JP5941496B2 - 成長ホルモン製剤 - Google Patents

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Description

本発明は、ヒト又は動物の身体への投与に適した成長ホルモン(GH)の液体製剤に関する。より詳細には、本発明は、製薬的に許容され、好ましくはさらに評価しうる活性低下又は評価しうる安定性低下を起こすことなく様々な製造処理段階に供することができる、ヒト成長ホルモン(hGH)の液体製剤に関する。
天然のhGHは、191個のアミノ酸から成る1本のポリペプチド鎖の蛋白質である。蛋白質は2つのジスルフィド結合によって内的に架橋されており、単量体で分子量が22kDaである。動物種のGHはアミノ酸配列がヒトと相同性が高く、それ故その特性が非常に類似している。
GHの主要な生物学的作用は、身体の一連の器官及び組織全体にわたって成長を促進することである。GH応答性の器官又は組織は、肝臓、腸、腎臓、筋肉、結合組織及び骨格を含む。
下垂体機能低下性小人症は、その状態に罹患している対象者にGHを投与することによって容易に治療される病気である。組換え手法によって多量のhGHが生産されるまでは、ヒト死体から下垂体の煩雑な抽出方法によってごく限られた量のhGHしか調製することができなかった。この方法の実施は、例えばクロイツフェルト−ヤコブ病(CJD)の原因となる感染性因子と接触するという危険性を伴い、またこれらの因子はGHを接種する患者に移行しうる。hGH遺伝子の単離と細胞培養においてhGHを発現する形質転換宿主細胞の構築は、より信頼しうる、安全でコスト効果的な下垂体機能低下性小人症の治療のみならず、他の疾患や状態の治療にもhGHを使用する可能性を切り開いた。
hGHのみならず、医薬品の蛋白質の水溶液製剤に関わる長年認識されてきた問題は、一定期間の貯蔵による不安定性であった。水溶液中のhGHは様々な分解変化を受けることが知られている。脱アミド化のような化学変化が起こり、これは貯蔵の際の溶液のpHに関連すると考えられる。メチオニン残基の酸化も起こりうる。また加水分解反応によるペプチド骨格のクリッピング(切り取り)の可能性も存在する。また、例えば不溶性物質の生成をもたらす、凝集を含みうる物理的変化も存在する。
上述した不安定性の問題をどのように取り扱うかについて当初に提案されたのは凍結乾燥であるが、これは言うまでもなく、生じた凍結乾燥品を投与の直前又は少し前に還元する必要があることを意味する。患者が自宅で日常的に自己投与をする状況では、これは一般に、患者が凍結乾燥製剤を水溶液に還元する作業を担うことを意味する。これは患者にとって不便であり、不注意、詳細や指示の理解不足あるいは単なる誤解による不適切な還元の危険性を伴う。
US 4 968 299号(Kabi Pharmacia)は、患者が凍結乾燥製剤の還元を行うために使用する装置を述べており、それによって還元の際の誤りの可能性を低下させることを目指している。その場合でも、還元の必要性そのものが患者にとっては不都合であり、還元したhGHは2〜8℃で保存したとき3週間しか安定ではない。それ故数ヵ月間にわたって患者が有効な投与を行うためには詳細と指示に対する細心の注意が必要であり、そのため治療計画を遵守しない場合には深刻な危険性が存在した。
いずれの場合も、凍結乾燥は、コストと時間がかかる製造段階を有するという難点がある。
それ故患者の自主投与を容易にするために、直ちに使用できる形態での十分に安定な水性hGH製剤を提供することに焦点があてられてきた。
水溶液中での蛋白質の不安定性は、特にhGHに関連するものではなく、一般的な現象であると評価された。
EP−A−0 131 864号(Hoechst Aktiengesellschaft)は、界面活性剤を使用することにより、水溶液中で8.5kDa以上の蛋白質の凝集を防ぐことを記述している。
EP−A−0 211 601号(International Minerals & Chemical Corporation)は、おそらく主として持続放出性製剤に関するものであるが、非イオン性界面活性剤、特に一部のポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、例えばPLURONIC(BASFの商標)又はGENAPOL(Hoechstの商標)ブロックコポリマーと共に製剤することにより、いかにしてGHを液体として溶液中で安定化できるかを述べている。
