JP5950063B2 - ステアリング装置 - Google Patents
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Description
ここで、このようなチルト固定装置においては、クランプ機構の締付を解除したときに、締付方向の軸力が抜けて、構成部品がフリーになる。その際にチルトレバーの自重と、解除方向の操作力の慣性によって、固定カム部材のストッパーに可動カム部材のストッパーが勢い良く衝突し、金属打音が発生する。
しかし、特許文献1のステアリング装置は、固定カム部材とチルト位置調整用長溝との間の摺動音や打音を小さくするためのものであって、クランプ機構を構成する可動カム部材と固定カム部材との間で発生する打音を小さくするためのものではない。
一方、特許文献2では、チルトレバーの解除速度を減速させるために、クランプ機構のカム突起の底面部に弾性部材を設けて、解除時に相手カムのカム突起と接触し、カムをブレーキさせる弾性部材を設けている。
本発明は、上記従来の技術に鑑みてなされたものであって、クランプ機構の締付を解除した際に生じる打音を低減し、操作性の高いステアリング装置を提供することを課題とする。
上記固定カム部材のカム突起が形成されたカム突起形成面の外縁部に周方向に沿って突出した複数の第1ストッパー部と、それら複数の第1ストッパー部間に形成された第1切り欠き部に遊嵌されるように上記可動カム部材のカム突起が形成されたカム突起形成面の外縁部に周方向に沿って突出した複数の第2ストッパー部との間に緩衝部材を設け、
上記ステアリング装置は、上記緩衝部材は、上記固定カム部材及び上記可動カム部材の少なくとも何れか一方の外周面に嵌合する外輪部に連結される。
た。
また、上記ステアリング装置は、上記固定カム部材及び上記可動カム部材の少なくとも何れか一方の外周面に第2切り欠き部が複数設けられ、これら複数の第2切り欠き部のそれぞれに係合する複数の係合部が上記外輪部の内周面に設けられてもよい。
また、上記ステアリング装置は、上記係合部が、第2切り欠き部に係合した状態で、前記カム突起形成面と一致してもよい。
また、上記ステアリング装置は、上記係合部が、第2切り欠き部に係合した状態で、上記カム突起形成面よりも高く、かつ上記クランプ機構が解除されたときの隙間の総和よりも小さくてもよい。
さらに、上記ステアリング装置は、上記緩衝部材が合成樹脂からなり、一体成型されてもよい。
以下、本発明に係るステアリング装置の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、ステアリング装置のある実施形態における構成を示す側面図である。また、図2は、図1のII−II線に沿う断面図である。また、図3は、ステアリング装置のある実施形態におけるクランプ機構の構成を示す分解斜視図である。
図1に示すように、ステアリング装置1は、円筒状のステアリングコラム2と、このステアリングコラム2の内部を貫通するステアリングシャフト3と、このステアリングシャフト3の上端に取付けられた運転者から操舵力が作用されるステアリングホイール4と、ステアリングシャフト3の下端にユニバーサルジョイント5を介して連結され他端がユニバーサルジョイント6を介して図示しないステアリングギヤに連結されたスプライン結合構造を有する中間シャフト7とを備えている。
ロアブラケット10は、チルト動作の中心となるチルトピン11を有し、このチルトピン11を中心としてステアリングコラム2が回動するように構成されている。
また、チルト機構20は、図2に示すように、上部に形成された図示しない車体側部材に取付けられる車体側取付け部21aと中央部にステアリングコラム9を挿通し図2で見て略上下方向に延在する左右方向(車幅方向)に一対の締付け板部21bとが一対に形成されたチルトブラケット22と、ステアリングコラム2に取付けられて締付け板部21b間に摺動可能に保持されるディスタンスブラケット23と、チルトブラケット22内においてチルトブラケット22の締付け板部21bでディスタンスブラケット23を挟んでロック及びアンロックするクランプ機構24とを備えている。
クランプ機構24は、図3に示すように、チルトボルト25と、固定カム部材26及び回動可能な可動カム部材27と、可動カム部材27と一体的に回動するチルトレバー28とを備えている。
