<ワイヤーハーネス組立用保持具>
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係るワイヤーハーネス組立用保持具10について説明する(図1〜4参照)。
このワイヤーハーネス組立用保持具10は、組立ベース上で、ワイヤーハーネスWHを製造する際に用いられる。ここでは、組立ベースが、平面的に広がる組立図板90である例で説明する。この組立図板90上には、ワイヤーハーネスWHを所定の組立形態に組み立てるように、組立図板90に平行な平面上で広がる布線経路が設定されている。もっとも、組立ベースは、2次元或は3次元的に広がるフレームとして構成されていてもよい。この組立図板90上に、ワイヤーハーネスWHを構成する複数の電線Wを保持する各種保持具が立設される。そして、ワイヤーハーネスWHを構成する各種電線Wを、当該各保持具で所定の位置に保持して所定の布線経路に沿って布線した状態で、複数の電線Wを結束する作業等を実施することで、ワイヤーハーネスWHが製造される。
ここでは、複数の電線Wと共に光ケーブル2が組み込まれるワイヤーハーネスWHを対象としている。
説明の便宜上、光ケーブル2について説明する。この光ケーブル2は、例えば自動車に敷設されるワイヤーハーネスWHに組み込まれ、自動車に搭載される電気機器等の信号伝送用に用いられる。光ケーブル2は、複数の電線Wと一緒に組立図板90上で布線経路に沿って布線される。そして、光ケーブル2は、ワイヤーハーネスWHの曲げ、分岐箇所等で曲げられ、複数の電線Wと共にテープT巻き等されて結束される。
光ケーブル2には、内部の光ファイバの伝送損失の抑制及び曲げ破断防止のため、最小許容曲げ半径が設定されている。ここで、最小許容曲げ半径は、曲げ半径が小さくなるのに伴って大きくなる光ファイバの伝送損失及び破断確率が光ケーブルの使用に耐え得ると想定される限界の曲げ半径として設定されるものである。より具体的には、伝送損失(曲げ損失)は、例えば、ある曲げ半径でn周巻かれた光ケーブルに対して、ある波長Lの光信号を入射させたときの損失の度合い(dB)で評価される。また、破断確率は、例えば、ある曲げ半径でm周巻かれた光ケーブルのt年後の破断する確率で評価される(例えば、加速試験が行われるとよい)。そして、最小許容曲げ半径は、伝送損失及び破断確率の両評価値が、実際の使用状況に応じて決定される基準値を満たすように設定される。例えば、伝送損失が、ある曲げ半径rで100周巻かれた光ケーブルに対して波長1550nmの光信号を入射させたときの損失の度合い(dB)で、破断確率が、ある曲げ半径rで50周巻かれた光ケーブルの15年後の破断する確率で評価されるとよい。この場合、たとえば、最小許容曲げ半径は、伝送損失が0.5dB/100周以下で、且つ、破断確率が1.0×10-6以下となるような曲げ半径rとすることができる。なお、曲げ半径とは、光ケーブル2の中心軸の曲率半径のことを言うものとする。ここでは、光ファイバとして、プラスチックより速い通信速度で信号伝達が可能な石英ガラスを使用したものを採用しているため、プラスチック製のものと比較して曲げ破断しやすい。
このような光ケーブル2が、電線W保持用の治具に対して電線Wと一緒に保持されて布線されると、最小許容曲げ半径より小さい曲げ半径で曲げられる恐れがある。特に、光ケーブル2がU字治具の対向する棒状部分に引掛けられる場合、光ケーブル2は、当該棒状部分の外周形状に沿って曲げられるため、その曲率半径が小さいと最小許容曲げ半径より小さい曲げ半径となってしまう。そして、この状態で、光ケーブル2と複数の電線Wとが結束されると、光ケーブル2は、最小許容曲げ半径より小さい曲げ半径で曲げられた状態で維持されてしまう。
本ワイヤーハーネス組立用保持具10は、上記点に鑑みて、光ケーブル2の曲げ規制をしつつ、複数の電線W及び光ケーブル2を組立図板90上で所定の布線経路に沿って保持可能に構成されている。
