JP4822375B2 - 護岸の遮水構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、廃棄物海面処分場等の埋立護岸、または、人工島の内部を外海から区画する護岸等の護岸表面に沿わせて敷設し、潮流・波浪、潮汐変動もしくは、仕切られた区域内での残留水頭等により、仕切り側内部の水が外洋に流出しないようにする、多層に遮水部材を重ねて構築する埋立護岸の遮水構造と、遮水構造に欠陥が発生した時の補修に関する。
【0002】
【従来の技術】
廃棄物を埋め立て処分するために、従来より山間僻地等に処分場を構築しており、前記処分場においては、周囲の地山に対して遮水用シート等のシート状遮水体を敷設する等の、遮水層の構築処理を行った上で廃棄物を投棄している。ところが、前記処分場は大量に廃棄物を排出する都市や工業地帯から遠く離れた場所に立地されることが多く、廃棄物の運搬のための交通の問題を抱えている。また、陸上の処分場は周囲の環境保全等の観点から、または、住民の了解を得ることができにくい等の問題があり、大規模な廃棄物処分場を確保することが困難となってきている。そこで、今後は、大量に廃棄物が排出される都市等の近傍の海域を仕切って処分場を構築し、廃棄物を用いて新たな陸地を構築するとともに、排出地域からの運搬距離を短くすることに対応させ得るようにすることが考えられている。
【0003】
前記廃棄物の処分場を海面に構築する場合には、一般的には埋立地の護岸の構築場所で、海底地盤を強化するための地盤改良工事を施工し、石積基礎を所定の高さに構築してその上面を平らに均してから、その基礎の上にケーソン等の既成の構造物を配置して構成している。前記構造物と石積基礎に対して遮水性を持たせるためには、例えば、陸上の処分場の場合と同様に、遮水用シートと保護マット等を重ねて敷設し、廃棄物により遮水用シートを石積基礎に向けて押圧するようにして安定させている。前記海面埋立て処分場の他に、海面を所定の範囲で区画して人工島を構築する場合や、人工島の構築と同様に、所定の海域を護岸により区画してその区画された内部の海底地盤で工事を行う場合(人工島と総称する)においても、前記埋立て処分場と同様な工事を行って、遮水性を有する護岸を構築している。
【0004】
前記遮水用シート等のシートとしては、例えば、薄いゴムシートや塩化ビニール等のプラスチック製の水を通さない性質を有するシートを用いている。また、前記石積基礎の上に設置するケーソン等の構造物の間では、ケーソン間の目地部からの透水を防止する措置として、一般的には弾性を有するゴム製の仕切り材をケーソンの間に所定の間隔を介して配置し、前記仕切り材の間にアスファルト混合物等を充填する等の処理を行って、ケーソン等の目地間から内部の保有水が浸出しないような遮水層を構築している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記遮水性を有するシートを海中で施工する場合には、前記シートが比較的薄くて軽いものであることから、風や波浪にあおられること等により、必要とされる場所に正確に敷設することが困難である。そして、前記遮水用シートを前記埋め立て護岸の角部の広い面積を覆うように施工する際には、海中で遮水用シートを角部の形状に合わせて加工した上で、接続部を接続して一体化を図り、接続部での遮水性を確保する必要があるが、接続される遮水用シートが安定しない状態とか、角部の形状が複雑であったりしてその接続が面倒である。また、前記遮水用シートを敷設するに際しては、おもり部材やその他の補助手段を合わせて用いるために、施工コストが大幅に上昇する原因ともなる。
【0006】
また、海中で遮水用シートを敷設する際には、陸上の処分場のように土を平らに均すことができず、大きな凹凸のある石積の堤体の表面に配置するので、その石の凸部に当った部分が破損しやすい等の問題があり、遮水用シートによる遮水性を確保することが困難である。前記問題の他に、ケーソンを支持する石積基礎の下面では、海底地盤の改良工事を施工するので、構造物本体に対する支持作用は安定して発揮できるが、埋立地側では廃棄物の重量により地盤が圧密されるために、廃棄物により海底地盤が沈下するという問題が発生しやすく、石積基礎の端部から海底地盤に向けて敷設したシートに引っ張り作用が加わり、遮水用シートが破損する等の問題の発生が想定される。
【0007】
さらに、前記多層に構成する遮水層においても、廃棄物を投棄する前の段階で、工事資材等の大きなものが落下したりして破損する場合が考えられる。また、廃棄物を投棄している際にも、何等かの衝撃が加えられたりすることにより、遮水層に裂け目が形成されて、遮水性能に欠陥が発生する場合がある。ところが、遮水用シート等が破損した場合に、従来は、破れた遮水用シートを引き上げて、船の上で補修用シートを貼付けたりするような手段を用いているが、一度敷設し終えたシートを再浮上させるには、多大な時間とコストがかかる上に、そのような補修では、長期間の使用に耐えることは困難であり、より有効な補修手段の開発も望まれている。
【0008】
本発明は、前述したような海中での遮水処理層を施工する場合と、補修の問題を解消するもので、遮水層の構築を容易に行い得て、遮水の性能を長期間に亘って確保でき、シートの継ぎ目の接続処理と、破損箇所に対する補修作業を容易に行い得る、遮水処理層を設けた管理型護岸を提供することを目的としている。
【0009】
本発明は、海底地盤6のケーソン構築区域の地盤に地盤改良工事を施工した改良地盤7の上に、護岸基礎5を構築し、前記護岸基礎5の上にケーソン2を列設して、外海と埋立地を区画する埋立護岸1に関する。
