JP5157416B2 - 鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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I)軟質化には、フェライトとグラファイトとセメンタイトを含む組織とし、組織全体に占めるフェライトとグラファイトとセメンタイトの体積率の合計を95%以上、グラファイトとセメンタイト全体に占めるグラファイトの体積率を5%以上にすることが効果的である。
II)焼入れ性の向上には、さらにグラファイトとセメンタイトの平均粒径を5μm以下にする必要がある。
III)グラファイトとセメンタイトの粒径の制御には、熱間圧延後の冷却条件が極めて重要である。
C:0.3〜0.7%
C量が0.3%未満では、焼入れ後の硬さが確保できず、0.7%を超えると、たとえグラファイト化しても鋼板が硬質化し、加工性が低下する。このため、C量は0.3〜0.7%とする。
Si量が0.1%を超えると、フェライトが硬質化し、加工性が低下する。このため、Si量は0.1%以下、好ましくは0.05%以下とする。
Mn量が0.20%を超えると、グラファイト形成を阻害するため、Mnは0.20%以下、好ましくは0.10%以下とする。
Pは、粒界などに偏析し加工性を低下させるため、また、セメンタイトを安定化させてグラファイト形成を阻害する作用を有しているため、極力低減することが望ましい。このため、P量は0.01%以下、好ましくは0.008%以下とする。
Sは、MnSなどの硫化物を形成して加工性を低下させるため、また、セメンタイトを安定化させてグラファイト形成を阻害する作用を有しているため、極力低減することが望ましい。このため、S量は0.01%以下、好ましくは0.007%以下とする。
Alは、固溶Nと結合してAlNを形成し、グラファイト形成を阻害する作用のある固溶Nの悪影響を無害化するとともに、AlNを核としてグラファイト形成を促進する元素である。このため、Al量は0.003%以上とすることが好ましいが、0.05%を超えると、鋼の清浄度が低下し、加工性を劣化させるので、Al量は0.05%以下、好ましくは0.04%以下とする。
N量が0.0050%を超えると、固溶Nのセメンタイトを安定化させる作用が顕著となり、グラファイト形成が阻害される。このため、N量は0.0050%、好ましくは0.0040%以下とする。
Niは、グラファイト形成を促進させる元素であるとともに、焼入れ性の向上にも有効な元素であり、こうした効果を得るため0.1%以上含有されることが好ましいが、Ni量が3.0%を超えると、その効果は飽和する。このため、Ni量は3.0%以下、好ましくは0.1〜3.0%、より好ましくは0.3〜1.0%とする。
Bは、Nと結合してBNを形成して、グラファイト形成の核として作用する有用な元素であるとともに、焼入れ性の向上にも有効に作用する元素であり、こうした効果を得るため0.0005%以上含有されることが好ましいが、B量が0.005%を超えると、その効果は飽和する。このため、B量は0.005%以下、好ましくは0.0005〜0.005%、より好ましくは0.0010〜0.0040%とする。
Cuは、グラファイト形成を促進させる元素であるとともに、焼入れ性の向上にも有効な元素であり、こうした効果を得るため0.01%以上含有されることが好ましく、より好ましくは0.02%以上であるが、Cu量が0.1%を超えると、その効果は飽和する。このため、Cu量は0.1%以下とし、より好ましくは0.07%以下とする。
鋼板の軟質化を図り、曲げ加工性や引張試験における伸び特性を向上させるには、フェライトとグラファイトとセメンタイトを含む組織とし、組織全体に占めるフェライトとグラファイトとセメンタイトの体積率の合計を95%以上とし、かつグラファイトとセメンタイト全体に占めるグラファイト率を5%以上にする必要がある。このとき、本発明では、グラファイト率が100%、すなわちセメンタイトが全てグラファイト化した場合も、同様な効果が得られるので、含むものとする。フェライト、グラファイト、セメンタイトの体積率の合計が95%未満、すなわちこれら以外の相の体積率が5%を超えると、加工性が低下する。また、グラファイト率が5%未満では、加工性が低下する。
グラファイト率={Sgr/(Sgr+Scm)}×100