ワイヤーハーネス組立用保持具10は、複数の案内部20と、保持部30と、支持部40と、曲げ規制部50とを備えている(図1参照)。ここでは、ワイヤーハーネスWHの曲げ部分を保持するワイヤーハーネス組立用保持具10について説明し、分岐部分等を保持する構成については後で説明する。
より具体的には、ワイヤーハーネス組立用保持具10は、複数(ここでは2つ)の案内部20が、支持部40により組立図板90上に支持される保持部30によって間隔をあけて立設状に支持され、少なくとも一つ(ここでは一方)の案内部20に曲げ規制部50が装着された構成である。
2つの案内部20と保持部30と支持部40とは、全体として正面視略Y字形状に形成されている。より具体的には、各案内部20と保持部30とで正面視略U字形状を成し、支持部40が保持部30から案内部20とは反対側に突出した形状である。
そして、ワイヤーハーネス組立用保持具10は、電線W及び光ケーブル2を、保持部30上に載置状に支持することにより、2つの案内部20間に保持する。
複数の案内部20は、間に複数の電線W及び光ケーブル2を介在させた状態で、複数の電線W及び光ケーブル2の束に対して外周側から接触することにより、当該束の外周側への移動を規制し、布線経路上に案内する部分である。この案内部20は、断面視略円形の棒状に形成されている。また、案内部20の先端部は、電線W及び光ケーブル2布線時の引掛かりを抑制する観点から、略半球状に丸められているとよい。
案内部20は、保持部30上に配設される複数の電線W及び光ケーブル2を、間に介在させて保持可能な長さ寸法に形成されている。また、各案内部20は、複数の電線W及び光ケーブル2が間に保持された状態で、目的の大きさのワイヤーハーネスWHを製造することができるような間隔をあけて保持部30により支持されている。すなわち、各案内部20の間隔は、製造されるワイヤーハーネスWHを間に介在可能な間隔に設定されているとよい。言うまでもないが、一方の案内部20に装着されている曲げ規制部50と他方の案内部20との間の間隔も、上記と同様の観点から設定された間隔である。
保持部30は、各案内部20を上述した間隔で支持している。そして、この保持部30は、実質的に、各案内部20間に配設される複数の電線W(及び光ケーブル2)を保持する部分である(図1参照)。より具体的には、保持部30は、各案内部20の基端部を結ぶように形成され、正面視において略U字形状の底部分を成している。ここでは、保持部30は、断面視略円形で且つ正面視において支持部40側に凸となる半円弧状に形成されている。
もっとも、保持部30は、各案内部20を所定の間隔で立設状に支持可能で且つ各案内部20間に布線される複数の電線W及び光ケーブル2を載置状に保持可能であればよい。例えば、保持部として、各案内部20の基端部同士を直線状に結ぶ形状等を採用することもできる。また、断面視円形の他にも、例えば、一主面に各案内部20が立設されるような板状(台状)等に形成されていてもよい。
支持部40は、保持部30を組立図板90上の所定の高さ位置に支持可能に構成されている。すなわち、支持部40は、保持部30を介して、案内部20を組立図板90上に支持する構成である。ここでは、支持部40は、先端側に支持本体部42を有すると共に基端側に固定部44を有する長尺棒状に形成され、支持本体部42の先端部が保持部30に連結されている。ここで、支持部40は、保持部30を、組立図板90に略平行な平面上に広がる布線経路上に電線W及び光ケーブル2を支持可能な高さに支持可能である。
