JP4681290B2 - 高強度鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
[数1]
dL/dS≧3 …(1)
[数2]
s/A(ave)≦0.6 …(2)
[数3]
F1(Q)=0.65Si+3.1Mn+2Cr+2.3Mo
+0.3Ni+2000B …(3)
F1(Q)≧−40C+6 …(4)
F1(Q)≧25C−2.5 …(5)
0.02≦C≦0.3 …(6)
[数4]
F2(S)=112Si+98Mn+218P+317Al+9Cr+56Mo
+8Ni+1417B …(7)
F3(P)=500×Nb+1000×Ti …(8)
F2(S)+F3(P)≦360 … (9)
[数5]
D=d×t/t0≦1 …(10)
(d:硬質第2相の平均間隔(μm)、t:冷間圧延後の板厚、t0:熱間圧延後冷間圧延前の板厚)
680<40×log(ts)+Ts<770 …(11)
(ts:保持時間(秒)、Ts:保持温度(℃)、log(ts)はtsの常用対数)
F1(Q)=0.65Si+3.1Mn+2Cr+2.3Mo
+0.3Ni+2000B …(3)
F1(Q)≧−40C+6 …(4)
F1(Q)≧25C−2.5 …(5)
0.02≦C≦0.3 …(6)
F2(S)=112Si+98Mn+218P+317Al+9Cr+56Mo
+8Ni+1417B …(7)
F3(P)=500×Nb+1000×Ti …(8)
F2(S)+F3(P)≦360 … (9)
<(3)式〜(5)式の規定理由>
F1(Q)は、鋼の焼入れ性を表す指数であり、(3)式に示すように定められ、各添加元素の構成比率(質量%)から計算するものである。
Cとは、全C量から、第2群元素(Nb、Ti)と結合しているCを減じた、固溶炭素量を意味し、下記(12)式で計算される値である。なお、(12)式中、それぞれ添加元素には、その添加元素の構成比率(質量%)が代入されるものとする。
C=全C量−(12/92.9×Nb+12/47.9×Ti) …(12)
F2(S)は、第1元素群及び第3元素群の固溶強化作用により、高強度鋼板が強化される量を、MPa単位で表したものであり、(7)式に従い添加元素の質量%から計算する。(7)式のそれぞれの元素に乗じられている係数は、下記の考え方に基づいて下記(13)式から算出したものである。
各元素の係数=|r(X)−r(Fe)|/r(Fe)×M(Fe)/M(X) ×1000 …(13)
ここで、r(X)は、当該元素の原子半径、r(Fe)は鉄の原子半径、M(X)は当該元素の原子量、及びM(Fe)は鉄の原子量である。
次に、本発明の高強度鋼板における、各化学成分の限定理由について述べる。なお、以下に示す各元素の含有量についても、単位は全て質量%であるが、便宜上、単に%と記載する。また、Cについては、(6)式で個別に限定し、その他の元素については、ほとんどの場合に(4)式,(5)式によって下限値が、(9)式,(14)式,(15)式によって上限値が個別に限定されるが、さらに、個別に上限値を設定する。
[数9]
Cr≦1.5 …(14)
Mo≦0.7 …(15)
Cの添加により、フェライトとオーステナイトとからなる混合組織を高温で生じさせることができ、この混合組織の急冷によりマルテンサイト、ベイナイト、残留オーステナイトの硬質第2相を形成することができる。このため、Cは本発明では最も重要な元素である。
これらの元素は、鋼の焼入性向上と固溶強化による鋼の強度向上とを目的として添加する。添加量は、上記(4)式、(5)式、(9)式、(14)式及び(15)式を満たすように調整する。以下に、各元素の添加量の上限値及び下限値の限定理由を説明する。
Si添加量が0.2%未満の場合は、焼入性向上の効果が明瞭に現れない。このため、下限値は0.2%とする。また、Si添加量が5%を超えると、SiがFeと結合して、結晶構造がD03型又はB2型の金属間化合物であるFe3Siが現れ、鋼の延性を低下させる。このため、上限値は5%とする。
Mn添加量が0.1%未満の場合は、焼入性向上の効果が明瞭に現れない。このため、下限値は0.1%とする。また、Mn添加量が3.5%を超えると、室温においても、フェライトに加えてオーステナイトが安定相として存在する。オーステナイトは強度が低く、鋼全体の強度を低下させるため好ましくない。このため、上限値は3.5%とする。
