図1に示す例においては、一般的な埋立地等の場合と同様に、海底地盤の上に列状に立設して、上部を海面から所定の高さまで露出させるように設置するケーソンを用いて、廃棄物処分場を仕切る護岸1を構成する場合を示している。この例において、海底地盤6の上にケーソン2を立設する構築区域では、地盤の土の支持強度を向上させるために地盤改良工事を施工して、構造物と基礎マウンド等の重量物に対して、その支持強度を増大させた改良地盤部7として構成する。
また、前記海底地盤6が水を通す性質を持つものである場合には、不透水性を発揮させる処理を、前記地盤改良部7に対しても同時に施工することで、不透水層としての性質を持たせるようにする。まず、最初に説明するように、廃棄物を仕切った海域にする仕切り護岸に対して、以下に説明するような、遮水性を発揮可能な構造物による仕切り部材の間と、廃棄物が直接接する地盤の表面部との双方に対して、遮水層としての性質を発揮できるものとして、構築することが必要とされる。
前述したようにして、仕切り護岸を構築する部分に対して、地盤を強化する等の処理を行ってから、その改良地盤7の上に所定の高さと巾を有する基礎捨石を積み重ねて、基礎マウンド5を構築する。そして、前記基礎マウンド5の上に、アスファルトマット等を敷設してからケーソン2を設置して、基礎とケーソンとを一体化した状態の護岸1として構築する。前記ケーソン2を立設するに際しては、基礎マウンド5の上面を平らに均してから、ケーソンの底板2aを直接基礎5の上面に載置するようにして、ケーソンを列状に並べた護岸を構築することが可能である。
この場合には、ケーソンの底板の下面が、直接基礎マウンド5の石の上に載る状態で設置されているのであるから、石の突部が少しだけ底板2aに接触する状態で、ケーソンを支持している。そこで、ケーソンに強い波があたったりして、衝撃を与えた場合には、ケーソンが基礎捨石上を滑るような不都合が発生する。そのような不都合が発生することを防止するためには、従来の一般的な港湾の工事を行う場合と同様に、基礎マウンドの上面にアスファルトマットのような摩擦係数の大きいものを敷き込んで、その上部にケーソンを載置して安定させる手段を用いると良い。なお、前記海底地盤を広い範囲に亘って、地盤改良部7とする工事を行うことは、その地盤の強化のための工事費用と、手間を多く必要とするという問題がある。そこで、構造物を立設する部分以外に、大きな荷重を負担する必要のない部分では、海底地盤6Aに対しては、特に地盤改良工事を行わない状態のままで、廃棄物を投棄させるようにすることが、処分場の構築コストの面からも、好ましいことであるとされる。
前記ケーソンを列状に立設して区画した仕切り護岸の内側の部分を、廃棄物の埋立地として用いる場合に、海底地盤の表面部分と、構造物の埋立地側、および、基礎マウンドの表面の全てに対して、廃棄物が直接接する面に対して遮水処理を行っている。前記前記遮水層としては、例えば、遮水性を有するシートを敷設することにより、投棄する廃棄物が地盤に直接接しないように、区画することができる。前記遮水処理に関しては、後で詳細に説明するように、任意の種類の遮水性のシートと、強度の大きい支持シート部材を重ねて敷設して、前記遮水シートの強度を支持シートによって補うようにする。したがって、処分場の海底地盤の一部が不等沈下する等の、遮水層を支持する地盤が変形した場合であっても、遮水層が破損したりすることがなくて、遮水作用を良好に発揮できるように設けると良い。
また、前記図1に示す例においては、基礎捨石による基礎マウンド5に対して、埋立地の内面側の表面部と、海底地盤6の所定の区間に亘って、アスファルトマスチックの層を所定の厚さで施工することや、アスファルトマット等を敷設する等の、遮水性を強化する処理を行うような手法を用いている。そして、前述したような遮水処理を行うことによって、前記遮水層10と海底地盤6との全ての部分で、保有水が流出しないように封止することができる。そこで、本実施例に示すように、石を積んで構築した基礎マウンドの表面の他に、前記基礎マウンドの下面の地盤改良部との間の部分に対しても、アスファルトマスチックの層を所定の厚さの層として施工すること、または遮水用シートを隙間なく敷設する等の手段を用いて、遮水性を良好に発揮可能とする。
さらに、前記遮水層10の廃棄物と接する表面側には、所定の厚さで上面保護層21を構築して、潮の干満や、埋立地の内部に溜まった水の圧力により、前記遮水層10における遮水性能が不安定となることを防止できるようにしている。例えば、海面の高さが変化する場合には、基礎マウンドの石の間を通って遮水層に加えられる海水の圧力が、その海面の高さの変化にしたがって大きく変化して作用するので、そのような圧力の変化に対抗させるように、保護層21を設けるのである。
