しかしながら、上述した防波堤堤頭部100における被覆ブロックや根固めブロックによる対策は、通常サイズのブロックでは対応できる流速に限度がある。そして、より大きな流速に対応するために、使用するブロックの重量やサイズを大きくしていくと、コストが膨大になることから現実的ではない。又、コストや施工期間を考慮すると、新設の防波堤だけではなく、既設の防波堤への適用が容易で、かつ既存技術で施工できることが必要となる。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、基礎マウンドの洗掘を防止して支持力を向上させることで、防波堤堤頭部の抵抗力を高めることにある。
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
(1)地盤に構築した基礎マウンド上に構造物を据え付けてなる防波堤堤頭部の構造であって、前記基礎マウンドは、少なくとも表層部が、網状の袋に捨石を詰めた複数の袋状ユニットにより構築されている防波堤堤頭部の構造。
本項に記載の防波堤堤頭部の構造は、地盤に構築した基礎マウンド上に構造物が据え付けられており、基礎マウンドの少なくとも表層部が、複数の袋状ユニットで構築されているものである。袋状ユニットは、網状の袋に通常用いられるような捨石が詰められたものであり、捨石の粒径や網の張力等を考慮した網状の袋に、透過流に対する抵抗や総重量等を考慮した量の捨石が詰められている。
複数の袋状ユニットにより構築されている基礎マウンドの部位は、表層部だけでなく、表層部よりも内側の部位、或いは、基礎マウンドの全体が袋状ユニットにより構築されていてもよい。防波堤堤頭部の構築場所において想定される波の規模等を考慮した適切な部位に、複数の袋状ユニットが用いられて基礎マウンドが構築される。そして、基礎マウンドは、袋状ユニットが用いられた部位以外は、従来の基礎マウンドで用いられるような捨石により構築される。又、基礎マウンドは、防波堤堤頭部の構築場所における大きさの制限、この場所において想定される波の規模、基礎マウンド自体の支持力等を考慮した大きさに構築されており、更に、港外方向、港内方向、及び堤幹部と反対の方向に向かって地盤側に傾斜する法面を有するように構築される。
このように、本項に記載の防波堤堤頭部の構造は、基礎マウンドの少なくとも表層部が、捨石が詰められた袋状ユニットを用いて構築されることで、網状の袋により一体化されて、ユニット単位で見れば増大した捨石の重量と、隣接する袋状ユニットとの摩擦とにより、被覆ブロックを用いなくとも、水の流れに対する抵抗力が高まるものである。更に、袋状ユニットに上部から伝達される荷重に対する、袋状ユニットの網の張力による補強作用と荷重分散作用により、基礎マウンド自体の支持力が増大する。又、袋状ユニットは、網状の袋に捨石が詰められたものであるため、透過流等の作用外力を低減し、基礎マウンド内圧力の上昇を防止するものとなる。従って、基礎マウンドの洗掘が防止されると共に支持力が向上され、これにより、防波堤堤頭部の抵抗力が高まるものである。
(2)上記(1)項において、前記基礎マウンドの少なくとも一部の法尻部には、底部と壁部とを有するLブロックが、前記壁部を前記基礎マウンドに対して外側とする向きで、前記底部上に前記袋状ユニットが載置されて設置されている防波堤堤頭部の構造(請求項1)。
本項に記載の防波堤堤頭部の構造は、基礎マウンドの少なくとも一部の法尻部にLブロックが設置されているものである。Lブロックは、防波堤堤頭部の構築場所において想定される波の規模等を考慮して、拘束力が特に小さい法尻部の一部や、2方向の法尻部が交わる隅角部、或いは、法尻部の全体に設置される。又、Lブロックは、底部と壁部とを有し、例えば鉄筋コンクリート製等の、既存の材料及び方法で作製されている。
そして、Lブロックは、基礎マウンドの法尻部において、壁部を基礎マウンドに対して外側とする向きで、底部上に袋状ユニットが載置されて設置されている。すなわち、Lブロックは、基礎マウンドの中でも拘束力が小さくなる法尻部において、底部に載置された袋状ユニットの重量や、この袋状ユニットにかかる上部からの荷重等により、滑動抵抗が増大されて設置位置に抑止されると共に、壁部により袋状ユニットの移動を防止し、拘束力を高めるものである。これにより、基礎マウンド全体の変形が抑止されるため、基礎マウンドの支持力をより高めることとなる。
(3)上記(2)項において、前記基礎マウンドの隅角部に設置されるLブロックは、隣り合う2面に壁部を有する防波堤堤頭部の構造(請求項2)。
本項に記載の防波堤堤頭部の構造は、基礎マウンドの隅角部に、隣り合う2面に壁部を有するLブロックが設置されているものである。基礎マウンドは、港外方向、港内方向、及び堤幹部と反対の方向に向かって、その天端面から地盤側に傾斜する法面を有するように構築されているため、基礎マウンドの隅角部では2方向の法尻部が交わっており、特に拘束力が小さい箇所になる。このため、基礎マウンドの隅角部に、2方向の法尻部に対応するように、隣り合う2面に壁部が形成されたLブロックが設置されることで、2面の壁部により袋状ユニットの移動を防止して拘束力を向上させ、基礎マウンドの支持力を高めるものである。
(4)上記(2)(3)項において、前記Lブロックのうち、少なくとも前記基礎マウンドの隅角部に設置されるLブロックは、前記地盤に打設された杭に固定されている防波堤堤頭部の構造(請求項3)。
本項に記載の防波堤堤頭部の構造は、基礎マウンドの法尻部に設置されたLブロックのうち、少なくとも基礎マウンドの隅角部に設置されたLブロックが、地盤に打設された杭に固定されているものである。Lブロックが杭に固定されることで、横抵抗力が増大すると共に、地盤の洗掘に伴う沈下を防止することとなる。そして、隅角部に設置されたLブロックが杭に固定されていることにより、特に拘束力が小さい隅角部の抵抗力を高め、基礎マウンドの支持力を更に高めるものである。又、法尻部に設置された全てのLブロックが、地盤に打設した杭に固定されることとすれば、基礎マウンド全体の支持力を更に高めることとなる。
(5)上記(2)から(4)項において、前記Lブロックは、前記壁部にスリットが設けられている防波堤堤頭部の構造(請求項4)。
本項に記載の防波堤堤頭部の構造は、基礎マウンドの法尻部や隅角部に設置されているLブロックの壁部に、スリットが設けられていることで、基礎マウンド内で発生する透過流に起因する内部圧力の上昇を、更に低減させるものである。
(6)地盤に構築した基礎マウンド上に構造物を据え付けてなる防波堤堤頭部の構築方法であって、前記基礎マウンドの少なくとも表層部となる部分に、網状の袋に捨石を詰めた複数の袋状ユニットを敷き詰めて前記基礎マウンドを構築する基礎マウンド構築工程と、前記基礎マウンド上に構造物を据え付ける構造物据付工程とを含む防波堤堤頭部の構築方法。
本項に記載の防波堤堤頭部の構築方法は、基礎マウンドを構築する基礎マウンド構築工程と、構築した基礎マウンド上に構造物を据え付ける構造物据付工程とを含むものである。基礎マウンド構築工程では、少なくとも基礎マウンドの表層部となる部分に、網状の袋に捨石を詰めた複数の袋状ユニットを敷き詰めて、基礎マウンドを構築する。複数の袋状ユニットを用いる基礎マウンドの部位や、基礎マウンドの大きさ等は、防波堤堤頭部を構築する場所における制限、この場所において想定される波の規模に対する数値解析結果、基礎マウンド自体の支持力等を考慮して決定する。例えば、複数の袋状ユニットを、基礎マウンドの表層部だけでなく、表層部よりも内側の部位に用いてもよく、或いは、基礎マウンド全体を袋状ユニットにより構築してもよい。又、袋状ユニットを用いる部位以外は、従来の基礎マウンドで用いられるような捨石により構築する。更に、基礎マウンドは、港外方向、港内方向、及び堤幹部と反対の方向に向かって地盤側に傾斜する法面を有するように構築する。又、袋状ユニットには、捨石の粒径や網の張力等を考慮した網状の袋に、透過流に対する抵抗や総重量等を考慮した量の捨石を詰めたものを使用する。
