JP5949724B2 - パネルの製造方法及びブランク材 - Google Patents
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Description
一方、自動車の外板部分には、合金化溶融亜鉛めっき鋼板などのブランク材を成形金型で所定の形状に絞り成形して形成されたパネルが使用されている。この種のパネルの絞り成形では、成形金型として、主に、ダイ(雌型)と、パンチ(雄型)と、ブランクホルダ(押さえ型)と、絞り成形部と、絞りビード成形部とを備えた成形金型が用いられている。
絞りビード成形部は、主に、ダイに設けられた絞りビード成形凹部と、ブランクホルダに設けられた絞りビード成形凸部とで構成されている。この絞りビード成形部は、ダイとブランクホルダとでブランク材のフランジ領域を挟持し、ダイの絞りビード成形凹部内にブランク材の絞り成形領域を囲むフランジ領域内の絞りビード成形領域をブランクホルダの絞りビード成形凸部で押し込んで所定の形状の絞りビードを成形することにより、ブランク材の絞り成形領域を絞り成形部で絞り成形する際、ダイの絞り成形凹部内へのブランク材の流入を抑制するものである。
パウダリングが発生する原因としては、成形金型の絞りビード成形部をブランク材のフランジ領域が通過する時のフランジ領域での曲げ、曲げ戻しによるめっきの損傷が挙げられる。特に、合金化溶融亜鉛めっき鋼板では、一般に鋼板の変形能と比較してめっきの変形能が低いため、パウダリングが生じ易い。
このようなパウダリングが発生すると、剥離して成形金型に溜まっためっき粉の処理に時間が必要となる、成形金型の絞り成形凹部内にめっき粉が侵入してプレスブツ等が発生する、などの不具合を生じる要因となる。そのため、パウダリングの抑制は重要課題であり、パウダリングを生じさせる原因の一つである「しわ」の抑制は非常に重要である。
そこで、本発明者は、本発明をなす過程で、「しわ」の抑制、及びブランク材の流入を調整する技術について先行技術文献調査を行った結果、下記の特許文献1〜3を抽出した。
特許文献1及び2に記載の技術は、ブランク材の引き込み時に抵抗となるような折り曲げ部をブランク材に設けることにより、ブランク材を成形金型の絞り成形凹部内へ流入させ難くし、「しわ」の発生を抑制するものである。
特許文献3に記載の技術は、絞りビード形状を上面視で波型として絞りビード部のクリアランスを広くとり、金型調整に必要とされる時間を低減すると共に、めっきの剥離も抑制する技術である。この方法は「しわ」に対する抑制効果は小さいと考えられ、「しわ」が絞りビードを通過する際に生じるパウダリングには効果が小さいと考えられる。
本発明の目的は、絞り成形時にブランク材のフランジ領域における「しわ」の発生を抑制することが可能なパネルの製造方法及びブランク材を提供することにある。
また、本発明の一態様に係るブランク材は、外周端を含むフランジ領域と、前記フランジ領域で囲まれた絞り成形領域と、前記フランジ領域内の絞りビード成形領域とを有し、前記絞り成形領域は所定の形状の成形体に、前記絞りビード成形領域は絞りビードに成形金型で絞り成形される、めっき鋼板からなるブランク材であって、前記外周端と前記絞りビード成形領域との間に、前記外周端から前記絞りビード成形領域に向かって延在する切り欠き部を有し、前記切り欠き部は、前記切り欠き部の延在方向と直交する方向に互いに離間する2つの側壁部と、前記2つの側壁部の各々に接続する底部とを有し、前記底部は、前記2つの側壁部の各々に接続する2つの接続部分が少なくとも曲率半径R≧5mmの円弧形状になっている。
また、本発明の一態様に係るブランク材において、前記底部は、前記2つの接続部分と、前記2つの接続部分の間に前記2つの接続部分と連続して設けられた平坦部分とを有し、前記平坦部分の長さは、5mm以上であることが好ましい。
また、本発明の一態様に係るブランク材によれば、絞り成形時にブランク材のフランジ領域における「しわ」の発生を抑制することができる。
まず、本実施形態に係るパネルの製造方法において用いられるブランク材及び成形金型について、図1乃至図5を用いて説明する。そして、次に、本実施形態に係るパネルの製造方法について、図6乃至図9を用いて説明する。
図1は本実施形態に係るブランク材1を模式的に示す平面図、図2は図1の切り欠き部6付近を拡大した平面図である。図1に示すように、ブランク材1は、平面視したときの平面形状が例えば500mm×500mmの略正方形で形成され、外周端2が4つの辺2a,2b,2c,2dを有している。ブランク材1は、めっき鋼板として例えば合金溶融亜鉛めっき鋼板からなる一枚の平板状金属素材を打ち抜いて形成される。