前記上面保護層21としては、砂等のように入手が容易な材料を用い、所定の厚さに施工して、遮水層の上から押圧保持させるようにすることで、遮水層が前面からの潮汐変動圧によって持ち上げられたりしないように保持する。また、前記上面保護層21が遮水層10を覆っていることで、ガレキ等の尖った角のある廃棄物を埋立材とし、遮水層の上に高いところから投下した時にも、その廃棄物の角等が直接遮水層を傷付けたりすることを防止できるようにするという、副次的な効果をも発揮する。そして、投下した廃棄物の衝撃圧力を、前記上面保護層21により緩和することによって、遮水層10が破損されることがないように保護して、遮水性を良好に確保できるようにしている。
前記護岸1における遮水処理に加えて、基礎マウンドの上に立設するケーソン等の構造物の間に対しても、遮水処理を施工して、護岸の下部の地盤と基礎マウンド、および構造物の全てが、遮水機能を有するものとして構築する。前記ケーソン2の間では、ゴムの筒状のもので構成した仕切部材3a、3bを、所定の間隔を持たせて縦方向に平行に配置して、その筒の内部には、任意の流動性の小さな液状のものやモルタル、もしくは、流動性を向上させたアスファルト等を充填している。前記筒状の部材を介在させて、筒の中に液状物等を封止することで、前記筒の形状を維持できて、ケーソンの対応する壁面に対して筒の表面が隙間を生じないように押圧されて、止水性を発揮させるようにする。
さらに、前記仕切り部材3a、3bの間には、アスファルトマスチックを注入した充填層3cを設けて、ケーソン間仕切部分を止水部3として構築する。前述したようにして、遮水処理を施工した前記護岸1により区切られた区域の内部に、廃棄物を投棄することが可能な埋立地8として構築することができる。そして、前記埋立地8に投棄した廃棄物から滲出する有害物質や、廃棄物に接して汚れた水を仕切りの内部に封じ込めておき、有害物質が処理されずに外洋に流出する等の、不都合が発生することを防止可能にする。
前記図1に示された例のように、海底地盤上に所定の高さで構築した基礎マウンド5の上に、ケーソン2を立設して構築する護岸1において、図2に説明する例では、ケーソン2の埋立地側の側面と、基礎マウンド5の斜面および、海底地盤の所定の範囲に亘って、共通する遮水層を設けている。前記図2に説明する例においては、前記ケーソンの側部から基礎マウンドの上面と斜面とを覆うように、遮水用シート11を敷設して設けており、前記遮水用シート11の延長部は、埋立地側の地盤6の表面を覆うように延長されて、地盤6を覆う遮水層に接続することが可能とされる。
また、前記ケーソンの外側の面の部分と、基礎マウンド5の斜面部の所定の範囲に亘って、遮水用シート11とともに、アスファルトマット10を敷設して設けている。前記遮水用シート11のケーソン2の側部に接する端部に対して、前記遮水用シート11を押圧して水密に保持するために、アスファルトマスチックをブロック状に打設して、前記アスファルトのブロックを、押圧保持部材16として設けている。なお、前記アスファルトマットは、遮水用シートと同様に、遮水層としての機能を発揮できるものであり、前記遮水性を有するシートとマットとを重ねて一体化させることで、より効果的な遮水層として作用させることができる。
さらに、前記基部遮水工15においては、アスファルトを一定の厚さで敷設する遮水層10の端部の上に、ブロック状にアスファルトマスチックを打設して、押圧保持部材16として設けている。前記押圧保持部材16としては、遮水用シート11のケーソン側の端部を固定保持するもので、前記積層遮水部材をマウンド上に位置決めして敷き込んで、前記遮水部材と保護手段とを重ねて一体化した積層遮水部材として構成し、前記積層遮水部材を位置決めして敷き込んでから、ブロック構築用の型枠を組んで、アスファルトマスチックを充填して構成できる。そして、前記押圧保持部材としてのブロック16を設けて、遮水層のシート11の端部を位置決めさせることによって、基礎マウンドの端部に対応する部分またはその近傍で、その支持地盤の不等沈下等が発生しても、遮水性に問題が発生することがない。
また、前記図2に説明するように、ケーソン2の側面部に遮水用シート11を接するように配置して、基部遮水工15を構成した場合には、埋立地側の地盤の変化等が発生した時には、前記遮水用シート11に対して、ケーソンから引き離す方向に引っ張り力が作用すると想定される。そのように、埋立地側で海底地盤に凹凸が発生しても、遮水用シート11の端部を固定保持できるように、ブロックにより押圧固定していることから、遮水用シートの性質を継続して維持することが可能である。この例においては、ケーソン2の下部に敷き込んだアスファルトマットに接続して、遮水層10を所定の範囲に亘って設けている。さらに、ケーソン2側の端部に接するように、アスファルト製のブロック16を設けて、遮水用シートの端部を保持して、遮水層の端部をケーソンの垂直な壁部分に固定保持する作用を、良好な状態で維持できるように構成している。