上述したように、本項に記載の防波堤堤頭部の構築方法は、基礎マウンド構築工程において、少なくとも基礎マウンドの表層部となる部分を、捨石を詰めた袋状ユニットを用いて構築することで、網状の袋により一体化されて、ユニット単位で見れば増大した捨石の重量と、隣接する袋状ユニットとの摩擦とにより、被覆ブロックを用いなくとも、基礎マウンドの水の流れに対する抵抗力を高めるものである。更に、袋状ユニットに上部から伝達される荷重に対する、袋状ユニットの網の張力による補強作用と荷重分散作用により、基礎マウンド自体の支持力が増大する。又、袋状ユニットは、網状の袋に捨石を詰めたものであるため、透過流等の作用外力を低減し、基礎マウンド内圧力の上昇を防止するものとなる。そして、本項に記載の防波堤堤頭部の構築方法は、上述した内容から分かるように、特殊な機械等を使用することなく、既存技術の範囲で施工するものである。これにも関わらず、支持力が高く洗掘を防止するような基礎マウンドを構築し、防波堤堤頭部の抵抗力を高めるものである。
(7)上記(6)項において、前記基礎マウンドの法尻部が構築される箇所の少なくとも一部に、底部と壁部とを有するLブロックを、前記壁部が前記基礎マウンドに対して外側となる向きで設置するLブロック設置工程を含み、前記基礎マウンド構築工程において、前記Lブロックの前記底部上に前記袋状ユニットを載置して前記法尻部を構築する防波堤堤頭部の構築方法(請求項5)。
本項に記載の防波堤堤頭部の構築方法は、基礎マウンドの法尻部が構築される箇所の少なくとも一部に、Lブロックを設置するLブロック設置工程を含んでいる。このLブロック設置工程では、防波堤堤頭部の構築場所において想定される波の規模等を考慮して、拘束力が特に小さい法尻部の一部や、2方向の法尻部が交わる隅角部、或いは、法尻部の全体にLブロックを設置する。設置するLブロックは、底部と壁部とを有しており、例えば鉄筋コンクリート製のものを用いる。このようなLブロックを、基礎マウンドの法尻部が構築される箇所に、Lブロックの壁部が基礎マウンドに対して外側となる向きで設置する。
そして、基礎マウンド構築工程において、Lブロック設置工程で設置したLブロックの底部上に袋状ユニットを載置し、基礎マウンドの法尻部を構築する。このようにすることで、Lブロックは、基礎マウンドの中でも拘束力が小さくなる法尻部において、底部に載置された袋状ユニットの重量や、この袋状ユニットにかかる上部からの荷重等により、滑動抵抗が増大されて設置位置に抑止されると共に、壁部により袋状ユニットの移動を防止し、拘束力を高めるものとなる。これにより、基礎マウンド全体の変形が抑止されるため、基礎マウンドの支持力をより高めることとなる。
(8)上記(7)項の、前記Lブロック設置工程において、前記基礎マウンドの隅角部となる箇所に、隣り合う2面に壁部を有するLブロックを設置する防波堤堤頭部の構築方法(請求項6)。
本項に記載の防波堤堤頭部の構築方法は、Lブロック設置工程において、基礎マウンドの隅角部となる箇所に、隣り合う2面に壁部を有するLブロックを設置するものである。後の基礎マウンド構築工程において、基礎マウンドは、港外方向、港内方向、及び堤幹部と反対の方向に向かって、その天端面から地盤側に傾斜する法面を有するように構築される。このため、基礎マウンドの隅角部では、2方向の法尻部が交わることとなり、特に拘束力が小さい箇所になる。そして、先立つLブロック設置工程において、このような2方向の法尻部に対応するように、隣り合う2面に壁部を有するLブロックを設置することで、2面の壁部により袋状ユニットの移動を防止して拘束力を向上させ、基礎マウンドの支持力を高めるものである。
(9)上記(7)(8)項において、前記Lブロックのうち、少なくとも前記基礎マウンドの隅角部となる箇所に設置されるLブロックを固定するための杭を、前記地盤に打設する杭打設工程を含む防波堤堤頭部の構築方法(請求項7)。
本項に記載の防波堤堤頭部の構築方法は、Lブロック設置工程において設置するLブロックのうち、少なくとも基礎マウンドの隅角部となる箇所に設置するLブロックを固定するための杭を、地盤に打設する杭打設工程を含むものである。この杭打設工程とLブロック設置工程との施工順序は、施工場所の静穏度や地盤の硬さ、作業性等を考慮して決定する。例えば、比較的静穏度が高く、杭打ちの精度を保つことが可能な場合は、Lブロック設置工程でLブロックを設置した後に、杭打設工程で杭を打設してLブロックを固定する。一方、地盤が比較的硬く、先にLブロックを設置すると杭の打設が困難になるような場合には、杭打設工程で杭を打設した後に、Lブロック設置工程でLブロックを設置して杭に固定する。
上述したいずれの施工順序の場合においても、Lブロックを杭に固定することで、横抵抗力が増大すると共に、地盤の洗掘に伴う沈下を防止することとなる。そして、隅角部に設置したLブロックを杭に固定することにより、特に拘束力が小さい隅角部の抵抗力を高め、基礎マウンドの支持力を更に高めるものである。又、法尻部に設置した全てのLブロックを、地盤に打設した杭に固定することとすれば、基礎マウンド全体の支持力を更に高めることとなる。
(10)上記(7)から(9)項の、前記Lブロック設置工程において、前記壁部にスリットが設けられているLブロックを設置する防波堤堤頭部の構築方法(請求項8)。
本項に記載の防波堤堤頭部の構築方法は、Lブロック設置工程において、壁部にスリットが設けられているLブロックを設置することで、構築した基礎マウンド内で発生する透過流に起因する内部圧力の上昇を、更に低減させるものである。
(11)地盤に構築した基礎マウンド上に構造物を据え付けてなる防波堤堤頭部の補強方法であって、既設の基礎マウンドの表層部に、網状の袋に捨石を詰めた複数の袋状ユニットを敷き詰める袋状ユニット据付工程を含む防波堤堤頭部の補強方法。
本項に記載の防波堤堤頭部の補強方法は、既設の基礎マウンドの表層部に、網状の袋に捨石を詰めた複数の袋状ユニットを敷き詰める袋状ユニット据付工程を含むものである。複数の袋状ユニットを敷き詰める範囲や層数等は、防波堤堤頭部が構築されている場所における制限、この場所において想定される波の規模に対する数値解析結果、基礎マウンド自体の支持力等を考慮して決定する。又、袋状ユニットには、捨石の粒径や網の張力等を考慮した網状の袋に、透過流に対する抵抗や総重量等を考慮した量の捨石を詰めたものを使用する。
このように、本項に記載の防波堤堤頭部の補強方法は、既設の基礎マウンドの表層部に、捨石を詰めた複数の袋状ユニットを敷き詰めることで、網状の袋により一体化されて、ユニット単位で見れば増大した捨石の重量と、隣接する袋状ユニットとの摩擦とにより、被覆ブロックを用いなくとも、基礎マウンドの水の流れに対する抵抗力を高めるものである。更に、袋状ユニットに上部から伝達される荷重に対する、袋状ユニットの網の張力による補強作用と荷重分散作用により、基礎マウンド自体の支持力が増大する。又、袋状ユニットは、網状の袋に捨石を詰めたものであるため、透過流等の作用外力を低減し、基礎マウンド内圧力の上昇を防止するものとなる。そして、既設の基礎マウンドの洗掘を防止して支持力を増大させることにより、防波堤堤頭部の抵抗力を高めるものである。更に、上述した内容から明らかなように、基礎マウンドの表層部に袋状ユニットを据え付けるだけなので、既設の防波堤堤頭部に対する適用が容易であり、又、特殊な機械等を使用することなく、既存技術の範囲で施工するものである。
(12)上記(11)項において、前記基礎マウンドの法尻部となる箇所の少なくとも一部に、底部と壁部とを有するLブロックを、前記壁部が前記基礎マウンドに対して外側となる向きで設置するLブロック設置工程を含み、前記袋状ユニット据付工程において、前記Lブロックの前記底部上に前記袋状ユニットを載置する防波堤堤頭部の補強方法(請求項9)。
本項に記載の防波堤堤頭部の補強方法は、基礎マウンドの法尻部となる箇所の少なくとも一部に、Lブロックを設置するLブロック設置工程を含んでいるものである。このLブロック設置工程では、防波堤堤頭部が構築されている場所において想定される波の規模等を考慮して、拘束力が特に小さい法尻部の一部や、2方向の法尻部が交わる隅角部、或いは、法尻部の全体にLブロックを設置する。設置するLブロックは、底部と壁部とを有しており、例えば鉄筋コンクリート製のものを用いる。このようなLブロックを、基礎マウンドの法尻部となる箇所に、Lブロックの壁部が基礎マウンドに対して外側となる向きで設置する。
そして、袋状ユニット据付工程において、Lブロック設置工程で設置したLブロックの底部上に袋状ユニットを載置し、基礎マウンドの法尻部を構築する。このようにすることで、Lブロックは、基礎マウンドの中でも拘束力が小さくなる法尻部において、底部に載置された袋状ユニットの重量や、この袋状ユニットにかかる上部からの荷重等により、滑動抵抗が増大されて設置位置に抑止されると共に、壁部により袋状ユニットの移動を防止し、拘束力を高めるものとなる。これにより、基礎マウンド全体の変形が抑止されるため、基礎マウンドの支持力をより高めることとなる。
