JP5722671B2 - 難燃性熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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本発明でA成分として使用されるポリカーボネート樹脂は、通常使用されるビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂以外にも、他の二価フェノールを用いて重合された、高耐熱性または低吸水率の各種のポリカーボネート樹脂であってもよい。ポリカーボネート樹脂はいかなる製造方法によって製造されたものでもよく、界面重縮合の場合は通常一価フェノール類の末端停止剤が使用される。ポリカーボネート樹脂はまた3官能フェノール類を重合させた分岐ポリカーボネート樹脂であってもよく、更に脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸、または二価の脂肪族または脂環族アルコールを共重合させた共重合ポリカーボネートであってもよい。ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、好ましくは13,000〜40,000、より好ましくは15,000〜38,000である。芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液から20℃で求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。かかるポリカーボネート樹脂の詳細については、特開2002−129003号公報に記載されている。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−4M0.83
c=0.7
(1)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称)成分が20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつ9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称)成分が20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
(2)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、ビスフェノールA成分が10〜95モル%(より好適には50〜90モル%、さらに好適には60〜85モル%)であり、かつBCF成分が5〜90モル%(より好適には10〜50モル%、さらに好適には15〜40モル%)である共重合ポリカーボネート。
(3)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、BPM成分が20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつ1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン成分が20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
本発明でB成分として使用されるのはG.I.値が1.5以下の窒化ホウ素である。ここでG.I.値とは、窒化ホウ素の結晶性を表す指標として用いられるGraphiteIndexのことであり、粉末X線回折で測定された回折線強度から、下記式により算出され、この値が小さいほど結晶性が高いことを表している。
G.I.=(I100+I101)/I102
(式中、I100、I101、I102は各々、(100)、(101)、(102)面の回折線強度である。)
窒化ホウ素としては立方晶窒化ホウ素、六方晶窒化ホウ素等が挙げられ、六方晶窒化ホウ素が好ましい。
本発明でC成分として使用されるリン系難燃剤としては、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、およびホスファゼンオリゴマーなどが好適に例示される。更にリン酸エステルとしては、下記式(I)で示される化合物が好適である。
本発明のD成分である含フッ素滴下防止剤としては、フィブリル形成能を有する含フッ素ポリマーを挙げることができ、かかるポリマーとしてはポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン系共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、など)、米国特許第4379910号公報に示されるような部分フッ素化ポリマー、フッ素化ジフェノールから製造されるポリカーボネート樹脂などを挙げることができる。中でも好ましくはポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと称することがある)である。
本発明のE成分であるリン系安定剤は、更に良好な剛性かつ熱安定性を有する熱伝導性樹脂組成物を得るため含有することが好ましい。リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステルなどが例示される。
本発明のF成分である無機充填剤は、更に良好な剛性を有する熱伝導性樹脂組成物を得るため含有することができる。無機充填剤としては、ガラス繊維(チョップドストランド)、炭素繊維、金属被覆炭素繊維、金属繊維、ワラストナイト、ゾノトライト、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー等の繊維状充填剤、タルク、マイカ、ガラスフレーク、グラファイトフレーク等の板状充填剤、ガラス短繊維(ミルドファイバー)、異形断面ガラス繊維、天然黒鉛、天然膨張黒鉛、人造黒鉛、人造膨張黒鉛、炭素短繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、シリカ粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、酸化チタン等の粒子状充填剤を挙げることができる。
(ヒンダードフェノール系安定剤)
本発明の樹脂組成物は、更にヒンダードフェノール系安定剤を含有することにより、例えば成形加工時の色相悪化や長期間の使用における色相の悪化などの効果が更に発揮される。ヒンダードフェノール系安定剤としては、例えば、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−へキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−トリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが例示される。これらはいずれも入手容易である。上記ヒンダードフェノール系安定剤は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
本発明の樹脂組成物には、エラストマーを本発明の効果を発揮する範囲において、少割合使用することもできる。
かかるエラストマーとしては、例えばイソブチレン/イソプレンゴム、スチレン/ブタジエンゴム、エチレン/プロピレンゴム、アクリル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、コアシェル型のエラストマーであるMBS(メタクリル酸メチル/ステレン/ブタジエン)ゴム、MAS(メタクリル酸メチル/アクリロニトリル/スチレン)ゴム等が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えばA成分〜D成分、および任意に他の成分をそれぞれV型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などの予備混合手段を用いて充分に混合した後、場合により押出造粒器やブリケッティングマシーンなどにより造粒を行い、その後ベント式二軸ルーダーに代表される溶融混練機で溶融混練、およびペレタイザー等の機器によりペレット化する方法が挙げられる。
