(遮水層の構築法)
図示される例にしたがって、本発明の遮水層の構築工法を説明するが、以下に説明する実施例においては、シート部材を遮水を要求される表面に対して、隙間なく敷き詰めて設けることで、遮水層として構築する手法を用いる例を示している。前記シート部材としては、従来より一般に使用されている任意の遮水シートを用いることが可能で、例えばアスファルトマット、塩化ビニールやその他の樹脂製のシート、その他に水を通さない性質を有する遮水性のシート類を用いることができる。また、前記シート類のみでは、長期間に亘って遮水性を維持できないと考えられる場合には、アスファルト層や粘土層等を構築した表面に、遮水シートを敷設して組合せ、複合・積層した遮水層として構成することも、必要に応じて適宜採用できるものである。
なお、前記遮水材としては、アスファルト系遮水材、コンクリート系遮水材、土質系遮水材等の他に、従来公知のケミカル系遮水材等を用いることが可能である。前記各種の遮水材は、従来より海中での打設が可能なことが知られているものであれば、遮水シートとの相性を考慮して、任意の遮水材を用いることが可能であるが、以下の実施例では、アスファルトマスチックを代表にして説明している。その他に、他の遮水材料を単独で、または複数の遮水材料を組み合わせて使用することが可能なことは当然のことである。
図1に説明する例は、予定する海域を所定の広さの範囲を、仕切護岸を構築して仕切ることにより、廃棄物処分場を区画する一般的な廃棄物処分場の例を説明している。前記仕切護岸は、ケーソン等の構造物を列状に立設して護岸を施工する手法を用いて、埋立て処分場と外の海域との間で、海水が流通しないように区画するようにしている。この仕切護岸1を構築する場合に、海底地盤が軟弱な地層の場合には、その海底地盤を構造物を支持するに適した強度を持たせるために地盤改良を行う。図示する本願の実施例においては、水を通さない性質を強化するために、遮水材としてのセメントミルクを海底の土と混合・攪拌する等の処理を行い、所定の厚さの地盤改良層4とする工事を施工してから、その上に所定の高さで捨石基礎3を構築する。
前記捨石基礎3の上に立設する構造物2としては、一般にはコンクリートケーソンを用いるが、その他に、鋼製の箱状の本体の周囲をコンクリートで被覆して構成する、いわゆるハイブリッドケーソンと呼ばれる種類のケーソンも、水深の深い場所では使用される。前記構造物2を基礎3の上に立設して構築するに際しては、構造物の下面に所定の厚さのアスファルトマット2M等を敷いて、前記マットにより滑り止めの性質を発揮させるとともに、構造物の下面と基礎3の間からも、水が流通しないように遮断する手段としても用いる。また、前記ケーソンのような構造物を一列に立設する工法の他に、矢板を列状に打設して仕切護岸を構築する工法や、前記構造物と矢板壁の2つの遮水壁手段を複合した遮水手段も、必要に応じて用いることが可能である。
前記構造物2を列状に立設して、仕切護岸1を構築するに際しては、その立設する構造物の間に隙間が形成されないように、構造物間での遮水工を施工するもので、その遮水工としては、従来公知の任意の隙間を塞ぐ工法を用いる。例えば、隣接するケーソン間の隙間の海陸の両側にゴム等の仕切部材を挿入して内部の空間を規定し、その空間分にアスファルトマスチックを注入して、一体化させた封止手段を構築することができる。また、ケーソン間には、アスファルトマットのような、遮水性を発揮可能なシートやマット類を挿入して挟みこむことでも、遮水性を発揮差せることができる。その他に、列設した構造物2の内海側には、必要に応じて縦壁の表面に沿わせた任意の材料による遮水層を構築し、構造物の間を遮水処理することと合わせて、構造物の列の隙間での遮水工を施すことも、必要に応じて施工可能である。
前記構造物2を支える捨石基礎3は、工事用の船から大きな石を投下し、石を積み上げて構築するものであるから、その基礎3の内部には大きな空隙があって、自由に水が流通するものである。特に、基礎の表面部では、仕切護岸1の埋立地側に対しては、完全に遮水する性質を持たせるように遮水処理を施すことが必要である。そこで、前記捨石基礎3の表面に沿って、基礎表面遮水層10を構築して、不透水性を発揮させる処理を行った海底地盤4と、ケーソンの表面に設ける遮水層との間で前記基礎表面遮水層10により、遮水性を発揮させるような処理が施される。また、前記基礎表面遮水層10としては、捨石基礎3の表面を覆うように、遮水性を有する保護層11を所定の厚さで施工し、その上に遮水シート12を敷き詰めて施工すると良い。
前記基礎表面遮水層10として施工する遮水シート12は、構造物側の端部と斜面の下部側との両端部で、それぞれ隙間が生じないように、遮水性を発揮させる処理を行っている。また、図1に例示するものでは、シート12の上下の面に対して、粘土系の土やその他の材料を所定の厚さで敷いて、保護層11、11aを構築して、遮水シート12に落下物が直接当たらないように保護する手段を用いている。さらに、構造物側の端部においては、遮水シート12の端部を、構造物2のフーチング2Aの斜面上にまで延長させ、必要に応じてシート端部を接着する等の固定手段を用いて支持し、その上にアスファルトマスチック14を施工し、前記遮水層10の上表面を覆うように土の層11aを施工して強固に保護する。前述したようにして、構造物とマットによる遮水層との間で、水を通さないように接続する遮水手段とを合わせて施工するが、その施工法に関しては、後で、詳細に説明する。
前記基礎表面遮水層10の海底地盤4の側の、いわゆる斜面の下側の端部の地盤上に、端部押え工15を施工するもので、海底地盤の上まで延長したシートの施工位置で、地盤の凹凸を解消するために、均しアスファルト16を施工する等の、必要な補助手段を施してから前記端部押え工15を施工する。
前記遮水シート12の地盤側の端部を固定するために、前記遮水処理部の上にシートの端部を位置させるように敷設してから、ブロック18、18aを所定の間隔で2列に置いて、その2列のブロック18、18aの間にシートの端部を置いて、端部押え部材17として、所定の厚さでアスファルを施工して構築する。したがって、前記シート12を下面の凹凸をなくした状態で敷き詰め、そのシートの両端部での固定・保持手段を施工することで、構造物2の内側面と地盤の上との両端部で、不透水性を良好に維持できるような処理を施している。
前述したようにして、捨石基礎3の内海側に基礎表面遮水層10を施工してから、その上面を覆うように、土や砂等を所定の厚さで施工して保護層11aを施工する。これは、次にその遮水層の上に投棄して、裏込石層5を構築する際に、投棄する石の角が当たったりして、または石の落下の衝撃によりシートが破損したりすることがないように、前記保護層11aにより保護するのである。そして、前記護岸1の内海側に裏込石層5を施工して、前記裏込石層5の表面(斜面)に対しても、斜面遮水工20を施工する。
前記斜面遮水工20の上には、所定の厚さとなるように押え捨石の層6を施工して、前記斜面遮水工20を安定させる。そして、上から何等かの衝撃が加えられたり、廃棄物を投棄して捨土層を構築するに際して、偏った荷重が遮水層に作用したとしても、その外力が直接遮水層に悪い影響を与えたりしないように保護している。その後に、廃棄物を投棄して充填層7を構築するが、前記充填層7の上には、最後に覆土層8を所定の厚さで施工して、埋立地に樹木や草等を植えて、緑化する際に根を張らせる土として利用できるようにすることも考えられる。
前記裏込石層5の表面(斜面)に対して、斜面遮水工20として施工する遮水層に対しては、必要に応じて保護マット22等を敷いてから、その上面に遮水シート21を敷き詰める。また、前記シート21の上面にも、必要に応じて保護マット22aを敷いてから保護材23を敷き込むような手段を用いることで、その上に押え捨石の層6を施工した時にも、斜面遮水工20での遮水性を損なったりすることなしに、遮水工を安定・保護できるように設けている。なお、前記斜面遮水工20の遮水シート21を、または、保護材23とを組み合わせて複合した遮水工に対して、その遮水工の上下の両端部では、前記基礎表面遮水工10の場合と同様な手段を用いて、遮水工の端部での遮水処理を行うようにしている。
前記斜面遮水工20において、その遮水シート21の上側の端部は、端部押え工24として設けるもので、例えば、遮水シート21と保護マット22とを重ねた状態のままで、構造物の側面に沿わせて下側に向けて折り曲げるようにして施工すると良い。このシート類を折り曲げて適当な深さまで垂下させるようにする場合には、例えば、護岸1の構造物2に設けている内側面の縦壁の表面にも遮水層を設けておき、この遮水シート21とを重ね合わせるようにして、遮水性を維持させることができる。なお、前記斜面遮水工20の遮水シート21のみを、縦壁の表面に設けた遮水処理層に対して水密に接続することによっても、ケーソンの上部での遮水の性能を発揮させることができる。
