JP5943602B2 - 電気化学セル用アクリル系水分散体および水性ペースト、それからなる電極・電池の製造方法 - Google Patents
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Description
また、本発明は、二次電池、例えば、水素吸蔵合金を用いて得られるアルカリ二次電池(Ni−MH電池)、リチウム化合物を用いて得られる非水電解液二次電池(リチウムイオン電池)や電気二重層キャパシタ等の蓄電デバイスを構成する電気化学セル用水性ペーストに関する。
また、電気化学セル用水性ペーストに含まれる各配合組成物は、様々な使用状況・用途に対応するために配合組成比の微調整や類似物質群から選択される別物質へ代替される場合がある。そのような配合組成の変更に伴い、バインダーの配合安定性や性能発現に悪影響を及ぼすため、バインダーを構成する組成を最適化する必要があった。しかしながら、オレフィン系共重合体の場合、その組成の自由度が低いという問題があった。
本発明の電気化学セル用アクリル系水分散体は、少なくとも、不飽和カルボン酸類の重合性単量体と、(メタ)アクリルアミドとを含む単量体群を重合して得られる水溶性樹脂(a)と、有機粒子(b)(ただし、水溶性樹脂(a)を除く)を含むことを特徴とする。
前記不飽和カルボン酸類の重合性単量体には、実質的に共役ジエン系モノマーを含まないことが好ましい。
前記水溶性樹脂(a)が、1種以上のビニル単量体を重合して得られる有機粒子(b)の存在下で重合して得られる樹脂であることが好ましい。
前記水溶性樹脂(a)と前記有機粒子(b)の重量比率が、(a)10〜90重量%および(b)90〜10重量%(ただし、(a)と(b)の合計を100重量%とする)であることが好ましい。
前記水分散体には、さらに、界面活性剤(x)及び粘度調整剤(y)から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
前記電気化学セル用水性ペーストは、電気化学セル用アクリル系水分散体に含まれる水100重量部に対して、0〜40重量部の有機溶剤を含むことが好ましい。
本発明の二次電池は、電気化学セル用電極を用いて得られる。
また、該電気化学セル用水性ペーストを用いて得られる極板を含む電池は、充放電によるサイクル寿命が高い。
本発明にかかる電気化学セル用アクリル系水分散体は、水にアクリル系共重合体が分散したエマルションである。このエマルションは、少なくとも、不飽和カルボン酸類の重合性単量体と、(メタ)アクリルアミドとを含む単量体群を重合して得られる水溶性樹脂(a)と、1種以上のビニル単量体を乳化重合して得られる有機粒子(b)を含む。ここで、(メタ)アクリルアミドとは、メタアクリルアミド及びアクリルアミドの意味である。また、有機粒子(b)は、水溶性樹脂(a)と異なる。
アクリル系水分散体は、水溶性樹脂(a)と有機粒子(b)がどのような形態で存在していてもよく、(a)と(b)を別々に合成し混合した樹脂組成物の形態、(a)が(b)の存在下で重合して得られる樹脂組成物の形態、(b)が(a)の存在下で重合して得られる樹脂組成物の形態のいずれも本願発明の範囲内である。
本発明に係るアクリル系水分散体の樹脂固形分濃度は5〜80重量%、好ましくは10〜70重量%である。この範囲であれば、良好な極板密着性が得られる。
本発明の水溶性樹脂(a)は、少なくとも、不飽和カルボン酸類の重合性単量体と、(メタ)アクリルアミドとを含む単量体群を重合して得られる樹脂である。
本発明の水溶性樹脂(a)は、不飽和カルボン酸類の重合性単量体と、(メタ)アクリルアミドと共に、その他の1種以上のビニル単量体を重合しても良い。ここで、1種以上のビニル単量体とは、官能基を有するビニル単量体が好ましく、例えば、アクリルアミド以外のアミド基含有ビニル単量体、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有ビニル単量体、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有ビニル単量体、(メタ)アクリロニトリル等のシアノ基含有ビニル単量体、N、N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有ビニル単量体、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のアセトアセトキシ基含有ビニル単量体等、スチレンスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸含有単量体が挙げられる。また、スチレンやメチルアクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル等の疎水性ビニル単量体を使用しても良い。また、水溶性樹脂(a)には架橋性ビニル単量体を使用しても良く、該単量体としては、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコール鎖含有ジ(メタ)アクリレートなどが例示できる。また、架橋性ビニル単量体として2つ以上のビニル基を含有するものであっても構わない。