前記図2に説明された基部遮水工15の例において、遮水層のアスファルトマットは、強度を向上させたマットとして形成されたものを用いる。例えば、マットの内部にガラス繊維の織布等の、引っ張り強度が非常に大きい補強手段を設けたものを、アスファルトマスチック層の間に挟んで一体化し、強度の大きいマットとして使用する。また、前記遮水用シート11としては、従来より一般に用いられている遮水材と同様に、プラスチック製の比較的薄い遮水用シートを用いる他に、ゴムシートのような伸縮性のあるシートを使用しても良い。さらに、前記シートの端部をケーソン側で固定保持するブロック16は、任意の大きさのものとして構成することができるが、その重量により遮水用シートの端部をケーソンの側部に押圧して保持するのであるから、その保持作用を良好に行い得る程度の大きさと、重量を有するものとして構成する必要がある。
前記図2に説明したように、遮水用シートと積層遮水部材のケーソン側の端部にブロック16を設けていることで、遮水用シート11を基礎マウンドの斜面に沿って、下方に引っ張るような力が作用した場合に、遮水層10がその引っ張り力に抵抗するよう作用させることができる。つまり、前記遮水用シート11を引き摺り下げるように働く力に対抗して、積層遮水部材の一方の部材では、遮水用シート11をブロック16により押圧して保持させるようにして、シート11と保護部材との間に働くところの、大きな摩擦力で引き止めるような作用を発揮する。
さらに、前記実施例に説明したように、積層遮水部材として構成される遮水層においては、前記保護層に対して引っ張り力等が作用すると、その引っ張られた方向に遮水部材が延びることになる。したがって、遮水用シートが伸縮性を有する部材であると、シート11とともに延びるように変形することから、遮水性を損なうような隙間が形成されることはない。
これに対して、前記遮水用シートとして、伸縮性を有しない性質の材料が用いられる場合には、遮水層に加えられる力により、シートが破断されるような状態が発生することになる。例えば、前記遮水用シートに加えられる力が大きくて、遮水用シートに亀裂が生じた場合でも、シートと組み合わせて敷設している支持シート等を含んで、遮水層が破断されない限りは、前記シートに生じた隙間を、遮水層10のアスファルト層が自動的に塞ぐこととなり、積層遮水部材での遮水性に支障が生じることは避けられる。
前記図2に説明する例において、基礎マウンド5の斜面部の端部、つまり、地盤との接続部でも、図に仮想線で説明するように、ブロック16aを構築した基部遮水工15aを設けて、遮水層に加えられる外力に対応させることができるようにする。つまり、このような、斜面部と水平面とが接続される部分では、基礎マウンド5の積み石の一部が崩れたりすること、または、海底地盤の一部が不等沈下する等の、比較的発生頻度が多いけれども、発生する箇所の予想が困難な状態のところでも容易に対応させることができる。そして、前記地盤沈下等が発生したとしても、遮水用シートが破損して、積層遮水部材での遮水性に障害が生じる等の、不都合な状態となることを自動的に防止することができる。
前記図1に示した遮水層においては、図3に示されるようにも構成することができるもので、基礎捨石により構築する基礎マウンド5の表面に、遮水用シート11とメッシュ部材12を組み合わせ、さらに、アスファルトマスチック層20を重ねて、積層遮水部材として一体化させて構成する。前記遮水層10を構築するに際しては、遮水用シート11を敷き込んだ上に、アスファルトマスチック層20を重ねるようにして、所定の厚さに打設することで、二重の遮水層を一体化したものとして構成される。前記アスファルトマスチック層20は、埋立地8と外洋との間を仕切って、遮水性を良好に発揮できる程度の厚さとするもので、例えば、5〜15cm程度の厚さに施工する。
前記アスファルトマスチックを施工する場合に、ゴムまたはプラスチック製の遮水用シート11は、その表面が平滑なものが多く用いられているが、前記遮水用シート11と重ねて敷設するメッシュ部材12は、凹凸を有する部材である。そこで、前記シートの凹凸部にマスチックを入り込ませて固化させて一体化させるようにして、前記メッシュ部材を内部補強部材として利用することで、所定の厚さのマスチック層20として構築可能なものとしている。