請求項1の発明は、前記埋立護岸1を、平面視で所定の角度で接続する角部4を有するものとして構築するに際して、
前記護岸基礎5の埋立地側の上面5bと斜面部5a、及び海底地盤6の所定の範囲に亘って、遮水処理層10を構成する遮水シート11を敷設し、前記角部では、さらにその上に角部接続層15を構築して、前記護岸基礎5、5の角部4に対する保護手段とするもので、
前記角部接続層15としては、前記角部4の表面を覆うために、地盤面6上から護岸基礎5の斜面部5aとケーソン2に至る上面5bまでを覆うように、角部4の両側の遮水シート11の端部を含む広い範囲に、アスファルト混合物28の層を構築することを特徴とする埋立護岸の遮水構造。
【0010】
請求項2の発明は、前記角部接続層15を構成するに際して、前記護岸基礎5の角部4の斜面部5aに沿わせて施工枠体20、20を配設し、アスファルト混合物を打設して、前記枠体と一体化した均一な厚さの角部接続層15として構築するもので、
前記施工枠体20は、上枠部21、下枠部22、側枠部23および斜面枠部24を組合わせた枠体として構成し、その上面と側面および下面に金網のような孔開き部材を設けた籠状のもの2つを、金網を設けない開口面として形成した斜面枠部24を対向させて突き合わせて配置したものを用い、
前記施工枠体20にアスファルト混合物28を打設することで、遮水シート11と施工枠体20、20をも併せて一体化した均一な厚さのアスファルト混合物28の層として構成することを特徴とする。
【0015】
前述したように、遮水処理層を材質、性状の相違する遮水部材を重ねて配置し、一体化した遮水処理層として構成したことにより、埋立地の仕切護岸での遮水性を良好に発揮できる。そして、内海側の水圧に対して十分な遮水性を発揮し、投棄物を投下した時の衝撃と、投棄物による押圧作用に対して良好に抵抗できる遮水処理層を構築することができる。また、前記遮水処理層の角部に対して角部接続層を構築することで、遮水性が不安定となりやすいシート状遮水体やその他の構造を有する遮水処理層の接続部での遮水性を強化することが可能であり、その角部接続層の施工もアスファルト混合物を接続部の上下面に打設するにより容易に行うことが可能である。さらに、遮水処理層に裂け目が形成された場合に、前記裂け目を広く覆うようなアスファルト補修層を構築することにより、遮水処理層の遮水性を良好に維持させることができる。したがって、前記角部接続層やアスファルト補修層に対して施工枠体を取り外さずに一体に設置することにより、アスファルト補修層の性能を長期間に亘って維持でき、特に薄いシートのみを配置した遮水処理層においても、その遮水性を良好に維持できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
図示される例にしたがって、本発明の多層の遮水部材を重ねて配置した埋立護岸の遮水構造を説明する。図1に示す例は、一般的な埋立護岸をケーソンを用いて構成する場合を示しているものであるが、前記埋立て護岸と同様に構築される人工島をも対象とすることができる。前記護岸を構築するに際しては、海底地盤6のケーソン構築区域の地盤に地盤改良工事を施工した改良地盤7として構成し、その改良地盤7の上に石を積重ねることにより、所定の高さと巾を有する基礎捨石による護岸基礎5を構築した上にケーソン2を設置して埋立護岸1を構築する。そして、前記埋立護岸1により区切られた区域の内部に、廃棄物を投棄して埋立地8を構築する。前記埋立地8に投棄した廃棄物から浸出する有害物質を封じ込め、有害物質が外洋に流出することを防止するために、ケーソン2の間にはゴムの筒状のもので構成した仕切部材3a、3bを配置し、前記仕切り部材3a、3bの間にはアスファルト混合物の充填層3cを設けて、ケーソン間仕切としての遮水部3を構築する。
【0017】
なお、前記護岸基礎5を構築した上に、ケーソンのような既成の構造物を載置して一体の埋立護岸1を構成する場合の他に、比較的浅い海域や付近で入手可能な石を大量に用いて護岸基礎を構築できる場合には、ケーソン等を用いずに護岸基礎のみで護岸を構築することもできる。また、前記ケーソンに代えて、大型のL型ブロック等を護岸基礎の上に構築して護岸構成することも可能である。そして、前記ケーソンやL型ブロックを護岸基礎の上に組み合わせて構築する護岸や、護岸基礎のみによる護岸に対しても、以下に説明する構造の遮水処理層を適用することができる。なお、前記遮水処理層護岸を構築する護岸が、人工島や海底地盤に対する工事区域を囲む護岸である場合にも、以下に説明する護岸の遮水構造を適用することが可能である。
【0018】
前記護岸基礎5の埋立地の内面側の表面部と、海底地盤6の所定の区間には、遮水処理層10を施工して、前記遮水処理層10と海底地盤6を海水が流通しないような処理を施している。そして、前記護岸で仕切られた内海側に対して、外海側での潮の干満による海水の圧力や、埋立地の内部に溜まった水の圧力により、前記遮水処理層10が不安定となることを防止するために、上面保護層9を構築している。前記上面保護層9は砂等の入手が容易で安価な材料を用いて構築し、遮水処理層が前面潮汐変動圧にて持ち上がったり、埋立材の投入による衝撃で破れないように保護して、遮水処理層による遮水性能を確保できるようにしている。
【0019】