水溶性樹脂(a)は、特に限定されないが、全単量体群100重量%中に、カルボン酸類の重合性単量体と(メタ)アクリルアミドの合計が、通常100〜10重量%、好ましくは100〜50重量%、より好ましくは100〜60重量%含まれ、その他のビニル系単量体を含む場合、単量体群100重量%中に、通常0〜90重量%、好ましくは0〜50重量%、より好ましくは0〜40重量%である。
水溶性樹脂(a)の合成方法には特に制約はないが、水を主成分とした溶媒中で行う重合が好ましい。特に好ましい重合形態は水溶液重合である。水溶性樹脂(a)の合成時の重合開始剤には制約はないが、水溶性ラジカル開始剤が好ましく、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩や4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等の水溶性アゾ系開始剤が特に好ましい。重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、(共)重合させるモノマーの全重量を基準として、通常0.1〜5重量%である。
有機粒子(b)(ただし、水溶性樹脂(a)を除く)は、1種以上のビニル単量体を乳化重合して得られる(共)重合エマルションが好ましい態様である。ビニル単量体としては芳香族ビニルモノマー類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、不飽和カルボン酸類、不飽和スルホン酸類、水酸基含有ビニル化合物類、芳香族ビニル化合物類、不飽和アミド類、アミノアルキルアクリレート若しくはアミノアルキルメタクリレート類、又はこれらのハロゲン化メチル、ハロゲン化エチル、ハロゲン化ベンジル等による4級塩化物、N一アミノアルキルアクリルアミド若しくはN一アミノアルキルメタクリルアミド類、又はこれらのハロゲン化メチル、ハロゲン化エチル、ハロゲン化ベンジル等による4級塩化物、ビニルエステル類、ハロゲン化ビニリデン類、ジアクリレート類、ジメタクリレート類などが挙げられる。
芳香族ビニルモノマーとしては、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルアニソール等が挙げられる。
水酸基含有ビニル化合物類としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、グリセロールモノメタクリレートなどが挙げられる。
ハロゲン化ビニリデン類としては、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
有機粒子(b)のガラス転移温度Tgは特に限定しないが、電極板の柔軟性の観点から、好ましくは−30〜80℃(計算ソフトCHEOPS(ver.4.0)による)である。−30℃未満でれば、電極板にタックが残り好ましくない。
有機粒子(b)の合成方法には特に制約はないが、水を主成分とした溶媒中で行う乳化重合が好ましい。有機粒子(b)の重合安定性、保存安定性を向上するなどの目的で適宜界面活性剤(x)や水溶性高分子を用いることができる。該界面活性剤(x)としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などが挙げられる。
重合安定性、保存安定性を向上するなどの目的で使用する水溶性高分子を添加してもよく、これら水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、変成ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ(メタ)アクリルアミド(共)重合体、エチレングリコール等の水溶性ポリマーが挙げられる。
