JP5936356B2 - 堤脚部の洗掘防止工法 - Google Patents
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Description
図5には、底質12に設置された円形断面を有する脚柱14に生じる局所洗掘のメカニズムが示されている。図示の如く、定常流中におかれた脚柱14の前面には、馬蹄形の渦が生じることで、脚柱14の側部と表面の底質12がはがれ、流下方向へと流される。このとき、水の流れに向かって45°付近の、底質12の表面で大きなせん断力が生じ、この付近から局所洗掘が始まる。そして、時間の経過と共に洗掘が進行し、脚柱14の周辺が逆円錐状の地形となっていくものである。
一般的な洗掘防止工としては、捨石やブロックにより、底質12の局所洗掘の発生区域表面を防護する対策が取られている。この場合、捨石やブロックの下部には、底質12の吸出し防止効果を有する吸出し防止フィルターが設られる。ここで用いられる吸出し防止フィルターは、砂利や砕石によってマットを形成したものであり、そだ沈床や、合成繊維製のシート、マットが利用されることも多い。
又、吸出し防止フィルターには砂利や砕石等が用いられるが、その粒径は、吸出しを防止すべきコア材料の粒径の数倍から10倍程度の大きさが必要とされており、その上に設置する表層部の捨石又はブロックは、波動場に対して安定性を保つ必要がある。このため、吸出し防止フィルターを構成する砂利や砕石等の材料自体の吸出しを防止するために、フィルター層自体を複数設置することが、必要不可欠となる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、底質の吸出し防止効果を安定して発揮し、かつ、施工も容易な堤脚部の洗掘防止工を提供することにある。
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
又、洗掘防止ユニットに作用する波力が、網状袋体を介して中詰め材に作用することで減少し、洗掘防止ユニット周辺部の底質への、波力の影響も減少させることとなる。しかも、堤脚部を囲む底質に、洗掘防止ユニットの少なくとも一部を沈設させるようにして設置することで、洗掘防止ユニットはその周囲から拘束され、耐波安定性も向上するものとなる。
更に、洗掘防止ユニット内部での中詰め材の移動は許容されることから、洗掘防止ユニット自体が適切に変形して、設置環境に応じて安定した形状へと収まることとなる。又、同様の理由から、全体が固体の態様と異なり、洗掘防止ユニットにはいわゆるロッキングは生じないものである。
本項に記載の堤脚部の洗掘防止工法は、洗掘防止ユニットを、堤脚部を囲む底質の表面に載置し、洗掘防止ユニット下方の底質に対し水を高圧噴射し、底質をほぐして液状化を促し、洗掘防止ユニットを自重により底質へと沈設させることで、局所洗掘の発生が始まる部分の底質を、洗掘防止ユニットに置き換えるものである。
本項に記載の堤脚部の洗掘防止工法は、洗掘防止ユニットの上面が、底質の表面と同一レベル以下となるように、洗掘防止ユニットの全体を、堤脚部を囲む底質に沈設することで、洗掘防止領域の底質と洗掘防止ユニットとを置き換えるものである。そして、沈設された洗掘防止ユニット自体が、底質中で吸出し防止フィルター層を形成することにより、洗掘防止領域における底質の吸出しが生じ得ず、局所洗掘を防止するものとなる。
しかも、洗掘防止ユニットをその上面が底質の表面と同一レベル以下となるように沈設することで、設置される水域の水の流速や圧力の地形変化による急変点が、洗掘防止ユニットの設置によって生じることがない。又、洗掘防止ユニット内を水が移動することで、乱流、摩擦等により水流のエネルギーは失われて減速する。このため、洗掘防止ユニットと底質との境界部分において、底質が移動する外力が増大することは無く、この境界部分での局所洗掘も回避するものとなる。
本項に記載の堤脚部の洗掘防止工法は、予め、洗掘防止ユニットを気中にて環状に構成するものである。そして、洗掘防止ユニットを、堤脚部を囲む底質の表面に載置する際に、洗掘防止ユニットの環状を維持して堤脚部上方から挿通し、堤脚部を囲む底質の表面へと載置することで、洗掘防止ユニットは、堤脚部の周囲の底質上に、平面視で円形に隙間無く載置されるものである。そして、この円形を維持したまま、堤脚部を囲む底質に、少なくとも一部を沈設させることで、堤脚部を囲む領域において、洗掘防止ユニットの円周方向に隙間無く、上記作用を奏するものとなる。
本項に記載の堤脚部の洗掘防止工法は、複数の洗掘防止ユニットを並べることで、全体として、平面視で環状に隙間のない洗掘防止ユニット集合体を構成するものである。そして、この円形を維持したまま、堤脚部を囲む底質に、少なくとも一部を沈設させることで、堤脚部を囲む領域において、洗掘防止ユニットの円周方向に隙間無く、上記作用を奏するものとなる。又、この場合、必要に応じて、個々の洗掘防止ユニット同士を、洗掘防止ユニットを構成する網状袋体と同等の強度を有するロープ等で緩やかに連結することにより、沈設時や波動場におかれた状態で、各ユニットの飛散をより確実に防止するものとなる。
