JP5157417B2 - 鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車部品などの用途に好適な鋼板、特に、加工性に優れた鋼板およびその製造方法に関する。
工具あるいは自動車部品(ギア、ミッション)などに使用される鋼板は、所望の形状に加工された後、焼入れ焼戻しなどの熱処理が施されて使用されることが多い。このような鋼板には、種々の複雑な形状に加工されるため優れた加工性が要求される。最近では、こうした部品に対する製造コスト低減の要求が強くなり、加工工程の省略や加工方法の変更を目的とした加工技術、例えば、高炭素鋼板を用いた自動車駆動系部品の増肉加工を可能にして、大幅な工程短縮を実現した複動加工技術などが開発され、一部実用化されている。それにともない上記自動車部品などに使用される鋼板には、加工性に対する要求が益々厳しくなっており、より軟質で高延性であることが求められている。例えば、冷間鍛造で加工する場合には、より低い降伏応力が求められている。さらに、打抜き加工後に穴拡げ加工(バーリング)する場合には、優れた伸びフランジ性が望まれている。
こうした要求に応えるべく、鋼中のCをグラファイト化させて加工性の向上を図る技術が検討されている。例えば、特許文献1には、質量%で、C:0.40〜0.80%、Si:0.20〜2.00%、Mn:0.20〜1.50%、Al:0.001〜0.150%、P:0.018%以下、S:0.010%以下、N:0.0050%以下で、残部Feおよび不可避的不純物からなり、フェライト相とグラファイト相を主体とした組織を有し、TS≦60kgf/mm2の軟質な材質を有する加工性、靭性、焼入れ性の良好な耕耘機爪部品用として好適な鋼板およびその製造方法が開示されている。また、特許文献2には、質量%で、C:0.10〜0.45%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.05〜0.50%、Nb:0.005〜0.1%、Al:0.01〜1.00%、N:0.002〜0.010%、B:3〜50ppm、Ca:0.001〜0.01%およびNi:0〜2.00%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、不純物中のP:0.012%以下、S:0.008%以下である熱延鋼板を、Ac1〜Ac3点の温度範囲で0.1〜10hr保持した後、20〜100℃/hrの冷却速度で常温まで冷却し、次いで650〜750℃の温度範囲で箱焼鈍することにより、鋼中のセメンタイトの50面積%以上をグラファイト化することを特徴とする加工性に優れた中炭素鋼板の製造方法が開示されている。さらに、特許文献3には、質量%で、C:0.20〜1.00%、Si:0.20%超え1.20%以下、Mn:0.05〜0.50%、N:0.005〜0.015%、B:0.2×N%〜0.8×N%、およびAl:0.05%未満で、かつ1.0×(N-B)%〜5.0×(N-B)%を満足する量含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、不純物としてP:0.020%以下、S:0.010%以下である化学組成と、フェライトとグラファイトおよびセメンタイトからなる組織を有する加工性の良好な高炭素薄鋼板およびその製造方法が開示されている。
特開平1-025946号公報 特開平7-258743号公報 特開平4-202744号公報
従来、鋼中のCをグラファイト化して加工性を向上するためには、特許文献1や3などにも記載のように、Siの多量の添加が必須とされていた。しかしながら、Siを添加することにより、フェライト自体が硬質化し、良好な加工性を得ることが困難となる。また、特許文献2のように、BおよびNbを添加した成分系とし、所定の条件で2回の焼鈍を行うことで、Si添加量を必ずしも多量としなくても、グラファイト化と高延性化を達成しようとする技術も開発されているが、2回の焼鈍を行うことはコストアップにつながる。ここで特許文献2は、鋼中のセメンタイトの50%以上をグラファイト化しようとする技術であり、実施例で開示される鋼の成分組成としては、Si量は多く、0.20%を超える量となっている。また、特許文献1〜3に記載の鋼板は、軟質ではあるが、打ち抜き加工後の穴拡げ加工性に対する指標である伸びフランジ性には必ずしも優れないという問題があった。