WO 94/03198号(Genentech)は、液体製剤におけるhGH安定剤として非イオン性界面活性剤を使用することについてのこれまでの教示に従ったもう1つの開示である。製剤中の0.1〜5%(w/v)の範囲の非イオン性界面活性剤は、製剤がGH蛋白質の変性を起こすことなく剪断及び表面応力を受けることを可能にすると言われている。特に、界面活性剤含有製剤は肺投与及び無針ジェット式注射器ガンにおいて有用であると認められている。
しかし、界面活性剤は毒性物質であり、その使用は避けるべきであるか、若しくは少なくともできる限り最小限に抑えるべきである。これは、製剤を毎日又は高頻度に投与しなければならない場合、特に小児及び慢性治療に関わる場合に重要である。
水性hGHを安定化する様々な他の方法が提案されてきた。WO 89/09614号(Genentech)は、グリシン、マンニトール及び緩衝液を含み、hGH:グリシンのモル比が1:50から1:200であるhGHの製剤を教示している。
EP−A−0 303 746号(International Minerals and Chemical Corporation)は、水性GHが、ポリオル、例えば非還元糖、糖アルコール、糖酸、ラクトース、ペンタエリトリトール、水溶性デキストラン及びFicoll;アミノ酸、例えばグリシン、アルギニン及びベタイン;生理的pHの荷電側基を持つアミノ酸ポリマー;そして最後にコリン誘導体、例えば塩化コリン、二水素性クエン酸コリン又はムチン酸ジコリンと共に製剤することによって安定化されうることを教示している。上記のポリマー物質の多くは、患者への投与において何らかの危険性を担うと考えられる。製薬的な規制によって、患者に対する危険性を減じるために不必要な添加物、特に合成添加物(例えばペンタエリトリトール)を使用してはならないと要請されている。開示の中で提案されている安定剤の多くは臨床的に許容されないと考えられるので製薬上許容される製剤を製造することは不可能であろう。
WO 92/17200号(Genentech)は、液体中のみならず凍結乾燥製剤におけるhGHの安定化に関する。その示唆は、安定な亜鉛:hGHのダイマーを作製することである。亜鉛:hGHダイマーは2個の亜鉛イオンと2個のhGH分子から作られる。
WO 93/12811号(Novo Nordisk)は、アスパラギンを安定剤及び緩衝物質として使用する液体hGH製剤を開示している。
WO 93/19776号(Kabi Pharmacia)は、水性hGH製品が、クエン酸緩衝液と共に製剤したときリン酸緩衝液と製剤した場合よりも安定であるという全く予想外の所見を教示している。
米国特許第4968299号明細書 欧州特許第0131864号明細書 欧州特許第0211601号明細書 国際公開第94/03198号 国際公開第89/09614号 欧州特許第0303746号明細書 国際公開第92/17200号 国際公開第93/12811号 国際公開第93/19776号
本発明の目的は、患者が特別な調製あるいは還元手順を必要とせずに直ちに使用できる、十分に安定なhGH製剤を提供することである。本発明のもう1つの目的は、自宅で家庭用冷蔵庫において少なくとも2〜3ヵ月間保存することができる製剤を提供することである。本発明のさらにもう1つの目的は、許容されないGH活性の低下又は許容されない不安定性を伴わずに、特に許容されない凝集が生じることなく、患者の使用のために調剤して、カートリッジに充填することができる、バルク液体製剤を提供することである。本発明のさらなる目的は、製薬上許容されない又は望ましくない成分の使用を避ける又は最小限に抑える、十分に安定な液体製剤を提供すること、言い換えると、製薬上より一層許容される製剤を提供することである。
本発明のさらなる目的は、長期間、例えば6又は18ヵ月まで冷蔵庫で保存した場合、あるいは一定期間、例えば数日間、数週間又は数ヵ月間、冷蔵庫の外で保存した場合の結晶形成の問題を回避する液体製剤を提供することである。
当該技術における既存の知識に全く反して、本発明者は意外にも、上述した目的を実現するために、実際に上記溶液において単にhGHとリン酸緩衝液以外には種々の付加安定剤を使用する必要がないことを明らかにした。さらに、本発明は、GH水溶液の安定性のためにいかに界面活性剤が重要であるか、そしてまたいかにリン酸緩衝液がクエン酸緩衝液に比べて良好な安定性をもたらすことができないかについての先行技術の教示に反論するものである。
