JP2008095639A - 圧縮機用ダイアフラム - Google Patents

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忠宏 梅本
Junji Ouchi
淳司 大内
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則雄 富澤
Takayuki Miyagawa
高行 宮川
Shohei Nakama
昌平 中間
Kazuhiko Adachi
和彦 安達
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Abstract

【課題】ダイアフラムの素材である耐食性金属材料の疲労強度を改善するとともに、該材料に含まれる不純物の粒界濃度を低下させて耐腐食性を改善することにより、前記ダイアフラムの耐用年数を向上させる。
【解決手段】耐腐食性金属材料により形成された圧縮機用ダイアフラム3は、互いに対向する窪み4,5を有するガスプレート1とオリフイスプレート2により挟持されており、前記金属材料の平均結晶粒径d(mm)が下記(1)式を満足することを特徴とする。
1/d0.5 ≧ 15 (1)
【選択図】 図1

Description

この発明は、水素圧縮機などに用いられる、圧縮機用ダイアフラムに関するものである。
産業界では、可燃性、毒性、腐食性、放射能などを有するガスを操作する際、そのリークは大きな問題となる。このような場合、ピストン式の圧縮機などでは、精密に作られたものでも、その摺動部からの微量のリークがあるため用いることは出来ず、ダイアフラム式の圧縮機が用いられる。
従来のダイアフラム式圧縮機は、図1に示すように、ガスプレート1とオリフィスプレート2及びこれらに挟まれているダイアフラム3から構成される。この2枚のプレートは、互いに向かい合っている面が、窪み4,5を持っている。オリフィスプレート側の窪み5には、通常作動油が満たされ、ガスプレート側の窪み4には、プロセスガスGが入り、両者はダイアフラム3によって隔離されている。
オリフィスプレート2側の油圧を下げ(時には負圧とし)、ダイアフラム3をオリフィスプレート2内面に密着させると、ガスプレート1側の体積は増加し、該ガスGが吸入弁6を通り、その空間に吸い込まれる。この時、吐出弁7は閉じられている。
次に、油圧を増加させると、ダイアフラム3は徐々にガスプレート1側に変形し、最終的には、ガスプレート1内面に密着する。この操作により、該ガスGは吐出弁7を通過し排出される。この時、吸入弁6は閉じられている。
このように、ダイアフラム3が作動油の力によって上下に変形することによって、ガスGを吸入、排出する。
この吸入・排出の効率を上げるためには、ガスプレート1及びオリフィスプレート2の窪み4,5の体積を大きくし、1サイクルでのガス吸入量及び排出量を増加させることである。それに伴いダイアフラムには、大きな変形能力が要求される。
ダイアフラム3が大きく変形すると、発生する応力は大きくなる。この応力は、ダイアフラム3の厚さに比例して大きくなる。また、変形させるに必要な力(油圧)も、ダイアフラム3の厚さの立方に比例して大きくなる。
これらの観点から、ダイアフラム3は薄いほど良いが、あまりにも薄くし過ぎると不安定変形を生じてしまう。このような事から、ダイアフラムは、止む無くかなり高い応力を発生させて使用している。
一方、圧縮機は数100rpmで運転されるため、ダイアフラムが受ける応力の繰返し数は、1ヶ月程度で1,000万回程にもなる。従って、ダイアフラムには、高サイクル疲労破壊の可能性を低めるための高い信頼性が要求される。
一方、疲労特性に優れる材料としては、オーステナイト系ステンレス鋼で回復未再結晶組織を含む、微細な再結晶粒との混合組織を活用した、国際公開番号WO00/14292、特開2005−054272号でのガスケット用ステンレス鋼の提案がある。