固定部44は、保持部30に連続する各案内部20が組立図板90(布線経路が広がる仮想平面)に対して略垂直な姿勢になるように、組立図板90に固定可能に形成されている。一方、組立図板90には布線経路に沿って複数の固定用孔部92が形成されており、固定部44は、当該固定用孔部92に挿通可能に形成されている。ここでは、固定部44は、支持本体部42の基端部に連続して形成された雄ネジ部とこれに螺合される一対のナットの組み合わせで構成されている。すなわち、固定用孔部92に雄ネジ部を挿入した状態で、組立図板90を挟むようにして一対のナットを締め付けることにより、固定部44が組立図板90に対して布線経路上の一定位置に固定される。このとき、固定部44は、各案内部20が布線経路を挟む位置関係になる姿勢で固定されるとよい。そして、固定部44が固定されると、各案内部20に加えて支持本体部42も、組立図板90に対して略垂直な姿勢に維持される。
ここでは、支持部40は、平面視において保持部30のうち2つの案内部20の中間位置に支持本体部42が連結されて、当該保持部30を支持するように形成されている。
もっとも、支持部40は、複数の案内部20及び保持部30を組立図板90上に支持可能であればよく、上記構成に限られるものではない。例えば、支持部40は、一方又は他方の案内部20の基端側の位置で保持部30を支持するように形成されていてもよいし、略L字形状に形成され、保持部30の側部に連結されていてもよい。また、支持部40は、固定部が支持本体部42の基端部に設けられた板状部材であり、この板状の固定部を組立図板90に対して直接ネジ止め等により固定するような構成であってもよい。
上記各案内部20及び保持部30及び支持部40は、例えば、以下のようにして形成されているとよい。すなわち、各案内部20及び保持部30及び支持部40は、金属棒を屈曲及び溶接等して一体に形成することができる。なお、支持部40の固定部44は、金属棒の基端部に雄ねじ部を形成してナットを取り付けて構成することができる。また、各案内部20及び保持部30が上記のように一体に形成され、この一体部材が支持部40に対してねじ止め等により着脱可能に取り付けられてもよい。他にも、各案内部20及び保持部30及び支持部40は、溶融した金属材料、樹脂材料等を金型内に流し込んで射出成型されてもよい。この場合、固定部44は、雄ねじ部が射出成型で形成され、ナットは別に用意されて取り付けられるとよい。
曲げ規制部50は、光ケーブル2を、案内部20に引掛けるより大きい曲げ半径で引掛可能な引掛面52を有している(図2、図3参照)。すなわち、曲げ規制部50の引掛面52の曲率半径は、案内部20の外周面の曲率半径より大きく設定されている。そして、この引掛面52は、光ケーブル2を最小許容曲げ半径以上の曲げ半径(ここでは、最小許容曲げ半径)で引掛可能な曲率半径に設定されている。
この曲げ規制部50は、案内部20に対して着脱可能な部材として形成されている。より具体的には、曲げ規制部50は、略円柱状に形成されており、その外周面が引掛面52である。すなわち、引掛面52は、曲げ規制部50の中心軸を曲率中心軸とする曲率面である。
また、曲げ規制部50は、保持対象である複数の電線Wの高さ範囲において、すなわち、案内部20間で保持部30に載置状に支持される複数の電線Wが介在している高さ範囲において、全体的に設けられているとよい。ここでは、曲げ規制部50は、案内部20の立設方向(長手方向)において全体的に設けられるように形成されている。曲げ規制部50の軸方向寸法は、案内部20の長手寸法より大きく設定されている。そして、曲げ規制部50には、その基端部から先端部に向けて、案内部20を挿入するための装着用孔部54が形成されている。
装着用孔部54は、案内部20を収容可能な略円柱状空間を有し、曲げ規制部50の基端面で開口している。より具体的には、装着用孔部54は、案内部20の立設方向における寸法より大きい深さ寸法に設定されていると共に、案内部20の径と略同じ(ここでは僅かに大きい)孔径に設定されている。