従って、1つには、本発明は、基本的にリン酸緩衝液中の成長ホルモンから成る液体成長ホルモン製剤を提供する。
第二には、本発明は、基本的にリン酸緩衝液中の成長ホルモンと防腐剤から成る液体成長ホルモン製剤を提供する。
第三には、本発明は、基本的に等張リン酸緩衝液中の成長ホルモンと防腐剤から成る液体成長ホルモン製剤を提供する。
第四には、本発明は、基本的に等張リン酸緩衝液中の成長ホルモンから成る液体成長ホルモン製剤を提供する。
好都合にも、アンプル中で保存するとき防腐剤を含まない上記製剤によって、1回投与量を供給する便利な方法が提供される。多回投与に関しては、防腐剤の存在が好ましい。
上述したすべての製剤のこれまで認識されていなかった、実際上驚くべき利点は、2〜8℃の範囲内の冷蔵温度で貯蔵安定性があることである。経時的な製剤の安定性を評価するために種々の試験方法が使用できる。試験方法の代表的な例は、本明細書の実施例3及び参照してここに組み込まれるWO 94/03198号に示されているが、これらの方法はいかなる意味においても安定性を評価するために使用できる試験を網羅するものではなく、また包括的ではない。
非イオン性界面活性剤を含まない成長ホルモン製剤を、市販されている充填装置を使用して投与容器に充填すると、許容されないレベルの成長ホルモンの凝集を生じることが認められた。しかし、充填手順の際に液体圧と剪断応力を最小限に抑えれば(市販の充填装置を使用するか否かに関わらず)、概して界面活性剤レベルを最小限に抑える又は使用しないで済ますことができる。物理的充填応力と界面活性剤の濃度間で達成する必要がある実際のバランスは、当業者が日常的な実験によって決定できる問題である。
充填の間に生じる物理的応力又は剪断力のレベルに依存して、また有意の凝集を避けるために非イオン性界面活性剤が必要である場合、非イオン性界面活性剤の濃度は約0.2%(w/v)、通常0.05%(w/v)未満、好ましくは0.04%(w/v)未満、より好ましくは0.01%(w/v)未満、さらに一層好ましくは0.001%(w/v)未満でありうる。
非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート20又は80、等々のようなポリソルベート、ポロキサマー184又は188のようなポロキサマー、Pluronicポリオル、及び他のエチレン/ポリプロピレンブロックポリマーを含みうる。
意外にも、発明者は、リン酸緩衝液がGH製剤において使用しうること、そしてそれが、容器への充填のような処理の際又は貯蔵の間、驚くほど良好に製剤を安定化させることを認めた。
また意外にも、非イオン性界面活性剤を使用しないこと又は非常に低い濃度での使用は、冷蔵温度(例えば2〜8℃の範囲内)で容器中で保存されるGH製剤の安定性に有害な影響を及ぼさないことが認められた。GH製剤の効能又は製薬上の許容性にはなはだしい影響を及ぼすことなく、少なくとも3ヵ月間以上、少なくとも6ヵ月又は12ヵ月間の貯蔵が可能である。
第五には、本発明は、リン酸緩衝液中の成長ホルモンを含み、任意に防腐剤をさらに含む液体成長ホルモン製剤を提供する。
本発明の上述した局面においては、リン酸緩衝液は好ましくは等張である。緩衝液が等張であるとき、等張性は、中性の塩、例えばNaCl;又は単糖類、例えばラクトース;二糖類、例えばスクロース、又は糖アルコール、例えばマンニトールによって得られる。
発明者はまた、GH製剤を等張にするために中性塩の代わりに一部の化合物が有利に使用できることを発見した。
それ故、第六には、本発明は、等張緩衝液、任意にリン酸緩衝液中の成長ホルモン、及び単糖類、例えばラクトース、二糖類、例えばスクロース、糖アルコール、例えばマンニトールの1つ又はそれ以上から選択される、等張性を与える化合物を含む液体成長ホルモン製剤を提供する。
pHに関して、好ましい製剤はpH5.0〜7.0、より好ましくはpH5.6〜6.5の範囲内である。
意外にも、そしてここで述べるすべての製剤に関して、発明者は、約6.2又はそれ以上のpHを確保することにより、製剤の結晶化の問題を回避する又は最小限に抑えることができることを認めた。
好ましくは製剤のpHは、結晶化を避け又は最小限に抑えるために6.15〜7.4、より好ましくは6.2〜6.5の範囲内である。
