このような従来の製造方法では、作業者は、電線の各部にテープを巻き付けるために、作業台の周囲を動き回らなければならない。作業台上の電線は様々な方向に屈曲して布線されているため、作業者は、テープを巻き付ける作業を毎回異なる姿勢で行わなければならず、作業の習熟度が向上しにくい。また、電線の向きによっては、テープを巻き付ける作業が困難な場合も有る。更に、テープを巻き付けるという作業自体が複雑であり、作業時間が長い。また、1つの作業台で複数の作業者が同時に作業を行う場合、各作業者が作業台の周囲を動き回る必要があるため、作業者同士の動線が錯綜する。このため、複数の作業者が1つの作業台で同時に効率良く作業を行うことができない。このように、従来の製造方法では、作業効率が悪く生産性が低いという課題があった。
また上記のように、従来の製造方法では作業の習熟度が向上しにくいため、品質が不安定になり易いという問題がある。特に、テープの巻き付き具体によってワイヤハーネスの各部の寸法がバラつくため、製造されたワイヤハーネスの各部の寸法を検査する必要があり、検査工程が増大していた。
また、複雑なワイヤハーネスを製造する場合には、それに応じて作業台が大型化する。このため、ワイヤハーネスの製造ラインが長くなっていた。
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、ワイヤハーネスの製造時の複雑な作業を削減することにより、生産効率を向上させ、品質のバラつきを低減させた製造方法を提供することにある。
課題を解決するための手段及び効果
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
本発明の観点によれば、ワイヤハーネスの製造方法が以下の通り提供される。この製造方法で製造されるワイヤハーネスは、複数の電線と、プロテクタと、固定部材と、を備える。前記プロテクタは、前記複数の電線の屈曲形状又は分岐形状の少なくとも何れか一方を規定する。前記固定部材は、前記複数の電線を束ねる結束部、及び前記プロテクタに対して取り付けられるプロテクタ取付部を有する。この製造方法は、結束工程と、プロテクタ取付工程と、を含む。前記結束工程では、前記結束部によって前記複数の電線の所定位置を束ねることにより、当該電線に対して前記固定部材を取り付ける。前記プロテクタ取付工程では、前記電線に取り付けられた前記固定部材の前記プロテクタ取付部を、前記プロテクタに取り付ける。
このように、複数の電線を固定部材によって束ねるとともに、当該固定部材をプロテクタに取り付けることで、所定形状のワイヤハーネスとする。この製造方法によれば、電線を束ねるためにテープを巻き付ける作業が不要なので、生産効率が向上する。また、プロテクタによってワイヤハーネスの各部の寸法が決まるので、寸法精度を向上させることができる。
上記のワイヤハーネスの製造方法において、前記結束工程では、前記複数の電線からなる結束単位を、所定方向に複数並べて配置するとともに、前記複数の結束単位それぞれの所定位置を前記固定部材の前記結束部によって束ねることが好ましい。
このように、結束単位を所定方向に並べて配置することにより、作業者は、所定方向に移動するだけで各結束単位を順次束ねていくことができる。このように作業者の動線がシンプルになるため、複数の作業者が同時に作業を行っても動線が錯綜しにくく、結果として効率的に作業を行うことができる。また、結束単位を並べて配置するので、各結束単位は互いに略平行となる。従って、作業者は、各結束単位を固定部材で束ねる作業を、毎回ほぼ同じ姿勢で行うことができる。これにより、当該作業の効率が向上する。
上記のワイヤハーネスの製造方法において、前記結束工程では、前記複数の結束単位のそれぞれを所定方向に並べて保持する治具を備えた作業台を用いることが好ましい。
この作業台上で固定部材の取り付け作業を行うことにより、作業者は、結束工程の作業を効率的に行うことができる。この作業台は、各結束単位を並べて配置できる程度の大きさで良いので、従来の作業台に比べて小型化できる。