チルトボルト25は、チルトブラケット22のチルト孔22a、及びディスタンスブラケット23の孔を貫通する軸体であり、一方の端部に雄ねじ部25aが設けられ、他方の端部に頭部25cが設けられている。チルトブラケット22の締付け板部21bから突出する雄ねじ部25aにはナット25bが螺合されている。また、固定カム部材26及び回動可能な可動カム部材27は、このチルトボルト25の回りで、頭部25cとチルトブラケット22との間に配設されたチルトボルト25に対して軸力を付与する。
次に、本実施形態のステアリング装置に用いられるカム部材(固定カム部材及び可動カム部材)について図面を参照して説明する。
図4は、ステアリング装置のある実施形態の固定カム部材を示す斜視図であり、(a)はボスが形成された側の斜視図、(b)はカム面が形成された側の斜視図である。また、図5は、ステアリング装置のある実施形態の可動カム部材を示す斜視図であり、(a)はカム面が形成された側の斜視図、(b)はボスが形成された側の斜視図である。また、図6は、ステアリング装置のある実施形態の可動カム部材の構成を示す図であり、(a)はカム面が形成された側の平面図、(b)は(a)のVIb−VIb線に沿う断面図、(c)はボスが形成された側の平面図である。
固定カム部材26は、図4(a)、(b)に示すように、略円板形状の部材の中心位置に形成されたチルトボルト25が挿通するボルト貫通孔29と、可動カム部材27と対面するカム突起形成面26aに同一円周上に並んで形成された複数のカム突起30と、カム突起30を形成した面に対して反対側の面に形成され、チルトブラケット22の締付け板部21bに形成したチルト孔22aに嵌入されるボス31とを備えている。
固定カム部材26の複数のカム突起30は全て同一形状であり、図4(a)に示すように、ボルト貫通孔29の軸方向から見て略扇形状をなしている。
平坦カム面30aは、カム突起形成面26aに対して同一高さで突出して平滑面形状をなす面である。また、第1傾斜カム面30bは、ボルト貫通孔29の軸方向を基準に第1の周方向(図中Aで示す)に向かうに従い下り傾斜を付けて(カム突起30の突出高さが徐々に減少する方向に)平坦カム面30aから連続して形成された面である。また、第2傾斜カム面30cは、他方の周方向(第1の周方向と反対の方向)に向かうに従い下り傾斜を付けて平坦カム面30aから連続して形成された面である。ここで、第1傾斜カム面30bは、カム突起形成面26aに対して、第2傾斜カム面30cよりも大きな角度(80°〜90°)をなす面であり、本実施形態では「背面(30b)」ということがある。
すなわち、固定カム部材26と可動カム部材27とを重ね合わせたときには、切り欠き部26cに、後述する可動カム部材27のストッパー部27bが配置され、ストッパー部27bの可動範囲が上記切り欠き部26cの周方向の範囲内に制限されることになる。
可動カム部材27は、図5(a)、(b),図6(b),(c)に示すように、略円板形状をなし、ボルト貫通孔32と、複数のカム突起33と、ボス34とを備えている。ボルト貫通孔32は、可動カム部材27の中心位置に貫通して形成され、チルトボルト25が挿通される貫通孔である。複数のカム突起33は、固定カム部材26と対面するカム突起形成面27aに同一円周上に並んで形成される。また、ボス34は、複数のカム突起33が形成されたカム突起形成面27aに対して反対側の面に形成され、チルトレバー28に形成した角孔28aに嵌入される部材である。
可動カム部材27の複数のカム突起33も全て同一形状であり、図5(a)に示すように、ボルト貫通孔32の軸方向から見て略扇形状をなし、平坦カム面33aと、第1傾斜カム面33bと、第2傾斜カム面33cとを有する。
なお、固定カム部材26における第1の方向と、可動カム部材27における第2の方向とは、それぞれのカム突起が形成された面を対向させて固定カム部材26と可動カム部材27とを重ね合わせた態様(図3参照)において互いに反対の方向となる。
また、第1傾斜カム面33bは、カム突起形成面27aに対して、第2傾斜カム面33cよりも大きな角度(80°〜90°)をなす面であり、本実施形態では「背面(33b)」ということがある。
また、可動カム部材27には、図3,図5(a)、(b)に示すように、カム突起形成面27aの外周縁部に沿って突出した2つのストッパー部(第2ストッパー部)27b,27bが形成されている。これらストッパー部27b,27bは、固定カム部材26のストッパー部(第1ストッパー部)26bよりも周方向の長さが短く形成されている。