(13)上記(12)項の、前記Lブロック設置工程において、前記基礎マウンドの隅角部となる箇所に、隣り合う2面に壁部を有するLブロックを設置する防波堤堤頭部の補強方法(請求項10)。
本項に記載の防波堤堤頭部の補強方法は、Lブロック設置工程において、基礎マウンドの隅角部となる箇所に、隣り合う2面に壁部を有するLブロックを設置するものである。基礎マウンドの隅角部では、2方向の法尻部が交わるため、特に拘束力が小さい箇所になる。そして、袋状ユニット据付工程に先立ち、Lブロック設置工程において、このような2方向の法尻部に対応するように、隣り合う2面に壁部を有するLブロックを設置することで、2面の壁部により袋状ユニットの移動を防止して拘束力を向上させ、基礎マウンドの支持力を高めるものである。
(14)上記(12)(13)項において、前記袋状ユニット据付工程に先立ち、既設の基礎マウンドの表層部を撤去する表層部撤去工程を含む防波堤堤頭部の補強方法(請求項11)。
本項に記載の防波堤堤頭部の補強方法は、袋状ユニット据付工程に先立ち、既設の基礎マウンドの表層部を撤去する表層部撤去工程を含むものである。すなわち、表層部撤去工程において、既設の基礎マウンドの表層部を形成している捨石や被覆ブロック等を撤去し、袋状ユニット据付工程において、捨石や被覆ブロック等を撤去した位置に、複数の袋状ユニットを敷き詰めることで、既設の基礎マウンドの表層部を複数の袋状ユニットに置き換えるものである。これにより、基礎マウンドの大きさに制限があるような場合でも、既設の基礎マウンドから大きさを変えることなく、基礎マウンドの支持力を高めることとなる。
(15)上記(12)から(14)項において、前記Lブロックのうち、少なくとも前記基礎マウンドの隅角部となる箇所に設置されるLブロックを固定するための杭を、前記地盤に打設する杭打設工程を含む防波堤堤頭部の補強方法(請求項12)。
本項に記載の防波堤堤頭部の補強方法は、Lブロック設置工程において設置するLブロックのうち、少なくとも基礎マウンドの隅角部となる箇所に設置するLブロックを固定するための杭を、地盤に打設する杭打設工程を含むものである。この杭打設工程とLブロック設置工程との施工順序は、施工場所の静穏度や地盤の硬さ、作業性等を考慮して決定する。例えば、比較的静穏度が高く、杭打ちの精度を保つことが可能な場合は、Lブロック設置工程でLブロックを設置した後に、杭打設工程で杭を打設してLブロックを固定する。一方、地盤が比較的硬く、先にLブロックを設置すると杭の打設が困難になるような場合には、杭打設工程で杭を打設した後に、Lブロック設置工程でLブロックを設置して杭に固定する。
上述したいずれの施工順序の場合においても、Lブロックを杭に固定することで、横抵抗力が増大すると共に、地盤の洗掘に伴う沈下を防止することとなる。そして、隅角部に設置したLブロックを杭に固定することにより、特に拘束力が小さい隅角部の抵抗力を高め、基礎マウンドの支持力を更に高めるものである。又、法尻部に設置した全てのLブロックを、地盤に打設した杭に固定することとすれば、基礎マウンド全体の支持力を更に高めることとなる。
(16)上記(12)から(15)項の、前記Lブロック設置工程において、前記壁部にスリットが設けられているLブロックを設置する防波堤堤頭部の補強方法(請求項13)。
本項に記載の防波堤堤頭部の補強方法は、Lブロック設置工程において、壁部にスリットが設けられているLブロックを設置することで、基礎マウンド内で発生する透過流に起因する内部圧力の上昇を、更に低減させるものである。
(17)地盤に構築した基礎マウンド上に構造物を据え付けてなる防波堤堤頭部の補強方法であって、既設の基礎マウンドの表層部に、網状の袋に捨石を詰めた複数の袋状ユニットを敷き詰める袋状ユニット据付工程と、該袋状ユニット据付工程に先立ち、既設の基礎マウンドの表層部を撤去する表層部撤去工程とを含む防波堤堤頭部の補強方法(請求項14)。
本項に記載の防波堤堤頭部の補強方法は、上記(11)及び(14)項と同様の作用を奏するものである。
本発明はこのように構成したので、基礎マウンドの洗掘を防止して支持力を向上させることができ、防波堤堤頭部の抵抗力を高めることが可能となる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
図1は、本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部10の構造を示しており、図1(a)における上方向が堤幹部側、図1(a)(b)における右方向が港外側、左方向が港内側を夫々示している。防波堤堤頭部10は、地盤Gに構築された基礎マウンド12上に、ケーソン等の構造物16が据え付けられた構造である。そして、基礎マウンド12は、表層部が敷き詰められた複数の袋状ユニット14により構成され、内部が従来の基礎マウンド112(図14参照)で用いられているような捨石60で構成されている。袋状ユニット14は、網状の袋に、基礎マウンド12の内部で用いている捨石60と同様の捨石等を詰めたものである。
又、基礎マウンド12は、港外側(図1(a)(b)右側)、港内側(図1(a)(b)左側)、堤幹部と反対側(図1(a)下側)が、夫々天端面12cから地盤G側に傾斜するように構築されている。そして、基礎マウンド12の法尻部12aには、地盤Gに打設されている杭20に固定された、Lブロック18、18’が設置されており、図1の例では、港外側と港内側との夫々の法尻部12aにLブロック18が1つ、法尻部12aが交わる隅角部12bの夫々にLブロック18’が1つ設置されている。
Lブロック18は、例えば、図2に示すような形状であり、複数のスリット22が設けられた壁部18aと、壁部18aに対し略直交する底部18bとを有している。このような形状のLブロック18は、壁部18aが基礎マウンド12の法尻部12a側となる向きで設置されている。すなわち、図1(b)に示すように、港外側(図中右側)のLブロック18は、壁部18aが基礎マウンド12の図中右側となる向きで設置され、港内側(図中左側)のLブロック18は、壁部18aが基礎マウンド12の図中左側となる向きで設置されている。そして、Lブロック18の底部18b上には、壁部18aと接するように、基礎マウンド12の法尻部12aを形成する袋状ユニット14が載置されている。又、壁部18aと反対側の底部18b上には、基礎マウンド12の内部領域を形成する捨石60が載置されている。
一方、基礎マウンド12の隅角部12bに設置されているLブロック18’は、Lブロック18との比較において、更にもう1面に壁部18aを有しているものである。すなわち、図1(a)から確認できるように、隣り合う2面の夫々に壁部18aと、これらに対し略直交する底部18bとを有する形状であり、各々の壁部18aに複数のスリット22が設けられている。このような形状のLブロック18’は、隅角部12bに、壁部18aの各々が基礎マウンド12の直交する法尻部12a側となる向きで設置されている。すなわち、図1(a)に示すように、図中右下の隅角部12bのLブロック18’は、2つの壁部18aの各々が、基礎マウンド12の図中右側と下側とになる向きで設置され、又、図中左下の隅角部12bのLブロック18’は、2つの壁部18aの各々が、基礎マウンド12の図中左側と下側とになる向きで設置されている。そして、Lブロック18’の底部18b上には、1面或いは2面の壁部18aと接するようにして袋状ユニット14が載置され、袋状ユニット14が載置されていない箇所には捨石60が載置されている。
なお、本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部10の構造は、図1に例示した形態に限定されるものではない。例えば、図1の例では、基礎マウンド12の表層部のみが、袋状ユニット14により構成されているが、本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部10の構造は、これに限定されることなく、更に表層部よりも内側の部位に袋状ユニット14が用いられていてもよく、或いは、基礎マウンド12が袋状ユニット14のみで構築されていてもよい。又、Lブロック18、18’の設置位置も、図1の位置に限定されることはなく、任意の法尻部12aに設置できる。例えば、基礎マウンド12の全ての法尻部12aに設置してもよく、或いは、Lブロック18、18’を一部に設置しない形態も考えられる。更に、Lブロック18、18’を固定する杭20の打設の有無や、杭20により固定するLブロック18、18’の選定も任意である。