上記のワイヤハーネスの製造方法において、前記作業台は、前記結束単位を構成する電線の末端に設けられたコネクタを所定位置に保持するコネクタ保持治具と、前記結束単位に対して前記固定部材を取り付ける位置を示す結束位置指示治具と、を少なくとも備えることが好ましい。
この作業台を用いることで、コネクタから所定の距離だけ離れた位置に固定部材を取り付けることができる。
前記作業台において、前記コネクタ保持治具は、複数の前記コネクタを一列に並べて保持することが好ましい。
このように、複数のコネクタを保持させる位置を一列とすることで、作業台に対して電線を布線する作業を行い易くなる。
上記のコネクタ保持治具は、前記コネクタを1つ又は複数並べて保持可能なサブ治具を複数連結して構成されており、かつ前記作業台に対して着脱可能であることが好ましい。
複数のコネクタをコネクタ保持治具に保持させておくことにより、当該複数のコネクタ(及びこれに繋っている電線)を、作業台に対して一括してセットできる。コネクタ保持治具を複数のサブ治具に分割することで、サブ治具ごとにコネクタをまとめて取り扱うことができる。
上記のワイヤハーネス製造方法は、以下のサブ治具配置工程を含むことが好ましい。即ち、このサブ治具配置工程では、前記結束工程の終了後、前記コネクタを保持した状態の前記コネクタ保持治具を前記作業台から取り外すとともに、当該コネクタ保持治具の前記連結を解除して複数の前記サブ治具に分割し、当該サブ治具をプロテクタ取付台に配置する。前記プロテクタ取付工程においては、前記プロテクタ取付台に前記サブ治具が配置された状態で、前記プロテクタの取り付け作業を行う。
コネクタ保持治具の連結を解除してサブ治具に分割し、当該サブ治具をプロテクタ取付台に配置することにより、各コネクタを、プロテクタの取り付けに適した位置に配置できる。サブ治具によって複数のコネクタをまとめて取り扱うことができるので、プロテクタ取付台へのコネクタ及び電線の配置を効率的に行うことができる。
次に、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。図1に示すのは、本実施形態の製造方法によって製造されるワイヤハーネス1の一例を示す概略的な平面図である。本実施形態のワイヤハーネス1は、自動車用ワイヤハーネスであり、当該自動車の車体に配索される。ワイヤハーネス1は、自動車が備える各種電気機器への電力供給や、電気機器間の通信などに利用される。
このワイヤハーネス1は、複数の電線2を束ねたものである。各電線2の末端には、各種電気機器に接続されるコネクタ3が配置されている。各電線2は所定の屈曲形状を有するように配索されており、ワイヤハーネス1の全体としては複雑な枝分かれ構造(分岐形状)となっている。
ワイヤハーネス1の各部には、プロテクタ4が配置されている。プロテクタ4の構成の一例を、図2から図4に示す。
図2に示すように、プロテクタ4は、その内部に複数本の電線2を収容できるように構成されている。具体的には、図3に示すように、プロテクタ4は、当該プロテクタ4の内部に収容される電線2の長手方向に直交する断面において、断面形状が略U字状となるように形成されている。プロテクタ4は、前記U字の内側に、複数本の電線2を収容できる。
図3に示すように、プロテクタ4の前記U字状の開放側端部は、蓋部19によって塞がれている。これにより、プロテクタ4の内部に収容された電線2が、前記U字の開放側端部から外側にハミ出すことを防止できる。ただし、蓋部19は必須の構成ではなく、省略しても良い。以下の説明及び図面では、蓋部19についての記載を省略する場合がある。
ところで、従来のワイヤハーネスでは、電線の周囲にテープを巻き付けることで、当該電線の屈曲形状及び分岐形状を固定し、所定形状のワイヤハーネスとしていた。これに対し、本実施形態のワイヤハーネス1は、プロテクタ4の内部に電線2を収容することにより、当該電線2の屈曲形状及び分岐形状を固定している。