重合開始剤としては、例えば、過酸化水素、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、アゾビスシアノ吉草酸、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス〔2-(N-フェニルアミジノ)プロパン〕二塩酸塩、2,2'-アゾビス{2-〔N-(4-クロロフェニル)アミジノ〕プロパン}二塩酸塩、2,2'-アゾビス{2-〔N-(4-ヒドロキシフェニル)アミジノ〕プロパン}二塩酸塩、2,2'-アゾビス〔2-(N-ベンジルアミジノ)プロパン〕二塩酸塩、2,2'-アゾビス〔2-(N-アリルアミジノ)プロパン〕二塩酸塩、2,2'-アゾビス{2-〔N-(2-ヒドロキシエチル)アミジノ〕プロパン}二塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-〔1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド}、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-〔1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル〕プロピオンアミド}、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-〔2-ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス(イソブチルアミド)二水和物等のアゾ化合物;クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられ、これらの1種、又は2種以上を選択することができる。
有機粒子(b)の合成時の重合温度には制約はないが、製造時間や単量体の共重合体への転化率(反応率)などを考慮に入れると30〜95℃の範囲で合成することが好ましく、50〜85℃が特に好ましい。
また、中和剤を用いて、pH調整を行ってもよい。中和については、前述を参照できる。
本発明のアクリル系水分散体には、界面活性剤(x)及び粘度調整剤(y)から選ばれる少なくとも1種を含むことができる。
本発明では、必要に応じて、乳化剤として界面活性剤(x)を添加してもよい。界面活性剤は、あらかじめアクリル系水分散体に含ませても良い。
シリコン系界面活性剤としては、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン、シリコン変性ポリオキシエチレンエーテル等が挙げられる。
これら界面活性剤の中でも、活物質や導電助剤を水に分散させる点で、オレイン酸カリウム、ステアリン酸カリウムが好ましい。また、水の表面張力を低下させる点で、アセチレニックグリコール誘導体のポリオキシエチレンエーテル、シリコン変性ポリオキシエチレンエーテルが好ましい。界面活性剤としては、オレイン酸カリウム、アセチレニックグリコール誘導体のポリオキシエチレンエーテルおよびシリコン変性ポリオキシエチレンエーテルから選ばれる少なくとも1種以上を用いると、得られる水分散体は良好な活物質、導電助剤の分散状態を得ることができるためより好ましい。
本発明では、必要に応じて、粘度調整剤(y)を添加してもよい。粘度調整剤は、あらかじめアクリル系水分散体に含ませても良い。
粘度調整剤は、1種のみを使用しても良いし、これらの複数の種類を組み合わせて使用しても良い。
本発明では、必要に応じて、有機溶剤を添加してもよい。有機溶剤は、あらかじめアクリル系水分散体に含ませても良い。
本発明の電気化学セル用水性ペーストは、少なくとも、本発明のアクリル系水分散体、活物質(B)及び導電助剤(C)から選ばれる少なくとも1種を含む。
活物質(B)としては、特に限定されないが、負極用としては天然黒鉛、人造黒鉛、正極用としてはLiCoO2、LiMn2O4、LiFePO4などが挙げられる。また、導電助剤の炭素材料を適宜用いてもよい。
電気二重層キャパシタ用の正、負極活物質としては、種々の活性炭が用いられる。
(B)の100重量部に対して、本発明のアクリル系水分散体の固形分は、通常0.5〜200重量部、好ましくは0.5〜120重量部である。
導電助剤(C)としては、特に限定されないが、カーボンブラック、アモルファスウィスカーカーボン、グラファイト、アセチレンブラック、人造黒鉛などの炭素材料、ポリチオフェン、ポリピロールなどの導電性ポリマーとその誘導体、コバルト等の金属微粒子などが挙げられる。これらは、1種単独でも、2種以上組み合わせて用いても良い。活物質の炭素材料を適宜用いてもよい。
本発明の一つの態様において、本発明にかかる電気化学セル用電極は、本発明の電気化学セル用アクリル系水分散体と導電助剤、好ましくはカーボンブラック、アモルファスウィスカーカーボン、グラファイトなどの炭素材料、および/または、正極では正極活物質、負極では負極活物質とを用いて得られる。