また、前記遮水シート21の下側(海底地盤側)の端部は、前記基礎表面遮水層10と同様な処理を施し得るもので、斜面遮水工20の海底地盤4の側の端部では、端部押え工25を施工している。前記端部押え工25としては、海底地盤のシートの施工位置での凹凸を解消するために、均しアスファルト26を施工して、シート端部の裏面が海底地盤の上(押え工25の上面)に隙間なく接するようにする。そして、その上に遮水シート21の端部をおいて、そのシート21の地盤側の端部を固定するために、ブロック28、28aを所定の間隔を介して2列状に施工し、その2つのブロック28、28aの列の間に、所定の厚さでアスファルを施工して、シート端部押え部材27として設けている。
前述したようにして、ケーソン等を立設して構造物2による護岸1を構築し、その内海側に、基礎3の表面と裏込石層5の斜面とに対して、それぞれ遮水工を施工してから、押え石の層6を所定の厚さとなるように施工する。そして、前記押え石の層6により、廃棄物が直接遮水工に接することがないように保護して、処分場を外海と区画し、後で区画の内側に投棄する廃棄物に接して汚染された水が、外海に流出しないように区画する。前記護岸とその保護・遮水手段を構築してから、廃棄物を投棄して埋立て、その廃棄物を積み重ねた上に、覆土層を所定の厚さに積層して草木等の成育に供するようにすることで、埋立地の造成を完了する。
前記仕切護岸の例は、列状に立設して設けたケーソンを用いて海域を区切って、廃棄物処分場を構築する場合の例で説明したが、その他に、図2に示すように、ケーソン等による護岸と平行に鋼製矢板を列設して、前記矢板壁とケーソンの壁とを組合せて構成する場合もある。その他に、矢板壁のみを1列、または2列に立設して、それにより埋立て海域を区画する工法も用いられるが、それ等の矢板壁を用いる例では、本発明の次に説明する地盤と壁との間での遮水処理に関しては、前記実施例とほぼ同様な工法を用いることができる。つまり、垂直に立設した矢板壁と遮水シートの接続部での処理に関しては、後で説明する工法を用いて処理可能であることから、前記図2では、前記図1と異なる構成の遮水壁の実施例として説明する。
図2に示す例では、ケーソン2のような構造体を、捨石基礎3の上に1列に立設して護岸を構築し、その護岸本体の裏面側に所定の間隔をおいて、鋼製の矢板を列状に打設して矢板壁30を構築している。前記護岸本体1と矢板壁30との間の空間には、裏込石を充填した層5aを構築して、2つの壁の間隔を維持させるとともに、前記矢板壁30の内側にも、裏込石の層5を構築して、遮水壁を強固な補助層で保護している。前記裏込石の層5の埋立て土に接する表面は、所定の角度を有する斜面として形成しておき、その斜面を覆うように、斜面遮水工20を施工するもので、前記斜面遮水工20は、前記図1の斜面遮水工と同様な接続方法を用いることができる。なお、この説明図では、図一に示しているようなケーソンのフーチングを設けることは省略している。
なお、前記図2に説明する遮水護岸の例において、海底地盤の符号4aで説明する地層は、透水性地層を不透水性の地層となるように、地盤改良の処理をしているものであり、打設した矢板の先端部は、不透水層4bにまで達するように構築する。前述したように、埋立地を仕切る遮水壁の周囲の部分を、不透水層として構築することで、埋立てた廃棄物に接して汚染された水は、仕切られた区画の中に閉じ込められることとなる。そして、廃棄物から染み出す汚水や、廃棄物に接して汚染された水が外海を汚したりすることのないように、廃棄物処分場内部に設けた排水処理手段を用いて浄化し、その浄化された水のみを海に排水させるように処理する方式が、一般に用いられている。
(ケーソンとの接続部での遮水)
なお、前記図1、2で説明した遮水工においては、図3以降で詳述する各実施例のように、垂直に設けた遮水手段に対して、水平に敷設する遮水シートのような、2種類の遮水体を組合せて接続することもある。さらに、前記接続部での遮水性能を、良好に維持させ得るようにすることに関しては、以下に説明するような、種々の方法を用いることが可能である。そこで、縦方向に設けた遮水体と、海底地盤もしくは石積基礎等の表面上に敷設する等の、水平方向に施工する遮水シートとの2種類の遮水層を接続する構造に関して、以下に、実施例を説明する。
図3ないし図5に示す例は、海底地盤上に敷設する遮水シートから延出したワイヤを、ケーソンに対して接続することにより、遮水シートが移動することを防ぎ、遮水性能を良好に維持できるようにする場合を説明している。以下に説明する例において、ケーソンの符号を35とし、遮水シートの符号を40として説明する他に、前記図1、2とは異なる符号を付しているが、これは、単純に説明の都合によるものであり、部材の構成が異なることを意味しているものではない。また、以下に説明するように、遮水壁と遮水シートとの間を、遮水性を維持させるようにするためと、遮水シートが何等かの外力により滑りを生じることを阻止して、遮水シートによる遮水性を維持できるようにする接続手段を設ける例においても、それ等を遮水接続手段31と符号を付して説明する。
図3に示す遮水接続手段31の例では、ケーソン35のフーチング36の上から、海底地盤の所定の範囲に亘って遮水用に敷設する遮水シート40を、そのワイヤ40aを用いてケーソンの側表面35aに対して接続し、遮水シート40が地盤上で滑ったりしないように保持させている。この例において、ケーソンの側表面35aには、フック部材41を設けておき、ワイヤ40aを接続して固定させるようにしている。
前記フック部材41は、遮水シート40に設けているワイヤ40a……に対応させて、所定の間隔で配置しているので、ケーソン35を製作する際に、ケーソン内の補強鉄筋に接続して設けることで、対応が可能である。その他に、ケーソンのコンクリートを打設する際に、フック部材の基部をコンクリート中に、任意の深さの位置まで埋め込んで設けておく等の方法を用いることができる。または、ケーソン等を製作した後で、海底地盤上に立設する作業の前の段階で、ドリルを用いてコンクリートに孔を穿ち、接着剤を塗布したフック部材の基部を差し込んで、固定・保持させるような処理を適用しても良いことはもちろんである。
前記遮水シート40をケーソンの側表面35aに対して固定することの他に、図3の例では、フーチング36の端部付近にアンカー部材43を配置して、遮水シート40をフーチング36の端部に固定・保持する手段をも設けている。そして、前記ケーソンの側表面35aとアンカー部材43の間に、アスファルト混合物等の遮水材44を充填して、遮水シート40の端部での遮水性を良好に維持させるようにする。前述したように、ケーソン35のフーチング36を支える基礎に対して、その下面部分と内海側の側面の遮水シートによりカバーしている部分で、遮水性能に欠陥が生じないように、前記ケーソン下部でのシール手段を施工しているものである。
図4に示す遮水接続手段31の例では、ケーソンのフーチング36に対して、あらかじめ凹部37を設けて、遮水シート40の端部を固定・保持させるために、補助手段を構成している例を示している。前記フーチング36に設ける凹部37は、任意の幅と深さを有するものとして構成できるもので、その凹部の側表面側の下部にフック部材41を設けておき、遮水シートのワイヤ40aを接続可能としている。そして、前記遮水シート40を敷設するに際して、そのワイヤ40aの端部をフック部材41に接続し、凹部の形状に合わせて湾曲させてから、ウエイト部材45をおいて遮水シート端部を固定する。さらに、前記残った凹部に、アスファルト混合物のような遮水材44を充満して、遮水シート40の端部をケーソン35に対して水密性を発揮させるようにして固定する。
前記図4では、フーチング36に形成する凹部37が、比較的深く形成された場合の例であるが、図5に示す例では、フーチング36に設けた凹部37が浅く形成された場合に対応させて、遮水シートの端部を処理する方法を説明している。この例では、大きなウエイト部材45を取付けて、そのウエイト部材45の高さに応じて、フーチングの端部よりも高くなるように遮水材44を充填して設け、遮水シート40の端部の固定・保持と、遮水材44によるシール作用とを良好に行わせるようにする。
前述した遮水接続手段の例のように、ケーソン35のフーチング36を用いて、遮水シート40の端部を固定し、遮水材44を側部の空間に充填して、隙間が生じたり遮水シートがずれを生じたりすることを阻止し、遮水手段における信頼性を向上させることができる。前記実施例において、遮水材44として使用する材料としては、水中での施工性等を考慮すると、アスファルト混合物を打設する手段を用いることが最も良い。その他に、従来より海底に打設するために用いているような、遮水性を発揮可能な土にセメントを混合したもの等の、任意の公知の材料を用いることが可能である。