図2に示す例は、埋立護岸1を平面視で直角に交差するように接続するか、またはある角度を持たせて構築する場合の例を示しているもので、図示するように、護岸基礎5の上に多数のケーソン2、2……を列状に並べて配置し、各ケーソン2、2……の間に遮水部3を構築してケーソン間での遮水処理を行っている。前記護岸で仕切られた埋立地の内面側には、後述する遮水処理層10を設けるが、前記遮水処理層10を直線部に沿わせて配置する際には、遮水用シート等の敷設を容易に行うことができるが、直線状の護岸を、所定の角度で接続する部分(以下「角部」と呼ぶ)では、遮水用シートの接続が容易に行われ得ないという問題がある。そこで、前記護岸の角部4に対しては、遮水処理層10を施工した後に角部接続層15を施工して、遮水性能を確保できるようにしている。
【0020】
図3ないし図6には、前記遮水処理層10の構造を説明しているが、本実施例では、従来より一般に用いられている遮水用シートのみを1枚または2枚重ねて敷設することに代えて、遮水用シートとアスファルト層とを重ねて遮水性能の信頼性を向上させた遮水処理層として構成する場合を示している。まず、図3に示す例は、護岸基礎5の上面と斜面部および海底地盤6の所定の範囲に亘って遮水用シート11を敷設し、前記遮水用シート11のシートの接続部には、従来の遮水用シート11の場合と同様に、遮水性を発揮できるような接続処理を施す。前記遮水用シート11の上には、アスファルト混合物を所定の厚さで打設して、アスファルト層12を構築する。前記アスファルト層12は、埋立地8と外洋との間で、遮水性を良好に発揮できる程度の厚さを有するものとして構成されるもので、例えば、5〜15cm程度の厚さを持たせるように施工する。
【0021】
前記アスファルト混合物を施工する場合に、遮水用シート11の表面が平滑なものである場合には、あらかじめ凹凸を設けるような処理を施す等の処理を行って、打設したマスチックが斜面に沿って流れ落ちないようにすることができる。また、前記アスファルト層12を護岸基礎の斜面部に施工するに際しては、斜面に沿わせて所定の間隔でアスファルト製のブロック状やマット状の部材を配置しておき、打設したアスファルト混合物を小さい区画に区切るようにし、その上にアスファルト混合物を所定の厚さで一体に被覆するような手段を用いることもできる。さらに、前記アスファルト層12を施工するに際しては、遮水用シート11のアスファルト混合物と接する面に、アスファルトを付着させ得るような処理を施しておき、打設したアスファルト混合物を遮水用シート11に一体の層に形成することができる。その他に、遮水用シート11を遮水性を有するシート部材と、不織布等を重ねて一体化した複合シートとして構成する場合には、アスファルト層12を打設して2つの層を一体化して遮水処理層10を構成でき、遮水性を確保させることができる。
【0022】
前述したようにして、遮水用シート11とアスファルト層12とを重ねて構築した遮水処理層10において、前記遮水用シート11は、例えば、ゴムや塩化ビニール、ポリエチレン、ポリプロピレン等の、従来より埋立地の遮水用シートとして用いられているゴム・プラスチック材料により構成されるもので、厚さが1〜5mmのものとして形成される。そして、前記遮水用シート11を護岸基礎5の表面に敷設する場合に、護岸基礎5の表面の凹凸ができるだけ小さい値となるように、小さい石等を護岸基礎5の表面に配置することにより、遮水用シート11を敷設した際に石の突部にあたった部分が破損したりする事故を防ぐことができる。前記遮水用シート11の上の構築するアスファルト層12は、遮水用シート11の表面に凹凸があっても、その凹凸を埋めて任意の厚さのアスファルトによる遮水層を構成することができる。
【0023】
図4には、護岸基礎5の表面に対してアスファルト混合物を所定の厚さで打設してアスファルト層12を構築し、そのアスファルト層12の表面に遮水用シート11を敷設して、遮水処理層10aを構築する場合を示している。前記遮水処理層10aにおいては、護岸基礎5の表面にアスファルト混合物を打設して、所定の厚さのアスファルト層12を構築するので、その表面は平滑な面として形成される。そして、前記アスファルト層12の上に遮水用シート11を重ねて敷設することで、アスファルト層表面に遮水用シート11を付着させるようにして一体化した遮水処理層10aを構築し、2つの層を重ねた遮水処理層での遮水作用を良好に発揮させることができる。
【0024】
図5、6に示す例は、3層の遮水部材を重ねて敷設し、一体化した遮水処理層10b、10cを構築する場合を示しており、図5に示す例では、前記図3の遮水処理層10の上に、さらに遮水用シート11aを重ねて配置して、遮水処理層10bを構成している。前述したように、護岸基礎5の表面に遮水用シート11を敷設することは、前記図3の遮水処理層10を構築した後で、さらに、遮水用シート11aを追加施工するのであるから、その遮水用シート11aの施工を容易に行うことができる。
【0025】
図6に示す例では、前記図4の遮水処理層10aに対して、アスファルト層12aを追加施工することで、遮水用シート11を間には挟む状態の3層の遮水層を一体化して遮水処理層10cを構成している。前記図5、6に示すように、3層の遮水層を重ねて構成する場合に、アスファルト層に接する遮水用シートの面には、アスファルトと親和性を発揮できるような表面処理を施しておくと、遮水処理層を一体化させる上で有効である。また、アスファルト層を打設する場合には、アスファルト混合物の層を一度に施工せずに、複数回に分けて打設して、アスファルト混合物が斜面に沿って流れ落ちることを阻止できれば、任意の厚さのアスファルト層を構築することが可能である。
【0026】