例えば図2及び図4に例示するプロテクタ4は、電線引出口5を3つ有している。図2に示すように、このプロテクタ4に収容された複数本の電線2は、プロテクタ4の内部で2つに分岐して、それぞれ別々の電線引出口5からプロテクタ4の外部に引き出されている。分岐させられた電線群の一方(第1電線群6)は、プロテクタ4内で約90度屈曲させられて、当該プロテクタ4から引き出されている。一方、他方の電線群(第2電線群7)は、プロテクタ4内を略直線状に通過して、当該プロテクタ4の外部に引き出されている。
このように、本実施形態のプロテクタ4は、電線2の屈曲形状、及び分岐形状を規定する機能を有している。つまり、プロテクタ4内に電線2を収容することで、所定の屈曲形状で、所定の分岐形状を有するワイヤハーネス1を形成できる。プロテクタ4の形状は、図2から図4に図示したものに限らない。図1に示すように、ワイヤハーネス1の各部の屈曲形状及び分岐形状に応じて、様々な形状のプロテクタ4を用いることができる。プロテクタ4の素材は特に限定されないが、ある程度の剛性を備え、軽量かつ成形が容易な素材が好ましい。なお、本実施形態のプロテクタ4はプラスチック製である。
図2及び図3に示すように、プロテクタ4の内部に収容された複数の電線2には、当該電線2を束ねる結束バンド(固定部材)10が取り付けられている。結束バンド10は、バンド部(結束部)11と、バックル部12とを備えた公知の構成である。図3に示すように、バンド部11を複数の電線2の周囲に周回させ、当該バンド部11の先端部11aをバックル部12に挿入することで、前記複数の電線2を束ねることができる。バックル部12内には図略のロック機構が設けられており、バンド部11による電線2の締め付けが緩まないように構成されている。なお、以下の説明で、1つの結束バンド10によって束ねられる複数の電線2を、「結束単位50」と呼ぶことがある。
図4から図6に示すように、プロテクタ4の適宜の箇所には、結束バンド10を係合させることが可能な係合部13が形成されている。具体的には、係合部13は、結束バンド10のバンド部11を挿入可能な孔として構成されており、当該孔の内部には、前記バンド部11に係合するロック爪14が設けられている。
図5に示すように、複数の電線2(結束単位50)を束ねたバンド部11をバックル部12に挿通させ、当該バックル部からバンド部11の先端部11aが突出した状態とする。この状態で、図5及び図6に示すように、バンド部11の先端部11aを係合部13に挿入し、当該先端部11aにロック爪14を係合させる(図3の状態)。これにより、結束バンド10をプロテクタ4に固定できるので、当該結束バンド10で束ねられた電線2(結束単位50)とプロテクタ4を位置決めできる。なお、バンド部11を係合部13に係合させることで結束バンド10がプロテクタ4に取り付けられるので、当該結束バンド10のバンド部11は、プロテクタ取付部であると言うことができる。
図1に示すように、本実施形態のワイヤハーネス1において、プロテクタ4同士の間には、コルゲート管8が適宜配置されている。プロテクタ4同士の間にコルゲート管8を配置することで、プロテクタ4の間の電線2を保護できる。
コルゲート管8が配置されるプロテクタ4には、図7(a)に示すようにコルゲート管係合部15を設ける。コルゲート管係合部15は、プロテクタ4の内側に向けて凸となるようにリブ状に形成されており、図7(b)に示すように、コルゲート管8の外周の凹部に係合する。これにより、プロテクタ4に対してコルゲート管8が相対移動しないように固定できる。また、例えば図7(b)のように2つのプロテクタ4の間にコルゲート管8を配置することで、右側のプロテクタ4と、左側のプロテクタ4と、がそれぞれコルゲート管8に対して相対移動しないように固定できる。これにより、図7(b)の左右のプロテクタ4同士の距離を一定に保つことができる。
続いて、本実施形態のワイヤハーネス1の製造方法について説明する。
図8に示すのは、本実施形態の製造方法で用いる作業台(ASSY盤)20の模式的な斜視図である。図8には、作業台20上に、複数の電線2が布線された状態が示されている。なお、図示の都合上、図8では複数の電線2からなる結束単位50を1本の太線で示している。図8に示すように、本実施形態の作業台20は、コネクタ保持治具21と、複数の結束位置指示治具22と、を備えている。コネクタ保持治具21及び結束位置指示治具22の近傍を拡大した平面図を図9に示す。