さらに、前記アンカー部材またはウエイト部材としては、製作が容易であり、且つ施工性に問題がなければ、任意の材料を用いて作成したものを用いることが可能である。例えば、コンクリートを用いてウエイトを作成する場合には、コストが安くて海中での施工が容易であり、さらに、ブロック間に入れるアスファルト混合物のようなものを組合せることで、接続部での遮水材の漏れ出しを防止できるという、要求される要件の全て満足できるものが良い。
前記遮水接続手段の各実施例のように、遮水壁をケーソンにより構成する場合とは異なり、次に説明する例では、矢板壁を用いた遮水壁に対して、遮水シートの端部を固定する手段を適用する場合を示している。前記矢板壁を一列状に打設して構築した遮水壁としては、例えば、前記図2のような構成を有する遮水壁、または、矢板の遮水壁を2列に施工して、その壁の間に粘土のような水を通しにくい材料を充填して、構築した遮水護岸を対象とすることができる。また、例示するように、矢板により構成する遮水壁と、地盤を覆うシートによる遮水手段との接続部で、遮水接続手段31を構成して設けることが可能である。
図6ないし8の各々に示す遮水接続手段の例では、遮水壁を矢板壁33として構成した場合に、前記コンクリートケーソンの場合と同様に、遮水シートと縦遮水壁との間で、遮水性を損なうことがないように、遮水処理する例を説明している。図6には、鋼管矢板または任意の断面形状を有する矢板を立設して構築する縦壁(以下矢板壁33と呼ぶ)と、遮水シート40の端部との間で、遮水性を維持させるための処理を行う例の1つを説明している。前記矢板壁33の内壁面には、フック部材41を所定の間隔で設けておき、遮水シート40に設けている荷役用のワイヤ40aを、前記フック部材41に接続することにより、前記遮水シートを矢板壁に固定・保持させる。
また、前記フック部材41の上部にも、所定の高さ方向の間隔をおいて、フック部材42を所定の間隔で設けておき、遮水シート40の上に配置したアンカー部材43を、ワイヤ42bにより側表面に位置決めして設けている。さらに、前記矢板壁33の側表面とアンカー部材43の間に遮水材44を充填して、矢板壁の下端部の土に打ち込んで埋められた部分の基部と、敷設する遮水シート40の先端部から所定の範囲に亘って、遮水処理を施している。なお、前記アンカー部材43としては、前記実施例と同様に、アスファルト混合物の他に、施工性が良好で遮水性を維持できる材料であれば、任意の材料を用いて遮水層を構築することが可能である。
図7に示す遮水接続手段の例は、矢板壁33にワイヤ40aを接続する遮水シート40の端部を、水平状態で支持する前記各方式と異なり、遮水シートの端部をピロー(枕状)部材46の表面に沿わせて湾曲させて配置し、遮水シートにより溝状の部分を構成している例を用いて説明している。この例において、前記枕状部材46を矢板壁33に設けたフック部材42に、ワイヤを用いて接続して、その位置決めを行う手法を用いている。そして、前記枕状部材46の一段と高く盛り上げた枕部分と、矢板壁33の側表面との間の凹み部に、遮水材44を充填して遮水処理を施しているのである。
また、図8に示す遮水接続手段の例においては、前記図6、7の構成部材を合わせた状態のものとして形成し、遮水シートの端部の上下から遮水材により固定・保持する。そのためには、例えば、図示されるように、遮水シートの上にはウェイト部材45と遮水材の層とを設け、前記シートの下側には前記ピロー部材46を配置して、上下から水が通らないようにする処理を施している。
この図8に示す例においては、ピロー(枕状)部材46として、図示するように、凸部に至る水平部分が長く形成されて、ワイヤ42dをフック42aにより接続しているものを用いており、前記凸部の矢板壁側で遮水シート40の端部を押圧保持するように、ウエイト部材45を配置している。前記遮水接続手段の例において、矢板壁33の内海側の側表面に各々取付けて、高さを異ならせて設けているフック部材41、42……は、前記遮水シートとウエイト部材、ピロー部材等の配置間隔に応じて矢板に固定するものであり、前記ウエイト部材のサイズ等に関しても、その遮水壁の受ける外力に対応させて適宜設定されるものである。なお、前記ピロー部材としては、任意の形状のものを用い得ることは勿論であり、マットまたは遮水シート端部を固定・保持できれば良い。
前記図3以降に示している例において、構造物の部分で地面に敷設した遮水シートと、構造物内面の縦の遮水層との間で、隙間が形成されないように処理する手法を具体的に説明した。また、地盤上に敷設した遮水シートを、その端部を構造物に固定・保持させて、シートを斜面部に敷設した部分で、地盤の上を滑ったりすることがないように、保護する例でも説明した。これに対して、図9以降には、廃棄物処分場の地盤上に敷設する遮水シートの接続処理の例を、水平部分または比較的傾斜の緩やかな部分と、大きな角度で傾斜した部分でのシートの接続の各々の例等を、以下に順次説明する。
(水平部分での遮水シートの接続)
図9に示す例は、海底地盤上に敷き並べた遮水シート間で、接続部を構成する例を説明しているもので、前記シート接続部50は、略水平、または非常に傾斜が緩やかな斜面に敷き並べた任意の遮水シートを接続する手段として用いられる。この実施例において、地盤上に敷き並べた遮水シート51、52の端部を、所定の長さずつ重ねるように設けているもので、その重ね部53の下の面に位置させるように、アスファルトマット55をあらかじめ置いている。
そして、前記アスファルトマット55の上に、端部を重ねるように置いた遮水シートの上には、図10に示すように、アスファルトマスチック56を盛り上げるように載せて、その上に大サイズのアスファルトマット57を載置する。前記シート接続部で重ねて配置する遮水シート51、52の端部は、アスファルトのような接着成分を有する材料を、そのシート間に挟んで設けるとなお良いが、後で上部に施工するアスファルトマスチックから、若干のアスファルト成分が分離されて、重ねたシート間に入り込んで、重ねたシート間で接着作用を行うものとなる。前記図9、10に示すように、遮水シートを所定の長さで重ねるのみとし、その上下にマットを敷設して処理することで、遮水シート間での隙間が生じないように接続処理することが可能となる。
前記遮水シートの上下にアスファルトマット57を配置して、アスファルトマスチック56を上に載置するように施工して、軽く押圧して接続する処理を行っておくと、そのマスチック成分のブロック状のものにより、遮水シートの重ね部は水密に接続される。そして、前述したようにして遮水層を施工しておくと、その後で、その上に投棄される大量の廃棄物の重量で強く押圧する作用を加える状態となり、前記上から加えられる押圧力により、シート接続部50での遮水処理は完全になる。
前記実施例において、遮水シート51、52としては、アスファルトシートを用いる場合が最適であるが、その他に任意の遮水シートを対象とすることができる。また、このようなシート接続部を形成することは、遮水層が略水平状態であること、もしくは、非常に緩やかな斜面に沿って遮水シートの接続部が位置される状態の場所では、シート接続部での遮水の効果を発揮させることが可能である。さらに、前記シート接続部は、斜面に直交するように略水平方向に配置する接続部が、略水平な方向として構築される場合にも適用可能である。
前記単純な構成の遮水シート接続部の他に、そのシート接続部を位置させる構築場所が傾斜面である場合にも、適用が可能なシート接続部として、図11、12に説明するような構成の、シート接続部60を構成することが可能である。この実施例において、遮水シート51、52の突き合わせ部61に、止水ゴム62を挟むように設ける等の、任意の手段で接続する。そして、前記突き合わせ部61の両側に所定の間隔をおいて、土嚢等のせき止め部材63、63aを各1列状に並べる。前記せき止め部材には、突き合わせ部の近傍から、せき止め部材の上部に至る間に、漏れ防止シート64、64aをそれぞれ配置して、その部材63、63aにより区画された部分を覆うように、メッシュパネル65を配置する。
前記メッシュパネル65には、下部に脚部材66を突出させて設けており、その高さはせき止め部材63の高さに対応させて設け、前記各部材に区画された空間内部に、アスファルトマスチック68を充填する。前述したようにして、前記接続部に設けた空間に、アスファルトマスチックを注入する際には、パネルを固定するために、図示するように押え捨石の層67を施工することで、シート接続部60が良好な状態で形成できるように処理する。その他に、前記土嚢等を並べて構築するせき止め部材は、例えば、形鋼等を用いると、その構築作業をより容易に行うことが可能となるが、その施工現場で入手可能な資材を用いると良い。
図13に示すシート接続部70の例では、前記両側のせき止め部材72、72aを、遮水シート51、52の重ね部53に配置し、前記仕切った部材の間ではその上にメッシュ枠のような枠体71を配置している。前記枠体71の上と両側面を覆うようにカバー51aを配置して、その両側を前記せき止め部材72、72aにより押圧して保持させる。そして、前記メッシュ枠71により区画された空間の内部に、アスファルトマスチック等を所定の厚さで充満させて構成したシート状の重ね部53を設け、それ等の手段により遮水してカバーするシート接続部70を構成する。
