JP5943035B2 - 難燃性樹脂組成物、難燃性絶縁シート、フィルムおよび電気・電子機器 - Google Patents
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Description
しかしながら、ポリカーボネート樹脂の難燃性を向上させるために、臭素化ビスフェノールAのカーボネート誘導体のオリゴマーあるいはポリマーを多量に配合する必要があり、成形品の耐衝撃性が低下し、割れが発生しやすいという問題がある。また、臭素を含む多量のハロゲン系化合物を配合することから、燃焼時にハロゲンを含むガスが発生し、人体に有害なハロゲン化ガスが発生するなど多くの問題があった。そのため、ハロゲンを含むガスが発生しない難燃剤を用いた難燃性樹脂組成物が求められている。
特許文献1には、難燃剤として、ポリリン酸アンモニウムと、リン含有化合物と、窒素含有環状化合物とを含む熱可塑性樹脂組成物が記載されている。窒素含有環状化合物としてはメラミンシアヌレートが挙げられている。
特許文献2、3には、ポリカーボネート樹脂等と、難燃剤としてリン酸エステル化合物と、繊維状物質とを含む難燃性樹脂組成物が記載されている。
特許文献1においては、難燃剤として多量のポリリン酸アンモニウムに窒素含有環状化合物が併用されているものの、耐熱性および難燃性に改善すべき点があった。
特許文献2,3において、使用されている芳香族ジホスフェート等の低分子量リン酸エステルでは、難燃性を付与するために大量に添加する必要があり耐熱性や機械的特性の低下を引き起こす可能性があった。
本発明者らは、このような状況において鋭意研究したところ、以下のような点を見出した。
通常、樹脂成形体を難燃化するために、リン系、シリコーン系、有機金属塩系の難燃剤などが用いられている。これらの難燃化剤を配合することにより、燃焼時に成形体表面に炭化層を形成することができる。成形体表面に形成された炭化層は、炎から成形体への伝熱を遮断し、さらに成形体から可燃性気体の放出を抑制することができるので、樹脂成形体を難燃化することできると考えられる。しかしながら、樹脂と上記難燃剤のみでは、燃焼時の熱により成形体が溶融変形し、炭化層(チャー)が形状を維持することができず、効果的な難燃性を発現することができないことがあった。
時に安定した炭化層を形成することができる。しかしながら、依然として難燃性には改良の余地があり、炭化層を形成する難燃機構自体を見直す必要があった。
また、難燃性を付与したシートに隠蔽性を付与するため、種々の色材を添加すると、付与した難燃性が低下するということがあった。
本発明者らは、鋭意研究したところ、ポリカーボネート樹脂に、所定の平均粒子径を持つ窒素含有化合物からなる難燃剤および色材を添加することにより、環境に負荷を与えるリンおよびハロゲン化合物を一切含まず、隠蔽性と難燃性を両立できることを見出した。
(1)ポリカーボネート樹脂と、平均粒子径が0.01μm以上10μm以下である難燃剤と、色材を含み、
前記難燃剤は窒素含有化合物からなることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
(2)前記窒素含有化合物は、トリアジン骨格を有する(1)に記載の難燃性樹脂組成物。
(3)前記窒素含有化合物は、メラミン系化合物である(1)または(2)に記載の難燃性樹脂組成物。
(4)前記メラミン系化合物が、メラミン、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレートおよびこれらの誘導体よりなる群から選択された1種以上である(3)に記載の難燃性樹脂組成物。
(5)ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、前記難燃剤を0.1重量部以上30重量部以下含む(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
(6)色材は、カーボンブラックである(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
(7)ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、前記色材を0.3重量部以上3重量部以下含む(1)乃至(6)のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
(8)ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、5×103以上1×105以下である(1)乃至(7)のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
(9)(1)乃至(8)のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を成形してなる難燃性絶縁シートまたはフィルム。
(10)(9)に記載のシートまたはフィルムの厚さが、10μm以上500μm以下である難燃性絶縁シートまたはフィルム
(11)(9)または(10)に記載の難燃性絶縁シートまたはフィルムを用いた電気・電子機器。
本発明の難燃性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂と、所定の平均粒子径を持つ窒素含有化合物からなる難燃剤および色材とを含む。
(ポリカーボネート樹脂)
本発明において使用されるポリカーボネート樹脂は、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる。
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。これらは単独だけでなく2種類以上混合して使用してもよい。
粘度平均分子量(M)は、高分子の溶液の粘度(η)から、η=kMα(kおよびαは高分子に固有の定数)の式を利用して算出される。
また、かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し分子量調節剤、触媒等を必要に応じて添加しても差し支えない。
