JP5501819B2 - 窒化特性及び耐再結晶軟化特性に優れた窒化処理用冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、窒化特性及び耐再結晶軟化特性(再結晶軟化抵抗を示す特性)に優れた窒化処理用冷延鋼板に係り、特に自動車のオートマチック・トランスミッション用板材として好適に使用される冷延鋼板とその製造方法に関する。
自動車のオートマチック・トランスミッションを構成するセパレートプレート、フリクションプレート及びバッキングプレート等(以下「ATプレート」と略称)は、鋼板をほぼ円環形状にプレス打抜きした成形品であり、これらのプレート部材を組み合せてトルク伝達機構が構成される。
ATプレート用鋼板は一定の耐摩耗性およびプレス成形のための平滑表面を必要とし、硬さ(Hv):230以上、表面粗さRa:0.4μm以下、を満たすことが要求される。従来ATプレート用素材として、JIS G3311機械構造用鋼(代表的にはS35C)の冷延鋼板が使用されてきた。その製造工程は次のようである。
「製鋼→連続鋳造→熱間圧延→鋼帯酸洗→焼鈍→冷間圧延→調質圧延→精整」
上記工程における冷間圧延は圧下率50%以上の高圧下圧延である。高圧下率を必要とするのは、ATプレートに要求される硬さ及び表面粗度(Hv≧230,Ra≦0.4μm)を充足させるためであり、その冷間圧延の前に「焼鈍」を行うのは、熱延ままの鋼板では硬質のため、高圧下率圧延の安定操業が困難であるほか、粗大なパーライト組織が冷延鋼板に持ち越され、結果として冷延鋼板のプレス打ち抜き性が悪く、打ち抜き成形品(ATプレート)の打ち抜き面にムシレ・ザラツキ等が生じ易くなるからである。焼鈍はタイトコイルのバッチ処理(均熱:約10Hr)として行われている。
上記冷間圧延前に行われる焼鈍処理(長時間の熱処理である)はコストアップの大きな要因であり、焼鈍処理を省略しながら冷間圧延の安定操業を維持すると共に所要の材料特性(硬さ及び表面性状等)を備えた冷延鋼板の製造方法が提案され(特許文献1)、更には鋼組成の工夫(C量制限、Ti,Bの複合添加等)や熱延鋼板の清浄度(非金属介在物の形態・量)の規制および熱延鋼板の組織(フェライト粒径、フェライト+セメンタイト分率等)の制御効果として、従来材を凌ぐ改良された材料特性(プレス打抜き性等)を具備させた冷延鋼板の製造方法の提案もなされている(特許文献2〜4)。
特開2003−277883公報 特開2004−162153公報 特開2004−292939公報 特開2007−211260公報
上記冷延鋼板をプレス打抜きして得られるATプレートは、トルク伝達機能の重要な要件として0.15mm以下の平坦度を有することが要求される。しかし、自動車の高排気量化や軽量化に伴なうATプレートの大径化・打ち抜き桟部の狭幅サイズ化、形状の複雑化等により、プレス打抜き加工における板面のひずみ(変形)の発生傾向が顕著となり、所要の平坦性を保証することが困難となっている。このため、打抜きしたATプレートを所要の平坦度とするための形状矯正処理としてプレステンパー処理が施されている。この処理はATプレートを治具で押圧し所定の温度域(約400〜550℃)に一定時間加熱保持することにより行われる。
上記プレステンパー処理による形状矯正(平坦性の向上)効果は、処理温度を高めると共に助長されるが、処理温度(約400〜550℃)は再結晶温度域と重複するため、再結晶に伴う軟質化(硬度低下)を生じ易く、結果として製品ATプレートの要求硬さを保証することが困難となる。前記特許文献1〜4には、ATプレート用冷延鋼板の製造工程における焼鈍処理の省略やプレス打ち抜き加工性の改良等について開示されているが、プレス打抜き成形後の熱処理における再結晶軟化現象とその対策の示唆を含む記載はなく、プレートの硬度低下の問題を解消することができない。
また、ATプレートは通常、非調質で使用されることが多いが、大トルク、大排気量の車種に適用される場合には、耐摩耗性、疲労強度、耐かじり性が特に必要とされる部品があり、このような部品に対しては、窒化による表面硬化処理が施されるので、窒化特性が重要な特性となる。
本発明は上記に鑑み、冷間圧延前の焼鈍処理が省略された前記冷延鋼板の製造方法の改良として、スラブ加熱炉における加熱条件の制御により、冷延鋼板の窒化特性及び耐再結晶軟化特性(再結晶軟化抵抗を示す特性)の両特性を高め、プレス打抜き加工後のプレステンパー処理における軟質化(硬度低下)を抑制緩和してATプレートに要求される硬度等の材料特性及び形状品質(平坦性)を確保すると共に、耐摩耗性、疲労強度、耐かじり性等の改良された諸特性を具備せしめ得る冷延鋼板及びその製造方法を提供するものである。