図14に示すシート接続部70aは、遮水シート51、52の端部を重ねずに、突き合わせるか、または少しの隙間をおいて配置している状態のものに対して、遮水・接続を行う場合を説明している。この例において、遮水シート51、52の各々の端部からは、ワイヤ75、75a等を突出させて設けておき、遮水シートの端部付近で押圧・保持する部材として配置する枠体73、73aには、対向する面にアンカー部材74、74aを設けておく。そして、前記アンカーに対して対向する側の遮水シートのワイヤ75、75aをそれぞれ接続し、クロスするように接続したワイヤ75、75aを、枠体73、73aの間に充満させるアスファルトマスチック76の中に埋設させるようにする。なお、この実施例において、枠体の上部にはメッシュ枠を追加して構築することや、全体を覆うように図12のような押え捨石を構築することも、必要に応じて適宜行い得ることである。
前記図11ないし図14で説明した遮水シート接続部の例において、上下左右面が仕切られた区画内に、アスファルトマスチック等の遮水材を充填するためには、適当な場所に孔を設けて、その孔や開口から遮水材を注入して、空間内部に充満させる手法を用いることができる。また、前記遮水シートの接続する部分が緩く傾斜している場合には、遮水材が流れ得る間隔で上に設けた孔から遮水材を注入することも可能である。ところが、傾斜角度が大きいところでは、遮水材が隙間から流出する恐れがあることから、前記各実施例は適用が困難な場合があると考えられる。
(斜面でのシート接続部)
前記各実施例では、水平部分または傾斜の角度が緩やかな部分で、シート接続部を水密に構築する場合を説明した。ところが、一般の仕切護岸においては、遮水処理を必要とする面は、ケーソン等の構造物の堤体から、棄物堆積場の底面に至る斜面で、水平部分と傾斜部分とが組み合わせられている面が対象とされる。また、前記遮水層の施工対象とされる面は、比較的大きな捨石の積み重ねられた傾斜面である。よって、そのような傾斜面に沿って敷設される遮水シートを、水密性を維持できるように接続処理することには、解決を要する多くの問題が残っている。
図15、16に示す例では、前述したような、遮水材を注入しにくい部分に対する処理の例を説明しているもので、遮水シートの端部を重ねた上に、アスファルトマットを載置している。そして、その上から強力な押圧力を加えるウエイト部材83を載せて、前記マットから滲み出すアスファルト成分を接着剤として、シート間での遮水性を発揮させるように構成しているものである。この例において、図15に示すように、捨石基礎3の表面に沿わせて固化処理土の層11を所定の厚さで施工し、さらに、地盤側での凹凸を解消するために、均しマスチック層16を施工して、その上にシート接続部80を構築する。
また、前記斜面部と水平部とを組合せたシート接続部の構築部に対しては、一つの長いシート接続部80を構築することが可能となり、そのシート接続部を配置している斜面の上下の端部の各々で、他の遮水体との間に隙間が生じないようにするためには、押え用のブロック14A、14Bを、必要と思われる箇所に、または任意に配置するとなお良い結果が得られる。
前記図15に示す例において、断面として説明する図16で見るように、固化処理して上面を平らに均した層の上面に、遮水シート51、52の端部を重ねて、重ね部53を形成しておき、幅の広いアスファルトマット81をその重ね部53の上に載置して位置決めする。そのアスファルトマット81の上には、ウエイトとしての土嚢82を大量に載置して、シート接続部をウエイトにより押圧して保持する。そして、前記土嚢をそのまま残した状態で、その上と左右の全周囲分を囲むように、廃棄物を投棄することで、接続部の全体を廃棄物で保護・保持させるようにする。したがって、前述したように、特別な保護手段を講じなくても、遮水シートを水密に接続する作用は良好に行われて、廃棄物に接して汚染された水が外部に漏れ出すことを防止できる。
図17、18に示す例は、傾斜面に沿ってシート接続部を設ける場合には、枠体をそのシート接続部に対して配置しておき、その枠体の中に、遮水材を充填して遮水層を施工する場合を説明している。この実施例において、図17に示すように、遮水シートの端部を重ねて配置する重ね部53に対して、型枠部材としての枠体85を、その傾斜に沿わせて配置することにより、遮水材を充満させる部分を囲む枠体を構築する。前記型枠部材は長さの異なるものを任意に組合せて、水平部と斜面部とのそれぞれに対応させ、接続するシートの重ね部に隙間が形成されないように設ける。
前記枠体85は、図18に断面図として示しているように、両側に配置する鉄の板86に対して、その上下の部分を接続するように、エキスパンドメタル87を設け、対向する角の部分を接続するように、補強材88をクロスさせて配置して構成している。また、前記枠体85は、遮水材を充填する際の圧力等に、その自重で対応できれば良いが、遮水材を充填することで、不安定な状態となるようであれば、その枠体の上に石等を積み重ねる等して、安定させる手段を設けると良い、
また、前記枠体の内部空間に対して遮水材を充満させる際に、水平部分等では遮水材が流れにくいので、そのような時には、上のメタル板87の一部を外して、その開口部から注入する手段を用いれば良い。さらに、前記シート接続部に用いる遮水材としては、アスファルトマスチックのような材料が最適ではあるが、その他に、海中で施工可能な従来公知の任意の材料を用いても良い。なお、前記枠体85の下部から遮水材が流出する等の不都合が発生した時、またはそのような不都合の発生が予測される場合には、側板86の下にゴム製のフィン86を取り付けておくと良い。その他に、傾斜角度が大きい場所で、枠体の上から遮水材が溢れ出る等の不都合が発生する恐れがある場合には、孔の小さいメタル87を使用するか、または、シート等で塞ぐ手段を追加して用いることで対処させても良い。
前記図15〜18に説明したシート接続部の例では、シート接続部に用いた遮水材が溢れ出したり、漏れ出したりすることが比較的少ないと想定される場合の、施工例として説明したものである。これに対して、前記シート接続部に用いる遮水材、または遮水シートの接続に用いる材料が、予定した区分から外に漏れ出して、施工性に問題が発生しやすい時には、以下に説明するように、遮水シートの接続部を密封できるような性質を有する保護手段を用いて、シート接続部を構成することが必要となる。そこで、次に、シート接続部を構築する際に、遮水材を遮水シートの継ぎ目を封止して、接続部を安定して形成できるようにする方法を以下に説明する。
図19〜21に説明する例は、捨石基礎3の斜面遮水工10における遮水シートの接続方法に関するもので、前記各実施例の場合と同様に、遮水シート51、52……を端部に重ね部53を形成するようにして敷き詰めて、斜面遮水工10を構築する。前記斜面遮水工10を構成する場合において、捨石基礎3の斜面に対して、長さ方向が上下となるように遮水シート51、52……を敷き詰め、シートによる遮水層を設ける。前記各遮水シート51、52には、図20に示すように、追加シート91、92を接着部91a、92aを介して取り付けている。
前記追加シート91、92は、薄くて強度の大きいものを用いると良く、そのための追加片として、例えば、強度が大きくて所定の長さと幅とを有するシート部材に、アスファルトを含ませたもの等を用いることが可能である。そして、そのようなシート片の一端部を遮水シートの表面に接着して取り付けること、または、任意の固定手段を用いた接着部91a、92aにより、一体となるように接着する。
前記図20に説明したように、遮水シートの重ね部53に対して、追加シート91、92を取付けることにより、図19に示しているように、捨石基礎3の斜面方向に長い溝状のマスチック形成部材が構築される。前記シート片により構成した溝状の枠(以下簡易型枠と呼ぶ)は、各シート片の上端部に、ワイヤを通して接続するために、孔等を端部に所定の間隔で設けた接続部91b、92bを形成している。そして、前記簡易型枠の内部にアスファルトマスチックを充填して、その型枠の上部の接続部を、ワイヤを用いて縫い付けるように施工して接続し、マスチックを中に入れた長いブロックを作成して、前記ブロック93によりシート接続部を遮水させる状態で接続する。
なお、前記図19〜21に説明するように、遮水シートの接続部に同じ構成のシート片を用いた簡易型枠を作成して、その接続部にアスファルトマスチックを充填する工法を用いる場合に、前記アスファルトマスチックとしては、流動性を有するものを用いているのである。そこで、型枠の下部側から、つまり、斜面の下部側からマスチックを充填しながら、充填が終了した部分のシート接続部を直ちに縫い合わせるようにして、マスチックを袋の中に閉じ込めた遮水ブロック93を作成すれば良い。さらに、前記遮水シートがアスファルトマットである場合には、追加シートとして比較的薄くて取扱い性の良好なアスファルト製のものを、シート片として用いるが、その他に、アスファルト成分が漏れ出さないような性質を持つ、任意のシート材を取付けて簡易型枠として用いることでも対応が可能である。