次に、図1に示したような防波堤堤頭部10を構築するための、本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部の構築方法について説明する。図3は、防波堤堤頭部の構築方法の一例を工程毎に示したフロー図であり、このフロー図に沿って、図4〜図6を参照しながら説明する。なお、図4〜図6では、LブロックとしてLブロック18のみを図示しており、以下の説明では、特に断り書きのない限り、Lブロックの設置箇所についてはLブロック18の設置箇所を例にして説明する。Lブロック18’については、以下の説明において、Lブロック18をLブロック18’に置き換えることで、容易に理解されるであろう。
S10(準備工程):防波堤堤頭部10を構築するための準備を行う工程である。例えば、図1に示した構造部16、複数の袋状ユニット14、Lブロック18等を、陸上で作製する。又、防波堤堤頭部10に用いる他の材料、施工の際に使用する機械や船舶等の準備をする。更に、防波堤堤頭部10の構築にあたり、予め構築場所の調査を行い、想定される波の規模等に基づいて、コンピュータ等で基礎マウンド12の周辺の流速に係る数値解析を行う。そして、この数値解析結果や、構築場所における基礎マウンドの大きさ等の制限、構築場所の水深や地盤の硬さ等に基づき、構築する基礎マウンド12の大きさ、袋状ユニット14を用いる範囲、Lブロック18の設置有無や設置位置、杭20の打設有無や打設位置等を決定する。
S20(施工順序判定):防波堤堤頭部10の構築場所における実際の静穏度、構築場所の水深や地盤の硬さ、施工性等に基づき、後述するLブロック設置工程と杭打設工程との施工順序を決定する。そして、Lブロック設置工程を先に行う場合はS30へ移行し、杭打設工程を先に行う場合はS50へ移行する。
S30(Lブロック設置工程):上記S20において、Lブロック設置工程を先に行うと決定した場合は、基礎マウンド12の法尻部12aや隅角部12bを構築する場所のうち、上記S10で決定したLブロックの設置位置に、Lブロック18を設置する。図4(a)に示すように、Lブロック18には、底部18bに杭20を挿通するための孔18cが、Lブロック18の固定に必要な杭20の数量分だけ設けられており、これらの孔18cの各々に、ブロックの損傷を防ぐための保護型枠34と、ガイド管32を取り付けるための取付金物36とが装備されている。このようなLブロック18を、地盤G上のLブロック設置位置に設置する。
S40(杭打設工程):地盤Gに杭20を打設し、上記S30で設置したLブロックを固定する。まずは、図4(a)に示すように、Lブロック18の図中左側の取付金物36に、ガイド管32を取り付ける。次に、杭頭20aに仮杭30が接続されている杭20の先端を、ガイド管32に誘導し、ガイド管32に沿って杭20が打設されるように、杭打ち機等により仮杭30の杭頭を打設する。この際、図4(b)の左側の保護型枠34に示すように、杭20の杭頭20aが、Lブロック18の底部18bの上面と、略同じ高さになるまで打設する。然る後、仮杭30を杭20から取り外し、杭20と保護型枠34との隙間や、杭20と地盤Gとの隙間にグラウト材40を充填して、押さえ金物38により杭20の杭頭20aを塞ぐ。このようにして、Lブロック18に設けられている孔18cの数、すなわち、Lブロック18の固定に必要な数量だけ杭20を打設し、Lブロック18を固定する。
S50(杭打設工程):上記S20において、杭打設工程を先に行うと決定した場合は、上記S10で決定したLブロック18の設置位置に対応するように、地盤Gに杭20を打設する。まず、図5(a)に示すように、地盤G上に杭打ち用枠42を設置する。この杭打ち用枠42は、Lブロック18の固定に必要な杭20の数量分だけ、Lブロック18の底部18bに設けられている孔18c(図4(a)参照)と、位置関係が等しい複数の孔42aを有しており、孔42aが孔18cと同じ深さになるように形成されている。このような杭打ち用枠42の孔42aに沿って杭20が打設されるように、杭20の杭頭20aに接続されている仮杭30の杭頭を、杭打ち機等により打設する。この際、杭20の杭頭20aが、杭打ち用枠42の上面と、略同じ高さになるまで打設する。然る後、仮杭30を杭20から取り外し、続けてLブロック18の固定に必要な数量だけ杭20を打設する。
S60(Lブロック設置工程):上記S50で打設した杭20に対応する位置に、Lブロック18を設置して固定する。図5(b)に示すように、Lブロック18には、上記S30において記述したように、底部18bに杭20を挿通するための孔18cが、Lブロック18の固定に必要な杭20の数量分だけ設けられており、これらの孔18cの各々に、保護型枠34と取付金物36とが装備されている。まず、Lブロック18に穿設されている孔18cの各々に、杭頭20aが地盤Gから突出して打設されている複数の杭20の各々が挿通されるように、Lブロック18を地盤Gに設置する。この状態において、地盤Gからの杭頭20aの高さは、上記S50で用いた杭打ち用枠42の孔42aの深さ、すなわち、Lブロック18の孔18cの深さと同等であるため、杭20の杭頭20aが、Lブロック18の底部18bの上面と、略同じ高さになる。次に、杭20と保護型枠34との隙間や、杭20と地盤Gとの隙間にグラウト材40を充填して、押さえ金物38により杭20の杭頭20aを塞ぐ。このようにして、地盤Gに打設されている全ての杭20に、Lブロック18を固定する。
なお、上記S30〜S60において、Lブロック18’を設置する場合にも、設置方法や杭20による固定方法は、Lブロック18の場合と同様である。
S70(基礎マウンド構築工程):複数の袋状ユニット14と捨石60とにより、基礎マウンド12を構築する。図3の例において、本工程は、下記S80、S90、S100により構成されている。
S80(袋状ユニット据付工程):構築する基礎マウンド12の表層部となる位置のうち、現在の基礎マウンド12の高さにおいて据え付けが可能な位置に、袋状ユニット14を据え付ける。上記S40、又は、上記S60を介して、初めて袋状ユニット14を据え付ける場合には、図6(a)に示すように、基礎マウンド12の法尻部12aとなる位置に、袋状ユニット14を据え付ける。すなわち、上記S10で決定した基礎マウンド12の大きさに対応する地盤G上の領域を、複数の袋状ユニット14で囲うように据え付ける。この際、Lブロック18が設置されている箇所には、Lブロック18の壁部18aに接するようにして、底部18b上に袋状ユニット14を据え付ける。
一方、後述するS100を介した後に、袋状ユニット14を据え付ける場合には、図6(c)に示す袋状ユニット14Bのように、据え付け済みの袋状ユニット14Aと、据え付け済みの袋状ユニット14Aで囲われた領域の内部に投入されている捨石60との、双方の上部に跨るようにして、袋状ユニット14Aよりも基礎マウンド12の内側に袋状ユニット14Bを据え付ける。すなわち、基礎マウンド12の港外側(図6右側)、港内側(図6左側)、及び、堤幹部と反対側(図6手前側)に、天端面12cから地盤G側に傾斜する法面を形成するように、複数の袋状ユニット14を据え付ける。或いは、今回の袋状ユニット14の据え付けにより、袋状ユニット14の高さが上記S10で決定した基礎マウンド12の所定の高さHに達するような場合には、図6(c)に示すように、捨石60上に複数の袋状ユニット14Cを隣接させて据え付ける。すなわち、基礎マウンド12の上部に、複数の袋状ユニット14により基礎マウンド12の天端面12cの一部を形成する。この際、図6の例では、天端面12cのうち、後述するS110においてケーソン等の構造物16を据え付ける領域以外を、袋状ユニット14により形成している。
