JP5501819B2 - 窒化特性及び耐再結晶軟化特性に優れた窒化処理用冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
窒化特性及び耐再結晶軟化特性に優れた窒化処理用冷延鋼板およびその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP5501819B2 JP5501819B2 JP2010068763A JP2010068763A JP5501819B2 JP 5501819 B2 JP5501819 B2 JP 5501819B2 JP 2010068763 A JP2010068763 A JP 2010068763A JP 2010068763 A JP2010068763 A JP 2010068763A JP 5501819 B2 JP5501819 B2 JP 5501819B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- cold
- steel sheet
- rolled steel
- rolling
- less
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Images
Landscapes
- Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)
Description
「製鋼→連続鋳造→熱間圧延→鋼帯酸洗→焼鈍→冷間圧延→調質圧延→精整」
上記工程における冷間圧延は圧下率50%以上の高圧下圧延である。高圧下率を必要とするのは、ATプレートに要求される硬さ及び表面粗度(Hv≧230,Ra≦0.4μm)を充足させるためであり、その冷間圧延の前に「焼鈍」を行うのは、熱延ままの鋼板では硬質のため、高圧下率圧延の安定操業が困難であるほか、粗大なパーライト組織が冷延鋼板に持ち越され、結果として冷延鋼板のプレス打ち抜き性が悪く、打ち抜き成形品(ATプレート)の打ち抜き面にムシレ・ザラツキ等が生じ易くなるからである。焼鈍はタイトコイルのバッチ処理(均熱:約10Hr)として行われている。
本発明は上記に鑑み、冷間圧延前の焼鈍処理が省略された前記冷延鋼板の製造方法の改良として、スラブ加熱炉における加熱条件の制御により、冷延鋼板の窒化特性及び耐再結晶軟化特性(再結晶軟化抵抗を示す特性)の両特性を高め、プレス打抜き加工後のプレステンパー処理における軟質化(硬度低下)を抑制緩和してATプレートに要求される硬度等の材料特性及び形状品質(平坦性)を確保すると共に、耐摩耗性、疲労強度、耐かじり性等の改良された諸特性を具備せしめ得る冷延鋼板及びその製造方法を提供するものである。
質量%で、C:0.15〜0.25%,Si:0.25%以下,Mn:0.3〜0.9%,P:0.03%以下,S:0.015%以下,Al:0.01〜0.08%,N:0.008%以下,Cr:0.05〜0.5%,Ti:0.01〜0.05%,B:0.002〜0.005%,残部はFe及び不可避不純物からなるスラブを、スラブ加熱炉から1230℃を超える温度で抽出し熱間圧延することにより、フェライト結晶粒径:5〜15μmおよびパーライト+セメンタイト分率:40%以上であるフェライト−パーライト混合組織を有する熱延鋼板を得、焼鈍処理することなく圧下率30%以上で冷間圧延することにより製造される。
質量%で、C:0.15〜0.25%,Si:0.25%以下,Mn:0.3〜0.9%,P:0.03%以下,S:0.015%以下,Al:0.01〜0.08%,N:0.008%以下,Cr:0.05〜0.5%,Ti:0.01〜0.05%,B:0.002〜0.005%,残部はFe及び不可避不純物からなるスラブを、加熱炉で1230℃を超える温度に加熱して抽出し、熱延仕上げ温度:Ar3変態点以上、および巻取り温度:500〜600℃の熱間圧延により、フェライト結晶粒径:5〜15μmおよびパーライト+セメンタイト分率:40%以上であるフェライト−パーライト混合組織を有する熱延鋼板を得、熱延鋼板を酸洗処理した後、焼鈍処理することなく圧下率30%以上で冷間圧延することからなる。