この装着用孔部54は、その中心軸が曲げ規制部50の中心軸に沿う姿勢で形成されている。また、装着用孔部54は、中心軸が曲げ規制部50の中心軸に対して偏心して位置するように形成されている。好ましくは、装着用孔部54内に挿入される案内部20の外周面の一部が、曲げ規制部50の外周面とできるだけ近接する(理想的には面一になる)ような位置に、装着用孔部54が形成されているとよい。すなわち、曲げ規制部50のうち周方向一部で厚さ寸法(径方向寸法)がより小さくなっている。
また、曲げ規制部50には、案内部20に装着される際に、案内部20がその長手寸法より大きい深さ寸法に設定された装着用孔部54の奥まで挿入されるように、装着用孔部54内から曲げ規制部50の側方に保持部30を逃がす側方開口部56が形成されている。より具体的には、側方開口部56は、曲げ規制部50の側面(引掛面52)の基端側部分で開口する部分であり、基端面の開口と連通している。すなわち、この側方開口部56が形成されることにより、保持部30に曲げ規制部50の基端部が干渉することを避けられる。そして、保持部30は、側方開口部56を通じて部分的に装着用孔部54内に配設される。
この側方開口部56は、介在される保持部30の幅寸法より大きい(ここでは僅かに大きい)幅寸法に形成されている。そして、側方開口部56は、その内側の両側面が保持部30を挟むように外周面に当接することにより、曲げ規制部50が案内部20に対して相対回転することを規制する役割も担っている。
ここでは、側方開口部56は、上述した曲げ規制部50のうち薄肉に形成されている箇所で、装着用孔部54内に連通するように形成されている。換言すると、曲げ規制部50は、装着される一方の案内部20の中心軸に対して、引掛面52の曲率中心軸が外側(すなわち他方の案内部20から離間する側)に偏心した位置となるように装着されている。すなわち、布線経路は各案内部20の間の中間位置を通るように設定されているため、各案内部20間の間に配設される複数の電線W及び光ケーブル2で構成される束の中心軸が、布線経路を通るように保持できることが好ましい。そして、上記構成により、他方の案内部20と対向する位置に、当該薄肉に形成された箇所が配設されるため、2つの案内部20間(曲げ規制部50と他方の案内部20との間)に配設される複数の電線Wは、曲げ規制部50が装着されない各案内部20間に配設される場合とほぼ同様の位置で保持される。これにより、各案内部20間に保持される複数の電線W及び光ケーブル2の平面視における中心軸が布線経路に沿って位置するため、ワイヤーハーネスWHを所定の組立形態に製造することができる。
もっとも、側方開口部56は、装着用孔部54の深さ寸法が案内部20の長手寸法と同じかそれより小さい場合には省略されてもよい。
また、ここでは、曲げ規制部50は、2つの案内部20のうちの一方に装着されているため、布線経路を挟んで異なる直径の部分(他方の案内部20及び曲げ規制部50)が存在している。すなわち、曲げ規制部50は、光ケーブル2が引掛けられるワイヤーハーネスWHの曲げ部分の内周側に位置する案内部20に対して装着されている。
このように、曲げ規制部50が、複数の案内部20のうちの一部の案内部20に装着されている構成によると、光ケーブル2が曲げて引掛けられる箇所の案内部20だけに曲げ規制部50を設ければよく、それ以外の箇所の案内部20における曲げ規制部50を省略して、部品数の低減を図ることができる。また、光ケーブル2が曲げられる経路と異なる経路に布線される複数の電線Wを、通常の布線経路から変更せずに布線することができる。
もっとも、曲げ規制部50は、複数の案内部20のうちの一部に装着される場合に限られず、全ての案内部20に装着されていてもよい。
また、曲げ規制部50は、装着用孔部54内に突出可能に締め付けできる止めねじにより、案内部20の抜け出しを抑制するように、装着用孔部54内に挿入されている案内部20に対して固定可能に構成されていてもよい。