S90(捨石投入工程):上記S80で据え付けた袋状ユニット14と同じ高さになるまで、袋状ユニット14で囲われた領域内に捨石60を投入する。すなわち、図6(a)に示す状態に対して捨石60を投入する場合には、図6(b)に示すように、Lブロック18の底部18b上に据え付けられた袋状ユニット14の高さと同じ高さになるまで、地盤G上や、底部18b上の袋状ユニット14が載置されていない箇所に、捨石60を投入する。一方、基礎マウンド12の天端面12cの一部を形成する袋状ユニット14を据え付けた状態に対して、捨石60を投入する場合には、図6(c)に示すように、天端面12cの一部を形成する袋状ユニット14の高さと同じ高さになるまで捨石60を投入して、投入した捨石60の表面を均し、天端面12cを完成させる。
S100(マウンド高さ判定):現在の基礎マウンド12の高さが、上記S10で決定した基礎マウンド12の所定の高さに達したか否かを判定する。具体的には、図6(b)に示すように、基礎マウンド12の高さが所定の高さHに達していない場合(NO)は、S80に復帰する。一方、図6(c)に示すように、基礎マウンド12の高さが所定の高さHに達している場合(YES)は、S110に移行する。
すなわち、上記S80、S90、S100により構成されるS70では、基礎マウンド12の表層部となる位置への袋状ユニット14の据え付けと、袋状ユニット14で囲われた基礎マウンド12の内部領域への捨石60の投入とを繰り返して、所定の高さHの基礎マウンド12を構築するものである。
S110(構造物据付工程):図6(d)に示すように、上記S10において作製したケーソン等の構造物16を、基礎マウンド12の天端面12cに据え付ける。この際、図6の例では、天端面12cの捨石60により形成されている領域に、構造物16を据え付けている。
続いて、既設の防波堤堤頭部を図1に示した防波堤堤頭部10の構造のように補強する、本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部の補強方法について説明する。本説明では、図14に示した防波堤堤頭部100を、補強対象の既設の防波堤堤頭部100として、既設の基礎マウンド112と略同じ大きさの基礎マウンド12を再構築する場合を例にして説明する。図7は、防波堤堤頭部の補強方法の一例を工程毎に示したフロー図であり、このフロー図に沿って、図8を参照しながら説明する。なお、図8では、LブロックとしてLブロック18のみを図示しており、以下の説明では、特に断り書きのない限り、Lブロックの設置箇所についてはLブロック18の設置箇所を例にして説明する。Lブロック18’については、以下の説明において、Lブロック18をLブロック18’に置き換えることで、容易に理解されるであろう。又、図3を参照して説明した、本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部の構築方法に示した工程と、内容が同じ工程については、詳しい説明を省略する。
S200(準備工程):防波堤堤頭部100を補強するための準備を行う工程である。例えば、図1に示した複数の袋状ユニット14、Lブロック18等を陸上で作製する。又、防波堤堤頭部100の補強に用いる他の材料、施工の際に使用する機械や船舶等の準備をする。更に、防波堤堤頭部100の補強にあたり、予め補強対象の防波堤堤頭部100が構築されている場所の調査を行い、想定される波の規模等に基づいて、コンピュータ等で基礎マウンドの周辺の流速に係る数値解析を行う。そして、この数値解析結果や、構築場所における基礎マウンドの大きさ等の制限、構築場所の水深や地盤の硬さ等に基づき、既設の基礎マウンド112からの表層部撤去の有無、袋状ユニット14を用いる範囲、Lブロック18の設置有無や設置位置、杭20の打設有無や打設位置等を決定する。
S210(表層部撤去工程):既設の基礎マウンド112から、表層部を形成している捨石60や被覆ブロック等を撤去する。図8(a)は、図14に示した防波堤堤頭部100の基礎マウンド112から、法尻部等を含む表層部を形成していた捨石60を撤去した状態を示しており、既設の基礎マウンド112の非撤去部112aに構造物16が載置された状態である。なお、防波堤堤頭部100が構築されている場所において、基礎マウンドの大きさに特に制限がない場合や、制限された大きさまで既設の基礎マウンド112の大きさに余裕があるような場合には、本工程を実施せずにS220へ移行してもよい。
S220(施工順序判定)〜S260(Lブロック設置工程):図3のS20〜S60と同様の工程であるため、詳しい説明を省略する。これらの工程を経ることで、図8(b)に示すように、基礎マウンド12の法尻部12aとなる箇所の一部、或いは全部に、杭20に固定されたLブロック18が設置される。
S270(袋状ユニット据付工程):再構築する基礎マウンド12の表層部となる位置のうち、現在の基礎マウンドの高さにおいて据え付けが可能な位置に、袋状ユニット14を据え付ける。上記S240、又は、上記S260を介して、初めて袋状ユニット14を据え付ける場合には、図8(c)に示すように、基礎マウンド12の法尻部12aとなる位置に、袋状ユニット14を据え付ける。すなわち、既設の基礎マウンド112が構築されていた領域を囲うように、複数の袋状ユニット14を据え付ける。この際、Lブロック18が設置されている箇所には、Lブロック18の壁部18aに接するようにして、底部18b上に袋状ユニット14を据え付ける。
一方、後述するS290を介した後に、袋状ユニット14を据え付ける場合には、図8(d)に示す袋状ユニット14Bのように、据え付け済みの袋状ユニット14Aと、据え付け済みの袋状ユニット14Aで囲われた領域の内部に投入されている捨石60との、双方の上部に跨るようにして、袋状ユニット14Aよりも基礎マウンド12の内側に袋状ユニット14Bを据え付ける。すなわち、基礎マウンド12の港外側(図8右側)、港内側(図8左側)、及び、堤幹部と反対側(図8手前側)に、天端面12cから地盤G側に傾斜する法面を形成するように、複数の袋状ユニット14を据え付ける。或いは、今回の袋状ユニット14の据え付けにより、袋状ユニット14の高さが、非撤去部112aの構造物16が載置されている部分の高さに達するような場合には、図8(d)に示すように、捨石60上に複数の袋状ユニット14Cを隣接させて据え付ける。すなわち、基礎マウンド12の上部に、複数の袋状ユニット14により基礎マウンド12の天端面12cを形成する。
S280(捨石投入工程):上記S270で据え付けた袋状ユニット14と、上記S210で撤去せずに残した既設の基礎マウンド112の非撤去部112aとの間に、袋状ユニット14の高さまで満たない隙間があるような場合には、この隙間に袋状ユニット14と同じ高さになるまで捨石60を投入する。図8(c)の例では、Lブロック18の底部18b上に据え付けた袋状ユニット14の高さと同じ高さになるまで、袋状ユニット14と非撤去部112aとの間の底部18b上の隙間に、捨石60を投入している。
S290(マウンド高さ判定):構造物16が載置されている箇所を除き、現在の基礎マウンド12の高さが、所定のマウンド高さ、すなわち、既設の基礎マウンド112と同じ高さに達したか否かを判定する。具体的には、図8(c)に示すように、再構築している基礎マウンド12の高さが、既設の基礎マウンド112の高さを示す、非撤去部112aの構造物16が載置されている部分の高さに達していない場合は、S270に復帰する。一方、図8(d)に示すように、再構築している基礎マウンド12の高さが、非撤去部112aの構造物16が載置されている部分の高さに達している場合(YES)は、本補強方法の工程が終了となる。すなわち、上記S270〜S290では、基礎マウンド12の表層部となる位置への袋状ユニット14の据え付けと、袋状ユニット14と非撤去部112aとの隙間への捨石60の投入とを繰り返して、表層部を複数の袋状ユニット14に置き換えた基礎マウンド12を再構築するものである。
次に、図9〜図12を参照して、本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部の構造の安定性を検証するために、本発明者らが行った実験について概略的に説明する。図9には、実験に用いたドラム型遠心力載荷装置50の、上方からの断面イメージ図を示している。ドラム型遠心力載荷装置50は、外径が半径Rのドラム型回転容器52と、ピストン型造流装置54とを有している。更に、図示は省略するが、ドラム型回転容器52を回転させるための回転駆動手段と、ドラム型回転容器52内に海水等を模した流体Wを供給するための供給手段とを有している。