Cr添加量が0.1%未満の場合は、焼入性向上の効果が明瞭に現れない。このため、下限値は0.1%とする。また、Cr添加量が1.5%を超えると、鋼中のCとCrとが結合して炭化物になるため、添加量に見合った固溶Crが得られず、焼入性向上も望めない。このため、上限値は、Crが固溶状態で存在できる1.5%とする。
Mo添加量が0.1%未満の場合は、焼入性向上の効果が明瞭に現れない。このため、下限値は0.1%とする。また、Mo添加量が0.7%を超えると、鋼中のCとMoとが結合して炭化物になるため、添加量に見合った固溶Moが得られず、焼入性向上も望めない。このため、上限値は、Moが固溶状態で存在できる0.7%とする。
Ni添加量が0.2%未満の場合は、焼入性向上の効果が明瞭に現れない。このため、下限値は0.2%とする。また、Ni添加量が10%を超えると、室温においても、フェライトに加えてオーステナイトが安定相として存在する。オーステナイトは強度が低く、鋼全体の強度を低下させるため好ましくない。このため、上限値は10%とする。
B添加量が0.0005%未満の場合は、焼入性向上の効果が明瞭に現れない。このため、下限は0.05%とする。また、フェライトへのBの固溶限自体は非常に小さく、Bは添加量が少ない場合は主に鋼の結晶粒界に偏析して存在すると考えられるが、B添加量が0.003%を超えると粒界だけではBの存在サイトとしては不十分になり、金属間化合物であるFe2Bが現れて鋼の延性を低下させる。このため、上限値は0.003%とする。
これらの元素は、結晶粒の微細化及び析出強化による鋼の強度向上を目的として、必要に応じて添加することができる。以下、各元素の添加量の上限値及び下限値の限定理由を説明する。
Nb添加量が0.01%未満の場合は、微細化及び析出強化の効果が明瞭に現れない。このため、下限値は0.01%とする。また、上記(8)式から明らかなように、Nb添加量が0.72%を超えると、NbCによる析出強化量だけで360MPaとなり、上記(9)式を満足しないため、Nbの上限値は0.72%に限定される。
Ti添加量が0.01%未満の場合は、微細化及び析出強化の効果が明瞭に現れない。このため、下限値は0.01%とする。また、上記(8)式から明らかなように、Ti添加量が0.36%を超えると、TiCによる析出強化量だけで360MPaとなり、上記(9)式を満足しないため、Tiの上限値は0.36%に限定される。
これらの元素は、鋼の強化元素として、必要に応じて添加することができる。以下に、各元素の添加量の上限値及び下限値の限定理由を説明する。
Pの添加は、鋼の固溶強化元素として有効であるが、添加量が0.03%未満の場合は、固溶強化の効果が明瞭に現れない。このため、下限値は0.03%とする。また、P添加量が2%を超えると、金属間化合物であるFe3Pが生成し、鋼の延性を低下させる。このため、上限値は2%とする。
Alは、固溶強化元素であるとともに、脱酸剤としての効果を有し、鋼をいわゆる「キルド鋼」にすることができる。また、Alは、製鋼工程において鋼中の溶存酸素と結合してアルミナとして浮上し、これを除去することで鋼の延性や靭性を向上させることができる。このため、Alは必要に応じて添加することができる。但し、添加量が0.01%未満の場合は、脱酸剤としての効果も、固溶強化元素としての効果も明瞭に現れない。このため、下限値は0.01%とする。一方、Al添加量が18%を超えると金属間化合物であるFe3Alが生成し、鋼の延性を低下させる。このため、上限値は18%とする。
次に、本発明の高強度鋼板の金属組織について、詳細に説明する。
本発明の高強度鋼板の金属組織は、下記1)〜4)に記載の要件を同時に満足するものである。
1)金属組織は、フェライト相と硬質第2相(セメンタイト、パーライト、マルテンサイト、ベイナイト、残留オーステナイトのうちの少なくとも1種)とからなる。また、鋼板の、圧延方向に平行な断面を切り出し、この断面をナイタール等でエッチングした後に、走査型電子顕微鏡で倍率5000倍で撮影した2次電子像(以下、「SEM写真」と称する)から測定した硬質第2相の面積率が3〜30%である。
[数10]
s/A(ave)≦0.6…(2)
[数11]
dL/dS≧3 …(1)
