52は、リインフォース2に固定可能である。溝47に対して差込部51を、当該溝47の長手方向で互いに異なる位置に取付可能に構成されている。
これにより、曲がり易いワイヤハーネス3の形状を外殻部材4によって保持しながら、ワイヤハーネス3をリインフォース2に取り付けることができるので、組付作業性が良好である。また、外殻部材4に対する取付部材5の取付位置を溝47に沿って容易に変更できるので、外殻部材4は共通としつつ、外殻部材4を固定すべき位置が異なるリインフォース2に対しても柔軟に対応することができる。この結果、コストの削減が容易でかつ汎用性の高いワイヤハーネス形状保持体1を提供することができる。
また、本実施形態のワイヤハーネス形状保持体1において、取付部材5は、固定部の形状が異なる他の取付部材5x,5yと交換可能になっている。
これにより、外殻部材4を変更することなく取付部材5を変更するだけで、外殻部材4のリインフォース2に対する固定方法を変更することができる。従って、外殻部材4を固定する形態を変更しなければならない場合でも問題なく対応できるので、ワイヤハーネス形状保持体1の汎用性を更に大幅に向上させることができる。
また、本実施形態のワイヤハーネス形状保持体1においては、外殻部材4の外側の面には、複数本の凸状リブ46が互いに平行に配置される。この凸状リブ46の間に形成される相対的な凹部が、差込部51を取り付けるための溝47とされている。
これにより、凸状リブ46を複数設けるという簡単な構成で、差込部51を差し込むための溝47を外殻部材4に形成することができる。従って、製造コストを低減でき、かつ、ワイヤハーネス3の重量の増加を抑制できる。また、凸状リブ46によって、外殻部材4の剛性も効果的に向上させることができる。
また、本実施形態のワイヤハーネス形状保持体1において、差込部51は細長い形状に構成されている。差込部51を長手方向に垂直な平面で切った断面が、溝47を長手方向に垂直な平面で切った断面と対応する部分を有している。
これにより、差込部51が溝47に嵌まることによって、差込部51(取付部材5)が溝47の幅方向に移動せず、かつ、向きが変わらないように規制することができる。従って、取付部材5の位置や向きのズレを効果的に防止することができる。
また、本実施形態のワイヤハーネス形状保持体1において、差込部51は、一定の厚みを有する矩形板状に形成されている。
これにより、差込部51の簡素な構成を提供できる。
また、本実施形態のワイヤハーネス形状保持体1において、取付部材5の把持部52には、リインフォース2を外側から掴むための弾性変形可能なアーム54が対で備えられている。
これにより、把持部52のアーム54がリインフォース2を外側から掴むことでワイヤハーネス形状保持体1が固定されるので、リインフォース2に特別な加工をすることなく、ワイヤハーネス形状保持体1を簡単にリインフォース2に取り付けることができる。また、固定の際にアーム54の弾性変形を利用しているので、ワイヤハーネス3の取付け後に例えば修理のために取り外す必要が生じた場合でも、アーム54を再び弾性変形させることで容易に取り外すことができる。
また、本実施形態のワイヤハーネス形状保持体1において、アーム54には、リインフォース2の位置決め穴2aに差込可能な突起56が形成されている。
これにより、取付部材5をリインフォース2の正確な位置に取り付けることができる。また、位置決め穴2aの位置が異なるリインフォース2に対しても、外殻部材4の溝に対して差込部51を取り付ける位置を変更するだけで、ワイヤハーネス形状保持体1を柔軟に取り付けることができる。
また、本実施形態のワイヤハーネス形状保持体1において、アーム54にはリブ59が形成されている。
これにより、簡単な構成で、アーム54に適度な強度及び弾性を付与することができる。
また、本実施形態のワイヤハーネス形状保持体1において、取付部材5は複数備えられ、複数の取付部材5の差込部51が溝47に差し込まれる。
これにより、複数の取付部材5を、直線状に並べて、かつ向きを揃えて取り付けることが容易になる。
また、本実施形態のワイヤハーネス形状保持体1において、溝47は、外殻部材4の長手方向全体にわたって形成されている。
これにより、取付部材5を取り付ける位置を、外殻部材4の全長にわたる広い範囲で変更あるいは選択できることになる。従って、より幅広い種類のリインフォース2に適用することができる。