しかし、同製品が極めて過酷なビード加工後に使用されるため、その素材は強度―延性バランスの改善により同加工時の微少な亀裂の発生を抑制し、優れた疲労特性を獲得している旨が報告されている。すなわち、それらを伴わないダイアフラムで優れた疲労特性を示すか否かは全く不明である。更に言えば、ガスケットが圧縮・除荷の繰り返し負荷を受けるのに対して、ダイアフラムは圧縮・引張りの繰り返し負荷を受け、負荷形式が明瞭に異なる。また、疲労破壊の進展速度に関する検討も全くなされていない。すなわち、同材がダイアフラムに適用可能か否かは全く不明なままであった。
国際公開番号WO00/14292、 特開2005−054272号
しかしながら、実際のプラントにおける従来の圧縮機のダイアフラムは、早い場合には1〜2週間程度で、首尾よく行っても2〜3ヶ月で破損にいたっている。破損の原因は、環境の影響を伴った疲労損傷と考えられるが、必ずしも明確ではない。圧縮機の分解点検は、通常1年に1回程度であるから、このような定期検査以外に、ダイアフラムの交換のため何度も余儀なく停止されている。また、ダイアフラムは上記のように、非常にシビアな耐食特性及び耐疲労特性が要求されるため、サプライヤーも限られ、価格が高く、納期も長いことから、高価な予備品を多量に在庫する必要があった。
本発明は、このような状況に鑑みて、ダイアフラムの耐用年数を向上させることを目的とし、例えば、1年間程度、最低でも6ヶ月程度は破損しないダイアフラムを提供することである。
この発明は、金属材料により形成された圧縮機用ダイアフラムであって、前記金属材料の平均結晶粒径d(mm)が下記(1)式を満足することを特徴とする圧縮機用ダイアフラム、である。
1/d0.5 ≧ 15 (1)
この発明の前記金属材料が、オーステナイト系ステンレス鋼、又は、ニッケル基合金であることを特徴とする。この発明の前記オーステナイト系ステンレス鋼が、回復未再結晶組織と再結晶組織の混合組織からなることを特徴とする。この発明の前記平均結晶粒径dが、0.004mm〜0.001mmであることを特徴とする。
この発明は、以上のように構成したので、ダイアフラムの素材である耐腐食性金属材料の疲労強度を改善するとともに、該材料に含まれる不純物の粒界濃度を低下させ耐食性を改善することができる。従って、従来例に比べ、ダイアフラムの耐用年数を向上させることができる。
本件発明者は、上記問題を解決するためには、ダイアフラムの素材である耐腐食性金属材料の疲労強度と耐腐食性の検討が必要であると考え、研究実験を重ねた。
疲労強度:
金属材料の高サイクル疲労強度は、材料の引張強さ或いは硬さに比例することが古くから認められている。例えば、回転曲げ疲労においては、オーステナイト系ステンレス鋼では、疲労限度:σW、引張強さ:σB、ビッカース硬さ:HVとすると、それぞれ次の関係がある。(日本材料学界編:疲労設計便覧、養賢堂(1995)、p386. 参照)
従って、引張強さや硬さを上げることで、高サイクル疲労強度は改善できる。
そこで我々は、従来の高張力ステンレスばね材(SUS301)について、0⇒引張応力タイプの疲労試験を行った。その結果、表1のような結果を得た。
負荷の形式(曲げ荷重か引張荷重かなど)によっても疲労強度が異なるので、一概には言えないが、換算した疲労強度より、実験の疲労強度はかなり低いことが分かった。これらのことから、単に引張強度を高くするだけでは十分な疲労特性を得られない可能性のあることが分かった。
この一つの理由として、高強度金属材料が繰返し負荷を受けた時、繰返し軟化を受けることに注目した。下記表2は、疲労損傷のあったダイアフラムの硬さ試験結果であるが、使用前にあったと推測される硬さに比べ、ビッカース硬さで20以上の軟化が見られる。