[数12]
Di=2(Si/3.14)1/2 …(16)
フェライトをナノ結晶粒とミクロ結晶粒との混合組織とすることで、高い静動差を付与できるメカニズムは、以下のとおりである。即ち、本発明の高強度鋼板は、結晶粒径が1.2μm以下のナノ結晶粒である非常に強度の高い部分と、結晶粒径が1.2μmを超える通常の強度を有するミクロ結晶粒とからなる、1つの複合組織鋼板である。本発明の高強度鋼板の静的な変形挙動については、一般的な複合組織鋼板の変形挙動と同様であり、静的な変形では、まず材料の最も変形し易い部分、具体的にはミクロ結晶粒内部又はミクロ結晶粒内のナノ結晶粒との界面付近から変形が始まる。その後、変形が徐々に進行するが、ミクロ結晶粒が変形の主体を担っている。このため、ミクロ結晶粒のみの場合と同等な応力で変形が進行し、強度と延性とのバランスも一般的なものとなる。
スラブ溶製は、通常の方法で所定成分にて行う。工業的には、溶銑をそのまま用いるか、又は市中スクラップや鋼の製造工程で生じた中間スクラップ等の冷鉄源を電気炉や転炉で溶解した後、酸素精錬し、連続鋳造又はバッチの分塊鋳造にて鋳造する。パイロットプラントや実験室等の小型設備においても、電解鉄やスクラップ等の鉄素材を、真空中又は大気中で加熱炉によって溶解し、所定の合金元素を添加した後、鋳型に注入することで素材を得ることができる。
熱間圧延は、本発明の高強度鋼板の製造方法において、最初の重要なプロセスである。本発明の製造方法では、熱間圧延後の結晶組織を、フェライトが主相で、硬質第2相を面積率で10〜85%の範囲で含有する複合組織とし、さらに板厚方向に測定した硬質第2相の平均間隔を5μm以下とする。
本発明の高強度鋼板の金属組織は、フェライト相中に占めるナノ結晶粒が、面積率で15〜90%であるものである。この金属組織を得るためには、以下の処理を行う。即ち、まず、冷間圧延前の金属組織をフェライトと硬質第2相の複合組織とする。次いで、冷間圧延によって軟質なフェライトに大きな剪断歪みを付与する。最後に、この部分を引き続き行われる焼鈍によって、結晶粒径1.2μm以下のナノ結晶粒とする。
マルテンサイトは、Cを過飽和に含むフェライトであり、Cによる結晶格子の歪みに起因した高い転位密度のために、硬度が高い。しかしながら、マルテンサイトのC含有量は、Fe−C平衡状態図におけるFeとFe3Cとの共晶点のC濃度である約0.8%程度が最大であり、Fe3Cの化学式で示されるセメンタイトに比して非常に少ない。このため、冷間圧延後の焼鈍工程においては、セメンタイトを析出しながらフェライトに変化する。従って、マルテンサイトは、フェライトを主体としながら硬度の高い組織であるという、本発明における硬質第2相としての適格を有している。
熱間圧延後の組織における硬質第2相の平均間隔をd(μm)とし、熱間圧延後(冷間圧延前)の板厚をt0、冷間圧延後の板厚をtとした場合に、加工度指数Dが下記(10)式を満たす条件で、冷間圧延を行う。
[数13]
D=d×t/t0≦1 …(10)
冷延後の素材を熱処理して加工歪みを除去するとともに、目的の金属組織を作り込む工程である。焼鈍は、冷延後の素材を加熱・保持・冷却する過程よりなるが、保持温度Ts(℃)と、Tsにて保持する時間ts(秒)との関係が、下記(11)式を満たすものとする。
[数14]
680<−40×log(ts)+Ts<770…(11)
(ts:保持時間(秒)、Ts:保持温度(℃)、log(ts)はtsの常用対数)
さらに、通常の冷間圧延によってナノ結晶粒の組織が得られるメカニズムについて以下に述べる。
まず、従来からの試みとして、冒頭に述べた繰り返し重ね圧延について述べる。繰り返し重ね圧延は、板状のサンプルに大きな歪みを与え、ナノ結晶粒の組織を得るのに有効な方法である。例えば、日本塑性加工学会誌(第40巻、第467号、1190頁)に、アルミニウムの例が示されている。圧延ロールを潤滑して圧延を行った場合は、方位差の少ないサブグレイン組織しか得られず、圧延ロールを潤滑しない場合はナノ結晶粒が得られる。
[数15]
D=d×t/t0≦1 …(10)
発明例1〜26については、各鋼板ともに、優れた諸材料特性を示し、特に、静動差が大きい(総じて170MPa以上)ことが判る。このため、各発明例の鋼板については、高い高速変形強度及び衝撃エネルギー吸収性能と、高い加工性とを両立させることができるため、自動車のボディ等に使用することができる。