なお、以下に説明する本発明の実施例において、「マスチック層」は、特に限定して説明する場合の他は、アスファルトマスチックを直接地面上に打設して、所定の厚さを有する層状のものとして形成するもの、または、別の場所で作成したアスファルトマットを、地盤上に隙間を生じさせないように敷き込んで、遮水性を持たせて構築するものを総称している。また、本実施例で開示している遮水層は、多くの場合に、積層遮水層として構成されているものであり、遮水用シートと支持シート部材とを重ねて、一体化した積層遮水層として構成する例を用いて説明している。
前記遮水層として構築されるところの、遮水用シート11とメッシュ部材12との組み合わせにおいて、前記遮水用シート11は、例えば、ゴムや塩化ビニール、または、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチックを用いて、所定の厚さのシート状に成形したものを用いることができる。これ等の遮水用シートは、従来より埋立地で廃棄物が地盤に接しないように、仕切り作用を行うために用いられている遮水用シートと同様に、ゴムやプラスチック材料により、シート状のものとし構成されるものである。そして、厚さが1〜5mmのものを端部を重ねて接着する等の手段を用いて、接続部に隙間が形成されることがないように敷設する。
前記遮水用シート11と一体に設けるメッシュ部材12は、後述する支持シート部材と同様な機能を発揮することが可能である。そして、その材料として、任意の金属で作成した金網や、ラスメタル等の金属のネット状の部材や、繊維で構成したシートや網状のもので構成することが可能である。その他に、金属のメッシュ部材や、チェーンやワイヤを編んで、ネット状の部材として構成したものを用いる場合には、前記金属部材が比較的比重が大きく、単位面積当たりの重量が重いものとすることが可能であることから、遮水用シート部材を押圧して安定させるアンカーとして、位置固定作用を発揮できるので好都合である。
また、前記遮水用シート11とメッシュ部材12の間には、接着テープやその他の任意の接続部材を用いて一体に組み合わせ、遮水用シート11の遮水性に影響が生じないように構成したものを用いることができる。なお、前記メッシュ部材12を遮水用シート11に重ねるように組み合わせ、1回の敷設作業ですませるために、遮水用シート11を貫通する針金等を用いて接続した積層シートを用いることできる。そのように、積層遮水部材を作成する場合にも、テープや接着剤等を用いて、シートに形成した穴を塞ぐように処理して、遮水用シートにおける遮水性を良好に維持できるようにすると良い。
前述したようにして、遮水用シート11とメッシュ部材12とを重ねて一体化し、遮水性を良好に発揮できるようにした積層遮水部材は、遮水性シートに対して重い金網を組み合わせているのであるから、それを海中で施工する際には、比較的容易に展開できるという特徴を発揮できる。そして、風や波浪の影響を受けた場合でも、遮水層があおられたり波打ち状態となることがなく、基礎捨石の表面に位置決めして施工するために、特におもり部材等を補助的に使用しなくても、容易に敷設できるという特徴がある。
また、前記遮水用シート11と組み合わせて設けるメッシュ部材12としては、任意の重さと強度とを有する任意の太さの針金を用いて、金網のように構成した部材を用いることが可能である。前記メッシュ部材12は、遮水用シート11に加えられる衝撃や荷重、または押圧力に対して、対抗する役割を持つものとして用いられているものである。したがって、前記メッシュ部材12としては、できるだけ強度が大きくて、その上に打設するアスファルトマスチックメッシュの網目に入り込んで、遮水用シートの表面に沿って流れることを阻止して、前記メッシュを中に含んで一体化する状態で、所定の厚さのマスチック層20を容易に形成できるようにすることが望ましい。
前記実施例に示されたように、遮水層10を構築した場合でも、海底地盤6が軟弱な海域では、図4に示すような不都合な状態が発生することが考えられる。前記図4に示される例では、改良地盤7の上に捨石による基礎マウンド5を構築し、その上にケーソン2等を構築して護岸1を形成することは、前記各実施例と同様であるが、前記基礎マウンドとケーソンの重量により押圧されて、地盤沈下部7aが生じることがある。また、廃棄物を積重ねるようにする前記埋立地8においても、海底地盤6の軟弱部を強化する等の改良処理しない部分6Aでは、その一部の地盤の軟弱部に対して大きな押圧力が作用すると、地盤沈下部6aが形成されることになる。