さらに、ストッパー部27bは、2つのストッパー部26b,26b間に形成された切り欠き部26cに配置されるように、固定カム部材26と可動カム部材27とが重ね合わせられる。すなわち、ストッパー部27bの可動範囲が切り欠き部26cの周方向の範囲内に制限されることになる。
ここで、可動カム部材27には、ストッパー部27bを基準として、固定カム部材26と組み合わせてクランプ機構による締め付けがなされる向き(図5(a)内の「B」で示す向き)に配置され、ストッパー部27bに当接する緩衝部材50が設けられている。この緩衝部材50は、可動カム部材27の外周面に嵌合する筒状の外輪部51に連結されている。また、外輪部51の内周面には、可動カム部材27の外周面に形成された切り欠き部27dに嵌合し、緩衝部材50に軸方向に連通する嵌合部51bが設けられている。図5(a),(b)では、説明のわかりやすさのため、緩衝部材50,外輪部51をハッチング表示している。
この場合、緩衝部材50が十分衝突音を低減できれば、係合部51aの高さをカム突起形成面27aの高さと一致させてもよい。いずれの場合にも、カム山(カム突起)の高さを高くする必要がない。
ストッパー部27bを基準として、クランプ機構による締め付けがなされる方向に配設された緩衝部材50は、後述するように、固定カム部材26と可動カム部材27とを組み合わせ、アンロック状態としたとき、ストッパー部26bとストッパー部27bとの間に介在することとなる。したがって、クランプ機構による締め付けが解除される際、チルトブラケット22の反力によるチルトレバー28の慣性で生じうる衝突音を低減することができる。
また、固定カム部材26及び可動カム部材27のカム突起形成面26a,27aには、摩耗防止のためのグリースが塗布されている。
そして、固定カム部材26の平坦カム面30aと可動カム部材27のカム突起形成面27aとを対向させ、同様に固定カム部材26の第2傾斜カム面30cと可動カム部材27の第2傾斜カム面33cとをそれぞれ対向した状態で、チルトレバー28を図1の2点鎖線で示す位置に係合する。このとき、固定カム部材26のストッパー部26bと可動カム部材27のストッパー部27bとは、緩衝部材50を介して周方向に対向するように位置される(図7(a)参照)。
さらに、頭部25c側に挿通したスラストベアリング45を、座金46を介してチルトレバー28の可動カム部材27とは反対側の端面に当接させた状態で、チルトボルト25のチルトブラケット22から突出した雄ねじ部にナット25bを螺合することでクランプ機構24を構成する。
次に、本実施形態におけるクランプ機構の動作について説明する。
図7は、ステアリング装置のある実施形態においてクランプ機構の動作を説明する平面図であり、(a)はチルトレバーをアンロック位置にしたときの各カム部材のそれぞれのカム突起の位置を示し、(b)はチルトレバーをロック位置にしたときの各カム部材のそれぞれのカム突起の位置を示している。
なお、図7(a),(b)は、重ね合わされた2つのカム部材のうち、可動カム部材27のカム突起形成面27a側に向かって見た平面図であり、説明のわかりやすさのため、固定カム部材26はカム突起30及びストッパー部26b(いずれもハッチングで表示)のみ示している。また、緩衝部材50も説明のわかりやすさのため、ハッチングで表示している。
このアンロック位置では、固定カム部材26及び可動カム部材27によるチルトボルト25に対する軸力が発生していないので、チルトブラケット22の締付け板部21b,21bとディスタンスブラケット23との間には僅かな隙間が生じるか又は軽く接触した状態となる。この状態において、ステアリングホイール4を把持して上下方向に移動させることにより、ステアリングコラム2がチルトピン13を中心にして上下方向に移動することによって、運転者の好みの位置に移動させることができる。
このロック位置までチルトレバー28が回動すると、図7(b)に示すように、チルトレバー28に連動する可動カム部材27の平坦カム面33aが固定カム部材26の平坦カム面30aに摺動して当接する。このように、固定カム部材26及び可動カム部材27の平坦カム面30a,33a同士が当接すると、チルトボルト25に対して軸力が発生する。
このとき、図2に示すように、チルトボルト25は一端がナット25bによってチルトブラケット22の右端側に固定され、他端には頭部25cが形成されているので、反力によって固定カム部材26が右方に押圧されると共に、チルトブラケット22の右側の締付け板部21bが左方に押圧される。このため、チルトブラケット22の締付け板部21b間の間隔が狭められることにより、ディスタンスブラケット23を強固に挟持するロック状態となる。