コネクタ保持治具21は、電線2の末端に配置されているコネクタ3を所定位置に保持するコネクタ保持部24を複数備えている。
また、図8に示すように、コネクタ保持治具21は、コネクタビーム23を備えている。このコネクタビーム23は、水平方向に沿って細長く形成された梁状の部材である。前述のコネクタ保持部24は、コネクタビーム23の長手方向に並べて複数設けられている。従って、本実施形態の作業台20が有するコネクタ保持治具21は、多数のコネクタ3を、水平方向で並べて保持できる。
また、図10に示すように、コネクタビーム23は、作業台20に対して着脱可能に構成されている。更に、このコネクタビーム23は、図11に示すように、その長手方向で複数のサブビーム(サブ治具)23a,23b……に分割可能に構成されている。各サブビーム23a,23b……は、1つ又は複数のコネクタ保持部24を有している(即ち、1つのサブビームには、1つ又は複数のコネクタ3を保持させることができる)。各サブビームは、他のサブビームと連結可能、かつ当該連結を解除することが可能に構成されている。複数のサブビーム23a,23b……を一列に並べて連結することにより、図10のコネクタビーム23を構成できる。
本実施形態の作業台20は、略鉛直方向に沿って(立てた状態で)配置されている。これにより、コネクタ保持治具21に保持された各コネクタ3から、電線2が略鉛直方向下側に向けて垂れ下がるようになっている。
結束位置指示治具22は、結束単位50ごとに設けられている。結束位置指示治具22は、例えば図12に示すように略U字状に形成された音叉型の治具である。結束位置指示治具22は、図12に示すように前記U字の内側に複数の電線2(結束単位50)を通すことにより、当該電線2を保持する。結束位置指示治具22に、結束単位50ごとに電線2を保持させることで、当該電線2が布線される経路を規制する。
結束位置指示治具22は、コネクタ保持部24から見て、略鉛直方向下方に配置されている。コネクタ保持部24に保持されたコネクタ3から垂れ下がった電線2を、結束単位50ごとに結束位置指示治具22に通すことで、コネクタ3から結束位置指示治具22までの間の部分において、結束単位50を略鉛直方向(コネクタビーム23の長手方向(水平方向)に直行する方向)に沿って布線できる。
以上のように、結束位置指示治具22は、結束単位50を、その長手方向が略鉛直方向(コネクタビーム23の長手方向に直行する方向)に沿うように保持する。作業台20は複数の結束位置指示治具22を備えているので、当該作業台20上には複数の結束単位50が互いに略平行となって布線される。これにより、本実施形態の作業台20上には、図8に示すように、複数の結束単位50を略水平方向(コネクタビーム23の長手方向)に並べて布線することができる。なお、結束位置指示治具22が保持している結束単位50の長手方向を、本実施形態の作業台20における布線方向と呼ぶ。
結束位置指示治具22は、結束バンド10を取り付ける位置を、作業者に示す役割を兼ねている。即ち、作業者は、図9に示すように、結束位置指示治具22に沿わせて結束バンド10を配置するとともに、結束単位50を構成する複数の電線2を前記結束バンド10によって束ねる。これにより、作業者は、結束位置指示治具22によって示された位置に結束バンド10を取り付けることができる。
各結束位置指示治具22は、それぞれが対応するコネクタ3から所定の距離に配置されている。これにより、結束バンド10を、結束単位50に対して、コネクタ3から所定の距離の位置に取り付けることができる。例えば図9の左の例では、コネクタ3からL1の距離の位置に結束バンド10を取り付けることができる。同様に、図9の中央の例では、コネクタ3からL2の距離の位置に、右の例ではコネクタ3からL3の距離の位置に、それぞれ結束バンド10を取り付けることができる。
続いて、本実施形態におけるワイヤハーネス1の製造方法の実際の流れについて説明する。