その他に、簡易型枠を用いて、その内部にアスファルトマスチックを注入して、前記遮水ブロック93を現場で作成する際に、斜面の最下部では、マスチックの圧力が大きく作用することになる。そこで、例えば、その部分に対しては、上面と下端部の所定の範囲に亘って、土嚢等を積み重ねてアンカーを構築することが必要とされることもある。また、前述したようにして作成した遮水ブロック93を保護するために、裏込石の層を追加して構築したり、廃棄物を投棄して積み重ねたりする前に、保護層11aを所定の厚さで構築して、遮水シートの層と遮水ブロック93の部分等を保護する作用を、良好な状態で行わせ得るようにすれば良い。
前記図19に説明した斜面遮水工とは別に、図22以降に説明する例において、シート接続部を、より強固で遮水作用を確実に保証可能とすることも可能な、遮水工として構成する場合を説明している。前記各実施例の説明においては、遮水工の接続部を、シート接続部と呼んで説明したが、複雑な構成のシート接続手段を用い、遮水シートを含む遮水層全体で遮水可能に接続して一体化することを、以下に遮水工接続部と呼んで説明する。
以下の図22〜24に示す例においては、遮水工接続部100を構成する例を、図22の斜視図と図23の側面図、図24の下端部の正面図の各々に説明するように構成する。まず、この例においては、遮水シート51、52を敷設して構成する遮水層で、シートの重ね部53でのシート間を接続して、遮水材の層、または、アスファルト混合物の層を所定の幅と厚さを有するものとして構築する。そして、接続した遮水シートの接続部(継ぎ目)の部分から、水が漏れ出さないように、確実な遮水処理を行い得るようにしているものである。
なお、以下の説明においても、遮水層を構成する遮水材として、アスファルトマスチックを用いる場合で説明するが、その遮水材料としては、特に、アスファルトマスチックに限定されるものではなく、従来公知の土や粘土に固化材を混入して、水中で施工が可能なものとして調整した遮水材や、その他に、従来より一般に用いられている、水中施工が可能な遮水材料等をも対象とすることができる。また、前記遮水シートとしてアスファルトマットを用いる例を用いて、本実施例の説明を行っているが、前記遮水シートとしては、他のゴムや塩化ビニール等の遮水シートや、種類の異なるシートを積層したシート類等を対象とすることも可能である。そして、前記アスファルトマット以外のシート類に対しては、その接続部ではそのシートの性質に合わせて、最適な遮水材を組合せて用いることが可能である。
図22に示している例のように、遮水工接続部100は、遮水シートの接続部(重ね部53)を挟むようにして、その両側に所定の間隔をおいて、階段状の側部型枠101、101aを配置していて、その側部型枠に設けた空間部に、略階段のステップ状にアスファルトマスチックを打設して、これらを一体化した遮水層として構築する。前記側部型枠101、101aは、鋼製の幅の狭い階段状のものとして構成されるもので、アスファルトマスチックを階段状に打設する際の作業性等を考慮して、その階段のステップ(段)の幅が設定される。もちろん、前記アスファルトマスチックで作成する階段の大きさ等の条件は、その下部に構築されていて基礎となる捨石基礎の斜面、または、裏込石の層の傾斜等に対応させて、適宜形成されるものであり、遮水層を構築する斜面で、それぞれの遮水シートの接続部で順次遮水工を施工することから、前記側部型枠101としての鋼製の型枠は、繰り返して使用が可能なものとすれば良い。
前記図22の説明において、遮水工を施工する場所が、捨石基礎上であるとすれば、その斜面に構築する遮水工に対して、基礎の上でケーソンのフーチングに接続される水平部分と、斜面の下部で支持地盤の水平部に繋がる水平部分との間で、一体の遮水工を施工することが求められる。そのために、斜面部の上側の水平部分では、側部型枠101の上端部に接続して、打設するアスファルトマスチックの両側部分を区画する型枠を設け、さらに、遮水層上に設けているシート107aにより区画する。また、前記斜面部の下側端部では、図24にも説明するように、前記側部型枠101の下部に続けて、下端部側面型枠105、105aを設けて、前記下端部側面型枠の段部に対して、正面型枠106を配置して、下側からアスファルトマスチックが流れ出さないように保持させる。
前記斜面部に配置する階段状の側部型枠101、101aにおいては、図23の側面図に見られるように、捨石基礎の上に、例えば、細かい砂利等の層を設けて、後で打設するアスファルトマスチックの流出を抑制する等の補助手段とする。さらに、その基礎の表面には、後で構築するアスファルト層の基礎となるように、任意の厚さのアスファルトマット108を敷き込んで設ける。そして、そのマット108の上に、所定の間隔をおいて側部型枠を設置して、アスファルトマスチックを型枠間に打設するようにする。
前記アスファルトマスチックの層を側部型枠の間に構築するに際して、最初に図23および図24に示すように、下端部側面型枠105、105aを下端部に固定し、その階段の下端部で、上に開口が生じる部分には正面型枠106を配置して閉じるようにする。前述したようにして、傾斜面に打設するアスファルトマスチック層の下端部で、型枠を固定して規制する処理を行ってから、階段状の型枠の段部103に、それぞれ押え板部材104を置いた状態で、その段に対するアスファルトマスチックを打設する。前記階段状の遮水層を構築するに際して、複数の段をまとめて一度に遮水層を構築することも可能であるが、この実施例では、一段ずつ施工する場合を例にして説明している。そして、前記遮水材の層を階段状に形成してなる遮水工接続部101においては、アスファルトマスチックの流動性が低下した状態をみて、側部型枠を取り外して、直ちにその遮水層の両側と上部とに、重錘となる押え処理を施して、接続部を型枠なしでも安定させる状態にして保護する。
前述したようにして、遮水工接続部100を構築するに際して、打設するアスファルトマスチックの層を形成するための側部型枠101と、下端部側面型枠101、および、押え板部材104等の各部材として、鋼製のものを使用する場合には、それを繰り返して使用することで、そのコストを低減させることが可能となる。また、工事期間の制約等で、工事を急ぐ場合には、使い捨ての型枠部材を使用すれば、十分に対処が可能となる。例えば、コンクリート製の型枠を用いて、遮水工の接続部でコンクリートと遮水材を組合せた遮水工接続部を構築する場合には、時によっては、遮水工の信頼性をより向上させ得ることにもなる場合があると考えられる。
図25、26に説明する例では、前記図22〜24の例に説明した遮水工接続部と同様に、斜面部で施工する遮水工接続部110を示している。この実施例において、前記遮水工接続部110を捨石基礎の斜面部に施工するために、鋼鉄製の型枠部材を斜面に沿わせて配置し、各型枠にアスファルトマスチック等の遮水材を充満させて、略均一な厚さの遮水工接続部を構築して、一体させた遮水層を構築できるようにしている。
この例に関して、図25、26に説明するように、捨石基礎の斜面部を覆うように遮水シート51、52を敷設して、その遮水シートの接続部53の上下部に、あらかじめアスファルトマット111、112を配置する。その後に、接続部の上部に鋼製型枠115を積み上げるようにして組んで配置し、それ等の鋼製型枠の中にアスファルトマスチックを充満させて、図25に示すように構築したアスファルトマスチックにより、遮水接続体を設ける。また、前記鋼製型枠115を組合せて構成した型枠においては、下端部の水平部に配置した型枠に対して、その上部と左右の両側部分に対して、コンクリートブロック等の重錘部材113を積み重ねて、アンカーとして設けている。
前記鋼製型枠を用いた遮水工接続部110において、各鋼製型枠115は、その両側を細かいメッシュ材で構成して、アスファルトマスチックが漏れ出さない程度に構成する。なお型枠の上下部には、特に区切りを設けなくても良いが、必要とされる場合には、その要求に応じて区切り手段を設ける。また、鋼製型枠115の下端部に配置するものに対しては、アスファルトマスチックが漏れ出す恐れのある面を、型枠本体116に設ける細かい開口を有するメッシュ材等の封止手段を用いて、漏れ出しを防止することもできる。
なお、前記図25に示す例では、遮水層を階段状に構成せずに、その表面を斜めに形成して、一定の厚さの遮水層として形成しているが、その層を構築するためには、一時的に上面を押圧して固化するまで保持するような手段を用いることが可能であり、その他に、任意の手段を用いることができる。