なお、本発明においては、ポリカーボネート樹脂と他の樹脂とを併用することができる。本発明においては、ポリカーボネート樹脂を含むことにより、耐熱性、折り曲げ加工性に優れる。
上記ポリオレフィン樹脂としては、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸変性ポリエチレン、カルボン酸変性ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体等が挙げられる。これらの樹脂は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明において用いられる難燃剤は、窒素含有化合物からなる。難燃剤が実質的に窒素含有化合物からなることにより、色材を付与した場合にも十分な難燃性を持つ難燃性絶縁シートまたはフィルムが得られる。
窒素含有化合物としては、上記効果の観点から、トリアジン骨格を有する化合物を用いることが好ましい。
トリアジン骨格を有する化合物としては、メラミン;ブチルメラミン、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、リン酸メラミン
などのメラミン誘導体;シアヌル酸;メチルシアヌレート、ジエチルシアヌレート、トリメチルシアヌレート、トリエチルシアヌレートなどのシアヌル酸誘導体;イソシアヌル酸;メチルイソシアヌレート、N,N’−ジエチルイソシアヌレート、トリスメチルイソシアヌレート、トリスエチルイソシアヌレート、ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレートなどのイソシアヌル酸誘導体;メラミンシアヌレート;メラミンイソシアヌレートなどを挙げることができる。これらの化合物は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
難燃剤の平均粒子径は、0.01μm以上10μm以下、好ましくは0.05μm以上5μm以下、さらに好ましくは0.2μm以上2μm以下とすることができる。この範囲の平均粒子径を有する難燃剤を用いることにより、色材を付与した場合にも十分な難燃性を得ることができる。平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定することができる。
難燃剤の平均粒子径が、上記範囲であることにより、樹脂中での粒子の分散が良好であり、また、レーザー回折・散乱法で粒径を測定することが容易に行える。
本発明において用いられる色材は、一般に熱可塑性樹脂の色材として利用されるものであれば特に限りはなく、隠蔽性を付与するため有機系、無機系の顔料、染料などの色材を好適に使用できる。
本発明では高い隠蔽性を付与するため、黒色系色材を使用することが好ましい。黒色系色材としては、カーボンブラック、チタンブラック、酸化鉄、黒鉛などが挙げられ、カーボンブラックを使用することが更に好ましい。色材は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
色剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、0.1重量部以上10重量部以下であり、好ましくは0.3重量部以上5重量部以下、さらに好ましくは0.5重量部以上3重量部以下含むことができる。上記範囲とすることにより、隠蔽性と難燃性が発現し、両者の特性を両立させることができる。
本発明の難燃性樹脂組成物には、所望により通常に使用される添加剤、例えば安定剤、滑剤、加工助剤、帯電防止剤、酸化防止剤、中和剤、紫外線吸収剤、分散剤、増粘剤を含有させることもできる。
本発明の難燃性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、メラミンシアヌレートを0.1重量部以上30重量部以下、好ましくは1重量部以上20重量部以下、さらに好ましくは2重量部以上10重量部以下含み、カーボンブラックを0.1重量部
以上10重量部以下、好ましくは0.3重量部以上5重量部以下、さらに好ましくは0.5重量部以上3重量部以下含有する。
そして、ポリカーボネート樹脂およびメラミンシアヌレートとしては、以下の物性をいずれも満たすことが好ましい。なお、これらの数値範囲は、任意に組み合わせることができる。
・ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量:5×103以上1×105以下、好ましくは1.2×104以上3.5×104以下、より好ましくは1.5×104以上3.0×104以下、さらに好ましくは1.8×104以上2.8×104以下である。
・メラミンシアヌレートの平均粒子径:0.01μm以上10μm以下、好ましくは0.05μm以上5μm以下、さらに好ましくは0.2μm以上2μm以下である。
なお、粘度平均分子量(M)は、高分子の溶液の粘度(η)から、η=kMα(kおよびαは高分子に固有の定数)の式を利用して算出される。
本発明の難燃性樹脂組成物を用いて難燃性絶縁シートまたはフィルムを製造する方法は、特に限定されないが、カレンダリング法、押し出し法、プレス法、キャスト法などを用いることができる。
難燃性絶縁シートまたはフィルムの厚さについては特に規定するものではないが、好ましくは10μm以上500μm以下、さらに好ましくは25μm以上250μm以下である。
得られた難燃性絶縁シートまたはフィルムは、電気・電子機器において難燃性が必要とされる部位に用いることができる。
以下、本発明の参考形態を付記する。
<1>ポリカーボネート樹脂と、平均粒子径が0.01μm以上10μm以下である難燃剤と、色材を含み、前記難燃剤は窒素含有化合物からなる難燃性樹脂組成物。
<2>前記窒素含有化合物は、トリアジン骨格を有する<1>に記載の難燃性樹脂組成物。
<3>前記窒素含有化合物は、メラミン系化合物である<1>または<2>に記載の難燃性樹脂組成物。
<4>前記メラミン系化合物が、メラミン、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレートおよびこれらの誘導体よりなる群から選択された1種以上である<3>に記載の難燃性樹脂組成物。
