JP5929555B2 - ヒドロキシアダマンタンカルボン酸化合物の製造方法 - Google Patents

ヒドロキシアダマンタンカルボン酸化合物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、アダマンタン骨格を有し、医農薬中間体や光ファイバーや光導波路、光ディスク基板、フォトレジストなどの光学材料、耐熱性、表面硬度等に優れた機能性樹脂原料、その他各種工業製品として有用なヒドロキシアダマンタンカルボン酸化合物の製造方法に関する。
アダマンタン骨格の様な橋頭を有する脂環族化合物は、構造上剛直な性質を有し、高い耐熱性や優れた光学特性を示すことから、高機能樹脂材料や医農薬中間体、フォトレジスト材料などの光学材料として用いられている(例えば特許文献1〜3参照)。その中でも同一分子中にヒドロキシル基とカルボキシル基を有するヒドロキシアダマンタンカルボン酸化合物は、ヒドロキシル基とカルボキシル基の反応性の違いを利用することで様々な官能基を導入できることから、フォトレジストの性能を改良するモノマーや医農薬中間体として使用できるため有用である。
ヒドロキシアダマンタンカルボン酸化合物は、いくつかの合成ルートが知られている。先ず、アダマンタノール誘導体やアダマンタンポリオール誘導体からKoch反応によりアダマンタンカルボン酸化合物を得る際に副生成物として生成することが知られているが(例えば特許文献4参照)、ヒドロキシアダマンタンカルボン酸化合物自体が主目的物ではなく、単離精製が困難で、収率が低いという問題点があった。また、アダマンタンカルボン酸化合物の酸素酸化反応により、ヒドロキシアダマンタンカルボン酸化合物を合成する方法が開示されているが、反応の選択性が低く、複数の位置で酸化反応が進行して生成した副生成物が得られており、単離精製が困難という問題点があった(例えば特許文献5参照)。また、アダマンタンカルボン酸化合物をハロゲン化し、ヒドロキシル基に置換する方法(非特許文献1他)なども開示されているが、反応を2段階で行う必要があり、操作が煩雑で高価になることや環境負荷の高いハロゲン化物を用いるなど問題点があった。
特開平6−305044号公報 特開平4−39665号公報 特開2006−16379号公報 特開2010−150220号公報 特開平11−106360号公報
Zhurnal Organicheskoi Khimii,1992, vol. 28,#10,2098
本発明は、上記の各問題点を鑑みてなされたものであり、アダマンタン化合物からハロゲン化物を経由せずにヒドロキシアダマンタンカルボン酸化合物をワンポット反応により安価且つ簡便に製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、特定のアダマンタン化合物を、カルボキシル化する反応と、酸化してヒドロキシル基を生成する反応を、逐次的にワンポットで行い、ヒドロキシアダマンタンカルボン酸化合物を製造する方法により、上記の課題を解決できる事を見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、式(1)で示されるアダマンタン化合物を、(ア)濃度90質量%以上のプロトン酸溶液中で一酸化炭素又は一酸化炭素源と反応させてOX基をカルボキシル化し、続いて、(イ)該反応液に酸化剤を添加して橋頭位に位置するC−H結合を酸化することでヒドロキシル基を生成し、式(2)で示されるヒドロキシアダマンタンカルボン酸化合物を製造する方法である。
(式中、置換基Rは、橋頭位に位置する置換基であり、n個のOX基、p個の水素原子及びq個の炭素数1〜6のアルキル基を示し、n、p、qは、n=1〜3、n+p+q=3の関係の整数である。Xは水素原子、アルキル基、アリール基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、テトラヒドロピラニル基、スルホニル基、シリル基からなる群から選ばれ、n個のOX基において同一でも異なっても良い。置換基Rは橋頭位以外の炭素に結合し、同一又は異なって良く水素又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、m=12である。)
(式中、R’は、n個のCOOH、p個の水素及びq個の炭素数1〜6のアルキル基を示し、n、p、qは式(1)と同じである。)
