JP5920256B2 - 硬さの熱安定性に優れた硬質冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
また、上記のようなプレート部品は一般に、素材鋼板を所定の形状に打ち抜いた後、形状矯正や歪取焼鈍、表面性状の調整や摩擦材の接着等の工程を経て製造される。そのため、プレート部品に使用される素材鋼板の特性としては、所定の硬度を有するとともに打抜性や打抜後および打抜後にさらに加熱された後の平坦度に優れることが好ましい。
例えば、特許文献1には、自動車のトランスミッション部品としてのギアやプレート等の素材用薄鋼板に関し、その成分組成を質量%で、C:0.15〜0.4%、Si:0.5%以下、Mn:1.0%以下、P:0.05%以下を含有し、残部実質的にFeから成る組成とし、且つ鋼板板面硬度HVを170〜280、鋼板幅方向各位置における板面硬度差の最大値ΔHVを20以下とする技術が提案されている。そして、特許文献1で提案された技術によると、打抜き後の平坦度に優れる薄鋼板が得られるとされている。
特許文献2で提案された技術では、打抜後の接着工程にて部品に生じる熱歪を低減する目的で、大径ロールによる軽圧下圧延を施して、鋼板中の残留応力を低減させている。しかし、その実施例が示すように、特許文献2で提案された技術では、300℃で10分間保持した後の熱歪を抑制し得るものの、プレート部品に歪取焼鈍を施す場合やプレート部品を実際に変速機内で使用する場合の特性変化、すなわちプレート部品を300℃よりも更に高い温度域(約380〜420℃)で一定時間保持した場合における特性変化については考慮されておらず、しかも部品の硬さの熱安定性に関わる検討はなされていない。
特許文献4で提案された技術では、スラブ加熱温度を1230℃を超える温度に限定してTiを十分に溶体化し、その後の熱間圧延工程で再析出する際に超微細サイズの析出物として均一に分散した組織を形成することで、鋼板の耐再結晶軟化特性を改善している。このように1230℃を超える温度にまでスラブを高温加熱すると、鋼板の表面欠陥の増加を招き易く、加熱に要するエネルギーコストの点からも好ましくない。
その結果、硬さの熱安定性を高めるうえでは、冷延鋼板の組織を、フェライト主相とし、所定分率および所定形状のセメンタイトが分散した組織とすることが極めて有効であることを知見した。冷延鋼板の高硬度化の観点からは、低温変態相(マルテンサイト、ベイナイト等)を含む組織とすることが好ましい。しかしながら、低温変態相を含む冷延鋼板を高温保持すると、低温変態相が軟化し、冷延鋼板の変態強化量が変動する。それゆえ、低温変態相を多く含む冷延鋼板では、硬さの熱安定性が劣化する。
[1] 質量%で、
C :0.10%以上0.25%以下、 Si:0.3%以下、
Mn:0.5%以上1.0%以下、 P :0.03%以下、
S :0.02%以下、 Al:0.01%以上0.08%以下、
Cr:0.03%以下、 Ti:0.010%以下、
Nb:0.010%以下、 B :0.0010%以下
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成と、フェライトおよびパーライトからなり、前記フェライトが、組織全体に占める分率:80%以上であり且つ平均結晶粒径:10μm以上20μm以下である組織を有する熱延鋼板に、冷間圧延を施して得られる冷延鋼板であって、フェライトを主相としセメンタイトが分散した組織を有し、前記主相であるフェライトが、鋼板の圧延方向断面における平均アスペクト比:3以上の加工伸展粒であり、前記セメンタイトが、組織全体に占める分率:5%以下であり且つ鋼板の圧延方向断面における平均長径:1.5μm以上5.0μm以下であることを特徴とするHV 240以上の硬さを有し、420℃で60分間保持して放冷した後の、鋼板のビッカース硬さの変化量が5ポイント以下である硬さの熱安定性に優れた硬質冷延鋼板。