本項に記載の堤脚部の洗掘防止工法は、洗掘防止ユニットを、底質の深さ方向に複数層沈設することで、必要な厚みの洗掘防止ユニット層を構成するものである。又、下層の洗掘防止ユニットは、上層の洗掘防止ユニットによって拘束され、耐波安定性がより一層高まるものである。
本項に記載の堤脚部の洗掘防止工法は、洗掘防止ユニットを更に上方から消波構造体で覆うことで、洗掘防止ユニットの耐波安定性をより向上させるものである。
又、洗掘防止ユニットに作用する波力が、網状袋体を介して中詰め材に作用することで減少することとなり、洗掘防止ユニット周辺部の底質への、波力の影響も減少させることとなる。しかも、堤脚部を囲む底質に、洗掘防止ユニットの少なくとも一部が沈設するように設置されることで、洗掘防止ユニットはその周囲から拘束され、耐波安定性も向上するものとなる。
更に、洗掘防止ユニット内部での中詰め材の移動は許容されることから、洗掘防止ユニット自体が適切に変形して、設置環境に応じて安定した形状へと収まることとなる。又、同様の理由から、全体が固体の態様と異なり、洗掘防止ユニットにはいわゆるロッキングは生じないものである。
本項に記載の堤脚部の洗掘防止構造は、洗掘防止ユニットの上面が、底質の表面と同一レベル以下となるように、洗掘防止ユニットの全体が、堤脚部を囲む底質に沈設されていることで、洗掘防止領域の底質と洗掘防止ユニットとを置き換えるものである。そして、沈設された洗掘防止ユニット自体が、吸出し防止フィルター層を形成することにより、洗掘防止領域における底質の吸出しが生じ得ず、局所洗掘を防止するものとなる。
しかも、洗掘防止ユニットをその上面が底質の表面と同一レベル以下となるように沈設することで、設置される水域の水の流速や圧力の地形変化による急変点が、洗掘防止ユニットの設置によって生じることがない。又、洗掘防止ユニット内を水が移動することで、乱流、摩擦等により水流のエネルギーは失われて減速する。このため、洗掘防止ユニットと底質との境界部分において、底質が移動する外力が増大することは無く、この境界部分での局所洗掘も発生しないものである。
本項に記載の堤脚部の洗掘防止構造は、洗掘防止ユニットは、平面視で環状に形成され複数の洗掘防止ユニットにより、堤脚部を囲む領域において、上記作用を奏するものとなる。例えば、複数の洗掘防止ユニットを隙間無く並べることで、全体として、平面視で環状に隙間のない洗掘防止ユニット集合体を構成するものである。
本項に記載の堤脚部の洗掘防止構造は、環状袋体の内部に、気中にて中詰め材を充填することで、洗掘防止ユニットを気中にて環状に構成することが可能なものである。この、環状の洗掘防止ユニットを、洗掘防止ユニットの環状を維持して堤脚部上方から挿通し、堤脚部を囲む底質の表面へと載置することで、洗掘防止ユニットは、堤脚部の周囲の底質上に、平面視で円形に隙間無く載置されるものである。そして、例えば、洗掘防止ユニット下方の底質に対し水を高圧噴射して、底質をほぐすことにより液状化を促し、洗掘防止ユニットを自重により底質へと沈設されるものである。
本項に記載の堤脚部の洗掘防止構造は、複数の洗掘防止ユニットが並ぶことで、全体として、平面視で環状に隙間のない洗掘防止ユニット集合体が構成されるものである。又、この場合、必要に応じて、個々の洗掘防止ユニット同士を、洗掘防止ユニットを構成する網状袋体と同等の強度を有するロープ等で緩やかに連結することにより、沈設時や波動場に置かれた状態で、各ユニットの飛散をより確実に防止するものとなる。
本項に記載の堤脚部の洗掘防止構造は、洗掘防止ユニットが、底質の深さ方向に複数層沈設されていることで、必要な厚みの洗掘防止ユニット層が構成されるものである。又、下層の洗掘防止ユニットは、上層の洗掘防止ユニットによって拘束され、耐波安定性がより一層高まるものである。
図1には、本発明の実施の形態に係る、脚柱14の堤脚部の洗掘防止構造10が示されている。かかる堤脚部の洗掘防止構造10は、洗掘防止ユニット16が、脚柱14を囲む底質12に、その上面16aが底質12の表面12aと同一レベル以下となるように沈設されているものである。又、洗掘防止ユニット16は、脚柱14が設置された底質12における吸出し防止フィルター効果を発揮するための粒径を有する中詰め材(例えば砕石)を、網状袋体の内部に内包したものである。
更に、洗掘防止ユニット16を構成する網状袋体のメッシュ粗さは、使用される中詰め材が脱落することなく、かつ、洗掘防止ユニット内外の水の適切な流通を許容する範囲のものが使用される。