本発明の対象とする低・中炭素鋼組成のスラブの加熱炉での抽出温度は、従来1180〜1230℃の温度域で一般的に実施されている。1230℃を超える高温加熱が行われないのは、そのような高温加熱とする利益がなく、熱エネルギーの無駄な消費になると認識され、またそのような高温化に伴ってスラブのオーステナイト粒が過度に粗大化し、その後の熱延鋼板の組織を微細化することができず、結果として製品冷延鋼板の材料特性が低下すると考えられていたことによる。
本発明の冷延鋼板の耐再結晶軟化特性の向上効果として、ATプレート用途では、プレス打抜き後のプレステンパー処理における軟質化が効果的に緩和軽減され、大径サイズや桟部の狭幅サイズのようにひずみを生じ易い形状を有するATプレートの場合にも、所要の機械強度を維持しながら良好な平坦度(≦0.15mm)を保証することが容易になる。この材料特性の改善効果は、スラブ抽出温度の高温化に要する熱エネルギーコストの負担増を十分に補って余りあるものである。
窒化特性が向上することの理由についても明確ではないが、N元素との親和力の強いTi、Cr等が鋼中に固溶していることが寄与するものと考えられ、更に冷延鋼板の有する超微細組織により、そのフェライト結晶粒の粒界面積が大きく、粒界面に沿ってN原子の拡散侵入が起こり易くなることも要因の一つと推定される。
本発明の鋼組成に関して、まずC量制限(従来材のS35C炭素鋼より低C組成)により、熱延鋼板のパーライト量を減少させて熱延鋼板を軟質化し、冷間圧延前の熱延鋼板の焼鈍処理を不要にしている。このC量規定と併せてTiとBの複合添加に基づく鋼組織の制御とその材質改善効果は重要である。Ti添加によるTiC,Ti(C,N)等の微細析出物(サイズ:約500〜3000Å)の生成効果として、熱延鋼板のフェライト組織が著しく細粒化される。熱延鋼板では、炭化物がフェライト粒界に優先的に析出するため、細粒化の効果として炭化物は均一微細に鋼中に分散し、耐摩耗性や耐再結晶軟化特性等に有利な組織が形成される。その微細化効果は、鋼中の固溶BがTiと共存することにより高められる。これはTiNの生成傾向がBNのそれより大きく、BNの生成反応が抑制されることによる。更に固溶Bは、熱延鋼板の粒界の強化及びフェライト組織の細粒化に寄与し、マトリックスの強度及び耐摩耗性の向上に奏効する。これらの効果として冷延鋼板の材料特性が高められ、耐再結晶軟化特性の向上と併せて、プレステンパー処理を経た後も、ATプレート用途の代表的な従来材であるS35C冷延鋼板を凌ぐ硬さ、その他の機械的性質が保証される。
C:0.15〜0.25%
冷延鋼板の硬度・耐摩耗性を高める点からはC量が高いほど有利であるが、0.25%を超えると、熱延鋼板の炭化物の球状化と軟質化のための焼鈍を省略することができなくなる。一方C量が0.15%に満たないと、従来材であるS35C並の耐摩耗性を確保することが困難となるので、これを下限とする。
Siは、鋼の溶製工程における脱酸元素である。その添加量は0.25%までで十分である。それを超える添加は、熱延鋼板の酸洗処理性の低下および酸洗後のスケール残存による表面欠陥の原因ともなり、ATプレートとしての表面品質を低下させるので、これを上限とする。
Mnは、鋼の熱間脆性の防止及びマトリックスの強化に奏効する。0.3%に満たないとその効果が少なく、マトリックスの強度が不足し耐摩耗性も低くなる。増量により効果を増すが、0.9%を超えると過度に硬質化して加工性が損なわれる。
Pは不純分であり、鋼中に多量に存在すると、粒界の強度低下を招き、冷延鋼板の常温脆化の原因となり、ATプレート等のプレス成形品の安定性が損なわれる。0.03%以下であれば、実質的な悪影響を生じないので、これを上限とする。
SはMnSを形成して熱間脆性を抑制する効果を有する反面、多すぎるとMnSを起点とする加工割れの原因となり、ATプレートでは打抜き加工における面性状の低下を招く。またMnSを起点とする摩耗を生じ易く耐摩耗性が低下する。0.015%以下であれば、その実害は回避されるので、これを上限とする。
Alは鋼の溶製過程における脱酸剤として添加される。また鋼中のNをAlNとして固定する作用を併せ有する。0.01%未満では脱酸作用が不足し、他方0.08%を超えると、鋼の清浄度が損なわれ、表面疵が発生し鋼板の表面品質を悪くする原因となる。
Nは不可避的な不純物元素である。含有量が多くなると、窒化物(AlN,TiN等)等の生成量が増加し、過度の硬質化をきたすので、0.008%以下であることを要する。