ブランク材1の4つの辺2a,2b,2c,2dのうち、2つの辺2a,2bはX方向において互いに反対側に位置し、残りの2つの辺2c,2dはX方向と同一平面内で直交するY方向において互いに反対側に位置している。
絞り成形領域3は、後述する所定形状の成形体13(図8参照)に成形される領域であり、ブランク材1の外周端2からその内方に離れた中央領域に設けられている。絞り成形領域3の平面形状は、4つの辺の長さがほぼ同一の略正方形で形成されている。絞り成形領域3の4つの辺は、ブランク材1の4つの辺2a,2b,2c,2dに個々に対応するように形成されている。
切り欠き部6において、底部8は、2つの側壁部7の各々に接続する2つの接続部分8aが少なくとも曲率半径R≧5mmの円弧形状になっている。本実施形態では、底部8の接続部分8aは、例えば曲率半径R=5mmの円弧形状になっている。ここで、図1において、wは、2つの側壁部7の離間距離、すなわち切り欠き部6の幅である。また、dは、ブランク材1の外周端2から切り欠き部6の底部8までの深さ、すなわち切り欠き部6の長さである。本実施形態において、切り欠き部6は、例えば、幅wが10mm程度、長さdが30mm程度になっている。
切り欠き部6は、ブランク材1の外周端2と絞りビード成形領域5との間において、絞りビード成形領域5の長手方向の中間部、換言すれば絞り成形領域3のX方向に延在する辺の中間部に設けられている。
図3は本実施形態に係る成形金型10を模式的に示す展開側面図である。図4は図3の成形金型10を構成するダイ20を模式的に示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。図5は図3の成形金型10を構成するブランクホルダ40を模式的に示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。なお、図5(b)は、ブランクホルダ40の貫通孔46にパンチ30が挿入され、ブランクホルダ40からパンチ30が突出した状態を示している。また、図5(b)に示される破線は、絞り成形前のパンチ30の位置を示すものである。また、図3では、成形金型10で絞り成形されるブランク材1をダイ20とブランクホルダ40との間に図示している。
ダイ20は、基部21と、この基部21に設けられた挟持面22と、この挟持面22から深さ方向に向かって凹む絞り成形凹部23及び絞りビード成形凹部25とを有している。
パンチ30は、ダイ20の絞り成形凹部23と共に絞り成形部53を構成するものであり、ダイ20の絞り成形凹部23内にブランク材1の絞り成形領域3を押し込む先端部33を有している。パンチ30は、ブランクホルダ40の貫通孔46を通して移動するようになっている。
絞り成形部53は、主に、ダイ20の絞り成形凹部23と、パンチ30とで構成されている。この絞り成形部53は、ダイ20の絞り成形凹部23内にブランク材1の絞り成形領域3をパンチ30で押し込んで所定の形状の成形体13(図8参照)に絞り形成するものである。
なお、4つの絞りビード成形凸部45のうち、Y方向において互いに離間する2つの絞りビード成形凸部45の高さは、X方向において互いに離間する2つの絞りビード成形凸部の高さよりも低くなっている。
ダイ20において、図4(a)に示すように、絞り成形凹部23は、平面視したときの平面形状が略正方形で形成されている。この絞り成形凹部23の底面は、図4(b)に示すように、パンチ30の先端部33の端面に対応して、例えば曲率半径R=800mmの曲面形状になっている。絞り成形凹部23のサイズは、パンチ30のサイズよりも大きくなっており、絞り成形凹部23と、パンチ30とを凹凸嵌合させた場合に、絞り成形凹部23とパンチ30との間には少なくともブランク材1の厚さ分の隙間がある。すなわち、本実施形態の成形金型10は、ブランク材1の絞り成形領域3を角筒絞り成形する成形金型である。
絞りビード成形凹部25の形状は、絞りビード成形凸部45の形状と略相似形状をしている。また、絞りビード成形凹部25のサイズは絞りビード成形凸部45のサイズよりも大きくなっており、絞りビード成形凹部25と、絞りビード成形凸部45とを凹凸嵌合させた場合に、絞りビード成形凹部25と絞りビード成形凸部45との間には少なくともブランク材1の厚さ分の隙間がある。