前記図4に説明しているように、廃棄物の重さで地盤沈下が発生する例においては、地盤を強化する処理を施していない部分では、比較的容易に発生するものと想定される。しかしながら、前記基礎マウンドを構築する部分では、地盤を強化する処理は厳密に施工しているものであって、軟弱地盤や透水性のある地盤に対しては、十分に対処されている。特に、不透水層とする処理と、地盤を強化する処理とを施しているものであることから、前記基礎マウンドの部分を除く処理場全体に対して、地盤沈下が発生することを考慮する必要がある。なお、前記廃棄物の重量により、地盤の弱い部分が不等沈下するという問題は、廃棄物の海面処分場のみではなしに、陸上の処分場についても同様な問題が提起されるものでもある。
前述したような前記地盤沈下が発生した部分6aでは、図4、5に説明されるように、基礎マウンド5の端部から、海底地盤6の沈下した部分6Aに向けて、遮水層10の全体が引き摺り込まれるような、不都合な作用が加えられることになる。そして、アスファルトマスチック層20と遮水用シート11とを重ねた積層遮水層10に対して、大きな張力が局部的に加えられる。そして、前記遮水層10に対して、局部的に大きな張力が付与されることにより、遮水用シート11が引き裂かれたりする事故が発生することで、遮水性を良好に維持できないという障害が発生することが考えられる。
そこで、前記遮水層としての性能を維持させるためには、前記図2で説明したように、シートの端部を保持するブロックを、基礎マウンドの上でケーソンの側壁に押圧する状態に位置決めしている。そして、地盤が沈下した部分に向けて、遮水シート等に引っ張り力が付与される状態となった場合でも、そのシートの端の部分を押圧して保持させることにより、保護層としての機能に支障が生じないように保持することもできる。その他に、例えば、遮水用シート11を伸び量の大きいゴム等の材料を用いて構成しておき、そのシートと重ねて支持するメッシュ部材12を、伸縮性の大きな金網等で構成することで、シートとアスファルトマスチック層での遮水性を、容易に確保てきるようにすることも考えられる。つまり、前記遮水用シートを伸び量の大きな軟質のゴム等で構成する場合には、大きな引っ張り力が局部的に付与された状態でも、遮水用シートが簡単に切断されないように保護できることになる。
この場合は、遮水用シート11の上に施工するマスチック層10を、柔軟性を向上させたマスチック層として設けることにより、遮水層全体の寿命を延長させることができる。つまり、地盤の変形という現象は、長い時間をかけて徐々に発生するものであり、地盤沈下による影響が、遮水層の一部を次第に引っ張るような力として、局部的に加えられたとしても、図5で説明しているように、遮水部材は符号10a、11aで示している例のように、容易に変形される性質を発揮できる。そして、遮水層の下部の地盤が変形する現象に追従して、マスチック層が引っ張られて次第に薄くなるように変形され、薄くなった部分がその限界に達するまでは、遮水層としての機能は維持されるので、遮水層の一部に裂け目等が生じるまでは、遮水性を維持させることができる。
前述したように、廃棄物と地面との間を仕切るように、遮水層を構築して区画する場合に、その支持地盤の沈下等の変形等が発生することにより、遮水層が大きく変形されるような外力が作用するという問題は常に考慮しておくことが必要である。前記遮水層としては、前記図3に示したように、遮水用シート11とメッシュ部材12を重ねて施工し、前記遮水用シート11の上に、アスファルトマスチック層20とを重ねるようにして打設することで、二重の遮水層として構成されている。その他に、前記遮水用シート11は、例えば、ゴムや塩化ビニールの他に、ポリエチレン、ポリプロピレン等の材料を用いて構成することも一般的である。
ところで、従来より遮水層を構成するために用いられている遮水用シート等の材料は、ゴムのような伸縮性の大きい素材を用いているものでは、地盤の変形の状態に対応して、遮水用シートが伸縮するので、遮水性を維持することが可能である。また、アスファルトマスチックのように、容易に変形する性質を有する材料を用いて、遮水層を構成する場合には、ゆっくりと時間をかけて地盤が変形する作用に合わせて、アスファルトマスチックで構成した遮水層も次第に変形することになる。したがって、弾性または伸縮性を有して変形しやすい材料を用いた遮水層を、軟弱な地盤上に配置して遮水層を構築する場合に、前述したように、地盤が不等沈下する等の変化が生じた場合でも、遮水性を損なうような事態が、容易に発生することはないと考えられる。