Crは、鋼中に固溶し、一部は炭化物(析出粒子)を形成して固溶強化および析出強化の作用をなす。このマトリックス強化機能により、ATプレート用途ではその要求硬さ(Hv≧230)を確保するのに必要な冷間圧延での圧下率(冷延率)を低く設定することが可能となる。冷延率を低くすることは、冷延鋼板の板厚中心部の圧縮残留応力を低減し、プレス打ち抜き後のATプレートの平坦性を改善するのに有効である。これらの効果を得るには0.05%以上の添加を必要とする。0.5%を超えると効果はほぼ飽和する。
また、CrはNとの親和力の強い元素であり、上記Cr含有量において鋼中の固溶Crは製品鋼板の窒化処理特性の向上に寄与する。
Tiは一般的にはTiSを形成して熱間脆性を回避する作用を有する。更に前記のようにTiは鋼中でTiCやTi(C,N)等の微細析出物を形成して熱延鋼板のフェライト組織を細粒化し、その効果として炭化物が均一微細に分散し耐摩耗性が高くなる。この効果を確保するために0.01%以上の添加を必要とする。多量に添加すると、微細析出物の過剰生成により過度の硬質化を招くので、0.05%を上限とする。
Tiは、Crと同じようにNとの親和力がつよく、上記Ti含有量において鋼中に固溶したTiは製品鋼板の窒化処理特性を高める効果を有する。
Bは、前記のようにその多くが固溶Bを形成し、粒界の強化及びフェライト組織の細粒化作用により、マトリックスを強化し耐摩耗性を高める。この効果を得るには0.002%以上の添加を要する。しかし0.005%を超えると、フェライト組織の過度の細粒化による硬質化をきたすので、これを上限とする。
[鋼の溶製・鋳造]
まず製鋼炉で所定の化学組成に溶製した鋼を、造塊・分塊圧延により又は連続鋳造によりスラブとし、スラブの表面手入れを適宜実施した後、熱間圧延する。連続鋳造による場合、熱鋳片(スラブ)をそのまま加熱炉に装入して熱間圧延してもよい。
スラブの高温抽出(抽出温度:1230℃超)は本発明の最大の特徴事項である。ここに「抽出温度」とは炉内での最高到達温度(スラブ温度)を指している。
スラブの加熱処理による抽出温度は、スラブ鋼組織の均質化、その他の諸要件を満たすために約1180℃以上を要するとされているが、既に述べたように1230℃を超える高温抽出とする例は、従来見当たらない。これと異なって1230℃を超える高温抽出を適用した本発明は、従来懸念されてきた製品鋼板の材質劣化をきたすことなく、その耐再結晶軟化特性を大きく高めることを可能にしている。この材質向上効果は、スラブの高温加熱処理によりスラブ鋼中の炭化物等の固溶消失や偏析解消等が促進され、オーステナイト単一相組織の高度の均質化が達成されることに伴う効果であり、また抽出温度の高温化に拘らず従来懸念されているような製品鋼板の材質低下がなく、所要の材料特性が確保されることも、本発明の鋼材の化学組成に基づくものであると考えられる。
なお、炉内におけるスラブの抽出温度での加熱保持時間は約30分ないしそれ以上であればよい。
熱間圧延は常法に従って行なわれる。熱延鋼板の品質及び熱延効率等の点から、熱延仕上げ温度はAr3変態点直上に調整される。鋼板の巻取りは500〜600℃の温度域で行なうのがよい。500℃未満の低温巻取りでは、結晶粒径が過度に微細化して熱延鋼板の硬質化をきたし、他方600℃を超える高温巻取りでは炭化物が凝集し易く、その均一分散の確保が困難になると共に、フェライト組織が粗大化し、結果として冷延鋼板の耐摩耗性や耐再結晶軟化特性の改善効果が損なわれる。好ましくは500〜550℃である。
熱延鋼板のこのように細粒化されたフェライト組織と炭化物の分散組織により、最終製品(冷延鋼板)における鋼中炭化物の分散がより均一微細化され、耐摩耗性やプレステンパー処理における耐再結晶軟化特性の改善効果が保証される。
熱延鋼板は、酸洗処理で表面のスケールを除去された後、冷間圧延に付される。冷間圧延における圧下率は30%以上とする。これは、ATプレート用冷延鋼板等として必要な硬度(Hv≧230)及び表面粗さ(Ra≦0.4μm)を得るためである。圧下率を大きくすると共にその効果は増すが、圧下率の増加に伴って板厚中心部の圧縮応力が大きくなるため、プレス打抜き後の板面平坦性が低下する。特に、大径サイズ,桟部の狭幅サイズのATプレートのプレス打ち抜きを行う場合、その影響が大きくなる。このため圧下率は60%以下に制限すべきである。より好ましくは、40〜50%である。このように冷延圧下率を従来のそれ(≧50%)に比べて低く設定することが可能となるのは、Crの固溶強化及び炭化物としての析出硬化の作用によるものある。