装着用孔部54について、案内部20の径より大きい孔径に設定されていることを上述したが、装着用孔部54は、案内部20の径より小さい孔径に設定され、挿入される案内部20に対して締まり嵌め可能に形成されていてもよい。この構成によっても、曲げ規制部50の脱落を抑制することができる。
また、上記曲げ規制部50は、光ケーブル2を一定の曲げ半径で引掛可能な引掛面52を有していればよく、略円柱形状に限られない。例えば、曲げ規制部として、楕円柱状、断面視略扇形の柱状等を採用してもよい。曲げ規制部は、例示の形状の場合にも、引掛面が製造されるワイヤーハーネスWHの曲げ部分の外周側を向くように装着され、引掛面の周方向いずれかの位置で案内部20の外周面との距離が小さくなる薄肉部分を有しているとよい。
これまで、曲げ規制部50が、案内部20に対して着脱可能に形成されている例で説明してきたが、これに限られるものではない。例えば、曲げ規制部50は、曲げ規制部50成型用の一対の金型間に案内部20(保持部30の一部を含んでもよい)を配設し、溶融した樹脂材料等を当該一対の金型間に射出してモールド成形することにより着脱不能に形成されてもよい。
さらに、ワイヤーハーネス組立用保持具10について、案内部20とは別の曲げ規制部50が当該案内部20に装着されている例で説明してきたが、これに限られるものではない。すなわち、装着対象である案内部20と曲げ規制部50が全体として1つの部分として一体に形成されていてもよい。より具体的には、このようなワイヤーハーネス組立用保持具は、棒状の案内部と、光ケーブル2を当該案内部に引掛けるより大きい曲げ半径で引掛可能な引掛面を有する曲げ規制案内部とを、保持部30により間隔をあけて立設状に支持した構成である。すなわち、案内部の外周面に対して曲げ規制案内部の引掛面の曲率半径が大きく設定されている。例えば、案内部及び曲げ規制案内部は、円柱形状に形成されるとよく、案内部より曲げ規制案内部が大径に設定されている。
このようなワイヤーハーネス組立用保持具は、大径な円柱形状の金属部材と小径な円柱形状の金属部材とを適宜屈曲溶接等して形成することができる。他にも、成型用金型内に溶融させた樹脂材料を流し込んで射出成型することもできる。
上記のように概念的には、大径な方が曲げ規制案内部であり、小径な方が案内部である。この観点から言うと、上記ワイヤーハーネス組立用保持具10についても、一方の案内部20とこれに装着されている曲げ規制部50とが上記曲げ規制案内部を構成し、他方の案内部20が上記案内部に相当する。さらに、一方の案内部20に対して曲げ規制部50がモールド成型等により着脱不能に設けられている場合にも、モールドされて大径な方が曲げ規制案内部、他方の案内部20が案内部に相当する。
そして、この構成によれば、光ケーブル2が曲げられる経路と異なる経路に布線される電線Wを、通常の布線経路のまま布線することができる。
また、これまで案内部20が2つ設けられている例で説明したが、3つ以上の複数設けられていてもよい。すなわち、ワイヤーハーネスWHの分岐部分を支持するワイヤーハーネス組立用保持具は、その分岐数に対応した数の案内部20を有しているとよい。例えば、幹線が2本に分岐する場合、各線を案内するように3つの案内部が各線を挟む位置関係となるように保持部に支持されて設けられるとよい。この場合も、保持部30は、直線状或いは曲線状の棒状部材を組み合わせたフレーム形状、又は、板状(台状)等に形成され、各案内部20を、所定の間隔をあけて立設状に支持できればよい。そして、保持部30は、各案内部20間に配設される複数の電線W及び光ケーブル2を載置状に支持する。さらに、案内部20に装着されている曲げ規制部50は、他の案内部20側で肉薄になるよう形成されている。好ましくは、曲げ規制部50は、互いに幹線(より大径になる部分)を挟んで位置する案内部20側に当該肉薄の部分が位置するように設けられているとよい。なお、当然に、上述した案内部と曲げ規制案内部とを有するワイヤーハーネス組立用保持具についても、複数の案内部又は複数の曲げ規制部を有していてもよい。