前述したように、遮水用シートと支持シート部材とを重ねて、一体化した積層遮水層として構成する場合には、長期間に亘って遮水作用を良好に維持させることが可能である。また、前記遮水材と支持シート部材とを、任意の性質を有するものを組み合わせて構成することができることも、前述した通りである。前記積層遮水部材においては、遮水用シートと支持シート部材とを重ねる際の、シートを配置する上下の関係は、その積層遮水部材を敷設する場所の状態に応じて任意に選択できる。また、前記2種類のシート状の部材の間には、接着剤を用いて一体化すること、または、単純に重ねるようにして配置することが可能である。
そして、前記遮水用シートと支持シート部材とを重ねた積層遮水部材を用い、前記積層遮水部材を地盤の変化が生じると想定される場所に配置した場合に、遮水用シートまたは支持シート部材の各々が、その特性を良く発揮して、遮水作用を良好に発揮させることができる。例えば、アスファルトマスチック層と伸縮しない性質を有する遮水用シートとを重ねて、積層遮水部材として構成した場合には、遮水用シートに作用する引っ張り力の大きさが、伸縮性を有しないシートでの強度の限界を越えると、その遮水用シートは破断することになる。しかしながら、アスファルトマスチック層が破られない限りは、その遮水性を維持することができるので、その一方の遮水性シートが破断された後でも、遮水層での遮水性は維持される。
また、遮水用シートが伸縮性を有する材料で構成され、アスファルトマスチック層とを重ねて、積層遮水部材を構成している例では、その積層遮水部材で覆われている地盤の一部だけに、不等沈下が生じたり、浸蝕されて凹部が形成されると、遮水用シートは地盤の凹部に沿って変形する状態となる。このような状態に対して、前記地盤の変形の程度に応じて、積層遮水部材が伸びたりしている間は、シートによる遮水作用は良好に維持されるので、何等の問題が発生することはない。前記実施例とは別に、遮水用シートと支持シート部材との双方が伸縮性を持たず、支持シート部材の強度が非常に大きい、つまり、引っ張り強度が非常に大きいもので構成されている場合には、積層遮水部材の下部の地盤に大きな凹部が生じたとしても、積層遮水部材が若干凹ませられるように変形しても、その積層遮水部材が破断されない限りは、後述する図10の例のように、廃棄物を支持できる状態が維持される。
前記支持シート部材として、アスファルトマットまたはマスチック層を用い、任意の遮水用シートと重ねて積層遮水部材を形成することができる。その場合に、前記アスファルト層と遮水用シートとを接着して、一体化した積層遮水部材として敷設すると、基本的には、遮水用シートに亀裂が生じる等の破損が発生して、シートによる遮水性が損なわれる状態が先に発生する。しかしながら、前記遮水用シートと一体化されているマスチック層は、遮水用シートが破れるような引っ張り力を受けたとしても、アスファルト層は伸びて次第に薄くなるような事態が発生するのみである。そして、その引っ張り力がマスチック層の変形の限界に達して、裂け目等が生じたりしない限りは、積層遮水部材が一体となって遮水作用を有効に維持できる。
前記地盤の変形が生じても、遮水層としての性能を維持させるためには、前記図3等で説明したように、遮水用シートとメッシュ部材とを重ねて施工してから、その上にマスチック層を施工することが考えられる。そして、前記遮水層では、内部補強部材をアスファルト層の内部に配置した遮水層と、遮水用シートとを重ねた状態での、強固な遮水層を施工することができる。したがって、地盤の強度が不足する部分で、局部的な陥没等の変形が発生したときでも、遮水層としての性能を長期間維持できるようにすることが可能である。前記2つの層を重ねた状態で施工する遮水層として、遮水用シートがゴムのように伸縮性を有するものを用いて、アスファルト層と重ねて施工する場合には、2つの遮水層が共に伸縮性を有することから、遮水層の下部で地盤の変形がゆっくりと発生した場合であっても、遮水層が変形する作用が追従できるものとなる。
前記伸縮性を有する遮水用シートを用いて構成する遮水層とは別に、前記遮水用シートが伸縮性を有しなくても、その遮水用シートを保持するシートや、支持シート部材を重ねて施工し、遮水層の強度を向上させる手段を用いることが考えられる。例えば、従来より一般に用いられているような、遮水用シートのうち、塩化ビニールやポリエチレン、ポリプロピレン等のような材料は、伸縮性が非常に小さいものであるから、地盤の変形にしたがって延びたりするようにして、その材料による性質で自動的に対処させることは考えられない。そこで、前記伸縮性のない遮水用シートに対しては、伸縮しないが、破断強度が非常に大きい丈夫なシート材料を、支持シート部材として重ねて施工し、その2つの層が一体となって、地盤の局部的な沈下等に対して抵抗できるようにし、廃棄物の荷重を支え得るようにするのである。