なお、冷間圧延における圧延ロール(ワークロール)は、得られる冷延鋼板の表面粗さ(Ra≦0.4μm)が確保されるように、ロール表面粗度の管理が適宜実施される。
冷間圧延の後、常法に従い脱脂処理(電解洗浄等)で鋼板表面を浄化したうえ、鋼板の形状修正と残留応力の緩和を目的として調質圧延を行う。調質圧延での伸率は、好ましくは1%以下に調整される。調質圧延による形状修正効果は、伸率1%でほぼ飽和し、それを超える伸率は鋼板を不必要に硬質化させるだけである。なお、応力緩和効果の観点から、調質圧延のワークロールは300mm以上の大径ロールを使用するのがよい。
冷間圧延の後、レベラー等による形状修正、所定の検査(板厚・板幅等の諸元寸法,表面疵等)及び鋼板エッジのトリミング等のための精整工程を経て製品冷延鋼板を得る。
上記冷延鋼板をATプレート用途に供する場合は、プレス打抜き加工に付して所定形状のプレス成形品を得る。その成形品のプレス打抜き加工に伴う歪み(変形)を矯正し所要の平坦性を得るための処理としてプレステンパー処理が施される。その処理は、プレス打抜き成形品を両面から押圧治具で挟み付け、所定の加圧力のもとに一定時間加熱保持するものであり、処理条件は、プレス打抜き成形品の材質に応じ適宜設定される。S35C炭素鋼製プレート成形品(ATプレートの従来材)では、約400〜500℃の温度が適用されている。それを超える高温処理(例えば550℃)では、硬度低下(再結晶軟化)が大きく、要求硬さ(Hv:230以上)を満たすことができないからである。
これと異なって、本発明の冷延鋼板のプレス成形品は、後記実施例に示したように500℃を超える高温度(例えば550℃,600℃)であっても、硬度の低下(再結晶軟化)が少なく、プレステンパー処理を効率よく達成し、要求硬さ(Hv:230以上)及び平坦性(平坦度:0.15mm以下)を充分に確保することができる。
冷延鋼板のプレス打抜き成形品は、通常非調質で使用されるが、特に耐摩耗性、疲労強度、耐かじり性が必要とされる部品(ATプレートでは、大トルク、大排気量の車種に適用される部品)に対する有効な表面処理として窒化処理が施される。
従来の軟窒化処理(ガス軟窒化等)は、通常約570℃で行われるが、本発明の冷延鋼板のプレス成形品に対しては、プラズマイオン窒化による低温の窒化処理(約450℃)を適用することができ、その効果として熱処理に伴う成形品の面歪みが緩和され、成形品の良好な平坦性を保持し得ると共に、熱影響に伴う軟質化等の材質劣化をも回避することが可能となる。
工程イ(冷延前の焼鈍省略):
「熱延→酸洗→冷延(1段又は2段圧延)→調質圧延→精整(検査)」
工程ロ(冷延前の焼鈍実施):
「熱延→酸洗→焼鈍→冷延(1段圧延) →調質圧延→精整(検査)」
No.1〜6は、発明例、
No.11〜17は、発明例に類似の鋼組成を有するが、C,Cr,Ti,Bのいずれかの元素含有量(下線付記)が本発明の規定から外れている比較例、
No.21〜24は従来材(JIS G3311 S35C相当材)の例である。
表2における発明例、比較例A、比較例B(B1,B2)、および比較例Cは、鋼組成およびスラブ抽出温度により、次のように類別している。
分 類 鋼組成(表1) スラブ抽出温度(表2)
発 明 例 鋼A(No.1〜6) 1260℃(高温抽出)
比較例A 鋼A(No.1〜6) 1230℃
比較例B(B1) 鋼B(No.11〜17) 1260℃(高温抽出)
(B2) 鋼B(No.11〜17) 1230℃
比較例C 鋼C(No.21〜24) 1230℃
抽出温度 仕上げ温度 巻取り温度
<発明例> 1260℃ 860℃ 540℃
<比較例A> 1230℃ 860℃ 540℃
<比較例B1> 1260℃ 860℃ 540℃
<比較例B2> 1230℃ 860℃ 540℃
<比較例C> 1230℃ 850℃ 600℃
発明例および比較例A …焼鈍なし
比較例B(B1,B2) …焼鈍なし
比較例C …焼鈍あり(タイトコイル焼鈍:700℃×10Hr)
全圧下率…2段圧延の場合は前後2段の圧延の合計圧下率である。
<発明例、比較例A> 全圧下率:35〜55% 仕上げ板厚:1.8mm
<比較例B1、比較例B2> 全圧下率:45〜65% 仕上げ板厚:1.8mm
<比較例C> 全圧下率:55% 仕上げ板厚:1.8mm