又、図示は省略するが、洗掘防止ユニット16を、底質12の深さ方向に複数層沈設することとしても良い。更には、必要に応じ、洗掘防止ユニット16を、更に上方から消波構造体で覆うこととしても良い。
まず、本発明の実施の形態によれば、脚柱14の堤脚部が設置された底質12における吸出し防止フィルター効果を発揮するための粒径を有する中詰め材を、網状袋体に内包して、洗掘防止ユニット16を製作するものである。よって、中詰め材は、網状袋体のメッシュから脱落することはなく、かつ、洗掘防止ユニット16内外の水W(図1)の流通を許容するものとなり、洗掘防止ユニット16の波動場での安定性を高めることができる。
又、洗掘防止ユニット16に作用する波力が、網状袋体を介して中詰め材に作用することで減少することとなり、洗掘防止ユニット16周辺部の底質12への、波力の影響も減少させることとなる。しかも、洗掘防止ユニット16は沈設によってその周囲から拘束されることで、耐波安定性も向上するものとなる。
しかも、洗掘防止ユニット16をその上面16aが底質12の表面12aと同一レベル以下となるように沈設することで、設置される水域の水Wの流速や圧力の地形変化による急変点が、洗掘防止ユニット16の設置によって生じることがない。又、洗掘防止ユニット16内を水Wが移動することで、乱流、摩擦等により水流のエネルギーは失われて減速する。このため、洗掘防止ユニット16と底質12との境界部分において、底質12が移動するほど外力が増大することは無く、この境界部分での局所洗掘も発生しないものである。
又、予め、洗掘防止ユニット16を気中にて環状に構成し、環状の洗掘防止ユニット16を、脚柱14の堤脚部を囲む底質12の表面12aに載置する際に、洗掘防止ユニット16の環状を維持して堤脚部上方から挿通し、堤脚部を囲む底質12の表面へと載置する。これにより、洗掘防止ユニット16は、堤脚部の周囲の底質12の上に、平面視で円形に隙間無く載置されることとなる。そして、洗掘防止ユニット16の円形を維持したまま、堤脚部を囲む底質12に、その上面16aが底質12の表面12aと同一レベル以下となるように沈設することで、堤脚部を囲む領域において、隙間無く上記作用効果を奏するものとなる。
又、洗掘防止ユニット16を、底質12の深さ方向に複数層沈設することで、必要な厚みの洗掘防止ユニット層を構成することも可能である。この場合には、下層の洗掘防止ユニット16は、上層の洗掘防止ユニット16によって拘束され、耐波安定性がより一層高まるものである。
なお、本発明の実施の形態では、洗掘防止ユニット16の上面16aが、底質12の表面12aと同一レベル以下となるように、洗掘防止ユニット16の全体が沈設されている場合を例示して説明している。しかしながら、本発明者らの検証によれば、洗掘防止ユニット16は、少なくとも一部が沈設するように設置されていることでも、洗掘防止領域における底質12の吸出しを防ぎ、局所洗掘を防止する効果があることが確認されている。又、洗掘防止ユニット16を、底質12に対し、少なくとも一部が沈設するように設置することで、洗掘防止ユニット16の耐波安定性が向上するが、設置環境に応じて、底質12の表面12aに単に載置することとしても、同等の洗掘防止効果があることが確認されている。
Claims (5)
- 堤脚部の洗掘防止工法であって、前記堤脚部が設置された底質における吸出し防止フィルター効果を発揮するための粒径を有する中詰め材を、網状袋体に内包して洗掘防止ユニットを製作し、
前記洗掘防止ユニットを、前記堤脚部を囲む底質の表面に載置し、該洗掘防止ユニット下方の底質に対し水を高圧噴射して底質の液状化を促し、前記洗掘防止ユニットを自重により、
前記堤脚部を囲む底質に、前記洗掘防止ユニットの少なくとも一部を沈設させるようにして設置することを特徴とする堤脚部の洗掘防止工法。 - 前記洗掘防止ユニットの上面が、底質の表面と同一レベル以下となるように、前記洗掘防止ユニットの全体を沈設させることを特徴とする請求項1記載の堤脚部の洗掘防止工法。
- 前記洗掘防止ユニットを気中にて環状に構成し、該洗掘防止ユニットを、前記堤脚部を囲む底質の表面に載置する際に、前記洗掘防止ユニットの環状を維持して前記堤脚部上方から挿通し、前記堤脚部を囲む底質の表面へと載置することを特徴とする請求項1又は2記載の堤脚部の洗掘防止工法。
- 前記洗掘防止ユニットを、前記堤脚部を囲む底質の表面に載置する際に、複数の洗掘防止ユニットを、平面視で環状に隙間無く並べることを特徴とする請求項1又は2記載の堤脚部の洗掘防止工法。
- 前記洗掘防止ユニットを、底質の深さ方向に複数層沈設させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の堤脚部の洗掘防止工法。
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