繰返し軟化というのは、図2に示すように、ひずみの繰返しサイクルと共に、降伏強度(または0.2%耐力)が、低下して行く現象である。繰返し軟化が生じると、疲労損傷が進む理由について図2に従って詳しく説明する。
最初弾性的に引張側最大ひずみに相当する点p1まで変形し、その後の圧縮過程で、圧縮最大ひずみに到達する前に、点p2で降伏(軟化)してしまい、塑性ひずみを伴って圧縮最大ひずみに到達する。その後、負荷の増加と共に弾性的に変形してゆくが、降伏点が更に減少し、点p3で塑性変形が始まり、最大引張側ひずみまで、変形する。次の圧縮過程では、点p2よりも低い応力の点p4で降伏してしまい、塑性変形が進む。
このようなサイクルの中で、最初の始点0⇒点p1⇒点p2の変形は、全て弾性変形であり、殆ど材料の損傷は伴わない。
しかし、その後の塑性ループ点p2⇒点p3⇒点p4の変形では、エネルギの損失を伴う。このエネルギの一部が、材料の損傷に寄与すると考えられる。
ダイアフラムの場合、その変形は、オリフィスプレートの窪み内壁に密着した状態(引張側最大ひずみ)から、ガスプレート窪み内面に密着する形(圧縮側最大ひずみ)までであり、負荷される全ひずみ量(塑性ひずみ+弾性ひずみ)が一定である。ダイアフラム材料が軟化すると、降伏点が低下するから、1サイクル中の塑性ループが大きくなる。すなわち、1サイクルの付加でダイアフラム材料に吸収(消耗)されるエネルギが大きいことになる。これが、ダイアフラム材料の疲労損傷を生じる事に寄与していると考えられる。
繰返しひずみ軟化は、材料の強化機構が、繰返しのひずみサイクルによって徐々に不安定化し壊れてゆくためと推測される。例えば、過飽和の転位が繰り返しひずみサイクルを受けている間に、合体/消滅し、転位密度を下げる、或いは過剰の析出物が繰り返しひずみサイクル中に合体して、析出物の数量を低下させるなどと考えられる。
金属の強化機構には、転位論的に、固溶硬化、析出硬化、加工硬化及び結晶微細化による強化が考えられている。
このうち、最初の3つは再結晶温度以下でも変化を生じやすい。例えば、過剰に固溶した炭素は400℃程度で容易に炭化物を作るし、出来た炭化物は、再結晶温度以下でも時間と共に成長し、析出物の数を減少させ強化の効果を減少させる。また、転位も密度が高くなると、温度上昇と共にお互いに反応して消滅する。
これに比べ、結晶の粒界は、再結晶温度以下では殆ど移動や成長はせず、細粒による強化は前者より安定な強化機構であると考えられる。温度上昇は、外部から金属に与えるエネルギの一種であり、このエネルギによって上記の反応が起きるわけであるから、温度ではない外部エネルギ、ここでは繰返しひずみエネルギであっても、類似の現象を生じ、強化機構を弱めると推定される。
即ち、圧縮機の運転による温度上昇や、繰返しひずみサイクル(塑性ひずみループ)に伴うエネルギ(これによる温度上昇もある)が、ダイアフラムの強化機構の効果を弱め、疲労強度を低下させる可能性がある。
一方、結晶粒界で強化した場合は、外部からのエネルギ供給(繰返しひずみの付与)に対してもかなり安定で、繰返しひずみ軟化が起き難く、強化機構が有効に働き続けると考えられる。すなわち、疲労強度は、結晶粒度にかなり強い依存性を有すると考えられる。
高松らは、「SUS304ステンレス鋼極薄板材の静的強度および疲労強度に与える結晶粒径と板厚の影響」(「日本機械学会第72期通常総会講演会講演論文集(II) 1995−3.29 東京 参照」)について研究し、引張強さに関し、板厚/結晶粒径の比で整理できることを示している。
しかし、疲労強度に関しては十分な関係を見出していない。前記高松らの文献でのデータに、本発明者らの実験データ(前記表1と下記表3)を加え、結晶粒径の平方根の逆数(1/√d、ただし、dは結晶粒径)で整理してみると、図3のようになる。疲労強度は結晶粒径が小さくなると共に増加することが明確になる。