なお、前記遮水用シートを工場で製作する際には、巾が2〜5mのものとして構成し、施工現場で遮水用シートを接続して広い遮水用シートを形成しながら、護岸基礎5の表面と改良地盤7の所定の範囲に亘って遮水層を構築する必要がある。前記遮水用シートの接続に際しては、従来より遮水用シートの接続に用いているような、接着剤を用いることや熱融着による接続手段や、両面テープ等を用いて接続することができる。また、前記図5、6に示すような3層に重ねた遮水処理層を構築する場合には、アスファルト混合物を用いて所定の厚さの遮水層を構築することに代えて、アスファルトマットを敷設して構築することもできる。前記アスファルトマットを遮水用シートと組み合わせて配置する場合に、アスファルトマットの継ぎ目には、任意の接続手段を用いて接続し、アスファルト混合物等を充満させて遮水性を発揮できるような接続処理を行うことで、シートと同様なマットによる遮水性を確保できるようにすると良い。
【0027】
前述したようにして、護岸基礎5の表面に遮水処理層を施工する場合に、前記護岸基礎5の角部では、遮水用シートの接続部が形成され、その遮水用シートの接続部での遮水性を確保することが困難となる場合が多くある。そこで、本実施例においては、図7に示すように、角部4をカバーするために広い範囲に角部接続層15を構築し、直線状の護岸基礎5、5の角部4に対する保護手段を構築することができる。前記図7に示す例では、例えば、護岸基礎の斜面部5aと、上面5bおよび地盤面6の各々に対しては、アスファルト混合物を打設して一度に天端部16と斜面部17、下面部18とを一体に構築できないという問題が発生する。つまり、前記角部接続層15の斜面部17では、アスファルト混合物を打設すると、そのアスファルト混合物が斜面に沿って流れ落ちるという問題が生じやすい。
【0028】
記護岸基礎の斜面に沿ってアスファルト混合物が流れ落ちるという問題は、前記遮水処理層を構築する際にも発生する施工上の大きな課題ではあるが、前記護岸基礎の斜面部にアスファルト混合物を打設する場合には、非常に広い傾斜面に施工するので、アスファルト混合物の流下を阻止する手段を用いることが容易である。ところが、前記角部4に対して遮水層の接続部を形成する際には、他の直線状の部分よりもより確実な遮水処理層を形成することが求められるので、図8に示すような施工枠体20を配置し、前記施工枠体20の内部にアスファルト混合物を打設して充満させ、施工枠体と一体化した角部接続層15を構築することが良いと考えられる。
【0029】
前記図8に示す施工枠体20は、上枠部21、下枠部22、側枠部23および斜面枠部24を、H型鋼等を用いて組み合わせた枠体として構成し、その上面と側面および下面に、金網26のような孔開き部材を設けた籠状のものとして構成する。前記施工枠体20は、図7に示す角部接続層15の斜面部17に対応させて配置するもので、護岸基礎の角部4に対応させてて斜面枠部24を形成し、天端部16に対応させて上枠部21を位置させるように構成している。また、前記施工枠体20と組み合わせて、前記施工枠体20と対称的に構成される施工枠体を配置して、2つの施工枠体により角部接続層15をアスファルト混合物により構築でき、施工枠体20と一体化した均一な厚さのアスファルト混合物の層を構成することができる。なお、前記施工枠体20は、後述するアスファルト補修層の構築に用いる施工枠体と、ほぼ同様な性質を有するものであるから、その詳細な構成は、図10以下の施工枠体の項で説明する。
【0030】
前記2つの施工枠体20を組み合わせて角部接続層を構築する際には、前記施工枠体20の上部と斜面枠部24に対応する斜面部には、金網を設けない開口面として構成し、角部4を挟んで配置する2つの施工枠体の間で、アスファルト混合物を一体のものとして打設することができる。前記角部接続層15を構築する際に、最初に地盤6の上に所定の厚さで下面部18を施工し、その下面部18の端部に下面を支持させるように、護岸基礎の斜面の角部に施工枠体20をセットし、前記施工枠体20の内部に向けてアスファルト混合物を打設する。前記施工枠体20の内部にアスファルト混合物が充満された後で、護岸基礎5の上面の所定の範囲に天端部16を施工して、角部接続層15として一体化した遮水保護部材を構築することができる。
【0031】
図9に示す例は、前記角部接続層を構築する際の構造を横断面で示す説明図であり、護岸基礎5の上に両側の遮水処理層の遮水用シート11、11を近接させて配置し、前記遮水用シートの上部の所定の範囲にまたがるように、アスファルト混合物28を所定の厚さで打設する。そして、前記アスファルト混合物28の層による角部接続層15を、前記図8に示すような枠体と一体に構築することにより、遮水用シートと一体化した角部接続層を形成することができる。
【0032】
図10に示す例は、前記角部接続層を遮水シートの上にアスファルト混合物の打設により構築したのみでは、遮水性能に信頼性が乏しいと想定される場合の対策を示しているもので、遮水用シートの端部を上下のアスファルト層の間に挿入する状態で構築する場合を示している。前記図10に示す角部接続層15aにおいては、護岸基礎の角部4に対して最初に下部のアスファルト混合物28aを所定の厚さに打設して、護岸基礎の表面の凹凸を解消する。次いで、前記下部のアスファルト混合物の層の上に遮水処理層のシート11、11の各々端部をできるだけ近接させる状態に配置して、前記下部のアスファルト混合物の層28aの上に、両側の遮水処理層の遮水シート11、11を密着させて配置する。
【0033】
次いで、前記遮水用シートの上の所定の範囲に亘って、アスファルト混合物を打設して上部の層28を所定の厚さで構築する。前記上部のアスファルト混合物の層28を構築することにより、アスファルト混合物で形成する上下の層28、28aの間に、遮水用シートの端部を挿入した状態で一体化して、遮水性能に信頼性を発揮できる角部接続層15aを構築することができる。なお、前記上部のアスファルト混合物の層28を構築するに際しては、前記図8に示すような施工枠体を用いて、アスファルト混合物の打設を行うことにより上部の層の厚さを一定に形成して、打設してから長時間経過してもアスファルト層の厚さが変化しないように保持させることが可能になる。