前記強度の大きい支持シート部材としては、例えば、ガラス繊維等を用いて作成したシート状の部材、ジオテキスタイルやジオグリットと呼ばれているところの、シート状の部材等を用いることができる。また、その他に、ワイヤやチェーンを編んで構成したネット部材や、前記ガラス繊維で作成したシート状の織物を、内部補強部材としてアスファルトマットを作成し、そのアスファルトマット自体が、破断強度の大きいものとして作用できるように、その特性を十分に利用することが可能である。つまり、前記遮水層を構築するに際しては、前記遮水用シートや、遮水用シートと一体に敷設する支持シート部材の強度を十分に利用することで、基礎地盤の支持強度を強化する処理が、十分に行われていなくても、遮水用シートを敷設することにより構成した遮水層での遮水性には、何等の影響も生じないようにすることが可能となる。
前記ジオテキスタイルやジオグリットと呼ばれるシートは、土木工事に用いられている一般的なシートで、天然繊維や合成繊維の織物、または不織布等の任意のシートを総称しているものである。そして、前記ジオテキスタイルと呼ばれて多く使用されているアラミド繊維や、超高分子量ポリエチレンのようなシートでは、従来より一般に使用されていた合成繊維類、例えば、ポリエステル、ナイロン、ビニロン、ホリプロピレン等の繊維製のシートよりも非常に大きい強度を発揮できるものである。前記新しい繊維類のうちの特に強度の大きいものでは、鉄と同等かあるいはそれ以上の強度を有するものまでがあり、土木の分野では多く用いられるようになってきている。
後述する本発明の実施例において、遮水用シートと支持シート部材とを重ねるようにして敷設しておくことで、支持地盤の局部的な沈下等が生じても、その部分での遮水用シートが負担する廃棄物の荷重を、強度の大きな支持シート部材に負担させることができるようにしているのである。したがって、前記図1に説明した基礎マウンドに対応する地盤改良部のみを、地盤強化する処理の対象として施工し、その仕切りの内外海に相当する両側部の地盤に対しては、地盤強化工事を施工せずに、いわゆる手抜き状態で護岸を構築するのである。
そして、前記廃棄物を積み重ねて堆積させる部分の下面部、または堆積場の底版部分に対しては、地盤の弱い部分で多少の沈下等が発生して、遮水用シートに対して局部的な引っ張り作用が働いたとしても、その遮水用シートに付与される力を、支持シート部材に負担させることができる。つまり、その遮水用シートに加えられる引っ張り力等が、前記支持シート部材と遮水用シートの強さ以上の値となり、それ等のシートが破断される状態となるまでの間は、遮水性に支障が生じないように、遮水用シートの性能を維持させることができるものとされる。以下に、遮水用シートと支持シート部材とを、遮水用の部材として用いる場合の、具体的な例を説明する。
前述したように、廃棄物の埋立て処分場に敷設する遮水用シートを、強度が非常に大きい支持シート部材と重ねるようにして設ける場合には、図6以降に説明するように構成される。なお、図6以下に説明する本発明の実施例においては、説明を簡略化するために、遮水処理する対象の地盤を、地盤30、遮水処理部の名称は、遮水工35、支持シート部材36、遮水用シート37、シート以外の遮水層38と呼んで説明している。例えば、これらの用語で説明される各構成部材は、例えば、支持シート部材としては、例えば、ガラス繊維等を用いて作成したシート状の部材、ジオテキスタイルと呼ばれるシート類のうちの、任意のシートを用いることが可能である。
前記図6に示した例は、地盤30の表面に沿わせて支持シート部材36を敷き込んで、支持層を構成するもので、この支持シート部材36を敷設するに際しては、所定の幅と長さのシートを敷設しながら、隣接するシートとの間を接着する等の、任意の接続手段を用いて接続する。そして、前記支持シート部材36としては、幅の広いシートとして構成することで、地盤に欠陥が生じた場合でも、前記遮水工(遮水層)を構成する支持シート部材には裂け目等が形成されないように、強固な1枚のシートとなるように接続して施工される。
また、前記支持シート部材36の上に敷設する遮水用シート37としては、従来より遮水工として一般に用いられているシートと同様なものを用いることが可能である。これらの遮水用シートとしては、塩化ビニールやポリエチレン、ポリプロピレン等のような、任意の材料を用いることができる。そして、前記支持シート部材36と遮水用シート37とを任意の厚さを有するものを選択し、重ねた状態で敷設する遮水工35においては、地盤の一部が陥没する等の変形することにしたがって、延びたりするようなことはない。しかしながら、その遮水工の強度が非常に大きいものであることから、前記遮水工が破断されて、廃棄物が地盤に直接接触したりするような、不都合な状態が早期に発生することを避けることができる。