まず、複数のサブビーム23a,23b……が一列に並べて連結された状態のコネクタビーム23(コネクタ保持治具21)と、末端にコネクタ3を有する複数の電線2と、を用意する。続いて、各コネクタ3を、コネクタ保持治具21の対応するコネクタ保持部24に保持させる。このように、コネクタ保持治具21に各電線のコネクタ3を保持させた状態(図10の状態)を、コネクタビーム一体電線群25と呼ぶ。コネクタビーム一体電線群25は、コネクタ保持治具21に対して各コネクタ3を配置するだけの単純な工程で製造可能である。従って、コネクタビーム一体電線群25は、適宜の製造装置によって自動的又は半自動的に製造できる。もっとも、コネクタビーム一体電線群25を製造する作業は人手で行っても良い。
続いて、作業者は、コネクタビーム一体電線群25のコネクタ保持治具21を、作業台20にセットする。なお、作業台20には、コネクタ保持治具21を所定位置にセットする固定治具(図略)が設けられている。これにより、コネクタビーム一体電線群25を構成する複数のコネクタ3及び電線2を、作業台20に対して一括してセットすることができる。前述のように、コネクタ保持治具21は、コネクタビーム23の長手方向が略水平方向に沿うようにして、作業台20に配置される。
続いて、作業者は、コネクタ3から垂れ下がった電線2を、結束単位50ごとに、対応する結束位置指示治具22に通していく。これにより、図8に示すように、各結束位置指示治具22に保持された結束単位50が、互いに略並行で、水平方向に並んだ状態となる。
続いて作業者は、結束位置指示治具22に保持されている複数の電線2(結束単位50)に対して、当該結束位置指示治具22が示す位置に結束バンド10を取り付けていく(結束工程)。前述のように、各結束位置指示治具22が保持している結束単位50は互いに平行となっているので、作業者は、各結束単位50に対して結束バンド10を取り付ける作業を、毎回ほぼ同じ姿勢で行うことができる。これにより、当該作業の作業性が向上している。
また本実施形態では、図8に示すように、結束バンド10を取り付けるべき結束単位50は、水平方向で整然と並んでいる。従って、作業者は、水平方向に移動するだけで、全ての結束単位50に対して結束バンド10を順次取り付けていくことができる。これにより、作業者の移動距離が最小限で済むため、作業効率が向上している。
なお、従来のワイヤハーネスの製造方法では、作業台のまわりを作業者が動き回る必要があったので、複数の作業者が1つの作業台で作業していると、各作業者の動線が錯綜し、作業効率の低下を招いていた。本実施形態の作業台20では、各作業者は、1方向(水平方向)に動くだけで結束バンド10を順次取り付けることができる。そこで、本実施形態の作業台20で複数の作業者が並んで作業する場合、各作業者が同じ方向に移動するようにすれば、各作業者の動線が錯綜することはない。これにより、1つの作業台20で複数の作業者が同時に効率良く作業を行うことができる。
続いて、作業者は、結束バンド10を取り付けたコネクタビーム一体電線群25を作業台20から取り外すとともに、図略のプロテクタ取付台に移動させる。このとき作業者は、コネクタビーム一体電線群25のコネクタビーム23を、複数のサブビーム23a,23b……に分割(図11の状態)するとともに、各サブビームを、プロテクタ取付台の所定の位置に配置する(サブ治具配置工程)。これにより、各コネクタ3及び電線2を、プロテクタ4の取り付けに適した位置に配置することができる。
そして作業者は、プロテクタ取付台上に配置された電線2に取り付けられている結束バンド10に対して、所定のプロテクタ4を取り付けていく(プロテクタ取付工程)。前述のように、各結束バンド10は、それぞれ電線2の所定の位置に取り付けられているので、当該結束バンド10にプロテクタ4を取り付けることにより、電線2に対してプロテクタ4を適切な位置に固定することができる。また、作業者は必要に応じて、電線2にコルゲート管8を配置するとともに、当該コルゲート管8を、プロテクタ4のコルゲート管係合部15に係合させる。