【0034】
前記各実施例に示したように、シート類やアスファルトマット、アスファルト混合物の層等を重合させた状態で遮水処理層を構築した場合でも、工事中に何等かの問題が発生して、前記遮水処理層が破損したり、裂け目等が形成されて遮水性を良好に発揮できないという問題が生じることが想定される。そこで、前述したような遮水処理層に裂け目等が生じた時には、その破損箇所を覆うように、図11に示すようなアスファルトのマット状部材を重ねて敷設することが考えられる。しかしながら、前記アスファルトのマット状部材を追加して敷設する場所が、遮水用シートのみの層である場合には、アスファルトのマット状部材を重ねて敷設するのみでは、シート類とアスファルトとの間に隙間が生じやすく、十分な遮水性能を発揮できないことがある。前述したような問題を解決するために、以下に説明するように、アスファルト混合物を所定の厚さで施工したマット状部材を構築して、遮水処理層の裂け目の補修と遮水処理を行うことが必要となる。
【0035】
前記各実施例に示される埋立護岸の遮水処理層は、シート状遮水体とアスファルト混合物により構成される場合の他に、シート状遮水体と固化処理土による遮水処理層に対しても適用が可能である。前記固化処理土としては、例えば、セメントを混合した土の層を所定の厚さに被覆して構築するものであり、その土の層と遮水用シートを重ねて施工する。また、前記固化土と同様に、粘性土の層を所定の厚さで施工したものと遮水用シートを重ねて施工することもある。さらに、遮水用シートと保護マットを重ねた遮水処理層、またはシート状遮水体を複数層重ねて構成したものもまたは、保護マット、固化処理土、粘性土もしくはアスファルト混合物のような遮水性を有する遮水層を各々単層として構成したものを対象とすることも可能である。前記各構成の遮水処理層においても、遮水処理層のシートや角部の接続部を構成する場合や、破損箇所に対する補修を行う必要があり、特に土を主要な成分として用いて遮水処理層を構築する場合には、土が圧密されることや、水を含むこと等により、割れ目が形成されやすい。そこで、そのような破損箇所の補修等に際しては、前記遮水用シートとアスファルト混合物の層で構成する遮水処理層の場合と同様に、遮水処理を行うことができることは当然である。
【0036】
図12以下に説明する例は、前記遮水処理層10を護岸基礎5の表面に施工した後で、大きな石や塊等の尖ったものが落下する等の事故が生じて、遮水処理層10の一部に裂け目14が形成された場合の対応策を示している。前記遮水処理層10に裂け目が形成された場合に、その裂け目を通って護岸の内外に海水が流通するという問題が発生するので、その裂け目を塞ぐ必要が生じる。そこで、例えば、前記アスファルトマットや遮水用シート等を敷設した遮水処理層の上に、別の遮水用シートやアスファルトマットを重ねて施工し、例えば、図11に示すような状態で、裂け目を塞ぐ処理を行うことが考えられる。ところが、前記遮水処理層10の上に直接アスファルトマットや遮水用シートを敷設する場合に、既に施工している遮水処理層の上に水密に設けることは困難であり、その作業が水中作業であることから、非常に面倒な工事を強いられることにもなる。また、前記遮水処理層に裂け目が生じた部位に対して、アスファルト混合物を敷設して補修層を施工することは、比較的容易であると考えられる。しかしながら、前記裂け目の形成された位置が斜面部であると、アスファルト混合物が斜面に沿って流れてしまうことと、時間の経過とともにアスファルトの特性により、次第に斜面の下方に流れて上部から厚さが変化すること等のアスファルトに特有な問題が懸念される。そして、遮水処理層の上に所定の厚さのアスファルト補修層を構築した状態を、長い期間に亘って維持できないと想定される。
【0037】
そこで、本発明においては、図12に示すように、裂け目14が形成された部分を中心にして、大きな面積で施工枠体31を配置して、前記施工枠体31の中にアスファルト混合物を施工し、一定の厚さを有するアスファルト補修層30を構築して裂け目を塞ぐような手段を用いている。前記アスファルト補修層30を施工するために用いる施工枠体31は、図13、14に示すように構成することができるもので、高さを20〜30cmにして、その面積は裂け目の大きさ等に応じて任意に形成することができる。前記施工枠体31を、既設の遮水処理層10上に載置して位置決めするための下枠部材35は、下方側と両側部に型鋼やH型鋼を配置して、遮水処理層に対応する面を開口させる状態に設ける。また、前記施工枠体31の上枠部材32と底枠部材36、および側枠の各々は、所定の間隔に配置する縦枠鋼材や横枠鋼材34を、型鋼やその他の太くて重い鋼材の骨組み部材で構成し、遮水処理層の上に設置した状態での安定性を高めている。
【0038】