本発明に係る窒化処理用冷延鋼板(請求項1)は、
質量%で、C:0.15〜0.25%,Si:0.25%以下,Mn:0.3〜0.9%,P:0.03%以下,S:0.015%以下,Al:0.01〜0.08%,N:0.008%以下,Cr:0.05〜0.5%,Ti:0.01〜0.05%,B:0.002〜0.005%,残部はFe及び不可避不純物からなるスラブを、スラブ加熱炉から1230℃を超える温度で抽出し熱間圧延することにより、フェライト結晶粒径:5〜15μmおよびパーライト+セメンタイト分率:40%以上であるフェライト−パーライト混合組織を有する熱延鋼板を得、焼鈍処理することなく圧下率30%以上で冷間圧延することにより製造される。
本発明に係る窒化処理用冷延鋼板の製造方法(請求項6)は、
質量%で、C:0.15〜0.25%,Si:0.25%以下,Mn:0.3〜0.9%,P:0.03%以下,S:0.015%以下,Al:0.01〜0.08%,N:0.008%以下,Cr:0.05〜0.5%,Ti:0.01〜0.05%,B:0.002〜0.005%,残部はFe及び不可避不純物からなるスラブを、加熱炉で1230℃を超える温度に加熱して抽出し、熱延仕上げ温度:Ar変態点以上、および巻取り温度:500〜600℃の熱間圧延により、フェライト結晶粒径:5〜15μmおよびパーライト+セメンタイト分率:40%以上であるフェライト−パーライト混合組織を有する熱延鋼板を得、熱延鋼板を酸洗処理した後、焼鈍処理することなく圧下率30%以上で冷間圧延することからなる。
本発明は、鋼組成の規定(C量制限、Ti,B,Cr等の複合添加)と併せて、スラブの加熱処理に、従来の処理温度を大きく超える高温加熱を適用した点を最大の特徴としている。
本発明の対象とする低・中炭素鋼組成のスラブの加熱炉での抽出温度は、従来1180〜1230℃の温度域で一般的に実施されている。1230℃を超える高温加熱が行われないのは、そのような高温加熱とする利益がなく、熱エネルギーの無駄な消費になると認識され、またそのような高温化に伴ってスラブのオーステナイト粒が過度に粗大化し、その後の熱延鋼板の組織を微細化することができず、結果として製品冷延鋼板の材料特性が低下すると考えられていたことによる。
これに対して1230℃を超える高温加熱を適用した本発明は、高温加熱に懸念されていた前記品質上の欠陥(鋼板表面の品質低下)を生じさせることなく、冷延鋼板の耐再結晶軟化特性を飛躍的に高めることを実現している。その製品冷延鋼板は、ATプレート等の用途に要求される、硬さや耐摩耗性およびプレス打抜き性等の良好な諸特性を具備している。
本発明の冷延鋼板の耐再結晶軟化特性の向上効果として、ATプレート用途では、プレス打抜き後のプレステンパー処理における軟質化が効果的に緩和軽減され、大径サイズや桟部の狭幅サイズのようにひずみを生じ易い形状を有するATプレートの場合にも、所要の機械強度を維持しながら良好な平坦度(≦0.15mm)を保証することが容易になる。この材料特性の改善効果は、スラブ抽出温度の高温化に要する熱エネルギーコストの負担増を十分に補って余りあるものである。
本発明の冷延鋼板は、上記の耐再結晶軟化特性と併せて、優れた窒化特性を有している。窒化特性の向上効果として、プラズマイオン窒化などによる低温での窒化処理(処理温度:約450℃)の適用が可能となる。このことは、従来の軟窒化処理などの高温処理(処理温度:約570℃)に比べ、ATプレート等の打ち抜き成形品の熱影響による面歪みや軟質化を抑制防止し、良好な平坦性及び高硬度を保持するのに極めて有効である。
スラブ抽出温度を高温化したことによる効果として、冷延鋼板の耐再結晶軟化特性が高められるメカニズムの詳細は明らかでないが、高温加熱によりスラブ鋼中のTiCやTi(C,N)のオーステナイト相への充分な固溶が達成され、その後の熱間圧延工程で再析出する際に、超微細サイズの析出物として均一に分散した超微細組織が形成されることによる効果であると考えられる。硬さ、耐摩耗性及びプレス打抜き加工性等の良好な諸特性を具備していることも、超微細析出物が均一分散した組織が形成されることによるものと考えられる。
窒化特性が向上することの理由についても明確ではないが、N元素との親和力の強いTi、Cr等が鋼中に固溶していることが寄与するものと考えられ、更に冷延鋼板の有する超微細組織により、そのフェライト結晶粒の粒界面積が大きく、粒界面に沿ってN原子の拡散侵入が起こり易くなることも要因の一つと推定される。
本発明の冷延鋼板のこのような超微細均一組織の形成と材料特性向上効果は本発明の鋼組成に基づいている。
本発明の鋼組成に関して、まずC量制限(従来材のS35C炭素鋼より低C組成)により、熱延鋼板のパーライト量を減少させて熱延鋼板を軟質化し、冷間圧延前の熱延鋼板の焼鈍処理を不要にしている。このC量規定と併せてTiとBの複合添加に基づく鋼組織の制御とその材質改善効果は重要である。Ti添加によるTiC,Ti(C,N)等の微細析出物(サイズ:約500〜3000Å)の生成効果として、熱延鋼板のフェライト組織が著しく細粒化される。熱延鋼板では、炭化物がフェライト粒界に優先的に析出するため、細粒化の効果として炭化物は均一微細に鋼中に分散し、耐摩耗性や耐再結晶軟化特性等に有利な組織が形成される。その微細化効果は、鋼中の固溶BがTiと共存することにより高められる。これはTiNの生成傾向がBNのそれより大きく、BNの生成反応が抑制されることによる。更に固溶Bは、熱延鋼板の粒界の強化及びフェライト組織の細粒化に寄与し、マトリックスの強度及び耐摩耗性の向上に奏効する。これらの効果として冷延鋼板の材料特性が高められ、耐再結晶軟化特性の向上と併せて、プレステンパー処理を経た後も、ATプレート用途の代表的な従来材であるS35C冷延鋼板を凌ぐ硬さ、その他の機械的性質が保証される。
本発明の鋼組成の限定理由は次のとおりである。元素含有量はすべて質量%である。
C:0.15〜0.25%
冷延鋼板の硬度・耐摩耗性を高める点からはC量が高いほど有利であるが、0.25%を超えると、熱延鋼板の炭化物の球状化と軟質化のための焼鈍を省略することができなくなる。一方C量が0.15%に満たないと、従来材であるS35C並の耐摩耗性を確保することが困難となるので、これを下限とする。
Si:0.25%以下
Siは、鋼の溶製工程における脱酸元素である。その添加量は0.25%までで十分である。それを超える添加は、熱延鋼板の酸洗処理性の低下および酸洗後のスケール残存による表面欠陥の原因ともなり、ATプレートとしての表面品質を低下させるので、これを上限とする。
Mn:0.3〜0.9%
Mnは、鋼の熱間脆性の防止及びマトリックスの強化に奏効する。0.3%に満たないとその効果が少なく、マトリックスの強度が不足し耐摩耗性も低くなる。増量により効果を増すが、0.9%を超えると過度に硬質化して加工性が損なわれる。
P:0.03%以下
Pは不純分であり、鋼中に多量に存在すると、粒界の強度低下を招き、冷延鋼板の常温脆化の原因となり、ATプレート等のプレス成形品の安定性が損なわれる。0.03%以下であれば、実質的な悪影響を生じないので、これを上限とする。
S:0.015%以下
SはMnSを形成して熱間脆性を抑制する効果を有する反面、多すぎるとMnSを起点とする加工割れの原因となり、ATプレートでは打抜き加工における面性状の低下を招く。またMnSを起点とする摩耗を生じ易く耐摩耗性が低下する。0.015%以下であれば、その実害は回避されるので、これを上限とする。
Al:0.01〜0.08%
Alは鋼の溶製過程における脱酸剤として添加される。また鋼中のNをAlNとして固定する作用を併せ有する。0.01%未満では脱酸作用が不足し、他方0.08%を超えると、鋼の清浄度が損なわれ、表面疵が発生し鋼板の表面品質を悪くする原因となる。
N:0.008%以下
Nは不可避的な不純物元素である。含有量が多くなると、窒化物(AlN,TiN等)等の生成量が増加し、過度の硬質化をきたすので、0.008%以下であることを要する。
Cr:0.05〜0.5%
Crは、鋼中に固溶し、一部は炭化物(析出粒子)を形成して固溶強化および析出強化の作用をなす。このマトリックス強化機能により、ATプレート用途ではその要求硬さ(Hv≧230)を確保するのに必要な冷間圧延での圧下率(冷延率)を低く設定することが可能となる。冷延率を低くすることは、冷延鋼板の板厚中心部の圧縮残留応力を低減し、プレス打ち抜き後のATプレートの平坦性を改善するのに有効である。これらの効果を得るには0.05%以上の添加を必要とする。0.5%を超えると効果はほぼ飽和する。
また、CrはNとの親和力の強い元素であり、上記Cr含有量において鋼中の固溶Crは製品鋼板の窒化処理特性の向上に寄与する。
Ti:0.01〜0.05%
Tiは一般的にはTiSを形成して熱間脆性を回避する作用を有する。更に前記のようにTiは鋼中でTiCやTi(C,N)等の微細析出物を形成して熱延鋼板のフェライト組織を細粒化し、その効果として炭化物が均一微細に分散し耐摩耗性が高くなる。この効果を確保するために0.01%以上の添加を必要とする。多量に添加すると、微細析出物の過剰生成により過度の硬質化を招くので、0.05%を上限とする。
Tiは、Crと同じようにNとの親和力がつよく、上記Ti含有量において鋼中に固溶したTiは製品鋼板の窒化処理特性を高める効果を有する。
B:0.002〜0.005%
Bは、前記のようにその多くが固溶Bを形成し、粒界の強化及びフェライト組織の細粒化作用により、マトリックスを強化し耐摩耗性を高める。この効果を得るには0.002%以上の添加を要する。しかし0.005%を超えると、フェライト組織の過度の細粒化による硬質化をきたすので、これを上限とする。
なお、Ni,Cu等は通常の溶製工程における不可避的混入元素であるが、それぞれ0.03%以下の範囲であれば、実質的な弊害はなく混在が許容される。
次に本発明の冷延鋼板の製造工程について説明する。
[鋼の溶製・鋳造]
まず製鋼炉で所定の化学組成に溶製した鋼を、造塊・分塊圧延により又は連続鋳造によりスラブとし、スラブの表面手入れを適宜実施した後、熱間圧延する。連続鋳造による場合、熱鋳片(スラブ)をそのまま加熱炉に装入して熱間圧延してもよい。
[加熱炉におけるスラブの加熱・抽出]
スラブの高温抽出(抽出温度:1230℃超)は本発明の最大の特徴事項である。ここに「抽出温度」とは炉内での最高到達温度(スラブ温度)を指している。
スラブの加熱処理による抽出温度は、スラブ鋼組織の均質化、その他の諸要件を満たすために約1180℃以上を要するとされているが、既に述べたように1230℃を超える高温抽出とする例は、従来見当たらない。これと異なって1230℃を超える高温抽出を適用した本発明は、従来懸念されてきた製品鋼板の材質劣化をきたすことなく、その耐再結晶軟化特性を大きく高めることを可能にしている。この材質向上効果は、スラブの高温加熱処理によりスラブ鋼中の炭化物等の固溶消失や偏析解消等が促進され、オーステナイト単一相組織の高度の均質化が達成されることに伴う効果であり、また抽出温度の高温化に拘らず従来懸念されているような製品鋼板の材質低下がなく、所要の材料特性が確保されることも、本発明の鋼材の化学組成に基づくものであると考えられる。
本発明におけるスラブ加熱処理において、1280℃を超える高温度を適用する利益はなく、熱エネルギーコストの無駄となるほか、製品鋼板の品質欠陥(粒界酸化とそれによる製品鋼板の表面品質の劣化)をきたすおそれもある。従って1280℃までとするのが好ましい。より好ましくは1250〜1270℃である。
なお、炉内におけるスラブの抽出温度での加熱保持時間は約30分ないしそれ以上であればよい。
[熱間圧延]
熱間圧延は常法に従って行なわれる。熱延鋼板の品質及び熱延効率等の点から、熱延仕上げ温度はAr変態点直上に調整される。鋼板の巻取りは500〜600℃の温度域で行なうのがよい。500℃未満の低温巻取りでは、結晶粒径が過度に微細化して熱延鋼板の硬質化をきたし、他方600℃を超える高温巻取りでは炭化物が凝集し易く、その均一分散の確保が困難になると共に、フェライト組織が粗大化し、結果として冷延鋼板の耐摩耗性や耐再結晶軟化特性の改善効果が損なわれる。好ましくは500〜550℃である。
熱延鋼板は、結晶粒径(JIS G0552「附属書2(規定)交差線分(粒径)による判定方法」)が5〜15μmの細粒化されたフェライト組織であることを要する。5μmに満たない微細なフェライト組織では過度の硬質化をきたし、他方15μmを超える粗い組織では耐摩耗性及び耐再結晶軟化特性の改善効果が不足することになる。好ましくは5〜10μmである。この微細結晶粒径は、前記C量の規制と一定量のTi,B,Crを複合含有する鋼組成の効果として前記熱延条件により確保される。
熱延鋼板は上記フェライト粒径の規定と併せ、炭化物の面積率の指標として点算法により測定される「パーライト+セメンタイト分率」が40%以上であることを要する。ここに点算法とは、金属便覧(社団法人日本金属学会編,丸善(株))改定6版所載の光学顕微鏡組織の定量解析法(第264頁)を指しており、顕微鏡視野内にグリッドを置き、炭化物が占める格子点の総数をカウントし、グリッド格子点の総数に対する比として算定される。このパーライト+セメンタイト分率40%以上により、冷延鋼板の耐再結晶軟化特性の改善効果がより明瞭に発現される。
熱延鋼板の上記微細均一組織(フェライト粒径:5-15μm,パーライト+セメンタイト分率:40%以上)は、前記C量,Cr量の規定および一定量のTi,Bを複合含有する鋼組成の効果として、前記加熱炉のスラブ抽出条件および熱延条件により確保される。
熱延鋼板のこのように細粒化されたフェライト組織と炭化物の分散組織により、最終製品(冷延鋼板)における鋼中炭化物の分散がより均一微細化され、耐摩耗性やプレステンパー処理における耐再結晶軟化特性の改善効果が保証される。
[冷間圧延]
熱延鋼板は、酸洗処理で表面のスケールを除去された後、冷間圧延に付される。冷間圧延における圧下率は30%以上とする。これは、ATプレート用冷延鋼板等として必要な硬度(Hv≧230)及び表面粗さ(Ra≦0.4μm)を得るためである。圧下率を大きくすると共にその効果は増すが、圧下率の増加に伴って板厚中心部の圧縮応力が大きくなるため、プレス打抜き後の板面平坦性が低下する。特に、大径サイズ,桟部の狭幅サイズのATプレートのプレス打ち抜きを行う場合、その影響が大きくなる。このため圧下率は60%以下に制限すべきである。より好ましくは、40〜50%である。このように冷延圧下率を従来のそれ(≧50%)に比べて低く設定することが可能となるのは、Crの固溶強化及び炭化物としての析出硬化の作用によるものある。
なお、冷間圧延における圧延ロール(ワークロール)は、得られる冷延鋼板の表面粗さ(Ra≦0.4μm)が確保されるように、ロール表面粗度の管理が適宜実施される。
上記冷間圧延は、所望により、酸洗処理前のプレ圧延と処理後の仕上げ圧延との2段階に分けて実施される。プレ圧延(酸洗処理前)によるスケールの破砕効果として脱スケール性が大きく改善され、酸洗処理時間の大幅な短縮とコスト低減が可能となる。プレ圧延(酸洗処理前)と仕上げ圧延(酸洗処理後)とは、連続させる必要はないが、酸洗槽の入側にプレ圧延機を、出側に仕上げ圧延機をそれぞれ設置し、プレ圧延-酸洗処理-仕上げ圧延の連続構成とすることは生産効率の面からも有利である。
なお、上記2段階圧延におけるプレ圧延(酸洗処理前)の圧下率は25%以下に規制することが望ましい。これを超える高い圧下率でプレ圧延すると、スケールの鋼板表面への押込みによる疵が発生し表面品質を損なうおそれがあるからである。好ましくは10〜20%である。仕上げ圧延(酸洗処理後)の圧下率は、全圧下率(=プレ圧延の圧下率+仕上げ圧延の圧下率)が30%以上となるように設定される。この2段階圧延の全圧下率の調整は、前記(冷間圧延を酸洗後の1段階で実施)と同じように、ATプレートとしての要求特性(硬さ:Hv≧230,表面粗さ:Ra≦0.4μm)を満たすのに必要である。
[調質圧延]
冷間圧延の後、常法に従い脱脂処理(電解洗浄等)で鋼板表面を浄化したうえ、鋼板の形状修正と残留応力の緩和を目的として調質圧延を行う。調質圧延での伸率は、好ましくは1%以下に調整される。調質圧延による形状修正効果は、伸率1%でほぼ飽和し、それを超える伸率は鋼板を不必要に硬質化させるだけである。なお、応力緩和効果の観点から、調質圧延のワークロールは300mm以上の大径ロールを使用するのがよい。
[精整]
冷間圧延の後、レベラー等による形状修正、所定の検査(板厚・板幅等の諸元寸法,表面疵等)及び鋼板エッジのトリミング等のための精整工程を経て製品冷延鋼板を得る。
[プレス打抜き加工及びプレステンパー処理]
上記冷延鋼板をATプレート用途に供する場合は、プレス打抜き加工に付して所定形状のプレス成形品を得る。その成形品のプレス打抜き加工に伴う歪み(変形)を矯正し所要の平坦性を得るための処理としてプレステンパー処理が施される。その処理は、プレス打抜き成形品を両面から押圧治具で挟み付け、所定の加圧力のもとに一定時間加熱保持するものであり、処理条件は、プレス打抜き成形品の材質に応じ適宜設定される。S35C炭素鋼製プレート成形品(ATプレートの従来材)では、約400〜500℃の温度が適用されている。それを超える高温処理(例えば550℃)では、硬度低下(再結晶軟化)が大きく、要求硬さ(Hv:230以上)を満たすことができないからである。
これと異なって、本発明の冷延鋼板のプレス成形品は、後記実施例に示したように500℃を超える高温度(例えば550℃,600℃)であっても、硬度の低下(再結晶軟化)が少なく、プレステンパー処理を効率よく達成し、要求硬さ(Hv:230以上)及び平坦性(平坦度:0.15mm以下)を充分に確保することができる。
[窒化処理]
冷延鋼板のプレス打抜き成形品は、通常非調質で使用されるが、特に耐摩耗性、疲労強度、耐かじり性が必要とされる部品(ATプレートでは、大トルク、大排気量の車種に適用される部品)に対する有効な表面処理として窒化処理が施される。
従来の軟窒化処理(ガス軟窒化等)は、通常約570℃で行われるが、本発明の冷延鋼板のプレス成形品に対しては、プラズマイオン窒化による低温の窒化処理(約450℃)を適用することができ、その効果として熱処理に伴う成形品の面歪みが緩和され、成形品の良好な平坦性を保持し得ると共に、熱影響に伴う軟質化等の材質劣化をも回避することが可能となる。
転炉及び脱ガス処理装置により溶製・成分調整を行なった溶鋼を連続鋳造に付してスラブ(200mm厚)を形成し、下記の工程(工程イ又は工程ロ)により冷延鋼板を得る。
工程イ(冷延前の焼鈍省略):
「熱延→酸洗→冷延(1段又は2段圧延)→調質圧延→精整(検査)」
工程ロ(冷延前の焼鈍実施):
「熱延→酸洗→焼鈍→冷延(1段圧延) →調質圧延→精整(検査)」
[1]供試鋼組成(表1)
No.1〜6は、発明例、
No.11〜17は、発明例に類似の鋼組成を有するが、C,Cr,Ti,Bのいずれかの元素含有量(下線付記)が本発明の規定から外れている比較例、
No.21〜24は従来材(JIS G3311 S35C相当材)の例である。
[2]製造条件(表2参照)
表2における発明例、比較例A、比較例B(B1,B2)、および比較例Cは、鋼組成およびスラブ抽出温度により、次のように類別している。

分 類 鋼組成(表1) スラブ抽出温度(表2)
発 明 例 鋼A(No.1〜6) 1260℃(高温抽出)
比較例A 鋼A(No.1〜6) 1230℃
比較例B(B1) 鋼B(No.11〜17) 1260℃(高温抽出)
(B2) 鋼B(No.11〜17) 1230℃
比較例C 鋼C(No.21〜24) 1230℃
(2.1)熱間圧延:
抽出温度 仕上げ温度 巻取り温度
<発明例> 1260℃ 860℃ 540℃
<比較例A> 1230℃ 860℃ 540℃
<比較例B1> 1260℃ 860℃ 540℃
<比較例B2> 1230℃ 860℃ 540℃
<比較例C> 1230℃ 850℃ 600℃
(2.2)焼鈍処理:
発明例および比較例A …焼鈍なし
比較例B(B1,B2) …焼鈍なし
比較例C …焼鈍あり(タイトコイル焼鈍:700℃×10Hr)
(2.3)冷間圧延:
全圧下率…2段圧延の場合は前後2段の圧延の合計圧下率である。
<発明例、比較例A> 全圧下率:35〜55% 仕上げ板厚:1.8mm
<比較例B1、比較例B2> 全圧下率:45〜65% 仕上げ板厚:1.8mm
<比較例C> 全圧下率:55% 仕上げ板厚:1.8mm
(2.4)調質圧延:
調質圧延率(伸率):0.8%
ワークロール径 :350mm
[3]冷延鋼板の材料特性試験
(3.1)耐摩耗性試験
大越式迅速摩耗試験機による(図1参照)。
試験材(1)に回転円板(相手材)(2)を押し付け、試験後の試験材表面の摩耗痕の幅(b)を測定し摩耗部の体積から摩耗量A(mm)を算出する。耐摩耗性は比摩耗量[=A/(P×L) (mm/kg・m)] で評価する。
試験環境:室温(14℃),大気中
回転円板:SK5/400Hv(焼入れ焼戻しにより調質)
円板半径(r)30mm,円板厚(B)3.0mm
摩耗距離(L):200m
負荷荷重(P):61.7N
摩耗速度(V):4m/sec
(3.2)プレス打抜き性試験
円環形状のATプレート(セパレートプレート)をプレス打抜きする。
[打抜き加工条件]
・プレス機:200トンメカプレス
・ストローク長さ:250mm
・ストローク数:25spm
・クリアランス:10%(板厚1.8mm)
・打抜き寸法:内径105 mm×外径127 mm
[打抜き性の評価方法]
打抜き端面の良否を次の要領で判定する。
・観察方法 :走査型電子顕微鏡(倍率:20倍)による
・観察断面 :鋼板の長手方向断面
・評価基準 :〇…打抜き端面美麗(ムシレやクラックの発生なし)
×…打抜き端面にムシレ・クラック(1個以上)が認められる
(3.3)耐再結晶軟化特性の評価試験
プレス打抜きしたATプレートを加熱処理に付し、熱処理後の硬さに基づいて耐再結晶軟化特性の改善効果を評価する。
処理温度:400℃、500℃、600℃
処理時間:60分
(3.4)窒化特性の評価試験
[サンプル調製]
冷延鋼板よりプレス打抜きし、表面研磨を施して試験片とする。
・試験片サイズ:20W×25L×1.8t
・表面性状 :鏡面仕上げ
[窒化処理法]
・窒化方式:プラズマイオン窒化
・試験装置:NDK製 JIN−IS
・試験温度:450℃
・試験時間:40Hr
・処理ガス組成比:N2/H2=1.0
・ガス圧力:6torr
[窒化特性の評価法]
JIS G 0562(1993)の「鉄鋼の窒化層深さの測定方法」規定の「硬さ推移曲線による測定方法」に準じて窒化層深さを測定し、窒化層深さと窒化層硬さの測定値により、次のように窒化特性を評価した。
○… 窒化層硬さ≧H700かつ窒化層深さ≧300μm
×… 窒化層硬さ、窒化層深さのいずれか一方又は両方が上記数値に満たない
[4]供試鋼板の諸特性の評価結果