なお、結晶粒径の平方根の逆数(1/√d)で整理したのは、金属材料の降伏点の結晶粒依存性が下記ペッチの式で表されることが分かっていることに鑑み、同じパラメータで疲労強度を整理したものである。
図3中、□印は本発明者らの疲労試験データで、両者の引張強度は同一レベルであるが、疲労強度にはかなりの差がある。疲労強度の低い方は、市販のSUS301材料(表2に示す繰返しひずみ軟化を示す材料)であり、高い方は、結晶粒径を1〜2μmに極微細化したもので、後述のように、繰返しひずみ硬化を示す材料である。
微細粒オーステナイト系ステンレス鋼:
オーステナイト系ステンレス鋼は、化学成分としては準安定オーステナイト系ステンレス鋼をベースとし、必要に応じ、Nb,Ti,Vから選ばれる1種以上を含有させ微細粒を安定化させている。また、組織としては回復未再結晶組織を含む混合組織とする。この理由は、最良の強度―延性のバランスが獲得されるためである。
具体的には、Cを0.01〜0.08質量%、Siを0.1〜2.0質量%、Mnを3.0質量%以下、Crを10.0〜20.0質量%、Niを3.0〜12.0質量%、Nを0.02〜0.24質量%で各成分を含有し、必要に応じて、Nb,Ti,Vから選ばれる1種以上を合計で、1.0質量%以下含有できる。更に、好ましい範囲は0.8質量%以下である。
以下、成分の限定理由について説明する。
C:
・Cの含有量は、0.01〜0.08質量%とする。Cは安価かつ有効な侵入型固溶強化元素の一つである。0.01質量%以上含有させると固溶強化の作用が発揮される。一方、上限値は、0.08質量%である。これは、Cは強力なγ安定化元素であり、過度の添加は必要となる加工誘起マルテンサイト(α´)変態を抑制してしまうことによる。また、熱処理においてCr23化合物に代表される粒界への粗大な炭化物の析出を招き、耐食性や加工性を劣化させるからである。C含有量の更に好ましい範囲は、0.02〜0.07質量%である。
・Si:
Siの含有量は0.1〜2.0質量%とする。Siは有効な固溶強化元素である。下限値を0.1質量%以上としたのは、これにより高温強度を上昇させ、本発明の特徴である上述の混合組織の獲得が容易となるからである。上限値を2.0質量%としたのは、Siはフェライト(α)安定化元素でもあり、過度の添加は焼鈍時後に同相を残存するからである。Si含有量の更に好ましい範囲は、0.2〜1.8質量%である。
・Mn:
Mnの含有量は3.0質量%以下とする。Mnはγ安定化元素であり、他の元素とのバランスを考えて添加される。含有量を3.0質量%以下としたのは、過度に添加した場合、α´相が得られなくなることによる。また、介在物等を形成し、加工性や耐食性を劣化させる場合があるからである。Mn含有量の更に好ましい範囲は、2.6質量%以下である。
・Cr:
Crの含有量は10.0〜20.0質量%である。Crはステンレス鋼の基本合金元素の一つである。含有量を10.0質量%以上としたのは必要な耐食性を得るためである。上限値を20.0質量%としたのは、Crがα安定化元素であり、過度の添加は焼鈍後に同相の残存することによる。Cr含有量の更に好ましい範囲は13.0〜19.0質量%である。
・Ni:
Niの含有量は3.0〜12.0質量%である。Niもステンレス鋼の基本合金元素の一つであり、最も有効なγ安定化元素である。下限値を3.0質量%としたのは、室温で安定したγ相を得るために必要不可欠であることによる。上限値を12.0質量%としたのは、所定の範囲でα´変態を起こす必要があるからである。Ni含有量の更に好ましい範囲は、3.5〜11.5質量%である。
・N:
Nの含有量は、0.02〜0.25質量%である。NはCと同様に有効な侵入型固溶強化元素の一つであり、Cに比べてより高温まで化合物を形成すること無く固溶することができる。すなわち、本発明の主要な強化元素である。かかる観点から、下限値を0.02質量%とした。上限値を0.25質量%としたのは、過度に添加した場合、熱間での加工性を劣化させ、板の製造を阻害する虞があるからである。また、NはCと同様に強力なγ安定化元素の一つであり、α´変態を抑制することにもよる。N含有量の更に好ましい範囲は0.04〜0.20%で、更に好ましい範囲は0.08〜0.02%で、最も好ましい範囲は0.10〜0.20質量%である。
・Nb:
Nbの含有量は0.50質量%以下である。Nbは高温でも比較的安定かつ微細分散したNb化合物を析出して混合組織の獲得を容易にし、粒成長抑制により再結晶粒を微細化することができる。上限値を0.50質量%としたのは、過度の添加は粗大な化合物を形成し、材料の延性を低下させることによる。また、高価な物質であり、コストの観点からも上限値を設けた。Nbの更に好ましい範囲は、0.45質量%以下である。
・Ti:
Tiの含有量は、0.50質量%以下である。TiはNbと同様の効果を有すると考えられる。すなわち、Ti化合物の析出により混合組織の獲得を容易にし、再結晶粒を微細化することができる。更に、Nbよりも容易に化合物を形成すると考えられる。上限値を0.50質量%としたのは、過度の添加は粗大な化合物を形成し、材料の延性を低下させることによる。Ti含有量は更に好ましくは、0.45質量%以下である。
・V:
Vの含有量は0.50質量%以下である。VはNb、Tiと同様の効果を有する。すなわち、V化合物の析出により混合組織の獲得を容易にし、再結晶粒を微細化する。上限値を0.50質量%としたのは、過度の添加は粗大な化合物を形成し、材料の延性を低下させることによる。V含有量の更に好ましい範囲は、0.001質量%以上、0.45質量%以下である。
上記成分以外に工業的側面から添加される元素、例えば溶製時脱酸材として使用されるCa,AlあるいはREM(希土類金属)、熱間加工性の改善が見込まれるBを必要に応じて合計量で0.3質量%以下で含有してもよい。更にスクラップを原料とする場合、不可避的となるCu,Moを各々で0.4質量%以下で含有してもよい。Cu,Moは本発明においてはγ安定度の調整元素として作用する。また、通常の組成における不可避的不純物が含まれても良い。
微細粒オーステナイト(γ)系ステンレス鋼の製造方法は次の通りである。ただし、これに限定されるものではない。
素材は一般的な工程に従い、溶製→熱間圧延→焼鈍後、冷間圧延と焼鈍を1回以上繰り返し、所定の板厚に加工するものとする。なお、同工程での最後の焼鈍は均質なγ相組織を得るため、1000℃以上で実施することとする。これ以降の工程は次の順序で実施する。
上記工程後、板厚の減少率で20%以上の冷間圧延(最終冷間圧延という)を行う。これは同材の加工誘起変態を促進し、結晶粒微細化に必要となる充分なα´相への変態を行うためである。
その後650℃以上、1000℃以下にて180秒以下の焼鈍(最終焼鈍という)を実施する。焼鈍温度を650℃以上としたのは同温度以下では材料が再結晶しないため、1000℃以下としたのは再結晶粒が粒成長し、粗大かしてしまうためである。また、保持時間を180秒としたのは工業的側面より決定した。これらの最終冷間圧延および最終焼鈍で、回復未再結晶組織と再結晶組織の混合組織が得られる。
回復未再結晶組織と再結晶組織の混合組織を有したステンレス鋼板は、その後JIS規格(JIS−G−4313)に指定される所定の仕様での強度を得るため、70%以下の調質圧延が実施される。
更に必要に応じて、形状矯正、疲労特性に影響を及ぼす残留応力の調整を目的とする歪取焼鈍、高強度化を目的とする時効処理を650℃以下にて実施する場合がある。
この発明の第1実施例について説明する。
供試材の成分を表4に示す。供試材はNAR−301L鋼を使用し、熱間圧延、焼鈍後、冷間圧延と1100℃での焼鈍を繰り返し、厚さ1.9mmの薄板とした。