以上のように、結束バンド10で束ねられた複数の電線2(結束単位50)に対してプロテクタ4を取り付けていくことにより、所定形状のワイヤハーネス1を製造できる。
続いて、本実施形態の製造方法と、従来の製造方法との違いについて簡単に説明する。
従来の製造方法では、電線を作業台の上に所定の屈曲形状及び分岐形状となるように布線しておき、当該電線に対してテープを巻き付けることにより、所定の屈曲形状及び分岐形状のワイヤハーネスを製造していた。このため、作業台が大型化するとともに、テープを巻き付ける作業も行いにくかったのである。
この点、本実施形態の製造方法では、電線2を作業台20から取り外した後で、プロテクタ4を取り付けることにより、当該電線2の屈曲形状及び分岐形状が固定される。つまり、本実施形態の作業台20は、電線2に対して結束バンド10を取り付ける作業のみ行うことができれば良く、電線2を所定の屈曲形状及び分岐形状で布線する機能は必要ない。このように、本実施形態では、作業台20に要求される機能が少ないため、当該作業台20を小型化できる。
また、結束バンド10で電線2を結束する作業は、電線にテープを巻き付ける作業に比べて簡単であるため、結束バンド10の取り付け位置がバラつきにくく、作業時間も短い。特に本実施形態では、結束バンド10を取り付ける位置を示す結束位置指示治具22を作業台20に設けたことにより、電線2に対して結束バンド10を所定位置に精度良く取り付けることができる。
従来の製造方法では、電線にテープを巻き付けることでワイヤハーネスの屈曲形状及び分岐形状が固定されていたため、テープの巻き付け方によってワイヤハーネスの寸法・形状にバラつきがあった。この点、本実施形態の製造方法によれば、電線2の屈曲形状及び分岐形状はプロテクタ4によって固定され、かつプロテクタ4同士の間隔はコルゲート管8によって固定されるので、ワイヤハーネス1の形状にバラつきが生じにくい。従って、製造されたワイヤハーネス1の寸法検査を簡略化、ないし省略できる。これにより、高品質のワイヤハーネス1を、低コストで製造できる。
そして、プロテクタ4に対する電線2の取り付け作業は、結束バンド10をプロテクタ4に係合させるだけで行うことができる。これにより、プロテクタ4に対する電線2の取り付けを簡単かつ素早く行うことができ、かつプロテクタ4と電線2を精度良く位置決めすることができる。
以上で説明したように、本実施形態のワイヤハーネス1の製造方法は、結束工程と、プロテクタ取付工程と、を含んでいる。結束工程では、結束バンド10のバンド部11によって複数の電線2の所定位置を束ねることにより、当該電線2に対して結束バンド10を取り付ける。プロテクタ取付工程では、電線2に取り付けられた結束バンド10のバンド部11を、プロテクタ4の係合部13に係合させる。
このように、複数の電線を結束バンド10によって束ねるとともに、当該結束バンド10をプロテクタ4に取り付けることで、所定形状のワイヤハーネス1とする。この製造方法によれば、電線2を束ねるためにテープを巻き付ける作業が不要なので、生産効率が向上する。また、プロテクタ4によってワイヤハーネス1の各部の寸法が決まるので、寸法精度を向上させることができる。
本実施形態の製造方法において、結束工程では、複数の電線2からなる結束単位50を、水平方向に複数並べて配置するとともに、複数の結束単位50それぞれの所定位置を結束バンド10のバンド部11によって束ねるている。
このように、結束単位50を水平方向に並べて配置することにより、作業者は、水平方向に移動するだけで各結束単位50を順次束ねていくことができる。このように作業者の動線がシンプルになるため、複数の作業者が同時に作業を行っても動線が錯綜しにくく、結果として効率的に作業を行うことができる。また、結束単位50を並べて配置するので、各結束単位50は互いに略平行となる。従って、作業者は、各結束単位50を結束バンド10で束ねる作業を、毎回ほぼ同じ姿勢で行うことができる。これにより、当該作業の効率が向上する。
本実施形態の製造方法において、結束工程では、複数の結束単位50のそれぞれを水平方向に並べて保持する結束位置指示治具22を備えた作業台20を用いている。