ドラム型遠心力載荷装置50を用いて実験を行う際には、まず、ドラム型回転容器52の内壁52aを底面とする向きで、縮尺水理模型Mを設置する。縮尺水理模型Mは、検証の対象となる防波堤堤頭部を模した実験模型であり、地盤MG、基礎マウンドM12、構造物M16の各々を、実験相似則に基づく縮尺で、ドラム型回転容器52に収まるようにして予め作製する。そして、縮尺水理模型Mを凍結させることによって固化させた状態で、ドラム型回転容器52にセットする。続いて、回転駆動手段によりドラム型回転容器52を回転させ、回転させた状態で、供給手段からドラム型回転容器52内に流体Wを供給する。その後、所定の回転数となるようにドラム型回転容器52の回転速度を高め、ピストン型造流装置54を作動させることにより、流体Wに津波等を模した流れを作用させる。図9に示した状態において、縮尺水理模型Mが設置された箇所では、港外側に相当する図中右側から、港内側に相当する図中左側に向かって、津波等を模した流れが作用する。そして、高速度カメラによる撮影や、ドラム型回転容器52内の各所に設置した水圧計による水圧値の計測等により、必要な実験データを採取する。
本発明者らは、図14の基礎マウンド112のような、捨石60のみで構築された基礎マウンドを有する防波堤堤頭部の縮尺水理模型Mを作製し、この縮尺水理模型Mを実験対象として事前に検証を行った。基礎マウンドを模した基礎マウンドM12は、捨石60を模した礫材により構築した。そして、上述したドラム型遠心力載荷装置50を用いて、津波等を模した流れ作用により、縮尺水理模型Mの基礎マウンドM12が崩壊することを確認した。更に、基礎マウンドM12周辺の数値解析を行い、図10に示すような最大流速分布を得た。図10は、縮尺水理模型M周辺を平面方向から示しており、図中右側が港外側、図中左側が港内側に相当する。この結果から、基礎マウンドM12の、港内側の法尻部M12aと、堤幹部と反対側の法尻部M12aとが交わる、図中左下の隅角部において、特に大きな流速が発生することを見出した。
上述した数値解析結果を考慮して、本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部の構造の縮尺水理模型を、図11に示すような実験模型M1〜M3として作製した。すなわち、実験模型M1は、図11(a)に示すように、事前検証に用いた縮尺水理模型Mの基礎マウンドM12の表層部を、袋状ユニット14を模した袋状ユニットM14に置き換えて作製した。更に、図11(b)に示すように、実験模型M1の基礎マウンドM12の、港内側(図中左側)の法尻部M12aと、堤幹部と反対側(図中下側)の法尻部M12aとに、図2に示したようなLブロック18を模したLブロックM18を設置し、実験模型M2とした。実験模型M2の隅角部M12bには、2つのLブロックM18の底部を重ね、夫々の壁部が略直交するようにして設置した。更に、図11(c)(d)に示すように、実験模型M1の基礎マウンドM12の、港内側の法尻部M12aと、堤幹部と反対側の法尻部M12aとが交わる隅角部M12bに、夫々の壁部が略直交するようにして底部を重ねた2つのLブロックM18を、地盤MGに打設した杭20を模した杭M20に固定して設置し、実験模型M3とした。
これらの実験模型M1〜M3を、ドラム型遠心力載荷装置50にセットし、防波堤堤頭部の安定性を検証するための実験を行った。実験では、ピストン型造流装置54により津波等を模した流れを8回作用させ、模型平面方向からのビデオ撮影画像から基礎マウンドM12の平面積を算出し、流れにより消失した面積変化を検討した。この際、完全に地盤MGが露出に至るまで洗掘された領域や、基礎マウンドM12本体から移動した袋状ユニットM14を消失部とみなした。なお、比較例として、事前検証で用いた、捨石60を模した礫材のみで構築した基礎マウンドM12を有する縮尺水理模型Mに対し、実験模型M1〜M3に対する実験と同様の実験を行った。図12のグラフは、実験模型M1〜M3と比較例との、流れの作用回数と初期面積に対する減少率との関係を示している。
図12より、流れが8回作用した時点での面積減少率は、比較例が約30%、実験模型M1が約36%、実験模型M2が約9%、実験模型M3が約1%となった。比較例よりも実験模型M1の減少率の方が大きいが、比較例では、移動した礫材の再堆積が発生するため、この結果のみで両者を比較することは難しい。しかしながら、実験模型M2、M3は、比較例と比較すると、面積減少率が大幅に小さくなっていることが分かる。なお、詳細な説明は控えるが、実験の際に取得したデータから、基礎マウンドM12の隅角部M12bに、重ねた2つのLブロックM18を設置した実験模型M2、M3では、隅角部M12bのLブロックM18の埋没や周辺の袋状ユニットM14の沈下等の、部分的な損傷が発生するものの、大規模な崩壊には至らないため、本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部の構造の高い抵抗力が確認された。
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部10の構造は、図1に示すように、地盤Gに構築した基礎マウンド12上に構造物16が据え付けられており、基礎マウンド12の表層部が、複数の袋状ユニット14で構築されているものである。袋状ユニット14は、網状の袋に通常用いられるような捨石が詰められたものであり、捨石の粒径や網の張力等を考慮した網状の袋に、透過流に対する抵抗や総重量等を考慮した量の捨石が詰められている。本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部10の構造は、複数の袋状ユニット14により構築される基礎マウンド12の部位が、図1の例のような表層部だけに限らず、表層部よりも内側の部位、或いは、基礎マウンド12の全体が袋状ユニット14により構築されていてもよい。防波堤堤頭部10の構築場所において想定される波の規模等を考慮した適切な部位に、複数の袋状ユニット14が用いられて基礎マウンド12が構築される。
基礎マウンド12は、図1に示すように、袋状ユニット14が用いられた部位以外は、従来の基礎マウンド112(図14参照)で用いられるような捨石60により構築される。又、基礎マウンド12は、防波堤堤頭部10の構築場所における大きさの制限、この場所において想定される波の規模、基礎マウンド12自体の支持力等を考慮した大きさに構築されており、更に、港外方向(図中右方向)、港内方向(図中左方向)、及び堤幹部と反対の方向(図1(a)下方向)に向かって地盤G側に傾斜する法面を有するように構築される。
このように、本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部10の構造は、基礎マウンド12の表層部が、捨石が詰められた袋状ユニット14を用いて構築されることで、網状の袋により一体化されて、ユニット単位で見れば増大した捨石の重量と、隣接する袋状ユニット14との摩擦とにより、被覆ブロックを用いなくとも、水の流れに対する抵抗力を高めることができる。更に、袋状ユニット14に上部から伝達される荷重に対する、袋状ユニット14の網の張力による補強効果と荷重分散効果により、基礎マウンド12自体の支持力を増大させることができる(図13参照)。又、袋状ユニット14は、網状の袋に捨石が詰められたものであるため、透過流等の作用外力を低減し、基礎マウンド12内圧力の上昇を防止することができる。従って、基礎マウンド12の洗掘を防止する共に支持力を向上させることができ、これにより、防波堤堤頭部10の抵抗力を高めることが可能となる。
又、本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部10の構造は、図1に示すように、基礎マウンド12の一部の法尻部12aに、Lブロック18が設置されているものである。Lブロック18は、防波堤堤頭部10の構築場所において想定される波の規模等を考慮して、拘束力が特に小さい法尻部12aの一部や、2方向の法尻部12aが交わる隅角部12b、或いは、法尻部12aの全体に設置される。又、Lブロック18は、図2に示すように、壁部18aと底部18bとを有し、例えば鉄筋コンクリート製等の、既存の材料及び方法で作製されている。