また、本実施形態のワイヤハーネス形状保持体1において、外殻部材4には、当該外殻部材4の長手方向全体にわたって、収容空間44を開放させる開放部45が形成されている。
これにより、ワイヤハーネス3の幹線部31を外殻部材4に容易に収容することができる。また、開放部45の任意の位置から支線部32を引き出すことができるので、幅広い種類のワイヤハーネス3に対応することができる。
また、本実施形態のワイヤハーネス形状保持体1において、外殻部材4は、その長手方向全体にわたって、当該長手方向に垂直な面で切った断面が一様になるように構成されている。
これにより、外殻部材4の構成が簡素化されるので、コストを低減できる。
また、本実施形態のワイヤハーネス形状保持体1において、外殻部材4は合成樹脂を押出成形することにより構成されている。
これにより、外殻部材4の製造コストを低減できる。また、任意の長さで切断することにより所望の長さの外殻部材4を容易に得ることができるので、コストを抑制しつつ、多様な種類のワイヤハーネス3やリインフォース2に対応することができる。
また、本実施形態において、ワイヤハーネス3はインパネワイヤハーネスであり、リインフォース2はインパネリインフォースである。
即ち、インパネワイヤハーネスでは細い電線を使用する場合があり、ワイヤハーネスが特にだらりとし易い。この点、上記の構成によれば、ワイヤハーネス3を外殻部材4に収容することによって剛性を増大させて形状を保持し、組付作業性を向上できるため、本発明はインパネワイヤハーネスをインパネリインフォースに取り付ける場合に特に好適である。
次に、図8を参照して、他の実施形態を説明する。なお、以下の説明においては、上記の実施形態と同一又は類似する構成には同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
外殻部材4は、図3(a)で示した形状のほかにも、例えば図8(a)〜(c)に示す形状とすることが考えられる。
即ち、図8(a)の外殻部材4aのように、2本の凸状リブ46を省略する代わりに、第1板部41の肉厚を図3(a)の場合よりも増大させ、その部分に溝47を形成する構成とすることもできる。
図8(b)の外殻部材4bのように、第2板部42の端部に垂直に接続するように第4板部48を設ける一方、第3板部43を若干短くして、矩形の4隅のうち1つを切り欠いたような形状にすることもできる。この場合、開放部45は斜め上を向くことになる。
また、図8(c)の外殻部材4cのように、第1板部41と第2板部42の間、及び、第1板部41と第3板部43の間をそれぞれ緩やかな曲線で繋ぐように形成することもできる。
また、取付部材5を外殻部材4に取り付けるにあたっては、図9〜図11に示すような仮止め構造を採用することもできる。
図9の例では、外殻部材4の溝47に取付穴61が貫通状に形成されている。また、取付部材5の差込部51には、その長手方向中央に、前記取付穴61に対応する形状の凸部62が設けられている。この取付穴61と凸部62との組み合わせにより、取付部材5を溝47の長手方向に移動しないように仮止めしながら、粘着テープ12で外殻部材4に固定することができる。これにより、取付部材5の位置ズレを防止できる。
図9の外殻部材4では、外殻部材4に取付穴61が形成され、取付部材5に凸部62が形成されているが、穴と凸部が逆であっても良い。即ち、外殻部材4側に凸部が形成され、取付部材5の差込部51に凹部が形成されていても良い。また、凸部62や凹部は、差込部51の長手方向中央に1つ設けることに限らず、例えば両端に1つずつ設けるようにしても良い。
図10の例では、外殻部材4において細長く形成されている溝47の長手方向中途部において、輪郭を幅方向両側に広げた膨らみ部63が形成されている。また、取付部材5の差込部51においては、その長手方向中央に、前記膨らみ部63の形状に対応した幅広部64が形成されている。この膨らみ部63と幅広部64との組み合わせによっても、取付部材5を溝47の長手方向に移動しないように仮止めしながら、粘着テープ12で外殻部材4に固定することができる。
なお、膨らみ部63の代わりに、輪郭を幅方向に縮めたくびれ部が溝47に形成されても良い。この場合は、差込部51に、幅広部64の代わりに幅狭部が形成されれば良い。
取付穴61及び膨らみ部63は、図8や図9では1つのみ描かれているが、1本の溝47の長手方向に複数並べて設けて良いことは勿論である。例えば取付穴61や膨らみ部63を等間隔で複数設けることで、取付部材5の取付位置を段階的に選択できるので、様々な形状のワイヤハーネス3やリインフォース2に対応することができる。