セパレータとして、二次電池においては、多孔性膜や高分子電解質が用いられる。多孔性膜としては、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル等が例示される。特に、多孔性ポリオレフィンフィルムが好ましく、具体的には多孔性ポリエチレンフィルム、多孔性ポリプロピレンフィルム、または多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンとの多層フィルムを例示することができる。多孔性ポリオレフィンフィルム上には、熱安定性に優れる他の樹脂がコーティングされていても良い。
二次電池において、リチウムイオンなどの非水系電解液としては、例えばLiPF6,LiBF4,LiClO4,LiAsF6,CF3SO3Li,(CF3SO2)N/Li等の電解質を、単独でまたは2種以上組み合わせて有機溶媒に溶解したものを使用することができる。
電気二重層キャパシタにおいて電解液としては、任意のものが使用できるが、非水系電解液が、電解質の例としてテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、トリエチルモノメチルアンモニウムテトラフルオロボレート等を単独または2種以上組み合わせて有機溶媒に溶解したものを使用することができる。
本発明の電気化学セル用アクリル系水分散体は、電気化学セル用極板のプレコート剤として用いることもできる。該プレコート剤は、本発明の電気化学セル用アクリル系水分散体単独、又は、本発明の電気化学セル用アクリル系水分散体と、活物質(B)および導電助剤(C)から選ばれる少なくとも1種を含み、電気化学セルに於いて極板(例えば、負極:銅、正極:アルミニュウム)上に該プレコート剤を予め塗布すること(プレコート)により基材腐食を防ぐなどの効果が得られる。なお、プレコート剤としては、本発明のアクリル系水分散体と導電助剤(C)を含む、または、本発明のアクリル系水分散体、活物質(B)と導電助剤(C)を含むものが好ましい。
製造例1
<水溶性樹脂(a)の合成>
攪拌機、還流冷却付きのセパラブルフラスコに蒸留水200重量部を仕込み、窒素ガスで置換した後、80℃に昇温した。次いで過硫酸アンモニウム2.0部を添加してから下記組成のビニル単量体と水の混合物を攪拌しながら2時間かけて連続的に添加した後、同温度で2時間熟成し、アンモニア水にてpH9.0に調整して、重合を完結させた。固形分が20.0%である樹脂(a)の水性液を得た。
(ビニル単量体と水の混合物)
メタクリルアミド 65.0部
メタクリル酸 10.0部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 20.0部
メチルアクリレート 5.0部
蒸留水 210.0部
<水溶性樹脂(a)の合成>
攪拌機、還流冷却付きのセパラブルフラスコに蒸留水200重量部を仕込み、窒素ガスで置換した後、80℃に昇温した。次いで過硫酸アンモニウム2.0部を添加してから下記組成のビニル単量体と水の混合物を攪拌しながら2時間かけて連続的に添加した後、同温度で2時間熟成し、アンモニア水にてpH9.0に調整して、重合を完結させた。固形分が20.0%である樹脂(a)の水性液を得た。
(ビニル単量体と水の混合物)
アクリルアミド 30.0部
メタクリルアミド 35.0部
メタクリル酸 10.0部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 20.0部
メチルアクリレート 5.0部
蒸留水 210.0部
<水溶性樹脂(a)と有機粒子(b)とを含有する水分散体の製造>
攪拌機、還流冷却付きのセパラブルフラスコに蒸留水360重量部を仕込み、窒素ガスで置換した後、80℃に昇温した。次いで過硫酸アンモニウム2.0部を添加してから下記組成のビニル単量体乳化物を3時間かけて連続的に添加し、更に3時間保持して、アンモニア水にてpH9.0に調整して、重合を完結させた。固形分が20.0%である有機粒子(b)からなる分散液を得た。これに製造例1で得た水溶性樹脂(a)を(a):(b)=1:9の割合で混合した水分散体を製造した。
(ビニル単量体乳化物)
n−ブチルアクリレート 95.0部
メタクリル酸 5.0部
ラウリル硫酸アンモニウム 0.1部
蒸留水 40.0部
<水溶性樹脂(a)の存在下で乳化重合して得られる樹脂を含有する水分散体>
攪拌機、還流冷却付きのセパラブルフラスコに蒸留水200重量部を仕込み、窒素ガスで置換した後、80℃に昇温した。次いで過硫酸アンモニウム2.0部を添加してから下記組成のビニル単量体と水の混合物を攪拌しながら2時間かけて連続的に添加した後、同温度で2時間熟成し、アンモニア水にてpH9.0に調整して、重合を完結させた。固形分が20.0%である樹脂(a)の水性液を得た。
(ビニル単量体と水の混合物)
メタクリルアミド 65.0部