調質圧延率(伸率):0.8%
ワークロール径 :350mm
(3.1)耐摩耗性試験
大越式迅速摩耗試験機による(図1参照)。
試験材(1)に回転円板(相手材)(2)を押し付け、試験後の試験材表面の摩耗痕の幅(b0)を測定し摩耗部の体積から摩耗量A(mm3)を算出する。耐摩耗性は比摩耗量[=A/(P×L) (mm3/kg・m)] で評価する。
試験環境:室温(14℃),大気中
回転円板:SK5/400Hv(焼入れ焼戻しにより調質)
円板半径(r)30mm,円板厚(B)3.0mm
摩耗距離(L):200m
負荷荷重(P):61.7N
摩耗速度(V):4m/sec
円環形状のATプレート(セパレートプレート)をプレス打抜きする。
[打抜き加工条件]
・プレス機:200トンメカプレス
・ストローク長さ:250mm
・ストローク数:25spm
・クリアランス:10%(板厚1.8mm)
・打抜き寸法:内径105 mm×外径127 mm
打抜き端面の良否を次の要領で判定する。
・観察方法 :走査型電子顕微鏡(倍率:20倍)による
・観察断面 :鋼板の長手方向断面
・評価基準 :〇…打抜き端面美麗(ムシレやクラックの発生なし)
×…打抜き端面にムシレ・クラック(1個以上)が認められる
プレス打抜きしたATプレートを加熱処理に付し、熱処理後の硬さに基づいて耐再結晶軟化特性の改善効果を評価する。
処理温度:400℃、500℃、600℃
処理時間:60分
[サンプル調製]
冷延鋼板よりプレス打抜きし、表面研磨を施して試験片とする。
・試験片サイズ:20W×25L×1.8t
・表面性状 :鏡面仕上げ
[窒化処理法]
・窒化方式:プラズマイオン窒化
・試験装置:NDK製 JIN−IS
・試験温度:450℃
・試験時間:40Hr
・処理ガス組成比:N2/H2=1.0
・ガス圧力:6torr
JIS G 0562(1993)の「鉄鋼の窒化層深さの測定方法」規定の「硬さ推移曲線による測定方法」に準じて窒化層深さを測定し、窒化層深さと窒化層硬さの測定値により、次のように窒化特性を評価した。
○… 窒化層硬さ≧HV700かつ窒化層深さ≧300μm
×… 窒化層硬さ、窒化層深さのいずれか一方又は両方が上記数値に満たない
表2に熱延鋼板の性状(結晶粒径,P+C分率)と併せて、冷延鋼板の諸特性を示す。
熱延鋼板の結晶粒径はJIS G0552附属書2規定の交差線分による判定(段落0028)
P+C分率は、点算法による測定値(段落0029参照)
冷延鋼板の硬さ(Hv)は荷重98Nでの測定値
である。
表3の左側欄に、スラブ抽出温度及び冷延鋼板の初期硬さ(試験前の硬さ)と併せて、冷延鋼板プレス打抜き後の耐再結晶軟化特性の試験結果を示し、右側欄に窒化特性の試験結果を示す(表中のスラブ抽出温度および初期硬さは表2からの転記である)。
発明例(No.1〜6)は、比較例CのNo.21〜24(ATプレート従来材に相当)に対し、それを超える耐摩耗性を有し、ATプレートに要求される硬さ(Hv)及び表面粗度(Ra)のスペック(Hv≧230,Ra≦0.4μm)を充分に満たしている。また、プレス打抜き性も良好であり、従来材(S35C炭素鋼製ATプレート)と同等の美麗なプレス打抜き端面性状を有している。
なお、比較例A(No.1〜6)は、比較例Cと同等の耐摩耗性及びプレス打抜き性を有しているが、後述のとおり耐再結晶軟化特性が劣る点で発明例に及ばない。
比較例B1のNo.11、比較例B2のNo.11(鋼のC量不足)は、硬度が不足し、耐摩耗性も比較例C(ATプレート従来材S35C鋼製)に比べて著しく低い。
比較例B1のNo.12、比較例B2のNo.12(鋼のC量過剰)は、耐摩耗性は良好であるが、過度に硬質化しているため、プレス打抜き端面の性状が悪くプレス打抜き性に劣る。
比較例B1のNo.13、比較例B2のNo.13(鋼のTi量不足)、
比較例B1のNo.14、比較例B2のNo.14(鋼のB量不足)
比較例B1のNo.17、比較例B2のNo.17(鋼のTi,B,Cr量不足)は、
いずれも発明例及び比較例C(ATプレートの従来材)に比べて耐摩耗性に劣り、
比較例B1のNo.16、比較例B2のNo.16(鋼のCr量過剰)は、
過度の硬質化をきたし、プレス打抜き性も劣っている。
表中、熱処理後の硬さがHv230(ATプレートの要求硬さ下限値)に満たない値には下線を付している。
発明例は、処理温度500℃,550℃および600のすべてにおいて、Hv230を超える十分な硬さを保持している。