また、図11に示すように、溝47の内部に2つの突起65,65を設け、この突起65,65の間に差込部51を入れることで、取付部材5の仮止めを行うようにしても良い。この場合は、差込部51の長手方向両端に突起65,65が当たることで、取付部材5の移動が阻止されることになる。このように、仮止めのための構成を外殻部材4側にだけ設けることもできる。
なお、図9〜図11では把持部52を有するタイプの取付部材5に仮止め構造を適用した例で説明しているが、他のタイプの取付部材5x,5yに対しても上記の仮止め構造を適用できることは勿論である。
以上に示したように、図9〜図11における変形例のワイヤハーネス形状保持体においては、溝47と取付部材5のうち少なくとも何れか一方に規制部(取付穴61、凸部62、膨らみ部63、幅広部64、突起65)が設けられている。この規制部が、外殻部材4の長手方向に取付部材5が移動するのを規制する。
これにより、取付部材5が外殻部材4の長手方向に沿って移動しないように位置決め(仮止め)できるので、外殻部材4の正確な位置に取付部材5を固定することが容易になる。
次に、本願発明の第2実施形態を説明する。図12には、第2実施形態に係るワイヤハーネス形状保持体1の外殻部材4及び取付部材5が、リインフォースの断面と併せて示されている。
図12に示す第2実施形態のワイヤハーネス形状保持体1は、主に、外殻部材4及び取付部材5の形状が第1実施形態とは異なっている。
図12(a)に示すように、外殻部材4の外側の面に形成される2本の凸状リブ46は、第1板部41の幅方向両端部付近から突出するように形成されている。また、凸状リブ46は、当該凸状リブ46を外殻部材4の長手方向に垂直な平面で切った断面がクランク状に折れ曲がった形状に構成されている。この結果、凸状リブ46の間に配置される溝47の断面はT字状に形成されており、その開口部分の幅は、溝47全体の幅よりも小さくなっている。
一方、図12(b)に示すように、取付部材5においては、差込部51及び連結部53がT字状に形成されていて、このT字状の部分を上記の溝47に差し込むことで、取付部材5を外殻部材4に取り付けることができる。
また、図12(b)に示すように、連結部53の両脇の位置には、アーム54の根元部を差込部51に近づける向きに突出させた挟み突起(挟み部)66,66を設けている。この挟み突起66,66は、取付部材5の差込部51を溝47に固定したとき、前記差込部51との間で凸状リブ46を溝47の外部から挟み込んで保持する。これにより、取付部材5と外殻部材4との連結箇所の強度を一層増大させることができる。
上述したとおり、第2実施形態のワイヤハーネス形状保持体1では、溝47の開口幅が差込部51の幅より狭くなっている。従って、取付部材5における上記のT字状の部分(差込部51)は、外殻部材4の長手方向端部から差し込んでスライドさせることで取り付けることになる。取付部材5を外殻部材4にいったん取り付けると、差込部51の幅方向両端部は、T字状の溝47により、その厚み方向の両側から挟むようにして保持される。従って、強力な抜止めがなされるので、外殻部材4から取付部材5が外れないように強固に取り付けることができる。
外殻部材4を構成する第2板部42及び第3板部43は、図3に示す第1実施形態に比べて高さが低く形成されており、この結果、収容空間44にワイヤハーネス3(幹線部31)を収容したときに、当該ワイヤハーネス3の上部が外殻部材4の開放部45から大きく露出する構成となっている。
第2板部42及び第3板部43のそれぞれの上部には、外向きに突出する引掛けリブ67,67が形成されている。また、第2板部42及び第3板部43のそれぞれには、外向きに突出するストッパリブ68,68が形成されている。引掛けリブ67及びストッパリブ68は、前述の凸状リブ46と同様に、外殻部材4の長手方向全体にわたって設けられている。
この引掛けリブ67,67を用いることにより、後述するテープ止め部材80や分岐部サポート部材90を外殻部材4に固定することができる。
本実施形態においては、取付部材5における2本のアーム54,54の根元部の間に、位置決め突起(突起)69が形成されている。この位置決め突起69は、取付部材5と一体的に形成され、開口55側に向けて突出している。一方、図12(c)に示すように、リインフォース2においては、上記の位置決め突起69に対応した形状の位置決め穴2aが形成されている。