それ故本発明は、保存時に検出可能な結晶化を生じない、上述したような液体製剤を含む。保存は少なくとも1ヵ月間、好ましくは6週間、より好ましくは約1ヵ月〜4ヵ月の範囲内の期間、最も好ましくは3ヵ月間でありうる。保存温度は約2℃又はそれ以上、好ましくは約4℃又はそれ以上、より好ましくは約2℃から40℃未満の範囲内の温度、さらに一層好ましくは約2℃〜25℃の範囲内の温度、最も好ましくは15℃でありうる。
結晶化は好ましくは成長ホルモンの結晶化である。好ましくは液体製剤中の結晶化は肉眼によって直接に、より好ましくは5×の倍率の光学顕微鏡下で、さらに一層好ましくは10×の倍率の光学顕微鏡下で検出される。光学顕微鏡下で観察する前に、製剤を濾過し、フィルター上の結晶の存否を調べてもよい。光学顕微鏡下で観察するとき、フィルターの孔は約5μmでありうる。
結晶化に関する特に好ましい試験は、製剤を3ヵ月間15℃で貯蔵し、肉眼で結晶の存否を観察することである。
防腐剤に関して、これは好ましくはフェノール、ベンジルアルコール、メタクレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン及び塩化ベンザルコニウムの1つ又はそれ以上から選択されるが、他の防腐剤又は抗菌性化合物も、製剤が製薬上許容されるように、適切な濃度で使用しうる。
好ましい実施形態では、リン酸緩衝液は、当業者によって容易に認識され、既知の、緩衝液の所望する濃度とpHを達成するために必要な、適切なNaHPO及びNaHPOの水和物の適切な量から作られる。
好ましい実施形態では、成長ホルモンはヒトである。
特に好ましい製剤においては、成長ホルモンは0.01%未満の凝集、好ましくは0.1%未満、より好ましくは1%未満、さらに一層好ましくは10%未満の凝集を示す。凝集は後程詳述する標準サイズ排除HPLC試験によって測定しうるが、凝集を測定するのに適するどのような方法も使用できる。
本発明はまた、液体を注射によって対象者に投与するための、上記で述べた液体成長ホルモン製剤のいずれかの少なくとも1回投与単位が使用のために充填された装置を含む。そのような装置の例はペン型注射器装置である。この被験者はヒトであることが好ましい。
また本発明により、注射装置と上述したような液体成長ホルモン製剤のいずれかの別個の容器を含むキットが提供される。容器は、好ましくは、使用の際に容器内の液体製剤が注射装置の出口で液体と接触するように、注射装置と接続するべく適合されている。
特に好ましい実施形態では、注射装置はペン型注射器であり、容器はカートリッジである。
さらに、本発明は、ペン型注射装置と共に使用するための、上述したような液体製剤のいずれかを含むカートリッジを提供する。
本発明者が行ったもう1つの意外な発見は、空隙がない又は空気が入り込まないようにGHの容器を充填し、密封した場合、容器の内容物の滅菌性がより確実に保証されるだけでなく、この因子もGHの凝集を最小限に抑える又は回避することに貢献するということである。
それ故、本発明のさらなる局面は、充填された容器中に実質的に全く空隙がない、液体GH製剤の密封容器を含む。
投与の対象者がヒトであるときには、好ましい成長ホルモンはヒト成長ホルモンである。特に好ましいヒト成長ホルモンは、組換え手法によって、例えばEP−A−0 217 822号(SCIOS NOVA)で教示されているように作製される。本発明に従って単独で又はもう1つ別のもの及び天然ホルモンと組み合わせて使用しうるヒト成長ホルモンの変種は、ソマトトロピンとして知られる191個のアミノ酸種及びソマトレムとして知られる192個のアミノ酸のN末端メチオニン(met)種を含む。また妊娠中の胎盤において天然に認められ、その遺伝子が既知であって組換え蛋白質が調製されている、hGH−Vとして知られる変種も存在する。
本発明の液体製剤中のhGHの量は、製剤の容量及びその容量が提供することを意図されているhGHの投与量に依存する。好ましい投与容量は0.4mlであるが、0.01ml〜1.0mlの範囲の容量が使用できる。他の好ましい投与容量は0.1ml〜0.6mlの範囲内でありうる。
毎日の投与のための好ましい単位投与量において、投与されるhGHの量は1.3mgであるが、正確な投与量は各個人に依存して変化しうる。0.033mg〜3.33mghGHの範囲内の投与量が使用でき、好ましくは0.33mg〜2.0mgの範囲内の投与量である。投与頻度を減らす場合には投与量の増加が適切である。