本発明よれば、医農薬中間体や光ファイバー、光導波路、光ディスク基板、フォトレジストなどの光学材料、耐熱性、表面硬度等に優れた機能性樹脂原料、その他各種工業製品として有用なヒドロキシアダマンタンカルボン酸化合物を、ワンポット反応により反応制御が容易で精製プロセスを簡略化でき、また、ハロゲン化物を経由しないため環境負荷が少なく効率的に製造する方法が提供される。
本発明は、特定のアダマンタン化合物を、1ポットでカルボキシル化反応と酸化反応を連続的に行い、ヒドロキシアダマンタンカルボン酸化合物を製造する方法である。以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明で原料として用いられるアダマンタン化合物は、式(1)で示される化学構造を満足する、OX基を有するアダマンタン化合物である。OX基は酸素原子とX(水素原子、アルキル基、アリール基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、テトラヒドロピラニル基、スルホニル基又はシリル基)が結合した一価の有機基であり、アダマンタン骨格に酸素原子が結合する。その中でもOX基がヒドロキシル基(Xは水素原子)であるアダマンタノール誘導体、アダマンタンジオールやアダマンタントリオールなどのアダマンタンポリオール誘導体を好適に用いることができる。また、橋頭位以外の炭素は置換基Rとして水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を持つ事ができる。
上記のアダマンタノール誘導体としては、1−アダマンタノール、3−メチル−1−アダマンタノール、3,5−ジメチル−1−アダマンタノール、3−エチル−1−アダマンタノール、3、5−ジエチル−1−アダマンタノール、3−プロピル−1−アダマンタノール、3,5−ジプロピル−1−アダマンタンノールなどが挙げられ、更に置換基として炭素数1〜6のアルキル基を有していてもよい。
また、アダマンタンジオール誘導体は、1,3−アダマンタンジオール、5−メチル−1,3−アダマンタンジオール、5−エチル−1,3−アダマンタンジオール、5−プロピル−1,3−アダマンタンジオール、などが挙げられ、更に置換基として炭素数1〜6のアルキル基を有していてもよい。
また、アダマンタントリオール誘導体としては、1,3,5−アダマンタントリオールなどが挙げられ、更に置換基として炭素数1〜6のアルキル基を有していてもよい。
式(1)で示されるアダマンタン化合物のOX基のXとしては水素原子、アルキル基、アリール基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、テトラヒドロピラニル基、スルホニル基、シリル基からなる群から選ばれ、n個のOX基において同一でも異なっても良い。
本発明の(ア)カルボキシル化反応及び(イ)酸化反応の際の溶媒として用いるプロトン酸は濃度90質量%以上であることが必要であり、具体的には、無機酸として硫酸、有機カルボン酸としてギ酸、酢酸、プロピオン酸、有機スルホン酸としてエタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、トリフルオロメチルスルホン酸、パラトルエンスルホン酸である。それらを1種以上組み合わせて用いることができる。その中で、ヒドロキシアダマンタンカルボン酸化合物を得る反応における選択率とプロトン酸自体を溶媒として使用することから、溶液状態で入手できる硫酸が好ましい。また、硫酸を用いる場合、95質量%以上の水溶液を用いることが好ましい。この範囲であれば、カルボキシル化反応が速やかに進行し、高収率でヒドロキシアダマンタンカルボン酸化合物が得られる。更に、反応中の硫酸濃度を維持するために、反応前や反応中に発煙硫酸を加える方法を用いても良い。
プロトン酸溶媒の使用量は、式(1)のアダマンタン化合物に対して1〜20質量倍、好ましくは2〜16質量倍、さらに好ましくは4〜12質量倍にすることが望ましい。この範囲内であると、例えばOX基のカルボキシル化反応を十分進行させ、且つ分離・精製操作を少量の有機溶媒や水で行うことができる。
本発明において、カルボキシル化する際には、一酸化炭素又は一酸化炭素源を用いる。一酸化炭素又は一酸化炭素源の使用量は、目的とするヒドロキシアダマンタンカルボン酸化合物を効率良く製造するため、式(1)のアダマンタン化合物のOX基に対して0.9〜10当量の範囲で使用することが好ましい。