また、ワイヤーハーネス組立用保持具10は、案内部20が1つだけ備えられる構成であってもよい。例えば、複数の電線Wを載置状に支持可能な保持部に対して1つの案内部20が支持され、この保持部を支持部40により組立図板90上に支持する構成である。なお、案内部20が1つだけ備えられる場合、支持部40が保持部を介さずに案内部20を直接支持する構成であってもよい。すなわち、支持部40と案内部20とが全体として直線棒状となる構成も含む。上記各形態においても、上述したのと同様に、案内部20に対して曲げ規制部50が装着される。
もっとも、支持部40が案内部20を直接支持する形態は、案内部20が1つの場合に限られない。すなわち、支持部40の先端部に1つの案内部20が直接支持されると共に、保持部が支持部40から側方に延出するように設けられ、当該保持部に他の案内部20が支持されていてもよい。
第1実施形態に係るワイヤーハーネス組立用保持具10によると、一方の案内部20に曲げ規制部50が装着されているため、光ケーブル2が曲げられて布線される箇所で、光ケーブル2を引掛面52に引掛けて布線することにより、光ケーブル2が一定の曲げ半径より小さい曲げ半径に曲げられることを抑制できる。このとき、光ケーブル2が引っ張って布線されても、引掛面52に引掛けられていれば、その曲げ部分が最小許容曲げ半径より小さい曲げ半径で曲げられることはない。そして、曲げ規制部50が案内部20に装着されているため、製造されるワイヤーハーネスWHに光ケーブル2の曲げ規制用の部材を組み込まなくてもよい。すなわち、ワイヤーハーネスWHに組み込まれる光ケーブル2の曲げ規制を、ワイヤーハーネスWHの部品点数の増加なしに行うことができる。
また、光ケーブル2が曲げ規制部50の引掛面52に沿って最小許容曲げ半径以上の曲げ半径で曲げられた状態で、保持部30上に保持されている複数の電線Wと共にテープT巻き等して結束すると、光ケーブル2は、当該曲げ半径に維持される。そして、光ケーブル2は、複数の電線Wと一緒に結束されたことにより、複数の電線W全体が曲げられるような外力が加えられない限り、曲げられることが抑制される。このため、最小許容曲げ半径より小さい曲げ半径に曲げられることを、より効果的に抑制することができる。
また、曲げ規制部50が、案内部20の立設方向において全体的に設けられているため、案内部20の立設方向のどの位置に光ケーブルが引掛けられても、光ケーブル2を曲げ規制部に引掛けて曲げ規制することができる。
また、曲げ規制部50の薄肉部分が他方の案内部20側に位置している。このため、複数の案内部20間に保持される複数の電線Wの束の中心軸が、複数の案内部20間の布線経路に対してより近接して通るように布線でき、ワイヤーハーネスWHをより仕様通りに組み立てることができる。
また、曲げ規制部50が複数の案内部20に対して着脱可能に形成されているため、異なる品番のワイヤーハーネスWHを組み立てる場合でも、曲げ規制部50を装着する案内部20を変更するだけで、異なる経路に布線される光ケーブル2についても曲げ規制を行うことができ、汎用性に優れる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るワイヤーハーネス組立用保持具10aについて説明する(図5参照)。第1実施形態に係るワイヤーハーネス組立用保持具10と実質的に異なる点は、曲げ規制部50aの形態だけであり、同様の構成については同一の参照符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、曲げ規制部50aが、保持対象である複数の電線Wの高さ範囲において、すなわち、案内部20間で保持部30に載置状に支持される複数の電線Wが介在している高さ範囲において、部分的に設けられている。