しかし、こうしたフェライトとグラファイトとセメンタイトの体積率の合計やグラファイト率を制御しただけでは、必ずしも優れた焼入れ性、特に高周波焼入れを行う際の焼入れ性が得られない。すなわち、本発明では、優れた焼入れ性を確保するため、セメンタイトとグラファイトの平均粒径を5μm以下とする必要がある。より好ましくは3μm以下とする。
以下に、本発明の鋼板の好ましい製造条件を示す。なお、本発明の鋼板の製造方法は下記に限定されるものではない。
熱間圧延時の仕上温度は、800℃未満では、圧延負荷の増大が著しくなり、950℃を超えると、生成するスケールが厚くなり酸洗性が低下するとともに、鋼板表層に脱炭層が生じる場合があるので、800〜950℃とする。
熱間圧延後の鋼板は、直ちに後述する冷却停止温度まで50℃/s以上の平均冷却速度で冷却される。平均冷却速度が50℃/s未満だと、冷却中にフェライト粒の成長が起こりやすく、大きなフェライト粒が形成される。その後に行われる焼鈍時には、グラファイトやセメンタイトはフェライト粒界や介在物などを核として形成されると考えられるので、フェライト粒が大きいと、粒界を核として形成されるグラファイトやセメンタイトは粗大となり、焼入れ性が低下する。また、平均冷却速度が遅いと、粗大なパーライトが生成し、パーライトの分断、凝集、粗大化を経てグラファイトやセメンタイトは形成されるので、グラファイトやセメンタイトが粗大となり、焼入れ性が低下する。なお、平均冷却速度を50℃/s以上にすると、熱間圧延でオーステナイト中に導入された圧延歪が、変態後の組織中に残存しやすくなり転位密度の増加をもたらし、焼鈍時にこうした転位を核としてグラファイト形成を促進させるというメリットもある。以上のことから、平均冷却速度は50℃/s以上、好ましくは80℃/s以上とする。平均冷却速度の上限は、特に規定する必要はないが、鋼板の形状の劣化を抑制して鋼板の形状を確保するため、200℃/s以下とすることが好ましい。
上記のような冷却速度によって冷却する必要のある最低温度、すなわち冷却停止温度は、500℃を超えると、巻取りまでの冷却中に初析フェライトが生成するとともに、粗大なパーライトが生成し、巻取り後の焼鈍時にセメンタイトやグラファイトが粗大となり、焼入れ性の低下を招くので、500℃以下、好ましくは470℃以下とする。冷却停止温度の下限は、特に規定する必要はないが、鋼板の形状を確保するため、200℃以上とすることが好ましい。
冷却後の熱延板は直ちに巻取られるが、そのとき、巻取温度が450℃を超えると、粗大なパーライトが生成し、焼鈍時にセメンタイトやグラファイトが粗大となり、焼入れ性が低下する。そのため、巻取温度は450℃以下とする。なお、上記した熱間圧延後の冷却の効果を十分に得るには、巻取温度は冷却停止温度よりも低温とすることが好ましい。また、熱延板の形状が劣化しやすいため、巻取温度は200℃以上とすることが好ましい。
巻取り後の熱延板には、酸洗などでスケール除去後、セメンタイトの球状化やグラファイト化を促進して、軟質化を図るために焼鈍が施される。そのとき、焼鈍温度は、720℃を超えると、冷却中に粗大なパーライトが生成し、焼入れ性の低下を招くので、720℃以下とする。また、焼鈍温度が600℃未満では、焼鈍時間が極端に長くなるので、焼鈍温度は600℃以上とすることが好ましい。
Claims (3)
- 質量%で、C:0.3〜0.7%、Si:0.1%以下、Mn:0.20%以下、P:0.01%以下、S:0.01%以下、Al:0.05%以下、N:0.0050%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、フェライトとグラファイトとセメンタイトを含む組織を有し、かつ組織全体に占めるフェライトとグラファイトとセメンタイトの体積率の合計が95%以上、グラファイトとセメンタイト全体に占めるグラファイトの体積率(グラファイト率)が5%以上、グラファイトとセメンタイトの平均粒径が5μm以下であることを特徴とする鋼板。
- さらに、質量%で、Ni:3.0%以下、B:0.005%以下、Cu:0.1%以下のうちから選ばれた少なくとも1種を含有する組成を有することを特徴とする請求項1に記載の鋼板。
- 請求項1または2に記載の組成を有する鋼を、800〜950℃の仕上温度で熱間圧延して熱延板とし、前記熱間圧延後の熱延板を、50℃/s以上の平均冷却速度で500℃以下の冷却停止温度まで冷却後、450℃以下の巻取温度で巻取り、前記巻取り後の熱延板を、720℃以下の焼鈍温度で焼鈍することを特徴とする鋼板の製造方法。
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