したがって、チルトレバー28が回動して固定カム部材26及び可動カム部材27をロック状態(図7(b)参照)から、アンロック状態(図7(a)参照)にする際、ストッパー部26b,27b間に緩衝部材50が介在する。その結果、クランプ機構の締付を解除した際に生じる打音を低減し、カム山(カム突起)の高さを変えることなく、操作性の高いステアリング装置を提供することができる。
次に、ステアリング装置の他の実施形態について図面を参照して以下に説明する。
図8は、ステアリング装置の他の実施形態におけるクランプ機構の構成を示す分解斜視図である。また、図9は、ステアリング装置の他の実施形態の可動カム部材及び固定カム部材の構成を示す図であり、(a)は可動カム部材及び固定カム部材を可動カム部材側から見た分解斜視図、(b)は緩衝部材を取り付けた可動カム部材をボスが形成された側から見た平面図、(c)は可動カム部材及び固定カム部材を固定カム部材側から見た分解斜視図、(d)は緩衝部材を取り付けた可動カム部材をカム面側から見た平面図、(e)は固定カム部材をカム面側から見た平面図である。
チルトボルト25は、チルトブラケット22のチルト孔22a、及びディスタンスブラケット23の孔を貫通する軸体であり、一方の端部に雄ねじ部25aが設けられ、他方の端部に頭部25cが設けられている。チルトブラケット22の締付け板部21bから突出する雄ねじ部25aにはナット25bが螺合されている。また、固定カム部材26及び回動可能な可動カム部材27は、このチルトボルト25の回りで、頭部25cとチルトブラケット22との間に配設されたチルトボルト25に対して軸力を付与する。
次に、本実施形態のステアリング装置に用いられるカム部材(固定カム部材及び可動カム部材)について図9を参照して説明する。
[固定カム部材]
固定カム部材26は、図9(a),(c),(e)に示すように、略平板形状の部材(後述するストッパー部26b)に画成した円板形状の部分の中心位置に形成されたチルトボルト25が挿通するボルト貫通孔29と、可動カム部材27と対面するカム突起形成面26aに同一円周上に並んで形成された複数のカム突起30とを備えている。ここで、カム突起30を形成した面に対して反対側の面には、チルトブラケット22の締付け板部21bに形成したチルト孔22aに嵌入される構造が形成されている。なお、本実施形態のステアリング装置に用いられる固定カム部材26は、ブラケット固定用の摩擦多板に抱きかかえられる構造を一例として図9(c)に示したものであるため、ボスを有していない。
カム突起30は、平坦カム面30aと、第1傾斜カム面30bと、第2傾斜カム面30cとを有する。
平坦カム面30aは、カム突起形成面26aに対して同一高さで突出して平滑面形状をなす面である。また、第1傾斜カム面30bは、ボルト貫通孔29の軸方向を基準に第1の周方向(図中Aで示す)に向かうに従い下り傾斜を付けて(カム突起30の突出高さが徐々に減少する方向に)平坦カム面30aから連続して形成された面である。また、第2傾斜カム面30cは、他方の周方向(第1の周方向と反対の方向)に向かうに従い下り傾斜を付けて平坦カム面30aから連続して形成された面である。ここで、第1傾斜カム面30bは、カム突起形成面26aに対して、第2傾斜カム面30cよりも大きな角度(80°〜90°)をなす面であり、本実施形態では「背面(30b)」ということがある。
すなわち、固定カム部材26と可動カム部材27とを重ね合わせたときには、切り欠き部26cに、後述する可動カム部材27のストッパー部27bが配置され、ストッパー部27bの可動範囲が上記切り欠き部26cの周方向の範囲内に制限されることになる。
可動カム部材27は、図9(a)〜(d)に示すように、略円板形状をなし、ボルト貫通孔32と、複数のカム突起33と、ボス34とを備えている。ボルト貫通孔32は、可動カム部材27の中心位置に貫通して形成され、チルトボルト25が挿通される貫通孔である。複数のカム突起33は、固定カム部材26と対面するカム突起形成面27aに同一円周上に並んで形成される。また、ボス34は、複数のカム突起33が形成されたカム突起形成面27aに対して反対側の面に形成され、チルトレバー28に形成した角孔28aに嵌入される部材である。
図9(c),(d)に示すように、可動カム部材27の複数のカム突起33も全て同一形状であり、上述の実施形態(図5参照)と同様に、ボルト貫通孔32の軸方向から見て略扇形状をなし、平坦カム面33aと、第1傾斜カム面33bと、第2傾斜カム面33cとを有する。