この位置決め突起69は、図3(b)等で説明した突起56と同様の位置決め機能を有している。即ち、ワイヤハーネス形状保持体1をリインフォース2に取り付けると、上記の位置決め突起69が位置決め穴2aに入ることで、取付部材5(ワイヤハーネス形状保持体1)がリインフォース2の長手方向に動かないように、かつ、リインフォース2を軸として回転しないように規制することができる。従って、配索作業性が一層良好になる。
ただし、位置決め突起69の代わりに、図3(b)等で示した突起56と同様のものを本実施形態のアーム54に形成しても良い。
以下、テープ止め部材80について、図13を参照して説明する。このテープ止め部材80は、外殻部材4の端部に取り付けて用いられる。
図13に示すように、このテープ止め部材80はベース部81を備え、このベース部81は、天井部82と、天井部82の両脇の位置に接続される側壁部83,84と、を備える。側壁部83,84同士の間隔は、第2板部42と第3板部43の間隔とほぼ一致している。
側壁部83,84の下端部には、内向きに突出する引掛け爪85,85が一体的に形成されている。この構成で、収容空間44の開放部45を一部塞ぐようにしてテープ止め部材80のベース部81を外殻部材4及びワイヤハーネス3に被せ、この状態でベース部81を外殻部材4に向かって押すことで、引掛け爪85が前述の引掛けリブ67に引っ掛かり、テープ止め部材80(ベース部81)が外殻部材4に固定される。なお、ベース部81の押し込み過ぎは、側壁部83,84の下端部がストッパリブ68,68に接触することで阻止される。
テープ止め部材80は、ベース部81の端部から突出する断面L字状の外殻固定部86と、ベース部81の反対側の端部から突出する板状のハーネス固定部87と、を備える。
この構成で、作業者は図13に示すように、外殻部材4の収容空間44にワイヤハーネス3の幹線部31を収納した状態で、引掛け爪85と引掛けリブ67を用いて、外殻部材4の端部にテープ止め部材80を固定する。このとき、テープ止め部材80のベース部81を外殻部材4の端部に配置した上で、ハーネス固定部87は外殻部材4の端部より外側に向けて突出し、外殻固定部86は反対向きに突出するように、テープ止め部材80の取付向きが調整される。
そして、作業者は、テープ止め部材80の外殻固定部86と、ワイヤハーネス3(幹線部31)と、外殻部材4と、の周りに、図示しない粘着テープを巻き付ける。これにより、外殻部材4(ワイヤハーネス形状保持体1)がワイヤハーネス3の長手方向に動かないように固定することができる。また、作業者は、ハーネス固定部87のところでは、当該ハーネス固定部87と、ワイヤハーネス3と、の周りに、同様に粘着テープを巻き付ける。これにより、ワイヤハーネス3が長手方向に動かないように固定することができる。
なお、外殻固定部86及びハーネス固定部87の先端には、抜け防止のための小さな鍔部88がそれぞれ形成されている。これにより、巻かれた粘着テープから外殻固定部86やハーネス固定部87が外れることがない。
次に、分岐部サポート部材90について、図14を参照して説明する。この分岐部サポート部材90は、外殻部材4のうち、ワイヤハーネス3の分岐部33に対応する部分に取り付けて用いられる。
図14に示すように、この分岐部サポート部材90はベース部91を備え、このベース部91は、断面半円状の天井部92と、天井部92の両脇の位置に接続される側壁部93,94と、を備える。側壁部93,94の下端部には、内向きに突出する引掛け爪95,95が一体的に形成されている。この引掛け爪95が前述の引掛けリブ67に引っ掛かることで、分岐部サポート部材90(ベース部91)が外殻部材4に固定される。
なお、前述したように、引掛けリブ67は外殻部材4の長手方向全体にわたって設けられている。従って、分岐部サポート部材90の取付位置の自由度が高められており、様々な分岐を有するワイヤハーネス3に柔軟に対応することができる。
分岐部サポート部材90は、ベース部91の端部から突出する断面四半円弧状の幹線固定部96と、ベース部91の反対側の端部から突出する断面四半円弧状の支線固定部97と、を備える。幹線固定部96は、その軸線が外殻部材4と平行な向きに配置されている。一方、支線固定部97は、その軸線が、外殻部材4と平行な向きから垂直な向きに変化するように湾曲した形状に設けられている。幹線固定部96と支線固定部97には、テープ止め部材80と同様に、鍔部98が設けられている。