そして、前記骨組み部材により構成した枠体に対して、アスファルト混合物の漏れ出しを阻止可能で、空気や水の流出を可能にするような網状の部材や多孔質の板状部材等のメッシュ部材を用いて、上面板37、側面板38および底面板39を設けている。前記メッシュ部材としては、例えば、前記施工枠体20の場合と同様に、目の細かい金網やパンチメタルのような金属材料、またはプラスチック製の織布や不織布、もしくは、織布と金網とを重ねた複合シート材料等を用いることができる。また、前記骨組みの間に鉄板等を取付けて上面と下面が開口する箱を形成し、その鉄板の間に所定の間隔で隙間を形成し、金網等の孔開き部材を配置することもできる。そして、前述したように施工枠体31を構成することにより、遮水処理層10の上に施工枠体31を配置して、上部の開口からアスファルト混合物を流し込んだ時に、高温のアスファルト混合物により熱せられた水と、その加熱により発生する水蒸気等が前記孔開き部から外側に漏れ出して排除されるので、施工したアスファルト混合物に空隙等が生じることがない。
【0039】
前述したように構成した施工枠体31は、図14に示すように、遮水処理層10の所定の位置に設置して、アスファルト補修層30の構築に対処させることができるが、前記施工枠体31を斜面に設置した状態で、水中で波浪の影響を受けて移動することがないものとして構成する。前記施工枠体31を遮水処理層の斜面部に設置して安定させるためには、図示されるように、斜面の下部と施工枠体の上の所定の範囲に捨石層を構築して、アスファルト混合物を施工した際に、その流動圧力により施工枠体31が移動しないように固定する。そして、施工枠体31の上側の開口からアスファルト混合物をホース等を用いて注入し、施工枠体の内部空間に充満させるようにするが、その際に、施工枠体の内部に充満している水をメッシュ部材を通して排除しながら、内部にアスファルト混合物を充満させて、アスファルト補修層30を形成する。
【0040】
前述したようにして、施工枠体31の内部にアスファルト混合物を充満させ、アスファルト補修層30を施工枠体31と一体に形成することで、流動性の大きいアスファルト混合物は、遮水処理層10の表面に隙間なく貼り付いた状態となり、裂け目を完全に塞ぐ作用を発揮する。しかしながら、前記アスファルト補修層30を所定の厚さで構築してから施工枠体31を取り外すと、アスファルト混合物は長い期間流動性を保持するので、アスファルト補修層30が変形すると考えられ、裂け目の部分を塞ぐ性能を長期間に亘って維持させることが困難となると推定される。そこで、前記施工枠体31を用いてアスファルト補修層30を構築する場合には、施工枠体を取り外さないでそのままおくようにすると、アスファルト補修層30の厚さを施工枠体31により維持でき、裂け目に対する遮水性能を良好に発揮できるものとなる。
【0041】
図15に示す例は、施工枠体31を斜面部に設置する際の固定方法の別の例を示しているもので、例えば、裂け目が比較的小さい場合や、斜面の上部で捨石により下部を押さえることが困難な場合には、斜面の上部の固定部材からワイヤ等の吊具40を用いて係止して設置する。そのような吊り下げ手段を用いる場合には、前記施工枠体31はアスファルト混合物の施工により、斜面から浮き上がらないような重量の大きいものとして形成する。また、前記吊具40は、アスファルト補修層施工中に施工枠体の移動を阻止するために、多数本のワイヤ等を配置することができる。前述したようにして、アスファルト補修層30を裂け目に対して施工する場合に、そのような補修箇所に対しては、できるだけ早期に廃棄物を投下して、その廃棄物の重さで押圧作用を付与できるようにすれば、施工枠体の固定を容易に行うことができ、追加施工したアスファルト補修層30を安定させる作用にも寄与できることは当然である。
【0042】
なお、前記施工枠体31を斜面部に固定配置して、アスファルト混合物を施工する際には、従来より海中に施工するために用いているパイプを使用することができるが、その他に、アスファルトに対応させて構成したバケット等を用いることも可能である。前記裂け目を補修するために構築するアスファルト補修層は、遮水処理層がアスファルト材料により構成される場合、または、プラスチック製やゴム製のシートのみを用いて構成された場合、改良固化土や粘土のみを用いて構成したものに対しても、有効に利用することができる。前記遮水処理層をシートのみで構成する場合には、遮水処理層の施工は容易であるが、小さな衝撃で容易に遮水性を損なうという問題がある。そのような薄い遮水処理層に対しても、同様なシートを隙間なく一体に貼り付けることは困難であり、その補修部の信頼性を維持することが困難である。そのような問題に対して、前記実施例に示したようなアスファルト補修層を設けることは、その施工が容易で、単に施工枠体を配置してアスファルト混合物を施工するのみで、容易に対処が可能となる。
【0043】
前述したような廃棄物処理場の埋立護岸または、人工島を区画する護岸は、前記図1に示すように、護岸基礎5の上にケーソンを設置して構成することの他に、図16ないし図19の各々に示すように構成することができる。図16に示す埋立護岸1aは、石を積重ねて石積護岸50として構築するもので、工事現場付近から大きな石を入手可能な場合に、ケーソン等を用いずに構築することができる。前記高い石積護岸50を、埋立護岸1aとして構築するためには、所定の高さ毎に段部を形成して、石積護岸50の斜面の保護を行うことができるようにしている。前記石積護岸50の埋立地8側の斜面には、遮水用シートとアスファルト混合物の層を複合した遮水処理層10aを配置し、信頼性の高い遮水処理を構築することができる。
【0044】
前記埋立護岸1aの埋立地8側に設けている遮水処理層10aにおいても、前記図7に示した角部接続層の施工と、破損部分に対するアスファルト補修層の施工を行うことができる。なお、前記角部接続層の施工に際しては、複数の段部の斜面部と水平部のそれぞれに対して、斜面部では施工枠体を用いたアスファルトマスチックの施工を行い、水平部に対しては、アスファルトマスチックを所定の厚さに施工して斜面部と一体化することができる。
【0045】