メタクリル酸 10.0部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 20.0部
メチルアクリレート 5.0部
蒸留水 210.0部
(ビニル単量体乳化物)
2−エチルヘキシルアクリレート 40.0部
アクリル酸 5.0部
ラウリル硫酸アンモニウム 0.1部
蒸留水 40.0部
<水溶性樹脂(a)が1種以上のビニル単量体を重合して得られる有機粒子(b)の存在下で重合して得られる水分散体>
攪拌機、還流冷却付きのセパラブルフラスコに蒸留水370.4重量部を仕込み、窒素ガスで置換した後、80℃に昇温した。次いで過硫酸アンモニウム2.0部を添加してから下記組成のビニル単量体乳化物を3時間かけて連続的に添加し、更に3時間保持して、アンモニア水にてpH9.0に調整して、重合を完結させた。固形分が20.0%である有機粒子(b)からなる分散液を得た。
n−ブチルアクリレート 45.0部
アクリロニトリル 35.0部
メチルメタクリレート 8.0部
アクリル酸 5.0部
N−メチロールアクリルアミド 2.0部
ラウリル硫酸アンモニウム 0.1部
蒸留水 40.0部
(ビニル単量体と水の混合物)
メタクリルアミド 65.0部
メタクリル酸 10.0部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 20.0部
メチルアクリレート 5.0部
蒸留水 210.0部
<水溶性樹脂(a)と有機粒子(b)とを含有する水分散体の製造>
攪拌機、還流冷却付きのセパラブルフラスコに蒸留水360重量部を仕込み、窒素ガスで置換した後、80℃に昇温した。次いで過硫酸アンモニウム2.0部を添加してから下記組成のビニル単量体乳化物を3時間かけて連続的に添加し、更に3時間保持して、アンモニア水にてpH9.0に調整して、重合を完結させた。固形分が20.0%である有機粒子(b)からなる分散液を得た。これに製造例2で得た水溶性樹脂(a)を(a):(b)=1:9の割合で混合した水分散体を製造した。
(ビニル単量体乳化物)
n−ブチルアクリレート 95.0部
メタクリル酸 5.0部
ラウリル硫酸アンモニウム 0.1部
蒸留水 40.0部
アクリル系水分散体の代わりに、スチレンブタジエン系ラテックス(体積平均粒子径:160nm、固形分濃度:48重量%)をそのまま用いた。
実施例1〜4または比較例1のエマルションをガラス板に塗布し、120℃で3時間乾燥後フィルムを得た。エチレンカーボネート(EC)/メチルエチルカーボネート(MEC)=1/1(vol/vol)溶液にフィルムを80℃で3日間浸漬し、膨潤したフィルムの重量を測定した。膨潤フィルムの重量/膨潤前の重量比を算出した。同様にして、浸漬溶液を水酸化カリウム(KOH)水溶液(20℃)とした場合の重量比を算出した。結果を表1に示す。
活物質Bあるいは導電助剤C50重量部に実施例1〜4または比較例1のエマルションを49重量部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース1重量部と蒸留水ならびに必要に応じて有機溶剤を添加し固形分濃度50重量%の電気化学セル用ペースト(水性ペースト)を調製した。次にこの電気化学セル用ペーストを厚さ20μmのアルミ箔あるいは厚さ18μmの帯状銅箔に乾燥後の膜厚が20μmとなるように塗工、乾燥、圧縮プレスした。
前記で作製した塗工箔を切り、瞬間接着剤にてガラスプレパラートに貼り付け塗工箔を固定し評価用サンプルとした。評価用サンプルを塗膜剥離強度測定装置サイカスDN20型(ダイプラウインテス(株)製)で合材層と集電体との界面を水平速度2μm/秒の速度で切削し、切削に必要な水平方向の力から合材層と集電体との界面の剥離強度を測定した。剥離強度の3回の平均値をとり密着性を評価した。なお、合材層とは、水性ペーストをアルミ箔あるいは銅箔(集電体)に塗工してプレスした塗工部分を指す。
箔外観評価
○:均一な塗膜表面
△:濃淡のある塗膜表面
×:ヒビのある塗膜表面
結果を表2に示す。
実施例1〜4または比較例1のエマルション3重量部に、天然黒鉛(活物質B)((株)中越黒鉛工業所製LF18A)90重量部、アセチレンブラック(導電助剤C)(デンカブラック:電気化学工業株式会社製)7重量部を加えた。次に、得られた実施例または比較例のエマルション2重量部に、増粘剤1重量部と蒸留水ならびに必要に応じて界面活性剤、有機溶剤を添加し、固形分濃度50重量%の負極合材スラリー(水性ペースト)を調製した。次に、この負極合材スラリーを厚さ18μmの帯状銅箔製の負極集電体に塗布し、乾燥し、圧縮成型して、厚さ70μmの負極を作製した。それぞれ、表3に示す。
実施例1〜4または比較例1のエマルション3重量部に、LiCoO2(B)(本荘FMCエナジーシステムズ(株)製HLC−22)85.5重量部、人造黒鉛(導電助剤C)8重量部、アセチレンブラック(導電助剤C)(デンカブラック)3重量部を加えた。次に、得られた実施例または配合比較例の水分散体と必要に応じて界面活性剤、有機溶剤と蒸留水を加え、固形分濃度50重量%のLiCoO2合材スラリー(水性ペースト)を調製した。なお、得られた合材スラリーを、それぞれスラリー1A〜3A、スラリー1aとした。このLiCoO2合材スラリーを厚さ20μmのアルミ箔に塗布し、乾燥し、圧縮成型して、厚さ70μmの正極を作製した。それぞれ、表4に示す。
前記で作製した電極を切り、瞬間接着剤にてガラスプレパラートに貼り付け電極を固定し評価用サンプルとした。評価用サンプルを塗膜剥離強度測定装置サイカスDN20型(ダイプラウインテス(株)製)で合材層と集電体との界面を水平速度2μm/秒の速度で切削し、切削に必要な水平方向の力から合材層と集電体との界面の剥離強度を測定した。
非水溶媒として、エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)を、EC:MEC=4:6(重量比)の割合で混合したものを用い、次に電解質であるLiPF6を溶解し、電解質濃度が1.0モル/リットルとなるように非水電解液を調製した。
コイン型電池用負極として前記の負極を直径14mmの円盤状に打ち抜いて、重量20mg/14mmφのコイン状の負極を得た。コイン型電池用正極として前記の正極を直径13.5mmの円盤状に打ち抜いて、重量42mg/13.5mmφのコイン状の正極を得た。
前記コイン型電池を用いて、この電池を株式会社ナガノの装置を用い0.5mA定電流、4.2V定電圧の条件で、4.2V定電圧の時の電流値が0.05mAになるまで充電し、その後、1mA定電流、3.0V定電圧の条件で、3.0V定電圧の時の電流値が0.05mAになるまで放電した。このサイクルを100回繰り返し、100サイクル後の電極の合材層の厚み(L1)と、電解液注入前の電極の合材層の厚み(L2)を比較した。
その結果を表6に示す。なお、結果は、(L1/L2)で示した。
前記電極膨潤性と同様の評価法にて、サイクルを500回繰り返し、初期の電池容量に対する500サイクル後の容量(%)を評価した。
評価結果を表7に示す。
活性炭(B)(クラレ株式会社RP−20)100重量部、アセチレンブラック(C)(デンカブラック)3重量部、ケッチェンブラック(C)(ケッチェンブラックインターナショナル株式会社EC600JD)2重量部に、実施例1〜4および比較例1で調製したエマルションを固形分換算で5重量部混合し、さらに必要に応じて界面活性剤、有機溶剤と蒸留水を添加して固形分濃度50重量%の合材スラリー(水性ペースト)を調製した。
前記で作製した電極を用いて、電極の剥離強度をリチウム二次電池で行った評価と同様の方法で測定し、密着性を評価した。
結果を表8に示す。
テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートをプロピレンカーボネートに溶解し、電解質濃度が1.5モル/リットルとなるように電解液を調製した。
前記の電極を、直径14mmの円盤状に打ち抜いて、重量20mg/14mmφのコイン状の電極を得た。前記のコイン状の電極および厚さ25μm、直径16mmの微多孔性ポリプロピレンフィルムからできたセパレータを用いて、ステンレス製の2032サイズ電池缶の負極缶内に、電極、セパレータ、電極の順序で積層した。その後、セパレータに前記電解液0.04mlを注入した後、その積層体の上にアルミニウム製の板(厚さ1.2mm、直径16mm)、およびバネを重ねた。
作製したコイン型電気二重層キャパシタを用いて、10mAの定電流で2.7Vまで10分間充電を行った後、1mAの定電流で放電をおこなった。得られた充放電特性より静電容量を求めた。
また、水酸化ニッケル粉末(B)95重量部にアセチレンブラック(C)(デンカブラック)5重量部、1.2重量%に調製したカルボキシメチルセルロース(CMC1160)を固形分換算で1.0重量部と、実施例1〜4または比較例1で調製したエマルジョンを固形分換算で2.0重量部と、蒸留水を混合し、固形分濃度55重量%の合材ペースト(水性ペースト)を調製した。
ミッシュメタルを含むNi、Co、Mn、Alからなる平均粒子径30μmの水素吸蔵合金(B)95重量部に、アセチレンブラック(C)(デンカブラック)5重量部、実施例1〜4または比較例1のエマルションを固形分換算で2.5重量部と蒸留水を混合し、固形分濃度50重量%の合材ペーストを得た。
この合材ペーストを厚さ30μmのパンチングメタルに塗布し、乾燥後、加圧成型してシート状の負極板を作製した(配合実施例1E〜3E、および配合比較例1e)。
前記で作製した電極板の剥離強度をリチウム二次電池で行った評価と同様の方法で測定し、密着性を評価した。
結果を表10に示す。
前記の負極板または正極板を直径14mmの円盤状に打ち抜いて、重量20mg/14mmφのコイン状の電極を得た。
前記で作製したコイン電池を使用し、この電池を0.2ItAで、−Δ10mVとなるまで充電し、その後、0.2ItAで、電圧が1Vになるまで放電した。このサイクルを500回繰り返し、初期の電池容量に対する500サイクル後の容量(%)を評価した。
評価結果を表11に示す。
攪拌機、還流冷却付きのセパラブルフラスコに蒸留水295重量部とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4.0部を仕込み、窒素ガスで置換した後、80℃に昇温した。次いでアゾビスイソブチロニトリル3.0部を添加してから下記組成のビニル単量体乳化物Aを3時間かけて連続的に添加し、更に3時間保持して、重合を完結させた。さらに下記組成のビニル単量体乳化物Bを2時間かけて連続的に滴下し、更に2時間保持して、重合を完結させた。次いで40℃以下に冷却後、アンモニア水にてpH9.0に調製し、固形分が32.5%である有機粒子からなる分散液を得た。
(ビニル単量体乳化物A)
n−ブチルアクリレート 68.0部
スチレン 20.0部
アクリロニトリル 4.0部
メチルメタクリレート 4.0部
イタコン酸 4.0部
ジビニルベンゼン 1.0部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 1.0部
蒸留水 40.0部
(ビニル単量体乳化物B)
メチルメタクリレート 40.0部
スチレン 30.0部
ジビニルベンゼン 1.0部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.7部
蒸留水 40.0部
実施例3または比較例2で得られたエマルション(水分散体)2重量部に、活物質BとしてLiFePO4(Formosa Energy&Material Technology Co.,Ltd製STCM30050)94重量部、導電助剤Cとしてアセチレンブラック(デンカブラック)3重量部と増粘剤カルボキシメチルセルロース1重量部と蒸留水を加え、固形分濃度63重量%のLiFePO4合材スラリー(水性ペースト)を調製した。なお、得られた合材スラリーを、それぞれスラリーF、スラリーGとした。
このときのアルミ箔の外観を下記に従って、評価した。結果を表12に示す。
○:均一な塗膜表面
△:濃淡のある塗膜表面
×:ヒビのある塗膜表面
導電助剤としてアセチレンブラック50重量部に実施例3または比較例2のエマルションを50重量部と蒸留水を添加し固形分濃度25重量%の電気化学セル用ペースト(水性ペーストFおよびG)を調製した。次にこの電気化学セル用ペーストを厚さ30μmのアルミ箔に乾燥後の膜厚が30μmと10μmとなるように塗工、乾燥、圧縮プレスした。
前記で各々作製した塗工箔を切り、瞬間接着剤にてガラスプレパラートに貼り付け塗工箔を固定し評価用サンプルとした。評価用サンプルを塗膜剥離強度測定装置サイカスDN20型(ダイプラウインテス(株)製)で合材層と集電体との界面を水平速度2μm/秒の速度で切削し、切削に必要な水平方向の力から合材層と集電体との界面の剥離強度を測定した。剥離強度の3回の平均値をとり密着性を評価した。なお、合材層とは、水性ペーストをアルミ箔(集電体)に塗工してプレスした塗工部分を指す。また、上記と同様の方法にてアルミ箔の外観を評価した。
結果を表12に示す。
Claims (13)
- 少なくとも、
(i)不飽和カルボン酸類の重合性単量体と、(ii)(メタ)アクリルアミドと、(iii)水酸基含有ビニル単量体、スチレンおよび(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる1種以上のビニル単量体とを含む単量体群を重合してなる水溶性樹脂(a)と、
アクリル酸およびメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種と、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリルおよびメタアクリロニトリルから選ばれる少なくとも1種とを含むビニル単量体を乳化重合してなる有機粒子(b)(ただし、水溶性樹脂(a)を除く)と
を含むことを特徴とする電気化学セル用アクリル系水分散体。
(ただし、含フッ素系水分散体を除く)。 - 前記不飽和カルボン酸類の重合性単量体(i)には、モノカルボン酸類を含む重合性単量体を含み、