C :0.10%以上0.25%以下、 Si:0.3%以下、
Mn:0.5%以上1.0%以下、 P :0.03%以下、
S :0.02%以下、 Al:0.01%以上0.08%以下、
Cr:0.03%以下、 Ti:0.010%以下、
Nb:0.010%以下、 B :0.0010%以下
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼片を、
1000℃以上1200℃以下に加熱し、Ar3変態点以上(Ar3変態点+200)℃以下の仕上温度で熱間圧延を施し、前記仕上温度から750℃までの温度範囲を40℃/s以上60℃/s以下の冷却速度で冷却し、次いで750℃から650℃までの温度範囲を20℃/s以上40℃/s以下の冷却速度で冷却し、更に650℃から600℃以上650℃以下の巻取温度までの温度範囲を10℃/s以下の冷却速度で冷却したのち巻き取って、フェライトおよびパーライトからなり、前記フェライトが、組織全体に占める分率:80%以上であり且つ平均結晶粒径:10μm以上20μm以下である組織を有する熱延鋼板とし、該熱延鋼板をデスケーリングしたのち、40%以上80%以下の圧下率で冷間圧延し、フェライトを主相としセメンタイトが分散した組織を有し、前記主相であるフェライトが、鋼板の圧延方向断面における平均アスペクト比:3以上の加工伸展粒であり、前記セメンタイトが、組織全体に占める分率:5%以下であり且つ鋼板の圧延方向断面における平均長径:1.5μm以上5.0μm以下である冷延鋼板とすることを特徴とするHV 240以上の硬さを有し、420℃で60分間保持して放冷した後の、鋼板のビッカース硬さの変化量が5ポイント以下である硬さの熱安定性に優れた硬質冷延鋼板の製造方法。
まず、本発明冷延鋼板の化学組成の限定理由について説明する。以下、成分元素含有量の単位である%は、特に断らない限り質量%を意味するものとする。
Cは、鋼板の強化に必要な元素であり、クラッチやブレーキのプレート部品素材として必要な硬さを確保するためには、0.10%以上の含有が必要である。一方、0.25%を超えて含有すると、粗大なセメンタイトが不均一に分散した組織となり易く、鋼板の打抜性が低下することがある。したがって、Cの含有量は0.10%以上0.25%以下に限定する。好ましくは0.15%以上0.20%以下である。
Siは、鋼中に固溶して鋼板の強化に寄与する元素であるが、多量に含有すると、熱延鋼板の表面において赤スケールと呼ばれる酸化スケールの発生を促進し、冷延鋼板の表面性状まで悪化させる。したがって、Siの含有量は0.3%以下に限定する。好ましくは0.1%以下である。
Mnは、鋼中に固溶して鋼板の強化に寄与するとともに、熱間延性の改善にも有効な元素である。このような効果を得るためには、0.5%以上の含有を必要とする。一方、1.0%を超えて過剰に含有すると、熱延鋼板のミクロ組織がバンド状になり易く、鋼板の打抜性が低下する。したがって、Mnの含有量は0.5%以上1.0%以下の範囲に限定する。好ましくは0.6%以上0.9%以下である。
Pは、鋼中で偏析し易い元素であり、多量に含有すると鋼板のミクロ組織が不均一化し、鋼板の打抜性が低下し易くなる。そのため、Pは極力低減することが望ましく、Pの含有量は0.03%以下とする。好ましくは0.02%以下である。
Sは、MnS等の介在物を形成し、鋼板の打抜性を低下させる元素である。そのため、Sは極力低減することが望ましく、Sの含有量は0.02%以下とする。好ましくは0.01%以下である。
Alは、鋼の脱酸のために添加される元素であり、鋼中のAlの含有量が0.01%未満では十分な脱酸効果が得られない。一方、鋼中のAlの含有量が0.08%を超えると、鋼中介在物の増加を招き、鋼板の表面欠陥の増加や打抜性の低下を招く。したがって、Alの含有量は0.01%以上0.08%以下に限定する。好ましくは0.01%以上0.05%以下である。