一酸化炭素は、純粋な一酸化炭素であっても良く、窒素やヘリウム、アルゴン等の不活性ガスで希釈して使用してもよい。また、一酸化炭素は常圧もしくはオートクレーブを使用した加圧下で使用してもよく、反応液中に吹き込みながら反応させても良い。
一酸化炭素源としては、ギ酸又はアルキル基の炭素数が1〜10のギ酸アルキルエステルが挙げられる。これらは2種以上組み合わせて使用しても良い。
ギ酸アルキルエステルの具体例としては、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸ペンチル、ギ酸ヘキシル、ギ酸ヘプチル、ギ酸オクチル、ギ酸ノニル、ギ酸デカニル、ギ酸シクロヘキシルなどが挙げられる。
これらのギ酸及びギ酸アルキルエステルは2種以上組み合わせて用いても良く、更に一酸化炭素と併用しても良い。これらのギ酸及びギ酸アルキルエステルの中で、ギ酸及びギ酸メチルが安価で取り扱いが容易なため好ましく用いることができる。なお、ギ酸及びギ酸アルキルエステルは、試薬又は工業薬品を使用できる。
本発明において、プロトン酸溶液中で一酸化炭素もしくは一酸化炭素源と反応させてカルボキシル化する際の反応温度は、例えば、−78〜200℃で行われ、好ましくは−20〜100℃で、さらに好ましくは0〜50℃程度で行うことが好ましい。この範囲内であれば式(1)で示されるアダマンタン化合物のOX基のカルボキシル化反応が十分進行し、副反応の進行も少ない。また、反応圧力は特に制限されない。用いる反応器の材質は、材質も特に制限を受けないが、プロトン酸により腐食が少ない例えばグラスライニング製やテフロン(登録商標)コーティング製の反応器が好ましい。反応器の形状や付属設備については特に制限は無い。
カルボキシル化反応の反応時間は、反応温度にも影響されるが、一酸化炭素又は一酸化炭素源が十分に転化されれば特に限定されないが、1〜100時間で行うことが好ましく、さらに1〜10時間の範囲で行うことが特に好ましい。この範囲内で反応を行うことで、カルボキシル化を十分に進行させつつ効率よく製造を行うことができる。
カルボキシル化に続き、生成物を単離又は精製する事無く、該反応液に酸化剤を加えて酸化する工程を実施する。ここで用いられる酸化剤は、プロトン酸溶媒中で酸化能力を持つ酸化剤であれば特に制限を受けないが、その中でも硝酸、過塩素酸、過マンガン酸、クロム酸などの無機酸、若しくは過酸化水素などの過酸化物が具体的に例示され、収率や取扱い易さなどの点から硝酸を用いることが最も好ましい。
酸化剤の使用量は、式(1)で示されるアダマンタン化合物に対して0.9〜10.0当量、好ましくは1.0〜5.0当量にすることが望ましい。この範囲内で酸化が十分進行し、目的のヒドロキシアダマンタンカルボン酸化合物が高収率で取得できる。
酸化工程の反応温度は、通常−10〜100℃の範囲で行われ、好ましくは0〜80℃程度で行うことが好ましい。この範囲内であれば酸化反応が十分に進行し、副反応の進行は少ない。また、反応圧力は特に制限は無い。
酸化剤の添加方法は、特に制限は無く公知の方法を選択できる。また、添加時の温度も特に制限は受けないが、副反応防止の観点から酸化工程の反応温度に出来るだけ合わせて添加することが好ましい。
酸化反応の時間は、反応温度にも影響されるが、酸化反応が十分に進行する時間であれば特に制限を受けない。通常1〜100時間で行うことが好ましく、好ましくは1〜20時間で行うことが良い。この範囲内で反応を行うことで、十分に酸化が進行し且つ目的のヒドロキシアダマンタンカルボン酸が高収率で取得できる。
本発明では、(ア)アダマンタン化合物をカルボキシル化、(イ)酸化反応によりヒドロキシル基生成までをワンポットで行い、酸化反応終了後に生成物を初めて分離精製する。分離精製プロセスは特に制限を受けず公知の方法を選択できるが、本発明の様にプロトン酸を用いる反応系での精製方法として、該反応液を水で希釈する又はアルカリ性水溶液で中和後目的物の結晶を析出させ、濾別、乾燥により目的物のヒドロキシアダマンタンカルボン酸化合物を得る方法が挙げられる。
反応液の希釈に使用する水の量は反応液に対して1〜50質量倍が好ましく、2〜10質量倍がより好ましい。この範囲内であれば、プロトン酸が十分希釈されるため、生成物の結晶が十分に析出し、濾過の際の生成物の水溶液へのロスも少ない。