図17には、前記図1に示したように護岸基礎の上にケーソンを設置した埋立護岸1に加えて、埋立地8側にシートパイルを列状に連続させて、遮水手段を介して打設した内側の仕切壁55を構築し、前記仕切壁55とケーソン2の間をタイロッドのような接続部材56により接続して、強固な複合型の埋立護岸10bとして構築する例を示している。前記図17の埋立護岸10bにおいて、埋立地8の外海側に構築するケーソン2は、所定の高さで構築した護岸基礎5の上に、陸上で構築したコンクリートや鋼製のケーソンを載置して、前記図1の埋立護岸1の場合と同様に構成する。前記複合型の埋立護岸1bは、大水深の海域での埋立護岸の信頼性を向上させるため等の目的に対応させて構築するものである。
【0046】
そして、埋立地8を外海と遮断するための遮水処理層10bは、前記シートパイル列による仕切壁55の内側と海底地盤6の上の所定の範囲に亘って敷設するが、前記遮水処理層10bにおいては、垂直面に沿わせてシート状の遮水部材を配置することが可能であるとしても、アスファルト混合物を打設してシートと組み合わせた遮水処理層を構築することは困難である。そこで、前記海底地盤面に対しては、シートとアスファルト混合物による遮水処理層を構築するが、仕切壁55の垂直面に沿わせて配置する遮水処理層としては、複数枚の遮水用シートを重ねて設けることができる。
【0047】
図18に示す埋立護岸1cの例は、鋼管パイルを列状に打設し、遮水手段を介して構築した仕切壁60を外海側に配置し、その仕切壁60の内側に石積層65を構築している。また、前記仕切壁60から所定の間隔をおいた内側に控え柱61を構築し、仕切壁60と控え柱61の間を接続部材62により接続している。前記控え柱61はH型鋼等の柱部材を打設して構築するもので、接続部材62としても前記図17の接続部材56と同様に、タイロッド等の他に任意の接続手段を設けることができる。前記鋼管パイル列による仕切壁60の内側に構築する石積層65としては、付近で入手可能な石を積重ねて構築するもので、前記護岸基礎を構築する場合よりも小径の石を用いることができる。そして、前記石積層の埋立地側の斜面部には、遮水処理層10cを配置するが、前記遮水処理層10cには、前記図1や図16に示す例と同様に、遮水用シートとアスファルト混合物の層とを複合した遮水処理層として設けることが可能である。
【0048】
図19に示す埋立護岸1dは、所定の間隔をおいて2段に鋼管パイル等を打設し、遮水手段を介して設けた仕切壁60、60aを配置し、前記仕切壁60、60aの間を接続部材62により接続している。前記仕切壁60、60aの間には、埋め立て土やコンクリート片、その他の有害物質が滲み出ない安定した性質を有する廃棄物を充満させている。前記埋立護岸1dの内側の面には、遮水処理層10dを壁に沿わせて敷設し、その遮水処理層を海底地盤の所定の範囲に亘って延長して敷設した遮水処理を施している。前記遮水処理層10dにおいて、仕切壁60aの垂直な壁面に沿わせる遮水部材としては、複数枚のシート状の遮水部材を重ねて敷設することができ、海底地盤6の上に対してはシート状部材とアスファルト混合物の層とを重ねて設けることができる。
【0049】
前記図17ないし図19に示すように、シートパイル列または鋼管パイル列により仕切壁を構築するに際しては、前記仕切壁を構成するシートパイルや鋼管パイル等の継ぎ目の部分で、水が漏れ出すことはさけられない。つまり、前記仕切壁等においても、石積基礎の場合と同様に、仕切られた埋立地の内側と、外海の間で水が流通するので、前記仕切壁等に対して、遮水処理を施すことが求められる。そこで、各実施例では、略垂直に構築された仕切壁やシートパイル列等に対して、遮水用シートを配置して埋立地の内外に水が流通することを阻止できるようにする。
【0050】
前記シートパイルや鋼管パイル等の仕切壁のような垂直な壁部材に対して、シート状の遮水部材を敷設する場合にも、遮水用シートが衝撃が加えられたりして破損することがある。前記垂直に敷設したシート等が破損した場合には、破損部に別の遮水用シートを重ねて敷設して遮水処理を行うことや、前記図14等に示したように構成される垂直な枠体を破損部に設置して、アスファルト混合物を打設すること等の手段を用いて、破損部の補修を行うことができる。また、海底地盤上に敷設した遮水処理層の破損等に対しては、アスファルト混合物を所定の範囲に打設することによって、その補修を容易に行うことができ、遮水処理層の信頼性を向上させることができる。
【0051】
なお、前記石積護岸の斜面の傾斜角度が大きい場合には、単純にアスファルト混合物を打設するのみでは、斜面に所定の厚さの遮水層を構築することは非常に困難な場合がある。そこで、前記各実施例に示したような施工枠体を、斜面に沿わせて任意の間隔で配置してから、アスファルト混合物を打設して固定遮水層を構築する等の手段を用いることも可能であり、前記施工枠体の隙間には後でアスファルト混合物を打設して、隙間のない遮水処理層を構築することができる。また、前記アスファルト混合物の打設と合わせて、遮水用シート等を重ねて配置することで、遮水処理層の信頼性を向上させ得ることは当然である。さらに、アスファルト混合物を直接打設することに代えて、アスファルトマットを遮水用シートと重ねて配置し、前記アスファルトマットの継ぎ目の間に遮水処理を施すことにより、信頼性の高い遮水処理層を構築することもできる。
【0052】
【発明の効果】