Crは、セメンタイトを微細化する作用を有する元素である。Crの含有量が0.03%を超えると、前記作用が顕著となり、本発明で所望とする形状のセメンタイトが得難くなる。したがって、Crの含有量は0.03%以下とする。
Tiは、炭窒化物等の微細析出を通じて鋼板を分散強化する作用を有する元素である。このような効果を得るためには、Tiの含有量を0.002%以上とすることが好ましい。但し、Tiの含有量が過剰になり、析出物が多量に形成される場合には、析出物の成長や溶解を通じて鋼板の分散強化量が変動し易くなるため、硬さの熱安定性が低下する。したがって、Tiの含有量は0.010%以下に限定する。好ましくは0.005%以下である。
Nbは、炭窒化物等の微細析出を通じて鋼板を分散強化する作用を有する元素である。このような効果を得るためには、Nbの含有量を0.002%以上とすることが好ましい。但し、Nbの含有量が過剰になり、析出物が多量に形成される場合には、析出物の成長や溶解を通じて鋼板の分散強化量が変動し易くなるため、硬さの熱安定性が低下する。したがって、Nbの含有量は0.010%以下に限定する。好ましくは0.005%以下である。
Bは、微量の添加により鋼の焼入性を大きく向上させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには、Bの含有量を0.0001%以上とすることが好ましい。しかし、Bの含有量が0.0010%を超えると、熱延鋼板の組織中にベイナイトやマルテンサイトといった低温変態相が生成し易くなり、鋼板の組織強化量の熱安定性が低下するうえ、冷延鋼板中に所望の形状の炭化物を形成することも困難となる。したがって、Bの含有量は0.0010%以下とする。好ましくは0.0005%以下、より好ましくは0.0003%以下である。
本発明の冷延鋼板は、フェライトを主相とし、セメンタイトが分散する組織を有し、かつ、前記フェライトは、鋼板の圧延方向断面における平均アスペクト比が3以上の加工伸展粒であり、前記セメンタイトは、組織全体に占める分率が5%以下で、鋼板の圧延方向断面における平均長径が1.5μm以上5.0μm以下である。
また、本発明の冷延鋼板は、冷間圧延ままの鋼板であり、加工硬化した圧延組織を有する。
本発明の冷延鋼板は、フェライトを主相としセメンタイトが分散した組織とする。マルテンサイトあるいはベイナイトといった硬質な低温変態相が冷延鋼板の組織内に存在すると、鋼板が昇温された際に組織強化量の変動を招き、鋼板の硬さの熱安定性が低下する。
本発明の冷延鋼板におけるフェライトは、鋼板の圧延方向断面における平均アスペクト比が3以上の加工伸展粒である。本発明の冷延鋼板は、冷間圧延による加工硬化を主たる強化機構としており、圧延方向断面におけるフェライト粒の平均アスペクト比が3未満の場合には、冷間圧延による加工硬化量が少なく、鋼板の硬さがプレート部品に必要な水準に達しないことがある。したがって、上記平均アスペクト比は3以上とする。好ましくは4以上である。
本発明の冷延鋼板におけるセメンタイトは、組織全体に占める分率が5%以下で、鋼板の圧延方向断面における平均長径が1.5μm以上5.0μm以下である。セメンタイトが過度に多い場合には、鋼板の打抜性が低下する。したがって、セメンタイトの分率は5%以下とする。
フェライトおよびパーライトからなる熱延鋼板に冷間圧延を施すと、熱延鋼板のパーライトを構成するセメンタイトが変形・分断される結果、フェライトを主相としてセメンタイトが分散した冷延鋼板が得られる。
熱延鋼板の組織にマルテンサイト或いはベイナイトといった低温変態相が存在すると、冷間圧延後にも低温変態相が残存し、冷延鋼板の硬さの熱安定性が低下する。また、冷間圧延による変形が不均一になり易く、冷間圧延後の鋼板が昇温された際に、硬さの変動や平坦度の低下が生じ易くなることがある。したがって、熱延鋼板の組織はフェライトとパーライトからなる組織とする。