前記水溶性樹脂(a)を構成する全単量体100重量%に対して、ジカルボン酸類を含む重合性単量体が10重量%以下であり、
前記有機粒子(b)を構成する全単量体100重量%に対して、ジカルボン酸類を含む重合性単量体が10重量%以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気化学セル用アクリル系水分散体。 - 前記水溶性樹脂(a)を構成する全単量体100重量%に対して、共役ジエン系モノマーが10重量%以下であり、
前記有機粒子(b)を構成する全単量体100重量%に対して、共役ジエン系モノマーが10重量%以下である、
ことを特徴とする請求項2に記載の電気化学セル用アクリル系水分散体。 - 前記水溶性樹脂(a)が、水を主とする媒体中で10重量%の濃度に於いて、波長400nmの光の透過率が85%以上となる樹脂であり、
前記有機粒子(b)が、水を主とする媒体中で粒子状の形態を形成し、かつ10重量%の濃度に於いて、波長400nmの光の透過率が85%以下となる樹脂である、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気化学セル用アクリル系水分散体。 - pHが7から11の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電気化学セル用アクリル系水分散体。
- 前記水溶性樹脂(a)と前記有機粒子(b)の重量比率が、(a)10〜90重量%および(b)90〜10重量%(ただし、(a)と(b)の合計を100重量%とする)であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電気化学セル用アクリル系水分散体。
- さらに、界面活性剤(x)及び粘度調整剤(y)から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の電気化学セル用アクリル系水分散体。
- (i)不飽和カルボン酸類の重合性単量体と、(ii)(メタ)アクリルアミドと、(iii)水酸基含有ビニル単量体、スチレンおよび(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる1種以上のビニル単量体とを含む単量体群を重合して水溶性樹脂(a)を得る工程と、
該水溶性樹脂(a)の存在下で、アクリル酸およびメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種と、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリルおよびメタアクリロニトリルから選ばれる少なくとも1種とを含むビニル単量体を乳化重合して有機粒子(b)(ただし、有機粒子(b)は、水溶性樹脂(a)と異なる)を得る工程
を含むことを特徴とする電気化学セル用アクリル系水分散体の製造方法。
(ただし、含フッ素系水分散体の製造方法を除く)。 - アクリル酸およびメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種と、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリルおよびメタアクリロニトリルから選ばれる少なくとも1種とを含むビニル単量体を乳化重合して有機粒子(b)を得る工程と、
該有機粒子(b)の存在下で、(i)不飽和カルボン酸類の重合性単量体と、(ii)(メタ)アクリルアミドと、(iii)水酸基含有ビニル単量体、スチレンおよび(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる1種以上のビニル単量体とを含む単量体群を重合して、水溶性樹脂(a)(ただし、水溶性樹脂(a)は、有機粒子(b)と異なる)を得る工程
を含むことを特徴とする電気化学セル用アクリル系水分散体の製造方法。
(ただし、含フッ素系水分散体の製造方法を除く)。 - 請求項1〜7のいずれか一項に記載の電気化学セル用アクリル系水分散体と、活物質(B)及び導電助剤(C)から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする電気化学セル用水性ペースト。
- 前記電気化学セル用アクリル系水分散体に含まれる水100重量部に対して、0〜40重量部の有機溶剤を含むことを特徴とする請求項10に記載の電気化学セル用水性ペースト。
- 請求項10または11に記載の電気化学セル用水性ペーストを用いてなる電気化学セル用極板。
- 請求項12に記載の電気化学セル用極板を用いてなる二次電池。
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