前述したように構成したことにより、本発明においては、前記遮水用シートによる遮水作用と、所定の厚さで形成するアスファルト混合物層とを重ね、遮水処理層を2層または3層の遮水部材を重ねて配置して一体化した遮水処理層として構成することができ、埋立地の仕切護岸での遮水性を良好に発揮できる。また、前記アスファルト混合物を打設するに際しては、ネット状部材を含むようにして打設することにより、所定の厚さに形成されるマスチック層と、遮水用シートとを二重または三重に重ねて遮水処理層を形成することで、遮水性を良好に発揮させることができ、そして、外海側の水圧に対して十分な遮水性を発揮し、投棄物を投下した時の衝撃と、投棄物による押圧作用や衝撃に対して良好に抵抗できる遮水処理層を構築することができる。
【0053】
前記効果に加えて、前記遮水処理層の角部に対して角部接続層を構築することで、遮水性が不安定となりやすい遮水用シートの接続部での遮水性を強化することが可能であり、その角部接続層の施工も容易に行うことが可能である。前記角部接続層を構築するに際しては、遮水用シートの接続部を覆うように、アスファルト混合物を所定の厚さで打設することや、遮水用シートの端部をアスファルト混合物の層の間に挟み込む状態で構成して、遮水性能に信頼性を持たせることができる。また、前記遮水処理層に裂け目が形成された場合に、前記裂け目を広く覆うようなアスファルト補修層を構築することにより、遮水処理層の遮水性を良好に維持させることができる。そして、前記アスファルト補修層に対して施工枠体を取り外さずに一体に設置することにより、アスファルト補修層の性能を長期間に亘って維持でき、特に薄いシートのみを配置した遮水処理層においても、その遮水性を良好に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 護岸の一般的な構成を示す説明図である。
【図2】 図1の護岸の角部の構成を示す平面図である。
【図3】 遮水処理層を遮水用シートとアスファルト層により構築する例の説明図である。
【図4】 図3と反対の組み合わせの説明図である。
【図5】 遮水処理層を3層の遮水部材により構築する例の説明図である。
【図6】 図5とは異なる組み合わせの遮水処理層の説明図である。
【図7】 護岸基礎の角部に設ける角部接続層の説明図である。
【図8】 図7の角部接続層に組み合わせる施工枠体の説明図である。
【図9】 角部に形成するシート状遮水体の接続処理層の説明図である。
【図10】 図9とは別の接続処理層の例の説明図である。
【図11】 遮水処理層に裂け目が形成された状態の説明図である。
【図12】 アスファルト補修層の施工に用いる施工枠体の説明図である。
【図13】 施工枠体の一部を拡大して示す斜視図である。
【図14】 施工枠体の設置例の説明図である。
【図15】 施工枠体の他の設置例の説明図である。
【図16】 石積護岸の構成を示す説明図である。
【図17】 図1の護岸に仕切壁を組み合わせた構造の説明図である。
【図18】 護岸の別の例の構成を示す説明図である。
【図19】 複数の仕切壁により構成する護岸の例の説明図である。
【符号の説明】
1 埋立護岸、 2 ケーソン、 3 遮水部、 5 護岸基礎、
6 海底地盤、 7 改良地盤、 8 埋立地、 9 上面保護層、
10 遮水処理層、11 遮水用シート、 12 アスファルト層、
14 裂け目、 15 角部接続層、 16 天端部、
17 斜面部、 18 下面部、 20 施工枠体、
21 上枠部、 22 下枠部、 23 側枠部、
24 斜面枠部、 26 金網、 28 アスファルト層、
30 アスファルト補修層、 31 施工枠体、 32 上枠部材、
33 縦枠鋼材、 34 横枠鋼材、 35 下枠部材、
36 底枠部材、 37 上面板、 38 側面板、
39 底面板、 40 吊具、 42 捨石層、 50 石積護岸、
55 仕切壁、 56 接続部材、 60 仕切壁。

Claims (2)

  1. 海底地盤6のケーソン構築区域の地盤に地盤改良工事を施工した改良地盤7の上に、護岸基礎5を構築し、前記護岸基礎5の上にケーソン2を列設して、外海と埋立地を区画する埋立護岸1において、
    前記埋立護岸1を、平面視で所定の角度で接続する角部4を有するものとして構築するに際して、
    前記護岸基礎5の埋立地側の上面5bと斜面部5a、及び海底地盤6の所定の範囲に亘って、遮水処理層10を構成する遮水シート11を敷設し、前記角部では、さらにその上に角部接続層15を構築して、前記護岸基礎5、5の角部4に対する保護手段とするもので、
    前記角部接続層15としては、前記角部4の表面を覆うために、地盤面6上から護岸基礎5の斜面部5aとケーソン2に至る上面5bまでを覆うように、角部4の両側の遮水シート11の端部を含む広い範囲に、アスファルト混合物28の層を構築することを特徴とする埋立護岸の遮水構造。
  2. 前記角部接続層15を構成するに際して、前記護岸基礎5の角部4の斜面部5aに沿わせて施工枠体20、20を配設し、アスファルト混合物を打設して、前記枠体と一体化した均一な厚さの角部接続層15として構築するもので、
    前記施工枠体20は、上枠部21、下枠部22、側枠部23および斜面枠部24を組合わせた枠体として構成し、その上面と側面および下面に金網のような孔開き部材を設けた籠状のもの2つを、金網を設けない開口面として形成した斜面枠部24を対向させて突き合わせて配置したものを用い、
    前記施工枠体20にアスファルト混合物28を打設することで、遮水シート11と施工枠体20、20をも併せて一体化した均一な厚さのアスファルト混合物28の層として構成することを特徴とする請求項1に記載の埋立護岸の遮水構造。
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