本発明は、軟質で、優れた伸びフランジ性を有する加工性に優れた鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来技術の課題について検討を重ねた結果、高炭素鋼において、Siの含有量を非常に低く、具体的には0.1%以下とした場合でも、グラファイトおよびセメンタイトの分布を制御することにより、必ずしもグラファイト化率を高くしなくても、良好な加工性が得られ、さらに良好な伸びフランジ性を確保できることを知見した。すなわち、C:0.3〜0.7質量%を含む鋼板の強度および伸びフランジ性に及ぼす組織の影響について鋭意研究を進めた結果、以下のことを見出したのである。
I)軟質化には、フェライトとグラファイトとセメンタイトを含む組織とし、組織全体に占めるフェライトとグラファイトとセメンタイトの体積率の合計を95%以上、グラファイトとセメンタイト全体に占めるグラファイトの体積率を5%以上にすることが効果的である。
II)伸びフランジ性の向上には、さらにグラファイトとセメンタイト全体に占めるフェライト粒内に存在するグラファイトとセメンタイトの体積率の合計を15%以下にする必要がある。
III)フェライト粒内に存在するグラファイトとセメンタイトの体積率の制御には、熱間圧延後の冷却条件が極めて重要である。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、質量%で、C:0.3〜0.7%、Si:0.1%以下、Mn:0.15%未満、P:0.01%以下、S:0.01%以下、Al:0.05%以下、N:0.0050%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、フェライトとグラファイトとセメンタイトを含む組織を有し、かつ組織全体に占めるフェライトとグラファイトとセメンタイトの体積率の合計が95%以上、グラファイトとセメンタイト全体に占めるグラファイトの体積率(グラファイト率)が5%以上、グラファイトとセメンタイト全体に占めるフェライト粒内に存在するグラファイトとセメンタイトの体積率の合計が15%以下であることを特徴とする鋼板を提供する。
本発明の鋼板には、さらに、質量%で、Ni:3.0%以下、B:0.005%以下、Cu:0.1%以下のうちから選ばれた少なくとも1種が含有されることが好ましい。
本発明の鋼板は、上記の組成を有する鋼を、800〜950℃の仕上温度で熱間圧延して熱延板とし、前記熱間圧延後の熱延板を、50℃/s以上の平均冷却速度で600℃以下の冷却停止温度まで冷却後、550℃以下の巻取温度で巻取り、前記巻取り後の熱延板を、720℃以下の焼鈍温度で焼鈍する方法により製造できる。
本発明により、軟質で、優れた伸びフランジ性を有する加工性に優れた鋼板を製造できるようになった。特に、本発明の鋼板は、成分と熱間圧延後の冷却条件を制御するだけでよいので、安価で容易に製造可能である。また、本発明の鋼板は、軟質で、伸びフランジ性などの加工性に優れているので、自動車駆動系部品の増肉加工に適しており、複雑な形状の部品に適用しても、複数部品の加工や溶接が不要となり、自動車部品の生産性向上やコスト削減が図れることになる。
以下に、本発明である加工性に優れた鋼板およびその製造方法について詳細に説明する。なお、成分の量を表す「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
1)組成
C:0.3〜0.7%
Cは、グラファイトを形成する元素である。C量が0.3%未満では、焼入れ後の硬さが確保できない。また、0.7%を超えると、たとえグラファイト化しても鋼板が硬質化し、加工性が低下する。このため、C量は0.3〜0.7%とする。