表2に熱延鋼板の性状(結晶粒径,P+C分率)と併せて、冷延鋼板の諸特性を示す。
熱延鋼板の結晶粒径はJIS G0552附属書2規定の交差線分による判定(段落0028)
P+C分率は、点算法による測定値(段落0029参照)
冷延鋼板の硬さ(Hv)は荷重98Nでの測定値
である。
表3の左側欄に、スラブ抽出温度及び冷延鋼板の初期硬さ(試験前の硬さ)と併せて、冷延鋼板プレス打抜き後の耐再結晶軟化特性の試験結果を示し、右側欄に窒化特性の試験結果を示す(表中のスラブ抽出温度および初期硬さは表2からの転記である)。
Figure 0005501819
Figure 0005501819
Figure 0005501819
(4.1)冷延鋼板の硬さ,耐摩耗性,表面粗さ及びプレス打抜き性(表2):
発明例(No.1〜6)は、比較例CのNo.21〜24(ATプレート従来材に相当)に対し、それを超える耐摩耗性を有し、ATプレートに要求される硬さ(Hv)及び表面粗度(Ra)のスペック(Hv≧230,Ra≦0.4μm)を充分に満たしている。また、プレス打抜き性も良好であり、従来材(S35C炭素鋼製ATプレート)と同等の美麗なプレス打抜き端面性状を有している。
なお、比較例A(No.1〜6)は、比較例Cと同等の耐摩耗性及びプレス打抜き性を有しているが、後述のとおり耐再結晶軟化特性が劣る点で発明例に及ばない。
更に比較例B(B1,B2)をみると、
比較例B1のNo.11、比較例B2のNo.11(鋼のC量不足)は、硬度が不足し、耐摩耗性も比較例C(ATプレート従来材S35C鋼製)に比べて著しく低い。
比較例B1のNo.12、比較例B2のNo.12(鋼のC量過剰)は、耐摩耗性は良好であるが、過度に硬質化しているため、プレス打抜き端面の性状が悪くプレス打抜き性に劣る。
比較例B1のNo.13、比較例B2のNo.13(鋼のTi量不足)、
比較例B1のNo.14、比較例B2のNo.14(鋼のB量不足)
比較例B1のNo.17、比較例B2のNo.17(鋼のTi,B,Cr量不足)は、
いずれも発明例及び比較例C(ATプレートの従来材)に比べて耐摩耗性に劣り、
比較例B1のNo.16、比較例B2のNo.16(鋼のCr量過剰)は、
過度の硬質化をきたし、プレス打抜き性も劣っている。
(4.2)耐再結晶軟化特性(表3):
表中、熱処理後の硬さがHv230(ATプレートの要求硬さ下限値)に満たない値には下線を付している。
発明例は、処理温度500℃,550℃および600のすべてにおいて、Hv230を超える十分な硬さを保持している。
比較例A(鋼組成は発明例と同一)は、600℃の処理における硬度低下が顕著である。この比較例Aと発明例との製造条件上の実質的な相違は、スラブ抽出温度のみ(比較例Aは低温抽出)である。このことは、本発明によるスラブの高温抽出が、耐再結晶軟化特性の改善に重要な因子であることを示している。
比較例C(ATプレートの代表的従来材S35C炭素鋼相当材)では、500℃の処理でHv230以上の硬さを保持しているものの、550℃ではHv230を満たし得ず、600℃における硬度低下は更に大きくなり、発明例との差異は歴然である。
更に比較例B1をみると、550℃の処理ですでに硬度不足をきたす例(No.17)があり、600℃ではすべての例(No.11〜17)においてHv230を下回るレベルに低下している。この比較例B1は、発明例と同じスラブ高温抽出であって、発明例との実質的な相違点は、鋼組成が本発明の規定から外れている点のみである。このことから、耐再結晶軟化特性の顕著な改善効果を得るには、スラブの高温抽出と併せ、本発明の鋼組成の規定が必須の要件であることがわかる。
比較例B2は、鋼組成およびスラブ抽出温度のいずれも本発明の規定から外れている例であり、その耐再結晶軟化特性は発明例のそれに遠く及ばない。
(4.3)窒化特性(表3)
発明例(No.1〜6)は、十分な窒化層硬さ(Hv≧700)及び窒化層深さ(≧300μm)を有している。比較例Aおよび比較例Bは、その一部に高い窒化層硬さ(Hv≧700)を有するものもあるが、窒化層深さが不十分(<300μm)であり、また比較例Cは、窒化層硬さ及び窒化層深さともに低いレベルにとどまり、発明例の改良された窒化特性との差異は顕著である。
本発明の冷延鋼板は、高度の耐再結晶軟化特性を有するので、プレス打抜き成形品の平坦性を高めるためのプレステンパー処理を効果的に適用することができる。