この作業台20上で結束バンド10の取り付け作業を行うことにより、作業者は、結束工程の作業を効率的に行うことができる。この作業台20は、各結束単位50を並べて配置できる程度の大きさで良いので、従来の作業台に比べて小型化できる。
本実施形態の製造方法において、作業台20は、結束単位50を構成する電線2の末端に設けられたコネクタ3を所定位置に保持するコネクタ保持治具21と、前記結束単位50に対して結束バンド10を取り付ける位置を示す結束位置指示治具22と、を少なくとも備えている。
この作業台20を用いることで、コネクタ3から所定の距離だけ離れた位置に結束バンド10を取り付けることができる。
本実施形態の作業台20においては、コネクタ保持治具21は、複数のコネクタ3を一列に並べて保持している。
このように、コネクタ3を保持させる位置を一列とすることで、作業台20に対して電線2を布線する作業を行い易くなる。
上記のコネクタ保持治具21は、コネクタ3を1つ又は複数並べて保持可能なサブビーム23a,23b……を複数連結して構成されており、かつ作業台20に対して着脱可能である。
複数のコネクタ3をコネクタ保持治具21に保持させておくことにより、当該複数のコネクタ3(及びこれに繋っている電線2)を、作業台20に対して一括してセットできる。コネクタ保持治具21を複数のサブビームに分割することで、サブビームごとにコネクタ3をまとめて取り扱うことができる。
また、本実施形態のサブ治具配置工程では、結束工程の終了後、コネクタ3を保持した状態のコネクタ保持治具21を作業台20から取り外すとともに、当該コネクタ保持治具21の前記連結を解除して複数のサブビーム23a,23b……に分割し、当該サブ治具をプロテクタ取付台に配置する。プロテクタ取付工程においては、前記プロテクタ取付台にサブビーム23a,23b……が配置された状態で、プロテクタ4の取り付け作業を行う。
コネクタ保持治具21の連結を解除してサブビーム23a,23b……に分割し、当該サブビームをプロテクタ取付台に配置することにより、各コネクタ3(及び電線2)を、プロテクタ4の取り付けに適した位置に配置できる。サブビーム23a,23b……によって複数のコネクタ3をまとめて取り扱うことができるので、プロテクタ取付台へのコネクタ3及び電線2の配置を効率的に行うことができる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
本実施形態の製造方法は、自動車用のワイヤハーネスに限らず、他の用途のワイヤハーネスを製造するためにも用いることができる。
作業台20は略鉛直方向に沿って配置するものとしたが、これに限定されず、例えば作業台20を略水平に配置しても良いし、鉛直方向に対して斜めに配置しても良い。ただし、作業台20を略鉛直方向に沿って配置すれば、コネクタ3から電線2を垂れ下げることができるので、各電線2を作業台20上に布線する際に重力の作用を利用できるというメリットがある。
上記実施形態では、固定部材を結束バンド10としたが、これに限定されない。固定部材は、複数の電線を束ねることができ、かつプロテクタ4に固定できる構成であれば良い。
上記実施形態では、結束位置指示治具22をU字状の治具としたが、これに限らず、結束バンド10の取り付け位置を何らかの方法で示すことができれば良い。なお、上記実施形態の結束位置指示治具22は、電線2の布線経路を規制できる形状となっているが、必ずしもこれに限定されず、電線2の布線経路を規制する機能を有していなくても良い。
上記実施形態では、プロテクタ4は断面U字状としたが、これに限定されるわけではなく、電線2の屈曲形状又は分岐形状を規制し得る形状であれば良い。
上記実施形態において、あるプロテクタ4に対してコルゲート管8を介して繋っている他のプロテクタ4は、(いわば芋蔓式に)前記電線2に対して位置決めされる。従って、コルゲート管8を介して他のプロテクタと繋っているプロテクタ4は、当該プロテクタ4と電線2を位置決めする構成(結束バンド10や係合部13など)を省略できる場合がある。
コルゲート管8は省略することもできる。