比較例A(鋼組成は発明例と同一)は、600℃の処理における硬度低下が顕著である。この比較例Aと発明例との製造条件上の実質的な相違は、スラブ抽出温度のみ(比較例Aは低温抽出)である。このことは、本発明によるスラブの高温抽出が、耐再結晶軟化特性の改善に重要な因子であることを示している。
比較例C(ATプレートの代表的従来材S35C炭素鋼相当材)では、500℃の処理でHv230以上の硬さを保持しているものの、550℃ではHv230を満たし得ず、600℃における硬度低下は更に大きくなり、発明例との差異は歴然である。
比較例B2は、鋼組成およびスラブ抽出温度のいずれも本発明の規定から外れている例であり、その耐再結晶軟化特性は発明例のそれに遠く及ばない。
発明例(No.1〜6)は、十分な窒化層硬さ(Hv≧700)及び窒化層深さ(≧300μm)を有している。比較例Aおよび比較例Bは、その一部に高い窒化層硬さ(Hv≧700)を有するものもあるが、窒化層深さが不十分(<300μm)であり、また比較例Cは、窒化層硬さ及び窒化層深さともに低いレベルにとどまり、発明例の改良された窒化特性との差異は顕著である。
ATプレートの分野では、プレートの大径化・桟部の狭幅サイズ化等の形状複雑化に伴って、プレート板面のひずみの発生傾向が顕著となる傾向にあるが、本発明によれば、再結晶軟化現象(硬度低下)が効果的に回避されることにより、プレステンパー処理に高温を適用し、硬度低下を抑制しながら、形状矯正効果をより効果的に達成し、所要の平坦性を確保することが容易になる。
しかも、窒化特性に優れているので、プラズマイオン窒化等による低温での窒化処理が可能となり、その効果として軟窒化処理などの従来法に付随する製品品質の問題(熱影響に起因する成形品の面歪みや軟質化等)も緩和解消される。
従来のATプレート用冷延鋼板の製造(冷間圧延前の焼鈍処理を必須としている)に比べて、焼鈍工程を省略した本発明による製造のコスト節減効果は大である。
本発明による冷延鋼板をATプレート用途に使用する場合、その要求特性であるHv230以上の硬さ及びRa0.4μm以下の表面粗さを十分に保証することができる。
更に本発明の冷延鋼板は優れた窒化特性を備えていることにより、プラズマイオン窒化等による低温での窒化処理が可能となり、従来の軟窒化処理法に付随する製品品質の問題、特に熱影響に起因する成形品の面歪みや軟質化等も効果的に改善される。
本発明による冷延鋼板は、ATプレート用途のほか、一定の硬さ、表面粗度、窒化特性および耐再結晶軟化特性が要求される各種用途に好適に供し得るものである。
Claims (5)
- 質量%で、C:0.15〜0.25%,Si:0.25%以下,Mn:0.3〜0.9%,P:0.03%以下,S:0.015%以下,Al:0.01〜0.08%,N:0.008%以下,Cr:0.05〜0.5%,Ti:0.01〜0.05%,B:0.002〜0.005%,残部はFe及び不可避不純物からなるスラブを、スラブ加熱炉から1230℃を超える温度で抽出し熱間圧延することにより、フェライト結晶粒径:5〜15μmおよびパーライト+セメンタイト分率:40%以上であるフェライト−パーライト混合組織を有する熱延鋼板を得、焼鈍処理することなく圧下率30%以上で冷間圧延することにより製造される窒化特性及び耐再結晶軟化特性に優れた、表面硬さ(Hv):230以上、表面粗さ(Ra):0.4μm以下、比摩耗量:15.3mm 3 /m・kg未満の窒化処理用冷延鋼板。
- 加熱炉からのスラブの抽出温度が1250〜1280℃である請求項1に記載の窒化処理用冷延鋼板。
- 冷間圧延における圧下率が35〜55%である請求項1又は請求項2に記載の窒化処理用冷延鋼板。
- オートマチックトランスミッション部材を成形するプレス打抜き加工に供される請求項1〜3のいずれか1項に記載の窒化処理用冷延鋼板。