これに対し、比較例3〜26については、各鋼板ともに、静動差が小さい(総じて170MPa未満)ことが判る。このため、これらの比較例の鋼板については、高い高速変形強度及び衝撃エネルギー吸収性能と、高い加工性とを両立することができないため、自動車のボディ等に使用することは好ましくない。なお、比較例1,2については、170MPa以上の静動差が得られているものの、冷間圧延における圧延率が極めて高いため、圧延機に大きな負荷をかけることとなり、製造上好ましくない。
本発明では、以上に示した製造方法のみならず、焼鈍時に実際にめっきを付着させて、溶融亜鉛めっき鋼板や合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。また、耐食性を向上させる目的で、溶融亜鉛めっきを施した後に、さらに電気めっきラインにて鉄めっきを施すこともできる。さらに、本発明鋼の焼鈍の後に、電気めっきラインにて表面にめっきを施すことで、電気亜鉛めっき鋼板や合金化(Ni−Zn)電気亜鉛めっき鋼板を得ることができる。加えて、耐食性向上を目的として、有機皮膜処理を施すこともできる。
Claims (3)
- 質量%で、固溶Cで0.02〜0.3%、Si:0.2〜5%、Mn:0.1〜3.5%、Cr:0.1〜1.5%、Mo:0.1〜0.7%、Ni:0.2〜0.67%、Nb:0.01〜0.72%、Ti:0.01〜0.36%、P:0.03〜0.097%、Al:0.01〜0.089%を含有するとともにB:0.003%以下を任意的に含有し、残部:Feおよび不可避不純物からなる組成を有し、フェライト相と前記フェライト相中に分散する硬質第2相とからなる金属組織を呈し、前記金属組織に占める硬質第2相の面積率が3〜30%であり、前記フェライト相のみに占める、結晶粒径が1.2μm以下のフェライトの面積率が15〜90%であり、前記フェライト相中において、結晶粒径が1.2μm以下のフェライトの平均粒径dSと結晶粒径が1.2μmを超えるフェライトの平均粒径dLとが下記(1)式を満たし、
鋼板の圧延方向に平行な断面において、3μm四方の正方形格子を任意に9個以上取り出した場合に、各格子での硬質第2相の面積率をAi(i=1,2,3,…)とするとき、Aiの平均値A(ave)と標準偏差sとが下記(2)式を満たし、
C(全C量からNb、Tiと結合しているC量を減じた固溶炭素量)が、下記(3)式を前提に、下記(4)式〜(6)式を満たし、
下記(7)式、(8)式を前提に、下記(9)式を満たすことを特徴とする高強度鋼板。
[数1]
dL/dS≧3 …(1)
[数2]
s/A(ave)≦0.6 …(2)
[数3]
F1(Q)=0.65Si+3.1Mn+2Cr+2.3Mo
+0.3Ni+2000B …(3)
F1(Q)≧−40C+6 …(4)
F1(Q)≧25C−2.5 …(5)
0.02≦C≦0.3 …(6)
[数4]
F2(S)=112Si+98Mn+218P+317Al+9Cr+56Mo
+8Ni+1417B …(7)
F3(P)=500×Nb+1000×Ti …(8)
F2(S)+F3(P)≦360 … (9)
ただし、(3)式、(7)式、(8)式中、各添加元素には、その添加元素の構成比率(質量%)を代入するものとする - 請求項1に記載の高強度鋼板の製造方法であって、金属組織がフェライト相と硬質第2相とからなる熱間圧延鋼板に、加工度指数Dが下記(10)式を満たす冷間圧延を行い、その後下記(11)式を満たす焼鈍を行うことを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
[数5]
D=d×t/t0≦1 …(10)
(d:硬質第2相の平均間隔(μm)、t:冷間圧延後の板厚、t0:熱間圧延後冷間圧延前の板厚)
680<40×log(ts)+Ts<770 …(11)
(ts:保持時間(秒)、Ts:保持温度(℃)、log(ts)はtsの常用対数) - 前記熱間圧延鋼板の板厚方向において、硬質第2相の平均間隔が5μm以下であることを特徴とする請求項2に記載の高強度鋼板の製造方法。
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