前記実施例とは別に、遮水工接続部110を階段状のものとして構成しようとする場合には、前記斜面に配置する鋼製型枠115の斜面の下部側の端部に対しては、上から区切りマットを垂下させるように設けて、箱の中に充満させたアスファルトマスチックが、各階段毎にステップを形成できるように補助することが可能である。また、前記区切りマットに関しては、箱の一面に一体に設けることができるが、その他に、下部を開口させるような部材として構成し、必要に応じて下部を閉じるようにしても良い。
前記遮水工接続部110を構成する場合には、例えば、接続部で遮水シートを重ねた部分で、遮水シート51、52の間と、重ね部53の上下のアスファルトマットに接する面のそれぞれに対して、必要に応じて、アスファルト系統の接着剤を塗布しておくことで、遮水工接続部での遮水性を、より信頼の持てるものとすることができる。また、この実施例では、前記図10、16に説明した例と同様に、遮水シートの重ね部の上部に構築する押えブロック体の重量と、その押え部材が有する遮水性とを有効に組合せて利用し、遮水層の接続部での遮水工接続部110を構築することができる。なお、前記図26に示した例では、マットとシートの間の空白部が残るような図面となっているが、この部分は各部材が有する弾性・粘性によって自然に塞がれるものであり、各シートやマットの各々が変形して、一体化された接続部として構成されるものである。
(管理型廃棄物最終処分場)
前記各実施例に説明したように、遮水層を接続した部分での遮水処理を行うために、特に、同一平面部での遮水工接続部としては、前記各種の遮水工接続部の実施例のうち、任意の工法を適用することで解決される。これに対して、2つの異なる斜面が所定の角度で交わる接続部に、前記遮水工接続部が形成されることになる場合には、単純に接続部を交差する部分から平面部に移し変えることのみでは、解決できない場合がある。前記交差部が角の部分となることを避けるようにして、遮水層を角部の両側に亘って各々施工し、遮水層の接続部を角の部分から離れた位置に設定すれば、施工は比較的容易に行い得ることもある。ところが、管理型廃棄物最終処分場等においては、広い面積の側面遮水壁を各々施工してから、その側面遮水壁の交差する角部の斜面部に対して、より強固な遮水工を施工することで、廃棄物を区画内に閉じ込める作用を、確実なものとすることが求められる場合が多くある。
図27に示す例は、管理型廃棄物最終処分場を区画する斜めの遮水壁を模式的に説明しているもので、管理型廃棄物最終処分場120を側面遮水壁121で側面を区画し、底面部121bとその周囲の斜面部121a等を、それぞれ遮水処理した層により区画して、廃棄物を区画の中に閉じ込めるようにする。前記管理型廃棄物最終処分場120の側面遮水壁121では、2つの側面が接続される隅角斜面部122に対して、隅角部遮水工を適用する例を次に説明すると、図28、29に説明する工程にしたがって、隅角部遮水工124を順次施工する。この実施例においては、図28の側面図と図29の正面図とは、符号a、b、……を、それぞれ対応させて説明している。
前記隅角部遮水工を施工する工程の説明において、ます、管理型廃棄物最終処分場の側面遮水壁121、121aとが、遮水層接合部124で交わっており、その遮水層接合部124においては、夫々の傾斜面に施工した遮水層が交差する部分とされている。前記遮水層が交差している部分では、特に遮水層に対して外力が作用した場合でも、遮水層接合部124における遮水性に支障が生じることのないように、強固な隅角部遮水工124として構成する必要がある。そこで、前記隅角部遮水工124としては、通常の遮水シートや遮水材等を用いて積層させて設ける遮水工に加えて、アスファルトマスチックを所定の厚さで施工する等の処理を追加して、仕切護岸としての遮水壁が交わる角部に構築した遮水層の性能に信頼性を持たせ得るようにする。
前記隅角部遮水工125を施工する工程は、図28、29の2つの図面において、双方に共通する図面の符号a、b、cの順序にしたがって施工する。最初に、図28、29の各々の(a)に示すように、隅角斜面部122での遮水層接合部124に対して、底面121bから所定の高さにまで型枠126aを設けて、第1段目の層126を構築する。前記第1段目の層126を構築するに際しては、まず、アスファルトマスチック層126bを施工する区画を、土嚢等の型枠部材を組合せて配置して区画し、その区画された内部にアスファルトマスチックを充填して、アスファルトマスチック層126bを構築する。そして、前記アスファルトマスチックが適当な堅さに固化した時に、その上にアスファルトマット126cの断片(マット片)を敷きこむような端部処理を行い、前記アスファルトマスチック層126bの表面を覆うように処理する。その状態で、そのマット層に対して上から押圧力が作用したとしても、前記マット片126cにより、アスファルトマスチックが型枠126aの区画から溢れ出さないように保持させることができる。
前記図28、29の(a)に示した工程の後で、第2段目のアスファルトマスチック層を構築するための型枠127aを、前記各図の(b)のように構築し、それと同時に、第1段目の層136の上部と周囲の部分に対して石積み層を構築して、ウエイト部材126dとして設ける。そして、前記第1段目の層126のアスファルトマスチック層の上に、配置したマット126cによる区画と、その上のウエイト部材とを組合せることにより、型枠126bの保護作用を確実なものとする。その後で、型枠127aにより区画された区域内に、第2段目の層127のアスファルトマスチック層127bを構築する作業を行う。
前記第2段目のアスファルトマスチック層127bを、型枠127aにより区画された範囲内に構築してから、そのアスファルトマスチック層の上を覆うようにマット127cを敷き込んで、マットによりマスチックの層を押圧する状態として、アスファルトマスチック層を固化させるように安定させる。その後に、図28(b)に仮想線で示すように、ウエイト127dを構築して、その上に積み重ねる第3段目の層を安定保持させるようにする。
前述したようにして、その側面遮水壁の高さに応じて、数m毎の高さにまたは任意の高さに区画しながら、型枠を構築して、最終的は、図28、29の(c)に示すように、最上段目の型枠を組んで、アスファルトマスチック層を打設する工事を行うことによって、隅角斜面部における遮水層接合部124に対して、隅角部遮水工125を構築するのである。
なお、前記図27〜29に説明するように、隅角部遮水工125を構築するためには、アスファルトマスチックを打設する区画を型枠により設定し、その型枠で区画されて限られた範囲の内部に、アスファルトマットを流し込んで充填し、遮水工を任意の厚さで構築することができる。
前記実施例において、マスチックの層を区画するための型枠としては、最も入手しやすい材料を包んだ土嚢を用いて、周囲を囲むようにして構築したものを用いることで説明しているが、その他に、任意の区画材料を用いて構成した型枠を用いることも可能である。例えば、コンクリートの箱状に構成したものの中に石を詰めて、水中での安定性を向上させるようにして用いることや、その他の腐食しにくい材料で構成した箱状、ブロック状のものを組合せて、任意の断面形状にあらかじめ構成したアスファルトマスチックのブロックを、区画用として任意の高さと幅に配置しても良い。
(新旧の遮水壁の接続構造)
前述した本発明の各実施例では、廃棄物処分場を新規に構築するに際して、処分場の周囲を囲んで、処分場内部で廃棄物と触れて汚染された水が、海に侵出することがないように、廃棄物を隔離保持するための手段を説明したのであった。これに対して、旧護岸に接続させるように新たな護岸を構築し、新旧の護岸を一体化させた状態で、拡張された廃棄物処分場を設けることが必要となる場合がある。前記廃棄物処分場を拡張する場合には、旧処分場の護岸から延長するように新しい護岸を構築して、新旧の護岸の機能を一体化した状態の護岸で囲んだ処分場を構築すれば、比較的容易に処分場の拡張工事を行い得ると考えられるためである。
図30に示す例は、既に構築している旧護岸構造物141に対して、中仕切壁143を挟む状態で新護岸構造物142を構築して、一体化した遮水壁を構築する場合の1つの例を示しているものである。この実施例において、旧護岸構造物141と新護岸構造物142は、それが構築される水深に応じた高さのものとして構成されるが、それら構造物の設計の基準は、旧護岸構造物が設計された時代に対応して、新護岸構造物が設計される時代の技術水準が変化しているものである。したがって、護岸構造物としてケーソンを用いる場合でも、その構造物の全体の構造が当然異なるものであり、護岸構造物が立設される海域の水深に応じた高さに構成され、護岸構造物が受ける海側からの波の圧力に耐え得て、処分場の区画内に堆積させた廃棄物を、外海と区画して保護できるように構成される。
前記図30、31に示される例においては、旧処分場を構築した場所の海底地盤の高さ(水深)L1、新処分場の海底地盤の高さL3に対して、その新旧の護岸を接続する中仕切り壁の構築位置では水深L2として説明している。そのような海底地盤の高さに対応させて、新旧の護岸構造物の背の高さがそれぞれ異なるものであり、ケーソン等を載置固定する基礎構造物の高さ等も当然異なっている。