また、プロトン酸溶液を中和するためにアルカリ性水溶液を使用しても良い。この操作は反応液を水で希釈後に実施しても良く、希釈と同時に中和操作を行っても良い。用いるアルカリ性水溶液のアルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化アンモニウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドのようなテトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド等が挙げられ、特に水酸化ナトリウムや水酸化カリウムが安価で取り扱いが容易なため好ましい。アルカリ性水溶液の濃度は、特に制限を受けないが、一般的な取扱いを考慮すると1〜30質量%が好ましく、10〜20質量%の濃度がより好ましい。また、加えるアルカリの量は、溶媒として使用したプロトン酸の解離するプロトンのモル数に対して0.1〜1当量が良い。アルカリを過剰に加えると、目的物であるヒドロキシアダマンタンカルボン酸化合物が中和された塩が水相に分配され、単離が困難になるが、この範囲内であればpHが酸性側で維持されるため、新たに酸性水溶液を加えてpHを調整しなくても目的物であるヒドロキシアダマンタンカルボン酸化合物の結晶を析出させることができる。
また、アルカリ中和時に酸化剤を還元するために還元剤を共存させてもよい。還元剤としては例えば亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、シュウ酸、ギ酸など公知の還元剤が例示され、酸化剤に対して1当量〜10当量の範囲で添加することができる。添加量は、1当量〜2当量の範囲で添加することがより好ましい。なお、中和及び還元操作時の温度は、特に制限を受けないが、操作上の観点から10〜40℃の範囲であれば良い。
目的物のヒドロキシアダマンタンカルボン酸化合物の濾別方法は特に制限は無く、重力を利用した自然濾過、加圧濾過、減圧濾過、遠心分離等の公知の方法を選択できる。また濾過に用いるフィルターの形状も、プロセスや設備など所望に応じ選択することができる。
上記の濾別により分離されたヒドロキシアダマンタンカルボン酸化合物の粗結晶は、更に洗浄、蒸留、昇華、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなど公知の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により精製され、式(2)で表わされるヒドロキシアダマンタンカルボン酸化合物が取得できる。
目的物であるヒドロキシアダマンタンカルボン酸化合物は一般に乾燥させて紛体で取り扱われる。乾燥方法は、特に制限は無く風乾、加熱乾燥、減圧乾燥など方法を選択できるが、乾燥時間が短縮できる減圧乾燥が好ましく選択される。また、乾燥温度は、特に制限はなく、常圧〜減圧下であれば0〜120℃が好ましく、30〜80℃がより好ましいが、乾燥温度は乾燥圧力により適宜選択されなければならない。
以下、実施例を挙げて、本発明の内容をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、下記実施例に何ら制約されるものではない。
(実施例1)
反応装置として攪拌機、温度計、滴下ロート、ジムロートを備えたガラス製フラスコに、1−アダマンタノール(純度99%)30.2gを仕込み、96質量%濃硫酸215.2gを入れた。室温で攪拌して原料が溶解したのを確認した後、フラスコを冷却して液温が10〜20℃の範囲に留まるようにギ酸9.3gを30分かけて滴下した。滴下終了後、反応温度35℃で3時間反応させた。反応の進行をGCで確認したところ、1−アダマンタノールの転化率は100%であり、反応収率98.9%で1−アダマンタンカルボン酸が生成した。その後、フラスコを再度冷却しながら、液温10〜20℃の範囲に留まるようにしながら70%硝酸23.1gを30分かけて滴下した。滴下終了後、反応温度35℃で5時間反応させた。反応の進行をGCで確認したところ、1−アダマンタンカルボン酸の転化率は100%であり、反応収率99.2%で3−ヒドロキシアダマンタン−1−カルボン酸が生成した。
精製装置として攪拌機、温度計を備えたガラス製フラスコに水酸化ナトリウム90.2g、亜硫酸ナトリウム35.5g、イオン交換水812gを入れ、水酸化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム混合溶液とし、フラスコを冷却した。上記混合溶液に、液温が40℃以下に留まる様に3−ヒドロキシ−1−アダマンタンカルボン酸の反応溶液を加え、析出した白色結晶を濾別し水洗した。更に、得られた結晶を40℃で8時間減圧乾燥し、3−ヒドロキシアダマンタン−1−カルボン酸の白色結晶30.0g(収率85.3%)を得た。