なお、固定カム部材26における第1の方向と、可動カム部材27における第2の方向とは、それぞれのカム突起が形成された面を対向させて固定カム部材26と可動カム部材27とを重ね合わせた態様(図10,11参照)において互いに反対の方向となる。
また、第1傾斜カム面33bは、カム突起形成面27aに対して、第2傾斜カム面33cよりも大きな角度(80°〜90°)をなす面であり、本実施形態でも「背面(33b)」ということがある。
また、可動カム部材27には、図9(b)〜(d)に示すように、カム突起形成面27aの外周縁部に沿って突出した2つのストッパー部(第2ストッパー部)27b,27bが形成されている。これらストッパー部27b,27bは、固定カム部材26のストッパー部(第1ストッパー部)26bよりも周方向の長さが短く形成されている。
さらに、ストッパー部27bは、2つのストッパー部26b,26b間に形成された切り欠き部26cに配置されるように、固定カム部材26と可動カム部材27とが重ね合わせられる。すなわち、ストッパー部27bの可動範囲が切り欠き部26cの周方向の範囲内に制限されることになる。
また、図9(c)に示すように、可動カム部材27のカム形成面27aの周縁部の互いに対向する位置には、4つの切り欠き部(第2切り欠き部)27cが形成されている。これら4つの切り欠き部(第2切り欠き部)27cは、後述する緩衝部材と共に、固定カム部材26及び可動カム部材27の回転中心に対して180°の点対称に配置されることが好ましい。
ここで、可動カム部材27には、ストッパー部27bを基準として、固定カム部材26と組み合わせてクランプ機構による締め付けがなされる向き(図9(a)〜(d)内の「B」で示す向き)に配置され、ストッパー部27bに当接する緩衝部材50が設けられている。この緩衝部材50は、可動カム部材27の外周面に嵌合する筒状の外輪部51に連結されている。また、外輪部51の内周面には、可動カム部材27の外周面に形成された切り欠き部27dに係合し、緩衝部材50に軸方向に連通する嵌合部51bが設けられている。
この場合、緩衝部材50が十分衝突音を低減できれば、係合部51aの高さをカム突起形成面27aの高さと一致させてもよい。いずれの場合にも、カム山(カム突起)の高さを高くする必要がない。
また、外輪部51の内周面には、切り欠き部27cの設置位置に対応して、径方向内側に突出して切り欠き部27cに係合可能とされた4つの係合部51aが設けられている。すなわち、緩衝部材50に連結された外輪部51の内周面を可動カム部材27の外周面に嵌合させると共に、切り欠き部27cに係合部51aを係合させることで、可動カム部材27に対する緩衝部材50の周方向の位置ズレを防ぐことができる。
ストッパー部27bを基準として、クランプ機構による締め付けがなされる方向に配設された緩衝部材50は、後述するように、固定カム部材26と可動カム部材27とを組み合わせ、アンロック状態としたとき、ストッパー部26bとストッパー部27bとの間に介在することとなる。したがって、クランプ機構による締め付けが解除される際、チルトブラケット22の反力によるチルトレバー28の慣性で生じうるエネルギーを緩衝部材50の圧縮により吸収し、結果として衝突音を低減することができる。
また、固定カム部材26及び可動カム部材27のカム突起形成面26a,27aには、摩耗防止のためのグリースが塗布されている。
そして、固定カム部材26の平坦カム面30aと可動カム部材27のカム突起形成面27aとを対向させ、同様に固定カム部材26の第2傾斜カム面30cと可動カム部材27の第2傾斜カム面33cとをそれぞれ対向した状態で、チルトレバー28を図1の2点鎖線で示す位置に係合する。このとき、固定カム部材26のストッパー部26bと可動カム部材27のストッパー部27bとは、緩衝部材50を介して周方向に対向するように位置される(図10(a),(b)参照)。
さらに、頭部25c側に挿通したスラストベアリング45を、座金46を介してチルトレバー28の可動カム部材27とは反対側の端面に当接させた状態で、チルトボルト25のチルトブラケット22から突出した雄ねじ部にナット25bを螺合することでクランプ機構24を構成する。
次に、本実施形態におけるクランプ機構の動作について説明する。