- 質量%で、C:0.15〜0.25%,Si:0.25%以下,Mn:0.3〜0.9%,P:0.03%以下,S:0.015%以下,Al:0.01〜0.08%,N:0.008%以下,Cr:0.05〜0.5%,Ti:0.01〜0.05%,B:0.002〜0.005%,残部はFe及び不可避不純物からなるスラブを、加熱炉で1230℃を超える温度に加熱して抽出し、熱延仕上げ温度:Ar3変態点以上、および巻取り温度:500〜600℃の熱間圧延により、フェライト結晶粒径:5〜15μmおよびパーライト+セメンタイト分率:40%以上であるフェライト−パーライト混合組織を有する熱延鋼板を得、熱延鋼板を酸洗処理した後、焼鈍処理することなく圧下率30%以上で冷間圧延することからなる窒化特性及び耐再結晶軟化特性に優れた、表面硬さ(Hv):230以上、表面粗さ(Ra):0.4μm以下、比摩耗量:15.3mm 3 /m・kg未満の窒化処理用冷延鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010068763A JP5501819B2 (ja) | 2010-03-24 | 2010-03-24 | 窒化特性及び耐再結晶軟化特性に優れた窒化処理用冷延鋼板およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010068763A JP5501819B2 (ja) | 2010-03-24 | 2010-03-24 | 窒化特性及び耐再結晶軟化特性に優れた窒化処理用冷延鋼板およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2011202211A JP2011202211A (ja) | 2011-10-13 |
JP5501819B2 true JP5501819B2 (ja) | 2014-05-28 |
Family
ID=44879156
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2010068763A Active JP5501819B2 (ja) | 2010-03-24 | 2010-03-24 | 窒化特性及び耐再結晶軟化特性に優れた窒化処理用冷延鋼板およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5501819B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN109415777A (zh) * | 2016-06-27 | 2019-03-01 | 杰富意钢铁株式会社 | 高强度合金化热浸镀锌钢板及其制造方法 |
Families Citing this family (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN103014548A (zh) * | 2012-11-26 | 2013-04-03 | 姚芸 | 一种合金钢及其制备方法 |
CN103014547A (zh) * | 2012-11-26 | 2013-04-03 | 姚芙蓉 | 一种合金钢制备方法 |
CN103014546A (zh) * | 2012-11-26 | 2013-04-03 | 吴高峰 | 一种合金钢 |
CN110029277A (zh) * | 2018-01-12 | 2019-07-19 | Posco公司 | 各方向的材质偏差少的析出硬化型钢板及其制造方法 |
-
2010
- 2010-03-24 JP JP2010068763A patent/JP5501819B2/ja active Active
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN109415777A (zh) * | 2016-06-27 | 2019-03-01 | 杰富意钢铁株式会社 | 高强度合金化热浸镀锌钢板及其制造方法 |
CN109415777B (zh) * | 2016-06-27 | 2021-04-09 | 杰富意钢铁株式会社 | 高强度合金化热浸镀锌钢板及其制造方法 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2011202211A (ja) | 2011-10-13 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4650006B2 (ja) | 延性および伸びフランジ性に優れた高炭素熱延鋼板およびその製造方法 | |
WO2013035848A1 (ja) | 中炭素鋼板、焼き入れ部材およびそれらの製造方法 | |
JP5126844B2 (ja) | 熱間プレス用鋼板およびその製造方法ならびに熱間プレス鋼板部材の製造方法 | |