図7に示す例は、地盤30と遮水工35aの間で、水が流通できる程度の隙間を持たせて、地下水の流れを妨げることがないようにして遮水工35aを構築し、遮水工35aの上に廃棄物を堆積させる場合の例を示している。この図7に説明する例では、地盤30の上には、所定の厚さで砂利や砂等を敷き込んで、透水層36aを構築することにより、地下水の湧出量が多い地区での地下水の処理を、処分場の汚れた水と区分して処理できるようにする。また、この実施例において、遮水工35aは、任意の厚さの支持シート部材36の上に、任意の厚さの遮水層38を重ねて設けているものであるが、前記遮水層38として遮水用シートの上に、アスファルトマスチックの層を重ねて設けて、遮水性をより良好に発揮させることも可能である。
前記図7に示した例において、前記遮水工35aの最下面には、透水層ではなしに、厚い支持シート部材を敷設して、その上に符号36で示す薄い遮水用シートを敷設する。さらに、前記遮水用シート36の上には、薄くアスファルトマスチック層を構築して、投棄される廃棄物が遮水工を破損したりすることがないように保護しても良い。その他に、前記遮水工35aの上面には、砂や砂利等の層を所定の厚さで形成しておくことで、前記遮水工が廃棄されたものの鋭利な部分が当って、破られたりすることがないように保護することが可能となる。
図8に示す遮水工35bの例において、地盤の表面には直接支持シート部材36を敷き込んで、その上にマスチック層39を構築するようにしている。前記マスチック層としては、一般的なアスファルトマットを用いて構成しても良いが、そのアスファルト層の強度を補償する他に、織物や不織布、多孔質のシート状のものを、内部補強部材39hとして挿入すれば、遮水層としての強度を向上させることができる。なお、前記マスチック層39を構成するために、所定の大きさで一定の厚さを有するアスファルトマットを、縦横に配置して敷き詰め、マットの隣接する部を所定の巾で重ねて、アスファルト系統の接着剤を用いて隙間が生じないように接続して、水が漏れることをできて、遮水性と強度の大きな遮水層として構成することができる。
図9に示す遮水工35cの例において、前記図8の例とは別に、地盤上に支持シート部材36を敷き込んでから、その上アスファルトマスチックの層を、所定の厚さのものとして形成することは、前記図9の場合と同様ではある。この例では、支持シート部材36の上にメッシュ部材を補強部材39hとして用い、前記補強部材を内部に含むようにして、マスチックの層を構成する。この例において、内部補強部材としての役割を有するメッシュ部材としては、任意の太さの針金を編んで作った金網等を用いることができるものであり、太い針金で丈夫な金網をアスファルト層の中に配置することで、遮水層の強度を任意に設定することが可能になる。
前記図6ないし図9の各々に示した実施例において、遮水工35の下部の地盤が陥没したりして、支持性能を良好に発揮できない事態が生じることが想定される。つまり、図10に説明するように、地盤が沈下して、陥没部31が形成されると、当然、その上部に位置されている支持シート部材36が、凹部の周囲の部分で廃棄物により地盤に押圧されたままであるから、局部的に宙吊り(浮いた)状態となり、その浮いた部分の上に載っている廃棄物の重量によって、部分的に押し下げられるような力が加えられる状態となる。ところが、前記地盤の陥没部31が形成された場合であっても、その陥没部31の周囲で陥没していない部分では、遮水工が廃棄物の重さで押圧されたままで固定されている。そこで、前記地盤の陥没した部分に対しては、陥没部31に対応する支持シート部材36と遮水用シート37の一部分のみが、上からの押圧力(廃棄物の重量)に対処しなければならないことになる。
前記地盤の陥没部31に対して、遮水工35では支持強度の大きい支持シート部材と、遮水用シートとが一体となって配置されているものであるから、陥没部の周囲では廃棄物により押圧されることで、遮水用シートと支持シート部材とが、相互にずれを生じたり移動できない状態で、地盤に押圧された状態で保持される。そして、前記陥没部では、その上の遮水工が、それ自体が大きく伸びたりすることがない状態で、少しだけ下方に湾曲した状態になると想定される。前記陥没部が形成される速度が、非常に緩やかである場合、つまり、廃棄物の重量により、軟弱な地盤が次第に陥没するような事態が発生したときには、地盤は局部的に大きく陥没することは想定されてなく、広い場所全体が少しずつ沈下するようになると考えられる。したがって、広い面積に亘って少しずつ沈下するような状態では、その遮水層の構成部材の強度が許容する範囲では、遮水工が破断されることはなく、遮水工が変形することで対処できる。