ここでは、曲げ規制部50aは、案内部20の立設方向(長手方向)において先端側部分に部分的に設けられるように形成されている。すなわち、曲げ規制部50aの軸方向寸法は案内部20より小さく、曲げ規制部50aの基端側には、曲げ規制部50aの引掛面52aの曲率半径より小さい曲率半径の外周面を有する案内部20の基端側部分が延在している。
本実施形態の曲げ規制部50aでも、装着用孔部54aが形成され、案内部20に対して着脱可能に形成されているとよい。本実施形態の場合、装着用孔部54aは、案内部20の立設方向における寸法より小さい深さ寸法に設定されればよい。
もっとも、曲げ規制部50aの装着される位置は、案内部20の先端側部分に限られず、光ケーブル2の布線タイミング、すなわち、各案内部20間における光ケーブル2の通線経路に対応して決定されるとよい。例えば、曲げ規制部50aは、光ケーブル2が複数の電線Wの布線後に布線される場合には、各案内部20の先端側(既に布線された複数の電線Wの上)に配設されるため、案内部20の先端側部分に装着されるとよい。また、光ケーブル2が複数の電線Wより先に布線される場合には、各案内部20の基端側(その後布線される複数の電線Wの下で、保持部30側)に配設されるため、案内部20の基端側部分(保持部30の一部を含んでいてもよい)に装着されるとよい。他にも、曲げ規制部50aは案内部20の立設方向中間部分に装着されてもよい。
なお、曲げ規制部を案内部20の基端側部分に設ける場合、装着用孔部は、引掛面の曲率中心軸方向に貫通するように形成されているとよい。
また、本実施形態の場合、曲げ規制部50aでは、保持部30を覆わない形状となるため、側方開口部56が省略されているとよい。なお、曲げ規制部50aは、曲げ規制部50a自体を案内部20に固定する止めねじにより回転規制されてもよいし、装着用孔部54aの孔径が案内部20の径より小さく設定され、曲げ規制部50aが案内部20に対して締まり嵌め状態で装着されることにより回転規制されてもよい。
第2実施形態に係るワイヤーハーネス組立用保持具10aによると、光ケーブル2だけを曲げ規制部50aに引掛けて布線し、複数の電線Wを案内部20の位置に布線することにより、複数の電線Wの束の経路は通常の布線経路のまま、光ケーブル2の曲げ規制を行うことができる。
<ワイヤーハーネスの製造方法>
次に、ワイヤーハーネスWHの製造方法について説明する。このワイヤーハーネスWHは、上述した光ケーブル2が組み込まれるワイヤーハーネスWHである。以下の説明においては、上述した第1実施形態に係るワイヤーハーネス組立用保持具10を用いてワイヤーハーネスWHを製造する例で説明するが、当然に第2実施形態に係るワイヤーハーネス組立用保持具10aを用いて製造してもよい。なお、光ケーブル2の本数には言及していないが、当然に、光ケーブル2が複数本組み込まれるワイヤーハーネスWHであってもよい。
組立図板90上には、複数の保持具が立設されており、特に、ワイヤーハーネスWHの曲げ、分岐箇所のうち光ケーブル2が配索される箇所には、ワイヤーハーネス組立用保持具10が立設されているものとする。
まず、複数の電線Wを、所定の布線経路に沿って布線する(工程(a))。より具体的には、各電線Wを、それぞれ設定された布線経路上に設けられている複数の保持具又はワイヤーハーネス組立用保持具10に対して掛けていく。電線Wをワイヤーハーネス組立用保持具10に保持する際には、電線Wを保持部30上に載置するように案内部20と曲げ規制部50との間に配設する。ここで、案内部20又は曲げ規制部50に対する引掛けの有無は問わない。同様にして布線対象となる電線Wを全て布線経路に沿って布線する。なお、一般的に、この複数の電線Wは、同じ布線経路に布線される電線Wの束ごとに前工程で仮結束され、当該仮結束単位で組立図板90に供給されるため、この仮結束ごと保持具又はワイヤーハーネス組立用保持具10に保持していく。