ATプレートの分野では、プレートの大径化・桟部の狭幅サイズ化等の形状複雑化に伴って、プレート板面のひずみの発生傾向が顕著となる傾向にあるが、本発明によれば、再結晶軟化現象(硬度低下)が効果的に回避されることにより、プレステンパー処理に高温を適用し、硬度低下を抑制しながら、形状矯正効果をより効果的に達成し、所要の平坦性を確保することが容易になる。
しかも、窒化特性に優れているので、プラズマイオン窒化等による低温での窒化処理が可能となり、その効果として軟窒化処理などの従来法に付随する製品品質の問題(熱影響に起因する成形品の面歪みや軟質化等)も緩和解消される。
本発明によれば、自動車用ATプレートをはじめ、一定の硬さ及び表面粗さ等が要求される各種用途の冷延鋼板を、冷間圧延前の焼鈍処理が省略された工程で製造することができる。
従来のATプレート用冷延鋼板の製造(冷間圧延前の焼鈍処理を必須としている)に比べて、焼鈍工程を省略した本発明による製造のコスト節減効果は大である。
本発明による冷延鋼板をATプレート用途に使用する場合、その要求特性であるHv230以上の硬さ及びRa0.4μm以下の表面粗さを十分に保証することができる。
また、本発明による冷延鋼板は高度の耐再結晶軟化特性を有しているので、プレス打抜きして得られる成形品の形状矯正処理(プレート板面の平坦性の修復処理等)としてプレステンパー処理を実施する場合にも、再結晶現象に付随する軟質化(硬度低下)を効果的に抑制緩和し所要の硬さを維持することができる。殊に自動車用ATプレートでは、高排気量化・軽量化等に関連するATプレートの大径化、抜き桟部の狭幅化等の形状の複雑化に伴って平坦性の確保が困難となっているが、本発明によれば、プレステンパー処理を効果的に適用し所要の硬度を保持しながら良好な平坦性を安定して保証することができる。
更に本発明の冷延鋼板は優れた窒化特性を備えていることにより、プラズマイオン窒化等による低温での窒化処理が可能となり、従来の軟窒化処理法に付随する製品品質の問題、特に熱影響に起因する成形品の面歪みや軟質化等も効果的に改善される。
本発明による冷延鋼板は、ATプレート用途のほか、一定の硬さ、表面粗度、窒化特性および耐再結晶軟化特性が要求される各種用途に好適に供し得るものである。
実施例における耐摩耗性評価の試験要領を示す説明図である。
1:試験材 2:回転円板(相手材)

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.15〜0.25%,Si:0.25%以下,Mn:0.3〜0.9%,P:0.03%以下,S:0.015%以下,Al:0.01〜0.08%,N:0.008%以下,Cr:0.05〜0.5%,Ti:0.01〜0.05%,B:0.002〜0.005%,残部はFe及び不可避不純物からなるスラブを、スラブ加熱炉から1230℃を超える温度で抽出し熱間圧延することにより、フェライト結晶粒径:5〜15μmおよびパーライト+セメンタイト分率:40%以上であるフェライト−パーライト混合組織を有する熱延鋼板を得、焼鈍処理することなく圧下率30%以上で冷間圧延することにより製造される窒化特性及び耐再結晶軟化特性に優れた、表面硬さ(Hv):230以上、表面粗さ(Ra):0.4μm以下、比摩耗量:15.3mm /m・kg未満の窒化処理用冷延鋼板。
  2. 加熱炉からのスラブの抽出温度が1250〜1280℃である請求項1に記載の窒化処理用冷延鋼板。
  3. 冷間圧延における圧下率が35〜55%である請求項1又は請求項2に記載の窒化処理用冷延鋼板。
  4. オートマチックトランスミッション部材を成形するプレス打抜き加工に供される請求項1〜3のいずれか1項に記載の窒化処理用冷延鋼板。
  5. 質量%で、C:0.15〜0.25%,Si:0.25%以下,Mn:0.3〜0.9%,P:0.03%以下,S:0.015%以下,Al:0.01〜0.08%,N:0.008%以下,Cr:0.05〜0.5%,Ti:0.01〜0.05%,B:0.002〜0.005%,残部はFe及び不可避不純物からなるスラブを、加熱炉で1230℃を超える温度に加熱して抽出し、熱延仕上げ温度:Ar3変態点以上、および巻取り温度:500〜600℃の熱間圧延により、フェライト結晶粒径:5〜15μmおよびパーライト+セメンタイト分率:40%以上であるフェライト−パーライト混合組織を有する熱延鋼板を得、熱延鋼板を酸洗処理した後、焼鈍処理することなく圧下率30%以上で冷間圧延することからなる窒化特性及び耐再結晶軟化特性に優れた、表面硬さ(Hv):230以上、表面粗さ(Ra):0.4μm以下、比摩耗量:15.3mm /m・kg未満の窒化処理用冷延鋼板の製造方法。
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