(実施例2)
硝酸滴下後の反応液温度を50℃にする以外は実施例1と同様の操作を行った。一段階目のカルボキシル化反応では1−アダマンタノールの転化率は99.0%であり、反応収率97%で1−アダマンタンカルボン酸が生成した。二段階目の酸化反応では1−アダマンタンカルボン酸の転化率は99%であり、3−ヒドロキシアダマンタン−1−カルボン酸の白色結晶28.3g(収率75.2%)が得られた。
(実施例3)
硝酸滴下後の反応液温度を80℃にする以外は実施例1と同様の操作を行った。一段階目のカルボキシル化反応では1−アダマンタノールの転化率は99.0%であり、反応収率97%で1−アダマンタンカルボン酸が生成した。二段階目の酸化反応では1−アダマンタンカルボン酸の転化率は98.0%であり、3−ヒドロキシアダマンタン−1−カルボン酸の白色結晶9.8g(収率25.2%)が得られた。
(実施例4)
実施例1と同じ反応装置に、1,3−アダマンタンジオール(純度99%)30.0gを仕込み、96質量%濃硫酸360.1gを入れた。室温で攪拌して原料が溶解したのを確認した後、フラスコを冷却して液温が10〜20℃の範囲に留まるようにギ酸16.8gを30分かけて滴下した。滴下終了後、反応温度35℃で3時間反応させた。反応の進行をGCで確認したところ1,3−アダマンタンジオールの転化率は100%であり、反応収率92.9%で1,3−アダマンタンジカルボン酸が生成した。その後、液温が35〜50℃の範囲に留まるようにしながら70%硝酸48.2gを30分かけて滴下した。滴下終了後、反応温度50℃で5時間反応させた。反応の進行をGCで確認したところ、1,3−アダマンタンジカルボン酸の転化率は95.0%であり、反応収率64.5%で5−ヒドロキシアダマンタン−1,3−ジカルボン酸が生成した。
実施例1と同じ精製装置に、水酸化ナトリウム154.2g、亜硫酸ナトリウム74.2g、イオン交換水873.8gを入れ、水酸化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム混合溶液とし、フラスコを冷却した。上記混合溶液に、液温が10〜40℃の範囲に留まるようにして、5−ヒドロキシ−1,3−アダマンタンジカルボン酸の反応溶液を加え、析出した結晶を濾別し、水洗した。結晶を40℃で8時間減圧乾燥し、5−ヒドロキシアダマンタン−1,3−ジカルボン酸の白色結晶28.0g(収率65.4%)を得た。
(実施例5)
実施例1と同じ反応装置に、3,5−ジメチル−1−アダマンタノール(純度99%)30.0gを仕込み、96質量%濃硫酸208gを入れた。室温で攪拌して原料が溶解したのを確認した後、フラスコを冷却して液温が10〜20℃の範囲に留まるようにギ酸7.76gを30分かけて滴下した。滴下終了後、反応温度35℃で3時間反応させた。反応の進行をGCで確認したところ3,5−ジメチル−アダマンタノールの転化率は100%であり、反応収率92.6%で3,5−ジメチル−1−アダマンタンカルボン酸が生成した。その後、フラスコを再度冷却しながら、液温10〜20℃の範囲に留まるように70%硝酸19.6gを30分かけて滴下した。滴下終了後、反応温度50℃で5時間反応させた。反応の進行をGCで確認したところ、3,5−ジメチル−1−アダマンタンカルボン酸の転化率は100%であり、反応収率98.0%で3−ヒドロキシ−5,7−ジメチルアダマンタン−1−カルボン酸が生成した。
実施例1と同じ精製装置に、水酸化ナトリウム90.2g、亜硫酸ナトリウム35.5g、イオン交換水812gを入れ、水酸化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム混合溶液とし、フラスコを冷却した。上記混合溶液に、液温が10〜40℃の範囲に留まるようにして、3−ヒドロキシ−5,7−ジメチルアダマンタン−1−カルボン酸の反応溶液を加え、析出した結晶を濾別し、水洗した。結晶を40℃で8時間減圧乾燥し、3−ヒドロキシ−5,7−ジメチルアダマンタン−1−カルボン酸の白色結晶32.6(収率87.5%)を得た。
(比較例1)
攪拌機、温度計、滴下ロート、ジムロートを備えたフラスコに、1−アダマンタノール(純度99%)30.0gを仕込み、96質量%濃硫酸177.5gを入れた。室温で攪拌して原料が溶解したのを確認した後、フラスコを冷却して液温が10〜20℃の範囲に留まるようにギ酸9.3gを30分かけて滴下した。滴下終了後、反応温度35℃で3時間反応させた。反応の進行をGCで確認したところ、1−アダマンタノールの転化率は100%であり、反応収率99.0%で1−アダマンタンカルボン酸が生成した。