Si:0.1%以下
Si量が0.1%を超えると、フェライトが硬質化し、加工性が低下する。このため、Si量は0.1%以下、好ましくは0.05%以下とする。
Mn:0.15%未満
Mn量が0.15%以上だと、グラファイト形成を阻害するため、Mnは0.15%未満、好ましくは0.10%以下とする。
P:0.01%以下
Pは、粒界などに偏析し加工性を低下させるため、また、セメンタイトを安定化させてグラファイト形成を阻害する作用を有しているため、極力低減することが望ましい。このため、P量は0.01%以下、好ましくは0.008%以下とする。
S:0.01%以下
Sは、MnSなどの硫化物を形成して加工性を低下させるため、また、セメンタイトを安定化させてグラファイト形成を阻害する作用を有しているため、極力低減することが望ましい。このため、S量は0.01%以下、好ましくは0.007%以下とする。
Al:0.05%以下
Alは、固溶Nと結合してAlNを形成し、グラファイト形成を阻害する作用のある固溶Nの悪影響を無害化するとともに、AlNを核としてグラファイト形成を促進する元素である。このため、Al量は0.003%以上とすることが好ましいが、0.05%を超えると、鋼の清浄度を低下させるので、Al量は0.05%以下、好ましくは0.04%以下とする。
N:0.0050%以下
N量が0.0050%を超えると、固溶Nのセメンタイトを安定化させる作用が顕著となり、グラファイト形成が阻害される。このため、N量は0.0050%、好ましくは0.0040%以下とする。
残部はFeおよび不可避的不純物であるが、以下の理由で、Ni:3.0%以下、B:0.005%以下、Cu:0.1%以下のうちから選ばれた少なくとも1種が含有されることが好ましい。
Ni:3.0%以下
Niは、グラファイト形成を促進させる元素であるとともに、焼入れ性の向上にも有効な元素であり、こうした効果を得るため0.1%以上含有されることが好ましいが、Ni量が3.0%を超えると、その効果は飽和する。このため、Ni量は3.0%以下、好ましくは0.1〜3.0%、より好ましくは0.3〜1.0%とする。
B:0.005%以下
Bは、Nと結合してBNを形成して、グラファイト形成の核として作用する有用な元素であるとともに、焼入れ性の向上にも有効に作用する元素であり、こうした効果を得るため0.0005%以上含有されることが好ましいが、B量が0.005%を超えると、その効果は飽和する。このため、B量は0.005%以下、好ましくは0.0005〜0.005%、より好ましくは0.0010〜0.0040%とする。
Cu:0.1%以下
Cuは、グラファイト形成を促進させる元素であるとともに、焼入れ性の向上にも有効な元素であり、こうした効果を得るため0.01%以上含有されることが好ましく、より好ましくは0.02%以上であるが、Cu量が0.1%を超えると、その効果は飽和する。このため、Cu量は0.1%以下とし、より好ましくは0.07%以下とする。
2)組織
鋼板の軟質化を図り、曲げ加工性や引張試験における伸び特性を向上させるには、フェライトとグラファイトとセメンタイトを含む組織とし、組織全体に占めるフェライトとグラファイトとセメンタイトの体積率の合計を95%以上とし、かつグラファイトとセメンタイト全体に占めるグラファイト率を5%以上にする必要がある。このとき、本発明では、グラファイト率が100%、すなわちセメンタイトが全てグラファイト化した場合も、同様な効果が得られるので、含むものとする。フェライト、グラファイト、セメンタイトの体積率の合計が95%未満、すなわちこれら以外の相の体積率が5%を超えると、加工性が低下する。また、グラファイト率が5%未満では、加工性が低下する。
ここで、フェライト、グラファイト、セメンタイトの体積率は、次のようにして求めた。すなわち、鋼板の圧延方向の板厚断面の板厚1/4位置を研磨後、ナイタール腐食し、光学顕微鏡により、倍率400倍で1視野あたり5箇所、10視野(合計50箇所)を観察し、これら画像をMedia Cybernetics社製の画像解析ソフト“Image Pro Plus ver.4.0”で画像解析処理して、フェライト、グラファイト、セメンタイトの面積を求め、その全観察面積に占める割合(面積率)をフェライト、グラファイト、セメンタイトの各々の体積率とした。また、グラファイトの面積(Sgr)の、グラファイトの面積(Sgr)とセメンタイトの面積(Scm)の和に占める割合(面積率)をグラファイトの体積率(グラファイト率)とした。すなわち、グラファイト率(%)は下記の式で表せる。
グラファイト率={Sgr/(Sgr+Scm)}×100
しかし、こうしたフェライトとグラファイトとセメンタイトの体積率の合計やグラファイト率を制御しただけでは、必ずしも優れた伸びフランジ性が得られない。すなわち、本発明では、優れた伸びフランジ性を確保するため、フェライト粒内に存在するセメンタイトとグラファイトの合計の体積率を15%以下とする必要がある。より好ましくは10%以下とする。
本発明者らは、優れた伸びフランジ性を得るため、種々検討を行った。以下に検討の一例を示す。C:0.55%、Si:0.01%、Mn:0.10%、P:0.003%、S:0.0006%、Al:0.005%、N:0.0018%、Ni:0.50%、B:0.0013%、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを1150℃に加熱後、5パスの粗圧延を行い、7パスの仕上圧延を仕上温度870℃で行って板厚4.0mmの熱延板とし、巻取温度520℃で巻取った後、酸洗し、720℃で40hrのバッチ焼鈍を施した。このとき、セメンタイトとグラファイトの量や分布状態を変える目的で、仕上圧延後巻取温度までの温度域を、平均冷却速度を空冷(5℃/s)〜200℃/sの範囲で変えて冷却した。そして、以下のようにして組織および伸びフランジ性を調査した。
また、上記と同様に圧延方向平行断面の板厚1/4位置を研磨・ナイタール腐食後、断面5箇所、各箇所で400倍の倍率で10視野(合計50視野)にわたり光学顕微鏡で観察し、上記した画像解析ソフトを用い、フェライト粒界上に存在するセメンタイトとグラファイトおよびフェライト粒内に存在するセメンタイトとグラファイトを識別し、フェライト粒界上に存在するセメンタイトとグラファイトの占有面積Son、およびフェライト粒内に存在するセメンタイトとグラファイトの占有面積Sinを測定し、次式からフェライト粒内に存在するセメンタイトとグラファイトの面積率を求め、それをセメンタイトとグラファイト全体に占めるフェライト粒内に存在するセメンタイトとグラファイトの体積率S(%)とした。すなわち、S(%)は下記の式で表せる。
S={Sin/(Son+Sin)}×100
なお、ここで、一部でもフェライト粒界上に存在する部分を有するセメンタイト粒あるいはグラファイト粒は、その一つのセメンタイト粒あるいはグラファイト粒全体の面積を、フェライト粒界上に存在するセメンタイト粒あるいはグラファイト粒の占有面積として測定し、また、フェライト粒界上に存在する部分を有しないセメンタイトあるいはグラファイト粒の面積を、フェライト粒内に存在するセメンタイト粒あるいはグラファイト粒の占有面積として測定した。
伸びフランジ性:穴拡げ試験用の試験片(100×100mm)を採取し、試験片の中心にポンチ径10mm、ダイス径11.6mm(クリアランス:板厚20%)の打抜き工具を用いて打抜いた。その後、打抜いた穴を円筒平底ポンチ(径50mmΦ、肩R8mm)により押し上げて穴拡げ加工し、穴縁に板厚貫通クラックが発生した時点での穴径d(mm)を測定して、次式から穴拡げ率λ(%)を計算し、同様の試験を6回実施して平均λ(%)を求めた。
λ=100×(d-10)/10
図1に、フェライト粒内に存在するセメンタイトとグラファイトの体積率Sと平均λとの関係を示す。フェライト粒内に存在するセメンタイトとグラファイトの体積率Sが15%以下になると、60%以上の平均λが得られ、優れた伸びフランジ性が得られることがわかる。
上記のような検討をもとに種々検討した結果、発明者らは、優れた伸びフランジ性を確保するためには、フェライト粒内に存在するセメンタイトとグラファイトの合計の体積率を15%以下とする必要があり、より好ましくは10%以下とする必要があることを見出したのである。このように組織を規定することにより、良好な伸びフランジ性が得られる理由としては、以下のように考えられる。すなわち、セメンタイトやグラファイトがフェライト粒内に多量に存在すると、打抜き加工時にセメンタイトやグラファイトとフェライトとの界面において微細な亀裂が発生しやすくなり、穴拡げ試験中の初期から伝播・結合し、板厚貫通の割れにつながりやすい。一方、フェライト粒界では炭素の拡散速度が速いため、凝集度粗大化がフェライト粒内よりも促進され、フェライト粒界上のセメンタイトやグラファイトは、フェライト粒内のそれらよりも粗大化しやすく、各セメンタイト粒、グラファイト粒の間隔が広くなりやすい。このため、フェライト粒界上のセメンタイトやグラファイトは、フェライト粒内のセメンタイトやグラファイトに比べ、亀裂伝播を遅くする。
3)製造条件
以下に、本発明の鋼板の好ましい製造条件を示す。なお、本発明の鋼板の製造方法は下記に限定されるものではない。
熱間圧延時の仕上温度:800〜950℃
熱間圧延時の仕上温度は、800℃未満では、圧延負荷の増大が著しくなり、950℃を超えると、生成するスケールが厚くなり酸洗性が低下するとともに、鋼板表層に脱炭層が生じる場合があるので、800〜950℃とする。
熱間圧延後の平均冷却速度:50℃/s以上
熱間圧延後の鋼板を、直ちに後述する冷却停止温度まで50℃/s以上の平均冷却速度で冷却すれば、初析フェライトの生成が抑制されてフェライトとセメンタイトが微細に析出する。そのため、巻取り後に行われる焼鈍時にフェライト粒界にCが拡散しやすくなり、フェライト粒界上にあるセメンタイトの凝集・粗大化さらにはグラファイト化が促進され、フェライト粒内のセメンタイトやグラファイトが減少して伸びフランジ性が向上する。また、熱間圧延でオーステナイト中に導入された圧延歪が、変態後の組織中に残存しやすくなり転位密度の増加をもたらす。その結果、焼鈍時に転位を核としたグラファイト形成が容易となり軟質化が進み、加工性が向上する。以上のことから、平均冷却速度は50℃/s以上、好ましくは80℃/s以上とする。平均冷却速度の上限は、特に規定する必要はないが、鋼板の形状の劣化を抑制して鋼板の形状を確保するため、200℃/s以下とすることが好ましい。
熱間圧延後の冷却における冷却停止温度:600℃以下
上記のような冷却速度によって冷却する必要のある最低温度、すなわち冷却停止温度は、600℃を超えると、巻取りまでの冷却中に初析フェライトが生成するとともに、パーライトが生成し、巻取り後の焼鈍時にフェライト粒内に存在するセメンタイトやグラファイトが増加して、伸びフランジ性の低下を招くので、600℃以下、好ましくは550℃以下とする。冷却停止温度の下限は、特に規定する必要はないが、鋼板の形状を確保するため、200℃以上とすることが好ましい。
巻取温度:550℃以下
冷却後の熱延板は直ちに巻取られるが、そのとき、巻取温度が550℃を超えると、パーライトが生成し、焼鈍時にフェライト粒内に存在するセメンタイトやグラファイトが増加して、伸びフランジ性が低下する。そのため、巻取温度は550℃以下とする。なお、上記した熱間圧延後の冷却の効果を十分に得るには、巻取温度は冷却停止温度よりも低温とすることが好ましい。また、熱延板の形状が劣化しやすいため、鋼板の形状を確保する上では巻取温度は200℃以上とすることが好ましく、より好ましくは450℃超えである。
焼鈍温度:720℃以下
巻取り後の熱延板には、酸洗などでスケール除去後、セメンタイトの球状化やグラファイト化を促進して、軟質化を図るために焼鈍が施される。そのとき、焼鈍温度は、720℃を超えると、冷却中にパーライトが生成し、伸びフランジ性の低下を招くので、720℃以下とする。また、焼鈍温度が600℃未満では、フェライト粒内に存在するセメンタイトやグラファイトが多くなり、伸びフランジ性が劣化する傾向にあるので、焼鈍温度は600℃以上とすることが好ましい。
なお、焼鈍時間は、特に限定する必要はないが、グラファイトを形成させ、フェライト粒内のセメンタイトやグラファイトを少なくするためには8hr以上とすることが、また、フェライト粒が過度に粗大化して、延性低下を招く恐れがあるため、100hr以下とすることが好ましい。
本発明の鋼を溶製するには、転炉、電気炉どちらも使用可能である。こうして溶製された鋼は、造塊-分塊圧延または連続鋳造によりスラブとされる。スラブは、通常、加熱(再加熱)された後、熱間圧延される。なお、連続鋳造で製造されたスラブの場合は、そのままあるいは温度低下を抑制する目的で保熱しつつ圧延する直送圧延を適用してもよい。スラブを再加熱して熱間圧延する場合は、スケールによる表面状態の劣化を避けるためにスラブ加熱温度を1280℃以下とすることが好ましい。熱間圧延は、粗圧延を省略して仕上圧延だけで行うこともできる。仕上温度を確保するため、熱間圧延中にシートバーヒータ等の加熱手段により被圧延材の加熱を行ってもよい。熱延板の板厚は、本発明の製造条件が維持できる限りにおいて特に制限はないが、1.0〜10.0mmが好適である。熱延板は、酸洗またはショットブラスト等により表面のスケールを除去後、熱延板焼鈍される。焼鈍後の鋼板は、必要に応じて調質圧延を行うことができる。
表1に示す組成の鋼No.A〜Sのスラブを1250℃に加熱し、表2に示す条件にて熱間圧延し、酸洗後、同じく表2に示す条件にて焼鈍を行い、板厚4.0mmの鋼板No.1〜22を作製した。そして、上記の方法により、グラファイト率、セメンタイトとグラファイト全体に占めるフェライト粒内に存在するセメンタイトとグラファイトの体積率S、伸びフランジ性の指標である平均λを求めた。また、圧延方向に沿ってJIS 5号引張試験片を採取し、引張試験を実施し、降伏応力YP、引張強度TS、伸びElを求めた。なお、同様な試験を各試料ににつき2回実施して平均値を求め、この平均値をその鋼板の特性値とした。
結果を表3に示す。本発明例の鋼板はいずれも、低YP、低TS、高El、高λであり、軟質で、伸びフランジ性も含めた加工性に優れていることがわかる。なお、本発明例の鋼板の組織は、表3に示すように、ほぼフェライトとセメンタイトおよびグラファイトからなり、これらの合計の体積率が95%以上であることを確認した。
Figure 0005157417
Figure 0005157417
Figure 0005157417
フェライト粒内に存在するセメンタイトとグラファイトの体積率Sと平均λとの関係を示す図である。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.3〜0.7%、Si:0.1%以下、Mn:0.15%未満、P:0.01%以下、S:0.01%以下、Al:0.05%以下、N:0.0050%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、フェライトとグラファイトとセメンタイトを含む組織を有し、かつ組織全体に占めるフェライトとグラファイトとセメンタイトの体積率の合計が95%以上、グラファイトとセメンタイト全体に占めるグラファイトの体積率(グラファイト率)が5%以上、グラファイトとセメンタイト全体に占めるフェライト粒内に存在するグラファイトとセメンタイトの体積率の合計が15%以下であることを特徴とする鋼板。
  2. さらに、質量%で、Ni:3.0%以下、B:0.005%以下、Cu:0.1%以下のうちから選ばれた少なくとも1種を含有する組成を有することを特徴とする請求項1に記載の鋼板。
  3. 請求項1または2に記載の組成を有する鋼を、800〜950℃の仕上温度で熱間圧延して熱延板とし、前記熱間圧延後の熱延板を、50℃/s以上の平均冷却速度で600℃以下の冷却停止温度まで冷却後、550℃以下の巻取温度で巻取り、前記巻取り後の熱延板を、720℃以下の焼鈍温度で焼鈍することを特徴とする鋼板の製造方法。
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