ここで、ダイ20の絞り成形凹部23及びパンチ30のサイズや形状、すなわち絞り成形部53のサイズや形状は、パネル11のサイズや形状に依存するものである。したがって、本実施形態では、平面形状が略正方形の絞り成形凹部23及びパンチ30について説明したが、これに限定されるものではない。
本実施形態に係るパネルの製造方法は、切り欠き部6が設けられたブランク材1を成形金型10で絞り成形する工程と、絞り成形したブランク材1の成形体13と絞りビード15との間を切断して切り欠き部6を除去する工程とを有している。以下、本実施形態に係るパネルの製造方法について、図6乃至図9を用いて説明する。
本実施形態に係るパネルの製造方法では、まず、図1及び図2に示すブランク材1を準備すると共に、図3乃至図5に示す成形金型10を準備する。ブランク材1は、前述したように、ブランク材1の外周端2と絞りビード成形領域5との間に、外周端2から絞りビード成形領域5に向かって延在する切り欠き部6を有している。本実施形態では、切り欠き部6の底部8は、2つの側壁部7の各々と接続する2つの接続部分8aが少なくとも例えば曲率半径R=5mmの円弧形状になっている。
次に、図7に示すように、ブランク材1のフランジ領域4をダイ20とブランクホルダ40とでプレスして、ブランク材1のフランジ領域4内の絞りビード成形領域5を絞りビード15に絞り成形する。具体的には、ダイ20の挟持面22とブランクホルダ40の挟持面22とでブランク材1のフランジ領域4をプレスしながら挟持し、ダイ20の絞りビード成形凹部25内にブランク材1の絞りビード成形領域5をブランクホルダ40の絞りビード成形凸部45で押し込んで所定の形状の絞りビード15に成形する。すなわち、ブランク材1の絞りビード成形領域5は、成形金型10の絞りビード成形部55によって絞りビード15に絞り成形される。
この工程において、切り欠き部6は変形し、この切り欠き部6の変形により、ブランク材1の絞り成形領域3を絞り成形する時にブランク材1のフランジ領域4に生じる歪みを吸収して緩和することができるので、絞り成形時にブランク材1のフランジ領域4における「しわ」の発生を抑制することができる。
次に、絞り成形したブランク材1の絞り成形体13と絞りビード15との間を切断して絞りビード15及び切り欠き部6を除去することにより、図9に示すように、成形体13を有するパネル11が製造される。
図10は、本実施形態の製造方法で製造したブランク材1を模式的に示す平面図であり、図11は、従来の製造方法で製造したブランク材61を模式的に示す平面図である。図10に示す本実施形態のブランク材1と、図11に示す従来のブランク材61とは、切り欠き部6を有するか否かの違いであって、その他の構成は同一である。
絞り成形時にパンチ30の押し込みによりブランク材1が引っ張られてダイ20の絞り成形凹部23内にブランク材1が流入する際、絞り成形領域3の直辺部における流入量の大きさ(矢印A)は、絞り成形領域3の角部における流入量の大きさ(矢印B)よりも大きい。このため、フランジ領域4は、矢印C、Dで示すように切り欠き部6側に向かって歪む。この歪みによって「しわ」が生じるが、この「しわ」は、切り欠き部6が変形することで緩和されるので、絞り成形時にブランク材のフランジ領域における「しわ」を解消することができる。よって、ブランク材1を絞り成形した場合であっても、従来の製造方法と比較して、絞り成形されたブランク材1のフランジ領域4における「しわ」の発生を抑制することができる。
図13(a)の切り欠き部6は、幅wが10mm、底部8の2つの接続部分8aの曲率半径Rが5mmの条件からなる形状6Aである。
図13(b)の切り欠き部6は、幅wが20mm、底部8の2つの接続部分8aの曲率半径Rが10mmの条件からなる形状6Bである。
図13(c)の切り欠き部6は、底部8が2つの接続部分8aと、この2つの接続部分8aの間に2つの接続部分8aと連続して設けられた平坦部分8bとを有し、幅wが15mm、底部8の2つの接続部分8aの曲率半径Rが5mm、底部8の平坦部分8bの長さが5mmの条件からなる形状6Cである。
図13(d)の切り欠き部6は、底部8が2つの接続部分8aと、この2つの接続部分8aの間に2つの接続部分8aと連続して設けられた平坦部分8bとを有し、幅wが20mm、底部8の2つの接続部分8aの曲率半径Rが5mm、底部8の平坦部分8bの長さが10mmの条件からなる形状6Dである。
これらの形状6A〜6Dの切り欠き部6は、何れも長さdが30mmである。
したがって、切り欠き部6の底部8は、2つの側壁部7の各々に接続する2つの接続部分8aが少なくとも曲率半径R≧5mm以上の円弧形状になっていることが好ましく、効果的に歪みの集中を抑制するためには曲率半径R≧10mm以上の円弧形状になっていることが望ましい。