次いで、厚さ0.74mmへ最終冷間圧延、900℃で最終焼鈍を施した後、製品板厚である厚さ0.4mmへの調質圧延、更に板形状改善のため、テンション・レベラでの形状矯正を行った。
得られたステンレス鋼板は、平均粒径が2μmで、面積率で10%の未再結晶組織を有していた。
同材をダイアフラムに適用し、以降での調査に供した。
この発明の第2実施例について説明する。
回転数:330rpmの水素圧縮機のダイアフラム(直径415mm、板厚0.4mm)は、従来、SUS316L(冷間仕上げ薄板)、SUS301(ステンレス鋼ばね材)などで作られていたが、殆どの場合1〜数週間で、割れが発生し、リークに至っていた。なお、このダイアフラムの平均結晶粒径は約0.008mm(8μm)である。
この従来のダイアフラムを、細粒化SUS301で製作したダイアフラムに変更、試運転したところ、下記表5のように、繰返し数が1.2×10回を越えた現在でも、割れは発生していない。また、このダイアフラムは、運転(繰返しひずみの負荷)によって、下記表6に示すように、繰返しひずみ硬化を示す。
なお、このダイアフラムの平均結晶粒径は、0.00122mm(1.22μm)であり、前記結晶粒径の平方根の逆数(1/√d)は、28.6である。
この発明の第3実施例について説明する。
図3(疲労強度とステンレス薄板の疲労強度に及ぼす結晶粒径の影響)における疲労データの近似曲線を書いてみると、図5の鎖線で示す様になった。
図5に於いて、平均結晶粒径の平方根の逆数(1/√d)の値が、15(横軸中央部に直交する縦細線参照)を境に疲労強度が大きく変化している。即ち、1/√dが15と等しいか又はそれより大きい場合(前記縦細線の右側)には、疲労強度が漸増し、例えば、平均結晶粒径が0.004mm(4μm)の場合には、1/√dは15.8となり、疲労強度も400Mpaとなる。
一方、平均結晶粒径の平方根の逆数(1/√d)の値が、15より小さい場合(前記縦細線の左側)には、疲労強度が激減し、例えば、平均結晶粒径が0.008mm(8μm)の場合には、1/√dは11.2となり、疲労強度は300Mpaに減少してしまう。
このことから、前記(1)式で表される値が15を下回ると、疲労強度が低下し、ダイアフラム用途としては不適であることがわかる。なお、上限は限定されるものではないが、(1)式で表される値が、32を超えると、コストアップとなるので、32以下が望ましい。
なお、前記式(1)を満たす平均結晶粒径dは、0.0044mm(4.4μm)以下であるが、0.004mm(4μm)〜0.001mm(1μm)が好適である。
ダイアフラム式圧縮機の要部縦断面図である。 繰返しひずみ軟化とエネルギ損失の説明図である。 ステンレス鋼薄板の疲労強度に及ぼす結晶粒径の影響を示す図である。 微細結晶の組織写真である。 図3における疲労データの近似曲線を示す図である。
符号の説明
1 ガスプレート
2 オリフイスプレート
3 ダイアフラム
4 ガスプレート側窪み
5 オリフイスプレート側窪み

Claims (4)

  1. 金属材料により形成された圧縮機用ダイアフラムであって、
    前記金属材料の平均結晶粒径d(mm)が下記(1)式を満足することを特徴とする圧縮機用ダイアフラム。
    1/d 0.5 ≧ 15 (1)
  2. 前記金属材料が、オーステナイト系ステンレス鋼、又は、ニッケル基合金であることを特徴とする請求項1記載の圧縮機用ダイアフラム。
  3. 前記オーステナイト系ステンレス鋼が、回復未再結晶組織と再結晶組織の混合組織からなることを特徴とする請求項2記載の圧縮機用ダイアフラム。
  4. 前記平均結晶粒径dが、0.004mm〜0.001mmであることを特徴とする請求項1記載の圧縮機用ダイアフラム。
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