攪拌機、温度計を備えたフラスコに、水酸化ナトリウム74.5g、イオン交換水670.5gを入れ、フラスコを冷却した。上記水酸化ナトリウム溶液に、液温が10〜40℃の範囲に留まるようにして、1−アダマンタンカルボン酸の反応溶液を加え、析出した結晶を濾別し、水洗した。結晶を40℃で8時間真空乾燥し、1−アダマンタンカルボン酸の白色結晶31.6g(収率89.0%)を得た。
更に攪拌機、温度計、滴下ロート、ジムロートを備えたフラスコに、得られた1−アダマンタンカルボン酸31.6gを仕込み、96質量%濃硫酸215.2gを入れた。室温で攪拌して原料が溶解したのを確認した後、フラスコを冷却して液温が10〜20℃の範囲に留まるように70%硝酸23.0gを30分かけて滴下した。滴下終了後、反応温度35℃で5時間反応させた。反応の進行をGCで確認したところ、1−アダマンタンカルボン酸の転化率は100%であり、反応収率99.2%で3−ヒドロキシアダマンタンー1−カルボン酸が生成した。
同様に攪拌機、温度計を備えたフラスコに水酸化ナトリウム90.2g、亜硫酸ナトリウム35.5g、イオン交換水812gを入れ、水酸化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム混合溶液とし、フラスコを冷却した。上記混合溶液に、液温が10〜40℃の範囲に留まるようにして、3−ヒドロキシ−1−アダマンタンカルボン酸の反応溶液を加え、析出した結晶を濾別し、水洗した。結晶を40℃で8時間減圧乾燥し、3−ヒドロキシアダマンタン−1−カルボン酸の白色結晶30.6g(収率89.0%)を得た。二段階反応での収率は79.2%となり、実施例1より収率が低かった。
(比較例2)
比較例1と同じ反応装置に、1,3−アダマンタンジオール(純度99%)30.0gを仕込み、96質量%濃硫酸360gを入れた。室温で攪拌して原料が溶解したのを確認した後、フラスコを冷却して液温が10〜20℃の範囲に留まるようにギ酸16.8gを30分かけて滴下した。滴下終了後、反応温度35℃で3時間反応させた。反応の進行をGCで確認したところ、1,3−アダマンタンジオールの転化率は100%であり、反応収率92.5%で1,3−アダマンタンジカルボン酸が生成した。
比較例1と同じ精製装置に、水酸化ナトリウム154.2g、イオン交換水873.8gを入れ、フラスコを冷却した。上記水酸化ナトリウム溶液に、液温が10〜40℃の範囲に留まるようにして、1,3−アダマンタンジカルボン酸の反応溶液を加え、析出した結晶を濾別し、水洗した。結晶を40℃で8時間真空乾燥し、1,3−アダマンタンジカルボン酸の白色結晶35.6g(収率89.0%)を得た。
上記と同じ反応装置に、得られた1,3−アダマンタンジカルボン酸35.6gを仕込み、96質量%濃硫酸320.0gを入れた。液温35℃で攪拌して原料が溶解したのを確認した後、液温が35〜50℃の範囲に留まるようにしながら70%硝酸42.8gを30分かけて滴下した。滴下終了後、反応温度50℃で5時間反応させた。反応の進行をGCで確認したところ、1,3−アダマンタンジカルボン酸の転化率は100%であり、反応収率75.0%で5−ヒドロキシアダマンタン−1,3−ジカルボン酸が生成した。
上記と同じ精製装置に水酸化ナトリウム137.2g、亜硫酸ナトリウム66.0g、イオン交換水777gを入れ、水酸化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム混合溶液とし、フラスコを冷却した。上記混合溶液に、液温が10〜40℃の範囲に留まるようにして、5−ヒドロキシアダマンタン−1,3−ジカルボン酸の反応溶液を加え、析出した結晶を濾別し、水洗した。結晶を40℃で8時間減圧乾燥し、5−ヒドロキシアダマンタン−1,3−ジカルボン酸の白色結晶25.6g(収率67.2%)を得た。二段階での収率は60.0%となり、実施例4より収率が低かった。
(比較例3)
濃硫酸に換えて85質量%硫酸を使用する以外は実施例1と同様の操作を行ったところ、一段階目のカルボキシル化反応での1−アダマンタノールの転化率は37.7%であり、反応収率12.9%で1−アダマンタンカルボン酸が生成した。実施例1と比較して一段階目のカルボキシル化反応の収率が低下した。