そして、Lブロック18は、図1に示すように、基礎マウンド12の法尻部12aにおいて、壁部18aを基礎マウンド12に対して外側とする向きで、底部18b上に袋状ユニット14が載置されて設置されている。すなわち、Lブロック18は、基礎マウンド12の中でも拘束力が小さくなる法尻部12aにおいて、底部18bに載置された袋状ユニット14の重量や、この袋状ユニット14にかかる上部からの荷重等により、滑動抵抗が増大されて設置位置に抑止されると共に、壁部18aにより袋状ユニット14の移動を防止し、拘束力を高めることができるものである(図13参照)。これにより、基礎マウンド12全体の変形の抑止が可能となり、基礎マウンド12の支持力をより高めることができるため、津波等に対する防波堤堤頭部10の抵抗力を高めることができる。
又、本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部10の構造は、図1に示すように、基礎マウンド12の隅角部12bに、隣り合う2面に壁部18aを有するLブロック18’が設置されているものである。基礎マウンド12は、港外方向(図中右方向)、港内方向(図中左方向)、及び堤幹部と反対の方向(図1(a)下方向)に向かって、その天端面12cから地盤G側に傾斜する法面を有するように構築されているため、基礎マウンド12の隅角部12bでは2方向の法尻部12aが交わっており、特に拘束力が小さい箇所になる。このため、基礎マウンド12の隅角部12bに、2方向の法尻部12aに対応するように、隣り合う2面に壁部18aが形成されたLブロック18’が設置されることで、2面の壁部18aにより袋状ユニット14の移動を防止して拘束力を向上させ、基礎マウンド12の支持力を更に高めることができる。これにより、津波等に対する防波堤堤頭部10の抵抗力を、更に高めることが可能となる。
更に、基礎マウンド12の法尻部12aや隅角部12bに設置されているLブロック18、18’の壁部18aに、図2に示すようなスリット22を設けることとすれば、基礎マウンド12内で発生する透過流に起因する内部圧力の上昇を、更に低減させること可能となる(図13参照)。
又、本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部10の構造は、基礎マウンド12の法尻部12aに設置されたLブロック18、18’のうち、少なくとも基礎マウンド12の隅角部12bに設置されたLブロック18’が、地盤Gに打設された杭20に固定されているものである。Lブロック18、18’が杭20に固定されることで、横抵抗力が増大すると共に、地盤の洗掘に伴う沈下を防止することができる(図13参照)。そして、隅角部12bに設置されたLブロック18’が杭20に固定されていることにより、特に拘束力が小さい隅角部12bの抵抗力を高め、基礎マウンド12の支持力を更に高めることができる。又、図1の例のように、法尻部12aに設置された全てのLブロック18が、地盤Gに打設した杭20に固定されることとすれば、基礎マウンド12全体の支持力を更に高めることが可能となる。
そして、上述した本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部10の構造は、図9に示したドラム型遠心力載荷装置50を用いた検証により、図12のグラフに示す結果から明らかなように、津波等に対して高い抵抗力を有することが確認されている。
一方、本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部10の構築方法は、図3に示すように、基礎マウンド12を構築する基礎マウンド構築工程S70と、構築した基礎マウンド12上に構造物16を据え付ける構造物据付工程S110とを含むものである。基礎マウンド構築工程S70では、少なくとも基礎マウンド12の表層部となる部分に、網状の袋に捨石を詰めた複数の袋状ユニット14を敷き詰めて、図1に示すような基礎マウンド12を構築する。この際、袋状ユニット12を用いる部位以外は、従来の基礎マウンド112(図14参照)で用いられるような捨石60により構築する。
図3の例では、基礎マウンド構築工程S70は、袋状ユニット据付工程S80と、捨石投入工程S90と、これら2つの工程を繰り返すか否かの分岐となるマウンド高さ判定S100とにより構成されている。袋状ユニット据付工程S80では、図6(a)(c)に示すように、基礎マウンド12の表層部となる位置へ袋状ユニット14を据え付ける。捨石投入工程S90では、図6(b)(c)に示すように、袋状ユニット14で囲われた基礎マウンド12の内部領域へ捨石60を投入する。そして、マウンド高さ判定S100では、構築した基礎マウンド12の高さが、図6(c)に示すような所定の高さHに達したか否かを判定する。又、構造物据付工程S110では、図6(d)に示すように、基礎マウンド構築工程S70で構築した基礎マウンド12の天端面12cに、構造物16を据え付ける。
複数の袋状ユニット14を用いる基礎マウンド12の部位や、基礎マウンド12の大きさ等は、防波堤堤頭部10を構築する場所における制限、この場所において想定される波の規模に対する数値解析結果、基礎マウンド12自体の支持力等を考慮して決定する(S10)。そして、上述した内容から分かるように、本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部10の構築方法は、特殊な機械等を使用することなく、既存技術の範囲で施工が可能である。これにも関わらず、表層部が複数の袋状ユニット14により構築された基礎マウンド12を有する、上述した本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部10の構造を構築するものであるため、基礎マウンド12の洗掘を防止して支持力を向上させることができ、防波堤堤頭部10の抵抗力を高めることができる。
又、本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部10の構築方法は、基礎マウンド12の法尻部12aが構築される箇所の少なくとも一部に、Lブロック18を設置するLブロック設置工程S30、S60を含んでいる。このLブロック設置工程S30、S60では、防波堤堤頭部10の構築場所において想定される波の規模等を考慮して、拘束力が特に小さい法尻部12aの一部や、2方向の法尻部12aが交わる隅角部12b、或いは、法尻部12aの全体にLブロック18を設置する。この際、図1に示すように、Lブロック18の壁部18aが基礎マウンド12に対して外側となる向きで設置する。そして、基礎マウンド構築工程S70において、図6(a)に示すように、Lブロック設置工程S30、S60で設置したLブロック18の底部18b上に袋状ユニット14を載置し、基礎マウンド12の法尻部12aを構築する。このようにすることで、Lブロック18を設置した基礎マウンド12を有する、上述した本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部10の構造と同等の作用効果を奏するものである。
又、本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部10の構築方法は、Lブロック設置工程S30、S60において、基礎マウンド12の隅角部12bとなる箇所に、図1に示すように、隣り合う2面に壁部18aを有するLブロック18’を設置するものである。このように、2方向の法尻部12aが交わるため、特に拘束力が小さい隅角部12bに、2方向の法尻部12aに対応するように、隣り合う2面に壁部18aを有するLブロック18’を設置することで、2面の壁部18aにより袋状ユニット14の移動を防止して拘束力を向上させ、基礎マウンド12の支持力を高めることができる。これにより、津波等に対する防波堤堤頭部10の抵抗力を更に高めることが可能となる。
更に、Lブロック設置工程S30、S60において、図2に示すような壁部18aにスリット22が設けられているLブロック18、18’を設置することとすれば、構築した基礎マウンド12内で発生する透過流に起因する内部圧力の上昇を、更に低減させることが可能となる。