次に、光ケーブル2を、複数の電線Wが布線される布線経路に沿って布線する(工程(b))。すなわち、光ケーブル2も、複数の電線Wが布線される経路のうち、それぞれ設定された布線経路上に設けられている複数の保持具又はワイヤーハーネス組立用保持具10に対して掛けていく。
より具体的には、光ケーブル2を、直線状に布線する箇所では、電線Wと同様に保持具に対して掛けていく。また、光ケーブル2を、曲げて布線する箇所では、ワイヤーハーネス組立用保持具10の曲げ規制部50の引掛面52に引掛けて最小許容曲げ半径以上の曲げ半径(ここでは最小許容曲げ半径)で保持する(工程(c))。より具体的には、光ケーブル2を、案内部20と曲げ規制部50との間に介在させ、引掛面52に対して接触させながら沿わせて曲げる。そして、光ケーブル2は、引掛面52に引掛けられた状態で最小許容曲げ半径で曲げられる。
このように引掛面52に引掛けられる光ケーブル2は、製造されるワイヤーハーネスWHにおいて、曲げ部分では内周側を通っている。そして、隣合う曲げ部分が、同じ方向に曲げられる場合(例えば、右折を繰り返す場合)には、光ケーブル2は、当該隣合う曲げ部分の間でワイヤーハーネスWHの内側を略直線状に通線されている。また、隣合う曲げ部分が、異なる方向に曲げられる場合(例えば、右折の後左折される場合)には、光ケーブル2は、平面視において当該隣合う曲げ位置の間でワイヤーハーネスWHの中心軸に交差して、一方の曲げ位置の内周側から他方の曲げ位置の内周側に向かって斜めに渡るように通線されている。
上記のように、工程(a)、工程(b)で布線対象となる複数の電線W及び光ケーブル2が所定の布線経路に沿って布線され、工程(c)で光ケーブル2を保持した状態で、複数の電線W及び光ケーブル2を結束する(工程(d))。より具体的には、各保持具又はワイヤーハーネス組立用保持具10により所定の布線経路に沿って保持されている複数の電線W及び光ケーブル2の束を、当該各保持具又はワイヤーハーネス組立用保持具10の側方に延在する部分でテープ巻き、クランプ部材、結束バンド等により結束する。
以上の工程により、光ケーブル2が組み込まれるワイヤーハーネスWHを製造することができる。
もっとも、上記ワイヤーハーネスWHの製造方法では、光ケーブル2を引掛面に引掛けて最小許容曲げ半径以上の曲げ半径で保持することができればよく、第1又は第2実施形態に係るワイヤーハーネス組立用保持具10、10aを用いる方法に限定されるものではない。
また、ここでは、工程(a)の後に工程(b)及び工程(c)を行う例で説明したが、複数の電線Wと光ケーブル2との布線順序は問わず、工程(b)及び工程(c)の後に工程(a)を行ってもよいし、両者を同時進行してもよい(一般的に電線Wの本数が多いため、工程(a)中に工程(b)及び工程(c)を行うことになる)。
上記ワイヤーハーネスWHの製造方法によると、複数の電線W及び光ケーブル2を布線経路に沿って布線し、且つ、光ケーブル2を、曲げて布線する箇所でワイヤーハーネス組立用保持具10の引掛面52に引掛けて最小許容曲げ半径以上の曲げ半径で保持した状態で、複数の電線W及び光ケーブル2をまとめて結束している。このため、光ケーブル2が組み込まれるワイヤーハーネスWHにおいて、部品点数を増加させなくても光ケーブル2の曲げ規制を行うことができる。また、製造されるワイヤーハーネスWHに組み込まれている光ケーブル2は、まとめて結束されている複数の電線Wが曲げられるような外力が加えられない限り、最小許容曲げ半径以上の曲げ半径で曲げられた状態からさらに曲げられることを抑制できる。