<5>ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、前記難燃剤を0.1重量部以上30重量部以下含む<1>乃至<4>のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
<6>前記色材は、カーボンブラックである<1>乃至<5>のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
<7>ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、前記色材を0.1重量部以上10重量部以下含む<1>乃至<6>のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
<8>前記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が、5×10 3 以上1×10 5 以下である<1>乃至<7>のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
<9><1>乃至<8>のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を成形してなる難燃性絶縁シートまたはフィルム。
<10><9>に記載のシートまたはフィルムの厚さが、10μm以上500μm以下である難燃性絶縁シートまたはフィルム。
<11><9>または<10>に記載の難燃性絶縁シートまたはフィルムを用いた電気・電子機器。
以下に、実施例において用いた材料を記載した。なお、表1に使用した各材料とその添加量を重量部で示した。
・ポリカーボネート樹脂1
製品名:E−2000、粘度平均分子量:27000、
三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製
・ポリカーボネート樹脂2
製品名:H−3000、粘度平均分子量:20000、
三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製
製品名:MC−6000、
日産化学工業株式会社製を乾式粉砕したメラミンシアヌレート粒子、
平均粒子径:1.2μm、最大粒子径6μm
・難燃剤2(メラミンシアヌレート)
製品名:MC−6000、
日産化学工業株式会社製を乾式粉砕したメラミンシアヌレート粒子、
平均粒子径:0.2μm、最大粒子径4.5μm
・難燃剤3(メラミンシアヌレート)
製品名:MC−6000、日産化学工業株式会社製、
平均粒子径:2.0μm、最大粒子径15μm
・難燃剤4(メラミンシアヌレート)
製品名:MC−4000、日産化学工業株式会社製、
平均粒子径:15μm、最大粒子径50μm
・難燃剤5(リン酸エステル)
製品名:SP−100、大塚化学株式会社製
・難燃剤6(ポリテトラフルオロエチレン)
製品名:ポリフロンFA500C、ダイキン工業株式会社製
・色材(カーボンブラック)
製品名:三菱カーボン#40、三菱化学株式会社製
表1の組成にしたがって、2軸押出機により溶融混練しペレットを製造した。製造したペレットを異方向2軸押出機とT型ダイス等を用いてシート状に押し出し、所定の厚みに調整した。得られた難燃性絶縁シートを以下の方法により評価した。評価結果を表1に示した。
押出した所定の厚みの難燃性絶縁シートを用いて、UL94VTM試験の規定に準じた試験片を作製し、垂直燃焼試験を実施した。
・隠蔽性評価
上記作製した難燃性絶縁シートを用いて、ANSI PH 2.19の規定に準拠したエックスライト社製透過濃度計341にて測定を実施した。
表1に記載の材料および添加量とした以外は、実施例1と同様に難燃性絶縁シートを製造した。評価結果を表1に示した。
実施例1〜9では、難燃性と隠蔽性の両立が可能である難燃性絶縁シートを得ることができた。
比較例1のように請求範囲外の平均粒子径の難燃剤を使用した場合には難燃性がVTM−2であり不十分であった。また、比較例2のように色材を含まない場合には隠蔽性が不十分であった。比較例3のようにリン系難燃剤を使用した場合では難燃性がVTM−2であり不十分であった。
Claims (7)
- ポリカーボネート樹脂と、平均粒子径が0.01μm以上10μm以下である難燃剤と、色材と、を含む難燃性樹脂組成物であって、前記難燃剤は窒素含有化合物からなり、前記色材はカーボンブラックであり、前記色材の配合量は、前記ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、0.1重量部以上1.5重量部以下であり、前記難燃性樹脂組成物を成形してなる難燃性絶縁シートまたはフィルムの隠蔽性が1.04以上であることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
- 前記窒素含有化合物は、トリアジン骨格を有する請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記窒素含有化合物は、メラミン系化合物である請求項1または2のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記メラミン系化合物が、メラミン、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレートおよびこれらの誘導体よりなる群から選択された1種以上である請求項3に記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記難燃剤の配合量は、前記ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、0.1重量部以上30重量部以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
- 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を成形してなる難燃性絶縁シートまたはフィルム。
- 請求項6に記載の難燃性絶縁シートまたはフィルムを用いた電気・電子機器。
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