又、本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部10の構築方法は、Lブロック設置工程S30、S60において設置するLブロック18、18’のうち、少なくとも基礎マウンド12の隅角部12bとなる箇所に設置するLブロック18’を固定するための杭20を、地盤Gに打設する杭打設工程S40、S50を含むものである。この杭打設工程S40、S50とLブロック設置工程S30、S60との施工順序は、施工場所の静穏度や地盤の硬さ、作業性等を考慮して決定する(S20)。例えば、比較的静穏度が高く、杭打ちの精度を保つことが可能な場合は、図4に示すように、Lブロック設置工程S30でLブロック18、18’を設置した後に、杭打設工程S40で杭20を打設してLブロック18、18’を固定する。一方、地盤Gが比較的硬く、先にLブロック18、18’を設置すると杭20の打設が困難になるような場合には、図5に示すように、杭打設工程S50で杭20を打設した後に、Lブロック設置工程S60でLブロック18、18’を設置して杭20に固定する。上述したいずれの施工順序の場合においても、Lブロック18、18’を杭20に固定することで、Lブロック18、18’を杭20に固定した基礎マウンド12を有する、上述した本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部10の構造と同等の作用効果を奏するものである。
他方、本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部10の補強方法は、図7に示すように、例えば図14に示したような既設の基礎マウンド112の表層部に、網状の袋に捨石を詰めた複数の袋状ユニット14を敷き詰める袋状ユニット据付工程S270を含むものである。更に、図7の例では、袋状ユニット据付工程S270の次工程である捨石投入工程S280と、袋状ユニット据付工程S270と捨石投入工程S280とを繰り返すか否かの分岐となるマウンド高さ判定S290とを含んでいる。袋状ユニット据付工程S270では、図8(c)(d)に示すように、再構築する基礎マウンド12の表層部となる位置へ袋状ユニット14を据え付ける。捨石投入工程S280では、図8(c)(d)に示すように、袋状ユニット14と既設の基礎マウンド112の非撤去部112aとの間の隙間に、捨石60を投入する。そして、マウンド高さ判定S290では、再構築した基礎マウンド12の高さが、既設の基礎マウンド112と同じ高さに達したか否かを判定する。
複数の袋状ユニット14を敷き詰める範囲や層数等は、既設の防波堤堤頭部100が構築されている場所における制限、この場所において想定される波の規模に対する数値解析結果、基礎マウンド自体の支持力等を考慮して決定する(S200)。このようにして、本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部10の補強方法は、表層部が複数の袋状ユニット14により構築された基礎マウンド12を再構築することで、既設の基礎マウンド112よりも支持力を高めて洗掘を防止することができ、防波堤堤頭部10の抵抗力を高めることが可能となる。更に、上述した内容から明らかなように、既設の基礎マウンド112の表層部に袋状ユニット14を据え付けるだけなので、既設の防波堤堤頭部100に対する適用が容易であり、又、特殊な機械等を使用することなく、既存技術の範囲で施工することができる。
又、本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部10の補強方法は、基礎マウンド12の法尻部12aとなる箇所の少なくとも一部に、Lブロック18を設置するLブロック設置工程S230、S260を含んでいるものである。このLブロック設置工程S230、S260では、既設の防波堤堤頭部100が構築されている場所において想定される波の規模等を考慮して、拘束力が特に小さい法尻部12aの一部や、2方向の法尻部12aが交わる隅角部12b、或いは、法尻部12aの全体にLブロック18を設置する。Lブロック18は、壁部18aと底部18bとを有しており、図8(b)に示すように、Lブロック18の壁部18aが、既設の基礎マウンド112の非撤去部112aに対して、外側となる向きで設置する。そして、袋状ユニット据付工程S270において、Lブロック設置工程S230、S260で設置したLブロック18の底部18b上に袋状ユニット14を載置し、基礎マウンド12の法尻部12aを構築する。このようにすることで、Lブロック18を設置した基礎マウンド12を有する、上述した本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部10の構造と同等の作用効果を奏するものとなる。
又、本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部10の補強方法は、Lブロック設置工程S230、S260において、基礎マウンド12の隅角部12bとなる箇所に、図1に示すように、隣り合う2面に壁部18aを有するLブロック18’を設置するものである。基礎マウンド12の隅角部12bでは、2方向の法尻部12aが交わるため、特に拘束力が小さい箇所になる。そして、袋状ユニット据付工程S270に先立ち、Lブロック設置工程S230、S260において、このような2方向の法尻部12aに対応するように、隣り合う2面に壁部18aを有するLブロック18’を設置することで、2面の壁部18aにより袋状ユニット14の移動を防止して拘束力を向上させることができ、基礎マウンド12の支持力を高めることが可能となる。これにより、津波等に対する防波堤堤頭部10の抵抗力を更に高めることができる。
更に、Lブロック設置工程S230、S260において、図2に示すような壁部18aにスリット22が設けられているLブロック18、18’を設置することで、基礎マウンド12内で発生する透過流に起因する内部圧力の上昇を、更に低減させることができる。
又、本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部10の補強方法は、袋状ユニット据付工程S270に先立ち、既設の基礎マウンド112の表層部を撤去する表層部撤去工程S210を含むものである。すなわち、表層部撤去工程S210において、図8(a)に示すように、既設の基礎マウンド112の表層部を形成している捨石60や被覆ブロック等を撤去し、袋状ユニット据付工程S270において、捨石60や被覆ブロック等を撤去した位置に、図8(d)に示すように、複数の袋状ユニット14を敷き詰めることで、既設の基礎マウンド112の表層部を複数の袋状ユニット14に置き換えるものである。これにより、防波堤堤頭部の構築場所において基礎マウンドの大きさに制限があるような場合でも、既設の基礎マウンド112から大きさを変えることなく、基礎マウンド112よりも支持力を高めた基礎マウンド12を構築することが可能となる。
更に、本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部10の補強方法は、Lブロック設置工程S230、S260において設置するLブロック18、18’のうち、少なくとも基礎マウンド12の隅角部12bとなる箇所に設置するLブロック18’を固定するための杭20を、地盤Gに打設する杭打設工程S240、S250を含むものである。この杭打設工程S240、S250とLブロック設置工程S230、S260との施工順序は、施工場所の静穏度や地盤Gの硬さ、作業性等を考慮して決定する(S220)。例えば、比較的静穏度が高く、杭打ちの精度を保つことが可能な場合は、図4に示すように、Lブロック設置工程S230でLブロック18、18’を設置した後に、杭打設工程S240で杭20を打設してLブロック18、18’を固定する。一方、地盤が比較的硬く、先にLブロック18、18’を設置すると杭20の打設が困難になるような場合には、図5に示すように、杭打設工程S250で杭20を打設した後に、Lブロック設置工程S260でLブロック18、18’を設置して杭20に固定する。そして、いずれの施工順序の場合においても、Lブロック18、18’を杭20に固定することで、Lブロック18、18’を杭20に固定した基礎マウンド12を有する、上述した本発明の実施の形態に係る防波堤堤頭部10の構造と同等の作用効果を奏するものである。
なお、上記説明における杭打設工程は、準備工程において行う数値解析の結果によっては、省略することも可能である。又、Lブロック18’は、2つのLブロック18を組み合わせて構成してもよく、予め一体品として構成してもよい。