したかって、切り欠き部6の底部8の形状としては、2つの接続部分8aの間にこれらと連続し、長さが5mm以上の平坦部分8bを有する形状が好ましく、効果的に歪みを分散させるためには長さが10mm以上の平坦部分8bを有する形状が望ましい。
(1)本実施形態のパネル11の製造方法において、成形金型10で成形される前のブランク材1は、ブランク材1の外周端2と絞りビード成形領域5との間に、外周端2から絞りビート成形領域5に向かって延在する切り欠き部6を有し、この切り欠き部6の底部8は2つの側壁部7の各々と接続する2つの接続部分8aが少なくとも曲率半径R≧5mm以上の円弧形状になっている。
また、パウダリングの発生を抑制することができるので、パウダリングの発生に起因するプレスブツ等の不具合を抑制でき、パネル11の製造歩留まりの向上を図ることができる。
したがって、このパネル11の製造方法によれば、絞り成形時に切り欠き部6の底部8に集中する歪を分散させることができ、1箇所あたりの歪みの集中量が小さくなるので、切り欠き部6の底部8側における「しわ」の発生をより抑制することができる。
したがって、このパネル11の製造方法によれば、絞り成形時にブランク材1のフランジ領域4に生じる歪みを均一に緩和することができる。
なお、本実施形態の製造方法では、切り欠き部6が設けられたブランク材1を成形金型10で成形することにより前述の効果が得られるので、切り欠き部6を有するブランク材1においても同様の効果が得られる。
以上説明したように、本発明に係るパネルの製造方法では、絞り成形時にブランク材のフランジ領域に発生する「しわ」を抑制することができるという効果を有し、自動車外板部品などのパネルの製造に有用である。
10…成形金型、11…パネル、13…成形体、15…絞りビード
20…ダイ(雌型)、21…基部、22…挟持面、23…絞り成形凹部、25…絞りビード成形凹部
30…パンチ(雄型)、33…先端面
40…ブランクホルダ(押さえ型)、41…基部、42…挟持面、45…絞りビード成形凸部、45…貫通孔
53…絞り成形部、55…絞りビード成形部
w…きり欠き部の幅、d…切り欠き部の長さ
Claims (4)
- めっき鋼板からなるブランク材の絞り成形領域を所定の形状の成形体に成形する絞り成形部と、前記絞り成形部の外側に設けられ、前記ブランク材の前記絞り成形領域を囲むフランジ領域内の絞りビード成形領域を絞りビードに成形する絞りビード成形部とを備えた成形金型で前記ブランク材を成形して、前記ブランク材に前記成形体及び前記絞りビードを形成する工程を有するパネルの製造方法であって、
前記成形金型で成形される前の前記ブランク材は、前記ブランク材の外周端と前記絞りビード成形領域との間に、前記外周端から前記絞りビード成形領域に向かって延在する切り欠き部を有し、
前記切り欠き部は、前記切り欠き部の延在方向と直交する方向に互いに離間する2つの側壁部と、前記2つの側壁部の各々に接続する底部とを有し、
前記底部は、前記2つの側壁部の各々に接続する2つの接続部分が少なくとも曲率半径R≧5mmの円弧形状になっていることを特徴とするパネルの製造方法。 - 前記底部は、前記2つの接続部分と、前記2つの接続部分の間に前記2つの接続部分と連続して設けられた平坦部分とを有し、
前記平坦部分の長さは5mm以上であることを特徴とする請求項1に記載のパネルの製造方法。 - 外周端を含むフランジ領域と、前記フランジ領域で囲まれた絞り成形領域と、前記フランジ領域内の絞りビード成形領域とを有し、前記絞り成形領域は所定の形状の成形体に、前記絞りビード成形領域は絞りビードに成形金型で絞り成形される、めっき鋼板からなるブランク材であって、
前記外周端と前記絞りビード成形領域との間に、前記外周端から前記絞りビード成形領域に向かって延在する切り欠き部を有し、
前記切り欠き部は、前記切り欠き部の延在方向と直交する方向に互いに離間する2つの側壁部と、前記2つの側壁部の各々に接続する底部とを有し、
前記底部は、前記2つの側壁部の各々に接続する2つの接続部分が少なくとも曲率半径R≧5mmの円弧形状になっていることを特徴とするブランク材。 - 前記底部は、前記2つの接続部分と、前記2つの接続部分の間に前記2つの接続部分と連続して設けられた平坦部分とを有し、
前記平坦部分の長さは、5mm以上であることを特徴とする請求項3に記載のブランク材。
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