(比較例4)
濃硫酸に換えて85質量%リン酸を使用する以外は実施例1と同様の操作を行ったところ、一段階目のカルボキシル化反応が進行しなかった。
(比較例5)
実施例1と同じ反応装置に、1−ブロモアダマンタン(純度99%)15.1gを仕込み、96質量%濃硫酸76.2gを入れた。室温で攪拌して原料が溶解したのを確認した後、フラスコを冷却して液温が10〜20℃の範囲に留まるようにギ酸3.4gを30分かけて滴下した。滴下終了後、反応温度35℃で4時間反応させた。反応の進行をGCで確認したところ1−ブロモアダマンタンの転化率は89.5%であり、反応収率86.1%で1−アダマンタンカルボン酸が生成した。その後、フラスコを再度冷却して液温10〜20℃の範囲に留まるようにしながら70%硝酸8.2gを30分かけて滴下した。滴下終了後、反応温度35℃で3時間反応させた。反応の進行をGCで確認したところ、1−アダマンタンカルボン酸の転化率は78.4%であり、反応収率10%で3−ヒドロキシアダマンタン−1−カルボン酸が生成した。
実施例1と同じ精製装置に、水酸化ナトリウム48.8g、亜硫酸ナトリウム12.6g、イオン交換水439gを入れ、水酸化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム混合溶液とし、フラスコを冷却した。上記混合溶液に、液温が10〜40℃の範囲に留まるようにして、3−ヒドロキシアダマンタン−1−カルボン酸の反応溶液を加え、析出した結晶を濾別し、水洗した。結晶を40℃で8時間減圧乾燥し、3−ヒドロキシアダマンタン−1−カルボン酸の白色結晶1.0g(収率7.7%)を得た。
各実施例および比較例につき、カルボキシル化反応の結果を表1に、酸化反応の結果を表2にまとめて示す。
AD(OH):1−アダマンタノール
AD(OH)2:1,3−アダマンタンジオール
DMAD(OH)3,5−ジメチル−1−アダマンタノール
ADBr:1−ブロモアダマンタン
本発明によれば、医農薬中間体や光学材料、耐熱性、表面硬度等に優れた機能性樹脂原料等に有用なヒドロキシアダマンタンカルボン酸化合物を、ワンポット反応により簡便且つ高収率で安価に製造することができる。

Claims (5)

  1. 式(1)で示されるアダマンタン化合物を、(ア)濃度90質量%以上の硫酸溶液中でギ酸又はアルキル基の炭素数が1〜10のギ酸アルキルエステルをOX基に対して0.9〜10当量使用して反応させてOX基をカルボキシル化し、続いて、(イ)該反応液に酸化剤として無機酸1.0〜5.0当量を添加して橋頭位に位置するC−H結合を酸化することでヒドロキシル基を生成する事を特徴とする、式(2)で示されるヒドロキシアダマンタンカルボン酸化合物の製造方法。
    (式中、置換基RTは、橋頭位に位置する置換基であり、n個のOX基、p個の水素原子及びq個の炭素数1〜6のアルキル基を示し、n、p、qは、n=1〜3、n+p+q=3の関係の整数である。Xは水素原子、アルキル基、アリール基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、テトラヒドロピラニル基、スルホニル基、シリル基からなる群から選ばれ、n個のOX基において同一でも異なっても良い。置換基RSは橋頭位以外の炭素に結合し、同一又は異なって良く水素又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、m=12である。)
    (式中、RT’は、n個のCOOH、p個の水素及びq個の炭素数1〜6のアルキル基を示し、n、p、qは式(1)と同じである。)
  2. 前記Xが水素原子である請求項1記載のヒドロキシアダマンタンカルボン酸化合物の製造方法。
  3. 前記カルボキシル化の反応温度が、0℃〜50℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載のヒドロキシアダマンタンカルボン酸化合物の製造方法。
  4. 前記無機酸が硝酸である請求項1〜のいずれかに記載のヒドロキシアダマンタンカルボン酸の製造方法。
  5. 前記酸化反応の温度が、0℃〜80℃であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のヒドロキシアダマンタンカルボン酸化合物の製造方法。
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