また、前記新旧の護岸構造物141、142の間には、中仕切壁143が配置されるもので、この中仕切壁143としては、後で詳細に説明するが、一般のケーソンの場合と同様に、台形ケーソン170を捨石基礎上に立設させた状態で構築している。前記中仕切壁143を旧護岸構造物141の端部に立設し、その海側に新護岸構造物142を立設し、前記中仕切壁143とその両側の中仕切壁との間には、それぞれ側面遮水壁144、144aを設けて、護岸構造物の間での遮水手段とする。なお、前記構造物の接続部での遮水手段としては、特に、その遮水材や構造に関して限定するものではなく、従来公知のケーソン間での遮水手段を用いることができる。
前述したように、新旧の護岸構造物141、142の間に、中仕切壁143を挟んで一体化された仕切壁として構築される護岸は、図30、31に示されるように組み合わせて配置できる。この例示される実施例においては、旧護岸構造物141は水深L1の比較的浅い海域に設けられていたもので、新護岸構造物142はその海側の水深L2の深い箇所にまで接続されて、立設されるものであることから、その構築場所の水深に応じて構成される。そして、前記護岸構造物と中仕切壁とは、後で詳細に説明するように、海底地盤145の上にそれぞれの基礎(捨石基礎)を構築し、その上にケーソンを支持させるように設けている。また、前記各構造物の間に設ける遮水構造と、支持基礎の地盤と捨石基礎に対する各々の遮水構造は、各護岸構造物に関する説明ととともに、後で行う。
図32、33に示す例は、新旧の護岸構造物の構造を説明しているもので、図32に示す旧護岸構造物141は、コンクリート製のケーソン150を用いており、その仕切壁を立設する水深に応じた高さに構成される。この例においては、ケーソン150の中仕切壁側の端部付近の水深の深い部分に、捨石基礎146を構築して、その捨石基礎の頂部にケーソン150を載置する状態に立設している。ところで、この説明図に見られるように、旧護岸構造物141を立設して区画している旧処分場では、水深の浅い地盤L1を保護範囲として区画を設けているものであるから、その仕切壁の高さは比較的低いものであり、その仕切壁を地盤上に構築した捨石基礎により保持している。
また、前記図30、31および、後述する図32に示されるように、旧護岸構造物141の中仕切壁側の端部では、深い水深に対応させた背の高い高い基礎146を構築し、その上に護岸構造物を支持させている。なお、この例においては、旧構造物の端部から所定の長さに延長して、中仕切壁に接続する部分を設ける場合を想定しているもので、旧構造物としての護岸の端部を、中仕切壁に合わせて成型する処理を施して、各部材の接続に対処させることも可能である。さらに、前記基礎146の表面と海底地盤145の双方に対しては、必要と考えられる表面に遮水層を構築する等の処理を施して、遮水性を保持できるようにするが、この遮水処理を施工する層に関しては、先に説明したような任意の手段を用いることが可能である。
前記図32に説明したように、旧護岸構造物141により区画される範囲の埋め立て側では、裏込石の層148を所定の範囲に構築してから、その表面の所定の範囲に亘って、斜面遮水工147と符号を付して説明するような遮水層を構築して、処分場に堆積させる廃棄物に接して汚染された水を、区画内に保持させるようにしているものである。なお、後で説明する中仕切壁の実施例において、前記斜面遮水工147を中仕切壁の上にまで延長して、一体化させた遮水層を構築する手段を用いることで、新規に構築する中仕切壁と旧護岸構造物との間で、遮水性に欠陥が生じないようにしているのである。
図33に説明する実施例は、前記旧護岸構造物141の海側に延長し、追加して構築する新護岸構造物142の構造を説明しているものであり、この新ケーソン160として説明する護岸構造物は、水深の深い位置に合わせて背が高く構成されたものを用いている。この例において、新ケーソン160の支持基礎として設ける、捨石基礎146aの埋立地側には、基礎の表面から地盤の表面の所定の範囲に亘って、表面遮水層161を設けており、この表面遮水層としては、遮水シートまたはアスファルトマットを、隙間なく敷き詰めて構成する。また、前記ケーソン側の端部には上部固定部162を配置し、海底地盤側の遮水層の端部には端部押え部材163を、遮水層を保護する手段として設けている。なお、前記新護岸構造物142を立設する海底地盤145に対しても、その地盤が砂地や隙間が多くて透水性を有するものである場合には、地盤の砂(透水性を有する土等)に遮水性を付与する処理を施して、地盤に不透水性の性質を持たせるものとする。
前記新旧の護岸構造物141、142の間には、中仕切壁143を立設しており、図34、および図35に説明するような、台形ケーソン170を用いている。そして、図30に示すように、新旧の護岸構造物141、142の海側を結ぶ線に、直交する状態で構築されている。この例に示す台形ケーソン170は、両側に配置される護岸構造物と合わせて、上部の所定の範囲が平面状に構成され、海側の端部が垂直で、埋立地側には斜面部として構成されているものを用いている。また、この台形ケーソン170は、図35に説明しているように、護岸構造物の基礎に連続されるが、独立した状態で別に構築される捨石基礎146bの上に立設保持されている。前記基礎146bの表面と地盤の所定の範囲には、必要に応じて遮水層161aを形成し、その遮水層の両端部には固定手段162a、163aを設けて固定・保持することで、遮水層が斜面を滑ったりすることがないように保持される。
前記中仕切壁として設けられる台形ケーソン170は、その本体の長さ方向に所定の間隔で縦の壁を設けて区画し、各区画の下部には砕石または砂等を充満させて、下部充填層174を構成する。そして、その上部には、割栗石等を充満させた部分を設けて、その割栗石の層の上部分に、隣接する遮水壁から延長した遮水層の端部を固定して、後で説明するように、遮水状態を維持させるようにする。
なお、前記図35に示す例において、中仕切り壁を設置する海底地盤のレベルはL2であるが、新護岸を構築する地盤のレベルL3に合わせて基礎を構築し、その新基礎の表面と海底地盤の必要とされる範囲に亘って、遮水シートを敷設する等の遮水工を実施することは、前記各実施例と同様に施工される。
前記台形ケーソン170の両側には、新旧の護岸構造物141、142を配置するが、これらの遮水壁部材は、前記図30に説明したように、その両側側面に形成する側部遮水壁144、144aを挟む状態で、各接続部分での遮水作用を良好に維持できるようにする。なお、前記遮水壁部材としては、任意の厚さのアスファルトマットを挟むことや、接続部の海陸側の空間部にゴム等の弾性体を挿入し、その中間部の空間を区画した状態で、空間の内部にアスファルトマスチックを充填する等の、従来公知の封止手段を適用しても良い。そして、前述したように2つのケーソンの間に挟まれて設けられる中仕切壁は、図35に示したように、新旧の護岸141、142を区画して保持し、廃棄物の海面処分場を保護できるようにされる。
前記台形ケーソン170の上面と斜面部とに対して、旧護岸の遮水層の延長部を固定・保持するために、図36、37の各図に夫々示すように、台形ケーソンの上面と斜面部とに設けた溝に対して、遮水層をそれぞれ延長して設けている。前記旧遮水層の端部は、台形ケーソンを施工する前の段階で、図32で説明した斜面遮水工147のマット、シート等を、追加・延長して設けた状態で用いる。また、前記台形ケーソンの上面部と斜面部との双方に対しては、ケーソンの両側の壁171、172を残した状態で溝状に凹部を形成し、その凹部に対して遮水材の端部を挿入し、アスファルト混合物(マスチック)のような遮水材を用いて封止固定する。
図36(a)、(b)および図37(a)に説明している例において、ケーソンの頂部や斜面部の上が開口している部分では、中詰石の層の上部分の所定の厚さの部分に、石の間を埋めるように、アスファルトマスチックを流し込んで所定の厚さの固化層177を形成する。割栗石等の石の隙間を埋めるように、前記アスファルトマスチックを流し込むに際しては、前記割栗石の層の表面から所定の深さの部分に、仕切るような手段を設けて、アスファルトマスチックを必要としない下部の部分を仕切って区画すると良い。そのためには、割栗石の層を構築する時に、細かい割り石等の層をケーソン上端から下部位置までの所定の高さに設けておいて、その上下部分を仕切るような処理を行い、その仕切った層の上から下部分に向けて、流動性の大きいアスファルトマスチックが流下しないように区画する。そして、アスファルトマスチックを上部から流し込んだときに、アスファルトマスチックが流出して無駄に使われることがないようにするために、予備的な処理を施しておくと良い。