図10は、ステアリング装置の他の実施形態においてクランプ機構の解除動作(解除完了状態)を説明する図であり、(a)は可動カム部材側から見た平面図、(b)は固定カム部材側から見た平面図である。また、図11は、ステアリング装置の他の実施形態においてクランプ機構の締め付け動作(締め付け完了状態)を説明する図であり、(a)は可動カム部材側から見た平面図、(b)は固定カム部材側から見た平面図である。
チルトレバー28が図1の2点鎖線位置に位置すると、固定カム部材26のカム突起(図示せず)と可動カム部材27のカム突起33とが軽く接触する状態となり、緩衝部材50が固定カム部材26のストッパー26bに当たった状態となる。すなわち、チルトボルト25の軸力が減少するアンロック位置となる(図10(a),(b)参照)。
そして、チルトレバー28を図1の2点鎖線位置(アンロック位置)から図1の実線で示すロック位置まで回動させる。
このとき、図2に示すように、チルトボルト25は一端がナット25bによってチルトブラケット22の右端側に固定され、他端には頭部25cが形成されているので、反力によって固定カム部材26が右方に押圧されると共に、チルトブラケット22の右側の締付け板部21bが左方に押圧される。このため、チルトブラケット22の締付け板部21b間の間隔が狭められることにより、ディスタンスブラケット23を強固に挟持するロック状態となる。
以上、本発明に係るステアリング装置について説明したが、本発明に係るステアリング装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。例えば、上述の実施形態においては、可動カム部材に緩衝部材を設けたが、固定カム部材に設けてもよく、固定カム部材及び可動カム部材のそれぞれに設けてもよい。また、第2切り欠き部も可動カム部材と同様に固定カム部材に設けてもよい。
以上で、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これら説明によって発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明を参照することにより、当業者には、開示された実施形態の種々の変形例とともに本発明の別の実施形態も明らかである。従って、特許請求の範囲は、本発明の範囲及び要旨に含まれるこれらの変形例または実施形態も網羅すると解すべきである。
Claims (8)
- ステアリングコラムを支持する車体取付けブラケットに橋架された軸杆と、互いに対峙したカム突起を係合させて前記軸杆を互いに協働して軸方向に移動させる固定カム部材及び可動カム部材と、前記可動カム部材を可動させる操作レバーとを有するクランプ機構を備え、
前記固定カム部材のカム突起が形成されたカム突起形成面の外縁部に周方向に沿って突出した複数の第1ストッパー部と、それら複数の第1ストッパー部間に形成された第1切り欠き部に遊嵌されるように前記可動カム部材のカム突起が形成されたカム突起形成面の外縁部に周方向に沿って突出した複数の第2ストッパー部との間に緩衝部材を設け、
前記緩衝部材は、前記固定カム部材及び前記可動カム部材の少なくとも何れか一方の外周面に嵌合する外輪部に連結されたことを特徴とするステアリング装置。 - 前記緩衝部材は、前記操作レバーを解除方向に操作したときに、前記第1ストッパーと前記第2ストッパーとに挟まれることで、前記操作レバーを解除したときの慣性による前記第1ストッパーと前記第2ストッパーとの接触を防止する請求項1に記載のステアリング装置。
- 前記固定カム部材及び前記可動カム部材の少なくとも何れか一方の外周面に第2切り欠き部が複数設けられ、これら複数の第2切り欠き部のそれぞれに係合する複数の係合部が前記外輪部の内周面に設けられた請求項1に記載のステアリング装置。
- 前記緩衝部材は、前記固定カム部材及び前記可動カム部材の回転中心に対して180°の点対称に配置される請求項1又は2に記載のステアリング装置。
- 前記係合部は、前記固定カム部材及び前記可動カム部材の回転中心に対して180°の点対称に配置される請求項3に記載のステアリング装置。
- 前記係合部は、第2切り欠き部に係合した状態で、前記カム突起形成面と一致している請求項3に記載のステアリング装置。
- 前記係合部は、第2切り欠き部に係合した状態で、前記カム突起形成面よりも高く、かつ前記クランプ機構が解除されたときの隙間の総和よりも小さい請求項3に記載のステアリング装置。
- 前記緩衝部材が合成樹脂からなり、一体成型される請求項1〜4の何れか一項に記載のステアリング装置。
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