この構成で、作業者は図14に示すように、外殻部材4の収容空間44にワイヤハーネス3の幹線部31を収納した状態で、引掛け爪95と引掛けリブ67を用いて、支線部32の根元部分(分岐部33)に対応する位置に分岐部サポート部材90を固定する。
そして、作業者は、分岐部サポート部材90の幹線固定部96と、ワイヤハーネス3の幹線部31と、外殻部材4と、の周りに、図示しない粘着テープを巻き付ける。更に、分岐部サポート部材90の支線固定部97と、ワイヤハーネス3の支線部32と、の周りに、同様に粘着テープを巻き付ける。
以上により、ワイヤハーネス3の支線部32の根元(分岐部33)近傍の箇所を保護するとともに、当該支線部32を適切な向きで外殻部材4から引き出すように案内することができる。
なお、支線部32を案内する向きは、外殻部材4に対する分岐部サポート部材90の取付向きを180°異ならせることで、反転させることもできる。これにより部品の共通化を図ることができるので、コストを抑制することができる。
以上に説明したように、本実施形態のワイヤハーネス形状保持体1において、凸状リブ46を長手方向に垂直な平面で切った断面が、折れ曲がった形状に構成されている。
これにより、外殻部材4の剛性を、凸状リブ46によって更に増大させることができる。
また、本実施形態のワイヤハーネス形状保持体1において、溝47を長手方向に垂直な平面で切った断面の開口部分の幅が、差込部51の幅より狭くなっている。
これにより、差込部51を溝47にいったん取り付けた後は、容易に溝47から外れなくなる。従って、作業時に取付部材5を手で持って保持しておく必要がなくなるので、組付作業性を一層向上させることができる。
また、ワイヤハーネス形状保持体1において、溝47は、差込部51を、その厚み方向の両側から挟むようにして保持している。
これにより、外殻部材4に取り付けた状態での取付部材5のガタツキを防止することができる。
また、本実施形態のワイヤハーネス形状保持体1では、外殻部材4において外側の面には、それぞれが当該外殻部材4の長手方向と平行に配置された複数本の凸状リブ46が形成される。取付部材5は、差込部51との間で凸状リブ46を溝47の外部から挟み込んで保持する挟み突起66を備える。
これにより、取付部材5を外殻部材4に対して一層強固に取り付けることができる。
また、本実施形態のワイヤハーネス形状保持体1において、外殻部材4には、開放部45の一部を閉鎖するカバー部材を固定するための引掛けリブ67が、外殻部材4の長手方向と平行に形成されている。
これにより、各種のカバー部材(テープ止め部材80、分岐部サポート部材90等)を外殻部材4に簡単に取り付けて、ワイヤハーネス3の配索作業に役立てることができる。
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
外殻部材4が、開放部45を閉じた状態で固定可能な蓋部を備えていても良い。また、外殻部材4の第2板部42,第3板部43、第4板部48、上記の蓋部等において、ワイヤハーネス3の分岐部33に対応する箇所に切欠きを形成し、この切欠きから支線部32が引き出されるように構成しても良い。
外殻部材4の溝47は、当該外殻部材4の全長にわたって形成されず、例えば途中で途切れる箇所があっても良い。また、凸状リブ46は、3本以上形成されていても良い。
外殻部材4の溝47は、断面を矩形状とすることに限らず、例えばV字状の断面を有するように構成されても良い。この場合、取付部材5の差込部51は、断面が三角形状となるように形成すれば良い。
上記の例では3種類の取付部材5,5x,5yを示したが、リインフォース2へ固定する形態は、把持、ブラケットによる固定、アンカー固定の3種類に限定されず、更に他の固定方法を用いた取付部材を適用することもできる。
1つの外殻部材4(1本の溝47)に対し、3つ以上の取付部材5が取り付けられても良い。また、複数の種類の取付部材5,5x,5yが混在して1つの外殻部材4に取り付けられても良い。
上記の実施形態では、位置決め穴2aと突起56によって、取付部材5のリインフォース2に対する位置決めが行われている。ただし、例えば、アーム54に当たることで軸方向の移動を阻止するストッパをリインフォース2に固定することで、取付部材5の位置決めを行っても良い。この場合、位置決め穴2aや突起56は省略することができる。
本発明のワイヤハーネス形状保持体1は、インパネワイヤハーネスをインパネリインフォースに固定する場合に限定されず、車両の他の部分のリインフォースに沿ってワイヤハーネスを配索する際にも適用することができる。