前述したようにして、ケーソンの上部の溝内部に所定の厚さの仕切を構築してから、旧護岸の遮水層の端部をその溝の上面にまで延長し、その遮水層の構成部材としての保護マット182、遮水シート183、アスファルトマット184等を重ねる状態で配置する。そして、そのようなマット等を重ねた部分の上部には、図36(a)に示すように、割栗石等を積み重ねた石の層を構築し、その石の隙間を塞ぐようにアスファルトマスチックを充填して、遮水層の押え部材として上記押え層178を、また、遮水層の端部をケーソン上に固定・保持するための押え層179をそれぞれ設ける。
前記ケーソンの上面での遮水層を押える手段としての層178は、同図(b)にも示すように、斜面に対しても押え層179として適用できるものであるが、前記斜めの部分で打設したアスファルトマスチックが流れ落ちないようにする補助手段を用いると良い。そのためには、斜面押え層としての固化層177を構築する補助として、目の細かいスクリーン等を傾斜面に直交させるように、一定の間隔で立設するように挿入して、中詰め石の層の中でのアスファルトマスチックの流動を制御する手段を形成しておいてから、アスファルトマスチックを石の隙間に流し込むような手段を用いることも一つの手段である。また、図37(a)に示す例において、後述するように構成する上面押え層を構築するに際しても、斜面部の石の間に注入するアスファルトマスチックが、斜面に沿って流れ落ちることを阻止するために、金網等を石の間に挿入するかまたは固定配置する等の、補助的な手段を講じることができる。そして、前記縦の壁のような補助的な部材を用いることによって、斜めの遮水処理部での、表面押え層としての機能を良好に発揮させ得て、遮水層の端部を確実に保持させ得るようにすれば良い。
また、前記図36(a)、(b)では、ケーソンの側面から見た説明図が示されているものであるが、図37(a)では、その縦断面図として示しているものである。この説明図に見られるように、ケーソンの両側の縦の壁171、172の間に形成される凹部(溝部180)には、シートやマット等を重ねた遮水層が、隣接する旧ケーソン側から延長される状態で位置される。そこで、前記縦の壁の間の溝部180においては、旧ケーソン側から延長される遮水層の位置決めを容易にし、極端な曲げ作用等を付与しないようにするために、図37(a)に示すような形状の凹部を形成して、シートの端部を湾曲させるようにすると良い。つまり、前記凹部の断面形状としては、旧ケーソン側からは緩やかな傾斜部分を設けるように、固化層177を形成しておき、その表面形状に沿わせて遮水層のシートマット等を曲げて配置して、中詰石の層をアスファルトマスチックで一体化し、上面押え層178により遮水層の端部を固定・保持させると良い。なお、前記上面押え層178に対して、遮水材を注入する際にも、その遮水材が流れ落ちることを阻止する手段を合わせて用いると良い。
図37(b)に示す例は、前記遮水シートを接続する部分が、中仕切り壁の斜面部ではなく、構造物の裏側に構築する裏込め石層に対して、その表面をカバーする遮水層が、任意の斜面部である場合を説明している。この図に示すような遮水シートの接続部は、前記図9ないし図21に各々説明したように、遮水シートの接続部での上面を閉じる手段を用いずに、接続部の上面を解放したままの状態で、石を充満させた溝状の接続部に対して、その石の間を塞ぐように遮水材を充満させて、遮水材の中に石を多量に含んだ遮水層を構築することができる。この例に説明するように、遮水シート188、188aを重ねた部分183Aの両側に、コンクリート等の重い材料で構成したブロックを列状に並べて、所定の高さと巾を有する溝を設ける。この溝の中には石やコンクリート片等を充填して石積み層186を構築し、その石の隙間を埋めるように遮水材187を注入して石の隙間を塞ぐとともに、石を含む遮水材の層を、前記ブロックで仕切った溝の間をシート接続部と一体化した遮水層で区画する。
前述したように、斜面部に配置した遮水シート接続部を、所定の幅と厚さを有する遮水層で封鎖することは、前記各実施例に説明したように溝の上部を塞いで、斜面の上部のみを開口させた筒状の対応部材を構成して、その筒の中に遮水材を充填する従来の方式に比較して、比較的容易に遮水層を構築できる。ただし、この実施例において、傾斜した溝の中で石の隙間を遮水材で塞ぐ時に、その遮水材の余分なものが斜面の傾斜に従って流下して、遮水材を無駄に消耗しないようにする処理を施すことが要求される。そこで、溝状部に積み重ねた石の層に対して、所定の間隔で細かい砂利の層等を設けておき、遮水材が無駄に流れ落ちたりしないようにする補助手段を設けると良い。また、前記溝の中に目の細かい網等を縦に挿入しておき、流動性の大きな遮水材をその網で遮断する手段を設けることで、石の層に遮水材を充満させて、水が接続部に流れることを阻止した遮水層を構築して、接続部を封止することが可能となる。なお、このような遮水シート接続部での遮水層の形成方法を用いることは、前記図10ないし図21の各実施例のうち、そのいずれかに説明された例に対しても適用が可能であり、容易に対処させることが可能となる。
前記図37の各々に示される例において、中仕切壁として用いられる台形ケーソン170の斜面部では、両側の垂直な壁の間に所定の間隔で、図34に示すように隔壁173が立設される状態で存在する。そこで、前記遮水層の端部を保持させるための凹部を、前記隔壁173にも形成することが必要とされることから、その凹部の形状を前記図37(a)のように形成する他に、図38に示すような両側の側壁から切り下げ加工して、中央部が最も低くされるように削って、舟形の凹部を形成することも一つの対応策とされる。前記図38に示す例の他に、任意の断面形状の溝を形成して、遮水層の端部を保持させるような手段を講じることで、前記台形ケーソン170を用いた遮水層の端部の処理を、容易に行い得るようにしている。
前記図36〜38に説明した実施例に対して、台形ケーソンを中仕切り壁として用いる場合に、その台形ケーソンの斜面部で遮水層とケーソン本体とを一体化して、遮水性を良好に発揮させるためには、他の構造の端部押え層を設けることが可能である。例えば、図22、23で説明したように、台形ケーソンの側壁の斜面部に、階段状の段部を形成しておくことにより対処できる。その後に、例えば、厚いコンクリートの板やブロック等を、前記各段部に隙間を生じさせないように載置して上部を塞ぐことで、遮水層の端部の押えの作用を発揮させ、後で遮水層の上に注入するアスファルトマスチックが、無駄に流れ落ちないように保持させることが可能となる。
その他に、前記各実施例に説明しているように、上部の開口部分に板等を固定配置して塞いだ状態で、土嚢のような重量物を積み重ねて押圧保持させることにより、遮水層の端部を固定・保持して、旧構造物から延長した遮水層の働きを十分に確保できる。
また、前記図36に示す例のように、傾斜した溝部180のような場所で、遮水シート端を位置させて遮水材を流し込んで遮水処理する場合、又は、前記傾斜した溝部の両側から、遮水シート端部を挿入して、シートの接続部の遮水処理を行う場合のいずれにも、前記遮水処理方法を適用することが可能である。
そして、前述したようなシート端部の固定・保持と遮水処理手段とを、前記図9ないし図26の各実施例に対しても、それぞれの構成に対応させて若干変形させたりして適用することで、遮水処理構造を簡略化して適用が可能となる。また、前記各実施例のうち、特に図37(b)のような例では、斜面部で接続する遮水シート端部に遮水材を挟むか、または上に盛り上げた層を形成する等の遮水接続手段を用いて、接続する場合に、その遮水シートの接続部の両側に、ブロック等を列状に並べて傾斜させた溝を作り、その溝の中に栗石や瓦礫等を充満させて、シート合わせ部を押圧保持させる。そのような処理を行った状態で、溝の中に遮水材を注入して、栗石を含んだ状態の遮水層を構築する。
前記傾斜面に設けた溝に遮水シートの接続部を配置して、遮水材を流し込んで遮水処理を行う場合に、例えば、遮水材としてアスファルト混合物を用いる場合には、その混合物の流動性を適宜調節することが必要となる。前記アスファルト混合物は、その流動性を調節することは比較的容易であるから、その混合物でのアスファルト成分の配合比率等を、その環境に対応して適宜調節する。
その他に、傾斜した溝の中に石等を充満させる際に、石の間に細かい石の縦の層を設けることや、目の細かいネットを縦に挿入する等の、遮水材の流下を阻害するような、補助的な処理を行っておくことで、前記図9ないし図26および、その他の実施例に説明したような、シートの接続部での封止手段の変形例として適用が可能にもなる。なお、前述した本発明の説明において、「遮水膜」と呼ぶものは、前記遮水シート遮水マット等の海底地盤等を覆うことで、水を通さない性質を地盤に持たせる膜状体を指している。また、前記マットやシートのような遮水体は、任意の広さを有する任意の厚さのものを、従来の海底地盤の遮水工と同様に、多数枚敷き詰めて施工し、接続部にも遮水処理を施した状態で施工できる。さらに、アスファルトを主成分とするものの他に、他の水を通さない性質を持つゴムやプラスチック製のシート、マット等も必要に応じて用い得るものである。