また、上記で得られた樹脂組成物はUL94試験において1.5mmV−0となることが好ましく、1.2mmV−0がより好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品は、通常そのペレットを射出成形して得ることができる。かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体を注入する方法を含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形(RHCM成形、ヒートアンドクール成形やアクティブ温調成形など)、ヒートアンドヒート成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などを挙げることができる。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。また本発明によれば、本発明の熱可塑性樹脂組成物を押出成形し、各種異形押出成形品、シート、フィルムなどの形とすることもできる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども使用可能である。さらに特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の熱可塑性樹脂組成物を回転成形やブロー成形などにより成形品とすることも可能である。さらに本発明によれば、熱可塑性樹脂組成物をプレス成形などにより成形品とすることも可能である。
さらに本発明の成形品には、各種の表面処理を行うことが可能である。表面処理としては、ハードコート、撥水・撥油コート、親水性コート、帯電防止コート、紫外線吸収コート、赤外線吸収コート、並びにメタライジング(蒸着など)などの各種の表面処理を行うことができる。表面処理方法としては、液剤のコーティングの他、蒸着法、溶射法、およびメッキ法が挙げられる。蒸着法としては物理蒸着法および化学蒸着法のいずれも使用できる。物理蒸着法としては真空蒸着法、スパッタリング、およびイオンプレーティングが例示される。化学蒸着(CVD)法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、および光CVD法などが例示される。特に本発明の樹脂組成物は、ハウジング成形品に好適であることから、電磁波遮蔽用メッキが施されることが好ましく、本発明の樹脂組成物はかかるメッキ特性においても良好である。
米国アンダーライターラボラトリー社の定める方法(UL94)により、試験片厚さ1.5mmにおける垂直燃焼試験を実施して評価した。なお、V−0、V−1、V−2 のいずれの判定にもあてはまらないものについてはnot Vと表記した。
角板(50mm×100mm×4mmt)を実施例記載の条件で成形し、サンプルの流動方向の熱伝導率をレーザーフラッシュ法にて測定した。
ISO規格のISO75−1および2に従って作成された厚み4mmの試験片を用い、1.80MPaの荷重で荷重たわみ温度を測定した。荷重たわみ温度は70℃〜150℃であることが好ましく、より好ましくは90℃〜130℃であり、100℃〜120℃がさらに好ましい。荷重たわみ温度が上記範囲にあると耐熱性と溶融流動性のバランスが良好である。
JIS規格のJIS K6911に従って、作成された厚み2mmの試験片を用いて、500Vを電極間に印加し、1分後の抵抗値を測定した。
(A成分)
A−1:ビスフェノールAおよび末端停止剤としてp−tert−ブチルフェノール、並びにホスゲンから界面重縮合法で合成した直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製:パンライトL−1225WX(商品名)、粘度平均分子量19,800)
(B成分)
B−1:窒化ホウ素1(デンカ(株)製:SGP(商品名)、平均粒径18μm、G.I.値0.9)
B−2:窒化ホウ素2(國研▲気▼化股▲分▼有限公司製:NW04(商品名)、平均粒径4μm、G.I.値3.3)
B−3:窒化ホウ素3(國研▲気▼化股▲分▼有限公司製:NW−1525(商品名)、平均粒径200μm、G.I.値11.5)
(C成分)
C−1:ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(大八化学工業(株)製:CR−741(商品名))
C−2:レゾルシノールビス(ジ−2,6−キシリルホスフェート)(大八化学工業(株)製:PX200(商品名))
(D成分)
D:フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(ダイキン工業(株)製:ポリフロンMPA FA500)
(E成分)
E:リン系安定剤(大八化学工業(株)製:TMP トリメチルホスフェート)
(F成分)
F−1:タルク((株)勝光山鉱業所製:SGA)
F−2:天然膨張黒鉛(西村黒鉛(株)製:E40)
(その他の成分)
G:離型剤( (株)製:理研ビタミン(株)社製EW400)
(ポリカーボネート樹脂組成物の製造)
A成分、C成分、D成分、および任意に他の添加剤を、表1に記載された各配合量でV型ブレンダーを用いて充分に予備混合(いわゆるドライブレンド)した。その際、配合するD成分及びE成分などの単独ではブレンドし難い添加剤は、A成分の一部をドライブレンドして、パウダーで希釈された添加剤のマスターバッチを作成し、その後、A成分、B成分、C成分、および他の添加剤とのブレンドを行った。このブレンド物をベント式二軸押出機で溶融混練し、溶融混練後の組成物をペレタイザーを使用しペレット化した。また、配合する成分に液状のものがある場合には、溶融押出機への供給に液注装置を使用した。特に本発明のC成分に含まれるリン酸エステルオリゴマーは縮合度nの分布によっては固体状でなく液状となる。したがって押出機への供給に温調装置が設置されている液注装置を使用した。そのため、本発明で使用される押出機は、液体注入用の原料供給口を持つものを使用し、かかるリン酸エステルオリゴマーは、通常の押出機のバレルに設けたフィード口から、80℃の温度に加熱されたものを液体運搬装置で押出機内の吐出圧以上の圧力で供給した。ベント式二軸押出機としては、径30mmφのベント式二軸押出機[(株)日本製鋼所製TEX30XSST]を用いた。また、押出条件は、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数250rpm、吐出量25kg/h、およびベント減圧度3kPaでとし、押出を行った。押出された樹脂は、ストランドを形成した後かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化した。
Claims (8)
- (A)ポリカーボネート樹脂(A成分)40〜80重量部、および(B)G.I.値が1.5以下の窒化ホウ素(B成分)20〜60重量部の合計100重量部に対し、(C)リン系難燃剤(C成分)1〜25重量部および(D)含フッ素滴下防止剤(D成分)0.01〜1重量部を含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
- UL94試験において1.5mmV−0であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- A成分とB成分の合計100重量部に対し、(E)リン系安定剤(E成分)0.01〜1重量部を含有してなる請求項1〜2のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- A成分とB成分の合計100重量部に対し、(F)無機充填剤(F成分)0.1〜100重量部を含有してなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 熱伝導率が1.0W/mK以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる射出成形品。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物からなるプレス成形品。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる押出成形品。
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