容量及び/又は投与量は、担当臨床医からの勧めに従って各個人ごとに異なりうる。
通常、本発明に従った製剤は、0.5mg/ml〜20mg/ml、好ましくは1mg/ml〜15mg/ml、より好ましくは2mg/ml〜10mg/ml、さらに一層好ましくは3mg/ml〜5mg/mlの範囲内のhGHを含みうる。
本発明はまた、上述したような注射装置と液体成長ホルモン製剤の別個の容器を含むキットを包含する。投与装置が単に皮下注射器であるときには、キットは注射器、針及び注射器と共に使用するためのhGH製剤が入ったバイアル又はアンプルを含みうる。より好ましい実施形態では、注射装置は単なる皮下注射器以外であり、よって別個の容器は、使用の際に容器内の液体製剤が注射装置の出口で液体と接触するように注射装置と接続するべく改造されている。
投与装置の例は、皮下注射器及びペン型注射装置を含むが、これらに限定されない。
特に好ましい注射装置は、容器がカートリッジである場合、好ましくは使い捨てカートリッジである場合には、ペン型注射器である。
もう1つの局面としては、本発明は、ペン型注射装置と共に使用するための上述したような液体成長ホルモン製剤を含むカートリッジを提供する。カートリッジは、1回投与量又は多回投与量の成長ホルモンを含みうる。
pH5.6のリン酸緩衝液、塩化ナトリウム及びベンジルアルコールを付加的に含むhGH製剤に関する2〜8℃での比較安定性データのグラフである。これらの製剤のPluronic界面活性剤を含むものと含まないものを比較している。週単位の時間に対するhGHの対数%純度をプロットしている。 pH6.0の塩化ナトリウムとベンジルアルコールを付加的に含むhGH製剤に関する2〜8℃での比較安定性データのグラフである。クエン酸又はリン酸緩衝液を含むこれらの製剤についての比較である。週単位の時間に対するhGHの対数%純度をプロットしている。 hGH製剤に関する2〜8℃での比較安定性データのグラフである。等張クエン酸緩衝液とPluronic界面活性剤を含むhGH製剤と等張リン酸緩衝液だけを含み、界面活性剤を含まないhGH製剤との比較である。
ここから、本発明の好ましい実施形態を図面を参照しながら下記の実施例によって説明する:
図1は、pH5.6のリン酸緩衝液、塩化ナトリウム及びベンジルアルコールを付加的に含むhGH製剤に関する2〜8℃での比較安定性データのグラフである。これらの製剤のPluronic界面活性剤を含むものと含まないものを比較している。週単位の時間に対するhGHの対数%純度をプロットしている。
図2は、pH6.0の塩化ナトリウムとベンジルアルコールを付加的に含むhGH製剤に関する2〜8℃での比較安定性データのグラフである。クエン酸又はリン酸緩衝液を含むこれらの製剤についての比較である。週単位の時間に対するhGHの対数%純度をプロットしている。
図3は、hGH製剤に関する2〜8℃での比較安定性データのグラフである。等張クエン酸緩衝液とPluronic界面活性剤を含むhGH製剤と等張リン酸緩衝液だけを含み、界面活性剤を含まないhGH製剤との比較である。
実施例1−バルク組換えhGHの調製と精製
培養条件下でhGH蛋白を発現するようにhGH遺伝子で形質転換したCHO細胞の細胞培養において組換えhGHを作製する。どのようにして細胞を作製し、増殖させるかについての詳細は、参照してここに組み込まれるEP−A−0 217 822号(SCIOS NOVA)に記述されている。工業的又は商業的規模での培養物の増殖のための培養条件の改変は、十分に当業者の能力範囲内である。
hGHが培養中の細胞によって産生された後には抽出し、製薬用途に適した形態に精製する必要がある。これは、参照してここに組み込まれるAU 629177号(University of New South Wales & Garvan Institute of Medical Research)に述べられている方法に従って実施される。
実施例2−安定な液体製剤の調製
種々の成分を一緒に混合することによってバルク製剤を調製する。成分を混合する順序は重要ではない。また、混合直前の種々の成分の正確な状態又は形態も重要ではない。製剤を調製する好ましい方法では、混合の前に、成分を混合のために最も都合のよい状態にし、また混合の順序及び様式も最も好都合であるように選択する。
製剤の特に好ましい例を下記に示す:
Figure 0005941496
Figure 0005941496
上記に例示した製剤は次のように調製した:
1.必要な賦形剤をすべて注射用蒸留水に溶解し、モル塩酸又は水酸化ナトリウム溶液を用いて必要なpHに調整して、2倍の力価の賦形剤溶液を調製する。
2.バルク成長ホルモン溶液を容器に入れ、慎重に撹拌しながら賦形剤溶液を加える。
3.必要に応じてpHを再調整し、溶液を最終容量にする。ペン型注射器と共に使用するカートリッジに充填するために、滅菌フィルターを通して溶液を濾過し、注射用カートリッジに充填して、一方の端を可動プランジャーで密封し、ゴム隔壁を含むアルミニウムシールで他方の端を密封する。
他の試験製剤は概してこのように調製した。これらの製剤の詳細は下記の実施例で示す。
実施例3−水性hGH製剤の安定性に関する試験
製品のサンプルを2〜8℃の条件下で保存し、様々の時点で分析した。2つのHPLC法を使用して製品の安定性を調べ、どちらの方法も、参照してここに組み込まれる、「注射用ソマトトロピン」に関するヨーロッパ薬局方モノグラフに従った。最初の方法は、関連蛋白質、すなわち脱アミド化及び酸化によって形成される分解産物の測定のための逆相HPLC法である。第二の方法は、ダイマー及びより高い分子量の関連物質を測定するためのサイズ排除HPLC法である。
rpHPLC法を使用して、2〜8℃で65週間までの期間にわたって保存したいくつかの異なる製剤の脱アミド化と酸化を確認した。データを下記の表1−3及び図1〜3のグラフに示す。
表4は、2〜8℃で保存した製剤Vに関して実施した安定性試験の結果を示す。
上記で言及したサイズ排除HPLC法(データは示していない)を使用して凝集を検討した。いずれの場合も、試験中測定可能な量のダイマー及び高分子量関連物質は認められなかった。すべての製剤において凝集は1%未満であり(実際上これは試験での信頼しうる定量の限界である)、すなわち凝集は見られなかった。
試験結果は、製剤を安定化する上でリン酸緩衝液はクエン酸緩衝液より良好であること、そしてまたPluronic界面活性剤が存在しない方がより大きな安定性をもたらすことを明瞭に示している。
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実施例4−液体製剤のpH調節による結晶化の回避
それぞれのリン酸緩衝液成分の量を調節することにより、製剤VIの一連のpH変異型(0.1単位ずつの増量)を作製した。ペン型注射器で使用するため、製剤を1.5mlずつ分取したものをそれぞれのカプセルに充填した。カプセルを3ヵ月間まで15℃で保存した。保存期間中を通じて、カプセル中に結晶が存在するか否かを肉眼で調べた。
pH6.2未満、すなわちpH6.1の製剤において結晶化を認めた。pH6.2又はそれ以上の製剤では全く結晶化を認めなかった。
比較として、製剤V(pH6.0)は、15℃又は25℃で6週間まで保存したとき結晶化を示した。また製剤V(pH6.0)は、2〜8℃で保存したときには約2〜3ヵ月間経過後に結晶化を示した。

Claims (4)

  1. 等張性のリン酸緩衝液中に、
    3mg/ml〜5mg/mlのヒト成長ホルモン、
    等張性を与える化合物、
    0.1%〜1.0%(w/v)の非イオン性界面活性剤、および
    防腐剤、
    を含む、ペン型注射器で使用するための、液体ヒト成長ホルモン製剤であって、
    該等張性を与える化合物が、マンニトールであり、
    該非イオン性界面活性剤が、ポロキサマー188であり、
    該防腐剤が、ベンジルアルコールであり、
    該液体ヒト成長ホルモン製剤のpHが、6.2〜6.5であり、
    該液体ヒト成長ホルモン製剤は、2〜8℃の保存温度で少なくとも6ヵ月間、安定性があり、かつ、15℃の保存温度で少なくとも3ヵ月間、肉眼で検出可能なヒト成長ホルモンの結晶を生じない、前記液体ヒト成長ホルモン製剤。
  2. 3.33mg/mlのヒト成長ホルモン、
    35mg/mlのマンニトール、
    2mg/mlのポロキサマー188、および
    9mg/mlのベンジルアルコール
    を含む、請求項1に記載の液体ヒト成長ホルモン製剤。
  3. ペン型注射器に接続すべく適合され、請求項1または2に記載の液体ヒト成長ホルモン製剤が充填された、カートリッジ。
  4. 請求項3に記載のカートリッジおよびペン型注射器を含む、キット。
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