本発明の冷延鋼板は、前記の化学組成を有する鋼片に熱間圧延を施して、フェライトおよびパーライトからなる組織を有する熱延鋼板とし、この熱延鋼板をデスケーリングした後、所定の圧下率で冷間圧延することによって得られる。
熱間圧延を施す鋼片の加熱温度が1000℃未満では、必要な仕上温度の確保が難しくなる。一方、加熱温度が1200℃を超えると、加熱に要するエネルギーが増大するうえ、スケール性欠陥等による鋼板の表面性状不良が生じ易い。したがって、熱間圧延前の鋼片の加熱温度は1000℃以上1200℃以下とする。好ましくは1050℃以上1150℃以下である。なお、鋼片の加熱においては、常温まで冷却した鋼片を再加熱してもよいし、鋳造後に冷却途中の鋼片を追加加熱あるいは保熱してもよい。
なお、本発明では鋼片を上記温度範囲に加熱したのち、粗圧延および仕上げ圧延を施して熱延鋼板とするが、粗圧延条件については常法に従えば良く、特に限定する必要はない。
熱間圧延工程での仕上温度がAr3変態点を下回ると、熱延鋼板にて圧延方向に伸展したフェライト組織および未再結晶フェライト組織が形成されて鋼板組織の均一性が失われ、冷延鋼板とした後で昇温したときに、鋼板の平坦度が大きく低下することがある。一方、仕上温度が(Ar3変態点+200)℃を超えると、熱延鋼板の組織が粗大化し易く、鋼板の表面性状の不良も招き易い。したがって、仕上温度はAr3変態点以上(Ar3変態点+200)℃以下に限定する。好ましくは、(Ar3変態点+50)℃以上(Ar3変態点+150)℃以下である。なお、必要な仕上温度を確保するために、シートバーヒーターあるいはエッヂヒーターなどの加熱装置を利用して、圧延中の鋼板を追加加熱してもよい。
熱間圧延後の鋼板は、仕上温度から750℃までの温度範囲を40℃/s以上60℃/s以下の冷却速度で冷却する。この温度範囲での冷却速度が40℃/s未満の場合、熱延鋼板の組織が粗大化し易く、冷延鋼板で所望の形態のセメンタイトが得られない。一方、この温度範囲での冷却速度が60℃/sを超える場合、熱延鋼板にベイナイトが生成し易くなり、冷延鋼板の組織を所望の状態に調製できないうえ、冷延鋼板の硬さの熱安定性が大きく低下することがある。
750℃から650℃までの温度範囲は、20℃/s以上40℃/s以下の冷却速度で冷却する。この温度範囲での冷却速度が20℃/s未満または40℃/s超である場合は、フェライトの生成量が少なくなり、熱延鋼板組織のフェライト分率が80%未満になり易い。
仕上圧延後650℃まで冷却された鋼板は、鋼板内部からの復熱および鋼の変態潜熱によって温度(表面温度)が上昇する場合もあるので、鋼板温度が650℃に到達した後、巻取機(コイラー)で巻き取るまでの間は10℃/s以下の冷却速度で徐冷する。650℃から巻取温度までの冷却速度が速すぎる場合には、冷却後の熱延鋼板にベイナイトが生成し易くなり、冷延鋼板の組織を所望の状態に調製できないうえ、冷延鋼板の硬さの熱安定性が低下することがある。したがって、650℃から巻取温度までの冷却速度は10℃/s以下とする。
巻取温度が600℃未満の場合には、熱延鋼板の組織中にベイナイトやマルテンサイトといった低温変態相が生成し易くなり、冷延鋼板の硬さの熱安定性が大幅に低下する。一方、巻取温度が650℃を超える場合には、熱延鋼板の組織中に粗大なパーライトが多量に生成し、冷延鋼板の組織で所望の形態のセメンタイトが得られない。したがって、巻取温度は600℃以上650℃以下とする。
なお、上記の鋼板温度(仕上温度、巻取温度等)はいずれも、鋼板表面で測定される温度とする。
本発明では、このようにして得られた熱延鋼板に冷間圧延を施すが、冷間圧延前の熱延鋼板に、形状矯正のための調質圧延を施すことも可能である。