KR101986640B1 (ko) | 고강도 냉연 강판 및 그의 제조 방법 | |
JP2014080665A (ja) | 高強度冷延鋼板およびその製造方法 | |
WO2013180180A1 (ja) | 高強度冷延鋼板およびその製造方法 | |
JP5862052B2 (ja) | 伸びおよび伸びフランジ性に優れる高強度冷延鋼板ならびにその製造方法 | |
WO2016113781A1 (ja) | 高強度鋼板およびその製造方法 | |
TWI548755B (zh) | 氮化處理用鋼板及其製造方法 | |
JP5501819B2 (ja) | 窒化特性及び耐再結晶軟化特性に優れた窒化処理用冷延鋼板およびその製造方法 | |
WO2014148013A1 (ja) | 硬質冷延鋼板およびその製造方法 | |
JP5046400B2 (ja) | 耐再結晶軟化特性に優れた冷延鋼板の製造方法およびオートマチック・トランスミッション用冷延鋼板 | |
JP4322610B2 (ja) | 衝撃特性に優れた冷延鋼板及びその製造方法 | |
JP4867338B2 (ja) | 超高強度鋼板およびその製造方法 | |
JP4403925B2 (ja) | 高炭素冷延鋼板およびその製造方法 | |
JP4385754B2 (ja) | 成形性および曲げ加工性に優れる超高強度鋼板及びその製造方法 | |
JP4266317B2 (ja) | 打ち抜き加工性に優れた冷延鋼板及びその製造方法 | |
JP6225733B2 (ja) | 高強度熱延鋼板およびその製造方法 | |
JP6628018B1 (ja) | 熱延鋼板 | |
JP4319948B2 (ja) | 伸びフランジ性の優れた高炭素冷延鋼板 | |
JP4023733B2 (ja) | 疲労特性等に優れた冷延鋼板及びその製造方法 | |
KR101938588B1 (ko) | 리징성이 우수한 페라이트계 스테인리스강의 제조방법 | |
JP3894429B2 (ja) | 耐摩耗性及び打抜き加工性に優れたatプレート用冷延鋼板及び製造方法 | |
JP4280202B2 (ja) | 焼き入れ性と伸びフランジ性の優れた高炭素鋼板 | |
JP2001089814A (ja) | 延性、加工性および耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20120713 |
|
RD02 | Notification of acceptance of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422 Effective date: 20130124 |
|
RD04 | Notification of resignation of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424 Effective date: 20130207 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20130124 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20131114 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20131119 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20140115 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20140304 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20140312 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 5501819 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
S111 | Request for change of ownership or part of ownership |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |