JP5157416B2 - 鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、自動車部品などの用途に好適な鋼板、特に、加工性および焼入れ性に優れた鋼板およびその製造方法に関する。
工具あるいは自動車部品(ギア、ミッション)などに使用される鋼板は、所望の形状に加工された後、焼入れ焼戻しなどの熱処理が施されて使用されることが多い。このような鋼板には、種々の複雑な形状に加工されるため優れた加工性が要求される。最近では、こうした部品に対する製造コスト低減の要求が強くなり、加工工程の省略や加工方法の変更を目的とした加工技術、例えば、高炭素鋼板を用いた自動車駆動系部品の増肉加工を可能にして、大幅な工程短縮を実現した複動加工技術などが開発され、一部実用化されている。それにともない上記自動車部品などに使用される鋼板には、加工性に対する要求が益々厳しくなっており、より軟質で高延性であることが求められている。例えば、冷間鍛造で加工する場合には、より低い降伏応力が求められている。
こうした要求に応えるべく、鋼中のCをグラファイト化させて加工性の向上を図る技術が検討されている。例えば、特許文献1には、質量%で、C:0.40〜0.80%、Si:0.20〜2.00%、Mn:0.20〜1.50%、Al:0.001〜0.150%、P:0.018%以下、S:0.010%以下、N:0.0050%以下で、残部Feおよび不可避的不純物からなり、フェライト相とグラファイト相を主体とした組織を有し、TS≦60kgf/mm2の軟質な材質を有する加工性、靭性、焼入れ性の良好な耕耘機爪部品用として好適な鋼板およびその製造方法が開示されている。また、特許文献2には、質量%で、C:0.10〜0.45%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.05〜0.50%、Nb:0.005〜0.1%、Al:0.01〜1.00%、N:0.002〜0.010%、B:3〜50ppm、Ca:0.001〜0.01%およびNi:0〜2.00%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、不純物中のP:0.012%以下、S:0.008%以下である熱延鋼板を、Ac1〜Ac3点の温度範囲で0.1〜10hr保持した後、20〜100℃/hrの冷却速度で常温まで冷却し、次いで650〜750℃の温度範囲で箱焼鈍することにより、鋼中のセメンタイトの50面積%以上をグラファイト化することを特徴とする加工性に優れた中炭素鋼板の製造方法が開示されている。さらに、特許文献3には、質量%で、C:0.20〜1.00%、Si:0.20%超え1.20%以下、Mn:0.05〜0.50%、N:0.005〜0.015%、B:0.2×N%〜0.8×N%、およびAl:0.05%未満で、かつ1.0×(N-B)%〜5.0×(N-B)%を満足する量含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、不純物としてP:0.020%以下、S:0.010%以下である化学組成と、フェライトとグラファイトおよびセメンタイトからなる組織を有する加工性の良好な高炭素薄鋼板およびその製造方法が開示されている。
特開平1-025946号公報 特開平7-258743号公報 特開平4-202744号公報
従来、鋼中のCをグラファイト化して加工性を向上するためには、特許文献1や3などにも記載のように、Siの多量の添加が必須とされていた。しかしながら、Siを添加することにより、フェライト自体が硬質化し、良好な加工性を得ることが困難となる。また、特許文献2のように、BおよびNbを添加した成分系とし、所定の条件で2回の焼鈍を行うことで、Si添加量を必ずしも多量としなくても、グラファイト化と高延性化を達成しようとする技術も開発されているが、2回の焼鈍を行うことはコストアップにつながる。ここで特許文献2は、鋼中のセメンタイトの50%以上をグラファイト化しようとする技術であり、実施例で開示される鋼の成分組成としては、Si量は多く、0.20%を超える量となっている。また、特許文献1〜3に記載の鋼板は、軟質ではあり、曲げ加工性や引張試験における伸び特性には優れているが、鋼板の焼入れ処理時に、加熱条件によってはグラファイトやセメンタイトが十分に溶解せず、焼入れ不良が生じる場合もある。
本発明は、軟質で、優れた加工性を有するとともに、優れた焼入れ性を有する鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来技術の課題について検討を重ねた結果、高炭素鋼において、Siの含有量を非常に低く、具体的には0.1%以下とした場合でも、グラファイトおよびセメンタイトの分布を制御することにより、必ずしもグラファイト化率を高くしなくても、良好な加工性が得られ、さらに良好な焼入れ性を確保できることを知見した。すなわち、C:0.3〜0.7質量%を含む鋼板の強度および焼入れ性に及ぼす組織の影響について鋭意研究を進めた結果、以下のことを見出したのである。
I)軟質化には、フェライトとグラファイトとセメンタイトを含む組織とし、組織全体に占めるフェライトとグラファイトとセメンタイトの体積率の合計を95%以上、グラファイトとセメンタイト全体に占めるグラファイトの体積率を5%以上にすることが効果的である。
II)焼入れ性の向上には、さらにグラファイトとセメンタイトの平均粒径を5μm以下にする必要がある。
III)グラファイトとセメンタイトの粒径の制御には、熱間圧延後の冷却条件が極めて重要である。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、質量%で、C:0.3〜0.7%、Si:0.1%以下、Mn:0.20%以下、P:0.01%以下、S:0.01%以下、Al:0.05%以下、N:0.0050%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、フェライトとグラファイトとセメンタイトを含む組織を有し、かつ組織全体に占めるフェライトとグラファイトとセメンタイトの体積率の合計が95%以上、グラファイトとセメンタイト全体に占めるグラファイトの体積率(グラファイト率)が5%以上、グラファイトとセメンタイトの平均粒径が5μm以下であることを特徴とする鋼板を提供する。
本発明の鋼板には、さらに、質量%で、Ni:3.0%以下、B:0.005%以下、Cu:0.1%以下のうちから選ばれた少なくとも1種が含有されることが好ましい。
本発明の鋼板は、上記の組成を有する鋼を、800〜950℃の仕上温度で熱間圧延して熱延板とし、前記熱間圧延後の熱延板を、50℃/s以上の平均冷却速度で500℃以下の冷却停止温度まで冷却後、450℃以下の巻取温度で巻取り、前記巻取り後の熱延板を、720℃以下の焼鈍温度で焼鈍する方法により製造できる。
本発明により、軟質で、優れた加工性を有するとともに、優れた焼入れ性を有する鋼板を製造できるようになった。特に、本発明の鋼板は、成分と熱間圧延後の冷却条件を制御するだけでよいので、安価で容易に製造可能である。また、本発明の鋼板は、軟質で、加工性に優れているので、自動車駆動系部品の増肉加工に適しており、複雑な形状の部品に適用しても、複数部品の加工や溶接が不要となり、自動車部品の生産性向上やコスト削減が図れることになる。さらに、本発明の鋼板では、高周波などでの加熱時にグラファイトとセメンタイトの未溶解に起因する焼入れ不良が起こることもない。
以下に、本発明である加工性に優れた鋼板およびその製造方法について詳細に説明する。なお、成分の量を表す「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
1)組成
C:0.3〜0.7%
C量が0.3%未満では、焼入れ後の硬さが確保できず、0.7%を超えると、たとえグラファイト化しても鋼板が硬質化し、加工性が低下する。このため、C量は0.3〜0.7%とする。
Si:0.1%以下
Si量が0.1%を超えると、フェライトが硬質化し、加工性が低下する。このため、Si量は0.1%以下、好ましくは0.05%以下とする。
Mn:0.20%以下
Mn量が0.20%を超えると、グラファイト形成を阻害するため、Mnは0.20%以下、好ましくは0.10%以下とする。
P:0.01%以下
Pは、粒界などに偏析し加工性を低下させるため、また、セメンタイトを安定化させてグラファイト形成を阻害する作用を有しているため、極力低減することが望ましい。このため、P量は0.01%以下、好ましくは0.008%以下とする。
S:0.01%以下
Sは、MnSなどの硫化物を形成して加工性を低下させるため、また、セメンタイトを安定化させてグラファイト形成を阻害する作用を有しているため、極力低減することが望ましい。このため、S量は0.01%以下、好ましくは0.007%以下とする。
Al:0.05%以下
Alは、固溶Nと結合してAlNを形成し、グラファイト形成を阻害する作用のある固溶Nの悪影響を無害化するとともに、AlNを核としてグラファイト形成を促進する元素である。このため、Al量は0.003%以上とすることが好ましいが、0.05%を超えると、鋼の清浄度が低下し、加工性を劣化させるので、Al量は0.05%以下、好ましくは0.04%以下とする。
N:0.0050%以下
N量が0.0050%を超えると、固溶Nのセメンタイトを安定化させる作用が顕著となり、グラファイト形成が阻害される。このため、N量は0.0050%、好ましくは0.0040%以下とする。
残部はFeおよび不可避的不純物であるが、以下の理由で、Ni:3.0%以下、B:0.005%以下、Cu:0.1%以下のうちから選ばれた少なくとも1種が含有されることが好ましい。
Ni:3.0%以下
Niは、グラファイト形成を促進させる元素であるとともに、焼入れ性の向上にも有効な元素であり、こうした効果を得るため0.1%以上含有されることが好ましいが、Ni量が3.0%を超えると、その効果は飽和する。このため、Ni量は3.0%以下、好ましくは0.1〜3.0%、より好ましくは0.3〜1.0%とする。
B:0.005%以下
Bは、Nと結合してBNを形成して、グラファイト形成の核として作用する有用な元素であるとともに、焼入れ性の向上にも有効に作用する元素であり、こうした効果を得るため0.0005%以上含有されることが好ましいが、B量が0.005%を超えると、その効果は飽和する。このため、B量は0.005%以下、好ましくは0.0005〜0.005%、より好ましくは0.0010〜0.0040%とする。
Cu:0.1%以下
Cuは、グラファイト形成を促進させる元素であるとともに、焼入れ性の向上にも有効な元素であり、こうした効果を得るため0.01%以上含有されることが好ましく、より好ましくは0.02%以上であるが、Cu量が0.1%を超えると、その効果は飽和する。このため、Cu量は0.1%以下とし、より好ましくは0.07%以下とする。
2)組織
鋼板の軟質化を図り、曲げ加工性や引張試験における伸び特性を向上させるには、フェライトとグラファイトとセメンタイトを含む組織とし、組織全体に占めるフェライトとグラファイトとセメンタイトの体積率の合計を95%以上とし、かつグラファイトとセメンタイト全体に占めるグラファイト率を5%以上にする必要がある。このとき、本発明では、グラファイト率が100%、すなわちセメンタイトが全てグラファイト化した場合も、同様な効果が得られるので、含むものとする。フェライト、グラファイト、セメンタイトの体積率の合計が95%未満、すなわちこれら以外の相の体積率が5%を超えると、加工性が低下する。また、グラファイト率が5%未満では、加工性が低下する。
ここで、フェライト、グラファイト、セメンタイトの体積率は、次のようにして求めた。すなわち、鋼板の圧延方向の板厚断面の板厚1/4位置を研磨後、ナイタール腐食し、光学顕微鏡により、倍率400倍で1視野あたり5箇所、10視野(合計50箇所)を観察し、これら画像をMedia Cybernetics社製の画像解析ソフト“Image Pro Plus ver.4.0”で画像解析処理して、フェライト、グラファイト、セメンタイトの面積を求め、その全観察面積に占める割合(面積率)をフェライト、グラファイト、セメンタイトの各々の体積率とした。また、グラファイトの面積(Sgr)の、グラファイトの面積(Sgr)とセメンタイトの面積(Scm)の和に占める割合(面積率)をグラファイトの体積率(グラファイト率)とした。すなわち、グラファイト率(%)は下記の式で表せる。
グラファイト率={Sgr/(Sgr+Scm)}×100
しかし、こうしたフェライトとグラファイトとセメンタイトの体積率の合計やグラファイト率を制御しただけでは、必ずしも優れた焼入れ性、特に高周波焼入れを行う際の焼入れ性が得られない。すなわち、本発明では、優れた焼入れ性を確保するため、セメンタイトとグラファイトの平均粒径を5μm以下とする必要がある。より好ましくは3μm以下とする。
本発明者らは、優れた焼入れ性を得るため、種々検討を行った。以下に検討の一例を示す。すなわち、C:0.55%、Si:0.01%、Mn:0.10%、P:0.003%、S:0.0006%、Al:0.005%、N:0.0018%、Ni:0.50%、B:0.0013%、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを1150℃に加熱後、5パスの粗圧延を行い、7パスの仕上圧延を仕上温度880℃で行って板厚4.0mmの熱延板とし、巻取温度430℃で巻取った後、酸洗し、720℃で40hrのバッチ焼鈍を施した。このとき、セメンタイトとグラファイトの粒径を変える目的で、仕上圧延後巻取温度までの温度域を、平均冷却速度を空冷(5℃/s)〜200℃/sの範囲で変えて冷却した。そして、以下のようにして組織および焼入れ性を調査した。
また、上記と同様に圧延方向平行断面の板厚1/4位置を研磨・ナイタール腐食後、断面5箇所、各箇所で1500倍の倍率で10視野(合計50視野)にわたり走査型電子顕微鏡で観察し、上記した画像解析ソフトを用い、セメンタイトあるいはグラファイトの外周上の2点とセメンタイトあるいはグラファイトの相当楕円(セメンタイトおよびグラファイトと同面積で、かつ一次および二次モーメントが等しい楕円)の重心を通る径を2度刻みに測定して平均して、各々の粒径を求めた。そして50視野観察して求めたセメンタイトおよびグラファイトの粒径を平均して、セメンタイトとグラファイトの平均粒径とした。
焼入れ性:直径100mmの円板試験片を採取し、高周波熱処理装置を用いて、円板試験片の外周端を周波数100kHzで1000℃に加熱後、直ちに水冷した。そして、熱処理後の円板試験片の円周方向に沿った8箇所の位置において、外周端より1.5mm内側の表裏面のヴィッカース硬度Hv[荷重:49N(=5kgf)]を測定し、最大Hvと最小Hvの差ΔHvを求めた。このΔHvが8以下であれば、焼入れ性に優れているといえる。
図1に、セメンタイトとグラファイトの平均粒径dとΔHvとの関係を示す。セメンタイトとグラファイトの平均粒径dが5μm以下になると、ΔHvが8以下となり、優れた焼入れ性が得られることがわかる。
上記のような検討をもとに種々検討した結果、発明者らは、優れた焼入れ性を確保するためには、セメンタイトとグラファイトの平均粒径を5μm以下とする必要があり、より好ましくは3μm以下とする必要があることを見出したのである。このように組織を規定することにより、優れた焼入れ性が得られる理由としては、以下のように考えられる。すなわち、セメンタイトやグラファイト平均粒径が5μm以下になると、高周波加熱時にセメンタイトやグラファイトがほぼ完全に溶解し、焼入れ後の硬度の均一化が図れるためと考えられる。
3)製造条件
以下に、本発明の鋼板の好ましい製造条件を示す。なお、本発明の鋼板の製造方法は下記に限定されるものではない。
熱間圧延時の仕上温度:800〜950℃
熱間圧延時の仕上温度は、800℃未満では、圧延負荷の増大が著しくなり、950℃を超えると、生成するスケールが厚くなり酸洗性が低下するとともに、鋼板表層に脱炭層が生じる場合があるので、800〜950℃とする。
熱間圧延後の平均冷却速度:50℃/s以上
熱間圧延後の鋼板は、直ちに後述する冷却停止温度まで50℃/s以上の平均冷却速度で冷却される。平均冷却速度が50℃/s未満だと、冷却中にフェライト粒の成長が起こりやすく、大きなフェライト粒が形成される。その後に行われる焼鈍時には、グラファイトやセメンタイトはフェライト粒界や介在物などを核として形成されると考えられるので、フェライト粒が大きいと、粒界を核として形成されるグラファイトやセメンタイトは粗大となり、焼入れ性が低下する。また、平均冷却速度が遅いと、粗大なパーライトが生成し、パーライトの分断、凝集、粗大化を経てグラファイトやセメンタイトは形成されるので、グラファイトやセメンタイトが粗大となり、焼入れ性が低下する。なお、平均冷却速度を50℃/s以上にすると、熱間圧延でオーステナイト中に導入された圧延歪が、変態後の組織中に残存しやすくなり転位密度の増加をもたらし、焼鈍時にこうした転位を核としてグラファイト形成を促進させるというメリットもある。以上のことから、平均冷却速度は50℃/s以上、好ましくは80℃/s以上とする。平均冷却速度の上限は、特に規定する必要はないが、鋼板の形状の劣化を抑制して鋼板の形状を確保するため、200℃/s以下とすることが好ましい。
熱間圧延後の冷却における冷却停止温度:500℃以下
上記のような冷却速度によって冷却する必要のある最低温度、すなわち冷却停止温度は、500℃を超えると、巻取りまでの冷却中に初析フェライトが生成するとともに、粗大なパーライトが生成し、巻取り後の焼鈍時にセメンタイトやグラファイトが粗大となり、焼入れ性の低下を招くので、500℃以下、好ましくは470℃以下とする。冷却停止温度の下限は、特に規定する必要はないが、鋼板の形状を確保するため、200℃以上とすることが好ましい。
巻取温度:450℃以下
冷却後の熱延板は直ちに巻取られるが、そのとき、巻取温度が450℃を超えると、粗大なパーライトが生成し、焼鈍時にセメンタイトやグラファイトが粗大となり、焼入れ性が低下する。そのため、巻取温度は450℃以下とする。なお、上記した熱間圧延後の冷却の効果を十分に得るには、巻取温度は冷却停止温度よりも低温とすることが好ましい。また、熱延板の形状が劣化しやすいため、巻取温度は200℃以上とすることが好ましい。
焼鈍温度:720℃以下
巻取り後の熱延板には、酸洗などでスケール除去後、セメンタイトの球状化やグラファイト化を促進して、軟質化を図るために焼鈍が施される。そのとき、焼鈍温度は、720℃を超えると、冷却中に粗大なパーライトが生成し、焼入れ性の低下を招くので、720℃以下とする。また、焼鈍温度が600℃未満では、焼鈍時間が極端に長くなるので、焼鈍温度は600℃以上とすることが好ましい。
なお、焼鈍時間は、特に限定する必要はないが、グラファイトを形成させるため8hr以上とすることが、また、フェライト粒が過度に粗大化して、延性低下を招く恐れがあるため、100hr以下とすることが好ましい。
本発明の鋼を溶製するには、転炉、電気炉どちらも使用可能である。こうして溶製された鋼は、造塊-分塊圧延または連続鋳造によりスラブとされる。スラブは、通常、加熱(再加熱)された後、熱間圧延される。なお、連続鋳造で製造されたスラブの場合は、そのままあるいは温度低下を抑制する目的で保熱しつつ圧延する直送圧延を適用してもよい。スラブを再加熱して熱間圧延する場合は、スケールによる表面状態の劣化を避けるためにスラブ加熱温度を1280℃以下とすることが好ましい。熱間圧延は、粗圧延を省略して仕上圧延だけで行うこともできる。仕上温度を確保するため、熱間圧延中にシートバーヒータ等の加熱手段により被圧延材の加熱を行ってもよい。熱延板の板厚は、本発明の製造条件が維持できる限りにおいて特に制限はないが、1.0〜10.0mmが好適である。焼鈍後の鋼板は、必要に応じて調質圧延を行うことができる。
表1に示す組成の鋼No.A〜Sのスラブを1250℃に加熱し、表2に示す条件にて熱間圧延し、酸洗後、同じく表2に示す条件にて焼鈍を行い、板厚4.0mmの鋼板No.1〜22を作製した。そして、上記の方法により、グラファイト率、セメンタイトとグラファイトの平均粒径、および焼入れ性を評価するΔHvを求めた。また、圧延方向に沿ってJIS 5号引張試験片を採取し、引張試験を実施し、降伏応力YP、引張強度TS、伸びElを求めた。
結果を表3に示す。本発明例の鋼板はいずれも、低YP、低TS、高El、低ΔHvであり、軟質で、加工性に優れ、さらに焼入れ性にも優れていることがわかる。なお、本発明例の鋼板の組織は、表3に示すように、ほぼフェライト、セメンタイトおよびグラファイトからなり、これらの合計の体積率が95%以上であることを確認した。
Figure 0005157416
Figure 0005157416
Figure 0005157416
セメンタイトとグラファイトの平均粒径dとΔHvとの関係を示す図である。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.3〜0.7%、Si:0.1%以下、Mn:0.20%以下、P:0.01%以下、S:0.01%以下、Al:0.05%以下、N:0.0050%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、フェライトとグラファイトとセメンタイトを含む組織を有し、かつ組織全体に占めるフェライトとグラファイトとセメンタイトの体積率の合計が95%以上、グラファイトとセメンタイト全体に占めるグラファイトの体積率(グラファイト率)が5%以上、グラファイトとセメンタイトの平均粒径が5μm以下であることを特徴とする鋼板。
  2. さらに、質量%で、Ni:3.0%以下、B:0.005%以下、Cu:0.1%以下のうちから選ばれた少なくとも1種を含有する組成を有することを特徴とする請求項1に記載の鋼板。
  3. 請求項1または2に記載の組成を有する鋼を、800〜950℃の仕上温度で熱間圧延して熱延板とし、前記熱間圧延後の熱延板を、50℃/s以上の平均冷却速度で500℃以下の冷却停止温度まで冷却後、450℃以下の巻取温度で巻取り、前記巻取り後の熱延板を、720℃以下の焼鈍温度で焼鈍することを特徴とする鋼板の製造方法。
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