熱延鋼板は、酸洗あるいはその他の手段によりデスケーリングした後、冷間圧延を施すことにより冷延鋼板とする。このとき、冷間圧下率が40%未満では、板厚方向に不均一な圧延加工組織となり易く、所望の形状のフェライト粒が得難くなる。また、冷間圧下率が40%未満では、冷間圧延後の鋼板が昇温された際に、硬さの変動や平坦度の低下が生じ易くなる。一方、冷間圧下率が80%を超える場合には、冷間圧延の負荷が過度に高まり、鋼板の製造性が低下する。したがって、冷間圧延の圧下率は40%以上80%以下とする。より好ましくは50%以上70%以下である。
また、冷延鋼板の打抜き・熱処理後の平坦度については、各冷延鋼板から上記と同じ条件で打ち抜いた直径100mmφの円板に、420℃で60分間保持して放冷する熱処理を施して、熱処理後の円板の反り量を測定することで評価した。ここで、最大反り量が板厚の15%以下となった場合に、熱処理後の平坦度に優れると判定した。
各鋼板の調査結果を表2および表3にあわせて示す。
Claims (2)
- 質量%で、
C :0.10%以上0.25%以下、 Si:0.3%以下、
Mn:0.5%以上1.0%以下、 P :0.03%以下、
S :0.02%以下、 Al:0.01%以上0.08%以下、
Cr:0.03%以下、 Ti:0.010%以下、
Nb:0.010%以下、 B :0.0010%以下
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成と、フェライトおよびパーライトからなり、前記フェライトが、組織全体に占める分率:80%以上であり且つ平均結晶粒径:10μm以上20μm以下である組織を有する熱延鋼板に、冷間圧延を施して得られる冷延鋼板であって、フェライトを主相としセメンタイトが分散した組織を有し、前記主相であるフェライトが、鋼板の圧延方向断面における平均アスペクト比:3以上の加工伸展粒であり、前記セメンタイトが、組織全体に占める分率:5%以下であり且つ鋼板の圧延方向断面における平均長径:1.5μm以上5.0μm以下であることを特徴とするHV 240以上の硬さを有し、420℃で60分間保持して放冷した後の、鋼板のビッカース硬さの変化量が5ポイント以下である硬さの熱安定性に優れた硬質冷延鋼板。 - 質量%で、
C :0.10%以上0.25%以下、 Si:0.3%以下、
Mn:0.5%以上1.0%以下、 P :0.03%以下、
S :0.02%以下、 Al:0.01%以上0.08%以下、
Cr:0.03%以下、 Ti:0.010%以下、
Nb:0.010%以下、 B :0.0010%以下
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼片を、
1000℃以上1200℃以下に加熱し、Ar3変態点以上(Ar3変態点+200)℃以下の仕上温度で熱間圧延を施し、前記仕上温度から750℃までの温度範囲を40℃/s以上60℃/s以下の冷却速度で冷却し、次いで750℃から650℃までの温度範囲を20℃/s以上40℃/s以下の冷却速度で冷却し、更に650℃から600℃以上650℃以下の巻取温度までの温度範囲を10℃/s以下の冷却速度で冷却したのち巻き取って、フェライトおよびパーライトからなり、前記フェライトが、組織全体に占める分率:80%以上であり且つ平均結晶粒径:10μm以上20μm以下である組織を有する熱延鋼板とし、該熱延鋼板をデスケーリングしたのち、40%以上80%以下の圧下率で冷間圧延し、フェライトを主相としセメンタイトが分散した組織を有し、前記主相であるフェライトが、鋼板の圧延方向断面における平均アスペクト比:3以上の加工伸展粒であり、前記セメンタイトが、組織全体に占める分率:5%以下であり且つ鋼板の圧延方向断面における平均長径:1.5μm以上5.0μm以下である冷延鋼板とすることを特徴とするHV 240以上の硬さを有し、420℃で60分間保持して放冷した後の、鋼板のビッカース硬さの変化量が5ポイント以下である硬さの熱安定性に優れた硬質冷延鋼板の製造方法。
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